Retrospective...

イラストレーター/ライター遠藤イヅルの困った嗜好をばらす場所

サーブ900ターボ16がやってきた(2)。

2007-11-28 | サーブ900。



自分でもまさか買うことになろうとは、のサーブ900 ターボ16。

引き続いて印象&インプレをお送りします。


ということで今日は気になる乗り心地やシート、動力性能編。


●乗り心地と操縦性

★重厚。ふんわりではなく、まったり。
そう表現するほかない感じです。
ターボ16というからにはスポーツな感じで乗り味も固め、と思うのですがさにあらず、
コーナーではロールは派手だし、基本どアンダーなのでコーナーが怖い...
古典的FFの乗り味です。慣れてくれば飛ばして楽しいクルマなのかも、ですが
ひたすら真っ直ぐに走りたい...

というのも直進安定性はピカイチです。
ステアリングから手を離しても、ぐんぐん走ります。
まあ仏車はおしなべてそうだったので、特に驚くほどでは無いのですが。

特筆すべきは、「元祖空力ボディ」だけあって?横風とかにも強いのがすごい。




乗り心地は、まったり。
ふんわりというほどふわふわ感があるわけではなく、
ガッチリとした剛性感あふれたものでもなく、
低速域ではタイヤが目地のごつごつをこまめに拾っているのがわかるのだけど
それが車体をゆらすわけでなはく、
それでいて仏車のようにすべてサスで吸収できているわけでもなく。
でも。
角がない。しっとり、まったり。ちょっとウエッティな乗り心地。
でいて、ルノーのようなねっとりではないし、シトロエンのような浮いた感じもない。
プジョーの猫足がいちばん近い?
でもあんな感じの「しなやかに足が動いてる」って感じもないし。

でもまったり、まろやかな乗り味なのです。不思議だなあ。

ルノー19からの乗り換えですから感覚的な「ハードル」は高いハズなのに
そう思えるのですから、悪くないはずです。いやいや、いいと思います。




●シートの座り心地


★姿勢が良くなるシート。
ドイツ的な、きっちりとした着座姿勢を要求するシートです。
背もたれのランバーサポートが結構派手に出ています。
背もたれの角度を倒しすぎたりすると、とたんにこのサポートが
背中にかなりいやな感じで迫ります。



でも、教科書通りの着座をすると、これが気持ちがいい。
あれほど出っ張っている感じがしたランバーサポートが
きれいさっぱり背中から消えるんです。腰椎の形状にフィットしているので
しょうか。背もたれ上部の角度も、丁度人間の肩から首のラインにぴったり。
背もたれを立てたときにありがちな「首の重さを感じる」こともないです。
見た目すごく薄い背もたれなのに、不思議です。

座面もクッションが厚く形状の出来も良く、腰をすっぽり包んでくれます。
大腿裏の圧迫感も心地が良い。



そんなかんじで、一度「決まる」と身体を動かさなくても良くなります。
ルーズなウォーターベッドみたいな昔の仏車のシートとは方向性が違うのですが、
でもこれはこれで実に気持ちがいい。
ただ、助手席が運転席よりも座り心地が劣ること、それと
座面が高いので場合によっては大腿部のもっこりが逆に圧迫になるかも
しれないことが欠点といえば欠点です。

独特の形状のヘッドレストは、案外やわらか。
運転中に頭を押しつけても不自然は姿勢にならないのがいいです。

ほんと、出来の良い家具って感じのシート。感心しました。
椅子にうるさい自分ですけど、これならずっと乗っていけそう。



リアシートです。フロントシートがハイバックなので
前はよく見えないんですが、でも座面は明らかに一段高く、視界は良好。
クッション・座面ともに、現代の仏車でさえ失われた「ふかふか」なシート。
着座姿勢・形状は優れていますが、惜しむらくは座面がセンターから
車端方面に向かって傾いている感じがすることです。

足下のスペースは2Lで4.7Mもあるクルマとしては及第点といった感じで、
FFであるならばもっと広くあるべき。
でもフロアトンネルもほとんどなく、アップライトで座るのと、
窓が立っているので窮屈な感じはしません。


●動力性能

★踏めば痛快なターボ。
サーブ自製の1985ccDOHC 16Vエンジンには、
APC(Auto Performance Control)付きターボが装着されています。

エンジンやAPCのことはまた説明するとして、ここではインプレを。

APCによってハイオクでもレギュラーでも大丈夫なこのターボエンジン、
燃料の種類によって過給圧が変わるのですけど
ハイオクの場合9.0barの過給圧になります。でも日本仕様では160PSしかありません。

でもさすがにターボ、効き始めたときの背中を蹴られたような加速感は気持ちがいいです。
いざ踏み込めば、それなりに痛快かつ暴力的。


★段のない淀みない加速が出自を思わせる。
僕のはオートマなんですが、これがなんと99時代に設定されたボルグワーナー製の3段。
トルコンスリップは大きいし、
100KM/Hでも3000回転もありネンピ的にもつらいオートマなのですが。

しかもこのオートマのせいで出足は悪いです...まあいらいらするほどでは無いのですが、
実用的な加速感という意味では、
トルキーでありながら軽快に回るルノーエンジンの良さを引き出していた
ルノー19のエンジン+オートマのほうがイイです。

DOHC+16Vっていうといろいろ期待しちゃいますが(笑)、
もっさりしてます、正直なところ。



ただし。

アクセルをじわーっと踏んでいくと
やがてタービンが「ふひーん」と音をあげ、1.4tに満たないボディを
ぐわっと前に押しだそうとします。
シフトショックもないこのオートマの段がつかない加速感は、
まるで飛行機が離陸に向かっていくような感じを受けます。

あいかわらずわかりにくいんですが(汗
独特の視界と軽飛行機のような?ダッシュボードがほんとにそれっぽい感じです。




>>排気音は野太いんですが、むしろ絶対的な音量はルノー19よりも静かです。

>>気持ちいい巡航速度は90~120KM/H。
前述のように3段オートマで、100KM/Hで3000回転を越えたら
サーブ900自体は遮音に優れているのにやはりそれなりのうるささ。
アクセルも重いし...まあこれはクルコンで解決なんですが。

>>でもほんとサーブ900も高速クルーザーでした。
安全に安楽に目的地へ...
やっぱり、こういうクルマが好きみたいです(^^
ただ、巡航速度が低くなりました。それはそれで良し。
ゆっくり、まったり、走りましょう...。
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サーブ900ターボ16がやってきた(1)。

2007-11-26 | サーブ900。


サーブ900 ターボ16。
新しい相棒です。


納車から約1週間ですが、
なんだか500キロ以上も走り込んでしまいました。

とりあえず、乗り味の感覚などでわかったこと、言えることは
「仏車でも独車でもない」ということでした。


まだざっくりとした印象ですが、何度かにわけて以下に簡単なインプレや特徴を。


●車体

★サイドシル部分までがばっと開くドア
この下まで開くドアがいい。
まあこのドアのためにボディがヤワで車体の剛性感には欠くんですが
(けど気にはならない)。


この写真ではわかりにくいのですが、サイドシルが無くドアはボディの裾まであるのです。
ですから、乗り降りはたいへんラク。
とくに狭い駐車場で重宝。
「Ur Saab(最初のサーブ)」である92プロトタイプからこのC900まで
続いたサイドシルのないモノコックボディ。
寒冷地である彼の地で、サイドシルに着いた汚れから衣類を守るという副次的効果もあるようです。


★切り立ったウインドウ、丸いフロントスクリーン。
何しろ設計自体は40年前くらいのC900。いまとなってはありえないほど窓が立っています。
とくにフロントスクリーン。立っているだけでなく丸いんです。


うーん 写真では伝わらないなあ(ヘタです...
ウインドウが円錐を半分に切ったような形状なので、
フロントスクリーンの両端がぐいっと手前に寄っているのです。
これに細い細いAピラーのおかげもあり、視界は独特(でも抜群)。
スカットルが高めなのが背の低い自分にはちょっとつらい。
ピラーの位置、窓の感じなどシトロエンのDSぽい...。



★どかんと開くボンネット。
なんでもダンパーだと「寒くて凍る」のでダンパーに頼らない開け方になった?とか
ならないとか...サーブ96の後期タイプからの伝統的な開き方でした。


まず前が開くのでキャッチを外す。
お、前開きか、と思わせておいて
なんと上に開けないで手前にスライドさせるように引っ張る!
それでそのまま前に落とす!
という手順。

閉めるときは逆。
立っているボンネットを水平に戻し、
そしたら手でボンネットがスライドするように奥まで思い切り押す。

ちなみにリアのトランクハッチもダンパーではなく凝ったバネ動作です。
前回サーブが「シトロエンに似ている」というのは、
もちろん思想や発想はまるで違うにしても
たとえば凍らないようにするためには、などといった「設計目的」へのアプローチが
ほかのメーカーと違っていた、という部分にあると思うからです。
機能が形状や設計を決める...といった感じでしょうか。
例えばトランクハッチのオープナーも、
雪や雨が跳ね返らない位置(ナンバープレートの上)にあります。
手が汚れないんですね。開け閉めの時。
こういうところ、いいですねえ。



>>長くなってしまうので今回はこのあたりで...(^^
次回は気になるシート&乗り心地編で?

>>ちなみにこの個体
ブランドディーラーに弱いieには嬉しい「MIZWA」ものです!


ステッカーよたよたですが 人生初のMIZWA車!
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ようこそ輝く時間へ

2007-11-24 | サーブ900。

R19の後継は、ルノーでもなければ、仏蘭西車ではありません。


え?ieが?
フランス車指南のHPを持っておきながら、
ギザルノー会などを立ち上げておきながら、
私、ie、仏車もルノーも降りました。




前回のヒント画像でばればれかと思いますが(涙、

新しく来たのは、これです。











SAAB900 TURBO16。


さ、サーブ!?


そうなんです。サーブなんです。
クラシック・サーブ900。


かつて、xantiaからプジョー206XTに乗り換えたとき、
その「仏蘭西車の濃度の薄まり」にかなり動揺し、
3年は乗りましたが結局手放してしまった。

そして自分にとっての究極「ルノー19」に乗り、
ふたたびルノーの良さを再発見したのです。


サーブを買いにお店に通ったとき、
何度か試乗しました。
買って、ルノーが(しかもギザ)持っていた
「安らぎ」がサーブで得られるのか。
悪くはないけどこの薄くて姿勢の自由度のないシートで納得出来るのか。

結構、迷い、悩みました。



でも結局買って一気に高速に乗り、200キロ走った段階で得た答えは、
「サーブクラシック900(以降、C900と書きます)」は、
相当良い車、という一言に尽きました。





シートは悪くなかったです。
いや、相当いい。
いちおうケツセンサー主宰ですので、これは言い切りたい。
むろんフランス車ほど柔らかくはない。
「気持ちいい姿勢」はほぼひとつしかなく、自由度が無い
(ルノーはどんな格好で座っても疲れない)のですけど、
でもそしたらもう
ルノーのように「背中と背もたれが一体化するかのような」感覚を
ちゃんと持っているのです。


細かいインプレは回数を重ねて追っていきます。
とにかく、なんというのか、新しいのです。
自分には。

ドイツ車とも、フランス車とも、イタリア車とも、もちろん日本車とも違う。
北欧のもつ機能と暖かみの両立はドイツ車とは異なるものだし、
仏車のもつ「人を快適にしよう」というもてなしとはまた違う居心地の良さもあります。

1967年のサーブ99に端を発し、900にステップアップしてから
エンジンが16Vになったりと細かい変更があったにせよ、
1993年まで基本的には同じクルマだったサーブ900。

乗れば古いです。ボディはヤワだし、ハンドリングはちょっとスリリング。
でも。少なくとも1987年前後の設計のままであろう(ieのは93年モデル)この
クラシックなクルマが見せる骨太な設計思想や機能性に
ノックアウトされてしまったieなのでした。



ベクトルは違うけど、シトロエン的でもある設計なのです。
そんな面白い部分は、このブログで書いていくことにしますね。



>>そんなこんなで、一時的に仏車を降りました。
この900にもいつまで乗るか...わかりませんが
(でも、気に入ったらはまってしまいそうです、いやはまります古いサーブ)、
これまで通りにご愛顧いただけますよう宜しくお願いいたします。


>>いやーもうエンジンかけるのが楽しくて...


イグニッションがシートとシートの間なんですねえ。
ここになった理由は、一般的には事故の際膝にキーがあたってケガをしないように、
という話もあるようですが、
正しくは?900の前身99の前の世代はそれまでコラムシフトだったのですが
リバースギアに入れないとキーが回らない機能があったそうで、
それが99でフロアシフトになったときもこの機能を活かすために
シフトノブと一緒にキーシリンダーも移ってきたのだそうな。
結果的には「航空機」ぽいので好きなのですが
このへんの話がサーブはweb上でも紙面媒体でも非常に少ないので困っています...。

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さよなら そしてありがとう。ルノー19。

2007-11-20 | ルノー19。
久しぶりの投稿、しかもいくつか前のエントリーで「まだ乗ります」、
って書いていたのにこんなご報告は残念なのですが。


標題の通り、ルノー19、手放しました。





自分の中で、究極的な一台でした。

日本国内における希少性。
なんでもないセダンを転がすというスタイル。
洗ってもキレイにならない外観。
ふんわり、しっとり、でも芯のある乗り味。
角がない操作性。
すばらしいハンドリング。
ただのOHC/1.7Lとは思えないトルクフルでフレキシブルなエンジン。
わずか車長4.2Mなのに、1クラス以上大きなクルマなみの室内空間とラゲッジ。
ジウジアーロ+ルノーデザインの、四角そうに見えて実は繊細な局面で
緻密に描かれたデザイン。
そして、何時間座り続けても、どんな姿勢でも受け入れる魔法のようなシート。
何でもない実用車に秘められた、すばらしい基本性能の高さ。
まさにルノー、まさにフランス車、そしてまさに欧州車でした。





たしかにトラブルは酷かった。
でもひととおり直して直して、安心して乗れるまでになった。


7月に車検取ったばかりでした。



...R19とは、2年半、過ごしました。
短いような、長いようなの時間。
ルノー...しかもギザルノーの良さを身体の芯まで教えてくれました。
やっぱりルノーはイイ!
菱形の菌は強力。すっかり感染してしまいました...

なんでもないクルマ。
たしかにそうでした。でも、ほんとうに何度も何度も驚かされた。
疲れない。疲れていて乗っても苦にならない。
何百キロ連続で走っても腰も肩も目も、どこも悲鳴をあげない。

それがたかだか下は1.4Lからあるような、ゴルフクラスの一台に秘められていたのです。
ハイテク武装なんかいらない。真のコンフォート。それを、R19は持っていたように
思います。





それを、なぜ手放そうと思ったのか?






もちろん飽きたとか
嫌になったとか
そういうマイナスな事象で降りたのではないのです。




...「いまが最後」
このキーワードでずいぶんクルマ買い換えてきましたが(大汗
次のクルマを手に入れるには条件が良かった。
それは、以前より常に欲しいクルマの筆頭にあり、
でも買ったらきっとフランス車に戻りたくなると思い
これまでも何度と無く躊躇してきた一台でした。



そのクルマとは。
ある意味、昔日のシトロエンのような機能性が産む特異性のあるデザイン。
設計が古いクルマを無理矢理アップデートしてきたので、
基本骨格は古い(ieはこれがエンジンしかり、クルマしかり大好き)。

でも生産中止からすでに14年、
流通しているのはいいか悪いかの両極端。
買いたいけど、お金があるわけじゃない。
でも壊れるのもいやだし、日常で使いきりたい。
そうなると、安いのに手を出したくない。

だけど、見つけてしまった!
いつもお世話になっている店で、
信じられないほどのコンディションで、
信じられない価格。
これは、買うしかないでしょう...。



次のクルマに関しては、また後日ご紹介します。
ヒントは、これ。




って、もう分かっちゃいます...?(汗
そうです、左上飛んでる37VIGGENでS(以下略




>>ガジュマル君 ごめんなさい。免許を取るまで、乗っているつもりでした。
でも、こんなことになってしまって。がっかりされていたら、ほんとうにごめんなさい。


>>ちなみにR19は、知る人ぞ知るルノーの修理で有名なTモーターサービスさんに
引き取られていきました。
手放すとき、廃車にだけはしたくなかった。
いくつか思い当たるところをあたったのですが、
哀しいかなこの国では値段も価値もないR19の真価を認めていただいたのがTさんでした。
ありがとうございます。
Tさんのところでしたら、きっとどんなカタチであれ、R19はきっと大切に
乗っていただけると思います。
コメント (25)
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