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子どもの本に喫煙を描くこと

2010-01-11 09:53:55 | 子ども・子育て・保育
 12月30日(水)の「朝日新聞」に「児童誌、喫煙描写で販売中止」というタイトルの囲み記事があった。販売中止の対象は『月刊たくさんのふしぎ』2月号で、「おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり」である。
 『月刊たくさんのふしぎ』は小学中学年ぐらいから読めて、ぼんやりした不思議を、本格的な知の世界へ導いてくれる、優れた月刊絵本である。
 わたしは定期購読しているが、この本は目を通していなかったので、読み通してみた。おじいいちゃんが孫の小3、4年生に先祖の職業などを素材にして、江戸時代の江戸の暮らしを語る、いわば庶民の暮らしを通して歴史に対する関心を喚起する絵本で、なかなかよく出来ている。歴史へ入っていくのに、おじいちゃんが発明したカラクリを覗くという話に引き込むのに使うなど、子どもに親しみをもたれる制作をしている。作者太田大輔は、イラストレーターである。
 ところで問題となったのは、おじいちゃんは愛煙家でパイプタバコを常用しているため、表紙、中表紙はもとより、物語の語りとしておじいちゃんが5回出てくるうち、4回がパイプをくわえているのだ。そればかりではなく、最終ページに江戸から明治に生きた先祖に対して「そうえいば、おじいちゃんも喜助さんも、たばこ好きだもんね」というくだりもある。
 子どもを対象にした絵本に、喫煙を容認したり受動喫煙に対して配慮されていないのはよくない、という小児科医師の指摘を福音館書店が受けて、販売中止としたのである。

 かなり前から日本でもたばこの広告を自主規制しているし、たばこのケースにははっきり体の有害や未成年の禁止が記述されている。公共の場での分煙あるいは全面禁煙等公共施設や学校・大学がめずらしくなりつつある。方向としては、体に有害な喫煙者を少なくすることに向かっている。神奈川県では、条例で公共の場での禁煙を打ち出すにいたっている。
 ただしたばこの値段が300円と安すぎる。1本あたり5円の増税といっても1箱400円ぐらいである。
 90年代半ばに滞在したカナダでは、一箱700円ほどで、分煙が厳しいく基本的には公共の場でたばこは吸わない、というようになっていた。当時はフランスも同じように、たばこを高額にして喫煙者を抑制する政策を採っていた。
 その頃日本ではテレビのCMでもたばこをやっていた。ドイツの雑誌でもたばこの広告が掲載されていた。現在はドイツでは高額にして喫煙者を抑制する政策に踏み切っている。日本はたばこを高額にして喫煙抑制政策を採りたいのだが、世論の様子見で踏み切れないでいる。

 日本社会は喫煙抑制あるいは禁煙の状況になっているのに、愛煙家を主人公にした月刊絵本が出版されたのは、作者と編集者ともたばこの有害性にまで配慮が及ばなかったのである。なにか日本の現状を反映しているようでもある。
 しかしテレビのドラマや映画では、喫煙シーンはなくなっているのではないだろうか。映画が盛んだった70年代までの映画は、喫煙シーンが物語の場面作りや展開に使われていたので、たびたび喫煙シーンが登場していた。





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