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■ 歌は世につれ ~炭鉱のカナリア~

2024年3月1日、日経平均株価は3万9910円82銭で取り引きを終え、終値として史上最高値を更新しました。
でも、ぜんぜん好景気感ないけどね・・・。

でも、まぁ、そんなこともあるので、数曲追加してリニューアルUPしてみました。

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2023-09-23 UP

前例のないことなので、どういう影響が出るかはよくわからぬが、
もう、日本は後戻りのできないところまで、来てしまったのかもしれません。
こういう苛烈な時代に出てくる音楽が、どういうものになるかはもはや想像の域を超えています。

'90年代以降現在に至るまで、多様な文化で育ってきたいまの50~60歳代の世代は現役(第一線)としてもっともっとたくさんの名作を生み出せるチャンスがあったはず。
でも、時代に流されてか、勝ちパターンに安住してか、キンタロー飴的な安直な内容が時代を追うごとに増えていった。
それを棚に上げて過去の名作にすがるのはなんだか情けない気も。(自分も含めてですが・・・)

1990年までに前の世代が素晴らしい作品をたくさん残してくれて、その恵まれた環境で育ちながら、結局このていたらく??
社会に対する責任感も、自身のなりわいへの矜持もなく、忖度を常とし、ただ漫然と時を重ねて・・・。
つくづくいまの50~60歳代の罪(不作為だとしても)は重いと思う今日このごろ。

■ answer - 遥海/2020年5月20日On Sale

再生数わずか3.2万回。
個人的には、いまの日本で屈指の歌唱力かと。
聴く人が聴けば、素通りできないと思うが・・・。
こういう才能を埋もれさせてしまうのは、J-POP界にとっても不幸だと思う。

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2023/07/07 UP

「歌は世につれ 世は歌につれ」ということばがあります。
このところ1980年代の「シティ・ポップ」が再評価されているけど、あの音はあの時代でしか生み出せなかったと思う。
2006年くらいからセツナ系がメジャーになって、ボカロ曲も増えてきたけど、やっぱりこういう曲はこの時代でしか生み出せなかったと思う。
いま、このふたつの流れを聴き比べてみると、とても同じ国のPop Musicとは思えない。

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冷え込み、凋落、分断、閉塞感・・・、そんな言葉ばかりが目につくこの頃。
そこはかとなく感じていた日本の凋落を、ここ数年で多くの人々が逃れられない現実として実感したのではないでしょうか。

でも、まだまだ日本の底力は尽きていない(と思いたい)。

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最近、TVでやたらに聴くこの曲。↓

■ 夏のクラクション - 稲垣潤一/1983年7月21日On Sale

こんな余裕かましたオトナの歌が巷にあふれていた1980年代前半。


これまで書き散らかした記事をまとめるかたちで、1980年代前半からJ-POPの曲調の変遷を追ってみます。

■SPARKLE - 山下達郎/1982年1月21日On Sale(FOR YOU)

さらさらと乾いたカッティングギターに達郎のハイトーンが乗る爽快感あふれる名曲。
この時代を代表する曲調。

■ Summer Focus - Anri 杏里/1983年6月5日On Sale(Bi・Ki・Ni)

夏といえば杏里。ブライトでグルーヴ絡みのシーサイドチューン。

■ Fantasy - 中原めいこ/1982年12月21日On Sale(2時までのシンデレラ-FRIDAY MAGIC-)

中盤からのあふれる「グルーヴ」。
やっぱり、この時代の楽曲のキモは「グルーヴ」だと思う。

グルーヴ&ハイトーン (グルーヴってなに・・・?)

■ P・R・E・S・E・N・T - 松田聖子/1982年5月21日(Pineapple)

名盤『Pineapple』のA-1曲。作曲:来生たかお、編曲:大村雅朗。
初期の松田聖子の楽曲の多くは「シティ・ポップ」だった。

1980年代前半といえばサザン(初期サザン)なしには語れない。

■ 涙のアベニュー - サザンオールスターズ/1980年3月21日On Sale(タイニイ・バブルス)

暗喩や圧韻だらけ。行間で語る歌詞がオサレなサウンドに絶妙に乗っている。

サザンのセブンス曲

☆ユーミンの母性曲
1980年頃、迷い?があったとも語るユーミン。
そのを打開したのが1981年の「守ってあげたい」だと思う。
これはユーミンの「母性」を感じさせる曲だった。
ここからの数年間でリリースした「ずっとそばに」「ノーサイド」を合わせて、個人的にはユーミンの3大母性曲だと思っている。

■ 守ってあげたい/1981年6月21日On Sale

これカノン進行だよね。でもベタつかない。

■ ずっとそばに/1983年2月21日On Sale(REINCARNATION)

バックのインストのフレーズどりが神すぎる。個人的にはユーミン屈指の名曲。

ユーミンの名曲

たしかにこの時代(1980年代前半~中盤)、男性が同世代の女性に無意識的にでも「母性」を求める流れがあったのかもしれぬ。
それだけ女性サイドにも余裕があったのでは・・・。


(マキタスポーツ氏のコメント)-----------------------------
 POPSっていうのは、もう、すべからく、もう、パクリの歴史なんだよ。
 だって、みんなが大好きなものとかの共有財産をどのようかにしてカスタマイズして、その時代の大衆に当てていくってっていうことの作業をずっとやっているのが商業音楽としてのPOPSであって・・・。

 まぁ、(19)85年以降だと思いますけど、だんだんヒップホップとか、ああいうアートフォームが出てくるじゃないですか。
 そしたら結局、あの人達っていうのは、元ネタをどのようにかにして批評して編集していくっていうこととかが、当たりまえになっていく。
 だから、サンプリングとかが当たりまえになって以降のアーティスト、あるいはフリッ●ーズ・●ターとか、まぁ、小●田●吾さんとか、あの辺の人達になると、確信犯的に「元ネタはこれですよ」ってこととかも言っていく、ことになるんですね。
 要するに、「こういうマジックですけど、これ東急ハンズで1,000円ね」って言ってくマ●ー審司的な手の内を明かすっていうことが、1個あったんですよ。

 で、それ以前の(きわの?)アーティストだったんですよ、彼(佐野元春)は。
 だから充分編集マンとしていろんな要素とかをとり入れながら、自分のサウンドっていうのをつくってたし、アーティスト像とかもコントロールしてつくってた。
 つくってたんですけど、やっぱ基本的に言わないんですよ。
 だからのちのち、元ネタとかが当たりまえに検索できる時代になったときに、「佐野元春の元ネタは、(ブルース・スプリングスティーンの)『ハングリー・ハート』だ!」とか、鬼の首とったように言うけど(笑)、いゃ、佐野元春さん以前からもいろんなアーティストとかも、そんなこと当たりまえに・・・。
 「筒美京平さん見てみろ」ってな、話じゃないですか・・・。
 これは、ネガティブな要素も含むかもしらないけど、パクリであることをふまえた上で、これだけちゃんとしたものとかを、普遍性のあるものをつくり上げた、この曲がやっぱ素晴らしいんじゃないかと。
(コメントおわり)-----------------------------

あまりにも芯喰ったコメントなので、ながながと引用してしまいました。
筆者が思っていることを語り尽くしてくれている(笑)
あっ、それと、これ東京五輪のはるか前、おそらく2017年頃のオン・エアーですから念のため。

■ ハートビート - 佐野元春(小さなカサノバとナイチンゲールのバラッド) / 1981年2月25日On Sale(Heart Beat)/LIVE1983

パクリにせよなんにせよ、ここまでのオリジナリティや普遍性に昇華できる才能。
これが「アーティスト」なんだと思う。

『たまらなく、アーベイン』 ~1980年代前半の音楽の空気感~


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1984年以降、洋楽も邦楽も大きく変容したけど、日本の景気は絶好調でまだまだ弾んだ曲調が多かった。そして一億総中流のもとでの不倫ブーム?

■ 恋におちて -Fall in love- 小林明子(Covered)/1985年8月31日On Sale

「土曜の夜と日曜の 貴方がいつも欲しいから」
流麗なメロと歌詞のギャップがエグすぎる。

■ My Revolution - 渡辺美里/1986年1月22日On Sale

意表をつく転調。初期の小室サウンド。
ここから1990年代後半まで小室サウンドがJ-POPシーンを席捲する。

■ 世界でいちばん熱い夏 - プリンセス・プリンセス/1987年7月16日On Sale

圧倒的な躍動感。音楽の醍醐味はアンサンブルにあることを教えてくれる。
いまに至るまでプリプリを超えるガールズバンドはおそらく出ていない。

↓ CMとのコラボもハイレベルだった。



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音楽は「炭鉱のカナリア」ともいわれます。
これから向かう時代の空気感を、いちはやく曲調であらわすというのです。
確かに、思い当たるフシはあります。

■ 空から降りてくる LONELINESS - 杉山清貴/1989年5月17日On Sale(here & there)

「祭りのおわり感」がハンパじゃない、杉山清貴の名曲。

■ 瞳がほほえむから - 今井美樹/1989年11月8日On Sale

バブル崩壊直前のリリース&ヒット。
景況が悪化し、世相がすさむにつれてこういうやさしい曲想のヒット曲は少なくなっていく・・・。

■ ANNIVERSARY〜無限にCALLING YOU〜 - 松任谷由実

1989.06.28 Release 23th Single 「ANNIVERSARY〜無限にCALLING YOU〜」
バブル最盛期に、どうしてこういう内省的な歌がつくれたんだろう。

■ 最後のニュース - 井上陽水/1989年12月21日On Sale

1989年12月21日、バブル崩壊直前のリリース。
筑紫哲也さんも陽水にも、これから来る時代の先が見えていたのかもしれず・・・。

バブル崩壊直後(1991年)のテープリスト
バブル崩壊直後(1991年)、筆者が聴いていた曲です。(すべて洋楽ですが・・・)
メロディアスなレディ・ソウルやスムースジャズ、そしてAOR系の残党がメインでした。
邦楽では今井美樹や小室サウンドをよく聴いていた。

■ No Wasted Moments - Bill Champlin(1990年)



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バブル崩壊後の1990~1995年頃にかけてはメロディの綺麗なヒット曲が多く生まれた。

■ 揺れる想い - ZARD/ 1993年5月19日On Sale

一世を風靡した坂井泉水さんの透明で切ない歌声は唯一無二。
上位互換に成功したカバーはひとつたりとも聴いたことがない。

■ 渡良瀬橋 - 森高千里/1993年1月25日On Sale

いま聴いてもフックだらけの素晴らしいメロディ。
この曲は森高千里本人しか歌いこなせないと思う。

■ ただ泣きたくなるの - 国分友里恵/1995年On Sale

1994年中山美穂のヒット曲のオリジナルテイク。

☆シブヤ系
■ 東京は夜の七時 - PIZZICATO FIVE /1993年12月1日On Sale

洋楽の影響を隠さなかった最後のムーブメントでは?
個人的には思わせぶりなあざとさが鼻についてあまり好きなシーンではなかったけど、この曲はよくできている。
当時の都心のオサレ感が表現されたクールなアイテム。

1996年頃まで、バブルの再来はなかったものの景況の落ち込みはそこまで深刻ではなく、曲調もそのような世相を反映していた。

■ ら・ら・ら - 大黒摩季/1995年2月20日On Sale

曲調も歌詞にも余裕が感じられる。

■ Don't wanna cry - 安室奈美恵/ 1996年3月13日On Sale

ビートとメロのバランスがいい時代でもあった。

■ アジアの純真 - PUFFY/1996年5月13日On Sale

井上陽水&奥田民生という才能が仕掛けたテクニカル・チューン。
抜群のインパクトで売れるべくして売れた。

■ LOVE BRACE - 華原朋美/1996年7月22日On Sale

キワどいくらいにフェミニンなイメージを打ち出していたこの頃の華原朋美。
いま聴き返してみるとエンディング感がハンパない。

そして、↓ が1997年1月1日On Sale。
■ YOU ARE THE ONE - TK presents こねっと

こういうコラボは2000年代に入って影をひそめたと思う。
この曲もまた終末感を帯びている。

1990年代初頭にバブルは崩壊したけど、1996年頃まではなんとか景気は維持していて、世間の空気もさほど悪くはなかった。
(ただしロスジェネ世代は、バブル崩壊後の1991年前後ごろからの約10年間に就職活動を行っていた世代とされる。)

一般に、日本が本格的な凋落を始めるのは1997年あたりとされているので、この曲たちはそのぎりぎりのところで世に出されている。

小室氏はこれから向かう日本の行き先を感じとっていたのでは?

■ HOWEVER - GLAY/1997年8月6日On Sale

映像も含めて、あとから振り返ってみると暗示的な歌だった。

■ Over and Over - Every Little Thing/1999年1月27日On Sale

世紀末にものされた、凜とした透明感あふれる名曲。
すでに歌詞に「しがない世の中」という言葉が入ってきている。

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2000年代に入ると日本経済の変調はいよいよ顕在化し、曲調にも影を落とすようになる。

■ SEASONS - 浜崎あゆみ/2000年6月7日On Sale

のちの「セツナ系」のはしりともいえる曲調。

■ 流星群 - 鬼束ちひろ/2002年2月6日On Sale

鬼束ちひろのキャラは不確実な時代の象徴だった。

■ Endless Story - Yuna Ito/2005年9月7日On Sale

節々にただよう諸行無常感。

■ 三日月 - 絢香/2006年9月27日On Sale

”太陽”や”サンシャイン”ではなく、”月”がモチーフとなっている。
「つながっている」「強くなる」といった2000年代以降のパワーワードが入ってきている。

↓ こういうポジティブなのもあったけどね。
■ 何度でも - DREAMS COME TRUE/2005年2月16日On Sale


■ 天体観測 - BUMP OF CHICKEN/2001年3月14日On Sale

タテノリ、ストロークギター、2~3キーのわかりやすいサビ。
コピーバンド&楽曲多数。
バンドサウンドに限っていえば、いまだに「天体観測」の呪縛から解放されていないと思う。


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そして「セツナ系」の時代。
「セツナ系」の全盛期は2007~2011年の5年間くらいだったと思う。

■ もっと... - 西野カナ/2009年10月21日On Sale

こういう曲は、1980~1990年代にはたぶん生み出せなかった。
歌詞がよりいっそうパーソナルなものになっていく。

■ 童子-T - 願い feat.YU-A/2009年12月16日On Sale

RAPとハイトーン女性ボーカルのコラボが目立った「セツナ系」。
曲の粒も揃っていた。

■ Because - LGYankees Feat.中村舞子/2008年9月17日On Sale

切なさを帯びた中村舞子の歌声は「セツナ系」にジャストフィットしていた。

■ 23:45 - Juliet/ 2010年8月25日On Sale

ギャル系3人組ユニットJulietは2009~2010年にかけて多くのスマッシュヒットを放ち、その多くはナイスメロを備えた「セツナ系」だった。
これはこの時代の空気感が伝わる名曲。
「レコチョク」メインのブレイクが、すでにこの頃にはあたりまえになっていた。

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ふつう「セツナ系」には数えられないけど、エモーショナルな名曲がつぎつぎと生まれたのもこの時期。
メロディのうつくしさやエモ感からみると、1980年代を凌いでいると思う。

■ サクラ色 - アンジェラ・アキ/2007年3月7日On Sale

屈指の実力をもつシンガソングライター。本格復活希望。

■ Flavor Of Life - 宇多田ヒカル/2007年2月28日On Sale

イントロなしのサビ入り。
よほどの歌うまじゃないと速攻で崩壊する超難曲。

■ ORION - 中島美嘉/2008年11月12日On Sale

こういう難曲が「黄金の世代」を育てたと思う。

■ あなただけが - 倖田來未/2010年9月22日On Sale

プロであれば「歌が巧い」のはあたりまえだった。

■ Butterfly - 木村カエラ/2009年6月1日On Sale

こういうテクニカルな曲がヒットしたりしていて、まだペンタ全盛にはなっていない。

■ キミトセカイ - 初音ミク 佳仙 (歌ってみた)/2011年5月配信

ボカロ系の好メロ曲。
歌い手の佳仙さんは透明感の高い繊細なエンジェル系ハイトーンが特徴ながらさりげに艶と力感も備え、このハイトーンつづきの難曲を余裕を残して歌い切っている。

☆クリエイター集団の名曲
2005年頃からは、ボカロやアニソンと密接な関係をもつ、いわゆる「クリエイター集団」といわれるユニットが完成度の高い名曲をものしていた。
リードをとっていたのは主にハイトーン系女性ボーカルで、そのレベルはすこぶる高く、「歌い手」による名カバーも多かった。

■ 君の知らない物語 - supercell/2009年8月12日On Sale Covered byくゆり

supercellは、コンポーザーのryoを中心にイラストレーターやデザイナー参画するクリエイター集団。
リードボーカルがいないため、ボカロ・初音ミクや適宜女性ボーカルが抜擢された。
これはニコ動上歌い手として活動していたガゼル/nagiをゲスト・ボーカルに迎えて制作された名曲。
透明感にあふれるnagiのボーカルは多くのフォロワーを生んだ。

■ こなたよりかなたまで(OP Imaginary Affair) - KOTOKO(I've(アイブ、アイヴ))/2005年9月30日On Sale(COLLECTIVE)

I've(アイヴ)は札幌市本拠のクリエイター集団で、とくにゲームやアニメに多くの名曲を提供している。
KOTOKO、詩月カオリ、川田まみなどすぐれた女性ボーカルを多くかかえ、その楽曲のレベルの高さには定評があった。

■ ずっと前から好きでした Destiny feat.花たん - HoneyWorks/2014年1月29日On Sale

HoneyWorks
HoneyWorks(ハニーワークス、通称ハニワ)は『告白実行委員会〜恋愛シリーズ〜』で知られるクリエイター集団。
そのメロディアスでフェミニンなサウンドには定評があり、「ハニワ曲」とも呼ばれて愛される。


2011年くらいからJ-POPのメインシーンは「坂道シリーズ」やジャニタレの寡占状態に陥り、マニアックなボカロやアニソン系とは明確にマーケットが分化した。
マイナージャンルでは曲やテイクのできがよくても、なかなかメジャーヒットにつながらないという構図は2015年くらいから顕著となり現在までつづく。
だからいい曲がつくれなくなっているワケではなく、従来からの音楽好きよりも、じつはゲームやアニソンマニアの方が良質な音楽に触れているのではないかと思っている。
彼らは、作品のクオリティに対しての再生数が伸びないことを「過剰埋没」というが、「過剰埋没」している名テイクがじつはたくさんある。
(シーンが細分化しているゲームやアニソンの世界から、名曲を掘り起こしてくる作業はかなり手間がかかる。)

1980~1990年代だったら、こういう実力のあるクリエイターたちはメジャー歌手の裏方にまわり名曲を創り出すパターンが多かったが、いまはシーンが細分化されすぎてなかなかメジャーヒットに結びつけられない。
これも時代のかかえるジレンマでは。

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リーマンショック、そして東日本大震災。
出口の見えない閉塞感。

■ 遠くても - 西野カナfeat.WISE/2009年3月18日On Sale

リーマンショック後、東日本大震災前の2009年3月18日リリースのセツナ系。

■ SUPER MOON - 藤田麻衣子 

東日本大震災がもたらしたものは、やっぱり重すぎる。
震災後の2011年3月20日に現れたスーパームーンを歌った曲。
ここでも「つながる」がキーワードになっている。

■ 夜空。- miwa feat. ハジ→/2015年8月19日On Sale

2008年頃の”セツナ系”よりセツナさを増している。
そしてどうしようもない閉塞感。


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1990年代以降のJ-POPはコード進行のパターン化(とくに王道進行の寡占化)が進み、メジャー・セブンスはおろか、マイナーセブンフラットファイブやナインス(テンションや分数コード)の使いこなしも減って、アーバンな曲じたいも次第に少なくなっていく。

多くの日本人は、根っこにヨナ抜き音階(ペンタトニック)やダウンビートが入っているので、コンスタントに洋楽を意識する局面がないと、どうしてもセブンス(四和音)やアップビートから遠ざかっていく。
最近では洋楽も急速にペンタ化やダウンビート化(というか4つ打ち化)が進みつつあるし、70~80年代に洋楽の影響を受けた多才なアーティストたちも第一線を退きつつある。

2015年以降、日本でペンタ化・4つ打ち化(あるいはほぼフォークソング化)が進んだこと、そして海外からのシティ・ポップの再評価が進んだ背景には、こんな要素もあると思う。

また、2000年以降はテクノロジーの発展もあって楽曲の多様化が進み、「なんでもありの時代」(一部のボカロやアニソンなどで音楽的にすこぶる高度な楽曲がつくられる時代)になったが、聴き手がこれについてこれなくなり、とくに2015年以降はメジャーシーンで平易なペンタ化が進んだというのが持論。

これらの曲聴くと、2000年以降のJ-POPがいかに多様化したかがわかる。
でも、聴き手は細分化され、シーンは分断してメジャーヒットした曲は多くない。

■ ハロ/ハワユ - リツカ(歌ってみた)

2010年10月11日歌ってみた投稿。
私的な内面(日々の悩み)に向かう曲が増えてきている。
時代はこの頃よりさらに苛烈になっていると思うが・・・。

■ 空奏列車 - めありー(歌ってみた)

2015年2月Web公開とみられるボカロ曲。
不確実、不安定、先の見えない世界。

■ 徒夢 feat. 初音ミク- 花たん(歌ってみた)/2011年3月30日原曲配信

救いようのない無力感。


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思い返してみると、
~1970年代前半
 ペンタの時代
1970年代前半~中盤
 ペンタとセブンスの拮抗時代
1970年代中盤~1980年代中盤
 セブンス優位の時代
1980年代中盤~2014年
 J-POP 進行(小室進行含む)の時代
(2003年くらい~ ボカロやゲーム曲(一部アニソン)などの高度でマニアックな音世界、メジャー化例は少ない)
2015年~
 ペンタ回帰の時代

そして・・・
2020年~
 ペンタからの脱却の時代??(シティポップ人気、コード進行ブームやヒゲダン・ワンオクの人気)
2021~2022年
 ペンタからの脱却の試行錯誤にもがいた年?

↑ こんなイメージがある。
空前のヒット曲不作といわれた2021~2022年。でも、いよいよ風向きが変わりつつあると感じる動きも・・・。

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2007年頃~、”セツナ系”の隆盛と歩調を合わせるように、聴き手が前向きになれるような曲は少しづつ出てきていた。

■ Again - アンジェラ・アキ (2007年)


梶浦由記さんと歌姫たちが生み出すテイクは、壮大で高揚感にあふれていた。
それは1980年代のシティ・ポップとはあきらかに異なる質感をもっていた。

■ Everlasting Song - FictionJunction (2009年7月12日のLIVE)


■ 未来 - Kalafina (2013年)

メロディ。ハーモニー、アンサンブルの質を揃えた名ユニット。
2019年3月の解散はほんとうに痛い。

梶浦サウンド総ざらい!(&「炎」-homura)
伝説のユニットkalafina
FictionJunctionの秘密?


■ I Will Be There With You - 杏里/Anri(JAL 企業PV/2011年)

1980年代の杏里にはなかった旋律。

■ ここにあること - 桜ほたる(歌ってみた)

2011年秋、震災後のWeb公開とみられるボカロ曲。
思いっきりはじけた感じがする名曲。

■ 夢の途中 - KOKIA/2013年3月20日On Sale

海外での評価が高い、日本を代表する歌姫。

■ ヒカリヘ - miwa/ 2012年8月15日On Sale

どちらかというと、いまの時代にアジャストしている曲のような気がする。
時代を先取りしすぎたか?

■ Hero - 安室奈美恵/2016年7月27日On Sale

J-POPの質感が変わったか? と感じた曲。
この名曲でもオリコン最高位6位。五輪のテーマソングとしてはよく流されたが、時代の空気にはそぐわなかった?

■ 栞 - 天野月 feat.YURiCa/花たん/2016年11月23日On Sale

閉塞した世界から花開いていく感じの曲。これも早すぎたか。

■ YOASOBI「群青」 from 初有観客ライブ『NICE TO MEET YOU』2021.12.04@日本武道館/2020年9月1日On Sale

一聴”応援ソング”っぽいけど、歌詞を聴き込むと、巷にあふれる”自助的応援ソング(がんばろうソング)”とは明らかに一線を画していることがわかる。
Just The Two of Us進行をこんなふうに使うとは・・・。
1980年代のお洒落感とはちがう解釈ではまってる。
「本当に変わっていくかも」と感じた1曲。

■ 【公式ライブ映像】Poppin'Party「キズナミュージック♪」

アニソン系でもはじけるブライト感をもつ曲が増えてきた。

■ One Reason - milet/2021年9月10日On Sale

これまでのJ-POPとは明らかにスケール感がちがう。

■ キャラクター - 緑黄色社会/2022年1月26日On Sale

ひさびさに聴いたヨコノリ含みのグルーヴ曲。

■ おもかげ - milet×Aimer×幾田りら (produced by Vaundy)

2021年12月17日リリース。
あたらしいJ-POPを象徴する3人のコーラス。これは来たと思った(笑)
Vaundyのような才能が出てきて正当に評価されるのも時代の流れの必然では?

■ 星月夜 - 由薫/2023年2月8日On Sale

内省的な曲想だけど、スケール感を帯びてどこか希望を感じさせる。

■ サクラキミワタシ - tuki.

わずか15歳。
サウンドだけで勝負できるかもしれないあたらしい才能。


歌は株価と同じで、時代を先に織り込むともいいます。
おそらく日本社会はこれからさらに苛烈な方向に向かうと思うが、こういう曲たちを聴くと、ひょっとしてそうはならない芽もでてきているのかもしれません。
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