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木のおもちゃ

2012-05-18 10:13:22 | 子ども・子育て・保育
 NHKの「仕事ハッケンデン」は、去年10回ほど連続して終了した。4月から復活したので見ることが多い。番組と言えば、かつて「プロフェショナル」といった、いわば仕事の上昇志向といったもの欠かさず見ていたが、今は「ハッケンデン」のようなものが楽に見られるのでよいという心境である。
 この番組は、1週間ぐらい職場体験をして仕事の専門性の理解とそれを獲得する過程のドキュメンタリーである。この番組は相当な手間をかけなければ出来ないだろうから、NHKでなければ制作は難しいだろう。
 10日は、デパートの洋服のバイヤーを俳優の平岳大がやっていた。金融関係の仕事をした経験があるとのこともあって、1週間の短期間でも番組の内容を十分こなしていた。
 この番組が今後様々な職種に広げていくとすれば、お笑い芸人だけでなく一線を退いたスポーツ選手あるいはある種の専門性や教養を備えているなど、幅広い人の出演が必要になるだろう。

 さて、17日の「仕事ハッケンデン」は、飛騨高山での木のおもちゃ作りのことだった。木で作る家屋や製品と木のおもちゃに関心を持ってきた者として、興味を持って見た。
 職場体験したのはお笑い芸人で、舞台となる会社は10人以上の社員がいて、無垢の木で家具とおもちゃづくりをしている。無垢材で作るのだから商品は高額だし耐久性があるので消費は少ない業界なのに、会社の規模の大きさに驚いた。市場があるのかな、販売をどのようにしているのかなどに思いをめぐらしたのだった。
 職場体験、いや木工職人に入門したお笑い芸人は、木の伐採、製材という制作できる木になる過程を体験する。これは番組づくりとして、おもちゃ制作材になる過程の説明として必要なことでもあった。

 番組終盤のミッションは、おもちゃ展示会で作品を発表するということだ。おもちゃの企画をして制作して仕上げるのだ。
 師匠の指導の下に制作技術獲得体験を経て、創作おもちゃをつくる。彼のアイディアのおもちゃは、自分の幼い娘がハイタッチを好むことと木琴制作をした体験を組み合わせたものにした。あえてテーマをつければ「木で音を出す」ということだろうか。家の形をしたものの屋根に木琴のようにもみえる切り込みを入れて、そこをたたくことによっていくつかの音色がでる。
 さらに家の壁に当たる部分に手を開いた形を切り抜き、それに手の形に棒をつけてモノを強く押すと、中にある木が打たれて音が出る、というものだった。
 この作品は木の音を出すのだが、屋根をたたいて音程はないが木琴のように音を出すのと手の形をした棒をぶつけて音を出すのとは異なる行為である。音を出すおもちゃだがアイディアが別々なものを混合させたもの。そのため子どもがおもちゃを扱う行為は、屋根をたたくことと手の形をした棒を打ち付けるというのが別々になる。しかも音を出す以外の行為はは無理なので、遊びが継続しない可能性が強い。

 木のおもちゃは、素材の性質上制作意図・テーマをひとつにしてシンプルなものがよい。プラスチック素材のように精密で完成されたものというより、半完成品といっていいものがよい。未完成と言うことではなく、制作意図をシンプルでしっかりしていると子どもはその意図に沿って遊ぶだけでなくそれを超えた、バリエーションでもいえるように予想外の遊びをするようになる。それが遊びを継続させて、おもちゃが子どもになじんでいくということでもあり、優れたおもちゃである。典型的なのは積み木であり、制作意図を超えて子どもは能動的に繰り返し遊ぶのである。
 おもちゃのあり方を知らない人が企画するのだから、今回の作品の分析と評価をするのは酷なことと知りながら、番組に刺激を受けてこれまで考えていることを綴ってみた。
 ところで最近の木のおもちゃは、制作者が多くなったこともあってか優れたアイディアのものが多くなっている。ともすれば子どもが繰り返し遊んでおもちゃになじんでいくというよりは、アイディアが優れていて大人も含めてその仕掛けを楽しむというものが多くなる傾向にある。



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