世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

危険な賭けに出た安倍の近い未来 ロシアから見た安倍外交のリスク(ボイス・オブ・ロシア)

2013年04月30日 | 日記
猛毒国家に囲まれた日本―ロシア・中国・北朝鮮
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●危険な賭けに出た安倍の近い未来 ロシアから見た安倍外交のリスク(ボイス・オブ・ロシア)

 米国、中国、韓国と日本の関係になると、マスメディアは双方のクシャミに至るまで、あることないことを報道する。昨夜、我が国の内閣総理大臣である、安倍晋三様はロシアのプーチン大統領と3時間20分も会談、共同声明するに至った。この出来事は、本来であれば安倍晋三様にとって、首相就任以来最大の業績だと思われるのだが、マスメディアの反応は今ひとつである。当然、ネット上の議論等々も、盛り上がりに欠けている。或る意味では、ロシアという隣国との関係が善かれ悪しかれ、想像以上に疎遠である証左かもしれない。

 筆者を含め、多くの人々がロシア情報を持っていない為に、寡黙にならざるを得ないのかもしれない。安倍プーチン共同記者会見で、お馬鹿なTBSの記者が、両国のこれから構築しようと云う良好な関係改善への努力に水を注す、悪意に満ちた質問が、最も重大な話題として興味を持たれるような状況になっている。外交に能天気であり、対ロシアとなれば、殆どチンプンカンプンな人々にとって、TPPや尖閣に比べれば、まだまだ興味の枠内に入らないのだろう。筆者も似たようなものだ。

 しかし、注目しておくべきことが二つ理解できた。ひとつは、日露による経済協力体制構築が、非常に前向きに行われようとしている事実である。安倍プーチン会談の報道は、日経新聞が最も多くの紙面を割いている。ウェブサイト上も、極めて熱心だ。今回の安倍のロシア中東訪問が、いかに経済外交であるかを証明している。日経は以下のように伝えている。

≪ ロシアビジネス狙う企業、首相訪ロに100人同行
 安倍晋三首相の訪ロに合わせて100人を超える経済人がロシアを訪れている。首相の外遊同行としては過去最大規模。首脳会談を契機に日本の技術・ノウハウを生かした製品やサービスの輸出拡大を狙う。官民挙げたトップ外交がアベノミクスの第3の矢である成長戦略につながるか、今後の「成果」が注目される。 29 日はロシア直接投資基金主催のロシア投資ラウンドテーブルに200人以上の企業関係者が集まった。30日には政府主催の日ロフォーラムで都市インフラ整備・エネルギー、医療・先端技術、農業・食品の3分野を軸に協力の可能性を探る。
 外務省の調査によると、ロシアに進出している日本企業は444社(2011年10月時点)と4年間で約100社増えた。年間直接投資額は08年以降3億ドルを上回る水準が続いている。企業にとって資源国や内需が拡大する新興国という面に加え、中央アジアなど周辺市場開拓の足がかりとしても重要性が増してきている。
 都市インフラでは日本が世界的に先行する省エネ技術やIT(情報技術)を駆使したスマートシティー構築で商機がある。モスクワやサンクトペテルブルクなど大都市で計画がある。
 川崎重工業はエネルギー効率が高いガスタービンを中核設備として売り込む考え。既に日建設計、三井不動産、東芝などとの企業連合でロシアの不動産会社とスマートシ ティー整備に関する覚書を交わしている。
 経済成長に伴う富裕層の拡大も高度医療の需要拡大や日本食への関心の高まりといった形で追い風になる。
 住友重機械工業は日本政府と連携しモスクワに最先端のがん治療を手がける病院を建設する計画だ。放射線治療の最新鋭機器を導入する。キッコーマンはオランダで製造したしょうゆをロシアで販売する。現地の料理に合ったレシピを提案し需要を喚起する。
 3分野以外でも自動車関連など日本企業の動きは活発。三井物産はロシア自動車大手ソレルスの合弁会社「ソレルス・ブッサン」と2月、ウラジオストクの新工場でトヨタ自動車ブランドのSUV(多目的スポーツ車)の組み立てを始めた。トヨタが生産技術と部品を供与。車両はシベリア鉄道で輸送しトヨタの販売網を利用してロシア全土で販売する。≫(日経新聞:モスクワ=平本信敬)

 上記の日経の記事に加え、ロシアのLPGガス共同開発やパイプライン構想など、ロシアの資源と日本の資金による、共同事業は一定の水準で、両国の経済発展に寄与するだろう。ただ、ロシアと云う国のカントリーリスクは、ある面で中国以上なので、その事は、別途踏まえる必要があるのだろう。ただ、これも日露両政府の親和的外交がどこまで継続できるかにかかっているのだろう。そこで、面白いコラム(第二番目の注目)を見つけたので、紹介しておく。このコラムの目線は、相当に粗雑なものだが、一読に値する。何故なら、我々はロシア人の目から見る、日本の外交姿勢を知ることが可能だからである。まったく筆者などとは異なる視点で、安倍外交を見ているのが、大変興味深い。

≪ アメリカンドリームに別れを告げる日本
安倍首相は、2月18日に第2次世界大戦後の米国による占領終了60周年を祝う提案を 行なった。
この発案について、アンドレイ・イヴァノフ評論員は、戦後制定された日本国憲法の見直しを図るため、断固とした一歩を踏み出したしるしととらえている。
 米国による占領終了を祝おうなどということを考え付いた首相は、戦後から今まで誰もいなかった。これについてイヴァノフ評論員は、安倍首相が米国訪問後にこの発案を行なったことは特徴的だとコメントする。

 安倍首相は尖閣諸島の所属問題を巡る中国との論争において米国がオープンにきっぱりとした態度で日本の肩を持つだろうと期待していた。ところがオバマ大統領はこれを退けた。島の問題を理由に自国にとって巨大な経済パートナーと言い争う気はないとしたのだ。このオバマ大統領の態度が中国にいよいよ確信を与えただろうことは疑う余地もない。
 この結果、中国はその立場を強硬化させた。つまり島を守るのは日本人ひとりでやることになる。こうしたことを背景にすると 2月28日、米国占領終了記念日をやるとい安倍首相の提案は米国に対し、「占領は終わった」ことを報告したシグナルとなったといえるだろう。
 日本は独立国であり、独自の国益を持ち、それを守ることができるというわけだ。 こうしたメッセージに米国がどう反応するかは今のところ不明だが、琉球大学の宮里政玄名誉教授らを筆頭とするグループはすでに憤慨を表している。宮里名誉教授は、沖縄が日本から切り離された日を祝うというのは、あたかも沖縄が日本の領土ではないかのように響く発言だとコメントした。
 米国は1952年、日本は自国の領土を統括する権利を有すと認めておきながらも、沖縄に関してはさらに20年間にわたってコントロールし続けた。しかも1972年に沖縄を返還した後も、それに自国の基地を残し続けている。
 沖縄の米軍基地問題は日米関係における大きな苛立ちの種だ。鳩山由紀夫元首相はこれを解決しようとし、普天間基地を島の外に移転することを強要したが、その結果、米国側からのボイコットにぶつかり、すぐに首相のポストを失った。
 鳩山氏は日本の外交政策を米国からより独立したものにする必要性を表し、これによって米国政府を怒り心頭させてしまった。 鳩山氏に比べ安倍氏はこういったことはおくびにも出さず、機会ある毎にいかに日本にとって米国との防衛協力が重要であるかを強調してきた。特に中国、北朝鮮が群の強化を図るなかではなおさらだ。しかし尖閣諸島での中国との論争において日本を支持しないといオバマ大統領のはっきりとした拒否にあい、安倍首相は絶望的な賭けに出ざるをえなかったのだ。
 米国占領終了60周年の祝いを盛大に行なうことで、安倍氏はおそらく、米国は国益の擁護に務めようとして日本を占領したのだという単純な真実を国民の意識に届かせようとしたのではないか。
 しかしながら占領はとうの昔に終わっている。日本は全く違う国になった。日本には独自の国益があり、それはなんとしても 守らねばならない。誰も日本を守ってくれはしない、というのは米国の「安全の傘」がある程度損なわれたことをはっきり示すほのめかしといえる。
 もしこのシグナルが米国に届かず、的確に理解されないのであれば、阿部首相は憲法改正に国民を向かわせることに成功するだろう。特に米国には気に入らない安倍氏の円安政策によって日本経済が息を吹き返した場合、これは安倍氏にとっては、日本に利益にならない米国の金融路線の押し付けから解放されたと宣言する機会を与える。
 これで米国占領軍の押し付けた憲法を修正するときがきたということができる。 しかし、憲法見直しは60年以上にもわたってアジア太平洋地域の安定を維持してきたシステムの解体を意味することになる。
 多くのアジア諸国は、中国を筆頭としてこれに非常に鋭い反応を見せることは間違いない。
 おそらく安倍氏はまさに、中国の軍事的脅威が高まったことは米国がその忠実な同盟国である日本と、中国との間に抱える領土問題における日本の立場をより尊重せよというということを見込んでいるのだろう。
 しかしながら、これは非常に危険なゲームとなり、簡単に越えてはいけない限界を超え、外交上の企みや脅しはもう終わり、本当に戦闘行為が開始されてしまうことになる。≫(ザ・ボイス・オブ・ロシア:私見アンドレイ・イヴァノフ評論員)


日露エネルギー同盟 (エネルギーフォーラム新書)
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奈落の底に落ちるなら、早ければ早いほど良い 安倍は“よろずの神”の使者に違いない

2013年04月29日 | 日記
暮らしの質を測る―経済成長率を超える幸福度指標の提案
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●奈落の底に落ちるなら、早ければ早いほど良い 安倍は“よろずの神”の使者に違いない

 今夜は不思議な感慨に耽っている。安倍晋三という不幸にも、人生に幸運が二度も重なって舞い込んだ政治家の自暴自棄な振舞いを通して、日本人の色々なDNAを感慨深く感じている次第だ。平安時代の陰陽師・安倍晴明の血脈に繋がるのではないかと思うほど、民を奈落に突き落そうとしている。しかも、その呪いつきの行為が、最終的には民を救うのだ、と言われているようだ。

 オマエは何を言っているのだ!京極夏彦にでもなったつもりなのか?と問われそうである(笑)。しかし、冷静に安倍の行動を見たり聞いたりして、日頃、悪口雑言の限りを尽くしている自分が居るわけだが、どこかで、安倍の自暴自棄(本人は論理的に動いているつもり)が生むであろう国家の存亡も、時と場合には、国家救済の最終兵器と云う考えが出来ない事もない。勿論、歪曲と想像を織り交ぜた、究極の納得手段であるのだが(笑)。

 なにやら逆説的なのだが、戦後、焼け野原とかした日本では、生活の悲惨さに反した朗らかさが明確に存在したと云う事実だ。戦後の日本は町中が細民窟だったそうだ。しかし、そこに住む人々には敗戦の屈辱とか、挫折感とは縁遠い朗らかさと躍動感があったのだという。その明るさは、何ひとつ裏付けはなく、ただ朗らかで、無知で、下品だったが、生命力豊かだったのだそうだ。或る意味で、どん底を愉しんでいる趣きさえ感じる状況だったらしい。勿論、筆者は生まれてもいないので、知る由もないが、文学的には、そのような感じだったと云う事だ。

 そのどん底を愉しむ民の群れは、食うために朝から晩まで働き、くたくたの体であばら家に戻るのだが、彼らの生命力は目を疑うばかりの強さで、衣食住さえ満足が得られず、これといった将来展望などを裏付けるものゼロにも関わらず、ゼロ故の強さは、毎夜子作りにも精を出すに至っている。団塊世代と呼ばれる人々は、そうして戦後日本の高度成長の担い手になったのである。子育ての環境を整えることが、少子化の対策と言われて久しいが、それは真実から程遠い思い込みかもしれない。

 このような観察眼が妥当かどうか別にして、一つの観察の眼であった事実に着眼すると、案外人間と云うもの、共通の悲劇(不幸、負債)を共有した場合、共同体の集結が、いとも容易く出来てしまう事を示しているかもしれない。つまり、団結とか、そういう人間が群れる行動には、共通の悲劇が必要なのかもしれない。そのパワーは猛烈なもので、政治や行政がどれ程の仕掛けをしても得られないものを生みだすのかもしれないのだ。すべて民族に当てはまる話ではないのだろうが、ユダヤ民族なんてのは、悲劇が続けば続くほど、選ばれた民としての自覚が生まれるのだから、世界に類がないわけではない。

 日本民族とユダヤ民族が、悲劇の共有で強い民族になって行くとしたら、悲劇は、一種民族のビタミンなのかもしれない。勿論、ユダヤ民族と日本民族に、民族的共通点は少ないのだが、虐げられた時に強い民族と云う点では一致する部分もあるような気がしてきた。特に、考えた上の話ではないので、深く突っ込まれてると返事に窮する(笑)。案外、やおよろずの神が日本人に与える試練として、安倍晋三と云う人間の運命を弄くりまわしたと考えると、存外、安倍晋三の出現は、日本民族に悲劇をもたらし、更なる飛躍の触媒として作用する為に用意されたものかもしれない。つまり、その先には飛躍がある。

 こんな風に考えると、政治的にも、思想的にも、無意味で害あって益なしな話になるが、個人的には、それも悪くないかもな?などと思ってしまう。日本から、富と云う富のすべてが奪われ、最貧国家になればなるほど逞しい日本民族が出現するのであれば、安倍晋三や野田佳彦や菅直人が出現した意味合いもあると云うものだ。無茶苦茶投げやりな考えだが、そう思えば、腹も括れるということだ。そもそもマイナスからプラスに転じ、またマイナスに戻るだけ、なまじの富が、収奪と云う恐怖を感じるのであって、奪われてしまえば元の黙阿弥。やり直せば良い事である。

 まぁ上述のように考えれば、安倍晋三や麻生や竹中が、どれ程日本売りに精を出そうと、苛立つ事もない。今度はロシアと中東に行き、日本を売り込むのだそうだが、売り込むのか、日本を売りに行くのか、その辺の区別が出来そうもないので、期待薄だ。主権を回復したと言っていたが、まるで原発収束宣言と同じ臭いだ。野田と安倍は双子ではないかと、筆者などは錯覚してしまう。主権を回復したのに、なぜ領土は戻ってきてないのだ?沖縄は日本領土ではないのか?竹島はどうなった?北方四島も領土だよな。取り返すべきものを取り返しもせずに、主権が回復した、はないだろう?恥を知れ、恥を。そうそう、拉致被害者の消息すらも掴めず、安倍の主権の概念自体、狂っているのではないのか?

 注目だと云う、参議院山口補選が終わった。勿論、勝ったのは自民党公認の江島という人だ。相手が酷過ぎた。なんと言っても、応援団長が菅直人なのだから、勝ったらオカシイ!平岡とか云う御仁は、菅・仙谷・江田五月一派の残党なのだから、江島と云う自民党候補の半分の票を得ただけでも善戦と言えるくらいだ。まさかと思って見たが、生活は推薦もしてないので、胸を撫で下ろしたが、今や、民主党では絶対勝てない、維新でも勝てない、だから自民党が勝てるかと言えば、必ずしも絶対的ではないはずである。

 今さら、何らかの風が巻き起こる気配もないのだから、今回の山口の選挙のように40%を切る低投票率で、自民党が漁夫の利を得るのかもしれない。まぁ、前半の筆者の述懐を踏襲するのなら、サッサと奈落の底まで行くのなら、早いところ行ってしまえよ、と云う考えも一興である。奈落が早ければ早いほど、立ち直りも早い。芋でも麦でも、食せるものはすべて食んでみる日本も良いではないか。半端な貧乏国家にとどまるなよ!終戦後並の悲劇的状況になっても、日本に日本民族が存在する限り、必ず盛り返す。この次は、隷属に陥る禍根を残さない国家になれば良い。今夜は、些か個人嗜好のエッセンスを効かせすぎたが悪しからず。


成長の限界 人類の選択
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“虎の核”を借りて居丈高な「主権回復国家の安倍晋三」 恥を知らない無教養

2013年04月28日 | 日記
歴史としての天皇制
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●“虎の核”を借りて居丈高な「主権回復国家の安倍晋三」 恥を知らない無教養

 今日は日本政府の恥晒しどもが主催する、疑似主権回復の日という式典が行われる。大変お気の毒だと思うのは、天皇陛下も参列を安倍内閣に要請されたらしく、宮内庁も断るに断れない苦渋の選択をしたようだ。最終的に式辞は述べないと云う条件で容認したようだが、心からお気の毒だと考える。あきらかに自民党の天皇の政治利用である。現行憲法下では違憲の可能性すらある。自民党は憲法改正草案で、天皇の元首化を試み、式典出席など天皇の公的行為を明文化しようとしている。改憲を進めるための、天皇を政治利用しようと云う意図は明白だ。戦前の軍部や行政官僚と、発想は同次元にある。

 この天皇の威厳を貶めようとしているのが、こともあろうか自称右翼政治家安倍晋三が率いる自民党だと云うのだから、頭を捻るばかりだ。最近では、リベラルや中道の連中のほうが、まっとうに天皇への畏敬の念を持っているようにさえ思える。右翼が、一番天皇の地位を利用しようと試みているなど、右翼の風上にも置けないのだが、現在の日本の右翼とは、そう云うものだと思えば納得は出来る。

 話は変わるが、その前日に、自称右翼政治家安倍晋三は、イベント会場を訪れ、来場者に媚を売り、挙句に自衛隊と米軍ブースに置いてあった戦車に、迷彩服とヘルメット着用で乗り込み悦に入っていたと云うのだから、呆れてものも言えない。現在、日・中・韓・北朝鮮・米国との間でどのような問題が外交安全保障上起きているかを考えれば、幾ら祭りでの話だからといって、やって良い事と悪いことがある。政治家に教養が必要かどうかは議論の余地があるが、常に他国への配慮の精神は必要だし、不必要な軋轢を自ら醸成する必要性などある筈もない。

 仮に、サンフランシスコ講和条約締結が、日本の主権回復の日であるならば、安倍晋三が首相にカムバックした途端に、日本がことさら「主権回復」したわけではない。上記条約締結イコール主権が回復したのであれば、国内外の異論も少なく、既に何度かの節目に式典は行われた筈である。この事実は、歴代の政府が、いまだ国内外に堂々と宣言できるほど「主権回復」がなされていない事実を認識していたからだろう。日本国民の大多数が、本来の独立国の主権には程遠いものを感じている現実を無視したナショナリズム喚起の醜悪なプロパガンダ式典である。天皇がお言葉を述べない意味合いは、天皇が式辞を述べたくない立場であると同時に、お言葉に中に、昭和天皇が沖縄訪問に出席出来なかった時に詠んだ「思はざる 病となりぬ 沖縄を たづねて果さむ つとめありしを」などの引用をされる事を怖れたと云う、両側面があるのだろう。

 先の大戦に関する歴史認識の問題は、東京裁判の有効性無効性等と云う議論に矮小化しているわけだが、日本が本気で、この戦争の問題に関する総括を先送りした結果生まれた問題なのだろう。短絡的な解釈だが、真実の一部は、ドイツやイタリアは、ヒットラー・ナチズム、ムッソリーニ・ナチズムを徹底的に糾弾することで、戦争の総括が可能だったが、日本は天皇制が象徴であっても継続したことで、総括の根本問題に手出しできない状況だった。つまり、総括的議論を日本は避け続け、現在に至っている。その事が、中韓米の歴史認識論でつけ入る隙を与えている。

 この問題を日本が充分に議論を重ね、自ら咀嚼し、国際的に表明できる状況まで論を消化したとき、憲法改正と云う議論も可能になるのだろう。こういう話題を提供すると、すぐさま天皇制排斥運動のように考える馬鹿がいるが、それは違う。国内でも海外でも、天皇に対する一定の評価は、日本政府への評価とは関係なく、かなり認知されている。日本の外交の言葉として、天皇の言葉が国際的に最も有効に作用する現実をみれば判ることである。諸外国に元首たちも、会いたいのは天皇であり、首相などではないのだ。このような現実と、戦争の総括と云う問題に、日本が総出で議論する智恵の限りを尽くした後で、歴史的事実に関わらず、日本は主権を取り戻せる。

 この歴史的事実は、幸運でもあり、不運でもある。しかし、現実だ。我々は、この問題こそ、国民的議論にまで高めてゆく義務があるのかもしれない。ただ、このような議論が最も苦手な、自然発生的国家だけに、その道は険しい。しかし、それを忌避している限り、アジアの中心的国家として、アジアをまとめることも出来ないし、欧米諸国と同等に渡り合う事も困難である。永遠に世界の財布と云う地位からの脱却は困難だし、古文書を引っ張り出して、己の国土の正当化をする嵌めになる。これでは、いたちごっこに等しい。国家の主権と云うものを入手するには、戦後の日本の天皇を象徴とする国家体制の正当性の議論から始まるもので、一足飛びに、天皇の元首化に飛び級出来るものではない。

 安倍自民党政権の考えている憲法改正は、根源的議論を回避した、迂回し、飛び級的に結論を得ようとする、思考経路忌避の発想である。このようなムード先行で、憲法を変えるなど、無教養な人間の考えることである。歴史の瞬間的状況を輪切りにして、その輪切りの断面が真実のようなかたちで、結論を出すのだと云う事は、町内会の落とし処のようなもので、普遍性も国際性も一切お墨付きを得ることはないだろう。まさに教養のない人々だ。

神も仏も大好きな日本人 (ちくま新書)
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米中の双方に喧嘩を売っている安倍晋三 整合性のとれない政策と発言の数々

2013年04月27日 | 日記
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●米中の双方に喧嘩を売っている安倍晋三 整合性のとれない政策と発言の数々

 安倍晋三の言動と内閣が強行しようとする政策の間のチグハグが目立ってきた。おそらく、安倍が調子に乗って発言した後で、微妙に軌道修正発言をしているようだが、一度放たれた言葉は永遠に消えない。特に外交上問題の起きる発言は、覆水盆に返らずだ。外交等と云うもの、そもそも本音を語るだけの関係構築だけでも、かなりに時間を要するもので、その間は建前論に終始するのが専らだ。中国、韓国のリーダーも新顔であり、安倍も新顔だ。この三人は、共に盤石の基盤を構築する時間を必要としているわけで、三人とも安全運転を心掛けるのが一般的だ。

 習総書記は共産党の看板の中で目立とうとしていない。パク大統領も報道官達が激しい言葉を吐いているが、本人の口から刺激的発言は聞かれない。しかし、議院内閣制の内閣総理大臣と云うポジションは、議会における発言のすべてが公になる。その意味では、発言のすべてが即刻外交的言葉になってしまう、非常に窮屈なポジションである。逆にいえば、首相の発言は、常に他国への意思表示と云う武器にもなり得る。つまり、首相の発言と云うのは、常にセンシティブなものである。自らの内閣が行おうとしている政策との整合性も保たないと一気に馬脚が現れ、権力の座から追放される。

 特に、TPPとアベノミクスとの整合性、対米依存外交と中国牽制外交の整合性が問題だ。TPPと云うものは、基本原則が自由貿易と市場原理を重んじる協定だろう。にもかかわらず、アベノミクスのインフレ達成の為には、価格統制経済の臭いのする安売り禁止のような狂気の発想が生まれている。これは自由競争を禁じると云う発想で、TPPとは真逆の論理だ。安倍は米国依存外交と対中牽制外交は両立していると思っているようだが、誰から外交の説明をレクチャーされているのだろう。到底、今の安倍晋三の中韓刺激外交は、外務省の望むものでもないだろう。そこが不可思議だ。

 産経によると、≪「2年で日中の軍事バランス壊れる」安倍首相、懸念示す。安倍晋三首相は26日夜、公邸で企業経営者や評論家らと会談し、外交に関する議論の中で中国の軍備増強に対する懸念を示した。 出席者の仏壇販売「はせがわ」の長谷川裕一会長によると、首相は「この2年で今の日本と中国の軍事的なバランスが完全に壊れてしまう」と述べたという。≫ 筆者から言わせれば、「だからどうだと言うの?」という事だが、まさか中国に勝る軍事力の間に戦争しよう、と言っているのではないと思うのだが、真意は如何に?また時事通信は、以下のように中国外務省の正式見解を報じた。

≪ 尖閣諸島は「核心的利益」=外務省当局者、公式に初言及-中国
 【北京時事】中国外務省の華春瑩副報道局長は26日の定例記者会見で、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)に関して「中国の領土主権に関係する」と述べ、中国の国家主権や領土保全など譲れない原則を表す「核心的利益」に属すると明言した。
 尖閣諸島が核心的利益に属するかどうかをめぐって、これまで中国共産党高官が日本要人との会談で述べたり、共産党機関紙・人民日報が指摘したりしたことはあるが、外務省当局者が公式の場で言及したのは初めて。
 核心的利益とは共産党体制維持のため絶対に譲歩できない重要問題で、分離・独立問題を抱える台湾やチベット、新疆ウイグルのほか、領有権を争う南シナ海を指してきた。尖閣諸島を公式に核心的利益と位置付けたことで、対日強硬姿勢が強まるのは確実だ。 
 訪中したデンプシー米統合参謀本部議長が中国政府高官と会談した際、同高官が尖閣諸島について「核心的利益」と発言していたとの日本メディアの報道を受け、華副局長は尖閣諸島に関して 「領土主権に関わる核心的利益だ」と認めた。≫(時事通信)

 安倍の発言を追いかけていると、心情的に中国と一戦交えてでも、保守政治家の面目を保とうとする気持が表れている。少なくとも、米国オバマ政権は、対中外交で親和的であり、日中がいがみ合う事など一切望んでない。米国に望んでいる勢力があるとすれば、ネオコンと産軍複合体であろう。つまりは、米国内における、反オバマ陣営の思考経路だ。この反オバマ陣営の思考経路を延長すれば、TPP等と云う貿易協定は愚の骨頂になる。だから、まったく意味が判らなくなる。正常な人間がキチガイの言い分を聞いているようで、カオスなら、カオスらしい希望があるのもだが、混線しているだけのリーダーの存在は、効用ゼロの副作用薬剤のようである。

 安倍の予算委員会での答弁中の顔つきを見ていると、“どや顔”丸出しで、“今でしょ!”と本気で尖閣紛争にケリをつけかねない不安定感がある。殆どの日本人が、日中戦争なんてあり得ないと思っているだろうが、筆者は1,2割の確率はあるような気がしている。まぁ、仮にそのような事が起きても、現在なら米国・ロシアに一定の仲裁能力があるので、局地戦で済むだろうが、双方のナショナリズムの噴き上がりによっては、収拾のつかない事態も予期しておく必要があるのだろう。荒唐無稽の想像のようだが、それほど安倍晋三の言動と政策には不一致が多過ぎる。すべてを並べて検証する気にもならないが、かなりの点で、アクセルとブレーキが同時に踏まれている。こうなると、TPP交渉参加はみせかけ批准せずなら理が通るが、そんなこともなさそうなので、やはり情緒不安定者の世迷言なのだろう。でも、内閣総理大臣なのだ(笑)。


日本の転機: 米中の狭間でどう生き残るか (ちくま新書)
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ボストン・マラソン爆破事件で露呈した傲慢移民国家・アメリカのアキレス腱

2013年04月25日 | 日記
アメリカが劣化した本当の理由 (新潮新書)
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●ボストン・マラソン爆破事件で露呈した傲慢移民国家・アメリカのアキレス腱

 どうも日本国民はトンデモない男に、政権を握らせてしまったようだ。筆者は別に親中でも親韓、親露でもない。日本追放で、どこでも好きな国に送還してやると言われたら、ポルトガルとかスペイン辺りが良いかな?と思っている。中韓露も米も、まったく棲みたいとは思わない。そんな話はどうでも良い事だが、安倍自民党の政治の方向性は、あまりにもチグハグだ。今にも中国と国交断絶して戦火を交える寸前の大日本帝国の内閣総理大臣のようだ。どこかが狂っているとしか、解釈のしようがない。

 本人は、さしたる自覚もなく強い言葉に酔っているだけなのだろうが、“やっちまえ!”と世論の噴き上がりに油を注いでいる。真正保守は戸惑い、似非右翼は興奮し、中道はハラハラドキドキ。左派は、唾を飛ばし悲鳴をあげ、愚民たちも、似非右翼並に精神が高揚している。安倍晋三は、自らの言葉に酔いしれ、考えてもいない状況を迎えるのかもしれない。誰が、この興奮を収拾することが出来るのだろう。アメリカのイニシアチブが作動するに違いない、と云う願望は、今では虚しいものだと云う現実も知るべきである。もう、米国は日中の仲裁に乗り出す気力も体力も残っていない。

 アベノミクスの成果を吟味する前に、トンデモナイ偶発的事件が起きる可能性は、結構あるのではないのだろうか。中国の政権交代は、安定するまでに多くの場合まる丸一年かかると言われている。つまり一年間は、中国と云うアンバランスな国家は不安定の上に存在する。世界の警察を標榜したアメリカ自身が、今や自らの普遍的価値と位置づけた移民国家の様々な難題に直面し、かなり明確な軋みを見せているのだから、世界がカオスならいざ知らず、戦国時代に突入するリスクさえある状況なのである。そこで、ひとり声高に北朝鮮並の勇ましさを語ると云う事は、かなりのリスクである。WSJが重要なポイントを提示している。

≪ 米国は人種のるつぼでいられるか
 先週、人種のるつぼが圧力鍋爆弾に見舞われた。
 ボストン・マラソン爆破事件は、ロシア・チェチェン共和国生まれの兄弟が容疑者となっている。1人は米国市民権を持ち、もう1人は合法移民だった。この事件は、自国産テロに光を当てるだけにとどまらない。
 兄弟は、米国はあらゆる人種、民族が集まったるつぼであるからこそ、偉大な国なのだという定理に疑問を投げ掛けた。
 それでも人種・民族の多様性は米国にとってあまりにも基本的な思想であり、結局はそうした疑問を圧倒するだろう。だが、議会で画期的な移民規制改正法案が審議され、米国の人種構成が急激に変化している最中に、このテロ事件が起きたことで、人種のるつぼ論はいままさに「ストレステスト」を受けようとしている。だからこそ、それを信じる政治家は、るつぼとしての米国を擁護するため立ち上がらなければならない。
 米国の多元主義の象徴であるオバマ大統領が、同事件の容疑者拘束を受けて19日夜に声明を読み上げた時に、胸中にあったのはそのことだった。声明は、米国は移民を歓迎する社会であるとのアイデンティティーが打ち勝つのかどうかとの疑問に真正面から答えるものだった。  
 「米国を最も偉大な国に、そしてボストンをこれほどすばらしい都市にしている理由の1つに、世界中からやって来る人々を歓迎していることがある。あらゆる場所から、あらゆる宗教、あらゆる人種を。だから、この悲劇がなぜ、どのようにして起きたのかを知る過程でも、この精神をなくさないようにしよう」
 多元主義は世界各地で失われつつある。イラクやアフガニスタン、シリアはさまざまな人種、宗教勢力からなる国家として存続しようと必死にもがいている。 バルカン諸国はまさにバルカン化している。欧州でさえ、さらなる統合には経済的な問題が重しになっている。
 米国勢局によれば、2000―10年の間に白人の人口比率は69%から64%に低下し、その間の人口増の半分以上はヒスパニックで占められた。ヒスパニック人口は同時期に43%増加している。
 一方、大きな社会的変化を受けて、人々を束ねていたきずなの中に緩みが出てきた。例えば、第2次大戦や冷戦時代の初期の世代は徴兵を経験しており、それがあらゆる人種や社会階層の男性間に共通のきずなをつくり上げ、相互理解をもたらした。しかし現在は、軍役に就いている者はごくわずかで、しかも志願制になっている。退役軍人は1980年の2850万人から2150万人に減少している。
 それほど遠くない昔に、3大テレビネットワークによってほとんどの米国人が文化的経験を共有する時代があった。いまでは、エンターテインメントとニュースの両方でニッチ化したメディアがあふれ、狭い領域の中で外と交流することなく満足できるようになった。
 宗教も米国人を結束させるものではなくなっている。1990―2008年の間に自らをキリスト教徒とする人は15%増加した。これに対し、全体への比率としてはごくわずかだが、イスラム教徒は155%、仏教徒もほぼ3倍増加した。その一方で、世論調査機関ピュー・リサーチ・カウンシルによれば、特定の宗教を信仰していないとする米国人は、人口のほぼ20%を占めている。これら20%の人は必ずしも信仰心がないというわけではないが、宗教団体のコミュニ ティーの一員として結束する経験を持っていないことを意味している。
 こうした社会的な変化は、特に今回のようなテロ事件が発生すると、多くの米国人を怯えさせる。重要なのは、これらの人々に多元主義社会のメリットを思い出してもらうことだ。  例えば、パートナーシップ・フォー・ア・ニュー・アメリカン・エコノミーによれば、2010年のフォーチュン500社番付入り企業のうち、移民ないしその子供が創業した会社が全体の40%超を占めた。また、1995―2005年に設立されたハイテク企業のうち創業者の少なくとも1人が移民である会社は25%に達した。
 昨年の大統領選は、アフリカ系米国人とモルモン教徒との戦いになった。次回大統領選では、女性やヒスパニック、さらにはインド系の候補が出てきそうだ。
 多様化がゴルファーのタイガー・ウッズや、歌手のリアーナ、チェリストのヨーヨーマを生んだ。米国のノーベル賞受賞者の3分の1近くは、米国外生まれだ。
 他のどの国もこうした強みを誇示することはできない―現在のような時だからこそ思い起こすだけの価値がある。 ≫ (ウォー ル・ストリート・ジャーナル )

 人種のるつぼ故の強さがアメリカにあった事は認めよう。ヨーロッパを中心とする民族がプロテスタントの信仰の下、アメリカを創り上げた。少々乱暴な認識だが、大筋では間違っていない。白人から、黒人、マイノリティ、東洋人と門戸を開き、今の人種のるつぼのような人工国家が生まれ、それなりの産みの苦しみを経て、現在のアメリカをつくりあげた事は賞賛に値する。しかし、20世紀において最期の覇者となったアメリカは不遜だった。21世紀に入っても、その自ら切り開いた人工国家の歴史ゆえに貴重であり、正当性と普遍性と持ち得る、という怖ろしい自負に満ちている。

 それが、我々が目にしているアメリカだ。彼らの多くは、ゼロから創り上げた国家(人工国家)こそ価値があり、自然発生的に何の苦労も、思考錯誤もなく生まれた国家に普遍性を創造する能力はない、と決めつけている節がある。これこそが、筆者から見るところの、鼻持ちならない不愉快さなのである。彼らの高慢度と云うのは、世界中の国家の中でNO1だろう。彼らは知恵やテクノロジーを過信し、傲慢このうえないのである。何度となく彼ら米国人とビジネスをした人間なら経験する絶対的自信。それは驚異的と言えるのだが、筆者は太平洋を挟んだ彼方から、その歴史の落とし処がどのような過程を経るのか、興味深く見つめている。

 しかし、この人種のるつぼ故に、強靭さ、多様性の経験を絶対視して、普遍的システムだくらいの感覚で、自然国家のフィールドに、土足で踏み込まれたのでは、堪ったものではない。しかし、この勢いだと、素手一本で、無能なリーダの下で、虚しい闘いを強いられそうな日本人が大多数であることは、第二、第三の敗戦を迎えるようで、気分が落ち込む。口喧嘩の段階でおさまる対立が続く限り、日本は益々人工移民国家の支配下に置かれるのだろう。世紀のアクシデント起きても困るが、ジワジワと人工移民国家同様の価値感で生きるのも同調し難い。しかし、政治に、この難問を解いて貰おうと考えるのも愚だと思う。さて果て、どうしたものだろう。

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来
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“経済効果実感”は二年後と「夢」乱発 参議院選終了までは、消費税先延ばしリップサービス

2013年04月24日 | 日記
金融緩和の罠 (集英社新書)
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●“経済効果実感”は二年後と「夢」乱発 参議院選終了までは、消費税先延ばしリップサービス

 昨日の拙コラムで語った「中韓露印、ASEANにソッポを向かれ始めた日本 世界の孤児ならぬアジアの孤児に」の核的対象国・中国との外交強がり合戦が賑々しい。安倍晋三は尖閣領海内を中国の海洋監視船が11時間に亘り航行した問題で、「尖閣諸島と海域を安定的に維持管理するための具体的な方策として、公務員の駐在や船だまりなどの様々な選択肢は常に頭の中にある」と答えると同時に「中国が挑発行動を取って問題があるからといって、全ての関係を閉じるのは間違いだ」とも述べていた。強きと弱きが交錯するような答えだが、対中、対韓強き外交のポジションから好感をもたれる安倍晋三と、米国の対中穏健包囲外交への忠誠ポジションと云う好感の狭間でコウモリのような態度に終始している姿が垣間見えた。

 マスメディアは、ヒステリックに中国監視船が過去最高の数で尖閣領海内を航行、日本漁船を追い回したとか、習近平国家主席と米軍制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長と会談の最中の暴挙であるような報道が主体だった。時事は以下のように報じている。

≪中国監視船8隻、領海に11時間=魚釣島1キロまで接近-沖縄・尖閣沖
 沖縄県石垣市の尖閣諸島沖で23日午前、日本の領海に侵入した中国の海洋監視船8隻は、約11時間後に領海を出た。同諸島周辺では同日、日本の政治団体関係者らを乗せた船が9隻航行し、中国側は領有権を主張するために対抗した可能性もある。
 第11管区海上保安本部(那覇市)によると、8隻は海洋監視船「海監」の「23」「46」「51」「15」「49」「50」「66」「137」。23日午前8時25分ごろまでに領海に侵入し、同日午後7時 15分ごろまでに、いずれも久場島沖で領海を出た。海監50は午前11時ごろ、魚釣島の北西約1キロまで近づいた。同諸島周辺の接続水域では漁業監視船 「漁政201」「漁政202」の2隻も航行した。
 政治団体「頑張れ日本!全国行動委員会」によると、22日午後10時半ごろ、地方議員2人を含む約80人が石垣市の石垣漁港を出発。23日午前4時ごろから魚釣島沖などを航行し、同日午後6時ごろまでに同漁港に戻った。航行の目的については、「日本の領海で漁業活動をするため」としている。≫(時事通信)

 記事でも触れているが、単なる日本漁船が尖閣付近で漁をしていたと云う話ではなく、政治団体「頑張れ日本!全国行動委員会」の漁とは程遠い政治的運動の一部であった事は事実であり、はじめから、この程度の騒ぎになることは想定内の話である。政治団体「頑張れ日本!全国行動委員会」が参加費135,000円で募集した、一定の政治姿勢を持った団体の親睦観光体験ツアーのようなものである。当該会の会長は田母神俊雄氏、幹事長は水島総氏と云う錚々たるメンバーである。安倍晋三を側面支援する行動のようだが、上述の二股膏薬の真実を晒す、贔屓の引き倒しと云う側面もあるようだ。

 村山談話の見直しを2015年に行う、と安倍晋三が発言。周辺を含む多くの人間が呆気にとられたわけだが、どうもアベノミクスの効果が現れるまでに2年は掛かるだろうと、麻生までが言い出したようだ。消費増税も、そのような観点から言えば、先延ばしもあり得ると微妙な発言を開陳した。ロイターは以下のように報じている。

≪ 消費増税、状況次第では先延ばしもあり得る=財務相
  [東京23日ロイター] 麻生太郎財務相は23日午後の参議院予算委員会で、来年4月に予定している消費税引き上げについて、今年10月に判断したいと考えているが、引き上げの状況とならなければ、延ばさざるを得ないということは十分にあり得る、と語った。
 広野ただし委員(生活)の質問に答えた。
 麻生財務相はその場合の先延ばしの期間について「3カ月か半年か1年か、今申し上げる段階にはない」とし、「97年も消費税を5%に上げたときは減収になった。そういったことは十分注意して、今はまず景気を引き上げることに全力をあげている」と語った。
  消費税を引き上げた場合、来年以降の景気の重しとなるのではとの指摘には「そういったものに耐えられるGDPや指標をあげておいた上で、国民が気分としてそれくらいのものならやれると思えるようなものにしないといけない。今年駆け込み需要があっても来年その反動が来るといったことなど、十分に考えておかなければならないことはあると思うので、その点も考えて判断したい」と語った。
  麻生財務相は午前の同委員会では、消費税引き上げの判断について「景気が良くないと上げられないと(税制抜本改革法の附則に)書いてある。そういったこと(消費税引き上げ)になるように景気を良くしないといけない」と指摘。「(判断する際にみる)指標にはいろいろある。政治的判断で決まる。
 街角景気のDIや賃金、住宅価格など、指標の流れも含めて検討したい」と話していた。≫(ロイター)

 このような発言が飛び出すところをみると、どうもアベノミクスが景気浮揚に貢献している数字が実体経済上現れそうもない弱きが顔をもたげている感じだ。株価上昇に関しても、いまだに海外資金による買い越しのルーチンから国内参戦には至っていない。相当海外勢にも苛立ちが目立ちはじめている。日本勢が参戦してはじめて、大きな利ザヤが得られるわけで、自分達だけババ抜きをしている状況は好ましくないだろう。米国株式市場では「ヒンデンブルグ・オーメン」が点灯し、テクニカル的な株価暴落の前兆が現れたと云うだけに、気が気ではないだろう。

 アベノミクスとは、経済の好循環を逆さまから行おうと云う、史上初の実験場である。まずバブル経済を作り、そのバブル数値を基に好決算を生みだし、マヤカシのPBR・PERを充足させ、新規事業や設備投資を促し、雇用を盛んにし、賃金も上昇させよう、と云うのだから、手品のような事を考えている。つまりは、上手く行きようがリフレ経済政策なのである。このままでは、到底参議院選前まで、好景気風味の持続は厳しいと見るのが妥当だ。そこで、本来の景気循環に戻るには2年はかかる。故に、消費増税の先送りはやむを得ない、と宣言する可能性が出てきた。折角だから、愚民たちが歓ぶような情報は餌として利用するのは、選挙のイロハである。植草氏が以前予測していたが、参議院選直前に「消費税凍結乃至は先送り」を宣言する可能性は強まった。その意味では、反消費税は選挙の争点として重要視しない方が良さそうだ。反TPPと96条先行改憲反対が妥当なのだろう。

漂白される社会
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中韓露印、ASEANにソッポを向かれ始めた日本 世界の孤児ならぬアジアの孤児に

2013年04月23日 | 日記
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●中韓露印、ASEANにソッポを向かれ始めた日本 世界の孤児ならぬアジアの孤児に

 安倍自民党政権の“TPPへの交渉参加表明”は、必ず批准にまで至ると云う保証はないような気がする。安倍晋三が、オバマを裏切るとか云う意味ではなく、安倍政権の付け焼刃な経済政策が頓挫するばかりではなく、経済界が悲鳴を上げる時期が刻々と迫っている事が重要なポイントだ。つまり、対米重視一辺倒になってしまった安倍自民外交が、外交らしい選択肢をすべて捨て去った結果、アジアで孤立し、二進も三進も行かない立ち往生が顕著になってきていると云う事だ。

 覇権国としての凋落が確実なアメリカに対し、何ひとつ対等にモノが言えなくなった日本の政権、霞が関官僚組織、マスメディアの機能不全は、来るべきピークに達しかけている。もう少しで下り坂に入るのなら未だ救いがあるが、どうも頂上の先には断崖絶壁が待ち受けている地形のようである。直角三角形の頂点から、真っ逆さまに落っこちる運命と云う事だろう。民主党が政権を握っていた時点から、この傾向はみえていた。鳩山が退き、菅と小沢が最期の聖戦を行った時点に、日本の岐路があったような気がする。

 この聖戦において、民主党左派勢力と民主党松下政経塾勢力が、彼らにとって不都合な敵・小沢一郎を葬り去るために、米国暗躍勢力と手を結んだ時点で、日本の将来は、当面決定された。菅、野田と二代に亘り、失政に次ぐ失政を冒したわけだ。その時点でさえも、オバマがごり押しするTPPが、余りの不平等条約と云う理由で、流石に二の足を踏んだ形跡がみられる。しかし、棚からボタモチを二つ(自民党総裁選の勝利、衆議院選の大勝)も食べてしまった安倍晋三は、宙に舞い上がる高揚感で満たされていた。

 金融政策と云う小手先マクロ経済で、構造的に疲弊した経済成長力が突如誕生するのなら、誰も苦労はしないのである。アベノミクスの三本の矢は、すべて国民生活を苦しめるための政策である。TPPにも、同種の臭いがプンプンしている。この二つの棄民政策は、驚異的に生活者としての国民生活を破壊するだろう。ジャブジャブの金融緩和政策は、経済成長期には通用する金融メカニズムだが、必然性のある潜在的に成長力が見込めない先進国の経済土壌には不適合なのである。供給が需給を上回った国家で、金が潤沢になっても、投資する先がないのだ。そのような産業を、無理矢理でも創り出すなら別だが、それでは社会主義国家そのもになる。

 国際収支のバランスも、恒常的にマイナスに転じた。その輸出入のバランスの崩壊は、円安誘導により、更なる悪化を来すのは確実な情勢だ。三本目の矢だと云う、成長戦力も酷い内容で、サラリーマンを更なる地獄につき落とす勢いの話に傾いている。おそらく、非正規社員の比率はとめどなく拡大し、7割の勤労者が非正規雇用になるのだろう。そのような政策で、誰が得をするのか?一定の経済ベースに裏打ちされた人々の中で、知識教養に努力と運とを備えた僅かな人間が勝者となる、弱肉強食国家の成立が約束されたようなものである。

 上記の問題だけでも、充分に最悪なのだが、更に最悪は重なり、日本を襲うだろう。それが、最近目立ちはじめた、中国、韓国との明確な外交上の軋轢である。なにせ、安倍晋三は、米国一辺倒外交にシフト、その他の外交はモンゴル辺りとちょめちょめしているだけで、これといった外交交渉を行うことが出来なくなっている。逆の言い方をすれば、オバマだけをジッと見つめているような視野狭窄な妾に、他の近隣国家は匙を投げてしまったのである。つまりは、アジアにとって、日本不要論のような機運を、安倍自民党自身が投げかけてしまったのである。

 たかが韓国のパク・クネ大統領にまで舐められ、パク大統領は米国、中国を訪問予定で、日本はその次に行こうかと云うスケジュールだと云う。例年4月には行われていた「日中財務対話」のスケジュールに、当然麻生副総理兼財務相が行くつもりだったが、習近平国家主席にも、李克強首相にも会えそうもなく、不貞腐れ、菅官房長官は「全く検討もしていません」としらばっくれている。

 また、麻生が靖国神社を参拝し、韓国を苛立たせ、今週末に予定していた尹炳世外相の訪日を取りやめた。北朝鮮問題で、緊密な連携が求められているにも関わらず、日韓のしこりは、新大久保などのヘイトスピーチ韓国排斥デモとも重なり、石のように固くなってしまった。前大統領李の狂気の竹島上陸では、日本に分があった日韓関係悪化も、どうもイーブンから、韓国側有利に流が変わりつつある。中国との関係改善の目処が立たない以上、せめて韓国とは雪解けムードを演出する外交が求められていたが、どうも方向は悪い向きを加速させている。

 超党派の日中友好議員連盟(会長・高村正彦自民党副総裁)も5月1~3日に予定していた訪中を中止すると発表した。希望していた習近平国家主席、李克強首相、李源潮国家副主席との会談の見込みが立たず、すごすごと断念を表明した。日本側には、超党派議連の訪中を関係改善の糸口にしたいと思惑があり、高村は安倍の特使として訪中する腹のようだった。そんな糞ったれな子供騙しが通用する環境ではなくなった現実をあまりにも知らないノウタリンである。このようなことで、日中も、日韓も、シコリから塊りになりつつあると云うのに、安倍は、恐れ知らずと云うのか22日の予算委員会で「村山談話を継承する気はない」、「戦後70年を迎えた段階で、安倍政権として未来志向のアジアに向けた談話を出したいと考えている」と語り、2015年に自らの新談話を発表すると発言した。

 えっ!2015年?今年は2013年のはずだが、ほう!2015年まで首相でいると思っているようだ(笑)。麻生が慌てているのではないだろうか。石破も慌てているだろう。こりゃ堪らなく滑稽な予算委員会における発言だ。2年先の予定まで口にする、どこまで能天気な男なのだろう。それを、そのまま突っ込みも入れずに垂れ流す、マスメディアもマスメディアだが・・・。まだ話は続きがある。5月の日中首脳会談は、当然のように流れているが、経団連の馬鹿爺モンサント米倉が、こともあろうか「5月半ばに訪中するから、習近平国家主席、李克強首相達と会いたな~」と申し出たそうである。当然だが色よい返事が返ってくる筈もなく、「ほんじゃ、7月ならどうじゃろ?」と益々お馬鹿な質問をしているようである。安倍晋三も経団連も外交が可能なのは、米国の息のかかった、モンゴルやサウジ辺りに限定されそうである。ロシアへの訪問は大丈夫なのだろうか?

 まぁそんなこんなで、安倍自民党は、民主の菅・野田政権以上に、隣国との関係悪化を助長している。太平洋を跨いだ米国とどれほど蜜月であっても、ひと跨ぎの韓国、中国との関係悪化では、まともな外交戦略など立てようがなく、何もかもを米国に委ねる3等国に成り下がるのは確実なようである。歪んだ右翼であれば、それは真に悦ばしい事だと諸手を挙げるだろうが、まっとうな神経の持ち主であれば、この異様さに気づかなければならない。

 TPPへの交渉参加表明は、同情的にみれば、対中、対北朝鮮との安全保障の観点からの判断であり、憲法改正で、ゆくゆくは軍隊を持つ独立国を確立するまでの仮の姿と云う解釈も成り立たないものでもない。しかし、何も今さら軍隊と銘打ち、肩肘を張ったとしても、その効果で外交が有利に展開すると考えるのは、浅はか過ぎるだろう。好戦的な、米国や中国、ロシア、北朝鮮に対抗できるだけの軍事力を維持すると云う事は、核保有一つとっても、事実上不可能な幻想である。また、軍事増強に予算を割かれ、福祉切り捨てに甘んじる国民でもあるまい。もう少し、自衛力を高める程度の認識がギリギリの線だろう。

 そんなことよりも、TPPと並走するかたちで、日中韓FTAとかRCEPを先行する状況をつくりあげ、米国を牽制する程度の外交力を発揮して貰いたいものである。RCEPが中国主導になりかねない不安が日本にはあるだろうが、交渉不可で損の上に損を重ねるTPPよりは、相当の範囲で交渉力を維持できる。ところが上述のように、中国、韓国との関係が、小さな冷戦構造のような形状を益々明確にしているのだから、手の施しようがない。このまま、内容不明の極めて乗り越える壁の高いTPPに邁進してしまえば、国家主権も民族の文化もズタズタにされかねないのである。安倍自民は憲法改正により、集団的自衛権を行使できる元気な国を取り戻すと言っているが、米国に脅かされて、元気な国もへったくれもあったものではない。安倍の民族主義が如何に低俗なものか、これだけでも説明がつく。

 当初、筆者は今夏の参議院選は前回の衆議院選よりは自民党に不利に働くだろうが、大きな情勢に変化を与えるのは厳しい、と評していたが、幾分表現を変えることにする。ここは、どうしてもTPP批准を容易にさせない勢力の結集が必要だと考えるに至っている。反TPPと反原発を何とかして選挙の争点化する運動が必要なのだろう。他国の文化にまで土足で踏み込むような協定を結ぶことが、自由貿易だとするならば、自由貿易とは個性の喪失であり、他者の価値観を認めない、ファシズムに与することになる。軍国的ファシズムより、文化的ファシズムの方が、余程怖いし悪質だ。なぜ日本が、病んだ巨人の文化を受け入れなければならないのか、とんと解せない。

 200年そこそこの歴史しか持たない文化に、2000年、3000年の文化が易々と牛耳られる必然性はない。また、そんな戯言につき合い、コウモリのような態度に終始していると、アジアの目は、中国に向いてゆく。或いは米国に向いてゆく。気がつけば、親日国家が不在のアジアで孤立し、太平洋を跨いで深情けのような愛情を注いで旦那様には、「オマエは食べ尽くしたから、もう食わなくて良い」と言われ、“そして誰もいなくなった”になるのである。名誉白人で歓ぶような“さもしさ”は捨てよ。金の亡者になっても、必ずしも金が増えるわけではない。否、むしろ失う方が多いだろう。


おどろきの中国 (講談社現代新書)
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●TPPとは、死期の近い“巨人”の延命処方箋に、日本市場と云う特効薬を加えること

2013年04月22日 | 日記
日本社会の歴史〈上〉 (岩波新書)
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●TPPとは、死期の近い“巨人”の延命処方箋に、日本市場と云う特効薬を加えること

 現在、国内を二分して侃々諤々な議論が展開される「TPP論争」は、交渉に参加することで、批准までは既成事実として扱われているのも不思議だ。批准もさることながら、脱退も不可のような解説が多いが、そんな馬鹿な国際協定など存在する筈もない。日米同盟同様のトラウマから生まれている言説に過ぎないのだろう。尚且つ、これらの議論は、筆者を含め協定の中身すら見ないで推定議論しているのだから滑稽だ。開けてから、更に度肝を抜かれるものなのか、骨抜きの自由貿易協定なのか、その実体は判るのだろう。

 いずれにせよ、このような自由貿易の看板を掲げながら12か国による囲い込み貿易協定は、閉鎖的な経済ブロックの構築でもあるわけで、参加していない国から見れば、「ブロック鎖国経済」に映ることも念頭においておくべきだ。また、このようなブロック鎖国経済(TPP)が軍事同盟の色彩が強いものだと、他の近隣諸国に見られてしまえば、TPP枠内の国家との外交以外には、益よりも害の方が勝ってしまう事実も覚悟しなければならない。問題は、なぜ、米国オバマ政権がTPPに横入りしてまで、この協定のイニシアチブを取ろうと考えたのかという問題である。

 本来の資本主義の成長原動力を失った、唯一の覇権国アメリカは、その原動力を金融工学に託した。その効果はたしかに享受したが、その詐欺のような原動力は、リーマンショックによって見事に破綻し、その後大統領に就任したオバマは、本来の資本主義回帰を試みた。当然、本来の資本主義における成長の原動力は、あらゆる金銭に置き換えられる需給のバランスで成り立つ。しかし、ふり返って自分の国の需要の貧弱さ、供給力の欠如と云う現実に直面した。つまり、金融資本主義と云う速攻性の強い麻薬を飲み続けた米国の経済は、まさにスカスカの状態だったのである。

 所謂、米国経済は「骨粗しょう症」の状態だった。そこで、製造業の復活を夢見たのだが、骨の髄までスカスカな空洞化は、今さら治療のしようがない事に気がついた。自力で、アメリカの経済を復活させることが不可能となった以上、どこかの他国の経済成長の原動力を拝借してでも、成し遂げなければならないと思うのは、一国のリーダーとして当然の思考の結果である。日本の市場に成長の原動力があるかもしれないと考えたのか、居直り強盗になってでも、属国でありながら覇権国並みの一人当たりGDPで、富を浪費する日本と云う国家から富を収奪するシステムを構築するのは、米国流の正義でもある。おそらく、オバマ政権の行き着いた先がTPPと云う収奪システムなのだろう。

 幸か不幸か、都合良く日中は尖閣問題で睨みあっているし、北朝鮮の核実験やミサイル問題が起き、日本政府としては、米軍に加勢して貰う気持ちが強く作用した状態が続いている。09年の鳩山・小沢民主党政権が誕生した時は、相当焦ったが、日本の司法行政とマスコミが、米国への忖度的態度で、自発的に自浄作用を発揮してくれたのでことなきを得た。その民主党の惨状に学習機能を発揮した、現在の自民党政権は、従前以上に恭順の意を示し、もはや逆らおうという気力すら見せない。

 しかし、このように米国の思い通りが続くことは、世界の潮流が許さない時代が来ているので、一過性の現象に過ぎないのだろう。安倍自民政権である方がオバマ政権には都合が良いわけだから、G20財務相・中央銀行総裁会議共同声明でも、日本の金融政策や為替操作的政策を口汚く罵ることもなかった。欧米にとって、日本のバブル醸成は当面の間は好都合と云う、渡りに船な出来事なのだ。しかし、彼らの思惑に反して、日本国内でアベノミクスの副作用が先行的に表面化し、秋口には安倍政権が行き詰まるリスクがないわけではない。

 そのような、綱渡りのような経済運営を取らざるを得ないオバマ政権の足元には火がついている事実も存在する。クリントン政権でさえ成立させられた、銃規制に関わる、僅かな規制関連法が、議会によって粉々に粉砕され、オバマに「恥ずべき日」と言わしめたのである。この米国の銃規制問題は、米国の建国の精神とも深く関わっているのは周知の事実である。もう少し深く考えると、ボストンはアメリカの独立戦争における歴史的重要地点(ボストン虐殺事件、ボストン茶会事件など)であり、マサチューセッツ州でみれば、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学などもあり、学生数が25万人以上とも言われ、歴史の町であり、学都である。

 このアメリカの象徴的都市で起きたボストンマラソン爆破事件、ウェイコ近郊肥料工場爆発事件、オバマと議員に送りつけられた毒物事件には、何ら関連性がないように見えるのだが、そこにオバマの銃規制法案が絡むと、相当のキナ臭さが生まれてくるのである。リアリストで狡賢いオバマであるが、彼には、相互扶助世界の構築という遠大なビジョンもあるので、彼自身米国に多くの敵を抱えている現状も見逃せない。米国内では、銃規制に苛立ちを募らせる勢力の自作自演が、今回の一連の事件なのではないか?という疑問が多く投げかけられている。たしかに、マラソンゴール付近で、極めて非現代的圧力釜を利用した爆破装置が登場したり、その二人の犯人が、その後コンビニ強盗をすると云う、頭を捻るような出来事が起きている。

 たしか、93年にウェイコで起きたブランチダビディアン事件の強引な連邦政府の弾圧に対し、米国内右翼勢力が宗教の自由や、米国民の武装の権利を主張し、オクラホマ連邦政府ビル爆破事件が起きた。このオクラホマ連邦政府ビル爆破による死者は168人で、あの911が起きるまで、米国最大のテロ事件として歴史に刻まれている。この時使用された爆弾は肥料の製造に使用される化学薬品で作られていたもので、何やらデジャブナものを連想させる。

 今回の一連の事件に関連性はないと云う方向の報道が主体だが、現在の米国は、オバマに象徴される経済至上主義と極めて保守的な国民層が睨みあっている、或いは憎み合っているような情勢で、アメリカの足元は大きく揺らいでいる。ゆえに弱いと言うのではない、ゆえに危険なのだ。どちらも強気に出るのが米国流の暴力付きデモクラシーなのだから、こんな状況の国を相手に“やらずぼったくり”のような協定を締結することで、日本国民は財政赤字以上の負債を背負わされたことになる。

 TPPの包括協議とは別に、この協定では“二国間協議”と云う罠まで仕掛けてあり、日本のシステムや文化が何処まで壊されるか、想像もつかない。中には、当然改革した方が良いものもあるが、筆者などが改革を強く思う、行政改革や司法制度改革、マスメディア改革などは、要求に入っていない。つまり、経済界、霞が関官僚、マスメディアは治外法権にして貰える密約でも存在するような協定の中身になっている。


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石破君、“嘘を言っちゃイカンぞよ” 最高裁無効判決は各選挙区に及ぶだけ

2013年04月21日 | 日記
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●石破君、“嘘を言っちゃイカンぞよ” 最高裁無効判決は各選挙区に及ぶだけ

 衆議院小選挙区区割り法案で珍しく自民党が国会運営で苦戦している。思い起こせば、昨年の11月14日、野田佳彦と安倍晋三の党首討論の中で、「近いうち解散」で嘘つき呼ばわりされるのが辛い、と政権与党民主党を崩壊に追いやった野田佳彦が解散を宣言した時の討論の中に、安倍と野田の間に解散条件が了解事項として公になっている事実が重しになっているのだろう。野田は「……特例公債法案、衆院『一票の格差』、定数削減について早期に成立をさせる確約をいただきたい。特例公債法案は3党合意ができた。『一票の格差』と定数削減も今国会中に実現する。それを約束していただければ、『近いうち』を具体的に提示する」と言って民主党を奈落の底に貶めたのである。

 「『一票の格差』と定数削減も今国会中に実現する」が解散の条件だったのだが、野田の“今国会中”は物理的に不可能な話で、現在行われている通常国会においても含まれていると認識できる。それはさておき、自民と民主で約束された方向性は一票の格差と定数削減である。ここで言う一票の格差は2倍以下、つまり限りなく一人一票に近づく努力目標が示されているわけで、理想は1.0倍である。自民党の「0増5減」は二つの高裁判決で出された選挙の無効で示された法意を馬鹿にした小手先の変更で、2倍を割って居るといっても「1.998倍」なのである。

 「1.998倍」では、最高裁は「裁判所を馬鹿にするのか!」と余計怒り出すような、やぶへびな改正案である。最低でも1.7倍程度まで是正しない改正が法の満足を得るとは思えない。自民党は、「定数削減」の方は、しかるべき考えがまとまるまで、与野党で協議しようと半ば議論を放棄しようと企んでいる雰囲気だ。そこで野党は、しかるべき議論を経た後「定数削減」を決定する期日を明示しろと言っている。一票の格差是正も定数削減も互いに干渉し合っている問題なのだから、同時に決めるべきが筋だ。仮に、どちらかを先行するとして、最終結論の期日を明確にしない限り、最高裁の法意を満足させる事はないだろう。しかるに、石破と云う自民党の幹事長は、寝惚けた発言をしている。それを寝惚けた新聞社が嬉しそうに記事にしている。

≪ 最高裁が無効判決なら全国会議員辞職だ…石破氏
 自民党の石破幹事長は20日、三重県鈴鹿市で講演し、衆院小選挙区定数の「0増5減」を実現する区割り法案(公職選挙法改正案)について、「最高裁判所が(衆院選無効の)判決を出せば、国会議員はみんな辞職だ。0増5減をやるのは当たり前だ」と述べ、法案成立の必要性を強調した。
  民主党などが今国会中の定数削減を含む抜本改革を求めていることについては、「できもしないことを言って国民の期待をあおり、物事が決まらない政治はしない」と述べて批判した。≫(読売新聞)

 石破は、国民が馬鹿なのを承知した上の発言なのか、話している本人が馬鹿なのか判らない。まして、石破幹事長の勘違いを是正もせずに、発言を垂れ流す読売という新聞社の脳タリン、否、悪質ぶりも中々である。この一票の格差裁判の特長は、都道府県の選挙管理委員会が被告なので、最高裁によって無効判決が確定しても、全国会議員辞職等と云う馬鹿げた事態は起きないのだ。

 つまり、広島**区から選ばれた国会議員が選挙無効で失職するだけで、他の選挙区にまで及ぶものではないし、参議院議員は関係ない。この辺、石破は判っているのか、いないのか。案外、最高裁判決も、各選挙区単位で判決を出さざるを得ないと云う法的事実を知らない人々は、議員もマスメディアも国民も大多数だろう。まぁメディアが指摘するくらいの知性は見せて貰いたいものだ。

 読売新聞ってのは悪質な新聞社だね。読売のサイトのトピックスのトップに「最高裁が無効判決なら全国会議員辞職だ…石破氏」の見出しが、一晩中出ている。書かされた記者は恥ずかしくないのかな?ナベツネに無理やり書かされたのだろうか。多分、彼らの知能からすると、一票の格差訴訟の法理を知らずに語っているような気がする。これでも新聞社なんだよね。面白い国だよ日本は、本当に。


「本末転倒」には騙されるな 「ウソの構造」を見抜く法
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TPPの“11カ国参加承認協議”のヤラセ 協議は難航、身を切る苦渋の選択をしたシナリオ

2013年04月20日 | 日記
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●TPPの“11カ国参加承認協議”のヤラセ 協議は難航、身を切る苦渋の選択をしたシナリオ

 なんとも馬鹿馬鹿しいTPP交渉参加における“11カ国参加承認協議”の顛末報道だった。わかり切っている事とはいえ、暗礁に乗り上げているとか、何やら参加承認に壁でもあって、日本の役人や甘利とか云う糞大臣が、丁々発止の活躍の結果、どうにか全11カ国の承認を得るに至ったような演出に終始していた。まともな理解力の人間なら、オバマの一喝で安倍がTPP参加を表明した時点で、すべては決していた。読売は、以下のように甘利の尽力を報じている。

≪ 日本、TPP交渉参加へ…残るカナダも承認
【スラバヤ(インドネシア)=宮崎健雄、永田毅】カナダは20日、環太平洋経済連携協定(TPP)の日本参加を巡り、「日本との協議は成功裏に終結した」 との声明を当地で正式に発表した。 カナダの国際貿易省の広報官は記者団に、「日本の参加を受け入れるということだ」と説明した。
 カナダの承認により、参加11か国すべての承認を得た。米政府はこれを受け、近く米議会に通告し、90日後に日本の参加が決定する。日本は7月下旬にマレーシアで予定されている交渉会合に参加できる見通しとなった。
 当地ではアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合が開かれており、19日には甘利TPP相が、カナダのファスト国際貿易相と会談し、日本の参加支持を要請していた。≫(読売新聞)

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定 (EPA) である。同時に「中国包囲」と云う役割も担おうと試みられた軍事同盟的色彩も有している。この安全保障上の理由が日本政府にとって、TPP選択の重要ポイントだったに違いない。このTPP参加により、日本が貿易上有利になる可能性と不利になる可能性を天秤にかければ、3:7程度に収斂していくだろう。貿易と云う枠組みだけで考えれば、無能な安倍でも判り切った不平等協定なのだ。

 それでも、首を縦に振ったのは、オバマの脅しもあったろうが、「中露」と云う軍事経済ブロックの脅威に日本が怯えている事実を露呈したとも言える。NATOにおける米国のプレゼンスの衰退、国家財政の逼迫が等々が、このTPPと云う、取ってつけたような環太平洋等と云う概念を生みだしたと見ておくべきだ。歴史的にみれば、この協定への参加が中国包囲網だと言われていたのに、気がつくと「日本包囲網」になっている笑話さえ目に浮かぶ。また、対中露外交の重大な足枷となり、決定的外交戦略の手足をもがれた、と気づく日が来るのかもしれない。

 架空の「米中冷戦構造」という枠組みの中で、経済的にも、軍事的にも、近視眼的には動いているように見えるのも致し方ない。何となくだが、米国につくか、中国につくか、と問われれば、日本人の90%以上の人が、米国を選択するのだろう。しかし、50年後もその選択で良いのか、と聞かれれば、50%の人間はかなり考えるのだろう。もうひとつ決定的に考えておくべき要素がある。それは中国やロシアとの、物理的距離の問題である。南北アメリカ大陸の国々は中露から遥かに遠い。豪州もオーストラリアも、それなりに遠い。ミサイルだ、グローバル経済だと云う言説のおかげで、如何にも物理的距離が些細な問題のように無視されているが、何と言うことはない、中国とロシアは日本にとっては、まさに隣国である。TPP参加の各国と、置かれている立場は圧倒的に日本に不利なことを無視した議論は空論、そのものである。

 TPPに関する、賛成反対の議論を聞いていても、経済上、儲かる、損するの議論から抜け出していない。TPPへの参加で、日本と云う国家の体質やシステムがどのように変わっていくのか、それを国民が望んだものなのか、まったく見当もつかない協定になるかもしれないし、それ程強力に作動しない協定になるのか、ここまで来てしまったのだから、推移を見守るしか手立てはない。仮にあるとすれば、それは安倍自民党政権を解散総選挙にまで追い込み、もう一度日本をリセットするしかない。しかし、現安倍内閣の支持率は・・・。個人的には、壊れてから考えるのも悪くはないと思っている。少々無責任だが、自民党が政権を握った以上、こう云うことが起きることを一応民意は想定選択したのだから、仕方ない。今や、政治家も政党も嘘を言うのは常識にさえなっている。


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強迫観念に追い立てられる安倍晋三 参議院選の敗北を自覚したような慌ただしい振舞い

2013年04月19日 | 日記
鳩居堂の日本のしきたり 豆知識
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●強迫観念に追い立てられる安倍晋三 参議院選の敗北を自覚したような慌ただしい振舞い

 どうも最近の安倍自民の動きが慌ただしい。本来であれば、衆議院の2/3を占め、野党など無きに等しく、横綱相撲を取って良い次元にある。また、マスメディアの世論調査を見る限り、内閣支持率は70%を超えているのだから、7月の参議院選の結果も盤石に違いない。しかし、今の安倍自民の行動を見ていると、何らかの“惧れ”を抱き、その脅迫観念に追いまくられるように、次から次と、コマネズミのように動き回っている。

 自民党内の衆議院選後の大勝を受け、政権与党に返り咲いた時点の謙虚さは影を潜め、小兵の前頭筆頭のような政治姿勢にチェンジした。従来の自民党領袖の考えは、参議院選終了までは、安倍晋三の右派カラーは抑え気味に、経済再生に邁進する予定だった筈なのである。特に、念願の訪米を果たし、TPP交渉参加を表明した辺りから、安全運転を放棄する姿勢が顕著になった。日中韓FTA交渉は座礁してしまい、TPPのみが大きく前進している。勿論、日毎夜毎、TPPが売国協定である正体は暴露されつつある。TPP推進論の朝日新聞でさえ、以下のような報道で、日本への影響を危惧し始めた。

≪ TPP交渉、NZ・豪・カナダが条件 「例外なし」要求

 【池尻和生、藤田知也】「環太平洋経済連携協定」(TPP)の交渉に参加表明した日本に対し、米国以外の国々も交渉条件を示していることがわかった。農業国のニュージーランドやオーストラリア、カナダが「すべての品目を交渉の対象にする」「高い自由化を実現する」などと求め、カナダは米国のように日本車にかける税金(関税)を残すことも主張している。
 複数の交渉関係者が明らかにした。日本はTPP交渉で農産物にかける関税を守りたいと訴える方針だが、日本に農産物を売りたい農業国の理解を得るのは難しくなるおそれがある。
 日本は交渉参加のために、すでに参加している11カ国から承認を受ける必要があり、米国のほか、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ペルーの手続きが終わっていない。
 米政府とは12日に合意し、近く米議会に日本の参加を認めるよう通告される。残る4カ国も近く交渉参加を認める見通しだが、TPP交渉に向けて日本に求める条件を示した。
 ニュージーランドとオーストラリアは「すべての品目を交渉のテーブルに載せる」「交渉を遅らせない」「高い水準の自由貿易を実現する野心がある」の3点を挙げ、「保証 (assurance)」を求めた。
 カナダは同様の要求に加え、日本車への関税を残すことも主張した。 日米合意では、米国が日本車にかける関税を残し、その期間を「最大限後ろ倒しする」ことになった。米自動車メーカーの工場があるカナダも同じ対応を求めている。
 日本は「コメ」「麦」「乳製品」「牛肉・豚肉」「砂糖やデンプンなど甘味資源作物」の5品目を関税撤廃の「例外」にしようとしている。日米合意では、日本の農産物と米国の自動車を「センシティビティー」(重要項目)と位置づけ、お互いに関税を守る可能性を認め合った。
 しかし、農業国が日本に関税撤廃を求める「包囲網」をつくるおそれもある。また、米国も日本に「すべての品目を交渉対象にする」と求めたうえで、日本の農産物を重要項目にする代わりに自動車の関税を残すという譲歩を引き出した。ほかの国も同様に譲歩を求める可能性がある。
 TPP交渉の参加国は20日からインドネシアで開かれる「アジア太平洋経済協力会議」(APEC)にあわせてTPP閣僚会議を開く。この場で日本の交渉参加を話し合う見通しだ。
 日本は早ければ7月から交渉に参加し、年内の交渉妥結(事実上の合意)に向けて各国と話し合う。≫( 朝日新聞デジタル)

  TPP交渉参加が、安倍政権の米国依存、霞が関依存、大企業依存を鮮明にした。アベノミクスなる小泉竹中政権回帰の経済路線は、如何にも成功裡に進捗しているようにマスメディアが演出しているが、心ある識者であれば、この時代に逆行するような強者の理論が、一般の国民や経済的に困窮する人々を切り捨てる経済政策であることは、充分に認識している。つまり、アベノミクスは最終的に大失敗に終わる可能性が高いことを示している。

 北朝鮮を含む“日中外交”は、完全にロックされ、二進も三進も行かなくなっている。“対露外交”も捗々しい成果を得る可能性は低く、北方領土問題を大きく前進させると云うよりは、経済協力とロシア資源のバーター取引程度でお茶を濁すことになりそうだ。あれだけ米国依存(隷米)の姿勢を示してしまった以上、プーチンも安倍と多くを語るのは得策でないと判断した可能性が高くなった。

 TPP交渉が「米国の完全勝利、日本の完全敗北」の結果になったのは、誰もが認めるところになった。米国に続き、豪州・二―ジーランド・カナダが寄ってたかって、日本の農業市場の開放を声高に語りだせば、農業従事者の多くを敵に回す確率は、確実になった。アベノミクスも、一時の勢いは影を潜め、徐々に、その副作用が金融市場にも現れ、愚民たちの中からも、その後遺症への心配が話題に登り始めたと見て良いだろう。対中貿易も一時の落ち込みからは回復したが、5割の回復が限界となっている。

 以上のような問題が影響したかどうか別にして、最近の地方の首長選では、マスメディアが叩きだす内閣支持率、政党支持率から考えると信じられないような選挙結果が続いている。このような流れは、実は、昨年の野田佳彦による、自爆テロ解散の恩恵に浴しただけの自民党大勝利の時点から始まっていたのだろう。たかだか十数パーセントの支持で、2/3の議席を獲得したマジックは、その後は綻びが出るだけの運命にあったのかもしれない。ゆえに、自民党領袖は、安倍のタカ派姿勢を戒め、国民の味方を装うべきとしたのだが、現実には、そのマヤカシが国民に悟られつつあると云う状況なのだろう。

 自民党としては、出来る事ならマヤカシ路線回帰に力を注ぎたいところなのだろうが、米国依存、大企業依存が国民の知るところとなった以上、マヤカシ政策が限界点に達し、後戻り不可な状況に追い込まれたと言える。こうなると、“毒を喰らわば皿までも”の心境になるのは、一夜にして可能な決心なのである。それゆえに、参議院選まで封印する筈だった改憲路線を鮮明にしたり、「0増5減」だけの強行で、選挙無効のハプニングだけは避けようと必死になりだした。早い話が、マスメディアのプロパガンダ報道一色にも関わらず、安倍晋三自身が、自分の内閣はヤバイかも?と気づいた結果、今さら遠慮している余裕はない、クタバル前に“やれることはやっておきたい”欲望が抑えきれなくなったと見るのが妥当だろう。


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稲作と日本人 日本人の帰属意識の原点、そして、その崩壊はどこに向かうのか

2013年04月18日 | 日記
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●稲作と日本人 日本人の帰属意識の原点、そして、その崩壊はどこに向かうのか

 稲作と日本文化の話をしようとすると、速攻で右翼様が持ち出す「新嘗祭」の話が持ち出され、天照大神(アマテラスオオミカミ)と直結するので(笑)、個人的には触れたくない部分もあるが、国家の伝統や文化と云うものは、多かれ少なかれ、そのような逸話が存在するわけで、特に神経質になる必要もないのだろう。

 先日のコラムで書いたように、
≪日本文化における、日本の農林水産業は、縄文弥生時代から江戸に至るまで、金儲けの為のツールではなかった。食物を得ると云う、極めて原始的行為だが、狩猟民族のように、その都度狩猟するのではなく、待つこと、守ることから食を得ると云う、まどろっこしいが、人の営みといえる文化が、そこにあった。2000年以上の日本の農耕文化を、たかだか100年にも満たない商業文化の生贄にして良い筈はない。もうこれは理屈より心情の問題だ。えっ!合理的説明がつかない心情論でTPPを語られては困る?その通り、何回かに分けて、政府や官僚が屁理屈をつけるのと同じ論法で、筆者も理屈は当然述べる。ただ、ファースト インスピレーションとして、日本の農林水産業が不効率だとか、もっと儲かるとかの次元に貶めて語ることは、本質的に重大な過ちである。≫と語った。

 稲作を中心とする日本の農耕文化は、E・O・ライシャワーの言を待たずに、その稲作農作業を通じて、共同体自治が否応なく醸成された。共同体自治と云う洒落た言葉には違和感があるなら、よく否定的に使われる「村社会」が日本中を覆っていた。多分、この「村社会」に馴染むことで、日本人は没個性と云う建前論で生きてきたのだろう。この日本人の習性は、農耕だけに限らず、軍隊においても、その能力を発揮し、実力以上の成果を齎した面もある。ただ、調子に乗り過ぎた指導者の混乱で、戦ってはいけない相手と戦った経験も有している。

 敗戦後も、その「村社会」の習慣は消えず、その集団的帰属意識が、異様とも思える「企業戦士」を生みだし、偶発的歴史の恩恵にも恵まれたが、奇跡的な国家の復興を勝ち得たのである。しかし、その歴史の流れには、農林水産民族から商業工業民族に変貌する、つまりDNAを突然変異させるような仕掛けが組み込まれているとは、誰ひとり気づいてはいなかった。農耕時代の帰属意識は、経済成長期における企業では、社員の福利厚生に力を注ぎ、そのロイヤリティーの醸成に貢献した。しかし、先進諸国の経済成長が構造的に限界が来た時点で、市場原理を核にするグローバル経済で糊口を凌ぐ時代に突入し、徐々に崩壊に向かっている。

 そうなると、企業の側も、労働者の側も、自国の「村社会」と云う枠組みでは生きていけなくなるので、自助・共助を目指すことになって行く。このような流れは、現代において、企業文化を通して、日本人の「村社会」への帰属意識を劇的に変化させていった。特に、やおよろずの神信仰にみられるように、確信的信仰やイデオロギーを持たない民族にとって、「村社会」を粘着させていた稲作文化や企業文化を失ったことにより、粘着力を失ったバラバラの民族風景を生みだしているようだ。このような、一見まとまっているように見える、魂の抜けた民族集団は、外から観察すると、どのような処分方法も可能な民族に見えているはずだ。

 特に、民族を粘着させるような触媒を失った民族は、彼らの目の前にある唯一の価値感は、見えるもの触れるものと云う物質に向かうのである。つまり、価値観の殆どを、金銭に置き換えて考える習慣が身につくのである。こう云う人間が一番、詐欺師にとってのカモである。詐欺師にとって、欲に目がくらむというか、物事を金銭で計ろうとする性癖ほど扱いやすいものはない。すべての判断や選択を、損得勘定に置き換えて推し量るのだから、詐欺師からみれば、望みが明確なのだから、騙すのは、楽チン過ぎる人々と云うことになる。否、楽チン過ぎる国家だと云う事だろう。

 日本をはじめ、世界の先進国では戦争が起きたわけでもないのに、少子化が進んでいる。にも関わらず、世界人口は凄まじい勢いで増加している。2011年末に世界人口は70億人を超えた。2050年には93億人に達すると予想されている。おそらく、この93億人のうち60億人くらいは、貧困層と呼ばれる人々になるだろう。このような事実を目の前にして、「Gゼロ」と言われかねない時代が到来しているのだから、食糧問題はトテツモナク重大な問題である。現時点で日本では考えられない危機が、必ず押し寄せてくるのは確実だ。

 本来であれば、いま議論すべきは米国の覇権主義が終わり、多極化、最終的に無極化の時代が、手の届きそうなところまで来ている事実なのだと思う。最終的には、地球上の全員が参加するような枠組みで食糧の分配を考えるか、乃至は殺し合いをしなければならなくなるのは、怖ろしいことだが明白だ。まぁそこまで考えないとしても、地球の温暖化と乾燥期がもたらす気象現象は、地球規模で穀物の凶作現象を起こす可能性は大いにある。この時、食糧同盟のような機能が有効に作用する可能性は低いのだと思う。

 自国の国民が飢えている状況で、他国に輸出をしてくれる同盟国家が存在すると云うのは幻想に過ぎない。可能な限り、食料の安全保障は自国で賄い切る覚悟が必要だ。仮に余るのであれば、民族の誇りとして、他国に輸出する事も是である。しかし、TPPへの参加により、この自国による食の安全保障的な発想が根底から覆る可能性がある。食の安全保障も考えなければならない。モンサントの種と農薬に冒された土壌は、二度と元には戻らない。放射能のお守と同様のことが言えるのだ。

 全員参加型秩序の世界秩序が何時できるかも判らない。それを信じて、或いは同盟国を信じて、食料を恵んでくれるだろう(輸出)、は甘すぎる。食料の安全保障と共同体自治の概念は、面白いほど重なり合う。中央集権からの脱却、地方主権の時代と云う概念も持ち出されるが、維新の会やみんなの党のように、市場原理と国家の市場開放と地域主権が、両立すると云う荒唐無稽な党綱領には、気がふれるほど笑ってしまう。彼らこそ、共同体自治を破壊しようとしている人種はいない。21世紀の時代観を見誤っているのだ。にも関わらず、道州制だ、大阪都だと、意味不明な地域主権をほざいている。今夜は、コメ作りの自然循環などへの貢献度など話せなかったので、明日に回すことにする。


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“攻めの農業”とは言葉のレトリック 損得勘定で農林水産業を論ずるべからず

2013年04月17日 | 日記
農は輝ける
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●“攻めの農業”とは言葉のレトリック 損得勘定で農林水産業を論ずるべからず

 以下は、日経ビジネスがわざわざ林農水大臣にTPPにおける農業への影響などについてのインタビューだが、早い話、林大臣は何ひとつ情報を持たず、憶測と思惑で返事をしている。ゆえに禅問答風の返答で、掴みどころゼロである。勿論、TPPが農業分野だけに網がかかる話ではないが、当該コラムでは、当分農林漁業に限定的に論じていく。

 結局、日経新聞系なのだから、損得勘定で話を進めるしかないわけだが、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などは、関税撤廃乃至は段階的関税率の引き下げで、物理的には甚大な被害を受けることは確実だ。その甚大な被害を補てんできるのは、短絡的だが補助金しか有効に機能する筈はない。仮に「攻める農業」を目指す勇者が現れても、それは彼が有能な勇気ある稀有な人物であり、突出した例外に過ぎない。政府や官僚と云うものは、常に都合の好い例外を、事実のように語るものである(笑)。

 そもそも、農林業や水産業を経済的に数値化すること自体が、官僚や学者の遊びの領域である。幸福度指数も同じようなものだが、農水産の営みを、輸入が増えるの、輸出を頑張ろうとか、そう云う次元で語ること自体が、実は本質的議論を遠ざけるトリックである事を、我々は考えておかなければならない。戦後の日本が、朝鮮戦争と、その後の東西冷戦構造の中で、欧米に替わる工業製品製造の工場としての役割を与えられたのだ(押しつけられた)。その過程において、農業従事者の子供を工場地帯に送り込み、欧米の期待以上の生産能力を育成し、欧米諸国が苦々しく思うほどの高度経済成長を遂げたのである。

 しかし、戦後の高度経済成長は、我が国の農林水産従事者の人口を激減させ、且つ、後継者枯渇と云う重大な副作用を齎した。後継者を失った農林水産業従事者の不満は、補助金行政で慰撫した。そして、補助金中毒を起こす農林水産従事者を集票マシンとして活用し、自民党は長期政権を維持してきた。しかし、時代の変遷は、集票マシンとして老化し、将来的に、継続的票田となり得ない結論を得た政党の態度は、農林水産業の切り捨てに向かいはじめている。最近特に目立ってきた、地方選に弱くなった自民党と云う現象は、偶然だと切り捨てるには、あまりにも多くの問題を含んでいる。

 日本文化における、日本の農林水産業は、縄文弥生時代から江戸に至るまで、金儲けの為のツールではなかった。食物を得ると云う、極めて原始的行為だが、狩猟民族のように、その都度狩猟するのではなく、待つこと、守ることから食を得ると云う、まどろっこしいが、人の営みと言える文化が、そこにあった。2000年以上の日本の農耕文化を、たかだか100年にも満たない商業文化の生贄にして良い筈はない。もうこれは理屈より心情の問題だ。えっ!合理的説明がつかない心情論でTPPを語られては困る?その通り、何回かに分けて、政府や官僚が屁理屈をつけるのと同じ論法で、筆者も理屈は当然述べる。ただ、ファースト インスピレーションとして、日本の農林水産業が不効率だとか、もっと儲かるとかの次元に貶めて語ることは、本質的に重大な過ちである。

 官民一体でコメ輸出拡大へ  TPP交渉参加・田村賢司

 林芳正・農林水産相にTPP(環太平洋経済連携協定)への取り組みを聞いた。自民党の求めるコメなど5品目の関税聖域化に対応するという。輸出拡大へ農林水産業の6次産業化を支援する官民ファンドも動かし始めた。

――安倍晋三首相が参加を表明したTPP(環太平洋経済連携協定)交渉に関して、自民党はコメなど5品目の関税を残すことや、それが認められない場合は交渉から離脱することも辞さないと決議している。早くも難航の気配が漂うが。

林: 自民党はコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物という5品目などについての聖域確保ということで決議している。同様のことは、2006年末にオーストラリアとEPA(経済連携協定)の交渉に入る際にもあった。
 衆参両院の農林水産委員会がやはり、「農林水産物の重要品目が、除外または再協議の対象となるよう交渉する」という決議を行い、農業団体も同様に重要品目を例外扱いするよう求めたのだ。
 しかし、例外という言葉は意味が広く、例えば10年かけて徐々に関税をゼロにするという時に、「15年にする」のも例外になる。あるいはそれ以外に「除外」するとか、「重要品目の扱いを後で再協議する」といったこともある。
 今回の決議をした自民党のTPP対策委員会の農林水産分科会(グループ)の取りまとめにも重要5品目を関税撤廃対象から除外または、再協議対象とするとしており、我々は現段階では、それを踏まえた対応をしていくということだ。 今、交渉の手の内は明かせない

――しかし、実際にどのように例外、除外、あるいは再協議に持っていけるのか。

林: これはいろんな意味で難しい。今の段階は、交渉の途中経過をまとめた数百ページにわたる「テキスト」すら我々にはない。我々に腹案があっても、今この状態でそれをあからさまに言えば、交渉参加国はそれに応じて対応してくるわけで、手の内をあれこれ言うことはできないということも大きい。

――一方で自民党は民主党政権時代の戸別所得補償制度の見直しを検討している。大規模・集約化など農業の競争力を高める政策はどう詰めていくのか。

林:(大規模・集約化か小規模・兼業農家“保護”かといった)どちらか100%ということは理念的にはあるが、現実的にはやはり組み合わせとなるものだ。

――しかし、自民党は2007年の参院選で民主党が戸別所得補償制度創設を打ち出し、小規模・兼業農家維持に舵を切って勝つと、それまで徐々に進めていた大規模・集約化への動きを変えている。政策の軸をどこに持っていくのか。

林: 民主党も、2007年参院選での政策転換で戸別所得補償の対象農家が非常に多くなり、同党内でも議論になったと聞いている。そのせいか、菅直人元首相、野田佳彦前首相へと代わる間に民主党は再び、大規模化・集約化の流れの方に戻り始めていくという状態になった。
 しかし、単純ではない。農地を適切に維持することで国土を保全する力を高める農地の多面的機能を考えれば、別の見方もある。例えば、集落で共同作業をするようにしているところや、中山間地の農家への直接支払いは、重要になる。
 私は山口県の出身だが、大規模・集約化だけで農地の多面的機能を維持できるだろうかと考えると、それはよく分かる。理想を言えば、強い農業の担い手が全部カバーしてくれればすっきりするが、難しいところもある。最後は政策としてやっていくところもあるのだろう。

――水産品で導入している共済制度を参考に、コメや畜産などでも価格下落による収入減を補塡する対策を検討していると聞くが。

林:農業には天候などそもそも内在するリスクがある。今でもこれを補償するための共済制度がある。いわば保険のような役割だ。

収入補塡策などは必要だ

林:しかし、農業をやっていく人たちのリスクをカバーするために、やはりセーフティーネット(安全網)というのは必要だ。これはTPPがあってもなくても必要だろう。水産と同様に、農産物価格の下落分を補う仕組みを検討していきたい。どの程度のものになるかはこれからの話だ。

――安倍首相の指示にある「攻めの農林水産業」で輸出をどう拡大するか。コメがカギになる。

林: 農林水産品の輸出額は今、4500億円で、水産品が一番多い。「攻め」で掲げる1兆円にするにはやはりコメの輸出は重要になる。
 例えば、日本貿易振興機構(JETRO)によると日本食の人気が世界でまた上がり、調査国の多くで1位になっているという。コメは世界で作っているだけに、日本のような食べ方をしてくれないと日本のコメが売れない。でも、その可能性はあるわけだ。
 日本は大規模化しても土地集約型農業だけでは勝てない。日本のコメでないとダメだというものを作って、そこに売る。我々は今年2月、農林漁業者が生産だけでなく、加工・販売もして収益力を高める「6次産業化」を後押しする官民ファンドも立ち上げた。民間と一体となって日本の農林水産業を世界に売り 込みたい。

本当の効果巡り、迷走する議論(日経のまとめ)

 TPP(環太平洋経済連携協定)には本当はどれほどの影響があるのか――。
 TPP参加による影響の試算について激しい議論が続いている。政府は3月半ば、「輸出や消費の増加などで、GDP(国内総生産)を実質3兆 2000億円(0.66%)押し上げる」とする試算を発表。その中で「農林水産業の生産額は、安価な農水産品の流入で3兆円落ち込む」とも述べた。
 だが、この試算にはプラス・マイナス両側から異論と反発が続いている。まず、マイナスの悪影響の大きさを唱える側。最大の反発勢力は農林水産業の比重が相対的に高い地方の道府県と、その意向に敏感な農林族議員だ。
 自民党の農林部会は試算の発表後、すぐに「農林水産業など関連産業への影響や、(TPPで大幅に増える)失業の影響が示されていない」と反発。加えて日本は聖域なき関税撤廃に反対しているにもかかわらず、「即時の関税撤廃を前提にした計算で行っている」といった指摘が篠原孝・民主党衆院議員ら野党 からも噴き出した。
 一方、政府試算は効果を小さく見過ぎているとして、プラスの影響の大きさを重視する声も強い。
 政府試算は「関税の引き下げによる輸出・消費増に焦点を当てただけ」(菅原淳一・みずほ総合研究所上席主任研究員)で、競争政策や知的財産保護など、TPPのほかの分野のルール作りの効果は推計されていない。こうしたルールの共通化などが広がれば、投資もしやすくなるし、規制撤廃などによりサービ ス産業も勢いを増す。さらには、これまで関税によるコスト増で輸出できなかったような競争力の弱い業者も輸出できるようになるという。
 経済連携の影響力試算を研究する米ブランダイス大学のピーター・ペトリ教授は、こうした効果を見積もれば、TPPのGDPへの影響は「約1000 億ドル(約10兆円)、GDPを1.96%押し上げる」という。
 さらには「投資の誘発が技術やノウハウの高度化をもたらすなど副次的な効果も大きい」(戸堂康之・東京大学教授)との見方もあり、GDPを押し上 げる効果は2%超に達する可能性もあるという。
 ただ、北海道など農業の強い道府県や農林族議員の主張は、農業分野の影響のみを見ているという難点があり、ペトリ教授らの推計に対しても「投資誘発効果などの試算方法は国際的に標準化されていない」との声が消えない。TPP協議の成り行きによって、試算の前提が変わる面は否定できず、TPPを巡る議論は今後、さらに激しい批判の応酬になる可能性がある。≫(日経ビジネス:時事深層)

水田を守るとはどういうことか―生物相の視点から (人間選書 (204))
守山 弘
農山漁村文化協会


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嘘八百な自民TPP オバマの一喝に、配られたカードを切らず、首を縦に振っただけ

2013年04月16日 | 日記
日本農業の真実 (ちくま新書)
クリエーター情報なし
筑摩書房


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●嘘八百な自民TPP オバマの一喝に、配られたカードを切らず、首を縦に振っただけ

 TPPが事実上、推進されるであろうと云う事実が近づいた以上、日本の農林水産業に関して、様々な角度から、国民の一人として、考えざるを得なくなった。正直、食べるのが専らな筆者には苦手な分野だが、様々な情報に触れ、調べ、考えてみようと思う。 無論、筆者はTPPには反対だ。TPPによる関税撤廃問題が浮上し、野田民主のシロアリ退治と裏切りの消費増税が政権を瓦解させた実例を目の当たりにしていながら、自民党は選挙中、反TPPを叫びながら政権与党を掠めとった。野田民主とまったく同じ裏切り行為をしようとしているのだが、自民党もマスメディアも気づいていないのが面白い。どんな強弁をしようと、選挙公約と真逆のことを行えば、次回の選挙でしっぺ返しを受けるのは当然なのである。ここ10年は、支持母体にもイデオロギーに裏打ちされた頑迷さはないので、いついかなる時でも寝返る資質を備えている。まして、一般の有権者は、更に激しいブレを見せるのが常識である。

 自民党が寝首をかかれる心配はないと高枕でいられるのは、対抗する野党がバラバラで足の引っ張り合い。到底まとまりようがない現状を見越してのことだろう。しかし、日本維新の会がどうにもならないヌエ政党である事が明白になっただけに、今後の野党間の連携には一縷の望みが、ないわけでもない。

 15日、小沢一郎は記者団に対し、自民と維新(みんな?)は同一勢力と云う認識を明確にし、夏の参議院選挙においては、「民主党、社民党、みどりの風と、われわれが連携すれば、地方では結構ないくさができる。維新の会の勢いは下火になっており、われわれが連携すれば、自民党以外の票の受け皿になる可能性がある」と風向きの変化に意を強くしているようだ。

 「晴天のとら日和」さんが以下のように語っている。いつも、いつもの口の悪さ(賞賛の意)だが、切り口は鋭い。
≪…「自民党の推薦が付けば勝ち」みたいな状況でない結果だらけだな。青森・郡山・宝塚・丸亀・日南と自民推薦や自民党系候補がぼこぼこ落選して、宝塚や丸亀のように社民系、青森のように革新系、民主に人脈の近い郡山、政党の影の薄い若手の日南みたく「予想外」の結果が多い。自民党はことごとく地方選で負けてるんですね。決して安泰な自民政権ではないんですね。
 このことから、小選挙区制が如何に歪な選挙制度だということが分かるね。 二大政党制の時代なら小選挙区制の活用は面白いものがあると思うけれど、取り入れるのが早すぎたと思うね、これは。今、この選挙制度で国民自身が自分で自分の首を〆てる状況になってるからね。小沢さんが導入したのは早すぎた、 で、小沢さんの大失敗だと思うわ。 そもそも、。。。日本に二大政党制って根付くのかしらね?私は、それは難しいように思ってる。先のことですからどうなるかわかりませんが、小選挙区制の導入は早かったってこれだけは言えると思う。私は、なんでもかんでも小沢さんのことなら良いなんて思わないですもん。…≫(晴天のとら日和)

 筆者も、とら日和さんが語っている、前半も後半も同意。まぁ後半の小沢一郎の小選挙区の判断のところは、間違いというより、国民意識の成熟を信じた結果なのだろうが。国民を信じて政治をしていた小沢一郎の思ったような日本人が育っていなかった、そう思うわけ事だろう。昔、TPO(TPPじゃなく)“時と場所、場合に応じた方法・態度・服装等の使い分け”って和製英語があったが、お洒落にいえばマーケッティングようなもの。小沢一郎は、当時、否、現在も含めた国民のマーケッティング概念が少なかったのだろう。つまりは、善人過ぎた(巷は真逆な印象の罠に嵌っているが)と云うことなのではないだろうか。

 今のところ、マスメディアが20%前後下駄を乗せた世論調査の数値を垂れ流しているが、各新聞社等の数字は20%引き算して眺めると、納得出来る数値が現れる。最近起きている地方選の現象とも一致する。と云うことで、自民党への風向きはまだ順風だが、もう維新は逆風だな、と結果が出はじめたので、乗せていた下駄を外した。まもなく1%の支持率を世論調査に載せるに相違ない。このような自民党、維新の会がTPP推進論なのだが、実際問題、オバマは安倍のイニシアチブは一切認めず、二人の対局というより、オバマが一方的にカードをめくり「やった!俺、ロイヤル・ストレート・フラッシュ!」と叫び、“アメリカアズNO1やネン!”と白い歯を剥きだした。ただそれだけの話で、安倍は配られた手持ちカードを見つめるだけで、一度も新しいカードに手を伸ばすことを許されなかった。

 まぁそう云う事なので、自民党のTPP対策委員会による説明会など怒号の連続で、委員はまさに、針の筵状態に置かれていた。本来なら国家を二分する問題の自民党対農業従事者の討論なのだから、ニュースバリューは充分だが、まったく報道らしい報道をしない。なにせ聞けば聞くほど、反対論の正当性が証明されるだけで、推進論が正当化する文言を失っている。彼らに向かった、長谷川幸洋風に「日米軍事同盟とセットだからさ、農民は我慢する、補助金獲得にシフトした方が…」などと言える筈もなく、ただガン首を晒しに並んでいるようなものである。

 嘘つき自民党の面目躍如な一幕だが、面白いとばかり笑ってもいられない。おやおや、本題の農林水産業の問題に入らないうちに、眠くなってきた。それでは、筆者が農林水産業とTPP問題を掘り下げてみようと思ったキッカケの東京新聞の社説を紹介して、明日以降、横道にそれずに本題に踏み込んでみようと思う。

≪ 週のはじめに考える 攻めの農業と言う前に

 環太平洋連携協定(TPP)の不安をかき消すように“攻めの農業”が叫ばれます。だがその前に、農家と消費者が守るべきものがあるはずです。  愛知県半田市の北村真也さん(24)は、一年間の研修期間を終えて、間もなく地元で就農します。
 サラリーマン家庭の長男。祖母が家庭菜園で育てた野菜を食べて「おいしい」と感じたのをきっかけに、市内の農業高校から東京農大へ進み、有機野菜を育てるサークル「緑の家」に所属した。四年生になる前に一年間、南ドイツの農場で働いて、「大丈夫、農業で食べていこう」と決めた。

◆必要とされる存在に

 研修に通うのは、同じ愛知県の江南市にある佐々木正さん(66)の農園です。
 佐々木さんは元教師。四十五歳で専業農家に転じ、十五年ほど前から新規就農希望の研修生を受け入れて、農薬や化学肥料を使わない有機農業の栽培技術を教えています。「自立すること。現場で工夫することを教わりました。もう何も不安はありません」と北村さんはこの一年を振り返る。
 農林水産省の青年就農給付金などを元手に、近所のつてで二反(二十アール)の畑を借りられるめどがついています。一年に何度も収穫できる軟弱野菜(葉物)から始め、五年後には一町歩(一ヘクタール)に広げ、法人化をめざす。できた野菜は宅配します。
 身の丈を超えた大規模化には反対です。一人で一町歩耕して百二十世帯に売るよりも、二人で五反ずつをよく活用して、百四十世帯によいものを届けるべきだと考えます。
 日常に食べられるものを作る。地域に必要とされる存在になる。安全安心を求める地元消費者と結び付く。地域の農業者同士がネットワークを結んで支え合う-。これが、北村さんの“農業”です。
 「今農業に必要なのは、人づくり。そして、消費者との関係づくり。人のつながりを強くして地域の農業を守ること。攻めの農業?あまりピンと来ませんねえ」と、佐々木さんは苦笑します。
 畑の隅でブロッコリーが黄色い小さな花をつけ、ミツバチとモンシロチョウがとまったり、離れたり。穏やかな春の午後でした。

◆救世主にはなれない

 そもそも、“攻めの農業”って何だろう。まず例に挙げられるのが輸出です。農水省の資料には、こうあります。
 <今後十年で倍増が見込まれる世界の食市場に、日本の農林水産物・食品が評価される環境を整備し、日本の「食文化・食産業」の海外展開と日本の農林水産物・食品の輸出促進を同時に推進する>
 政府は、例年五千億円前後で推移している農林水産物の輸出額の倍増を考えました。もちろんそれ自体、容易ではありません。
 一昨年の輸出額四千五百十一億円のうち約半分が加工品、四分の一が盆栽や真珠といった非食料品でした。食料品の多くは、サケ、マスなどの水産物が占め、純粋な農産物は百八十億円分しかありません。農業の救世主とは言い難い。
 農地を集約し、経営の大規模化を図るにしても、地平線のかなたまで続く大農園に飛行機で種をまくような国々に、結局は太刀打ちできません。
 TPPという名の黒船は、こと農業に関して言えば、成長至上主義の終焉(しゅうえん)を告げに来たのかもしれません。
 作り手は規格にあった品物を効率良く育てて淡々と送り出す。買い手の側は値段の安さをひたすら求め、消費する。その繰り返しでは農業の持続可能性が、もう保てないということを。
 二月の終わり、第七十二回中日農業賞授賞式のあいさつで、審査委員長の生源寺真一・名古屋大学教授が言いました。  「世界一鋭敏だった日本人の食べる力、味わう力が、衰えているような気がします」
 農学者が消費者の心配をしています。

◆持続可能性の問題だ

 食べる力、良いものを選ぶ力が弱まれば、食べ物を作る力も衰える。埼玉県の面積に等しい耕作放棄地があることは、よく知られるようになりました。 それを除いても農地の利用率は約九割にとどまっています。
 手入れのよい水田や畑がつくり出す景観美は、確実に衰退しています。
 勇ましく海外へ打って出るのもいいでしょう。だがその前に守りを固める必要がありそうです。
 環境、防災、水循環、それにエネルギーなど食料生産以外の機能も含め、地域に不可欠な農業という価値をどうやって維持していくか。総合的には持続可能性が実現できるかどうか、に帰着するでしょう。農家、消費者それぞれに、考え直す時なのです。≫(東京新聞:社説・週のはじめに考える)

 日本の農林水産業を衰退産業だと決めつけている部分からして、嘘なのではないか、と筆者などは思う。戦後工業化を急ぐために、意図的に農業や林業従事者を工場地帯に送り込むことから始まった人口移動が原因だったのだろう。その時点で、重農主義から重商主義への移行をバランスを持って行っていれば、このような過疎地域の増加や似非都市化による、金太郎飴のような町が、日本中にばらまかれる事はなかっただろう。いまや、その工業、商業をベースとする産業体制が壊れかけた時点が、農林漁業産業の巻き返しに向けられるべきで、「攻める農業」等と云う嘘八百なキーワードではなく、地に足のついた政策として姿を表すべきなのである。

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)
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講談社


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すべて与するものではないが、たまには寺島実郎の世界観を参考にするのも悪くない

2013年04月15日 | 日記
大中華圏―ネットワーク型世界観から中国の本質に迫る
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NHK出版


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●すべて与するものではないが、たまには寺島実郎の世界観を参考にするのも悪くない

 維新が更なる泥沼に嵌り込んできた。大阪の政治においてまでの悪乗り吉本興業風味が、お隣兵庫の2市首長選で敗北をきした。あいかわらず、話題増産装置のように、ツイッター連射で人気を維持しようと必死のようだが、かなり馬脚が現れたようである。参議院選前までは持たない風向きだ。また、地方地盤に盤石の強さを見せていた、自公選挙協力態勢にも関わらず、各地の首長選で取りこぼし現象がみられる。これだけ、メディアスクラムでプロパガンダ報道をして貰い、破竹の勢いであるはずの、自民党と日本維新の会がへたり込んでいる。少なくとも、昨年末のタナボタ的圧勝は、悪魔の手助けが存在したと云うことが証明されているようだ。みんなの党も、ここは本気で野党になるのか、与党になるのか、明確な判断を出すべき時が来ているようだ。

 まぁ今夜は政局話は適当に切り上げ、以下に長文の寺島実郎氏の世界観と日本の現実に関するコラムを紹介しておく。すべてが納得とは言えないが、多くの点で思考の手助けにはなるコラムなので一読願いたい。そう、少なくとも政治や経済を考える時は、世界の流れと自分の国と自分の三要素を噛みしめながら、吟味したいものである。では、今夜はこの辺で…。(*改行は一部筆者による)


 世界認識の鮮明なる転換—二〇一二年日本の覚悟

 直面する日本の悲劇は二重構造になっている。地震・津波・原子力という三段重ねの「3・11の衝撃」を受け、国民の目線が思いつめたように内へと向かわざるを得ない状況の一方で、世界が構造転換の局面にある。そのことにこの国の指導者もメディアも気付いてはいるのだが、明らかに「適応障害」を起こしている。3・11から年末まで、米国・欧州・中東・アジアと一二回にわたり海外を動き、様々な人の表情を見つめ議論をしてきたが、次第に高まるのは、日本人はここで顔をあげて「世界史のダイナミズム」を直視しなければならないという思いである。
 二〇一一年一〇月末、世界人口は七〇億人を超え た。二一世紀を迎える頃、六一億人といっていたのだから凄まじい勢いで増え続けている。国連推計では二〇五〇年には九三億人になるという。日本人の世界認識は、後述のごとく冷戦を前提とした六〇年前のサンフランシスコ講和条約時代の固定観念から踏み出していないと感じるが、一九五〇年の世界人口はわずか二五億人であった。この膨れ上がる人口が、自己認識を深め、抑圧や不公平を拒絶して自己主張し、それぞれの豊かさと幸福を探求し始めている。二〇一一年に目撃した「アラブの春」「中東の民主化」といったうねりも、年末に南アフリカで行われたCOP17における京都メカニズムの実体的破綻も、世界が覇権国による一極支配や先進国主導の多極の枠組みで動く時代ではなく、「無極化」すなわち全員参加型秩序の時代に向かっていることを強く印象づけるものであった。
  先進国ブロックを「日米欧トライラテラル」などという表現が定着してきたが、日本は大震災に襲われ、「不幸な自然災害による苦闘」だけでなく「原発安全神話の崩壊」によって戦後日本社会総体の影と政治指導力の虚弱性という現実を露呈した。米国は、「イラクの失敗」による指導国として世界を束ねる「正当性の喪失」と「財政の疲弊」、さらには「リーマンショック」をもたらした米国流金融資本主義の肥大化を制御できぬまま迷走を加速、「冷戦後の唯一の超大国」とまでいわれた面影はない。欧州も「共通通貨ユーロ」への挑戦が金融危機によって苦境に至り、環境問題において主導してきた京都メカニズムに よる排出権取引制度の綻びとともに「欧州の実験」が急速に色あせていることを示した。実に、二〇一一年は先進国受難の年であり、構造的に世界システムが変化していることを認識せざるをえない転機であった。

二〇一一年の歴史的意味の再確認

 改めて、二〇一一年という年は歴史的節目の年であったと思う。まずは一九九一年のソ連邦崩壊から二〇年であった。戦後半世紀近く世界を東西に二分して「資本主義対社会主義の戦い」を繰り広げた東西冷戦の時代は終わった。日本も「五五体制」と言われる「自民党対社会党」の対決という東西冷戦の代理戦争のような様相を呈していたが、西側のチャンピオンとして冷戦の勝利を主導した米国の「一極支配」の時代の到来という時代認識が広がり、「唯一の超大国となったアメリカ」が主導する時代として二一世紀をイメージすることが主潮となった。多くの人は「米国流資本主義の世界化」を「グローバル化」と置き換え、時代潮流のキーワードとした。「平和の配当」という言葉が使われ、イデオロギーの対立を解消した冷戦後なる時代に希望を抱いた。しかし、冷戦後一〇年が経過した時点で起こった「9・11」は冷戦後なる時代の死角を衝く衝撃であった。
 そして、二〇一一年が終ろうとする今、「冷戦後二〇年」と「9・11 から一〇年」の結末を見たという思いが込み上げてくるのである。この一〇年、米国は六二五九人の米兵をアフガン・イラクで死なせ(一二月八日現在)、直接戦費だけで一・四兆ドルを使い、イラクからの撤退(二〇一一年末まで)に加えアフガニスタンからも撤退表明(一四年末まで)と中東におけるプレゼンスを後 退させた。さらには、肥大化した軍事費の圧迫がもたらした財政赤字の拡大によって、「米国は国内の国づくりに集中すべき時だ」(六月二二日オバマ演説)と大統領が発言せざるをえないほど「内向」と「縮軍」に向かっていることは、本連載の114「9・11から一〇年」で言及したが、年末の三か月で事態はより 一層緊迫してきたといえる。
 驚くべきことに、あの超大国米国が、八月には「債務不履行」の危機に追い込まれた。議会と大統領との妥協が成立して、「十一月二三日までに、超党派の委員会が抜本的な財政赤字削減策を策定する」という条件付きで、債務上限を二・一兆ドル引き上げて凌いだ。期限は過ぎたが、赤字削減策での合意はできなかった。このままでは「トリガー条項」が働き、十二年度の予算執行から自動的に「引き金」が引かれて、軍事予算から福祉予算に至るまで赤字解消をもたらす比率で一律歳出削減が実行されることになる。オバマ政権は「五年で一兆ドルの国防予算削減」という方針を発表していた が、それ以上の「縮軍」の圧力かかることは間違いない。
 クリントン政権最後の年(二〇〇〇年度)に二九四五億ドルにまで圧縮されていた米国 の軍事予算は、ブッシュ政権で急拡大し、二〇一〇年度には七二八〇億ドルになった。これを速やかに五〇〇〇億ドル水準にまではもっていかざるをえないというのが米国の現実である。一二月の米議会による「海兵隊のグアム移転経費を認めず」という決定も、この文脈にある。
 産業の実力以上に軍事力を維持することを可能にした仕組みが崩壊したのである。米国という国は、経常収支の赤字を垂れ流し続けながらも、資本収支の黒字を維持することで機能してきた。つまり、ウォールストリート街を窓口に米国金融市場に世界中の資金を還流させることで、過剰な消費と軍事力を維持してきた。ところが、「金融資本主義の肥大化と歪み」(サブプライムローンに象徴される金融工学を駆使したマネーゲームの自己目的化)がもたらしたリーマンショックを経て、その構造が崩れ始め、〇八年から資金流入過少に変化してしまった。二〇一〇年には経常赤字四七〇九億ドルに比べ資本収支の黒字は二五四三億ドルとなり、これが「ドル下落」のみならず「超大国米国」を可能にしたメカニズムを機能不全に至らしめる本質的要因となっている。
 ニューヨーク五番街のロックフェラーセンターに地球儀を背負う大きなアトラス像がある。「世界最強の軍事力で米国の正義を実現する」と、アフガン・イラクへの進撃を叫んでいた「ネオコン」と呼ばれた人達とブッシュ大統領の姿に重なる。冷戦の勝利者とされた米国(アトラス)は、肥大化した役割意識のもたらしたものに耐え切れず、今静かに地球儀を地面に置かざるをえなくなっている。

迫られる世界観の転換 ― 米中対立という表層観察の脱却

 二〇一一年一一月のホノルルでのAPEC総会、さらにバリ島でのASEAN首脳会議を巡る一連の動きの中で、日本が示した外交判断とそれを報じる日本のメディアの報道を見つめていると、日本人が抱く世界観の貧困に悄然とならざるをえない。今、アジア太平洋においては米中の覇権争いが繰り広げられ、TPPを主張し、米国主導の枠組みに引き込もうとする米国に対して、「ASEANプラス3」を主張し、米国の影響力拡大を抑制しようとする中国の「綱引き」が展開されており、その中で日本はどうするという構図が基本認識となっているのだ。
 米中対立、実はこの構造認識は、日本人の屈折した潜在願望である。サンフランシスコ講和条約(一九五一年)、そして日米安保条約以来六〇年間にわたる日米同盟を常態とする日本にとっては、「ソ連の脅威」を「中国の脅威」に置き換え、極東において冷戦構造が継続しているかの認識は、現状変更を恐れる心理からも受け入れやすく、しかも「米中対立が深刻になれば、日米関係の重要性が高まる」という卑屈な期待感が芽生える。そして日米で連携して台頭する中国の脅威と向き合おうというあたりに、自らの立ち位置を見出し納得する ことになる。
 しかしながら、米中関係は単純ではない。歴史の教訓は「日米関係は常に米中関係によって翻弄されてきた」ことを教える。アジア太平洋戦争の敗戦も、米国への敗戦ではなく、米国と中国の連携による敗戦だったことを見失ってはならない。松本重治が言い続けたごとく「日米関係は米中関係である」という認識は今日むしろ重みを増しているとさえいえる。
 確かに米中間には懸案の事項が山積しており、決して良好な関係とはいえない。人民元切り上げ、通商摩擦、知財権、人権に加え、国際関係における南沙諸島領有、台湾問題など枚挙にいとま(いとま米)ない。一一月のオバマ豪州訪問に際しての、「海兵隊の欧州駐留」方針表明も、中国を意識して東南アジアの米抑止力期待に応える動きであることは間違いない。ただし、賢明に見抜くべきは、米中関係は決定的な対立を回避する形で動くことである。両国間には日米関係では考えられないほどの意思疎通のパイプが構築されており、相手を「戦略的 交渉相手」として重視し合う配慮が存在するからである。
 二〇〇六年に始まった「米中戦略経済対話」は双方合わせて一〇人以上の閣僚が参加するスキームとして定着し、オバマ政権になっても、政治・安全保障をも含めて拡充され、一一年五月の会議でブッシュ政権以来七回目となった。一一年は一月の 胡錦濤訪米、八月のバイデン副大統領訪中を通じて意思疎通を深め、エネルギー戦略において注目されているシェールガスについても「米中シェールガス・タスクフォース協定」を結び、共同利益を探求し始めている。日米間に真の意思疎通のための戦略対話スキームがないのと対照的である。
  二〇一〇年、米中貿易は日米貿易の二・五倍となった。一二年には三倍を超すであろう。のAPEC総会で、胡錦濤はホノルルに集まった全米商工会議所の主力メンバーを相手に、米中経済連携の重要性を強調した。これまた日米財界人会議の米側参加者が急速に貧弱なものになっているのと対照的である。 日本の貿易総額(輸出入合計)における対米貿易の比重は、一九九〇年に二七・四%であったが、二〇一二年一~一〇月の速報値では一一・八%と半分以下となった。 中国との貿易比重は、一九九〇年にわずか三・五%から同年速報値では二〇・五%と、日本にとっても中国との貿易は重くなっている。
 ちなみに、アジアとの貿易比重は五〇・五%とアジアとの相関で生きていかざるを得ない日本経済の構造を示している。無論、貿易だけが国際関係ではない。ただ、政治・安全保障における日米同盟と経済における日米関係が乖離(「政治は米国、経済は中国」)してきていることが、基底における日本の国際関係の不安定をもたらしていると認識せざるをえない。
 クリントン米国務長官は、外交専門誌『フォーリン・ポリシー』(一一年一一月号)に論文「アメリカによる太平洋の世紀」 を寄稿し、過去十年のアジア地域の顕著な経済成長は「米国の軍事・外交のプレゼンスによって維持されてきた」ものであり、「今後もこの地域への関与を継続していく」ことを強調した。過去四〇年間、米国の外交エネルギーの大半は中東に費やされていた。一九六八年に大英帝国がスエズ運河の東側から引き揚げて以来、ペルシャ湾岸に覇権を確立してきた米国は、七三年石油危機をもたらした第四次中東戦争、七九年のイラン・ホメイニ革命、九〇年湾岸戦争、そして二一世紀のアフガン・イラク戦争とパレスチナ問題、イラン問題など中東での緊張に向き合わざるをえなかった。二〇〇〇年の沖縄でのサミットを中座してまでクリン トン大統領がパレスチナ問題に対処するため中東に向かったことが思い出される。
 米国は明らかに大きく変化しつつある。固定観念にとりつかれ 一歩も事態を前に進めようとしないのは日本側である。「アメリカの虎の尾を踏んではならない」かのごとく、鳩山・菅・野田と続いた政権交代後の外交政策に おける委縮は目を覆うばかりだ。普天間問題を「沖縄の負担軽減」という次元でのみ捉えている限り、この国の国際関係は迷走し進化はない。二一世紀の東アジアにおける安全保障の在り方総体をテーブルに乗せ、米国の地域安全保障における「抑止力」を検証し、段階的な在日米軍基地の縮小と地位協定における日本側 の主権回復という国民目標を実現するための「日米戦略対話」を実現するという明確な意思を示すことが一歩である。
 私はこの一年間の日米関係 の位相の変化に改めて驚く。二〇一〇年五月、迷走のあげく「普天間の辺野古移転」を確認する日米合意がなされたが、何も進展もないまま年末を迎えた。一二 月にNHKの特別番組『シリーズ日米安保五〇年』が四夜連続で放映され、私も最終回「日本の未来をどう守るのか」に出演し田中均氏らとともに討論に参加した。また、一一年二月には「世界別冊816号、新冷戦ではなく、共存共栄の東アジアを」のため再び田中均氏と対談し、熱い議論をしたことを思い出す。
 わずか一年足らずで日米関係を議論する前提は大きく変化した。米国自身の「縮軍」への動きと柔軟に東アジアへの布陣を見直そうという意見の台頭、さらには、 ウィキリークスの情報開示による日米同盟を支える構造の矮小性の露呈(脳力 113「ウィキリークスの衝撃」)など、日米関係は柔軟に再設計されるべきだという認識は次第に高まっている。
 本誌一二年一月号の 高嶺朝一氏の論稿「米軍基地計画再考の時―――アメリカの地殻変動を伝える識者たちの声」として、東アジアの安全保障に向けた米軍の布陣に関して、M・モチヅキとM・オハンロンの共同執筆論文「日本のために米軍基地計画の再考を」(一一月四日、CNNサイト)やレビン上院軍事委員長やウェッブ上院東アジア 太平洋小委員会委員長、マケイン上院議員、元国防次官補J・ナイなどの提言や発言等を紹介して、ワシントンの外交関係の識者の中に、「普天間海兵隊の辺野古移転」という枠組みを見直し、柔軟な視点から東アジアへの米軍展開を再構想すべしという意見が芽生えていると指摘していた。私もワシントンを動いて同様の実感を抱く。

 問われる日本の自覚

 その上で今、ケビン・メア前国務省日本部長の『決断できない日本』(文春新書二〇一一年)を注意深く読むことを薦めたい。「沖縄はごまかしとゆすりの名人」などの発言で職を辞した人物だが、問題となった発言に関する事実関係に踏み込むまでもなく、この書物に溢れ出る「知日派米国人」の思考様式と視界に、日米関係が固定化する一因を確認できるからだ。この人物の記述は日本への親近感と愛情に溢れ、日本との長い縁を背景に、東日本大震災への深い同情と 「トモダチ作戦」を推進した配慮が滲み出ているとさえいえる。
 しかし、彼の意識に在日米軍基地の在り方を変更する問題意識は片鱗も存在しない。今までのままの東アジアへの米軍の展開を肯定し、それが日米の共同利益だとする認識から一歩も出ようとはしない。私が何度か指摘してきた「抑圧的寛容」、つまり自分が優位であるという認識に立つ時に示す「思いやり」の域をでない日米関係論なのである。そしてメアはお定まりの「分断統治」のレトリックを繰り出し「中国は沖縄も狙っている」と、日本人の不安を駆りたてる。地域における相互不信を醸成して自分の役割を強調するという「安手の用心棒の論理」から日本人はそろそろ冷静な意思を取り戻さねばならないのである。
 冷戦期を引きずる時代遅れの日米同盟の現状を固定化することに執着し、柔らかい修正を図るエネルギーを阻害しているのが、米国における「ジャパンハンド」(日米安保で飯を食う知日派)といわれる人々であり、それに呼応する日本側の外務・防衛官僚・メディアにおける一群の「安保マフィア」といわれる専門家であることは明白である。そのことは、ウィキリークスの公開した情報が「舞台裏の本音」を証明した。
 世界が「全員参加型秩序」を求めて苦闘し、同盟国米国が大きく変質する中で、日本は依然として「冷戦型思考」から脱却できず立ち尽くしている。いまだに、麻生時代の「自由と繁栄の孤」(中国やロシアを民主主義国で囲い込む)というレベルの外交構想を脱すことができず、「日米同盟の深化」(進化ではなく)が国益だとする考えに沈潜している。「米国を頼りに中国の脅威と向き合う」という安易な固定観念を脱却し、基地とTPP問題において日本が自立自尊をかけて米国と正対して主体的にアジア太平洋に安定基盤を構築することに動き始めること、それが二〇一二年の課題である。
 全員参加型時代は旧秩序に郷愁のある人からはカオス(カオス型)に見える。二国間の同盟外交であれば、相手は一人であり過剰依存と期待でも何とか落とし所ろが見つかるだろう。巨大な丸卓を囲む全員参加型の舞台で自らの主張を実現するには、より多くの参加者の納得と支持が得られる政策論でなければならない。この時代における外交やルール造りへの参画には高い理念性と柔らかい構想力がいる。COP17での挫折に直面した環境問題でも、「二〇二〇年までに全員参加型のルールを作る」ことは合意された。これも試金石といえる。「日本の主張も筋が通っている」と多くの国が認識し、日本自身が主体性を持って解決へのビジョンと構想を持って行動していることを示さない限り、「米国周辺国」としか認知されない状況では存在感を失う。
 ここまで書き進めて、北朝鮮の金正日総書記の死去を知った。東アジア情勢に新たな変化をもたらす要素が付加されたといえる。北朝鮮という体制そのものが「冷戦が継続中」という前提で成立する「冷戦孤児」のような性格を有しているが、嫌でもこの国も冷戦後という時代に向き合っていかざるをえない。翻って自らの国について思うのは、世界の相互依存が深化し、全員参加型の秩序形成という時代に日本も生きていく時、「独立国に外国の軍隊が駐留し続けているのは不自然だ」という国際常識さえ見失い、戦後六六年を経てもそれを変更する意思を喪失している国が、国際社会で自立した敬愛の対象となることはあり得ない、ということだ。冷戦型世界観を脱し、冷戦後の時代を創造する日本人の意思が問われている。≫(三井物産戦略研究所:寺島実郎の発言:2012.02脳力レッスンより)
http://www.mgssi.com/terashima/nouriki1202.php

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