肩の凝らないスローライフ

ようこそtenchanワールドへ。「一日一笑」をモットーに・・・日常生活の小さなことを笑いに変えるtenchanの雑記帳

ホームシック

2010-09-09 12:01:08 | 自分のこと・思い出
大学時代、下宿を始めた頃
上京した同郷の友人とはなるべく距離を置いて付き合うようにしていた。

完全に断ち切ろうとしたわけではない、
ただ、四六時中連絡を取ってべったりするのは止めよう、としていたのだ。

どういうわけだか、そうしなければならないと思い込んでいた。

多分、知らない場所で生きていくのに、
岐阜出身の人といつまでもつるんでいてはいけない、
甘えた心は捨てなきゃ、と、
かなり突っ張った気持ちでいたのであろう。

高校のクラスメートだったKさんは、
同じ大学に入った数少ない女子。

入学後は、キャンパス内で会えば立ち話もしたが、
お互い密に連絡をすることはなかった。

彼女もきっと、私と同じように一人で頑張ろうと思っていたに違いない。



夏休みになり、実家に戻って家族と過ごした。

そろそろ部活も始まるし学校の準備もあるから、
と、9月の始めに下宿に戻った。

6畳一間の殺風景な部屋。

夕暮れ時、言いようもない寂しさが突然襲ってきて
涙が出そうになった。

半年前、上京の準備を手伝ってくれた母が
「じゃあ、もう帰るからね。」
と、部屋を出て行ったときも、
こんな気持ちにはならなかったのに。

これが、ホームシックなんだ。
私、家が恋しいんだ。

滅多に電話はしないけど
家にかけちゃおうかな、
そう思って電話機を眺めていると
突然ベルが鳴った。

「もしもし」

泣き声が聞こえる。

Kさんだ。

「もしもしKさん、どうしたの?大丈夫?」

でも、Kさんは泣きじゃくるばかり。

きっと、岐阜から戻ったばかりで、
ホームシックになっちゃたんだ。

気持ちが手に取るように分かった。

「いい?
明日、授業始まる前に、学校の玄関ホールで待ってるから来てね。」

翌朝、ホールの自販機で紙コップ入りのコーヒーを買い、
ベンチに腰掛けて彼女を待った。

だが、授業が始まる5分前になっても彼女は姿を現さない。

2分前、遅刻しそうなので教室に向かった。

どうしたのかな?

心配になってきた。

お昼休み、
学食へ行く前に彼女の教室の前を通ってみた。
すると、友達と笑いながら談笑するKさんがいるではないか。

「Kさん、どうしたの?心配して待ってたのに。」

「ああ、ごめんね。私、もう大丈夫だから。」

彼女はそう言うと、友達と去っていってしまった。

その一件があってから、
なんとなくお互いに気まずくなって
挨拶以外、話をすることはなくなってしまった。


あの夜、泣いて電話をかけてきたのに
翌日会ったときは、ケロッとして、
まるで「私、電話なんてしたかしら?」とでも言わんばかりの明るい笑顔で
「もう大丈夫だから」と言った彼女。
彼女の真意が、私には未だに掴めないでいる。


その後、Kさんは東京で就職、
私はUターン就職だったので
卒業してから今まで、一度も彼女には会っていない。