#photobybozzo

沖縄→東京→竹野と流転する、bozzoの日々。

【Antonio Carlos Jobim】三月の水

2010-03-17 | MUSIC
【YouTube】Aguas de Marco/Elis Regina

棒、石 道の終わり 切れ株の残り
ちょっとひとりぼっち ガラスのひとかけら
命、太陽 夜、死 投げ縄、釣り針
ペローバ・ド・カンポの樹 材木の節目
カインガーの樹、カンデイアの樹
マチータ・ペレイラの樹
風の木 川岸の崖崩れ 奥深い神秘 
求めても、求めなくても 吹いている風
坂の終わり 梁、空間 棟上式 降っている雨
三月の水の 小川の会話 疲れも終わり

足、地面 ぶらぶら歩き 手のひらの小鳥 パチンコの石
空の鳥 地面の鳥 小川、泉 パンのひと切れ
井戸の底 道の終わり 顔に不機嫌
ちょっとひとりぼっち 棘、釘 先っちょ、点
滴り落ちる雫 計算、物語 魚、仕草
輝いている銀 朝の光 届いたレンガ
薪、昼 森の道の終わり ピンガのボトル
路上の破片 家の設計 ベッドの中のからだ 故障した車
泥、泥 足跡、橋 ひきがえる、かえる 森の残り
朝の光の中に 夏を閉じる
三月の水 君の心には 生きる希望

蛇、棒 ジョアン、ジョゼ
手のひらの棘 足の切り傷
夏を閉じる 三月の水
君の心には 生きる希望

棒、石 道の終わり
切れ株の残り ちょっとひとりぼっち
足跡、橋 ひきがえる、かえる
ベロ・オリゾンチ 三日熱
夏を閉じる 三月の水
君の心には 生きる希望

【YouTube】Aguas de Marco/Antonio Carlos Jobim

      ●

3月は誕生月だ。
春へと季節が移ろい、沈丁花が心を惑わし、
若葉が芽生え、むき出しの枝に白やピンクの花が咲き、
人々の心にも色が生まれ、服装もどことなく軽やかになり、
心と心が解きほぐされ、出会いと別れ、新たな恋の予感…。

ブラジルは南半球なので、夏から秋への移ろい。
「三月の水」はそんな季節の変わり目をポッソフンドの山間で
小川のせせらぎを耳にしながら曲にした作品である。

「Ligia」で心揺さぶられてから、ここのところJobimの曲ばかり聴いている。

日がな一日、Jobimの伝記を読みながらBossaNovaの成り立ちに想いを馳せていると、
ボクはこの音楽をどれだけ誤解していたのだろう…と深く深く悔いる。

いや、Jobimがどれだけ曲解されて今に至っているかを思い知るのだ。

これもBossaNovaが世間的にAmbiento Musicとして片付けられているからだろう。
たしかに心地いい音楽だ。ひとり静かに過ごすにはもってこいの環境音楽である。

    そう感じるのは、なぜか?

そう、Jobimが自然を愛して止まなかったから…なのだよ。
この伝記を読むとおのずとブラジルの光や風が感じられるのだけれど、
森を愛し、釣りを愛したJobimは、いつもブラジルの自然と対話し、
自然と呼応するかのように、曲を作り上げていった。

 森を歩くと曲が丸々響いてくるのだと妹に語った彼は、大自然のもつ超常的な力を知っていた。
 音楽を、肉体的な癒しを与えてもらった彼は、その大自然に、混沌に生きる人間たちが自らを縛っている
 差違や矛盾や対立といった鎖の一切を超越する存在を見ていたのではなかろうか?
 万人の笑いや哀しみ、生き死にを包み込んで余りある存在を見ていたのではなかろうか?
 人と自然の調和がなされれば、いつかはきっと人の間の調和も得られる。
 彼が残した自然讃歌には、そんな切々とした願いが込められているように思われてならない。
 ジョビンはエコロジスト、ナチュラリストであるより前に、痛ましいほど繊細な心を抱えた
 ヒューマニストであったのだと、思えてならない。
                          (「ボサノヴァを創った男」訳者あとがき抜粋)

think globally act locallyじゃないけど、
Jobimの中には常にブラジルの愛すべき自然があり、
日々の中で感じられる季節の移ろいに五感を反応させ、
生きることの悦びをメロディに乗せていたように思う。

BossaNova自体がJobimから遠く一人歩きしてしまって
軽やかなカフェミュージック程度に成り下がってしまっているけれど、
実はJobimなりのProtest Songなんだと、ボクははっきり認識した。

彼もBob Marley同様、世界を変えた男なのだ。

ボクはこれから先、もっともっとJobimの歌に耳を傾け、
歌詞を理解し、背景を理解し、ハーモニーを血肉化し、体現できるように努力したい。
嗚呼、Amparoの旋律のなんと胸に響くことか。
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