Retrospective...

イラストレーター/ライター遠藤イヅルの困った嗜好をばらす場所

サーブの戦闘機

2005-09-14 | くるま。
サーブ、といえば北欧・スウェーデンを代表するメーカーです。
欧州車でありながらもドイツ、イタリア、仏蘭西、イギリスの何処の国にも
属さないその独特のクルマ作りは(最近はそうでもないんですが...)、
まさに中立国スウェーデンそのものという感じです。


そのサーブ、本来は飛行機メーカーでした。ご存じの方も多いと思います。
saabとは元来スヴェンスカ・アエロプラン・アクティボラーゲット(Svenska Aeroplan AB)の略なのです。
エンブレムの双発機が、出自を語っていますね。


ちなみに。
これが最初のサーブ、92。
空力ボディは航空機技術を応用したモノコック製でした。カワイイ(*^^*






ところで、スウェーデン王国は豊かな自然と、西欧に負けない優れた産業技術を持ちますが、
しかし19世紀頃は大変貧しかったそうです。
第一次、第二次の二度の戦争では中立を貫きましたけど、単に戦費が無かったからだ、とか...。

戦後、ようやく経済的にも好転したスウェーデンでしたが、中立国ではあるものの危険がすぐそこまで迫っていました。
それは、ソ連の侵攻です。
もとをただせば1939年、ソ連は第二次世界大戦中に隣国であるフィンランドに侵攻。
スウェーデンはそれ以降、常にソ連の侵攻におびえなければなりませんでした。

そこで彼らは徹底した防衛プランを作ることにしました。
それは、小国でありながら、自主開発の兵器によるものです。
その中には「ジェット戦闘機」も含まれていました。

それまでも実はスウェーデンはサーブ29トンネン

これ。カワイイ(*^^*


を持っていたのですが、その時のプランでは当時の世界水準を大きく超える性能が要求され、
トンネンを作ったサーブに、結局白羽の矢が立ちました。

そして1955年に登場したのがサーブ 35 <ドラケン>

>

スウェーデンという国の特長がそのまま出た<防衛用機>のコンセプトは、そのまますべての設計の基本になっています。

●高い速度
ジェット爆撃機を迎撃するために必要。当時の代表的戦闘機の速度がマッハ1.1だったが
ドラケンは当時の世界記録M1.4を突破。設計速度はマッハ1.8。

●ダブルデルタ翼
高速性能に適したデルタ翼と、運動性能、離着陸性能を高めるために低速時の揚力発生に効果的な内翼を合わせた設計。

●優れた整備性能・運用性能
物量では圧倒的に負ける小国ならではで整備性を良くすることで運用効率を上げようとしている。

●短い航続性能
迎撃機であるという発想から、航続距離は割り切っているかわりに、
モジュール式で組み立ててあるなど、補給・整備性は大変優れている。

●万能の迎撃性能
なんと、高速道路からの離着陸が出来ることが基本用件。そのためのSTOL性能すら持っている
(幅13M、長さ650Mの道路が有れば離陸できる)。
主翼はトラックに積むことが出来るし、高速道路脇のシェルターに隠してあって
いつでも発進が出来るようになっている(実話)。



1950年代に登場したこのドラケンは長きに渡って運用され、1999年に退役。
そして、基本的には現在のサーブJAS39グリペンまで設計思想が同じと言う意味では、
ほぼ時を同じくして登場し、その先見性や優れた思想を持っていたシトロエンDSに近いものを感じます。




>>ほらほら、街ゆくサーブのクルマに対する視線が変わって来ませんか?
「あのドラケンやビゲン、グリペンを作ったサーブのクルマだ、かっこいい」って(^^)!


>>そういう意味では、我が国のスバルも、もとをただせば航空機(中島飛行機)が発祥ですよね。
僕の大好きな旧プリンスも、同じく中島飛行機でしたし。
このあたりの「もと航空機メーカー」のクルマって、どこか独特のエンジニアリングがあって、
それが魅力的なのかもしれません。
コメント (14)
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