#photobybozzo

沖縄→東京→竹野と流転する、bozzoの日々。

【寺山修司】血は立ったまま眠っている

2010-01-22 | ACT!
一本の電柱にも
ながれている血がある
そこでは
血は、立ったまま眠っている

1月22日。金曜日。
4時起きの一週間を完遂し、
羽を伸ばすべくシアターコクーンへ。

寺山修司×蜷川幸雄×森田剛で、
ヤフオクで1枚5万の値までついている
話題の演劇を2階上手の「コクーン席」から観る。

PAブースの裏では、監督がステージに睨みを利かせていた。
全公演をあのような眼光ですべてチェックするのだろうか?

1935年生まれ74歳の蜷川幸雄は
寺山修司と同じ歳。
寺山が生きていたら…と考えてしまう。

そんな思いもあるのだろう、
安保闘争を背景に1960年に書き上げた
寺山24歳の処女戯曲を蜷川はアッパレな演出で魅了した。

内容については触れないが、
のっけから驚くコトばかり。

1988年、美大1年で挫折を知らず粋がっていた19歳のボクは、
何を思ったのか蜷川幸雄演出の「テンペスト」をデートコースに選んだ。

初めて観る蜷川ワールドに、
女の子そっちのけでのめり込んだ記憶があるが、
今回も終止「前のめり」で舞台に釘付け。

なんといっても、光の演出が惚れ惚れした。

昇る朝日を伝える下手からの強烈な光、
客席にまで伸びて差し込む月明かりの窓枠の影、
クライマックス、闇夜の不安を醸成する効果的な逆光、
その対比で歓楽街の猥雑さを見せるネオン看板の量…

…など、これほどまでにワールドを構築できる74歳って、
ただただ素晴らしいの一言に尽きる。

「窓のない素人下宿の
 吐潟物で洗った小さな洗面器よ」
    
舞台の大道具もまさに吐瀉物で洗ったような有様で、
寺山の劇団「天井桟敷」さながらに
大男のゲイ、男女のこびと、股間を弄るガキなどが、
舞台と観客席を縦横無尽に走り回る様は、
渋谷にあった「天井桟敷館」へのオマージュか…と勘ぐるほど。

遠藤ミチロウ還暦の事実も知れて
いろんな記憶が交錯する、最高の舞台体験となった。

やはり寺山は舞台に限る。




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【遠藤ミチロウ】お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました

2010-01-22 | MUSIC
お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました
お母さん、雨の信号はいつも横断歩道のわきでパックリ口を開けているあなたの卵巣が
真っ赤に腫れあがった太陽の記憶をゴミ箱から引きずり出し
そこから一匹の虫がこそこそ逃げ出そうと
28万5120時間の暗闇をめぐりながら
夕餉の食卓に頻繁に出された玉ねぎの味噌汁を頭からかぶり
ズブ濡れになった幸福の思い出を今か今かと待ちわびる
自閉症の子供の通信欄に
「僕のお父さんは公務員です」と一人で書き込む恥ずかしさを誰かに教えたくて
放課後の来るのを待ちきれず教室を飛び出して一目散に家をめざしたのだけれど
もれそうになるオシッコを我慢して教えられた通り緑色に変わったら渡ろうとしていた信号が
実は壊れていたんだと気づいた時にはすでに終わっていたんです
お元気ですか

お母さん、頭がいいのはぼくのせいではないと自己主張する度に
宙ぶらりんの想像妊娠恐怖症からやっと立ち直った
女の下着にはいつも黄色いシミがついていて
人種差別は性欲の根源であると公言してはばからない
アメリカの政治家の演説を鵜呑みにしたような、清々しい朝の勃起で
ベトナムのバナナの叩き売りを一目見ようと
片手に自由の女神の電動コケシと
片手に赤マムシドリンクをかかえこんだ農協のじじいが
かわいい孫娘のお土産にと
上野のアメ横で流行りのジーンズを買い込んで金を使い果たし
「家族は運命共同体だ」と時代遅れの暴言を吐いて
浮浪者になってしまった挙句殺されてしまった悲しい話を思い出してはみるのです
お元気ですか

お母さん、パンツのはけない留置場は寒いです
水洗便所の流す音がうるさくてなかなか寝付けないので
犯罪者はいつもこっそりセンズリをかくのですが
「おかげであなたの夢ばかり見る」と取調室でしゃべったら
刑事はさも嬉しそうに「親孝行しなけりゃいかん」と昼飯にカツ丼をおごってくれたのですが
タヌキウドンのほうが食べたくて
「父親は嫌いだ」と言ったら自衛隊かぶれの隣りのヤクザが真っ赤になって怒りだし
「贅沢は敵だ」などと勝手なことをほざいたので
「おまえなんか生まれてこなけりゃ良かったんだ、この貧乏人め」とつい口をすべらせてしまったのです
お元気ですか

お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました
膀胱炎にかかった時から あそこを氷で冷やす快感を覚えてしまった僕は
お風呂が大嫌いになり 何枚も何枚もボロボロに皮が剥げ落ちて
剥き出しになった皮下脂肪のしつこさが絶え切れず
赤紫の玄関口で一人で泣いていたんです
お母さん、もう一度アンパンが食いたい
お母さん、正月に作ってくれた栗きんとんが食いたい
お母さん、豚肉だらけの砂糖のたっぷり入ったスキヤキが食いたい
お母さん、好き嫌いは庶民の恥です
お母さん、今朝から下痢が止まらないのです
お母さん、血管もちぎれてしまったみたいです
お母さん、血が止まらないのです 血が止まらないのです
お母さん お母さん 赤い色は大嫌いです!!

      ●

1984年「遠藤ミチロウ」としての作品。
高校生だったボクは、絶叫しながら大爆音で聴いていた。

今、youtubeで26年ぶりに耳にして、
ふたたびあの興奮…胸クソ悪い…居場所のない…
行き場を失い…抱えきれない欲望に…精液でガビガビになった…
15歳の自分が、いた。

あのミチロウが…コクーンの舞台で
ギター1本で絶叫している。

     地下鉄の
     鉄骨にも
     一本の電柱にも
     ながれている血がある
     そこでは
     血は
     立ったまま眠っている

     窓のない素人下宿の
     吐潟物で洗った小さな洗面器よ
     アフリカの夢よ
     わびしい心が
     汽笛を鳴らすとき
     おれはいったい
     どの土地を
     うたえばいい?

うそだろ!?オッサン、もう還暦じゃねぇかよ。
すげえな、そのパンク魂。

感動したぜ。

【寺山修司】血は立ったまま眠っている
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