Retrospective...

イラストレーター/ライター遠藤イヅルの困った嗜好をばらす場所

【くるま】外車、夢の80年代(その2)

2012-04-03 | くるま。




「まだ外車が外車だったころ」...1980年代の雑誌を見て涙を流そうという記事、
「外車、夢の80年代(その1)」の、ようやく続きでございます。
お待たせいたしました(汗


ちなみに、1984年のCG誌の外車特集の中身が渋すぎて、
明らかに一般向けじゃないそのラインナップに泣くという記事もその前にあったりします(^^;



さてさて、前回同様、ネタ本は、「ル・ボラン」の1983年6月号。
「その2」では、チラ見せしたもう一個の素敵な特集、「ヨーロピアン・ミニ・ワールド」をお送りいたしましょう。

この特集の前口上は、
「ライバルに差をつけたい!
これはカー・マニア共通の夢である。(中略)自己主張をさらに満足させたいのなら、
個性豊かなヨーロピアン・ミニに限る(後略)。」





で、内容は、1983年当時の欧州小型車11台を集めた比較試乗記事になってるのですが、
その11台は、以下。


・Fiat PANDA 45
・Innocenti Mini
・BL Mini 1000
・Autobianchi A112 Abarth
・Renault 4 GTL
・BL MG Metro 1300
・Renault 5 GTL
・Citroen Visa GT
・Lancia Delta 1500
・VW Golf Ci
・VW Jetta Ci



ご覧のように、クラスはバラバラではありますけど、
イタリア、イギリス、フランス、ドイツ各国の、
魅力的で、いまよりもキャラクタが濃厚で個性的、お国の違いが顕著に現れていた頃の
クルマたちを11台、うまい具合に集めてます。



一応、ページ構成的には3セグメントに分けて説明してあるので、早速見てみましょう...。


そのひとつめ...。




ご覧の通り、まずはパンダ、A112、ミニ、イノチェンティミニの今で言う、Aセグメント対決です。

パンダは「45」ですので、まだOHVで、リアにオメガアクスルも持たない初期型。
それにしても平面ガラス、ハンモックシートなど、
ミニマムな仕様で最高のパッケージやデザインを持ったパンダは、
いまもって魅力いっぱいですね。
鉄板グリルの初期モデルは、ジウジアーロの描いたパンダの設計思想をより濃く出していますよね。

ミニ1000も、クラシックなスタイルでも、初代ミニ末期の「クラシカル風」でもなく、
シトロエン2CVクラブのような「中途半端な近代化」が施された頃会いで、
そういうところが80年代ラヴな自分には萌え萌えですねえ(^^

イノチェンティミニは、非デトマゾ!すごくクリーン、すごくプレーン、
すごくモダン。さすがガンディーニだと唸らずにはいられません。
この写真見て、ますます欲しくなってしまいました(って、どこにも売ってないよw)。
ちなみに、外観はこんなにモダンですが、中身は「あの」ミニのままなんですよ。
エンジンは最初はミニのA型そのもの、998ccと1275ccを積んでいたのですが、
82年にはダイハツ・シャレードの3気筒に変更されました。

なお81年にマイナーチェンジされる前は、もっとプレーンで質素なデザインでした。




A112はジュニアだとなおよかったんでしょうが、ここはイタリアン・スポーツとしての
参戦ということになっているようです。
でもいまや貴重になった、ヘッドライト下にターンシグナルランプがついた後期型の「初期顔」ですね。
日本に入っていたのは1050ccの70HP版だったでしょうか。
ああ、いいなあ、サソリ飼ってみたい、一生に一度は。



続いてふたつめ。



ルノー4GTL、MGメトロ、ルノー5GTL、シトロエンVISA GTの4台で、いうならばBセグメントにあたりますでしょうか。

ルノー4GTLは2CVと並ぶフランス濃縮袋のひとつですね。
ルノー4(R4)は、ルノーらしさ・ルノーの良さがたっぷり詰まった、良い意味での旧さを持っています。
濃厚なルノーの味、そしてフランス車の味もこれでもかと押し寄せてくるのです。
しかもそれが「我慢しなければならない」ほどの年式の古いクルマではなく、
80年代後半の「ちょっと、古い、クルマ」のレベルで運転できます。
そして実用的な車体、別段日常では不満のないパワー、トドメは1960年代そのままのスタイル。
R4は、そんな魅力で一杯なのです。
友人が乗っていたので、ずいぶん自由に使わせてもらえました。いい車だったなあ。

・のちに日本でもスマッシュヒットとなったローバー114のもとにもなった、MGメトロ1300です。
カンタンに言うと、「あの」ミニの後継車として1980年に登場しました。
メトロには、998ccと1275ccのエンジン・前輪駆動・4速トランスミッションとサスペンションなど、
Miniの機構が一部受け継がれ、サスペンションはアレグロと同じ「ハイドラガス」が採用されています。
オースチン・MGともに「メトロ」という名前でしたが、MG版はさすがに「MG」だけあって、
スポーティな味付けが施されていました。

・俗に「縦サンク」と呼ばれる、初代ルノー5のGTLです。
外観は近代的ですが実際には中身はR4のままで、縦置きのFF、左右で長さの違うホイールベースを持ちます。
初代サンクのデザインはいまもって傑作の誉れ高いものですね。
可愛いヘッドライト、短いフロントオーバーハング、得も言われぬリアのスタイル、
細くてハイトの高いミシュラン、3穴の貧相な鉄チンホイール...。
乗れば柔らかいサスが生む、優雅な大ロール。回しても回してもハンドルが切れない、
すっごくスローなステアリングレシオ。古い、ふる~いフランス車の味(^^


なつかしいなー。遠出がほんとに楽なクルマでした。


・そして、キターーー、シトロエンVISA GT
この本は1983年のものなので、1982年に日本に西武の手で導入されたVISA GTは、最新のクルマであったのでしょうね。
日本には最上位グレードのGTだけが入りましたが、ほんとは素のモデルも正規輸入してほしかったですね。
ちなみにこの本では、
「フレキシビリティの高いエンジンによる動力性能、乗り心地を重視したハンドリング、
居住性の良い室内を確保したこのビザGTは、すべての性能が高い次元で調和している優れた車」
と、ベタぼめされてます(汗



最後に、みっつめ。




Cセグメントに相当する、ランチアデルタ1500、VWゴルフCi、ジェッタCiが、この特集のトリをつとめます。

ランチア デルタ1500、いいですねえ。そう、非スポーツモデル、非HF、非インテグラーレですよ。
これもまたジウジアーロ先生の作品ですね。オーバーフェンダーのないプレーンなスタイルは、
スケッチそのまま飛び出して来たようなイタリアン・モダン・デザイン!
なおこの特集のクルマは、3ATです。イタ車なんでMTで乗りたいですけど、
こういうクルマをオートマでタラーンって流すのも悪くないですね(^^;
1500のエンジンは、DOHCではなく、リトモ用のふつうのOHCです。そんなとこも、なんだかいいのだ。




ゴルフはまだ「1」のころ。
派生セダンであるジェッタも含め、この当時からすでに「スタンダード」としてトータルで高い完成度を誇っている、
と評されています。
「市街地走行から高速クルージングまでをこなすフレキシブルなエンジン、
剛性の高い足回りによる安定した走りっぷりが光る。
装飾やデザイン面でこれといった目玉は無いが、昨日と実用性、動力性能、価格を含め、
日常の足として全体にバランスの取れた仕上がりは、世界に通じるベスト・セラーカーであることを再認識させられる」
とのことで、いつまでも、いつの時代も、「6」になった今でも、ゴルフはこのクラスのベンチマークなのですね。
それにしても、華の無いこの実用性を突き詰めたスタイル、これこそ「実用車のカガミ」。
一瞬、直線定規だけで引かれたようなデザインですが、実はどこもまっすぐなところがない。
ジウジアーロ先生の仕事の凄さを、知らされますね...。


15年くらい前に描いたゴルフ1。



>>2012年になった今、ここに並ぶ11台は、30年くらい前のクルマたちになるのですが、
古いといえば古いし、でも実際自分はVISAを日常に使っています(夏以外はw)ように、
クラシックというわけでもない。
それでいて、各国、各メーカーの特徴的な設計、個性的なスタイル、
独特の存在感はまだまだ濃密にあった、そんないい時代です。

>>そして、いま。これらの「らしさ」は薄くなったとは言うものの、
それでもフィアットはフィアットだし、ルノーはルノーだし、
ランチアはランチアだし、シトロエンはシトロエンなんですね。
まあ...ミニはBMWになってしまいましたが、でもやっぱり、ミニらしいといえばらしい。
あ、シトロエンもVISAとDS3が同じメーカーのクルマとは...いや、そんなことは、無いですよね。

>>逆にいえば、ここまでの個性があったからこそ外車はガイシャだったわけだし、
現在は、それがないからこそ、ガイシャといしてではなく、
ふつうの選択肢の俎上に乗ることが出来ているのでしょうね。


コメント (11)
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【セダン蒐集癖】Vol.280 古典と近代との境 6代めグロリア(430型)

2012-04-01 | セダン蒐集癖。




えらく間隔が開いてしまってすみません...。

ということで、今日は前回の続き(【くるま】外車、夢の80年代(その1))ではなく、
これまた久しぶりに、「セダン蒐集癖(しゅうしゅうへき)」をお送りいたします。


今日の一台は、6代めグロリア、430型です。後期の2L、SGLでしょうか。
懐かしいですね。430型は、1979年~1983年まで製造されていました。

この430の前モデルの330型は、メッキバンパーがボディに合わせて丸目に造作されていたり、
立体的なグリル造形だったり、抑揚の大きなアメリカン調のデザインで、
「さすがに古いなあ(悪いと言う意味では無い)」って思うのですけど、
明らかに直線基調の430型は、新しい・古いでいえば「新しくはない」のでしょうが、
でも、別段、ものすごく古いデザインでは無い、と思います。

話は脱線しますが、そう思うと、1980年代に入るか入らないかのあたりに、その「古典」と「近代」の境目があるように思うのです。
現に、80年代初頭デビューのクルマは、ディティールこそ今ではもう見られないものが多い
(独立した黒いウレタンバンパー・サイドモール、というより最近はもはやバンパーの黒モールなど)にせよ、
純然たる70年代登場の車に対して、現代から見ても「ものすごく古い」感じはしないですよね...って僕だけかしら。


まあ、何はともあれ、この430型セドグロも、デザイン的視点で見れば古いけど、あまり車に詳しくない方が見れば、
へえ、30年も前のなんだ、意外!って思うかもしれないようなスタイル・ディティール・デザインだと思います
(内装は古いんですけどもね...)。

この車が出た当時からもちろん、車好きだったieなのですが、もう「こんなの売られたらいいな」っていう車の絵も描いていて、
そのころの絵を思い返すと、それまでに比べて明らかな変化を感じていたのです。

その変化とは
・「窓回りからメッキが減った」
・「バンパーが黒になった」
・「直線的な形になった」
でした。
つまり、小学生の自分にも、このころの車のデザインの変化は、衝撃的なこととして受け止められたのです。


とくに、ie少年、この430と同時期...1981年前後に出た車...たとえば
殊更430のマイチェン後のボディ同色バンパー+黒モール、
シルビア・ガゼールS110型ハッチのマイチェン後のボディ同色バンパー+端部だけ黒モール、
ZのS130の...以下略(笑)などには、、さらにさらに、ほんとに衝撃を受けるほど「かっこいい」って思ったのです。
ieの黒モール好きは、このころ刷り込まれたのかもしれません。



そうこれよこれ...FRコロナのボディ同色にも感動したなあ。変な子供だったんだなw




>>おおっと、430の話ではなく、脱線したまま終わってしまった(汗
このころのクルマらしく、デザインだけではなく電子デバイスなどの発達もエンジンパワーの増加も目覚ましく、
ECCSによるエンジン制御、日本初のターボエンジン搭載、
オートマもそれまでの古い3速ATに対して、途中から電子制御4速ATを採用するなど、
技術の日産を鼓舞するような、技術的エポックも多い車でした。

>>そう、この時代のターボと言えばスカイライン(ジャパン)を思い出すのですが、
実はグロリアが初めて。そして、このL20ETエンジンは、むろんスカイラインにも登載されることに。
こうしてしばらく、「ターボの日産」は、「ツインカムのトヨタ」へと対抗していくのでした。

>>2000ccターボの、ジャックニクラウスバージョンとか懐かしいですね。
バージョンといいつつ限定車ではなく、「カタログモデルで1つのグレード」だったんですが、
セドリックには無くグロリア専用だったあたりが、当時からプリンスびいきだったieを喜ばせました(笑
あれ、そういやY30にもジャックニクラウス仕様ってありましたっけ...。

>>こういう「古典」と「近代」の線引き、鉄道にもあります。
鉄道の場合、昭和30年代前半あたりではないかな?
このころに出た車両はまだ各地で見ることが出来ますが、たしかにいまの電車に比べれば相対的に古く見えますけど、
例を国鉄101系(昭和32年登場)に取れば、その数年前までは当たり前だった木造内装の73系とは各段の進歩ですから、
後者に至ってはどんな人が見ても「古いね」って思うのではないでしょうか。


>>ちなみに、奥のほうに写っている「着ぐるみ」は、これです...(笑

コメント (14)
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