まったく隣りに住んでる娘っ子は
油断も隙もありゃしない。
あたいはね、3匹の子猫達にひもじい思いをさせないように
一日中街を歩き回って食べ物探してるんだよ。
うちの子らには、
「おかあちゃんが出かけてる間、表に出るんじゃないよ。」
って言い聞かせてる。
だけど、チビ達は日に日に大きくなっていくし
あの子ら、興味の塊みたいなモンだから、
あたいのいないときに、隙あれば外の世界を覗こうとしている。
いずれは独り立ちしていくんだから、
世の中のことを覚えなきゃならないんだけど、
物事には段階ってもんがある。
いきなり通りに躍り出ちゃ、車に轢かれちまうからね。
外歩きはもう少し大きくなってからじゃないと。
この空き屋に流れてきたのは、いつだったかねぇ~。
あたいは生まれが野良だから
餌を探したり住処を見つけたりする、「生きる嗅覚」みたいなもんが備わってる。
ここは表通りから外れてるし人目にも付かない。
赤ん坊を育てるにはもってこいの場所だったってわけさ。
そうは言っても、いつまでも安全な場所なんてものはない。
この間なんて、向こう見ずな一匹が
ひょいっと外に出て、塀の上に上がっちまったんだよ。
それを見たもう一匹が、その後を追っかけていった。
二匹になると怖い物知らずになるんだろう。
そのまんま、隣の家の裏庭に飛び降りた。
勢いで飛び降りた・・・・・まではよかったが、
今度は帰り道が分からなくなった。
仕方がないからしばらく倉庫の下に潜むことにした。
そのうちお腹が空いて「ミャーミャー」鳴くもんだから、
隣りに住む娘っ子が声を聞きつけて探しに来たんだ。
普段から
「お前らは野良なんだから、人前でミャーミャー鳴くんじゃない、みっともない。」
って言い聞かせてんだけど、
親は帰ってこないし空腹だし、余計不安になったんだろう。
娘っ子は鳴き声の出所が倉庫の下だと分かると、
母親を呼びに行った。
怖かったろうね~あの子ら。
人間の大人の顔が倉庫の下からにゅーっと見えてきたんだから。
二匹は猛スピードで倉庫の下から飛び出した。
娘っ子が「キャー」と叫ぶ。
捕まってたまるか!
どっちへ行っていいか分からぬまま、
とりあえず全速力て走った。
あたいが運良く戻ってきたのは
ちょうどその時だった。
空き屋の戸袋に待たせておいた我が子が
二匹いないんだ。
慌てて大声で呼んだが返事がない。
そうこうするうちに、隣りん家の裏庭を走り回るあの子らを見つけた。
「あんたたち、何やってんの。おかあちゃん、帰ってきたよ。」
塀の隙間からこっち側へくぐらせて、
ようやく戸袋の裏側へ身を隠させたってわけだ。
聞いた話によると、
人間には、せっかく生んだかわいい赤ん坊を
虐待したり世話しなかったりする奴がいるんだって?
そんな恐ろしい生き物に捕まったら、
一体何されるか分かったもんじゃない。
無事にあたいの手元に連れ戻せてよかったよ。
でもって、
その日のうちに、あたいはこの空き屋を引き払うことにした。
こんな危ないところで子育てなんて出来ないからね。
道すがら、子猫たちが空き屋を振り返りながら不安気に言うんだ。
「おかあちゃん、今日から宿なしになっちまったね。」
だからあたいは、高笑いしながらこう答えてやったよ。
「心配したことないさ。あたいらは生まれながらの野良だよ。
家なんて最初からないのが当たり前じゃないか。」
以前記事にした三匹の子猫ちゃんからインスピレーションを得て
親猫の気持ちを短編小説風に書いてみました。
油断も隙もありゃしない。
あたいはね、3匹の子猫達にひもじい思いをさせないように
一日中街を歩き回って食べ物探してるんだよ。
うちの子らには、
「おかあちゃんが出かけてる間、表に出るんじゃないよ。」
って言い聞かせてる。
だけど、チビ達は日に日に大きくなっていくし
あの子ら、興味の塊みたいなモンだから、
あたいのいないときに、隙あれば外の世界を覗こうとしている。
いずれは独り立ちしていくんだから、
世の中のことを覚えなきゃならないんだけど、
物事には段階ってもんがある。
いきなり通りに躍り出ちゃ、車に轢かれちまうからね。
外歩きはもう少し大きくなってからじゃないと。
この空き屋に流れてきたのは、いつだったかねぇ~。
あたいは生まれが野良だから
餌を探したり住処を見つけたりする、「生きる嗅覚」みたいなもんが備わってる。
ここは表通りから外れてるし人目にも付かない。
赤ん坊を育てるにはもってこいの場所だったってわけさ。
そうは言っても、いつまでも安全な場所なんてものはない。
この間なんて、向こう見ずな一匹が
ひょいっと外に出て、塀の上に上がっちまったんだよ。
それを見たもう一匹が、その後を追っかけていった。
二匹になると怖い物知らずになるんだろう。
そのまんま、隣の家の裏庭に飛び降りた。
勢いで飛び降りた・・・・・まではよかったが、
今度は帰り道が分からなくなった。
仕方がないからしばらく倉庫の下に潜むことにした。
そのうちお腹が空いて「ミャーミャー」鳴くもんだから、
隣りに住む娘っ子が声を聞きつけて探しに来たんだ。
普段から
「お前らは野良なんだから、人前でミャーミャー鳴くんじゃない、みっともない。」
って言い聞かせてんだけど、
親は帰ってこないし空腹だし、余計不安になったんだろう。
娘っ子は鳴き声の出所が倉庫の下だと分かると、
母親を呼びに行った。
怖かったろうね~あの子ら。
人間の大人の顔が倉庫の下からにゅーっと見えてきたんだから。
二匹は猛スピードで倉庫の下から飛び出した。
娘っ子が「キャー」と叫ぶ。
捕まってたまるか!
どっちへ行っていいか分からぬまま、
とりあえず全速力て走った。
あたいが運良く戻ってきたのは
ちょうどその時だった。
空き屋の戸袋に待たせておいた我が子が
二匹いないんだ。
慌てて大声で呼んだが返事がない。
そうこうするうちに、隣りん家の裏庭を走り回るあの子らを見つけた。
「あんたたち、何やってんの。おかあちゃん、帰ってきたよ。」
塀の隙間からこっち側へくぐらせて、
ようやく戸袋の裏側へ身を隠させたってわけだ。
聞いた話によると、
人間には、せっかく生んだかわいい赤ん坊を
虐待したり世話しなかったりする奴がいるんだって?
そんな恐ろしい生き物に捕まったら、
一体何されるか分かったもんじゃない。
無事にあたいの手元に連れ戻せてよかったよ。
でもって、
その日のうちに、あたいはこの空き屋を引き払うことにした。
こんな危ないところで子育てなんて出来ないからね。
道すがら、子猫たちが空き屋を振り返りながら不安気に言うんだ。
「おかあちゃん、今日から宿なしになっちまったね。」
だからあたいは、高笑いしながらこう答えてやったよ。
「心配したことないさ。あたいらは生まれながらの野良だよ。
家なんて最初からないのが当たり前じゃないか。」
以前記事にした三匹の子猫ちゃんからインスピレーションを得て
親猫の気持ちを短編小説風に書いてみました。