「大本営発表」 その4 改鼠・隠蔽・捏造の太平洋戦争 辻田 真佐憲 幻冬舎新書 2016年
「はじめに」 その3
それにしても、なぜ大本営発表はかくも破綻してしまったのだろうか。
大本営は、陸海軍のエリートが集まる頭脳集団だった。デタラメな発表を繰り返せば、いずれ辻褄が合わなくなり、国民の信頼を失うことなど容易に想像できたはずだ。そんな彼らが大本営発表の担い手だったとは、にわかに信じがたい。
また、マスコミの態度にも疑問の余地が残る。たしかに法令や暴力で脅かされていたとはいえ、一癖も二癖もある記者たちがそんな簡単に軍部のいいなりになったのだろうか。当時マスコミの代表格だった新聞の多くは、大正時代から昭和初期にかけて、大正デモクラシーや第一次世界大戦後の軍縮ムードを背景に、軍部に対して批判的な論陣を張っていた。軍部にもこれを抑えるのに、たいへん悩まされていた。それがたった10数年で軍部の拡声器に成り下がるとは、いささか解せない。
「はじめに」 その3
それにしても、なぜ大本営発表はかくも破綻してしまったのだろうか。
大本営は、陸海軍のエリートが集まる頭脳集団だった。デタラメな発表を繰り返せば、いずれ辻褄が合わなくなり、国民の信頼を失うことなど容易に想像できたはずだ。そんな彼らが大本営発表の担い手だったとは、にわかに信じがたい。
また、マスコミの態度にも疑問の余地が残る。たしかに法令や暴力で脅かされていたとはいえ、一癖も二癖もある記者たちがそんな簡単に軍部のいいなりになったのだろうか。当時マスコミの代表格だった新聞の多くは、大正時代から昭和初期にかけて、大正デモクラシーや第一次世界大戦後の軍縮ムードを背景に、軍部に対して批判的な論陣を張っていた。軍部にもこれを抑えるのに、たいへん悩まされていた。それがたった10数年で軍部の拡声器に成り下がるとは、いささか解せない。