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「目の見えない人は世界をどう見ているのか」 その12 伊藤 亜紗 

2017年05月13日 00時02分33秒 | 雑学知識
 「目の見えない人は世界をどう見ているのか」 その12 伊藤 亜紗  光文社新書 2015年

 「見えない人にとっての富士山と、見える人にとっての富士山」 その3 P-64

 こうした月を描くときのパターン、つまり文化的に醸成された月のイメージが、現実の月を見る見方をつくっているのです。私たちは、まっさらな目で対象を見るわけではありません。「過去に見たもの」を使って目の前の対象を見るのです。

 富士山についても同様です。風呂屋の絵に始まって、様々のカレンダーや絵本で、デフォルメされた「八の字」を目にしてきました。そして何より富士山も満月も縁起物です。その福々しい印象とあいまって、「まんまる」や「八の字」のイメージはますます強化されています。

 見えない人、とくに先天的に見えない人は、目の前にある物を視覚でとらえないだけでなく、私たちの文化を構成する視覚イメージをもとらえることがありません。見える人が物を見るときにおのずとそれを通してとらえてしまう、文化的なフィルターから自由なのです。