外郎売り 歌舞伎十八番の七 享保三年 二代目 市川団十郎 作
ひょろっと 舌がまわり出すと 矢も楯もたまりませぬ。
そりゃそりゃそりゃ まわってきた まわってきた。
そもそも早口のはじまりは、
アカサタナ ハマヤラワ オコソトノ ホモヨロオ。
と、一寸先の お小仏に おけつまづきゃるな。
細溝に どじょにょろり。
京のなま鱈 奈良 なままな鰹 ちょいと四五貫目。
来るは来るは 何が来る。
高野のお山の おこけら小僧。狸百匹 箸百膳 天目百杯 棒八百本。
武具馬具 武具馬具 三武具馬具 合せて 武具馬具 六武具馬具。
菊栗 菊栗 三菊栗 合せて菊栗 六菊栗。
あの長押の 長なぎなたは 誰が 長なぎなたぞ。
向こうの胡麻がらは えの胡麻がらか ま胡麻がらか あれぞ ほんとのま胡麻がら。
がらぴいがらぴい 風車 おきゃがれこぼうし おきゃがれこ法師 ゆうべもこぼして又こぼした。
たっぽ たっぽ ちりから ちりから つったっぽ たっぽたっぽ いっひだこ。
落ちたら煮て食うを 煮ても焼いても 食われぬものは、
五徳 鉄弓 金熊童子に 石熊 石持 虎熊 虎ぎす。
中にも東寺の羅生門では 茨城童子がうで栗五合、つかんでおむしゃるがのぅ 頼光の ひざ元去らず、
鮒 きんかん 椎茸 定めて そば切り そうめん うどんか 愚鈍な こしはっち。
こ棚の こ下に こ桶に こ味噌が こ有るぞ、こ杓子 こもって こすくって こよこせ。
おっと がってんだ。心得たんぼの 川崎 神奈川 保土ヶ谷 戸塚は、走って行けば、やいとを摺りむく、
三里ばかりか、藤沢 平塚 大磯がしや、小磯の宿を、七つおきして
早天そうそう 相州 小田原 とうちんこう。
隠れ ござらぬ 貴賎群衆の 花のお江戸の 花ういろう。
アレ あの花を見て お心を おやわらぎやぁという、
産子 這う子にたまごまで このういろうのご評判。
ご存知ないとは 申されまいまいつぶり、角だせ 棒だせ ぼうぼう眉に。
臼 杵 すりばち ばちばち、くわばらくわばらと、羽目をはずして 今日お出での いずれも様に、
上げねばならぬ 売らねばならぬと 息せき引っぱり、
東方世界の 薬の元締 薬師如来も 照覧あれと。
ホホ 敬って、申す (終)
ひょろっと 舌がまわり出すと 矢も楯もたまりませぬ。
そりゃそりゃそりゃ まわってきた まわってきた。
そもそも早口のはじまりは、
アカサタナ ハマヤラワ オコソトノ ホモヨロオ。
と、一寸先の お小仏に おけつまづきゃるな。
細溝に どじょにょろり。
京のなま鱈 奈良 なままな鰹 ちょいと四五貫目。
来るは来るは 何が来る。
高野のお山の おこけら小僧。狸百匹 箸百膳 天目百杯 棒八百本。
武具馬具 武具馬具 三武具馬具 合せて 武具馬具 六武具馬具。
菊栗 菊栗 三菊栗 合せて菊栗 六菊栗。
あの長押の 長なぎなたは 誰が 長なぎなたぞ。
向こうの胡麻がらは えの胡麻がらか ま胡麻がらか あれぞ ほんとのま胡麻がら。
がらぴいがらぴい 風車 おきゃがれこぼうし おきゃがれこ法師 ゆうべもこぼして又こぼした。
たっぽ たっぽ ちりから ちりから つったっぽ たっぽたっぽ いっひだこ。
落ちたら煮て食うを 煮ても焼いても 食われぬものは、
五徳 鉄弓 金熊童子に 石熊 石持 虎熊 虎ぎす。
中にも東寺の羅生門では 茨城童子がうで栗五合、つかんでおむしゃるがのぅ 頼光の ひざ元去らず、
鮒 きんかん 椎茸 定めて そば切り そうめん うどんか 愚鈍な こしはっち。
こ棚の こ下に こ桶に こ味噌が こ有るぞ、こ杓子 こもって こすくって こよこせ。
おっと がってんだ。心得たんぼの 川崎 神奈川 保土ヶ谷 戸塚は、走って行けば、やいとを摺りむく、
三里ばかりか、藤沢 平塚 大磯がしや、小磯の宿を、七つおきして
早天そうそう 相州 小田原 とうちんこう。
隠れ ござらぬ 貴賎群衆の 花のお江戸の 花ういろう。
アレ あの花を見て お心を おやわらぎやぁという、
産子 這う子にたまごまで このういろうのご評判。
ご存知ないとは 申されまいまいつぶり、角だせ 棒だせ ぼうぼう眉に。
臼 杵 すりばち ばちばち、くわばらくわばらと、羽目をはずして 今日お出での いずれも様に、
上げねばならぬ 売らねばならぬと 息せき引っぱり、
東方世界の 薬の元締 薬師如来も 照覧あれと。
ホホ 敬って、申す (終)