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「立川談志遺言大全集」 前書き

2013年04月26日 00時30分52秒 | 伝統文化
 「立川談志遺言大全集」 書いた落語傑作選 一  第一巻(全十四巻) 講談社 2002年

 前書き

 前略 

 また自慢を始めるが、談志(わたし)の落語集は面白い。
ということは、読んでいて面白いのだ。
ほかの噺家の本は、噺家が喋ったのを速記で起こしてまとめているが、
私は全編書いた。
文才があるんですよ。
噺家の分際(文才)で。ウヒィ・・・・・・

 落語には、その頃の人生のすべてがあった。
男と女、親と倅、母と子、遊び人、遊里(ゆうり)、博打場、旅、大名、喧嘩、四季の行事、
金、夢、名誉、実際にあったこと、武士、町人、田舎の人、恋、
つまりその頃の全てがその舞台となり、対象となった。
そしてその背景は一口に言えば、そこに生きた人間である。

 その人間の苦しさ、楽しさ、嫌らしさ、執念、無念、・・・・・等々、
これらを交差させ、人間を描いた。
それに己を重(だぶ)らせた。

 それらが「一つの作品」として完成?」したと思った時、落語は庶民から離れていった。
あとは演者のパーソナリティのみである。

 この全集、立川談志という落語家を通しての発表であり、
加えて、人間の奥底にあるデイモンというか、幻想(イリュージョン)というか、
それらをひっくるめての挑戦である。
現状はその途中なのだ。
それを「読み手」という読書に判りやすく一冊々々の本にした、ということ。
でも、もう後がない。
これを遺(のこ)して、後に続く者(無きゃいい)に・・・・・、
いいや、面倒臭えや、人生成り行きだ。

 2002年1月                   立川 談志