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「目の見えない人は世界をどう見ているのか」 その10 伊藤 亜紗 

2017年05月09日 00時02分38秒 | 雑学知識
 「目の見えない人は世界をどう見ているのか」 その10 伊藤 亜紗  光文社新書 2015年

 「見えない人にとっての富士山と、見える人にとっての富士山」  その1 P-64

 見える人と見えない人の空間把握の違いは、単語の意味の理解の仕方にもあらわれてきます。空間の問題が単語の意味にかかわる、というのは意外かもしれません。けれども、見える人と見えない人では、ある単語を聞いたときに頭の中に思い浮かべるものが違うのです。

 たとえば「富士山」。これは難波さんが指摘した例です。見えない人にとって富士山は、「上がちょっと欠けた円錐形」をしています。いや、じっさいに富士山は上がちょっと欠けた円錐形をしているわけですが、見える人はたいていそのようにとらえていないはずです。

 見える人にとって、富士山とはまずもって「八の字の末広がり」です。つまり「上が欠けた円錐形」ではなく「上が欠けた三角形」としてイメージしている。平面的なのです。月のような天体についても同様です。見えない人にとって月とはボールのような球体です。では、見える人はどうでしょう。「まんまる」で「盆のような」月、つまり厚みのない円形をイメージするのではないでしょうか。