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イラストレーター/ライター遠藤イヅルの困った嗜好をばらす場所

【セダン蒐集癖】Vol.282 VWらしいド級高級車、その名はフェートン

2012-08-20 | セダン蒐集癖。



VWといえば、ビートルやゴルフといった「大衆実用車」という印象が強いのですが、
最近ではそのゴルフクラス...ゴルフV(5)くらいから「プレミアム化」が進み、
実用車でありながらも高級感あふれる内外装を持つようになってきました。


ところが、やはりそんなVWといえども、
高級車路線化の一環として高級車をラインアップに持ちたかったのでしょう。
当時のフォルクスワーゲンの取締役会会長、フェルディナント・ピエヒ自身の旗振りで、
VWはDセグメントのパサート=ライバルはBMW3シリーズやメルセデスCクラスの存在では物足りず、
さらに上級の「Fセグメント=メルセデスSクラスや同門アウディA8など」の市場を狙った
意欲的な最上級車種を2002年のジュネーブショーに登場させます。


それが、このフェートンです。

VWの最上級車種であり、同社の象徴でもあるフェートンは、
ドイツ・ドレスデンにあるグレーゼル・ マヌファクテュア(Die Glaserne Manufaktur=ガラスの工場)」と称される
製造工程が外から見える構造のフェートン専用工場で1日に30台程度が製造されているとされます。



ガラスの工場 ベントレーも生産したことがあるとか


直訳すると「国民車」となるVWがド級の高級車を出す、という矛盾のようなものを
2002年当時も多くの人が感じたとは思いますが、この車の存在意義は
「新しく生まれた『豊かな大衆』」に向けた高級車」というスタンスだったようで、
実にVWらしい考え方だなと思わせますよね。


Fセグメントに属するだけあってフェートンのボディサイズは
全長5055×全幅1903×全高1450mm、ホイールベース2881mmという堂々たるもの。
太いCピラーが特徴的でしたが、
でも全体的にはデザイン的には押し出しは強くはありません。


エンジンは、アウディA8やベントレー・コンチネンタルシリーズにも搭載される
6LのW12、5L V10TDI、4.2L V8、3.2L V型6気筒エンジン、3.0L V6TDIなど豊富に用意され、
駆動方式はV6搭載車以外には「4モーション」(VW自製のフルタイム4WD)が標準となっています。


ところが、このフェートン、残念なことに本国ドイツをもってしても販売は芳しくなく、
頼みの綱とも言えた米国市場からも2006年には撤退、
日本には正規で導入されませんでした。


ただ、2012年もVWのラインナップでは変わらず存続しており、
内外装も最近のVWファミリーに準じたものにアップデートされている(フロントセクションはほぼ一新)ので、
10年前に登場した車には見えません。

現在、フェートンは欧州やアメリカでの販売よりも、VWにとっても大事な市場である
中国市場における富裕層をターゲットにすることにしたようで、
北京や広州にはなんとフェートン専用店舗もあるというチカラの入れよう!
それなりの成功を収めるに至っているようです。



中国向けプレスの写真。ナンバーが中国ナンバー!



>>それにしても日本未導入のフェートン、並行で入っていたのですね。
見かけたとき、感動して思わず「すっげー、フェートーン」って声だしちゃいました(汗

>>フェートンは「新しく生まれた豊かな大衆」に向けたクルマであるならば、
まさにいま、中国市場がメインで販売されていることに大きな意味があるように思えてなりません。
それにしても2002年当時、このクルマが中国で成功することを想像できた人はいたでしょうか(^^;

コメント (8)
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