不意の名前

母が、急にテレビを見ていて、「この人、あの人に似てないかなぁ。」と、ある人の名前を言うんです。
それは、私の昔の知人で、母の知っている人でないのです。
その時は、聞き流したんですが、あとで考えたら、なんとも不思議な感覚になりました。

もう、その古い知人とは、18年ほど会っていないんです。
もう、結婚して子供でもいるんじゃない？　と、思うんですが、なんで、母がその名前を言ったのか、しかもフルネームで、です。
まあ、母は時々、勘違いする人なんです。

テレビに出ていた人は、野球の阪神の糸井選手に顔が似ていたんです。
それを、「伊藤〇〇さん。」と、呼ぶんです。
「い」しか、合ってないですよね。
勘違いも甚だしいのです。

もう名前を聞いても、簡単に思い出すことも出来なくて、長い時間かかって、「あの人の名前だ。」と、思い出すことが出来ました。
もう、会うことも無い人です。
それに、顔も忘れかけています。
よく思い出したなぁ。と、自分の記憶がまだ生きているのを褒めてあげたいところです。
不意の名前は、本当に不意で、一瞬、脳が遠くの世界に行ってしまった気がするんです。