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虐待死の絵本

2010-03-19 22:35:51 | 子ども・子育て・保育
 虐待死あるいは虐待殺人が、このところ連続して報道されている。ずばり虐待死を扱った絵本を紹介しよう。
 内田麟太郎作味戸ケイコ絵の『うまれてきたんだよ』(解放出版社 08年10月20日)である。内田鱗太郎は詩人でもあるが、絵本作者としてたくさんの絵本を書いている。どちらかというとナンセンス分野の絵本が、多くの人に受け入れられているのではないだろうか。
 わたしもそんな思いだった作者に対して「おや?」と、いう思いで手にした。A5の30ページの薄さと文字が少ないことから、装丁だけでは乳児向けと思われそうだ。現に乳児向け絵本コーナーに置かれている図書館が、あったほどだ。
 絵は色鉛筆で丁寧に描かれ、短い言葉の想像を膨らませてくれるよう、よく描かれている。表紙は、白色に絵がグレーを基調に陰影をつけた、うなだれ打ちひしがれた一人ぼっちの幼子がタイトルの下に、全面からしたら上の端の方にある。それ自体が内容を暗示していると読み取れる。ページをめくってみよう。

 ぼく うまれたんだって。

 さんねんで しんだんだって。

 おなかを すかし、とじこめられて いたんだって。
 ひもじくて かみを たべていたんだって。

 しゃべらなかったんだって。
 
 ゆめに おこされ ふるえていたんだって。

 けものの こえで ほえていたんだって。

 あれは なに?
 なにを してるの?

 というように展開していく。この本の内容とテーマからして、おそらく小学生中学年から大人が、誰かに読み聞かせをしてもらったら、心震えるような衝撃を受ける絵本である。
 大人が手にとってさっと文字だけを追って読んでしまうと、絵本の持っているメッセージ性に触れずにやり過ごしてしまう可能性が大きい。それではもったいない絵本である。
 乳幼児検診等の際、いくつか読む本の中にさりげなく入れて、親に読み聞かせをするのもよいだろう。
 読み聞かせのしかたは、ページごとに間をおくのではなく、連続させながら絵を読み取れるぐらいの間をとったり、内容の展開にそって声の表現を変えることも、絵本のメッセージ性を深く感じ取ることが出来るだろう。

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