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「ネコとネズミ」 栃木県の民話

2014年01月29日 00時12分39秒 | 民話(昔話)
 「ネコとネズミ」  栃木県の民話  http://www.mukashi.info/books/read/book_detail/44/1


 むかし むかし あるところに おじいさんとおばあさんが 住んでいました。

貧しくはありましたが、 二人ともまじめで とても優しい心を 持っていました。
 

 ある日 おじいさんが 畑を耕していると、 

くさむらから 「みゃあ・・・みゃあ・・・」と ネコの鳴き声が 聞こえてきました。

おじいさんは 優しく ネコを抱き上げると、

 「おぁー 可愛いネコじゃ。あぁ 可哀そうに おなかをすかせているようだ。

一緒に 家に 帰ろうかの。」と言って 家に連れて帰りました。


 子供のいなかった おじいさんとおばあさんは このネコを 大変 可愛がりました。

ネコも 優しい おじいさんとおばあさんのことが 大好きになり、 

みんなで 楽しい毎日を 送るようになりました。


 ある 夜のこと おじいさんとおばあさんの ふとんの間で 寝ていたネコは、

納屋から聞こえてくる おかしな声で 目を覚ましました。

不思議に思ったネコは 足音を立てずに そっと 納屋へ 近づきました。

すると 床にあいた 小さな穴の中から ネズミの歌声が 聞こえてきます。


 ♪ネズミのお宝 ぴかぴか 磨け

 ♪磨かにゃ 大変 錆びて なくなる

 ♪それそれ 磨け ネズミの お宝


 しばらくして ネズミの 歌声がやむと、 ネコは そーっと 納屋の中に 入ってみました。

すると 一匹の子ネズミが なにかを捜すように きょろきょろしながら 走り回っています。

それを見たネコは ものすごい速さで 跳びかかると、 

手のひらで しっかり 子ネズミを つかまえました。


  突然のことに びっくりした 子ネズミは 「ひゃあ」と 悲鳴を あげました。

ネコの手の中で 子ネズミは 言いました。

 「ネコさん 今日はどうか 見逃しておくれ。 

今夜のうちに ネズミのお宝を 磨かなくちゃならないんだ。

だけど かあさんネズミが 病気になっちゃって このままじゃ 終わりそうにないんだよ。

そこで かあさんネズミに 栄養をつけてほしくて ご飯を捜していたんだ。

かあさんが 元気になったら 必ず 君に食べられるために 戻ってくるからさ。」


 そう言って 子ネズミは 涙を流して ネコにお願いしました。

それを聞いたネコは なにもいわず ネズミを放してやりました。

子ネズミは 大喜びで ネコにお礼を言いました。

 「どうもありがとう。きっと 約束を守るからね。」


 子ネズミが 穴の中へ戻って しばらくすると 上から豆が ぱらぱらと 降ってきました。

驚いて 穴の外を よく見ると ネコが 一粒 一粒 豆を 落としてくれているではありませんか。

子ネズミは ネコの 親切に感謝し おいしそうな 豆を いくつもかかえて

かあさんネズミのもとへ 運んでいきました。


 「かあさん たくさん 豆を食べて 元気になってね。」

そして 子ネズミは 穴の外へ出ると ネコにこう言いました。

 「ネコさん どうもありがとう 君のおかげで きっと かあさんネズミは 元気になるよ。

さあ 約束通り ぼくを食べてよ。」

 しかし ネコは 残りの豆を 全部 子ネズミの 前に置くと 静かに 納屋から 出て行きました。

「何て優しい ネコさんだろう。」

子ネズミは ぽろりと 涙を 流して 心から ネコに 感謝しました。


 それから しばらくたったある日 納屋の中から「ちゃりん ちゃりん」という音が聞こえてきました。

その音を 耳にした おじいさんとおばあさんとネコは 不思議に思って 一緒に納屋へと 向かいました。

おそるおそる とびらを開けてみると 暗いはずの納屋は 眩しい光で あふれています。


 「なんとまあ・・・」

驚いたことに 床にあいた 穴の中から 大判 小判が ざくざくと 飛び出してきます。

よく見ると 小判の山の横には 子ネズミや かあさんネズミ ほかのネズミたちが

にこにこして 立っていました。

子ネズミは おじいさんたちに ぺこりと 頭を下げて 言いました。

 「おかげさまで かあさんネズミは この通り すっかり 元気になりました。

ネコさんは 命の恩人です。

ネズミのお宝も 無事に 磨き終えることができました。ほんの少しですが これは お礼です。」

 子ネズミは 小判の山を 指差して 言いました。


 それを聞いた おじいさんとおばあさんは 驚いたり 喜んだり 大忙しです。

そんな二人の 様子をみた ネコも とても嬉しい気持ちになりました。

そして 子ネズミに近づくと お礼を言うように のどを鳴らしました。

それを見た子ネズミも とても 楽しい気持ちになりました。


 こうして おじいさんとおばあさんは なに不自由なく いつまでも しあわせに暮らしました。

もちろん いつまでも ネコのことを 大切にし、 

ネズミにも 毎日 おいしい豆をあげて 可愛がったということです。


 おしまい