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■ 毒沢温泉 「沢乃湯」 〔閉館〕



超ひさしぶりに温泉レポをUPしてみます。
なお、この施設はすでに閉館しています。

毒沢温泉 「沢乃湯」
住 所 :長野県諏訪郡下諏訪町星が丘7075
電 話 :閉館
時 間 :10:00~16:00(営業時データ)
料 金 :500円(同上)
紹介ページ (@nifty温泉)

温泉王国、諏訪の北方の山裾に温泉マニアをうならせる名湯、毒沢温泉があります。

毒沢鉱泉の歴史は古く、永禄年間に武田信玄が金山発掘の際、怪我人の治療に利用したと伝えられる、いわゆる”信玄の隠し湯”のひとつです。
”毒沢”とはなんともおそろしげな名前です。
読みは古いガイドで”ぶすざわ”と紹介されていた記憶がありますが、最近ではほとんど”どくさわ”が使われています。

「神乃湯」、「宮乃湯」、国民宿舎「沢乃湯」の3軒の宿がありましたが、「沢乃湯」は2014年1月末 閉館(Web情報)となっています。
これは2007年8月に入湯したときのレポです。
「神乃湯」、「宮乃湯」、「沢乃湯」とも入湯していますが、「神乃湯」しかレポしていなかったので記録の意味でUPしてみます。

諏訪湖の北岸、上諏訪は古来交通の要衝で「聴泉閣かめや」前で甲州からの甲州街道(道中)と中山道が合流し、その地点には「甲州道中・中山道合流地」の石碑が建っています。
木曽から塩尻に入り、塩尻から塩尻峠を越えて諏訪に入った中山道は、諏訪湖畔に出ることなく諏訪大社下社秋宮前で甲州街道と合流し、北に向きをかえて砥川沿いを難所・和田峠に向かいます。

毒沢温泉はこの砥川に注ぐ小沢沿いにあり、諏訪からみると諏訪大社下社春宮の裏手にあたります。
諏訪市街を抜けた中山道は、諏訪大社下社春宮の脇を過ぎると俄然山の気を帯びてきます。
そこから約1㎞で「沢乃湯」に到着です。


【写真 上(左)】 外観
【写真 下(右)】 看板

地味めな外観の2階建てで、「薬湯 沢乃湯」の看板がないと、それとわからないかもしれません。


【写真 上(左)】 玄関
【写真 下(右)】 エントランス・ロビー

鄙び入った外観ながら館内はきれいに手入れされ、このあたりは国民宿舎の矜持のようなものが感じられます。
館内に掲示されていた案内書きを引用します。
「信玄の隠し霊泉の源泉は、標高800米の内山地籍より湧出しています。信玄が金鉱採掘の際、ケガ人をこの湯に入れ治療したものです。飲用・浴用・外用にと3拍子揃いの比類なき神秘の薬水の所在を隠すため毒沢(どくざわ)の地名をつけたと云われています。」

平成10年1月6日付の温泉分析書(源泉名:毒沢鉱泉)の申請者は、湯元会 宮乃湯、㈲神の湯、沢乃湯の三者となっているので、この3施設に分湯使用かと思われます。
なお、沢乃湯ではこの源泉を利用して保湿剤「沢乃湯ジェル」をつくり、全国に通販していたようです。


【写真 上(左)】 沢乃湯ジェルの案内
【写真 下(右)】 館内図

私が訪れた時点では、すでに日帰りのみの営業になっていたかもしれず、回数券が販売され、日帰り用の休憩室も用意されていました。


【写真 上(左)】 休憩室
【写真 下(右)】 浴室前

廊下のおくに浴室。手前が男湯、おくが女湯です。
脱衣所棚は木枠タイプで、その上に温泉関係掲示がしっかり掲出されています。


【写真 上(左)】 脱衣所
【写真 下(右)】 温泉利用掲示

飾り気のない浴場で、コンクリ造2人ほどの浴槽と、その横に飲泉用カランとそれを受けるポリ容器、すこし離れて洗い場カラン2。
女湯もシンメトリで同様の構成です。


【写真 上(左)】 男湯
【写真 下(右)】 女湯

カラン2、シャワー・シャンプーあり。土曜13時で男女湯とも2人~独占でした。

飲用カランはおそらく源泉で、「飲用」表示はありませんでしたが、まわりにコップがいくつか置いてありました。
なお、休憩室には「毒沢温泉の性質上、煎茶又はそれに類したお茶はあまりよくありません。麦茶か白湯をお召し上がり下さい。」との注意書きがありました。
お茶のタンニンが鉄分の吸収を妨げるためと思われますが、それだけ飲泉するお客が多いのかもしれません。


【写真 上(左)】 飲用カラン
【写真 下(右)】 注意書き

浴槽は、金属パイプの湯口からうす赤くにごったお湯を投入。槽内の注排湯は不明ですが、オーバーフローはなかったので、おそらく自然流下式の排湯では?
温泉利用掲示によると、「給湯は貯湯槽方式、加水なし、加温あり、殺菌剤使用なし」で加温かけ流しではないかと・・・。


【写真 上(左)】 浴槽の湯口パイプ
【写真 下(右)】 湯口パイプからの注入

浴槽のパイプはうすにごり、飲用カランはほぼ透明だったので、加温による懸濁があるかもしれません。
なお、これは「神乃湯」でも不思議に思ったのですが、毒沢鉱泉の泉温はわずかに2.0℃。
飲用カランは冷たいですが2.0℃ということはないので、どこかで弱加温しているのかもしれません。

ほぼ適温のお湯は、赤茶色のにごり湯で透明度は数㎝。湯中には酸化鉄と思われる若干の赤茶の浮遊物が舞っています。
金属パイプからの注湯の味不明。湯面ではよわく金気のなまった臭いがします。
キシキシとギシギシが入り交じる特徴ある湯ざわり。


【写真 上(左)】 湯色
【写真 下(右)】 内床の排湯口

あたたまりの強いお湯で、飲用カランの水浴びがすこぶる快感。
泉質じたいのレベルはかなり高いと思いますが、浴槽のお湯にややなまりを感じるのは残念。

飲用カランの水はすばらしいものです。
ほぼ透明で強レモン味+甘味+収斂味、よわく焦げ臭を感じ、pH2.6の酸性明礬泉の質感豊か。
これを無為に流してしまうのはもったいない気も・・・。
容器ではなく小浴槽に流し込めば、極上の源泉水風呂ができそうな感じがしました。


【写真 上(左)】 飲用カランの源泉
【写真 下(右)】 飲用カランと洗い場

なお、浴槽の金属パイプの上にはふたつのカランがあり、私のメモには「右のカランにはレモン収斂味あるが、洗い場カランよりよわい」とありました。(左のカランは記載なし)

正直、浴槽のお湯のレベルは「神乃湯」の源泉槽には及ばないと思いますが、料金は安いし渋い雰囲気を味わえるし、温泉好きならば一度は攻めてみてもいいような感じがしました。

〔 後記 〕
諏訪大社下社春宮から砥川沿いに星が丘源湯、毒沢鉱泉、六峰源湯(六峰温泉)と並び、星が丘源湯は未湯ですが、六峰温泉もかなりの名湯でした。
しかし、六峰温泉は2010年3月をもってすでに閉館しています。(→ 入湯レポ
信州にはこのような小規模な名湯がいくつも点在しています。
このコロナ禍を乗り切って、なんとか継続してほしいものです。

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茶色の濃い濁り湯とインパクトのある味から、”成分濃厚なお湯”のイメージがありますが、成分濃度自体はそれほど濃いものではありません。
特徴のある泉質の成因は、「硫化鉱物の酸化溶解」+「有機的メカニズム」による低温酸性泉(やませみさんの「温泉の科学」参照)かと思われます。

〔 源泉名:毒沢鉱泉 〕 <H10.1.5分析>
含鉄(Ⅱ)-Al-硫酸塩冷鉱泉 2.0℃、pH=2.6、7.5L/min自然湧出、成分総計=2273mg/kg
H^+=2.5 (10.27)、Na^+=5.0mg/kg (0.91mval%)、Mg^2+=31.7 (10.81)、Ca^2+=7.4、Al^3+=120.0 (55.27)、Fe^2+=132.4 (19.64)、Fe^3+=5.6、Cl^-=1.5 (0.17)、HSO_4^-=92.7、SO_4^2-=1107 (95.59)
陽イオン計=307.2 (24.14mval)、陰イオン計=1202 (24.11mval)、メタけい酸=96.3、遊離炭酸=666.6 <H10.1.5分析> (源泉名:毒沢鉱泉)

〔 2021/06/26UP (2007/08入湯) 〕

※ このレポは2007/08入湯時のものです。

【 BGM 】
■ 夢の途中(LIVE) - KOKIA
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