世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●シャバに出るより牢屋の方が… 犯罪者なのか、最弱者なのか

2015年04月17日 | 日記
日本人が知らない漁業の大問題 (新潮新書)
クリエーター情報なし
新潮社


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●シャバに出るより牢屋の方が… 犯罪者なのか、最弱者なのか

以下のブルームバーグのレポートは考えさせられるところが多々ある。レポートでは、知的障害や生活困窮の為に社会のシステムから取り残された特殊な人々の話のようにも読めるが、共同体の崩壊、家族の崩壊、障害、個人的罹患によって貧困を極めた人々の行きつく先を暗示もしている。たしかに、彼らは、窃盗万引き無銭飲食等々の罪を犯したのは事実だが、その犯罪に手を染める前に、何らかの救済の道はあったのだと思う。一番の問題は、どこにそのような救済の道があるのかさえ教えて貰えない、聞きに行けない、現実が存在するのだろうなと想像できる。

彼らを犯罪者と切り捨てるのは容易いが、筆者が思うに、戦後の経済復興の陰で生まれた最弱者の群れのようにも思えてくる。村の共同体が集団就職の煽りをうけて先細り、製造業を中心とする護送船団方式のエコノミックアニマル、経済大国に驀進したわけだが、日本列島の村における共同体を弱体化したことで起こる副作用に、考えは及ばなかったと云うことになる。松谷氏の『東京劣化』と云う著書も出ているが、これからの都会では、このレポートに書かれているような事態が、更に加速度的に増えてゆく問題が潜んでいる。

ブルームバーグは、安倍政権に批判的立場はとっていないが、寄り添う政治と云う言葉とは裏腹な、強者に利益、トリクルダウンの幻想を振り撒き、市場原理主義と国家主義と云う「魔物」のような国を作ろうとしている。このレポートでいうような最弱者は、2020年の東京オリンピックの頃には、道々で必ず出遭う人々を想起する。そのよう現象が顕著になれば、オーウェルの『1984年』を彷彿とさせる世界が、少なくとも都会では起きるかもしれない。

13年のNHK「日本人の意識調査」では、「日本人はすぐれた素質をもっている」と答えた割合は68%(03年51%)だそうだ。また、「日本は一流国だ」と答えた人は54%(03年36%)だそうである。つまり、この調査を見る限り、日本人は優れた素質を持っている。ゆえに「一流国だ」と云う意識を持っているらしい。その所為かどうか判らないが、嫌韓や反中の書籍がブームとなり、それに飽きたら、日本賛美本が本屋の棚に目立つようになってきた。たしかに、NHKその他民放のニュースを見聞きして、読売や日経を読んでいれば、そういう意識になっても仕方がないな、と思う。

しかし、そのような傾向は、中国でも韓国でもあるわけだが、本屋に反日的書籍が並んでいるレベルではない。どちらかと言えば、ネット空間で嫌日、反日な言葉が溢れているようだ。公正公平にみて、日本人はモノを生産する素質には恵まれているが、創造する素質に恵まれているとは言い難く、“一流国だ”と云う言葉は虚しく響くだけのようだ。ギャラップの調査によると「お国の為に戦うか」との問いに、イエスと答えたのは11%で世界最低だったし、ピューリサーチの「自力で生活できない人を政府が助ける必要はあるか」の調査では、「助ける必要なし」と答えた人の割合が、調査対象国NO1の38%もいたそうだ。

現在の日本人は、ヤケクソニなり、どこかの官邸の住民同様に、「強がる」「粋がる」「偽善ブル」こういう素養が溢れているわけだが、現実を無視して、「そういう風に思っていないと生きていられない」と云う現実への逃避的な態度になってしまうのかもしれない。イギリスやスペインに住む友人から、どうして日本人はAIIBに参加しなかったの?アジアで中国の次のNO2じゃ嫌ってことなの?と聞かれ、「本当の実力は判っているけど、それを認めると、騙してきている国民に説明がつかないのだろう。それに、アメリカ共和党から睨まれたくないんだろうね」と答えておいた。

≪老人ホーム化する刑務所、「出るのが怖かった」-高齢化で医療費増も  
 (ブルームバーグ)
世界中の多くの刑務所は脱走防止に時間と労力を割いているが、日本では受刑者を出所させるのに苦労している。毎年約6400人があてどもないまま出所、そのうち3人に1人は2年以内に戻ってくる。
日本政府は犯罪対策閣僚会議で昨年12月、帰る場所がないまま社会復帰する出所者数について、夏季東京五輪が開催される2020年までに3割以上減らすと公約した。犯罪や非行に手を染めた人を社会の一員として再び受け入れる社会環境を構築する一環だ。
高齢受刑者がこの10年間急増する中、かなり高い数値目標だ。自由を手にしても孤立する社会での生活より、仲間がいて衣食住を政府が提供する刑務所生活を選ぶ受刑者も多い。
長崎刑務所に入所している67歳の受刑者は、すりを繰り返して14回目の服役中だ。12月に満期出所予定だが、支援なしにはまた戻る可能性が高いと社会福祉士はみている。頼れる親族や友人がおらず、なけなしの所持金を食費や酒で使い切ってしまうからだ。福島刑務支所(女子刑務所)では60歳以上が全受刑者 の28パーセントを占める。窃盗を重ねている最高齢91歳女性は、入出所を繰り返している。

*居場所
 「日本の刑務所は劣悪な環境、ほとんどの施設で暖冷房が入らないので、冬は手足がしもやけでパンパンになり、夏は汗だく。どうしてこんな環境に戻りたいのか、それだけ社会に居場所がないということだ。刑務所には仲間がいて、食事と部屋が与えられ、健康管理も受ける、死亡しても手厚く弔ってもらえる」と龍谷大学大学院法務研究科教授で犯罪学専門の浜井浩一氏は述べる。
取材過程でブルームバーグは日本の3つの矯正施設への立ち入りを許可され、約10人の受刑者の話を聞いた。他にも検事、刑務官、ロビイスト、社会福祉士、官僚や研究者にも取材をして記事をまとめた。個人情報保護の観点から受刑者の名前は伏せた。
人口10万人当たりの受刑者数を国際比較すると日本は49。米国の698、英国149、ドイツ76に比べると少ない。しかし、最近では高齢者犯罪が増加し、刑務所によっては内部が福祉施設化している。

*循環
高齢犯罪者は矯正施設の出入りを繰り返している。家族がいなかったり、金銭的支援がなかったり、障害があったりして地域社会から見放されているからだ。累犯防止に対応するため、日本政府は、帰る場所のない高齢出所者を支援するプロジェクトを進めている。
 法務省によると、65歳以上の犯罪検挙は2013年度に4万6243件、20年前と比べると4倍以上に上る。高齢者犯罪の74%は窃盗で、刑務所人口のほぼ5人に1人が60歳以上だ。
 「刑務所によっては老人ホームのようなところもある。受刑者が食事を作って食べさせてあげたり、歩けない人を支えてあげたりする。雑居房では体が痛くてうなされていたり、認知症で夜中に徘徊(はいかい)したりする人もいる。ひどいと排せつ物を投げたり、わざと布団に粗相をしたりする受刑者もいて、刑務官の負担が増加している」と、全国の刑事施設を半世紀以上にわたり慰問を続け、大スターながら法務省特別矯正監も務め、矯正施設の環境改善に尽力する杉良太郎氏は述べた。

*コスト
高齢受刑者に対して刑務所に代わる意味のある対応策を見つけることは、日本にとって喫緊の課題でもある。国内総生産の240%以上の債務を抱え、先進国の中において最大の債務超過国だからだ。
 刑務所など矯正機能を充実させる14年度の予算額は 約2300億円。法務省によると受刑者1人当たりの年間コストは約320万円、生活保護を受けた場合のほぼ倍に相当する。安価な商品の万引きなどのささいな犯罪でも再犯を繰り返せば最長で5年の実刑判決を受ける可能性もあるので、その場合、単純計算で5年間で1600万円かかる。
 「こんな公費の使い方をしても誰も幸せにならない。効率的な財政運営をするのであれば別の方法を考えるべきだ」と障害者施設を運営する社会福祉法人南高愛隣会顧問・理事で最高検察庁参与の田島良昭氏は言う。田島氏は厚生労働科学研究「罪を犯した障害者の地域支援に関する研究」の代表を務めた。

*医療費
受刑者の医療費も年々伸びている。法務省によると、14年度の薬剤費および医療機材費は過去9年で倍増し、年間60億円だった。受刑者の病院搬送も9年で倍増し、12年に1278件に上った。
厚生労働科学研究「罪を犯した障害者の地域支援に関する研究」は、03年に元衆議院議員の山本譲司氏が自身の刑務所での経験を基にした著書「獄窓記」(ポプラ社)で刑事施設に在所する障害受刑者の実情を紹介したことを契機に始まった。研究報告後、政府は09年から47都道府県に地域定着支援センターの設置を進め、社会復帰支援を行っている。
累犯者問題は06年1月、西日本旅客鉄道の下関駅が放火されて74歳の男性が逮捕されたとき、社会的にも注目された。容疑者は、事件の8日前に刑務所から出所し、空腹と寒さに耐えられず、刑務所に戻りたくて放火したと供述した。知的障害を持ち、事件それ以前も放火、放火未遂を繰り返し、10回服役した経験があり、人生の40年以上を刑務所の中で過ごしていた。

*病気
法務省矯正局総務課長の大橋哲氏は、「彼らはどこのセーフティーネットにも引っかからず、刑務所に落ちてきてしまった人たちだ。本来、福祉を受けていれば正常な生活をしていた人たちで、福祉へつなぐことでそこに戻していこうとしている」と述べた。
法務省によると、12年度の時点で、受刑者の3分の2は何らかの病気に罹患(りかん)していた。循環器疾患が一番多く、続いて精神および行動障害だった。
受刑者の高齢化に対応するため、刑務官は介護士のような役割も果たしている。福島刑務支所長の赤間ひろみ氏によると、高齢で障害を持つ受刑者の排せつ物清掃や、歩行補助を娘や孫の年齢の刑務官が担当している。
隣接する福島刑務所(男性刑務所)は1月、4人の受刑者を病院搬送した。その警備に刑務官24人を割かなければならなかったため、現場に残った刑務官への負担が増えたと所長の太田実氏は述べた。

*最後にする
日本の刑務所は欧米の矯正施設よりも安全かもしれないが、自由が剥奪される。受刑者は午前6時45分起床、午後9時に就寝し、房には冷暖房がないところがほとんどだ。禁錮刑ではなく懲役刑を科すので就労義務があり、日中10-20人に分かれて職業訓練をしたり、民芸品を作ったりする。さらに農作業をしたり、受刑者の食事を作ったりするほか、受刑仲間の介護もする。規律を守るために食事中、入浴中の私語は禁止されていて、トイレに行くにも許可がいる。
すりを犯し長崎刑務所で14回目の服役をしている67歳の高齢受刑者は、薄緑色の作業服に身を包んでいる。社会福祉士に服役前の住所や、紙に書いてある漢字、頭の中で簡単な計算をするよう尋ねられても、首をかしげて答えに詰まる。身長150㎝ほどの中肉中背の男性は、糖尿病、高血圧を持ち、両耳難聴で、知的障害者であるため、日々の家計のやりくりを管理できず、窃盗に走った。 時折バーテンダーや小さな漁船に乗って働いたが、所持金がなくなると盗みを働き、洋服、惣菜やスナック代に充てたと語った。スーパーマーケットで客の買い物かごの中に見えた財布をつかんだのが直近の受刑理由だ。「刑務所に戻るかもしれないという頭はあった。でもお金が足りないから。買い物かごの中に財布が見えた。最後にします」と男性は述べた。

*再出発
社会福祉士が過去に支援したある1人の元受刑者は社会での再出発に成功し、政府が進めるプログラム(09年からの地域定着支援センター設置と社会復帰支援活動)が一定の成功を収めていることを示唆している。その78歳男性は、空腹を満たすために無銭飲食、すりや万引きを繰り返し、15回服役した経験を持つ。
子供のころ、一緒に暮らした何人もの継母と折りが合わず、満足な食事が与えられなかったこともあり、成人に達してから家を出た。肉店などで働いたが、知的障害があり、人付き合いが苦手なため、長続きしなかった。ホームレスになり、日中は空き家などで過ごし、夜中に出歩き、空腹を満たすために窃盗を繰り返した。
社会福祉士の支援で5年前に長崎県諫早市の養護老人ホーム聖フランシスコ園に入所した。1日のほとんど園内の農園で野菜を育てることに費やし、テレビで喜劇を見ることが楽しみだ。入所以来、犯罪は一度も起こしていない。
「今が生きていた中で一番幸せだ」と男性は養護老人ホームの4畳ほどの自室で日に焼けた顔をしわくちゃにして恥ずかしそうに笑った。「食事はおいしいし、 誕生日を祝ってもらえるし、毎日風呂に入れる。刑務所から出るときに世話をしてくれた人たちを絶対裏切りたくない」。

*「出るのが怖い」
高齢受刑者の多くは、孤児院で育ち、身体的、性的暴力を受けていたり、障害があるにもかかわらず家族の支援が受けられなかったりなど、難しい過去を背負っていると長崎県地域定着支援センター所長の伊豆丸剛史氏は言う。伊豆丸氏が以前に支援した元受刑者は「刑務所から出るのが怖かった」と彼につぶやいた。刑務所での生活は望んでいなかったが、外での生活はもっと嫌だったからだという。
「その言葉に、罪を犯さざるを得なかった当人と、社会的問題の根幹が濃縮されている気がした。服役を繰り返し、高齢化していくと社会復帰できる要素がだんだん削られていく。ある程度資源が残っている早いうちに介入する必要性を感じている」と伊豆丸氏は述べた。
社会福祉士の伊豆丸氏は、こういった受刑者を訪問・面接し、出所後の居住地を探す手伝いをしている。また出所を控える複数の受刑者に対して講義をしたりもする。全国の地域定着支援センターは過去5年間で1000人以上の受刑者を支援した。

*再犯
刑務所や検察庁でも社会福祉士を採用し、出所予定者を地域定着支援センターに紹介したり、検事が事件の相談をしたりしている。満期高齢受刑者の再犯率は下がりつつあると法務省矯正局総務課長の大橋氏は述べた。
再犯により刑務所に収容される受刑者の約70パーセントが無職だ。政府は20年までに、犯罪や非行をした者の事情を理解した上で雇用する企業の数を現在の3倍の1500社まで増やす目標も同時に掲げた。
問題解決に向かう努力は始まったが道のりはまだ長いと、龍谷大学の浜井教授は言う。地域定着支援センターも数少ない要員で作業をしているし、犯罪者に対する社会の偏見もまだまだ強いからだと浜井氏。

*出直し
元受刑者を受け入れる老人ホームを探すのも至難の業だ。日本ではすでに特別養護老人ホームに入所できていない高齢者が52万人もいる。また、今後高齢者の独り暮らしは増加をたどる一方で、地域社会や家族の絆が薄れる中、支援を必要とする高齢者も増えるだろう。
しかし、現在進行中のプログラムが受刑者に一筋の光明を与えていることも確かだ。社会福祉士の伊豆丸氏が3月に佐世保刑務所で講義をした際、参加した受刑者は出所後の人生に安堵と希望を見いだしていた。
参加者の1人は、窃盗などで過去10回服役経験があった高齢受刑者だった。元建設作業員で、60代後半に差しかかり、仕事が見つからない。両親や兄弟を亡くし、帰る場所もないので、犯罪を繰り返した。
「こうした支援をしてくれるところがあるなんて知らなかったので、うれしかった、出所してからの生活に希望が持てる。年が年なので出直すなんて言える年齢ではないが、真面目に出直したいと心に決めた」と男性は述べた。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 Kanoko Matsuyama kmatsuyama2@bloomberg.net  ≫(ブルームバーグ)

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