ホワイトデーののことを引き合いにした記事こちらで
クッキーを手作りしてお返しにしていたK課長の奥様の話をしたが、
今度は間逆なタイプの奥様を持つ、Y氏の話を。
Y氏は、有名私立大の出身で入行5年目、融資担当の優秀な若手行員だった。
1年ほど前に、
学生時代から付き合っていた音大出身の彼女と結婚したばかりだ。
「うちの奥さん、F音大なんだ。
マンション暮らしなんだけど、
奥さんが『グランドピアノも持ってきたい。』って言うから、
リビングに置いてるんだよ。」
そこには、「狭くて大変」という悲壮感は全く感じられない。
むしろ、妻の希望を叶えてあげられたという男の満足感が漂っていた。
そして、
「うちの奥さん、美人なんだ~。」
と、こちらが聞いてもいないのに、
目尻を下げながら得意そうに話してくれた。
さらに、
定期券に入れてある奥様の写真を
「ほらね~。」
と、頼んでもないのに見せてくれるのだった。
入行して間もない頃、先輩から
「Y氏は新婚さんで、奥さんのことをいつも自慢するから
適当に話合わせておいた方がいいよ。」
と、忠告されていたが
本当にその通りだった。
こんな幸せなY氏だが、
彼にはとても大きな悩みがあったのだ。
それは、
彼の愛する、とてもきれいな奥様が
毎日銀行に電話をかけてくることだった。
電話がかかるのは、大抵、お昼休み前の11時頃だった。
「もしもし、Yですが、いつもお世話になっております。
主人おりますでしょうか?」
甘ったるく可愛らしい声。
「しばらくお待ち下さい。」
私たちは、すぐにY氏に取り次ぐ。
「ご自宅からお電話です。」
「ありがと。」
慌てた様子で電話を受け取るY氏。
横目でちらっとY氏のデスクを見ると、
下向き加減になり、真剣な顔で聞いている。
最初は、
何か深刻な問題でも起きたのかと思っていた。
でも、電話は毎日かかるのだ。
いくら何でもおかしい。
そのうち、事情通の先輩が色々教えてくれた。
実は、Y氏の奥様、関東の出身で、
生まれてこのかた、よその土地で暮らしたことがなかった。
夫の赴任先である名古屋市に来てまもなく、
お腹に赤ちゃんができたのだが、
マタニティー・ブルーになり、精神的に自立できなくなってしまったのだそうだ。
周りに友人もなく、頼れる人もいなくて
孤独に一日過ごす日々。
寂しさから夫に電話するしかなくなってしまったらしい。
それだけならいい。
夫が銀行の行事で出かけると、
女子行員との仲が怪しいと勘違いして
そんな事実は全くないのに、食ってかかってしまうようになったのだ。
夫だけでなく、女子行員にまで電話をかけてくる始末。
疑われた方は怒り心頭だった。
他にも、Y氏が奥様の両親に対して無礼な態度を取ったとか何とか、
何か見つけては、いちいち電話で不満をぶちまけていたらしい。
Y氏は仕事の合間にかかってくる奥様からの電話を
無視することなく、実に忍耐強く、1時間くらい聞いていたのだ。
上司もそのうち気付き、何度か注意したらしいが、
奥様の電話はずっと続いていた。
Y氏はしばらくして転勤になったが、
あの奥様を抱えて、これから先どうやって生きていったのであろう?
時は移り、今や小学生まで携帯を持つようになった。
Y氏の奥様は、他人に気兼ねすることなく
愛する夫に電話&メール攻撃を毎日しかけているのだろうか?
クッキーを手作りしてお返しにしていたK課長の奥様の話をしたが、
今度は間逆なタイプの奥様を持つ、Y氏の話を。
Y氏は、有名私立大の出身で入行5年目、融資担当の優秀な若手行員だった。
1年ほど前に、
学生時代から付き合っていた音大出身の彼女と結婚したばかりだ。
「うちの奥さん、F音大なんだ。
マンション暮らしなんだけど、
奥さんが『グランドピアノも持ってきたい。』って言うから、
リビングに置いてるんだよ。」
そこには、「狭くて大変」という悲壮感は全く感じられない。
むしろ、妻の希望を叶えてあげられたという男の満足感が漂っていた。
そして、
「うちの奥さん、美人なんだ~。」
と、こちらが聞いてもいないのに、
目尻を下げながら得意そうに話してくれた。
さらに、
定期券に入れてある奥様の写真を
「ほらね~。」
と、頼んでもないのに見せてくれるのだった。
入行して間もない頃、先輩から
「Y氏は新婚さんで、奥さんのことをいつも自慢するから
適当に話合わせておいた方がいいよ。」
と、忠告されていたが
本当にその通りだった。
こんな幸せなY氏だが、
彼にはとても大きな悩みがあったのだ。
それは、
彼の愛する、とてもきれいな奥様が
毎日銀行に電話をかけてくることだった。
電話がかかるのは、大抵、お昼休み前の11時頃だった。
「もしもし、Yですが、いつもお世話になっております。
主人おりますでしょうか?」
甘ったるく可愛らしい声。
「しばらくお待ち下さい。」
私たちは、すぐにY氏に取り次ぐ。
「ご自宅からお電話です。」
「ありがと。」
慌てた様子で電話を受け取るY氏。
横目でちらっとY氏のデスクを見ると、
下向き加減になり、真剣な顔で聞いている。
最初は、
何か深刻な問題でも起きたのかと思っていた。
でも、電話は毎日かかるのだ。
いくら何でもおかしい。
そのうち、事情通の先輩が色々教えてくれた。
実は、Y氏の奥様、関東の出身で、
生まれてこのかた、よその土地で暮らしたことがなかった。
夫の赴任先である名古屋市に来てまもなく、
お腹に赤ちゃんができたのだが、
マタニティー・ブルーになり、精神的に自立できなくなってしまったのだそうだ。
周りに友人もなく、頼れる人もいなくて
孤独に一日過ごす日々。
寂しさから夫に電話するしかなくなってしまったらしい。
それだけならいい。
夫が銀行の行事で出かけると、
女子行員との仲が怪しいと勘違いして
そんな事実は全くないのに、食ってかかってしまうようになったのだ。
夫だけでなく、女子行員にまで電話をかけてくる始末。
疑われた方は怒り心頭だった。
他にも、Y氏が奥様の両親に対して無礼な態度を取ったとか何とか、
何か見つけては、いちいち電話で不満をぶちまけていたらしい。
Y氏は仕事の合間にかかってくる奥様からの電話を
無視することなく、実に忍耐強く、1時間くらい聞いていたのだ。
上司もそのうち気付き、何度か注意したらしいが、
奥様の電話はずっと続いていた。
Y氏はしばらくして転勤になったが、
あの奥様を抱えて、これから先どうやって生きていったのであろう?
時は移り、今や小学生まで携帯を持つようになった。
Y氏の奥様は、他人に気兼ねすることなく
愛する夫に電話&メール攻撃を毎日しかけているのだろうか?