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「江戸の卵は一個400円」 その2 丸太 勲

2015年03月12日 00時10分22秒 | 雑学知識
 「江戸の卵は一個400円」 モノの値段で知る江戸の暮らし 丸太 勲 光文社新書 2011年

 江戸の三貨制度 P-16

 江戸で通用した貨幣には金、銀、銭の三種類があり、それぞれが独立して通用するという特異な状況にあった。言わば、円、ドル、ユーロが一時に通用していたようなものだ。したがって、お互いの交換率はその時々の相場によって変動した。

 ここでは文化・文政年間の相場、一両=6,400文で換算する。
 金貨は流通していた最高額面が一両、一両は四分、一分は四朱の四進法となっていた。

 現在貨幣価値への換算(文化・文政期と平成との比較)

 一文=20円    20×6,400=128,000
 一両=128,000円
 一分=32,000円  一両の1/4
 一朱=8,000円  一分の1/4
 銀一匁=2,000円  一朱の1/4

 この金、銀、銭をそのときの相場で両替していたのが両替屋。両替屋は両替時の切賃(きりちん)(手数料 1~2%)が収入源。

 大工は職人のうちでも高給取りで、一日の手間賃が(8,400円)、それに飯米料(昼飯代金)が別に付いて(2,400円)、合計(18,000円)。

 当時は旧暦で一年が354日、そのうち正月や節句、それに大工だから風雨の日は働けずに年間60日は休んでいたから、年間の実働日数は実際は294日。合計すると、一年の総収入額は(317万5,200円)。月割りにすると、26万4,000円。
 住まいは家族三人の暮らしで、家賃は九尺二間(くしゃくにけん)一間の裏長屋が(8,000~12,000円)、ちょっと広い四畳半が二間の2Kで月2万。

 火事が多い江戸では、長屋の仕様も火事で焼けることを想定して建てられた安普請だった。そのため柱も細く、隣との仕切り壁も薄い。隣の住人を呼ぶのにわざわざ隣まで出かけることもなく、仕切りの壁をトントンと叩けば、「何の用?」とすぐに返事が返ってくる。

 こんな状況だから、隣の喧嘩も夜の睦言も筒抜け。しかし、気にする住人はいない。翌朝の井戸端会議で、「昨夜(ゆうべ)はお盛んだったね~」とからかわれておしまいだ。

 プライバシーもない代わりに、お互いに助け合って暮らすのが裏長屋。醤油や味噌の貸し借りから子供の面倒見まで、人情味あふれる裏長屋の暮らしは快適だった。