世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●安保法制、安倍は議論をつくせ こそこそ逃げ出す正論、浅ましいのでは?

2016年03月31日 | 日記
日本人と漢字 (知のトレッキング叢書)
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●安保法制、安倍は議論をつくせ こそこそ逃げ出す正論、浅ましいのでは?

「選挙のためなら、何でもする」それが、自民党の民主主義の根幹であるなら、それも良いだろう。防衛大学の卒業式の訓示に何回となく繰り返された「我が軍」を推進するのであれば、自信を持って、野党のヘタレ共を議論で組み伏せればよかろう。これでもかと、持論の防衛観念を、野党議員のみならず、国会議事堂を包囲する、わからず屋国民を黙らせる、説得力ある、我が国の防衛体制の必要性を知らしめるべきである。

まさか、テキトーに理解しているので、化けの皮が剥がれるのを怖れているのではないのだろうから、正々堂々と横綱相撲を取って、おおむこうを唸らせて貰いたいものだ。世論の反対も多い中、無理やり強行採決までして成立させた安全保障関連法なのだ。尚且つ、法案は粛々と施行されたのだから、今さら、寝た子を起こす意味などない、と云うことなのだろうか。野党の廃止法案など、返り討ちにしてやる気概が「我が軍」と連呼する安倍晋三に求められる。安倍は「絆の強い同盟によって間違いなく抑止力は高まる」と戦争法と揶揄される安保関連法の意義を、トコトン、野党諸君や国民を納得させるべきである。安倍に、その情熱は充分にあるだろう。側近たちがとめに掛かるのは、安倍の男ぶりを貶める。

 民進党の山尾志桜里政調会長は、「あれだけ対案を出せと言ってきたにもかかわらず、審議しないのは矛盾している」と発言したが、当然だろう。共産党・穀田恵二国対委員長も、「強行採決したときに“丁寧に説明する”と言ったのも忘れたようだ」。しかし、民進党の腰つきは完全に「柳腰」で、安倍官邸にみえみえ。単に、駄々をこねている“愛人もどき”なのだから、舐められても致しかたないだろう。結局、名前が変わっても、野田・前原・細野・長島ら、自民補完勢力党員を抱えているのだから、「柳腰政党」と断定しても過言ではないのが、民進党だ。

 このような民進党の状況は、真面目に、反安倍勢力の結集を呼び掛けている人々の意を無駄にすることになる。情熱を削ぐ。鉄を冷ましてから打ちつけようとする、横着政治病に罹患した状況を脱していない。共産党は、民進党の柳腰をみて、高みの見物気分になっているだろう。仮に、衆参W選を打たれた場合は、民進党潰しに精出すからな、と既に脅しをかけている。いや、単なる脅しではないだろう。参議院一人区への協力は、志位委員長が、その地位を掛けた勝負手だ。その勝負手に後ろ足で砂を被せるような振舞いを民進党が行うとなれば、衆議院一人区では「打倒!民進党」に舵を切ることになる。

長い目で見れば、そのような状況になるのも、やむを得ないかもしれない。国民の目に、「民進党も既得権益政党」と云うイメージが深く根づく方が、日本の為かもしれない。世界の流れも、紆余曲折はあるとしても、米国一国主義のデモクラシーで良いのか問題に突き進んでいるのが現状なのだから、その為に、産みの苦しみに喘ぐのも、次なるフェーズの出現を控え、必要な惨劇かもしれない。まあ、現状を見る限り、惨劇を見ても、「いい湯だな」と言っている日本なのかもしれない。どのくらい、過激な痛みを与えると目覚めるのか、個人的には、そこを知りたい気もする。

あいかわらず、ヘタレな朝日新聞は、他人のフンドシで相撲を取っている。へっぴり腰で、権力監視の真似をして欲しくはないが、これが、日本のマスメディアの限界なのだろう。ただ、俳優・佐藤浩市のオピニオンは、抑制的だが充分読ませてくれた。三國連太郎も、ニヤリと笑っているだろう。


 ≪(リレーおぴにおん)テレビの時間:15 方向見失うドラマ、希望なお
  佐藤浩市さん  
ナショナリズムに訴えかけるようなドラマしか、もう残された道はないんだろうか。冗談ですが、そんなことを口にしたくなるほど、テレビドラマの現状は方向性を見失っていると思う。

 若い視聴者におもねって失敗し、それならお年寄りが安心して見られるようにと医療ものと刑事ものに走った。でも、どっちに日和(ひよ)ったところで数字はとれない。悩んでないテレビマンなんて、いま一人もいないでしょう。

 お茶の間に届けるテレビドラマにも、かつては映画のようなイデオロギー性をはらむ、偏った番組が放映される余地がありました。それがいつしか、どこからもクレームがつかない安全な方向を向いていく。僕のドラマでも数年前、昭和30年代の雰囲気を描こうと会議中に皆が喫煙したら、相当数のクレームが来たことがあって。その後、同様の場面は姿を消しましたね。

 これだけ視聴者の裾野の広いメディアだけに、難しさはあるでしょう。でもそうやって現場で自主規制を重ね、表現の自由を放棄してしまっては、自らの首を絞めていくだけです。

 ではなぜ、僕がテレビドラマを続けていくのかといえば、映画表現とは別にやれることがあるという希望を、捨て切ってはいないからでしょうね。

 番組に参加する以上、できる限り監督やプロデューサーと話をするんです。台本に縛られず、三次元のテイストを出せないか。つまり説明的ではないせりふや肉体の表現によって、見る側に伝播(でんぱ)させることはできないか。10回という連続ドラマのもつ面白さをもっと生かす可能性もあるのでは? 配役も、その俳優おなじみのイメージを安易に反復せず、視聴者を裏切っていっていい、と提案しています。

 老若男女、生きてきた場所も経験も違う人たちにボールを投げるためには、高度な技術が必要です。だからこそ真剣な対話をあきらめない、スタッフとの「しがらみ」が、希望の源になっているのかもしれません。

 昨年、「戦後70年 千の証言」という番組で、ナビゲーターを務めました。反戦メッセージなどというつもりはない。残り少なくなった当事者の人たちに、どんな心境で戦地へ赴いたのか、肉声を聞きたかった。役者としての欲求で受けた仕事です。

 欧米に比べ、日本の俳優には社会的発言が少ない? スポンサーとの関係性という、海外にはないしくみの違いはあるでしょう。それと、世間もメディ アも我々に社会的、政治的発言を求めていない側面もある。この島国では残念ながら、個人が自由に発言できる状況にはないのが現実だと思います。  (聞き手・藤生京子)    
  *  
さとうこういち 俳優 1960年生まれ。80年にデビュー、映画とテレビで活躍。主演映画「64―ロクヨン―」前編が5月7日、後編が6月11日から公開予定 ≫(朝日新聞:リレーおぴにおん)


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●経済諮問会議から、経済学者、経産、財務等の官僚を排除せよ

2016年03月30日 | 日記
幼児化する日本は内側から壊れる
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●経済諮問会議から、経済学者、経産、財務等の官僚を排除せよ

以下の真壁氏のマネタリーベースの解説は、一応理屈が通じる。しかし、最終的な見通しは、円安、円高、どちらにでも転ぶし、当然、株安、株高の両方の可能性があると云う事なので、何も予言していない経済予想になっている(笑)。たぶん、真壁氏は正直な人なのだろう。ただ、残念な点は、外需への視線が強すぎて、内需目線が軽視されている点がきになる。アベノミクスが絶望的失敗に終わっているのは確実だが、未だ「やめます」とは宣言していない。つまり、トンデモナイ経済政策は継続中と云うことになる。

相当以前から、需給のバランスが問題だと言われているのに、その点を意識した経済政策は手つかずだ。おそらく、念仏のように規制緩和を強化してしまえば、タクシー業界のように、需給のアンバランスに拍車が掛かるだけである。宿泊に「民泊」など云うのも、供給過剰で、気がつくと、女房付き民泊なんて倫理にも劣る現象が起きるだろう。内需が人口減少に伴って、先々細るばかりだと云う悲観論が多いのだが、市場ベースは、そうであっても、工夫はまだまだ可能である。

現存する既得権勢力の産業を入れ替え、同じものを生み出すとしても、未来展望の観点から、官民一体で決意すれば、新産業に差し替えられる旧産業分野はごまんとある。電力エネルギー供給システムには、一部風穴が空いたが、エスタブリッシュメントの抵抗が強く、彼らをねじ伏せる力量ある政治は期待薄だ。しかし、地産地消的エネルギーのシステム構築が、共同体自治のモデルケースになることも考えれば、適度なケーススタディーの実践場となるだろう。問題なのは、そのムーブメントを推進する言論がない。哲学を引っ提げて、国民の間にムーブメントが起こせる言論人が出てこないと辛い。

人口減少国家であるからと言って、何もかもが縮小するだけではない。内需産業の質的変化は、資産を持つ人々の消費を喚起するわけで、彼らが消費してくれる安心感を政治が提供できるか、そういう社会政策上の問題も大きいだろう。社会保障支給が細る情報だけを流し続ける世の中で、財を持つ高齢者の財布を緩めさせるのは困難だ。高齢者が、「それなら安心だ、このサービスを受けてみよう」そういう少子高齢化社会を活気づけるアイディアの不足が、日本経済がデフレ脱却しない元凶だ。経済諮問会議の類から、経済学者を締め出す試みなども面白いだろう。歴史的大転換時には、「餅屋が癌になる」。


≪ 円高・株安からの脱出を阻む「アベノミクス逆回転」のメカニズム
 ■世界市場が落ち着きを取り戻すなか、
   なぜ日本だけが取り残されるのか?

足もとの世界の金融市場における株式や為替などの展開は、一時期の不安定な状況からだいぶ落ち着きを取り戻している。その背景には、サウジアラビア やロシアなど主要産油国が生産維持で合意したことにより原油価格が反発していること、ECBや日銀の金融緩和策維持の方針が明らかになったことなどがある。

 また、米国のFRBは3月の定例委員会で利上げを見送り、今後の金利引き上げ回数が2回程度にとどまることを示唆した。昨年12月時点の4回の利 上げ予想が2回に引き下げられたことは、投資家に大きな安心感を与えた。そうした要因で主要投資家の心理状況は改善し、欧米や中国など主要な株式市場は堅 調な展開になっている。

 そんななか、わが国の株式市場は低迷が続いている。欧米や中国など主要株式市場の動きから取り残された格好だ。わが国の株式市場にモメンタムが出ない理由の1つは、昨年までの円安・ドル高の傾向が変化していることがある。

 2011年秋口まで続いた超円高の動きは、その後、堅調な米国経済の動向を反映して円安・ドル高の方向に動き始めた。それに伴い、自動車などわが国の主力企業の業績は大きく改善し、アベノミクスの経済政策効果もあり、株価を押し上げることになった。

 しかし、昨年末にかけてのドル高・原油安の影響で、米国の製造業の業績懸念が浮上し、少しずつ為替市場の動向に変化が生じ始めた。

 日銀はマイナス金利にまで踏み込み、円高の流れに歯止めをかける試みをしているものの、今のところ、期待されたほどの効果は出ていない。今後、円高がさらに進むようだと、アベノミクスの効果が逆回転し始めることにもなりかねない。

 短期的に見ると、為替相場を動かす最も大きな要素は金利だ。一般的に、投資資金は金利の低い通貨から高い通貨へと流れやすく、低金利通貨は弱含み になりやすく、高金利通貨は強含みの展開になりやすい。そのため、為替相場に大きな影響を与えるのは、2つの通貨間の金利差ということになる。過去の相場動向を分析すると、為替の動向は、名目ベースの金利からインフレ率を差し引いた実質ベースの金利に反応することが多い。

 ドルと円の実質ベースの金利を見ると、米国のFRBは昨年12月に金利を引き上げたものの、今後の引き上げペースは当初の予想よりもかなり緩やかになるとの見方が有力だ。一方、足もとで米国のインフレ率は少しずつ上昇する気配を見せている。その結果、米国の金利は思ったほど上がらず、消費者物価指 数の予想が上がる分だけ、ドルの実質ベースの金利を引き下げることになる。 逆に、わが国では日銀のマイナス金利の実施もあり、表面金利は下がっているものの、わが国経済のデフレからの脱却が遅れていることもあり、期待インフレ率は低下している。そのため、円の実質ベースの金利はむしろ上昇傾向にある。そうした実質ベースの金利差を見る限り、円が買われやすく、ドルが売られやすくなっている。

 また、米国の企業業績が悪化したことも無視できない要因だ。米国企業の業績は昨年夏場以降、マイナスに転じている。主な理由はドル高と原油安だ。 産業界からは政策当局に対してドル高是正の要請が強まっている。オバマ政権としても、今秋の大統領選挙を控えてその要請を無視することはできない。

 ■為替市場で円高・ドル安が進む理由
   アベノミクス逆回転のメカニズム  
ヘッジファンドなど大手投資家は、円安・ドル高の方向性に変化が出たことを見逃すはずがない。特に為替担当のアナリスト連中は、米国政府の為替政 策に関する姿勢には極めて敏感に反応する。彼らは、米国政府のドル高に歯止めをかけたい意向を敏感に読み取ったはずだ。そして、そうした米国政府の政策の変化を利用して、ドル売り・円買いで収益を上げることを考えたはずだ。

 それは、シカゴの為替先物の投機筋(ノンコマーシャル)の持ち高(ポジション)が、昨年までのドル買い持ち・円売り持ちから、円買い持ち・ドル売り持ちに変化していることを見ても明らかだ。  ヘッジファンドのマネジャー連中とメールのやり取りをすると、一部のファンドが為替のオペレーションに加えて、日本株の売買も積極的に行っていることがわかる。円が上昇すると、わが国の主力輸出企業の収益状況は悪化することが想定される。

 彼らは円相場と日本株の関係を使って、積極的に円を買い上げて円高傾向にする一方、株式の先物を売って株価を押し下げることを狙っているように見える。そうしたオペレーションは、日本の株式市場が世界から取り残されるように低迷している理由の1つかもしれない。

 そのほか、原油価格下落に伴って有力SWF(ソブリン・ウエルス・ファンド)や、アベノミクスに失望した海外ファンドが、保有する日本株の売却に走っているとの観測が出ていることも、日本株市場にはマイナスの要因になっている。

 足もとの円高・日本株安は、これまでアベノミクスがもたらしてきた円安・株高の成果を逆回転させることになりかねない。

 ■「日本だけ蚊帳の外」は長く続かない
    今後の不安は米国経済のピークアウト  
ただ、ヘッジファンドなどの投機筋が円高・日本株安を狙っても、その傾向が永久に続くことはあり得ない。彼らは、基本的に買ったものは売り、売ったものは買い戻しをする。ということは、日本株だけが売られ続けることは考え難い。

 ということは、短期的に見ると、「日本株だけ蚊帳の外」という状況は長続きせず、どこかで売り持ちになっていた部分の買い戻しが入るはずだ。そうなると、日本株も徐々に上昇余地は出てくると見る。  現在、安倍政権は来年4月の消費税率の再引き上げを実行するか否かを検討しているようだ。そのために、海外の著名経済学者を呼び寄せ、意見を聴取している。それは、おそらく一種のアリバイづくりとも見える。

 すでに市場関係者の多くは、「安倍政権は消費税率の再引き上げを延期せざるを得ない」との見方に傾いている。それが実際に発表されると、株式市場 を取り囲む状況はかなり変わる。今年から来年にかけての駆け込み需要の盛り上がりは期待できないが、来年4月以降の反動による落ち込みは考えなくて済む。 それは、わが国の株式市場には大きなプラスとなって作用する可能性が高い。

 一方、金融市場にとって無視できないリスクは依然残っている。原油の過剰感は完全に払拭されていない。中国経済の減速に歯止めがかかったわけでもない。欧州の難民問題や英国の国民投票など、不透明感もある。

 また、少し長い目で見ると、上昇過程がそろそろ7年を迎える米国経済に、今年から来年にかけてピークアウト感が出ることも懸念される。そうしたリスクを考えると、世界の主要株式市場は、年初来の売られ過ぎからやや回復している局面と考えるべきだ。

 今後、そうしたリスク要因、特に米国経済のピークアウトが顕在化すると、世界経済が下落傾向に突入することが考えられる。その場合には、ドルはさ らに売られ、世界の主要株式市場は振れ幅の大きな不安定な展開になることが予想される。株価がある程度戻っても、本当の意味で安心はできない。
 ≫(ダイアモンドONLINE:経済・時事―今週のキーワード・真壁昭夫)

下流中年 一億総貧困化の行方 (SB新書)
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●すったもんだの“戦争法” 米大統領選の風向きで無効化!

2016年03月29日 | 日記
チャーチル・ファクター たった一人で歴史と世界を変える力
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●すったもんだの“戦争法” 米大統領選の風向きで無効化!

すったもんだの強行採決で国会を通過させた、所謂いわくつきの、カッコつき安全保障関連法が29日施行された。早い話が、片務条約から双務条約に日米安保体制を強化したいと云う、外務・防衛の念願が適ったことになる。個人的には、今後、アメリカには、ムキになって世界の警察官気取りをする余裕はなくなって行くだろうから、本格的な実害は殆どないのではないかと思っている。無論、憲法に書いていないことなら、何をやっても良いなどと云う立憲主義冒涜の暴政は咎めを受けるべきである。

ただ、双務条約になったと、安倍政権が妙に肩を怒らせれば、意地悪な米国防省が、日本の本気度をたしかめるために、警察官代理補の力量を試すために、不必要な軍事行動を起こし、日本の自衛隊が、チャンと機能するかどうかを試す可能性はあるのだろうと考えている。つまり、まったく意味のない、お試し“集団的地自衛権行使”又は最も戦況が曖昧な戦闘地域における国連平和維持活動(PKO)などのミッションを課してくる可能性があるのだろうと考えている。自衛隊員は良い面の皮だが…。

アメリカの現在進行形の大統領選を観察していれば判ることだが、金融グローバル経済にまで行きついたアメリカの資本主義は、終わりを迎えている。この点を、否定する人間もいるだろうが、そういう人々は、不都合な事実から目を背けている人々であって、世界観や歴史観に疎い人種だと云うことになる。この一種レイシストな集団が、なんと驚くことに、日本のエスタブリッシュメントに強く根付いており、アメリカ依存主義に拘泥している。挙句に、最大の労働組合組織(連合)までが、エスタブリッシュ化しているので、既存システムから振り落とされない為に、汲々としている。

彼らの味方をしてやるとすれば、次の世界が明確に見えていない以上、現状、可視化できるシステムに縋らざるを得ないじゃないか、となる。まあ、一寸の虫にも五分の魂だが、まさに沈没寸前の船にしがみつく行為は、最終的に、その超大型客船の沈没時に起きる渦に巻き込まれ、一緒に太平洋の藻屑となるのは目に見えている。それでも、米国依存主義で思考停止した日本のエスタブリッシュメント、そして、その支配層を信じるしか思い浮かばない闘争心の欠如した国民層が多数を占める限り、沈みそうだけど、他の船も怖いからと云う選択に陥るのも、判らないわけではない。

現在進行形の共和党・トランプや民主党・サンダース現象は、アメリカの将来を予測した動きであり、彼らが、党の正式候補にならなかったとしても、次期アメリカ大統領は、その確固たる勢力の勢いが、今後とも増すであろうことを意識した為政を行わざるを得ない。クリントンが、どれ程ウォール街の代理人であっても、今までのように、金融グローバル経済推進に舵を切ることは出来ない。おそらく、ロシアとの融和と云う方向も生まれるだろうし、内向きなアメリカと云う方向性も見せないわけにはいかない。そして、格差是正の政策を強調することも忘れないだろう。

しかし、安倍の保育園問題同様に、泥縄になるのも事実だ。つまり、四年後は、トランプ的候補とサンダース的候補の一騎打ちになるのは、目に見えている。このような動きを見ていると、やはり、日本は、早々にデフレ経済下にあるし、為替差益分しか、成長しないことも証明済みである。多くの識者が、グローバル化は止まらないと主張し、念仏のように既成事実化しているが、これも実は怪しい。国産愛用運動などと云うウネリが生まれることもあり得るわけだ。関税を失くすと云うことは、国境を失くすことだが、国家と云う概念や宗教的や民族と云う概念の奥深さに比べ、グローバル化は表面的で脆弱だ。人工的に作られたものは、人工的に壊せる。しかし、自然発生的なものは、100年単位でも 壊すのは容易ではない。

あくまで、現在のグローバル化は、アメリカ一国主義から生まれたシステム紛いなものであり、ドル基軸通貨をベースにしたグローバル化であり、ヘゲモニーの延命策に過ぎない。判っているけどやめられない日本の悪癖が、今回も出ているわけだ。明治維新以降、神仏習合を無理やり剥がし、神仏分離令を施行させたようなもので、浅知恵に過ぎない。魂の入っていない、一部の権力の都合でシステムを変えても、必ず滅びる。形式的に神仏分離を強行しても、民の側は、正月には神社でお参りをし、仏になれば寺にゆく。形式を変えて都合が良いのは役人や既得権益者であり、民の好都合をしないのが、政治であり行政なのだ。

明治以降、どのような天変地異が起き、度重なる大戦を経ても、エスタブリッシュメントと云うものは、同一の思考経路の中で生きている。こうなると、哲学や宗教的見地から見ても、「レボリューション」と叫びだ出しても良い時期は到来している。筆者の感覚では、「民進党」がまったく民の側にアピールしない一番の理由は、対立軸が明確ではないことだ。むしろ既得権勢力で重複している。“安倍軍国右翼vs志位民主社会主義”と云うようなわかり易さを民の側に提示していかなと、参議院選で勝利は見込めない。岡田は引き分け程度を狙って、2/3議席阻止で大勝利くらいに思っているのだから、民の側が燃えるわけがない。「累進課税強化」、「法人税増税」、「財政政策からコンクリートは排除」。自分の生活が良くなると云う事実より、良い思いをしてる連中に鉄槌。そう国民が感じた時、野党の大勝利が見えてくる。


≪ 安保法が施行 集団的自衛権容認、専守防衛を大きく転換  
集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法が29日、施行された。自衛隊の海外での武力行使や、米軍など他国軍への後方支援を世界中で可能とし、戦後日本が維持してきた「専守防衛」の政策を大きく転換した。民進、共産など野党は集団的自衛権の行使容認を憲法違反と批判。安保法廃止で一致し、夏の参院選の争点に据える。 安保法は、昨年9月の通常国会で、自民、公明両党が採決を強行し、成立した。集団的自衛権行使を認める改正武力攻撃事態法など10法を束ねた一括法「平和安全法制整備法」と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる恒久法「国際平和支援法」の2本からなる。
 戦後の歴代政権は、集団的自衛権行使を認めてこなかった。しかし安保法により、政府が日本の存立が脅かされる明白な危険がある「存立危機事態」と認定すれば、日本が直接武力攻撃されなくても、自衛隊の武力行使が可能になった。自衛隊が戦争中の他国軍を後方支援できる範囲も格段に広がった。
 安倍晋三首相は日本の安全保障環境の悪化を挙げて法成立を急いだ。しかし、国連平和維持活動(PKO)での「駆けつけ警護」や平時から米艦船などを守る「武器等防護」をはじめ、同法に基づく自衛隊への新たな任務の付与は、夏以降に先送りする。
 念頭にあるのは、今夏の参院選だ。世論の反対がなお強いなかで、安保法を具体的に適用すれば、注目を集めて参院選に影響する。そうした事態を避ける狙いがある。
 その一方で、安保法を踏まえた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に基づき「同盟調整メカニズム」が始動。自衛隊と米軍の連絡調整は一層緊密化した。今年1月以降の北朝鮮の核実験やミサイル発射を受け、首相は「日米は従来よりも増して緊密に連携して対応できた」と安保法の効果を強調した。ただ、日米の現場で交わされる情報の多くは軍事機密に当たり、特定秘密保護法で厳重に隠されている。
 中谷元・防衛相は28日、防衛省幹部に「隊員の安全確保のため、引き続き慎重を期して準備作業、教育訓練を進めてほしい」と訓示した。自衛隊は今後、部隊行動基準や武器使用規範を改定し、それに従った訓練を行う。
 民進党に合流する前の民主、維新両党は2月、安保法の対案として「領域警備法案」などを国会に提出。共産党など他の野党とは「集団的自衛権の行使容認は違憲」との点で一致し、安保法廃止法案も提出している。首相は野党連携に対し、「安全保障に無責任な勢力」と批判を強める。安保法をどう見るかは、今夏の参院選で大きな争点となる。(本田修一)

■安全保障関連法の主な法律
・集団的自衛権の行使を認める改正武力攻撃事態法
・地球規模で米軍などを後方支援できる重要影響事態法
・平時でも米艦防護を可能とする改正自衛隊法
・武器使用基準を緩め、「駆けつけ警護」や「治安維持任務」を可能とする改正PKO協力法
・他国軍の後方支援のために自衛隊をいつでも派遣可能にする国際平和支援法(新法)
 ≫(朝日新聞デジタル)

宮本常一と土佐源氏の真実
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●2025年問題を考える 日本独自の価値観、創造は可能か?

2016年03月28日 | 日記
2030年 世界はこう変わる アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」
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●2025年問題を考える 日本独自の価値観、創造は可能か?

今夜の時間がないので、おぞましい特集記事でお茶を濁す。実際は、お茶を濁すどころか、トンデモナク重要な日本の問題であり、移民政策でも取らない限り、先進諸国の多くが突き当たる問題なので、それこそ、「国際社会」共通の人口減少という社会の到来を意味している。そう云う意味で、日本はデフレ経済同様に、世界の最先端を行っているに過ぎないのだと思う。

この人口減少問題を、経済成長とかという、矮小化された哲学なき、エスタブリッシュ層の既得権益堅持とか、省庁権益に左右されいる限り、国民は、幸福感を味あわない生活を送ることになる。実体経済の資本主義から金融経済への移行は、そのシステムの終わりを歴史的に告げている。今までの、サイクルから行けば、次なるヘゲモニーが表れ、そちらに移行していくのだが、グローバル経済という制御不能な、勝者なき経済構造を創造したが為に、次なるヘゲモニー不在の時代を迎えることになってしまった。

21世紀はG0の時代というよりも、ヘゲモニー不在の不機嫌な時代と言っても良いのだろう。こう云う世界観を持てば、日本独自の価値観を考えなおしても良いころ合いなのではないだろうか。おいおい、国家神道なんて言い出さないでくれよ(笑)。万の神は認めるが、国家神道は駄目だよ。靖国神社権力中心の神道は諸悪の根源。神道も、初心回帰が必要だろう。

資本主義と民主主義の限界は目に見えてきている。トランプ候補の米軍基地撤退の話で、右巻き族は大喜びしているが、忘れてはいかんよ、左巻きも喜んでいるのだから(笑)。まあ、この話は、明日にでも書こうと思うが、バーニー・サンダース候補の健闘も、実は根っこはトランプ支持と表裏一体なのだ。仮に、民主党大統領候補にクリントンが裏口入門で選ばれるなら、間違いなくクリントンは敗れる。サンダースとトランプで漸く伯仲の勝負になる。アメリカの大統領選を鏡のように思って日本を眺めれば、個人的には、実は「安倍VS志位」の戦いに見えてくる。


≪ 「2025年問題」をご存知ですか?
~「人口減少」「プア・ジャパニーズ急増」…9年後この国に起こること

——人口の20%が「後期高齢者」になり、単純労働に就くのは移民と外国人。医療と介護の安心は根底から覆る 街に人があふれ、子供たちが教室にぎゅうぎゅう詰めで授業を受けた、古き良き日本は二度と戻らない。増えてゆく空席を、言葉の通じぬ人々が埋めてゆく。カネも絆も失った私たちは、どうなるのか。

 ■10人に1人はボケている
「このまま無為無策で過ごせば、日本はとんでもない事態に見舞われます。社会保障の破綻、際限のない増税といった山積みの問題が、10年足らずで一気に表面化するのです」 こう警鐘を鳴らすのは、政策研究大学院大学名誉教授の松谷明彦氏だ。 およそ1世紀も増え続けてきた日本の人口が、昨年ついに減り始めた。
「これから10年間で、日本の人口は700万人減ります。15歳~64歳の生産年齢人口が7000万人まで落ち込む一方で、65歳以上の人口は3500万人を突破する。 ・2025年の日本は、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類が経験したことのない『超・超高齢社会』を迎える。これが『2025年問題』です」(前出・松谷氏)

 東京五輪が終わったあと、日本の姿は、今とは大きく変わっている。現在と同水準の人口を維持できるのは、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏と、愛知・沖縄・滋賀のみ。青森・岩手・秋田・山形・福島の東北各県や、中四国の大半の県は、軒並み1割人口を減らす。
 働き方も、大変化に見舞われる。厚生労働省のデータによれば、'00~'10年の10年間で、事務職や工業系技術者は14%、農家や漁師は30%、 また土木作業者や建設技術者は40%も減っている。一方、介護関係職員は倍以上に増加し、葬儀関係者も1・5倍に増えた。この傾向は、2025年までにま すます加速する。
 若者が減り、老人が増える。何かを作る仕事に携わる人が減り、介護や葬儀に携わる人が激増する。もはや、国全体が老境に入ってしまったような状態だ。しかも—。
 「現時点でも、軽度のものを含めれば、少なくとも820万人が認知症を患っているという厚労省のデータがあります。それに基づけば、2025年には今の1・5倍、1200万人以上が認知症になっていてもおかしくありません」(国際医療福祉大学教授の高橋泰氏)
 全国民の10人に1人がボケている。そんな国が成り立つのか、という疑問がわいてくるが、あと9年で画期的な対策が見つかるとも思えない。特別養護老人ホームには順番待ちの長い列ができ、認知症の特効薬ができる気配もない。もはや策は尽きている。

■病院がどんどん潰れる
 経団連の榊原定征会長は、ついに「移民に頼らざるを得ない。ドアを開けに行かないといけない」と明言。自民党も特命委員会を今月設置し、まさに移民受け入れの議論を始めようとしている。
 移民や大量の外国人労働者を受け入れた2025年の日本が、どんな国になるかについては後篇で詳述するが、ひとつ言えるのは、その「劇薬」をもってしても、事態は好転しないということだ。
 2025年、まず医療がパンクする。
 厚生労働省の推計によれば、2025年の医療保険給付は総額54兆円と、現在より12兆円以上増える見通しだ。衰えゆく日本の国力で、とうてい賄える額ではない。 「破綻シナリオ」を回避するために、国は医者と病院を減らしにかかっている。患者は確実に増えるにもかかわらず、である。NPO法人医療制度研究会副理事長で、外科医の本田宏氏が言う。
 「今、全国で病院の身売りや倒産が相次いでいます。実は日本の医師数は、先進国最低レベルです。医者がいなければ、治療できない。治療できなければ、医療費が膨らむこともない。つまり、医療費を抑えるため、医師の数を減らし、病院の数も抑えているわけです。
・'13年には、埼玉県で25ヵ所の病院を36回たらいまわしにされて、患者が亡くなる事件もありました。地域の病院が減ってゆくと、こうした事件が全国で多発するでしょう」
 
9年後、全国の入院患者数は138万人(1日あたり)を超えている。だが、全国の病床数は今でさえそれに足りない134万床で、今後さらに減らされる見通しだ。確実に、数万から数十万人の病人が、病気にかかっても入院できなくなる。
 少し体調が悪いくらいで、いちいち病院に行くな。いや、行きたくても行けない—それが常識になるのだ。
 介護も同様である。介護保険制度が設けられた'00年に比べ、現在、介護関連の職につく人の数はおよそ4倍にも膨らんでいる。それでもまだまだ、人手が足りそうにない。前出の高橋氏が言う。
 「これからの日本は、地方の人口は減ってゆきますが、大都市圏では人 口はあまり減らず、同時に高齢者が激増します。首都圏では、高齢者人口はおよそ1000万人にも達するでしょう。おそらく2025年を待つまでもなく、あ と数年で、首都圏の介護施設は足りなくなります。『介護クライシス』と懸念されている事態です。
・誰にも介護してもらえず自宅で放置され、亡くなる人が急増する。『このまま東京にいたらまずい』と考え、地方に移住する高齢者も出るでしょう。しかし、移住できない大多数の人々は、厳しい状況に追い込まれる」

 ■年金なんて出るわけない
さらに、多くの国民が不安に思いつつ、半ば諦めているのが、年金の行く末だ。2025年にも、年金制度そのものは残っているだろう。だが、その内実が、「破綻同然」の水準にまで崩壊しきっていることは間違いない。
 長年、年金を研究してきた、社会保険労務士の大曲義典氏が分析する。
 「年金をはじめとする社会保障費は、現在の約120兆円から、2025年には総額150兆円に増えると考えられます。 しかし、'14年に厚生労働省が行った将来予測は、『現役世代の賃金はこれから毎年上がり、10年後の保険料収入は40兆円に達する見込みだ。だから年金は破綻しない』といった、実態からかけ離れた仮定が満載で、明らかに『絵に描いた餅』でした。 現実的な値をもとに計算すると、遅くとも2030年代前半には、年金積立金は枯渇します。『所得代替率(現役時代の給料と年金支給額の比率)50%を死守する』という政府の目標も、おそらく叶わないでしょう」

 年金破綻を防ぐには、2025年まで、経済成長と毎年1・5%ずつの賃金アップを同時に達成しなければならないという。だが日本人の平均賃金はもう20年間も連続で下がっており、しかも働き手は減る一方だ。「かくなるうえは、消費税増税しかない」というのが財務省の理屈だが、消費税を1%上げても2兆円しか税収は増えない。10年足らずで15%も消費税を上げるというのは、とてもじゃないが、ムチャな目標である。
 「2025年というのは、今まさに行われている、60歳から65歳への年金支給開始年齢引き上げが最終段階にさしかかっている頃です。おそらく、年金の実質的破綻は誰の目にも明らかになっているでしょうから、『70歳への支給開始年齢引き上げ』も実行に移されるはずです」(前出・大曲氏)

 ただでさえ、物価や賃金の変動に合わせて給付額を減らす「マクロ経済スライド」で、2025年には今の8割前後まで年金給付額が減っている。それに 加えて、残念ながら現在の50代から下の世代は、「ようやく年金がもらえると思ったのに、まだ待たされるのか」と嘆くはめになるのだ。 介護の人手は足りず、病院に行ってもすぐに追い返される。認知症の高齢者が、わずかな年金を握りしめて、閑散とした街中を歩き回る—後篇では、そんな「絶望の国」と化した、未来の日本で起きる悲劇を見てゆこう。

プア・ジャパニーズも急増 日本の治安はニューヨーク以下になる
 ■中国人に乗っ取られる
「中国農村部の貧しい人々の間では、日本神話は健在です。日本のコン ビニなど、単純労働の職場で働けば、中国の何倍も収入が得られる。病院に行くにしても、中国のように2~3日並ばされることもありません。日本が本格的に 外国人労働者を受け入れる方向に舵を切れば、移民の問題は当然出てくるでしょう」(産経新聞中国総局特派員の矢板明夫氏)
前篇でも触れたとおり、政府や財界は、安上がりな労働力を求めて「外国人労働者受け入れ」に前のめりになっている。
 これから、元気に働ける日本人の人口は、右肩下がりに減ってゆく。それならば、過酷な単純労働にも文句を言わず、人件費も安い外国人労働者を雇えば いい—。経営者の間にはそんな風潮が広がり、すでにコンビニや飲食店の店員など、サービス業の現場はアジア系の外国人労働者が席巻している。介護の現場 も、間もなくそうなる。
「一方で、今は日本経済が中国に比べて良くないため、中国のエリート層は日本に魅力を感じなくなり、渡航する人も減っています。彼らにとっては、日本に行くよりも中国にいるほうが儲かるのです」(前出・矢板氏)
 ついこの間まで、日本人の多くは「日本人であれば、無条件に中国人よりも豊かだ」と思い込んでいた。しかし、上海の物価が東京の物価を優に上回る今、その認識は完全に時代遅れだ。
 貧しい日本人は、貧しい中国人と同じ条件で働かなければならなくなった。2025年には、そうした日本人がひとつの階層を形作り、アメリカの「プア・ホワイト(貧しい白人)」ならぬ「プア・ジャパニーズ」と呼ばれているだろう。
 '05年から'15年の10年間で、外国人労働者の総数は34万人から90万人に激増した。うち最も多いのは中国人で、32万2500人あまり。以下ベトナム人が11万人、フィリピン人が10万6500人、ブラジル人が9万6600人と続く。このペースが続けば、2025年には140万人を突破する計算だ。
 今、彼らの多くが住んでいるのは、高齢化が進んで年々空洞化している郊外の団地である。東京都区部郊外のニュータウン・高島平団地に約30年住む、ジャーナリストの浅川澄一氏が言う。
「現在、高島平団地の高齢化率は50・2%に達しています。1万5000人あまりの住民のうち、7600人が65歳以上と、まるで日本社会の縮図です。'70年代初めの開発当時に入居した世代がそのまま年をとり、60~80代を迎えているわけです」
 日本人の夢が詰まったニュータウンは、今や「オールドタウン」と化した。2025年までには、少なからぬ住民がいなくなっているはずで、入れ替わるようにして、多国籍の外国人労働者が流れ込んでゆく。地域紙「高島平新聞」の調べによると、現在、同団地に外国人は約900人住んでおり、団地の子供の 6・5人に1人は外国人だという。
 高島平団地の近隣には、日本の看護師資格をとるために来日した外国人向けの日本語学校がある。そこに通う留学生は、地域のボランティアなどにも積極的に加わり、住民の信頼を得ている。
 しかし、数ある日本語学校の中には、事実上の「寄せ場」と化しているところもあるのが実情だという。外国人労働者問題に詳しい、ジャーナリストの出井康博氏が言う。
「急増しているアジア系の外国人労働者は、その多くが日本語学校に通う留学生です。ただ、学校には在留資格を得るために籍だけ置き、目的は出稼ぎ、という人も少なくありません。 彼らはブローカーに『日本に来れば、簡単に月20万~30万円稼げる』と騙され、家や土地を担保に、学費など200万円近くを借金して来日する。ブローカーが日本語学校と組んで、彼らを食い物にしているのです」

■傷害・窃盗・大麻・地下銀行
 首都圏の周辺には、すでに「外国人労働者の街」と化しているエリアもある。昨年上半期、外国人の刑法犯検挙件数は6610件。刑法犯全体の4%未満と、これだけを見ると必ずしも多いとは言えないが、実はベトナム人の犯罪件数が前年同期比で36%も急増している。民家を改造して大麻を栽培する。本国への違法送金を格安で請け負う「地下銀行」を運営する……その手口は、単なる傷害や窃盗だけにとどまらない。物価の安いベトナム出身の労働者が、低賃金で過 酷な労働をさせられ、耐えきれずに犯罪に手を染めるケースが増えていると考えられる。
 「アジア系外国人労働者の中には、徹夜の肉体労働など、労働条件のよくない仕事に携わる人も多い。また、日本人の人手不足もあって、『留学生のアルバイトは週28時間以内』という法律の規定も全く形骸化しています。日本語 学校の学費の支払いを逃れようと、退学して不法就労に走る者もいる」(前出・出井氏) ・東京五輪が終わり、5年の月日が流れた2025年の日本では、各地でマンションの空洞化がさらに深刻になり、空き家率も20%を超えている。
 半ば打ち捨てられた郊外のマンションや団地へ、中国の貧困層のみならず、東南アジアでも賃金が安いベトナムやカンボジア、バングラデシュなどからの外国人労働者が住むようになる—彼らに日本語は通じない。
「日本に出稼ぎに来る外国人が、皆日本語を勉強し、社会に溶け込む努力をするとは限らない。そういう人々が集まって、外国人だけのコミュニティがあちこちにできてしまうのです。 ・中国でも、北京など都市部の建物には、窃盗防止のため必ず金属の防犯ドアが付いていますが、日本にはそうした設備がないところも多い。外国人犯罪集団からすれば、日本は犯罪天国に見えるでしょう」(前出・矢板氏)
移民という「最後の手段」に手をかけた日本。2025年の治安は、年間に東京の2・5倍の殺人事件が起き、34倍の強盗事件が起きるニューヨーク以下に悪化していてもおかしくない。
 ≫(現代ビジネス:賢者の知恵―「週刊現代」より)

2025年の世界予測--歴史から読み解く日本人の未来
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●原発事故後の福島県 届かぬ現状、見てみぬふりの政府と東電

2016年03月27日 | 日記
終わらない原発事故と「日本病」 (新潮文庫)
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●原発事故後の福島県 届かぬ現状、見てみぬふりの政府と東電

今夜は時間がないので、原発事故によって被害を受けた福島県民の人々の現状を伝える二つの記事を紹介する。政府の責任、東電の責任、自治体の責任‥等、考えるべきことが、あまりに多すぎて、筆者は、あまり原発事故問題にコラムで言及していない。この問題を追及し始めると、蟻地獄に落ちたように、そこから逃げ出せないと感覚的に思ったからだ。原発産業に関する問題点は根が深い。何処を突いても、何処を刺しても、出てくるのは、何らかの膿なのだ。今夜は、この二つの記事を参考引用するにとどめるが、逐次、原発問題、原発事故に関して、幾つか続編として書きたいと思っている。

 ≪ 7割「住宅決まらず」 無償提供打ち切り後、福島県調査
震災と原発事故に伴う自主避難者らへの民間借り上げ住宅などの無償提供が来年3月で打ち切られることを受け、県は25日、対象世帯への意向調査の中 間取りまとめ状況を発表した。打ち切り後の住宅が決まっていない世帯は回答した6091世帯のうち70%の4285世帯に上り、早急な対策が求められる状況が浮き彫りとなった。
 25日に県庁で開かれた新生ふくしま復興推進本部会議で示した。調査は1月25日から県内外の1万2600世帯を対象に郵送で実施。県内外に避難 している自主避難者のほか、地震や津波で被災し、仮設住宅で暮らす避難者が含まれる。県内外の借り上げ住宅に住む9944世帯のうち、回収率は2月末時点で61.3%。
 県内避難世帯のうち住宅が決まっているのは1101世帯(37.9%)で、決まっていないとする1784世帯(61.4%)を大きく下回った。県 外避難世帯は「住宅が決まっている」が673世帯(21.1%)、「住宅が決まっていない」が2501世帯(78.5%)と県内より差が広がった。
 また、「来年4月以降に県内で生活する」とする割合について、県内避難世帯は住宅が決まっているかどうかにかかわらず、ともに約90%になった一方、県外避難世帯は住宅が決まっている世帯が約50%、決まっていない世帯が約10%と意識の差が明確に表れた。
 県は5月上旬から、住宅を確保できないと回答した世帯や回答のない世帯を対象に戸別訪問し、総合的な住宅支援策を紹介するなどして住宅確保に向けてサポートする方針。  ≫(福島民友)


≪ 不登校の増加率、福島が全国5倍 原発事故の影響否めず
東日本大震災や福島第一原発事故で大きな被害を受けた福島県で、小中学生の不登校が増え続けている。震災前と比較すると、増加率は全国平均の五倍以上に上る。震災から五年が経過し、関係者は「福島の状況は他の被災地と比べても特殊。長い時間をかけて対策を取る必 要がある」と訴えている。 (上田千秋)
 「転校を繰り返して何度も人間関係をつくり直すのに疲れたり、家族が離れ離れになって気持ちが不安定になり、学校に行けなくなった子どももいる。震災や原発事故の影響は否定できない」。福島県教育委員会の担当者は、こう話す。
 文部科学省の行動調査を基にした二〇一〇年度と一四年度の不登校の小中学生の比較では、全国の増加率は2・5%。これに対し、被害が大きかった東 北三県のうち岩手はほぼ同数で、宮城は11・7%増。千五百七十五人だった福島は千七百八十五人になり、増加率は13・3%増と全国平均を大きく上回った。
 不登校の子ども向けのフリースクールの運営や被災者への学習支援などを行うNPO法人「ビーンズふくしま」(福島市)の中鉢(ちゅうばち)博之理 事は「県内の事情はさまざまで、一概に被災と結びつけられるわけではない」とした上で、「震災の記憶が色濃く残る子もいる。最初は頑張れていても、少しずつ気持ちが崩れてきているのではないか」とみる。
 福島では原発事故の影響も含め、ピーク時の一二年六月時点で約十六万四千二百人が避難を余儀なくされた。今も約九万八千六百人が避難生活を送り、コミュニティーそのものが壊れてしまった地域も多い。  中鉢理事は「本人の問題だけでなく、親ら家族が抱えるストレスが子どもに影響を与えている側面がある。時間がたつにつれて被災地から撤退する団体が増え、被災者支援そのものが追いついていないのも課題だ」と明かす。
 国や自治体も対策を打ってはいる。文科省は教員を増員。県教委は各学校にスクールカウンセラーを配置して児童・生徒の相談に当たるほか、福祉の専門家らとの連携も進めている。
 ただ、福島大大学院の鈴木庸裕(のぶひろ)教授(学校福祉・生活指導)は「福島では家族のありようや人間関係などを含めてすべてが大きく変わった。長期の見守りが不可欠」と説く。
 不登校は本人や学校に原因を求めがちだが、鈴木教授はそれだけでは改善しないと指摘。「子どもたちを支える立場にいる教員らも被災者で、五年たって息切れしてきている。さらに状況が悪くなる可能性もあり、地域全体でサポートしていく体制づくりが必要だろう」と話した。  ≫(東京新聞) 

 


原発棄民 フクシマ5年後の真実
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●衆参W選挙の思惑総崩れ 参議院選「自共対決」敗北も現実味

2016年03月26日 | 日記
従属国家論 (PHP新書)
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●衆参W選挙の思惑総崩れ 参議院選「自共対決」敗北も現実味

以下の英エコノミストのコラムで言いたいことは、≪日本経済の自由化を進めるべく安倍首相は一層努力すべきだ、と考える人は多い。例えば、労働市場を徹底的に改革する。非正規労働者は低賃金に甘んじており、個人消費の足かせとなっている。これを改善するためのもっと強力な 政策を打ち出すこともできる。だがある政府官僚によると、踏み込んだ改革計画が発表される予定は当面ないという。≫が主テーマだが、実は、筆者は、そこの部分が間違っているのだと思う。

日本は、見方によれば、資本主義・民主主義モドキの諸先進国の歴史的誤謬の最先端を走っているのだと理解している。何も、経済の自由化が足枷で、経済が停滞、乃至は縮小していると考えるのは、木を見て森を見ていないと言わざるを得ない。歴史的なフェーズの転換期である可能性が高い諸条件は揃ってきた。すでに、資本主義、特にグローバリズムな金融資本主義の足搔きの出現は、認めたくなくても、顕著に現れている。実物資本から金融資本への移行は 資本主義の終焉を明示しているのだから、致し方がない。これだけ、一応理に適った経済政策を打っても、プラスに反応するどころか、マイナスの反応さえ見えると云う事実から目を背けてはいけない。

世界的な文明の高度化は、或る時点から、人間らしさを失う程に高度化してしまったのだ。こうなると、人間が本来であれば、持っていたであろう社会共同体が有する「神の手」の作用が期待できなくなるので、資本主義は、善良なシステムから、一気に悪魔のシステムに変貌してゆく。人の営みが、他者性を見失った時には、社会はあっても、血が通わないものになるので、無機質な社会共同体構造になる。所謂、仏作って魂入れずに接近中と云うことだ。戦後において、日本でも一定期間だけ「神の手」(共通認識)があった。戦後の復旧復興と経済の隆盛だ。日本人が、一定の同種の目的を持って突き進めた時期である。

しかし、明らかに、日本人の共通認識や国家観は、特殊な人々を除いて、消失している。この現象を、ケシカランとか、教育の中で修正していこうなどと云う試みは、木の枝を剪定しているだけで、面従腹背な社会構造を助長して、一層重篤な社会や国民を生みだすだけだ。国旗掲揚に姿勢を正せとか、君が代を歌えとか、そう云う形式論で、国民が国家意識を持つなど、社会の仕組み自体が判っていない証拠である。

不思議というか、当然というか、構造的に支配が強い教育の場で形式主義を強めたいと思っている自民党の議員や、そこに関わる連中ほど、この形式主義においてさえアウトの判定を受けそうな連中の不祥事が数珠繋ぎだ。
・大西英男衆院議員の「巫女のくせに、自民党が嫌い」発言。
・山田俊男参院議員はJA関係者を公衆の面前で“どつく”と云う暴力行為。
・稲田朋美自民政調会長とヘイトスピーチ団体“在特会”との蜜月を司法が確認。
・石徹衆議院議員の秘書のホテル行こうと陰部オサワリ事件。
・パンツ泥棒・香典配賦疑惑の高木復興大臣。
・除染基準値に科学的根拠なし発言の丸川珠代環境大臣。
・電波停止発言でテレビ業界を震撼させている高市総務大臣。
・奴隷黒人がアメリカ大統領発言の丸山和也参議院議員。
・外務委員会の携帯イジリ⇒読書⇒大あくび事件の松島みどり衆議院議員。
・育休取得宣言がW不倫の宮崎謙介前衆院議員(議員辞職)。
・真打は、何と言っても、収賄疑惑の甘利経産相(辞任)で、特捜部は自民にお咎めなし情報で、睡眠障害で3カ月の雲隠れ。

上述だけでも、政権が数回は総辞職するような出来事だが、“問題なし官房長官”のひと言で胡散霧消。これらの醜聞に加え、5人以上と妻公認の不倫三昧のエロ武(乙武)なる人物を参議院候補者で公認とか、顰蹙下手糞に“君が代斉唱”の参議院沖縄選挙区自民党候補・今井絵理子候補は、少女本番で逮捕の彼氏と半同棲との情報がある。また、レベルは違うが、新党大地に手を突っ込み、民主党所属だった娘の鈴木貴子議員を離党させる離れ業を演じさせ、衆院北海道5区補選の自民党候補和田義明候補の応援に回ると宣言。世間をあっ!と言わせたが、野党連合候補池田真紀候補の評判がうなぎ登り。鈴木宗男氏も毒まんじゅうで狂ったようである。

これでも、安倍自民党が安泰なのは、あいかわらず、安倍官邸と“なあなあ関係”を維持している記者クラブ中心のマスメディアによる内閣支持率や政党支持率は、安倍自民党の有利を示している。この情報がW選等々の根拠だが、果たして、自民党は本気で勝てると思っているのか。筆者は最近、安倍の勘違い解散はあるとしても、勝利確実の根拠を持てる自民党衆議院議員は、半数に満たないのではないか、と思っている。時事の田崎史郎が、解散はないと云うコラムを書いていたのが気にかかる。或る意味で、最もな結論のようにも思えてくる。7:3で勘違い解散すると思うのだが……。

安倍政権の一強と云うものが、“不遜傲慢病”を蔓延させた可能性が強い。自民党議員だけの宴会など話を録音したら、世界中がひっくり返るほどの話を平気でしているに違いない。おそらく、日が経てば経つほど、安倍自民党の恥は噴出するだろうし、経済はボロボロになる。参議院選に勝だけでも、実は火の車で、「選挙に勝つためなら、何でもする」モードに入っている。つまり、「棄民政権」がバレているのではないかと云う疑心暗鬼状態ではないのか?以下に、“何でもする”の数々を羅列しておこう。
・参議院選前後に年金受給者1250万人に3万円支給。(買収工作)
・保育士給与増額4%。(10万低い、8千円意味なし、アリバイ工作)
・若年低所得者に貯蓄させない商品券支給。(買収工作)
・被選挙権の年齢引き下げ。(歓迎するか疑問だがw)
・長時間労働是正36協定見直し。(ホワイトエグゼプション隠し)etc.

おそらく、今後も此の手の選挙用政策が矢継ぎ早に出てくるだろう。しかし、消費増税の捕らぬ狸…税収抜きに、財務省が、これらの金を用立てるとは思えない。消費税を10%にはするが、低所得者対策に全力を上げる姿勢を示す方が、直近の参議院選向きだ。格差是正に全力を挙げると云う姿勢に替わる可能性もありそうだ。どう考えても、プーチン会談で、北方領土の解決にメドが立つとも思えない。ロシアは北方領土にミサイル基地設置を、藪から棒に決めたようなので、益々外交で成果を上げるのは厳しそうだ。正常な神経なら、怖くて解散など出来ないのだが、みすみす参議院選だけで、敗北では、憲法改正・緊急事態法の成立もうたかたの夢。さあ、どうするのだろう?北海道の町村弔い合戦で敗北なら、解散は完全に消える。

最後に、解散が打てるのか?と疑問を呈している田中良紹氏発信情報を参考掲載しておく。但し、TPPはオバマの思惑通りに行ったように見えるが、批准には、更なる追加条件協議が持ちだされ、日本社会はボロボロになるのだろう。

≪ 同時選勝利を目論む安倍首相 自らが障害
安倍晋三首相が前回、総選挙に踏み切ったのは、2012年に首相に就任してからわずか2年後のことだった。即座に解散総選挙を決めた安倍首相の目は、野党陣営の混乱ぶりと、議席数を増やすチャンスをとらえていた。 それでも安倍首相は「公約の重大な変更について国民の信を問う」という大義名分のもとにこの選挙を進めた。経済が停滞するのに鑑み、以前から決まっていた消費税引き上げを延期すると決断したからだ。選挙は自民党の圧勝に終わった。そして今、国民の信を問う必要がある重要政策が再び浮上すると思われ る。

 日本経済が一向に回復の兆しを見せない中、安倍首相がまたしても消費増税を先送りする可能性があるのだ(現時点では2017年4月に8%から10%に引き上げることが予定されている)。決断のタイミングは、日本が議長国を務める5月のG7(先進国首脳会議)を終えてからになるだろう。前例に従うならば、この問題に関して解散総選挙を行わないわけにはいかない。6月か7月には参議院選挙が予定されている(参院議員の半数が改選される)。安倍首相はおそらくこれに合わせて総選挙の日程を決めるだろう。

■原発、安全保障、スキャンダル
 自民党の中にはより早い時期の総選挙を望む者もいる。安倍首相の運が尽き果てないうちに、急いで済ましてしまいたいのだ。現在、安倍政権の前には様々な困難が立ちはだかっている。最大の懸念は経済だ。個人消費の冷え込みを受け、2015年10~12月期の日本経済は年率換算で1.1%縮小した。日本銀行(日銀)は1月、マイナス金利政策を打ち出して需要の喚起を図ったが、その狙いとは裏腹に株価は下落し、円高が進んだ。

 遅かれ早かれ日本の有権者は、停滞する経済への不満を安倍首相にぶつけることになる。同首相は経済立て直しを約束していたのだから。
 国民の支持を得られていない政策は他にもある。安倍首相はそれらに対する制裁をまだ受けていない。原子力発電所の再稼働はその一つだ。5年前のこの時期に発生した福島第1原発のメルトダウンという最悪の事態を受け、日本の原発はすべて運転を停止していた。
 昨年成立した新たな安全保障関連法について、多くの専門家がこれを違憲だとしている。この法律は海外でこれまでより幅のある行動を日本に許すもので、多くの日本人が不快に感じている。
  ただでさえこうした不満が渦巻いているところに複数の与党議員が不祥事を起こした。1月には安倍首相の側近だった甘利明経済再生担当相が政治献金疑惑をめぐって辞任した。また、男性国会議員として初めて育児休暇をとると宣言して話題を集めていた議員が、妻の妊娠中に他の女性と不倫関係にあったことが発覚。 それ以来、安倍政権の支持率は50%を下回っている。

 ■首相が進める改革は十分か
  消費税に関しては、2014年に行われた最初の増税(5%から8%)が個人消費に打撃を与えた。安倍首相の経済アドバイザーを務める本田悦朗氏は、安倍首 相が経済を回復させるべく広く取り組んでいる政策について国民の信頼を失いたくないなら、今度の引き上げを延期することが不可欠だと話す。 3年間にわたって大がかりな金融緩和を行った今でもコアインフレ率 はゼロに近く、日銀が目標に掲げる2%には程遠い。労働組合の幹部たちでさえ、大幅な賃上げを要求してはいない。そして銀行が貸し出しによって得られる利 ざやは相変わらず圧迫されている。こうした状況はすべて、安倍首相が約束する「賃金・消費・投資の増加による好循環」を脅かすものだ。こうした状況下で夏の選挙に臨んだ場合、有権者が安倍政権に投票するかどうかは疑問だ。

 日本経済の自由化を進めるべく安倍首相は一層努力すべきだ、と考える人は多い。例えば、労働市場を徹底的に改革する。非正規労働者は低賃金に甘んじており、個人消費の足かせとなっている。これを改善するためのもっと強力な 政策を打ち出すこともできる。だがある政府官僚によると、踏み込んだ改革計画が発表される予定は当面ないという。

 一方、中道左派政党の野党・民主党は総選挙に向け候補者の擁立に奔走している。だが確固とした足掛かりは築けそうにない。世論調査によれば民主党の支持率はわずか10%にすぎず、哀れなほどの水準にとどまっている。これに対して自民党の支持率は4割にのぼる。
 民主党は消費増税の2度目の延期を取り上げ、アベノミクスの失敗がその原因であると追求する構えだ。だが普通世帯を取り巻く困難な状況を考慮し、増税の延期そのものには反対しないと思われる。

 ■確かな憲法を求める安倍首相
 衆参ダブル選挙を実施することの是非を考えるにあたり、安倍首相は自らの夢の実現につながる大勝利が可能かどうかを検討することになる。安倍首相の夢、それは憲法改正だ。その中心にあるのは、1940年代後半に進駐軍が策定した平和憲法を書き換えたいという思いである。
 安倍首相はこうした改正が必要となる理由について、次のように説明している。あの悲惨な戦争から70年が過ぎた今、日本はもはや、時代遅れの平和主義によってがんじがらめにされる必要はない。日本を取り巻く環境は日増しに危険度を増しているのだから――。
  日本で憲法を改正するためには、衆参両院のそれぞれで議員の3分の2以上が賛成し、国民投票で半数以上の賛成票を得る必要がある。自民党とその連立相手で ある公明党は、衆議院では議席の3分の2以上を確保している(475議席中325議席)が、参議院においてはかろうじて過半を超える程度である(242議 席中136議席)。
 安倍首相が参議院で議席数を増やすことは可能かもしれないし、右派の小政党、おおさか維新の会の協力も期待できる。そ れでも憲法を改正しようとすれば、日本の平和主義を誇りに思う国民の多くが大きな警戒心を抱くだろう。つまり、選挙での勝利を願う安倍首相にとって、憲法 改正の取り組みについて喜々として話すその性向が最大のリスクとなるのだ。
(c)2016 The Economist Newspaper Limited. Mar 12th 2016 All rights reserved. 英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
 ≫(日経新聞)


≪ 安倍総理はジンクス通りに解散を打てるのか?-(田中良紹氏)
22日の東京新聞に気になる記事があった。
ロシア軍の元特殊部隊員にモスクワ特派員が独自取材をしているのだが、 ロシア軍のウクライナ介入は2013年12月に既に準備されていたというのである。
2013年12月のウクライナはまだ親ロ派のヤヌコビッチが権力を維持していた。 一方、12月13日にヌーランド米国務省報道官がワシントンで 「ソ連崩壊後のウクライナの民主化勢力に米国は50億ドル以上投資した」と発言し、 ウクライナの首都キエフでは親欧米派による反ヤヌコビッチ・デモが高まり始めていた。
ロシア軍元特殊部隊員はその12月に指揮官から「近くウクライナで軍事行動がある」と言われ、 翌14年1月にロシア軍の記章のない新しい軍服を支給されたと証言する。
軍の記章を付けない武装勢力は、 その後クリミア半島の制圧やウクライナ軍との戦いの中心になるが、 その作戦計画は13年12月から練られていたのである。
その13年12月に南アフリカでオバマ大統領とキューバのカストロ国家評議会議長が握手をし、 秘かに国交正常化への政策転換が進行していた。 しかし元KGBのプーチン大統領はその情報を把握していたかもしれない。
14年2月7日から始まるソチ・オリンピックで米国はテロに襲われた場合の自国民救出を口実にロシア海軍の拠点のある黒海に軍艦を派遣したが、 プーチンは直ちに米国の喉元キューバに軍艦を派遣していた。
ソチ・オリンピックでロシアが動けない時期にウクライナで米国に後押しされた反政府暴動が盛り上がり、 ソチ・オリンピック直後の2月24日にヤヌコビッチ政権は崩壊する。
するとロシア海軍の拠点があるクリミア自治共和国で親ロ派と反ロ派が衝突、 そこに正体不明の武装勢力が乗り出して重要施設を占拠した。
間もなくプーチンは3月1日に連邦議会にウクライナ全土での武力行使の承認を求め、 正式にロシア軍がクリミアに出兵、 16日には住民投票が実施されてクリミア共和国がロシア連邦に編入された。
米国、EU,日本などはこれを認めず、ロシアをG8から除外して世界は「新冷戦体制」に突入する。
つまりG8からロシアを除外した理由は、 ウクライナ危機を口実にロシアが力でクリミアを編入したためだと欧米は主張するが、 そもそもウクライナ危機を主導したのは米国で、 ロシア海軍の拠点であるクリミアをロシアが力で守ろうとすることを米国が知らない筈はない。
「新冷戦体制」は米国の仕掛けと見ることが出来る。
これでG8からG7になったサミットは米国と同等の核を持つロシアが参加しない会合となった。 世界経済第二位の中国もメンバーではない事から、 世界の経済問題や安全保障問題を討議する場として今やG7よりG20の方がずっと重みのある 首脳会合と言える。
ところが安倍総理は今年日本で行われるG7サミットを最大限に盛り上げようとしている。 それは夏に行われる選挙を意識しているためだ。
なぜなら日本でサミットが開かれる年には衆議院が解散されるというジンクスがある。 最初に日本でサミットがあったのは1979年、 この年に大平総理は消費税導入を掲げて衆議院を解散した。 次の1986年には中曽根総理が衆参ダブル選挙を行い、さらに1993年には宮沢総理が、2000年には森総理が衆議院を解散した。
サミットがあっても解散しなかったのは2008年の福田総理ただ一人である。 結果を見ると、解散して勝利したのは中曽根総理ただ一人で、 大平、宮沢、森の各総理は議席を減らし、宮沢総理に至っては自民党を初めて野党に転落させた。
安倍総理は中曽根総理が自らの任期延長を狙って衆参ダブル選挙を行ったのを真似したいのである。
問題はそれが思惑通りにいくかである。
中曽根総理は「大型間接税はやらない」と選挙公約して衆参ダブル選挙に勝利した。 安倍総理も2014年に「消費税先送り」を掲げて解散したが、 同じ手法を二度も使って効果があるかという問題がある。 しかも中曽根総理は選挙に勝つと公約を翻し「売上税」をやろうとして猛批判を浴びた。 それを国民は覚えている。
またこれまでの選挙で安倍自民党を有利にしてきたアベノミクスが ついにごまかしの効かない段階に入ってきた。 アベノミクスは既に国際社会から失敗の烙印を押され、 国民も鼻先にぶら下げられたニンジンが遠ざかっていくのを感じている。
何を掲げて選挙を戦うのか、解散の大義がまだ見えない。 ただフーテンには安倍総理が国民の目を経済から外交に移し、 外交の成果を見せつけようとしているように見える。
それが伊勢志摩サミットを前に5月にロシアを訪問し、 ソチでプーチン大統領と会談を行おうとしているところに表れている。
北方領土問題の解決と平和条約の締結に近づいたように見せて、それを国民にアピールしたいのである。 しかし新冷戦体制下でそれが思惑通りに運ぶかどうかは簡単でないと思う。
新冷戦体制を仕掛けた米国から見ればそれはロシア包囲網を弱める動きと判断される。 オバマ大統領は安倍総理に訪ロを考え直すよう求めた。
米国の要求を断って対ロ外交に邁進する事になれば、それに見合ったリスクを覚悟しなければならない。
会談場所のソチは2年前にウクライナ危機が起こる事を知っていた西側首脳がみな欠席した 冬季オリンピックの開かれた場所である。 西側では安倍総理だけが出席し、プーチン大統領から異例の歓迎と接待を受けた。
それは米国から冷ややかな目で見られていたと思う。
しかし米国にはTPPと集団的自衛権の行使容認で安倍政権を利用しなければならない事情があり、 その時点では大目に見ていたかもしれない。
そのTPPと集団的自衛権行使容認が米国の思惑通りになった現在、事情はそれ以前と異なってくる。
安倍政権は用済みと考えられるかもしれないのである。 最近フィナンシャル・タイムズが「米国と最も強い同盟関係はフランスとオーストラリア」という記事を掲載した。
かつてはヨーロッパではイギリス、アジアでは日本だったが、 イギリスがイラク戦争で米国に協力的でなくなり、 「テロとの闘い」で最も協力的なのはフランスである。
また日本には中国や韓国と歴史認識を巡る問題があり、 米国はアジア太平洋地域でのパートナーとしてオーストラリアを第一に考えているというのである。
アベノミクスの効力が薄れてきたように、 安倍政権のすり寄り一辺倒の外交姿勢もその効果は薄れてきているとフーテンには見える。
あと2か月ほどで伊勢志摩サミットを迎え、その直後に国会は会期末を迎えるが、 安倍総理はジンクス通りに解散を打てるかどうか見ものである。 ≫(市村悦延氏のTwitLongerより:引用は田中良紹氏発信)
http://www.twitlonger.com/show/n_1sofvgv


小説 外務省II-陰謀渦巻く中東
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●結婚しない、産まない 「普通」だと定義するイデオロギー

2016年03月25日 | 日記

 

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●結婚しない、産まない 「普通」だと定義するイデオロギー

以下の河合薫氏のコラムは、良い線を行っている。しかし、労働集約産業を蔑ろにしたため、人力の価値が、歴史的に減少した。文明の進歩は、安全・安心・便利・快適なため、子孫を出来るだけ多く残す必要がなくなった。この根本的視点が欠けている点が残念だが、謂わんとしていることは、概ね正しい。遠慮がちに、「一億総活躍社会」を取りあえず「正論」としているが、個人の自由意思は常に尊重され、守られるべきであって、たとえ国家であっても、その個人の権利に介入することは、そもそも出来ない。

人類の文明の発展は、人類の性的欲望も減少させる傾向がある。戦前戦後の日本社会には、俗に言う「娯楽」と云うものは、限られており、早々に寝床に就く習慣があった。テレビもないし、まして、ネット社会でもないわけだから、“産めよ増やせよ”と云う前に、子孫を残すことが、一種の娯楽でもあったわけだ。主に男達は、その娯楽の一種を手に入れるために、蟻のように勤勉に働き、家庭を持てる収入を得ようと努力もしたし、棲む家の確保にも尽力した。その無料の娯楽獲得のためと云うと暴論になるが、思った以上に大きな要素であった。

残念ながら、文明は、そのような夫婦の営みを「娯楽」の領域から簡単に追い出してしまったのだから、自然現象として、結婚して「娯楽」を得ようと、人々は思わなくなった点は、想像以上に大きい。人間は、その行為や、そこから得られるゲインが曖昧な場合には、確信出来るまで、動かないものだ。ゆえに、国民に対して、子供を産めと、言論であれ、法整備であれ、教育であれ、誘導してもいけないし、説教してもいけないし、まして、強制などしてはいけない。ただ、産み育てた場合、これこれの利益がありますと、利益誘導することは良いだろう。

産まないのが普通だと云う認識から、国家は政策を考えるべきだ。産むのが当然と云う、思考停止から、つぎなる論法を繰り出すから、全部はハズレになる。再配分に関わる官僚や役人など居なくても済むような制度設計(ベーシック・インカムなど)を導入し、プラスアルファ―に、子供の員数分の手当てを自動的に配分するだけで良い。一番反対するのは、官僚達だ、シロアリの巣窟が減少するからだ。もっと、人間の動物的資質を考慮して、政策に生かしていけば、少子化の歯止めから、増加(ある程度の範)も夢ではない。

「なんだよ、良いこと言ってるじゃん」トンデモナイ。それこそ、個人の生き方に口を出すことは、国家と謂えども許されない。自分たちの都合が良くなる社会が「普通」と云う、固定的観念が誤謬の元凶だ。普通は二人の子供を産むことはない。それが、「普通」と云う考えに、心を入れ替えない限り、永遠の水掛け論に予算を費やすのがオチである。一人っ子だけの問題ではない。結婚しない、でも子供を作っても良いと思う人々を救済する手立ても、文明の進歩と同じ歩みで政策化すべきだ。国家にとって都合の良い家族制度に固執するのも、思考停止の一種だろう。


 ≪ 今も「結婚十訓」を引きずる少子化恐怖社会
茨田北中・校長「子供を2人以上生むことです」発言から考える 河合薫 子どもを産む、子どもを育てる、子どもを産まない、子どもが産まれない、そして、働く……。
 「子ども」と「女性」と「仕事」を巡る問題が、さまざまなカタチで報じられている。 子どもを産まなかった(産めなかった)女性は「捨て石」になれ? 子どもを産まなかった(産めなかった)女性は「寄付」をしろ? 子どもを産むことは、仕事でキャリアを積むこと以上に価値がある?
 う~ん。なんだかなぁ。子どもを巡る問題って、女性同士の、かなり近い関係でもデリケートな問題で。「子どもが出来た!」とか「産まれた!」とか「いくつになった!」と本人が口にして、初めて扉が開くトークテーマになのに……。
 なんでこんなにも、軽く、といったら語弊があるかもしれないけど、うん、やっぱり軽く、「産む」という言葉が使われてしまうのか。
 二言目には、「少子化」だの「国が滅びる」だのと正論をかざし、女性が働くという行為についても、国の「労働力」だの、「一億総活躍」だのとおっしゃられる。
 「あら、こんな年齢?!」と、うっかり子どもを産むことを忘れ、「あれ、なんてこった!」と振り返れば、働き続けている身としては、「どーもすみませんね~お国が滅びるのに加担しちゃって」と謝るしかないのだが、「そもそも」なんかおかしくないですか?
一挙に沈静化した大阪・茨田北中校長発言
 しょっぱなから「アンタだれと会話しとるんじゃい?」といった具合ではありますが、とにもかくにもモヤモヤしてたまらないのです。
 というわけで、今回は「子ども、女性、仕事」問題の「そもそも」を考えてみます。
 まずは先日問題になった、大阪市立茨田北中の全校集会での校長先生のお話全文を、お読みください(大阪市立茨田北中のホームページより、現在削除)。

≪ 今から日本の将来にとって、とても大事な話をします。特に女子の人は、まず顔を上げてよく聴いてください。
 女性にとって最も大切なことは、子供を2人以上生むことです。これは仕事でキャリアを積むこと以上に価値があります。なぜなら、子供が生まれなくなると、日本の国がなくなってしまうからです。しかも、女性しか子供を産むことができません。男性には不可能なことです。
 「女性が子供を2人以上産み、育て上げると無料で国立大学の望む学部に能力に応じて入学し、卒業できる権利を与えたらよい」と言った人がいます が、私も賛成です。子育てのあと大学で学び、医師や弁護士、学校の先生、看護師などの専門職に就けばよいのです。子育ては、それほど価値のあることなので す。
 もし、体の具合で、子供に恵まれない人、結婚しない人も、親に恵まれない子供を里親になって育てることはできます。
 次に男子の人も特によく聴いてください。子育ては、必ず夫婦で助け合いながらするものです。女性だけの仕事ではありません。
 人として育ててもらった以上、何らかの形で子育てをすることが、親に対する恩返しです。
 子育てをしたらそれで終わりではありません。その後、勉強をいつでも再開できるよう、中学生の間にしっかり勉強しておくことです。少子化を防ぐことは、日本の未来を左右します。
 やっぱり結論は、「今しっかり勉強しなさい」ということになります。以上です。 ≫

さて、いかがでしょう? 「なんだよ、良いこと言ってるじゃん」 「マスコミは相変わらず揚げ足取りだな。当たり前のこと言ってるだけだろ」 「最初のひとことが余計だけど、いいこと言ってんじゃん」 「そうだよ。少子化どうにかしなきゃだよ」 そんな感想を持った人は多いのではないだろうか?
 実際、私のまわりも、当初は激しく炎上したネット民たちも、「これは正論」とばかりに納得した。  「大切なことは、子供を二人以上生むこと。キャリアを積むこと以上に価値がある」という一部だけが報じられたときの、大炎上はどこ吹く風。「そんなに騒ぐことじゃない」的コメントが、激増したのである。
「少子化解消のために、子ども産みます!」???  確かに、全文を読むと言わんとしていることはわかる。国の現状、未来、少子化への危惧、男性の育児参加、キャリアを中断する勇気、一億総活躍――。まさに正論。
 「希望出生率1.8」は、「子どもを2人以上産む」ことだし、安倍政権が進める施策を、ご自分の言葉に置き換えたに過ぎない。
 だが、正論では人は動かない。人を動かすのは、常に感情である。とりわけ男女の問題では、自分でさえ理解できない状態に陥った経験を、誰もが一度や二度はしているのではあるまいか。
 いったいどこに「少子化解消のために、子ども産みます!」と言う女性がいるのだろう?  いや、中にはそういう奇特な女性もいるかもしれない。でも、普通は惚れた男がいるから「欲しい!」とか、「できた!」ってなるだけのこと。
 「少子化解消のために、俺と結婚してくれ」なんてセンスの悪いプロポーズや「今夜は少子化解消に貢献しよう!」なんて笑うに笑えないくどき文句を 口にする男性を、見たことも聞いたこともない。ましてや、「はい!お国のためを考えてるアナタ、ステキ!!」なんてラブする女性も、まずいないはずだ。  「働く」という行為についても同じだ。
 いったいどこに、「労働力が必要だから、働きます!」という女性がいるのだろう?  もし、そんな健気な女性がいたら教えてほしい。普通は「働きたい」から働くのであり、多くの女性たちは「働かないと生活できないから」働くんじゃないのか。
 だからこそ、「日本死ね!保育園落ちた」なのだ。
 国って、何? 少子化対策って何?  ほんと、一体なんなんだ? 戦争で、変わった  国立公文書館で「生まれた。育てた。―母子保健のあゆみ―」という展示会があった。
 「母子保健のあゆみ」は、明治時代に遡るのだが、明治時代初期、日本にやってきた多くの外国人が、日本の子育てを絶賛していたことをご存知だろうか。
 例えば、動物学者のエドワード.S.モースは、 「私は世界中に日本ほど赤ん坊に尽くす国はなく、また日本の赤ん坊ほどよい赤ん坊は世界中にないと確信する」 と大絶賛。それほどまでに、明治政府は「生まれてきた赤ん坊を、元気に育てる」ことに力を注いでいたのだ。
 明治7年には医師と産婆の業務が法的に区別され、西洋医学に基づいた本格的な産婆教育が展開されるようになった。単に「産ませる」だけではなく、生まれてからも、その命が大切に育まれていくような役割が産婆さんに与えられ、女性の専門職としての地位を獲得する。
 さらに、「元気に育てる」政策が強化されたのが20世紀初頭だ。日本の乳児死亡率が先進国の中でも高かったことで、「産まれてきた子どもを元気に 育てよう! 国の生産力である子どもを、みんなで育てよう!」という動きが一層強まり、「子どもが健やかに育つには、母親も健康で元気でいられるようにし なければ」と、「母子保健」の礎ができたのである。
 1916年には、内務省に保健衛生調査会が設置。そこには森鴎外(森林太郎)の名前も記されている。1934年には「恩賜財団母子愛育会」が設立され、農村で「愛育班活動」を開始した。
 この頃の日本は、「子どもは国の生産力」という文字とは対極の、子どもと母親への温かいまなざしがあった。みんなの宝物。そんな空気を感じさせる資料が、いくつも展示されていたのだ。 産めよ育てよ国のため…と記した「結婚十訓」
 ところが、である。太平洋戦争が始まり、空気は一変する。
 1941年に「人口政策確立要綱」が策定され、「出生数を5人」として、国が理想とする子どもの数が明言される。翌年には、「子どもと母親」に当てられていたスポットが、「結婚と出産」に移り、「おいおい、マジかよ~~」と唖然とする、「結婚十訓」なるものが政府から示されたのである。

【結婚十訓】
一.一生の伴侶として信頼できる人を選びましょう
二.心身共に健康な人を選びましょう
三.お互いに健康証明書を交換しましょう
四.悪い遺伝のない人を選びましょう
五.近親結婚は成るべく避けましょう
六.成るべく早く結婚しましょう
七.迷信や因習に捉われないこと
八.父母長上の意見を尊重しなさい
九.式は質素に届けはすぐに
十.産めよ育てよ国のため
……、すごい訓示だ。

 十訓を読めばわかるように、それまでの「産まれた子ども」にフォーカスした政策から、「国に必要な子どもを産む」政策に転換した。国のために「いい人材」を産むことが、女性の“重要な営み”として、奨励されたのだ。
 でも、これって……。はい、そうです。似たような政策が、現代の日本でも掲げられた。
 「少子化危機突破タスクフォース」。この組織の存在を覚えているだろうか?  今から3年前に政府が立ち上げたもので、議長は森雅子少子化担当相(当時)だ。批判が殺到した「女性手帳」、若年層の恋愛調査の実施、婚活イベントへの財政支出、若年の新婚世帯の住宅支援、などなど、
 「さっさと女性は結婚し、子供を産み、仕事もしなさい! そのためには、婚活もサポートをしますよ」 的政策を次々と展開。
 いわば、“結婚十訓”の現代版だ。
 以前、「女性は子供を産む機械」と柳沢伯夫・厚労相(当時)が発言し、総スカンになったことがあったが(そのときも実際には後日、その前後の文言が公表され、擁護派が現れた)、やろうとしていることは同じ。 わずか2.9ポイントしか違わない  そうなのだ。今、起きている「子ども、女性、仕事」を巡る問題の根っこには、戦争時の「お国のために」というプロパガンダが息づいている。
 時代は変わり、家族のカタチも、働くカタチも、すべて戦時中とは全く違うのに、当時の「理想」を追いかけているだけで、それを可能にする環境を整 備しない社会。誰も、「お国のため」なんて考えている人はいないのに、あたかもそういう人がいるかのような幻想が蔓延していること。そういったいくつもの 「理想と現実のギャップ」が、さまざまな問題を引き起こしている。そう思えてならないのである。
 先日、「妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査」の結果がリリースされたのだが、そこには「理想と現実のギャップ」のカタチが示されていた(独立行政法人労働政策研究・研修機構)。
 マタハラなど妊娠等を理由とする不利益取扱い等の経験率は 21.4%で、企業規模が大きいほど経験率が高い。また、雇用形態別には派遣労働者の経験率が45.3%と極めて高いことがわかった。
 働く女性の非正規率は極めて高く、20代後半~30代前半で4割。30代後半になると5割を超えるというのに、2人に1人がマタハラを経験しているとは……。この実態をどんな言葉にしたらいいのか。
 さらに、マタハラは、上司だけではなく同僚からも、男性だけではなく女性からも行われていて、マタハラの行為者を性別に見ると、男性 55.9%、女性 38.1%(不明6.0%)という少々ショッキングな数字が示された。
 具体的には、 ・「休むなんて迷惑だ」「辞めたら?」などの発言をされた (47.0%) ・妊娠等を理由とする不利益取扱い等を「示唆するような発言をされた」( 21.1% ) ・賞与等における不利益な算定(18.4%) ・雇い止め(18.0%) ・解雇(16.6%) などなど、なんだかなぁという回答で占められたのである。 で、いくつもの調査結果の中で、特に私が気になったのが以下の分析だ。
  「防止対策に取り組んでいる企業では、妊娠等を理由とする不利益取り扱い等の経験率が低くなるとともに、出産後も働き続ける女性の割合が高くなる傾向がある」
 調査概要にはこう書いてあるのだが、中身をよく読んでみると、たった 「2.9ポイント経験率が低い」だけ。そう。わずか2.9ポイントだ。
 「相談・苦情対応窓口の設置」をしたり、「つわり等により不就労が生じた妊婦がいる職場に対する業務上の応援」をしたり、「管理職に対し、妊娠等 を理由とする不利益取扱いが違法行為であること等について、研修などによる周知」を実施したり、相談・苦情対応窓口を「人事担当者や職場の管理職が担当」 するなど、さまざま防止策に取り組んでも、たった「2.9ポイント」しか減っていなかったのである。 最も大切なことは、子供を二人以上生むことではない  この数字の小ささこそが、「国の理想」と「リアル」のギャップなんじゃないのか。
 どんなに「少子化解消」「一億総活躍」だの理想を掲げたところで、職場における、過重労働、長時間労働、極度な時間的切迫度が蔓延する環境が変わらなければ意味がない。
 そのしわ寄せが来るのは、常に「個人」で。子どもが宿るという幸せな出来事を迷惑がられ、子どもを産んでも働かなきゃなのに、働けない世の中。「国の理想」と「リアル」は矛盾だらけだ。
 マタハラマタハラ、って責めたてるけど、誰だって自分がギリギリの状態になれば、心ない言葉を、つい吐いてしまうことがあるじゃないか。 「子どもできた?辞めれば?」 「ツワリで欠席?いつ辞めるの?」
 そんな心ない言葉に傷つくのは、“母親”だけじゃない。「なんて私は器の小さな、ひどい人間なんだ」と意地悪な言葉を吐いた本人も、傷つき自己嫌悪に陥る。
 産まれる子どもを大切に出来ない社会に、希望出生率もへったくれもない。少子化を解消するには、「今、ここに産まれてくる子ども」の出産への支援(職場の柔軟性)と子育てへの支援(国と職場の支援)の両方を整えることが必要不可欠。
 何一つ難しいことではない。「今、ここに産まれてくる子どもを、大切に育てよう」とするだけでいい。国の未来を危惧する前に、目の前の子どもを大事にする。そうすればいいだけだ。
 「女性にとって最も大切なことは、子供を二人以上生むことです」 ではなく、
 「国にとって最も大切なことは、女性が子どもを二人以上産みたいと思う支援と環境を整えることです」  ≫(日経ビジネスONLINE:総合トップ > マネジメント > 河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学 )

終わらない原発事故と「日本病」 (新潮文庫)
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●21世紀政治家の大根役者 オバマも安倍もアリバイ工作(1)

2016年03月24日 | 日記
これから始まる「新しい世界経済」の教科書: スティグリッツ教授の
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●21世紀政治家の大根役者 オバマも安倍もアリバイ工作(1) 

先ず、今夜は、大所高所の水準の話からしよう。まあ、大所高所と言っても、限りなく地平線に近い高さからの話だ(笑)。ノーベル平和賞を嘘八百で入手したアメリカ合衆国大統領バラク・オバマの話だ。イラン核問題と、同じ思考経路から起きたことのようだ。三日間のキューバ訪問で、「二国が関係を構築する歴史的好機だ」と自画自賛している。日欧米のホワイトハウスべったりのメディアの論調も「歴史的快挙!」とべた褒めである。キューバ反政府団体の連中と歓談し、「オバマはキューバ国民に耳を傾ける」などと、ラウル・カストロ議長の面子を完全に潰し、やりたい放題を実行して顰蹙を買った。前議長カストロがオバマなんかと会いたくはない、と会談を拒否したが、ラウル・カストロ大統領も裏切られたと、ようやく気づいたようだ。

 ≪ 米国のオバマ大統領は、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長との共同記者会見の後、議長の肩を叩こうとしたが、議長はそれを許さなかった。
その代わりラウル・カストロ議長は、オバマ大統領の手を握って、それを振るしぐさに変えた。 オバマ大統領は、米国の国家元首としてほぼ90年ぶりに、公式訪問のためキューバを訪問した。米大統領の言葉によれば「この訪問は、両国間の冷戦終了のシンボルだ」。 ≫(スプートニク日本)


この部分の動画を見たが、ラウル・カストロ議長に笑顔はなく、終始硬い表情だった。前議長カストロから、「だから言ったろう、オバマってのは、調子の良い約束を口にする詐欺師だと」今回のオバマのキューバ訪問を国交正常化と勘違いしている向きも多いが、人的・経済的交流を徐々に拡大していきましょう、と云うお題目が並んでいるだけで、ラウル・カストロ議長の功績になる具体的利益はゼロだった。「米大統領、88年ぶりにキューバ訪問」の見出しづくりの為に、ラウルはピエロ役を振られただけのことと云うことだ。大統領選の絡みとか、ロシア、中国への牽制とか、様々な要因があるだろうが、一番は、オバマの実績づくりに花を添えようとした企みに過ぎない。

不確定な情報だが、オバマは、伊勢志摩サミットで訪日の際に、広島訪問も検討しているそうである。白々しいにも程があるが、トランプ候補が共和党大統領候補確定となったら、広島訪問もありそうだが、民主党クリントンが、何をしなくても優勢だと思えば、訪問はあり得ない。そう云う意味では、日本の人々は、精々国内政治、否、政治家醜聞批判を愉しんでいるようだが、それよりも百倍重要なトランプ候補の存在だ。その辺のことを追いかけてみよう。


≪ 米大統領の広島訪問「検討」 サミット来日時、政権に慎重論も
【ワシントン共同】ガテマラー米国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)は22日記者団に、オバマ米大統領が5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミッ ト)に合わせて広島を訪問する可能性に関して「ホワイトハウスが検討している。(結果を)推測するようなことはしない」と述べた。
 実現すれば「光栄なことだ」としながらも、訪問の時期や形式については「最終的に大統領が決めることだ」と述べるにとどまった。米国内に残る原爆投下正当化論を背景に政権内では慎重な見方が根強い。検討に向けた具体的な協議が進んでいるかどうかは明らかではない。 ≫(共同通信)


トランプ氏が、前述のスプートニク日本の動画を見たら、「オバマは売国奴だ!」と叫ぶに違いない。迎えに出なかったことでかんかんなのに、共同記者会見では、ゲリラ戦の猛者である、ラウルの敏捷な反応力で、肩を叩くような傲慢で馴れ馴れしいオバマの不遜な態度を許さなかった。もう少しで、オバマの腕を捩じ上げるようにさえ見えた(笑)。かれも、兄フィゲロやゲバラと行動を共にした戦士、オバマのヘナヘナなど一撃だったろうが、不機嫌面は習近平のモノマネまでしたのだから、もう、核のボタンに手がかかるのかもしれない。

≪ トランプ氏、キューバ訪問批判 オバマ氏の外交姿勢「素人」
【ワシントン共同】米大統領選の共和党候補指名を狙う実業家トランプ氏(69)は、オバマ大統領がキューバのラウル・カストロ国家評議会議長から軽視されているとし、オバマ氏の外交姿勢を「素人」だと批判した。米メディアが21日報じた。
 トランプ氏は20日、フロリダ州で演説し、オバマ氏がキューバに到着した際、空港にカストロ氏の姿がなかったことで米大統領が「間抜け」に見えた と指摘。昨年9月、ローマ法王がキューバを訪問した際はカストロ氏が空港で出迎えたとし「オバマ氏は『バイバイ』と言って、そのまま引き返してくるべきだった」と述べた。 ≫(共同通信)


日本にとって聞捨てならないトランプ氏発言は「日本の米軍基地なんか価値はない。どうして、100%日本が負担しないんだ」と宣っている。これは、大変ありがたいお話だ。我が国の右巻きも、左巻きも、共に自己都合的な解釈で、夢を見るに違いない(笑)。トランプ氏は「米国はとても強く豊かな国だったが、今は貧しい国だ。債務超過国だ」まともな視点も持ち合わせる。そうそう、少なくとも、世界に睨みを利かせる余力が残っているのなら、自国民の窮状を救うのが、大統領の職責だ。まあ、安保マフィアの連中も、自衛隊の軍備増強は喫緊の課題。核武装まで突っ走らないと、中国に占領されるぞ~~、と騒ぐに違いない。


 ≪ 在日米軍基地に利益なし トランプ氏が外交姿勢示す
【ワシントン共同】米大統領選の共和党候補指名を争う実業家トランプ氏(69)は21日、米国がアジア太平洋地域に深く関与するのは得策ではないと の考えを示した。日本や韓国に米軍基地を置いていることが米国にとって利益となるかどうかについて「個人的にはそうは思わない」と述べた。ワシントン・ポ スト紙が伝えた。
 トランプ氏は「米国はとても強く豊かな国だったが、今は貧しい国だ。債務超過国だ」とし、多額の費用をかけてアジア太平洋地域に米軍のプレゼンスを維持するのは割に合わないとの考えを示した。
 中国については、米国にとって経済的にも地政学的にもライバルだとの見方を示した。 ≫(共同通信)

明日は衆参W選を臭わしている、安倍官邸の本音に迫ってみよう。意外に、世間をその気にさせて、梯子を外す可能性も大いにある視点で見ていきたい。

マイナス金利
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●危険な日米韓首脳会談 中国軍の半島進出、難民は日本を目指す!

2016年03月23日 | 日記
スキャナーに生きがいはない (人類補完機構全短篇1)
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●危険な日米韓首脳会談 中国軍の半島進出、難民は日本を目指す!

以下は、時事通信出身者らしく、アメリカ贔屓で、トランプ、プーチン嫌いな名越健郎氏の新潮社フォーサイト掲載のブログである。【ハフポストの言論空間を作るブロガーより、新しい視点とリアルタイムの分析をお届けします】と紹介された“The Huffington Post”ブログからの転載だ。まるで、田崎史郎が書いたような内容なのには吃驚した。“The Huffington Post”が朝日新聞と提携運営しているようだが、アメリカ合衆国のリベラル系インターネット新聞である以上、親米なのは当然だが、ネット新聞の割には、新聞や雑誌紙面の転載が多く、新鮮味は殆どない。だから、名越健郎氏の新潮社フォーサイト掲載のブログも一面的視点が目立ち、既得権守旧なニオイがプンプンしている。ただ、話の都合上、取り上げるに過ぎない。


 ≪「トランプ・カード」に期待するプーチン大統領
筆者は3月初め、大統領選さ中のワシントンに1週間滞在したが、共和党トランプ候補と民主党サンダース候補というアウトサイダーの躍進で、ワシントン特有の外交論議は低調だった。 通常、この時期は有力候補の国務省・国防総省人事や外交戦略予測が話題になり、シンクタンクの専門家が政権入りに向けて猟官運動を始める。しかし、ある識者は「ワシントンの外交シンクタンクは開店休業状態だ。トランプ旋風にすっかり醒めている」と述べていた。専門家らの最大の不安は、トランプ氏が本選挙で勝利し、「核のボタン」を握る悪夢だ。

核戦力に無知
ワシントンでは、昨年12月15日の共和党候補の討論会で、トランプ氏が核兵器の無知をさらけ出すシーンが話題になっていた。「最高司令官として、核戦力3本柱のどれを重視するか」との質問に、トランプ氏は「核については、極めて厳格かつ慎重 な対応が必要だ。核はすべてのゲームを変えてしまう」などと慌てて答えた。司会者が「3本柱の優先順位はどれか」と改めて迫っても、「私にとって、核兵器は戦力であり、破壊的であり、それは極めて重要だ」などと支離滅裂だった。
共和党主流派のマルコ・ルビオ候補(編注:3月15日に大統領選からの撤退を表明)は同じ質問に、「米国の核戦力を構成する3要素であり、航空機、サイロ、潜水艦から発射する核ミサイルのことだ。3つとも重要であり、米国の抑止力を確保する」と優等生の回答をした。トランプ候補が戦略核3本柱を知らなかったのは明らかで、最高司令官の資格を疑わせた。
ある専門家は「トランプ候補には外交戦略も国防戦略もなく、周囲に外交専門家もいない。大統領になる資格はない」と突き放した。ニューズウィーク誌によれば、「どの候補が米外交のかじ取り役としてふさわしいか」との外交専門家を対象にした調査で、共和党で最も評価の高かったのはケーシック・オハイオ州知事、2位が撤退したジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事、3位がルビオ候補で、トランプ候補の支持率は1.66%だったという。民主党では、クリントン前国務長官が80%と圧倒した。

日本は「悪の枢軸」
在米日本大使館関係者は、「主要候補の陣営に接触しているが、トランプ陣営には全く手掛かりがない。どのような外交政策を取るのか皆目見当がつかない」と打ち明けた。 トランプ候補の外交発言では、日本、メキシコ、中国が槍玉に上がり、日本が「悪の枢軸」の一角を占める。中国は貿易摩擦だけだが、日本はこれに「安保ただ乗り」が加わるだけに、当選すれば、戦後最も反日的な大統領になりそうだ。
米国の専門家らは、「トランプ政権」の国務長官が誰になるか全く予想がつかないと言う。一部に、パウエル国務長官時代に国務省政策計画局長を務めたリチャー ド・ハース外交評議会理事長が国務長官候補との見方が出ている。しかし、ハース氏も1度トランプ候補に外交問題をブリーフしただけで、陣営に近いとはいえない。
共和党系で知日派の重鎮であるアーミテージ元国務副長官は日本経済新聞に対し、「もし私がトランプ氏とクリントン氏を選択できるとしたら、クリントン氏に投票する。多くの共和党員は少なくとも外交政策で、トランプ氏ではなく、クリントン氏に投票するだろう」と明言したが、何人かの共和党系識者も同意見だった。 トランプ候補は同盟意識が希薄で、冷戦期の膨大な防衛投資を酷評し、米軍の世界展開縮小や中東への関与軽減に言及した。従来の共和党路線と真っ向から対立し、ゼーリック前世界銀行総裁ら共和党有識者60人がネット上で、「トランプ氏の当選阻止に精力的に活動する」と表明した。移民排斥やイスラム教徒批判、女性蔑視の発言以上に、「不動産王」は最高司令官にふさわしくないということだろう。

 ロシアと蜜月
「核のボタン」を握るロシアのプーチン大統領は昨年12月、トランプ氏について、「傑出した才能のある人物だ」「彼はロシアとの関係深化を望むと言っており、歓迎する」と持ち上げた。プーチン大統領のコメントに、トランプ氏は「ロシア内外で高い評価を得ている人から褒められるのは光栄の至りだ」と応じた。
日本や中国を攻撃するトランプ候補が、選挙演説でロシアを批判したことはなく、「私なら、オバマ政権下ですっかり冷却化した米露関係を前進させることができる」「オバマ大統領はプーチン大統領が大嫌いなようだが、私は彼とうまくやっていける」と述べた。他の共和党候補がプーチン大統領を「悪党」「マフィア」呼ばわりする中で突出している。「ロシアもイスラム国(IS)の掃討を望んでおり、掃討作戦は彼らに任せておけばいい」と、ロシアのシリア駐留を容認する発言をしたこともある。
ロシアの報道によれば、トランプ氏 は2013年にモスクワで開かれた「ミス・ユニバース」世界大会を主催。その際、プーチン大統領に近い新興財閥と親しくなり、不動産取引も協議した。モスクワに「トランプタワー」を建設する計画もあるという。ロシアと利権に基づく癒着があるようだ。プーチン大統領とはニューヨークで1度会ったことがあるという。
プーチン大統領がトランプ候補を持ち上げるのは、「トランプ政権」なら米国が大混乱に陥るとの「期待感」も読み取れる。しかし、ロシアの評論家、ウラジーミル・フロロフ氏はモスクワ・タイムズ紙(2月4日)で、トランプ氏が11月の本選挙で勝つことはないとし、「ロシアはトランプ・ カードを失う」と書いた。

 月末に核サミット
すっかり冷え切った米露関係で最も不安なのは、核管理交渉が行われていないことだ。冷戦時代も米ソ関係は悪化したが、双方の戦力が均衡する中、軍備管理交渉が頻繁に行われ、信頼醸成につながった。しかし、当時のスタッフは退官し、この数年 軍備管理交渉は開かれていない。ソ連崩壊後、ロシア軍の通常戦力が弱体化し、戦力バランスの不均衡が目立つ。プーチン大統領はますます核戦力に依存し、核ミサイル近代化を進め、「核の恫喝」にも言及する。
この点では、ロシア専門家のアンドルー・クチン・ジョージタウン大学研究員も「ケリー国務長官とラブロフ外相は頻繁に会い、関係再構築を図っているが、米国防総省は対露融和に反対し、強硬な対応を主張する。ホワイトハウスも国防総省に近い。 オバマとプーチンは2009年の最初の出会いからうまく行かず、個人的な反目が強い。オバマ政権下ではリセットは考えられない」と述べ、両軍間の高レベル対話が途絶えていることを憂慮していた。
こうした中で、「戦略核3本柱」も知らない人物が最高司令官になるのは確かにリスクがある。 ワシントンでは、3月31日から2日間開かれる核安全保障サミットの準備が始まっている。世界53カ国首脳が集まって核物質の安全管理や核テロ対策を協議し、今回が4回目。2010年の第1回サミットでは、当時の鳩山由紀夫首相がオバマ大統領との正式会談を拒否され、その言動を米紙から「愚かで敗者」とやゆされるなど、民主党外交の稚拙さが話題になった。
今回、安倍晋三首相は日米韓3国首脳会談に臨むほか、G7サミット議長として存在感を高めそうだ。 しかし、ロシアは早々と会議のボイコットを決めており、核大国・ロシアの不参加は世界的な核管理体制に打撃だ。オバマ大統領の外交レガシー(遺産)作りには協力できないということだろうが、習近平中国国家主席も出席を決めており、ロシアの孤立が深まるなど裏目に出るかもしれない。 外交筋は「ウクライナの停戦が履行され、シリアも停戦が進みつつある。プーチン大統領が土壇場で出席する可能性もないとは言えない」と指摘した。その場合、オバマ大統領には嫌な展開となろう。存在感、発信力で優るプーチン大統領に主役の座を奪われることになるからだ。

*名越健郎 1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。 2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ 関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春 新書)など。
 ≫(“The Huffington Post”日本版:ブログ・名越健郎『2016年3月18日フォーサイトより転載』)


名越氏の米国エスタブリッシュメントへの畏敬の念は理解するとしても、田崎並みに、安倍首相ヨイショが目立ち過ぎ、アホじゃなかろうかと、ルーピーの上前跳ねるようなコラムを書いている。トランプの悪口やプーチンの悪口は、全米の既得権益者全員が抱えている共通の利益誘導言説なので、読むに値しないが、以下の点は安倍ヨイショであると同時に、日米韓首脳会談が、捨て身で構えている北朝鮮体制にどのように映るかは、展望ゼロで面白おかしく書いている。

≪ワシントンでは、3月31日から2日間開かれる核安全保障サミットの準備が始まっている。世界53カ国首脳が集まって核物質の安全管理や核テロ対策を協議し、今回が4回目。2010年の第1回サミットでは、当時の鳩山由紀夫首相がオバマ大統領との正式会談を拒否され、その言動を米紙から「愚かで敗者」とやゆされるなど、民主党外交の稚拙さが話題になった。今回、安倍晋三首相は日米韓3国首脳会談に臨むほか、G7サミット議長として存在感を高めそうだ。 しかし、ロシアは早々と会議のボイコットを決めており、核大国・ロシアの不参加は世界的な核管理体制に打撃だ。オバマ大統領の外交レガシー(遺産)作りには 協力できないということだろうが、習近平中国国家主席も出席を決めており、ロシアの孤立が深まるなど裏目に出るかもしれない。≫

 
スプートニク日本に、この日米韓の首脳会議や米韓大規模演習に関して、面白い洞察をしているコラムを見つけた。なるほど、こう云うことになって、北朝鮮金政権が崩壊した時、北朝鮮の人々が難民化することは想像に難くない。ただ、個人的には、中国と韓国に行くだろうくらいの認識だったが、かなり、異なる面もありそうだ。EU難民問題が、リアリティーを持つとは思いもしなかったが、あり得ることだ。


 ≪ 中国が北朝鮮難民の大量流入から日本を解放する
朝鮮半島の緊張が急激に高まっている。米国と韓国は、合同軍事演習を行い、北朝鮮の重要施設に対する攻撃の仕上げをしている。ほとんど毎日のように弾道ミサイルの発射実験がなされ、核弾頭改良に向けた作業が続けられている。これは、朝鮮半島での戦争が、現実のものになるかもしれない前触れなのだろうか?
スプートニク日本のタチヤナ・フロニ記者は、ロシア科学アカデミー極東研究所日本調査センターのワレーリイ・キスタノフ・センター長に、意見を聞いた。
センター長は「おそらく中国はそうした事を許さないだろう。中国はロシアと共に、朝鮮民主主義人民共和国に対する新たな制裁に参加している」と指摘し、次のように続けた-

「米国、日本そして韓国は、もちろん、北朝鮮の現体制が舞台から去り、崩壊する事を強く欲しているだろう。南北朝鮮統一が起こるようにだ。当然、それは南、つまり韓国主導の、韓国の条件での統一だ。一方米国は、こうしたすべての事を高みから観察し、プロセスをコントロールしようとするだろう。しかしそうした事は、中国にとって全く受け入れられない。なぜなら米国は、どんな状況になろうと、自分達の部隊を朝鮮半島から撤退させるつもりはないからだ。中国にとってみれば、北朝鮮の体制が倒れれば、北朝鮮と中国を分けるヤールー川の対岸に、突然に米軍部隊が現れることになってしまう。それゆえ、もし事態が、武力を用いての北朝鮮の体制打倒の試みまで行ってしまった場合、中国の介入は避けられないと思う。
米国の巨大な軍部隊が自分達のすぐ隣に出現するのを阻止するためなら、中国は、自国の部隊をそこに導入する事をためらわないだろう。 一方、もし中国軍が、北朝鮮領内に導入されたなら、彼らは、日本海沿岸に到達する危険性がある。領土問題が今も日中関係を尖鋭化させている事を考えれば、日本海の対岸に中国軍が出現するというシナリオを、日本政府は、恐らく喜ばないだろう。」

それ以外に、もし北朝鮮の体制が崩壊した場合、現在欧州で起きているような状況が生じる可能性がある。何十万人もの、あるいは百万単位の難民が、押し寄せるかもしれない。キスタノフ・センター長は

「その場合、最も無防備な状態に置かれるのは、恐らく日本だ」と見ている-

「北朝鮮の体制が倒れた場合、この国の何百万もの人々が、国境を越えて中国や韓国、そしてロシアに逃げるだろう。しかし彼らにとって、最も魅力的な国になるのは、日本だと思われる。現在中東や北アフリカの何十万もの難民が、ドイツを目指すのと同じだ。 忘れてはならないのは、日本にはすでに、在外朝鮮人の非常に大きな社会が存在している、という事だ。つまり日本でも、今日ドイツで起きているのと同 じことが起きるだろうという事だ。その際、日本と朝鮮半島の間にある対馬海峡の島々は、コントロール下、管理下に置かれていない難民達が今も流れ着いているエーゲ海のレスボス島(ギリシャ)や地中海のラムペドゥーザ島(イタリア)のような役割を演じるだろう。日本にとってはもちろん、そんなことは必要ない。日本の戦略専門家達は、そうしたシナリオも考慮に入れ、憂慮もしているのだろうが、それについて発言する人はいない。」

北朝鮮の核ミサイル計画問題には、世界中で取り組み、これを解決する必要がある。米国とその同盟国は、新たな制裁は、北朝鮮当局が譲歩しなくてはな らないほど強力なものだと固く確信しているようだ。しかし北朝鮮当局は、中東で倒された体制の運命が自分達のところで繰り返されるのではないかと、ますます恐れている。それゆえ北朝鮮の体制を保証してはじめて、彼らを6カ国協議のテーブルに戻す事ができるだろう。もし北朝鮮を、追いつめるような事をすれば、極東で百万規模の難民危機が起きるというシナリオは、現実のものになってしまう可能性がある。
 ≫(スプートニク日本:オピニオン タチヤナ・フロニ)

≪日本の戦略専門家達は、そうしたシナリオも考慮に入れ、憂慮もしているのだろうが、それについて発言する人はいない≫と日本の防衛専門家は研究しているだろうが発言がない、となっているが、ちゃんと考えているかどうか怪しい。まあ、難民問題も厄介だろうが、それよりも、ベトナム、アフガン、イラク戦争のように、半端に米軍が関与し逃げ出す可能性があることだ。韓国軍は中国軍に呑み込まれるだろうから、釜山や竹島に中国の国旗がたなびく方がかなり問題だろう。前出の名越氏のような米国依存体質には、後者のコラムなど糞喰らえだろうが、本当に困るのは、後者のコラムの内容だ(笑)。

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●TPP頓挫確実 日本人は「ゆで蛙」脱却のチャンスだが?

2016年03月22日 | 日記
日本逆植民地計画
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●TPP頓挫確実 日本人は「ゆで蛙」脱却のチャンスだが? 

「アメリカがクシャミをすると、日本は風邪を引く」こんな揶揄的言葉に真実味があったのは、だいぶ昔の話だとばかり思っていたが、小沢・鳩山内閣はアメリカ主導と霞が関の小細工に脆くも崩れ、官僚支配政権となった民主党は、国民の選択を裏切った。鳩山の後から出てきた民主党の菅や野田内閣は、霞が関官僚の操り人形となり、国民に恥を晒し、民主党と云う政党の力を削ぐばかりか、遂には今月27日に消滅すると云うのだから、お笑いだ。ところが、民主党を消滅にまで至らせた、菅直人・野田佳彦という二人のクズがのうのうと党内で生きているのだから、事実は小説よりも奇なりで、国民から大きな支持を得ようと云うのは、笑止な沙汰だ。

性悪女が、同じ街だが、お店が違うと云うことで、“民江”から“進子”と名前を変え、平気で店に出ているようなものだから、福田和子も吃驚だろう。そうは云うものの、多少の見込みはある。無論、その見込みに、民主党本体の実力が反映されていると云うことではない。衆院京都3区では、自民党の擁立見送りになり、民主vs共産の選挙構図さえ見えていたのに、共産が隠忍自重(自主投票)したことで救われると云う、あいも変わらず、腐った儘だ。見込みを齎したのは、共産・生活・社民+“怒れる国民”の協力が見込めるからでしかない。問題は、前原や細野や野田が含まれる“進子(民進党)”を有権者が見過ごしてくれるかどうかと云う問題だろう。

個人的には、「増税する前に、シロアリ退治だ」と散々っぱら言いつのっておきながら、消費増税解散で、みすみす政権を自民党に売ってしまった野田佳彦への有権者の怒りが消えているかどうか、判定が難しい。野田佳彦は、民進党の躍進を望むのであれば、自ら「無所属になる」と宣言するくらいの度量が必要だが、財務省の永遠の諜報員として、活躍を期待されているのかもしれない。永遠の衆議院議席確保と引き換えに?それはさて置き、菅直人が唐突に持ちだしたTPPも、奇妙な形で我が国に出現した。それもこれも、アメリカの差配乃至は外務・経産官僚の忖度政治だろうが、立役者であった、甘利前大臣のUR疑惑がケチのツケ初めかどうか別にして、アメリカ大統領選の成り行きでも「TPP」は成立不能の様相を呈している。以下は、その件に関する硬派ジャーナリスト山田厚史氏のTPP関連コラムだ。二本連続で読んでいただきたい。

 ≪ 米大統領選で自壊し始めた「強者のためのTPP」
環太平洋経済連携協定(TPP)が、各国の批准を前に、失速し始めた。「21世紀の経済ルールを描く」と主導してきたアメリカで鮮明になっている。オバマ大統領は残る任期で批准を目指すというが、肝心のTPP実施法案の成立は絶望視されている。
大統領候補の指名レースで、「TPP賛成」だった共和党のルビオ候補が地元フロリダで負け、撤退を表明。TPPを担ぐ候補は1人もいなくなった。 トップを走るトランプ候補は「完全に破滅的な合意だ」と歯牙にもかけない。民主党ではオバマ政権でヒラリー・クリントン候補が「反対」を表明。追撃するサンダース候補はTPP批判の急先鋒だ。
 TPPは2月4日に各国が署名した。この日を起点に、2年以内に加盟国が国内手続きを終えれば、その60日後から発効する。手続きが終わらない国があっても、6ヵ国以上が手続きを終え、それらの国のGDPを足し合わせ全体の85%を超えれば発効となる。
 ということは経済規模が大きい米国と日本の手続き完了が不可欠なのだ。どちらかが批准にしくじればTPPは成立しない。

■米国のグローバル資本に ハイジャックされたTPP
「TPPはアメリカの国益につながる戦略的経済連携」と日本では理解されてきた。シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリという「4つの小国」が自国にない産業を補い合う経済連携だったTPPにアメリカが目をつけ、「アジア太平洋市場」を自分のルールで作ろうとしたのがTPPだ。 「ここでTPPは変質した。投資と金融サービスが新たに盛り込まれ、グローバル資本によるルール作りが前面に出るようになった」
 協定文書の分析をしている和田聖仁弁護士は指摘する。
 小国連合だったTPPはアメリカにハイジャックされ、針路が変わった。操縦桿を握るのはアメリカ発のグローバル資本である。 「米国でTPP交渉を担当するのは通商代表部(USTR)。ここは商務弁護士の巣窟でアメリカに都合のいいルール作って世界で覇権を目指す戦略的部門です」 日本の通商関係者はいう。 TPP交渉は分野が広く、専門性が要求される。USTRの職員だけではカバーできない。企業や業界のロビーストや弁護士が加わって協定の骨格作りが進められた、という。
 協定書は英文で5500ページある。運用を左右する付属文書を合わせるとA4版用紙で数10センチになる膨大な協定だ。
 交渉は戦争と同じで、総力戦になった。軍隊に当たるのが交渉スタッフだ。アメリカには百戦錬磨の弁護士がうなるほどいる。しかも英語による交渉。「戦闘能力」で小国は歯が立たない。
 2国間協議が並行して行われ、TPPは安全保障や援助も含めた総合的外交力が交渉に反映する。アメリカが決めた骨格に各国の事情をどこまで反映するかの交渉となった。

■大統領選で火がついた  強者支配の象徴・TPPへの反発
 アメリカの都合が優先されるTPPなのに、なぜアメリカで評判が悪いのか。ここにTPPの本質が滲み出ている。 「アメリカ」と一言で語られるところに盲点がある。アメリカの誰が利益を得るか。アメリカ内部でも利害は錯綜している。
 オバマ政権で国務長官を務め「賛成」のはずだったヒラリーが「反対」に回った最大の理由は、労働組合がTPPに反対しているからだ。自由貿易は外 国製品の流入を招き労働者から職場を奪う。1980年代に日米摩擦が吹き荒れたころと同じ論理が持ち出された。当時「雇用の敵」は日本製品だった。今は中 国、韓国などアジアからの輸入が心配されている。
 もう一つ異なる変化が起きている。米国資本のグローバル化である。
 自動車ビッグ3の筆頭ゼネラルモーターズ(GM)が存亡の危機にさらされた80年代は、米国の企業と労働者には日本メーカーという「共通の敵」がいた。今は違う。グローバル化した資本は、本国で勝てない、と見れば外国に投資して生産を行う。 資本は逃げることができる。労働者は取り残され、雇用を失う。グローバル化は、資本には都合がいいが、ローカルで生きるしかない労働者には迷惑であ る。民主党は労組を支持基盤にしている。不満を吸収し支持を広げたのがサンダースだ。「TPPは1%の強者が世界を支配する仕組み作りだ」と訴えた。
 アメリカは訴訟社会だ。高給を食むローファーム(企業弁護士事務所)の弁護士はアメリカのエスタブリッシュメントの象徴でもある。彼らはクライアント企業の要請を受け「TPPのルール作り」の素案を書く。
 アメリカ政府はグローバル資本の利益を推し進める舞台装置になっている。
 商売はうまくても民間企業のできることには限界がある。グーグルやアマゾンが強くても自力で他国の法律や制度を変えることはできない。外交や政府の出番だ。米国の政治力がなければ他国の市場をこじ開けることはできない。
 アメリカの参加で、投資と金融サービスがTPPの主題となった。背景には、成長市場で儲けを狙うグローバル資本がいる。この構造は、本連載バックナンバー「TPP幻想の崩壊が始まった。交渉停滞、困るのは誰か?」などで触れているので端折るが、グローバル資本が先導するTPPという構造は、混戦模様の大統領選挙で炙り出されたのである。
 政界で大きな顔をしている政治家が、社会の一握りでしかない強者と結びついていることに有権者は反発し、TPP論議に火がついた。

 ■政治をカネで買える国・アメリカで  有権者の反乱が起きている
 米国はカネで政策が買える国である。政治献金は政治家に直接手渡せないが、日本の政治資金団体のような組織を介せば、「無制限」に政治家は献金を 受けることができる。「スーパーPAC」と呼ばれる政治献金の自由化が2010年から始まった。この制度で、業界団体は堂々と政治家の買収を行うように なった。オバマ大統領が菅直人首相(当時)にTPP参加を求めたのは2010年だった。
 米国議会では民主党も共和党も評決に党議拘束はない。議員が自分の判断で賛否を決める。そこで暗躍するのがロビイスト。選挙にはカネがかかるのは いずこも同じ。スーパーPACを媒介して「政策とカネのバーター」が行われる。銃乱射が社会問題になっても、銃規制ができないことが物語るように「政治とカネ」は米国民主主義の恥部となっている。 大統領選挙の裏テーマは「金持ちに支配される政治」への反乱だ。
 共和党のトランプ氏もサンダース氏も企業献金を受けていない。これまでの大統領選挙では、産業界やユダヤ人団体など強者からの支援なしに出馬できなかった。資産家であるトランプ氏、市民から小口の献金を集めるサンダース候補の登場が、タブーを破る論戦を生んだ。
 製薬会社が強者の象徴として矢面に立っている。「国民は満足な医療を受けられないのに、製薬会社は高価な薬品を売りつけ大儲けしている」と製薬会 社はやり玉に挙がった。ファイザーを始めとする米国の製薬業界は豊富な資金力を使い、TPPを動かす有力ロビー団体だ。交渉の最終局面でも知的所有権問題 で、新薬特許の有効期限を長期化するよう圧力をかけ続けた。
 今やTPPは「既存政治の象徴」になった。共和党で本命視されたルビオ候補は「TPP賛成」で票を減らしている。民主党はもともとTPPに懐疑的だったが、共和党は賛成だった。ところが選挙戦で評判の悪いTPPを前面に掲げることができなくなった。
 オバマ大統領は、TPP実施法案で共和党に協力を求めたが、上院の実力者・マコーネル共和党院内総務は、大統領選挙前に法案を議会に出すことに反対した。
 態度を決めかねていた末に「反対」を表明したヒラリー候補は苦しい。「無理して反対と言っているだけだ」とサンダース候補に攻められ「反対」を強調するようになった。
 米国では政治家は発言への責任を問われる。当選して大統領になっても簡単に手のひらを返すことはできないだろう。足元の民主党が「TPP反対」を鮮明にしている。
 国際社会で力が衰えたアメリカは、国内では政治家の在り方が問われ始めた。「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれていた政権とグローバル資本の特殊な関係に有権者が疑問を抱き始めた。「ウォール街を占拠しよう」という運動はその一端だろう。
 既存の政治が自分たちの方を向いていないと気づき始めた民衆が、TPPの胡散臭さにも気づいたのである。

 ■TPPは「成長戦略の要」とする日本  何を得て何を失ったのかの検証が重要だ
 日本はどうか。政府は4月1日、TPP関連法案を閣議で決定した。4月中に国会で審議し、法案を通す構えだ。米国で「反市民的」と見られ始めたTPPが日本では、「成長戦略の要」として吹聴されている。  秘密交渉ですべての資料が非公開とされ、協定全文が「公表」されたものの膨大かつ専門的で読めるものではない。議員や専門家が調べても、細部は分 かっても全貌は掴みづらい。政府は都合よい試算を示すだけで、全体像を分かりやすく国民に示す気はない。国民や国会の無理解をいいことに形式的な審議で 国会を通してしまおう、という魂胆だ。
 メディアの動きも鈍い。情報や解説を役所に依存している。TPPで得をするのは誰で、損をするのは誰か。農業の問題はいろいろ議論されたが、農業はTPPの中心テーマではない。
 誰が得をするのか、を探るなら、TPPを推進したのは誰かを見れば分かることだ。
 米国の「TPP交渉推進企業連合」に参加するグローバル企業が旗頭である。これらの企業が何を求め、どれだけ実現されたのか。その結果、日本でどんな変化が起こるのか。将来に向けていかなる布石が打たれたか。
 日本に限って言えば、米国の年次改革要望書に沿った市場開放要求がTPPの骨格になっている。ではその見返りに日本は何を取ったのか。防戦を強い られ、大幅に譲歩した農業分野の陰で、日本は何を失ったのか。その検証が必要だ。米国と同じように、日本のグローバル企業は途上国で活動の自由を広げただろう。しかしアメリカ市場では乗用車の関税撤廃が30年後になったように、抑え込まれた分野は少なくない。
 政府がやりたがらないなら、国会とメディアの出番だが、一部を除いて無気力さは目を覆うばかりだ。このことは改めて書く。
 アメリカでは、強者に丸め込まれる政治に有権権者の怒りが爆発した。TPPまで問題にされた。「21世紀の経済ルール」というもっともらしい表書きの裏に「強者による市場支配」が潜んでいることに市民が気づき始めた。日本はまだそこに届いていない。
 ≫(ダイアモンドONLINE:山田厚史の「世界かわら版」)


≪ TPP幻想の崩壊が始まった 交渉停滞、困るのは誰か?
シンガポールで行われていたTPP交渉閣僚会議が、次回会合の日程さえ決められないまま閉会した。昨年末に「大筋合意」するはずだった交渉は、いよ いよ漂流しそうな気配である。新聞は、「長引けば経済政策に影」(朝日新聞)などと書いている。「交渉の停滞=困ったこと」という捉え方だ。
 このマインドセットが、誤っている。TPPは農業交渉ではない。その他の分野で、何が決まったのか。どの国が、誰のために、どんな主張をしている のか。説明も報道もない。中身さえ分からない協定は疑ってかかるのがメディアの仕事である。交渉停滞は大いに結構。TPPとは何か、誰が得し、損するのは誰か。じっくり考えよう。

■熱心な記者ほど「同調思考」にはまる
 私も記者クラブで仕事をしていたから、分かる。経験が浅く、熱心な記者ほど、「同調思考」にはまる。TPPでいえば、取材記者の頭の中は、交渉担 当者や、後ろから指示を出す官僚などと波長が重なってくる。記者と官僚(あるいは政治家)とは対等ではない。権力者は情報を持っている。記者は教えてもらわなければ仕事にならない。TPPは「秘密交渉」(たいした秘密ではないが)なので、官僚は「守秘義務」を盾に、口を噤(つぐ)む。「そこを何とか」とにじり寄り、「迷惑かけないから」と相手の歓心を買ってちょっぴり話をしてもらう。当然、権力側に都合いい情報しか出てこない。
 秘密交渉なのに、交渉24分野の進展状況や、合意の一部が報道されている。政府に都合いい情報を並べるとTPPとはこんな姿です、ということだ。
 メディアは、中身が分からないから、交渉のスケジュールや、自民党内の関心事項、大臣の談話などでお茶を濁す。一方で声の大きい団体の反対論を紹介する。その結果、TPPはあたかも関税交渉で、農産品以外は大した問題ではないような刷り込みを世間に与えてきた。 「国際的な貿易のルール作りは大事なことだ。しかし、農業団体がいうこともよく分かる。上手く調整できないものか」とか「日本は貿易立国だから自 由貿易促進は国益だ。農家は大変かもしれないが、農業も国際競争に曝されることは覚悟しなければ」などという世論が形成されつつある。
 メディアの論調もこの域を出ていない。 だが「TPPが築こうとする国際的な貿易のルール作り」とはどんなものか。そのルールが出来ると、どんないいことがあるのか。
 交渉内容の全体像は明らかにされていないが、公表されている範囲で考えれば
①関税を限りなくゼロにする
②知的財産権を持つ者に高額の特許料や著作権を認める
③国有企業の優遇は認めない
④政府や自治体の事業を外国企業に無条件で解放する
⑤外資企業が不利になる制度は廃止する
⑥国内の法制度をTPP基準に合わせる
⑦不当な扱いを受けた外国企業は政府を訴えることができる
 こんなところだろう。一言でいえば、地球規模の規制緩和だ。強い企業が思い切りビジネスできる環境を作ろう、という試みだ。
 企業は競争によって強くなる。劣るものは市場から退場する。その新陳代謝で、世界は成長する、という思想が背景にある。一理ある考えだが、力が拮抗する者の競争は切磋琢磨につながるが、大きな力の差があると、弱者は根こそぎ奪われる。

 ■米国の狙いはアジアでの経済覇権  
TPPはもともと、持ち味が違う4ヵ国、シンガポール(運輸、化学)、ブルネイ(資源)、ニュージーランド(農業)、チリ(鉱物)の集まりだった。そこに米国が加わりアジア太平洋の経済圏を目指したところから変質した。  米国という強い経済が、アジアで経済覇権を握る足がかりとなった。
 みすみす米国企業が勝つTPPに、なぜアジアや中南米の途上国が加わるのか。
 米国の強みである「総合的な外交力」の成果である。日本だって断われなかった。米国には強大な軍事力があり、世界の保安官としての役割をになって いる。国連、IMF、世銀など国際機関を牛耳り、軍隊と金融を握り、豊穣な国内市場をかかえている。米国を敵に回すと国内政局での厄介なことになる。思い 出して見たらいい。日本で最初にTPPに同調したのは民主党の菅直人首相だ。不安定な政権を維持するために米国との摩擦を避けた。 ベトナムやマレーシア、アルゼンチンなどは、対中国との関係や軍事・資金で世話になり、米国の意向を無視できない、という事情がある。
 G2時代と言われるように、米国は中国の巨大化を意識している。中国には13億人がいる。遠からず経済規模で中国に抜かれる。アジア太平洋に経済圏を広げ、ここで作ったルールを国際標準にすることで 、やがて中国を米国のルールに巻き込み、米国企業が自由に羽ばたける市場にする。
 日本のTPP担当者は言う。
「米国のTPP戦略は明白です。中国が強くならないうちに米国流の経済ルールを作ること。勝敗はルールで決まるから」
 日本政府の立場を一言でいえば、 「日本には強い産業があるから、世界規模の規制緩和は賛成。だが、農産物市場を開放すると地域経済に激震が走る。政治的にも都合が悪い。自動車や保険で米国の要求を飲み、農業は形だけの関税撤廃でなんとかまとめよう」 というものだ。
 交渉を担当する経産省と財界は、その線で合意している。だから、米国が自動車関税を20年継続、と無茶を言っても飲んだ。アジアで儲ければいい、と思っている。
 このほどホンダがメキシコで新工場を稼働させた。日本から米国に輸出すれば2.5%の関税がかかるがメキシコからならゼロ。グローバル企業は、対応できる。日本の産業界大手は基本的にアメリカと一緒だ。

 ■「目立った成果」を早急に求めるオバマ政権
 米国は国をあげてTPPに賛成か、というとそんなことはない。米国は強い産業ばかりではないからだ。日米交渉で明らかなように自動車業界は関税撤廃に反対している。オバマ政権の足元で、議会の民主党議員が反対している。 「TPPは弱者切り捨てだ」という声が米国でも強まっている。オバマは、年頭教書で「格差との戦い」を強調した。ウォール街が占拠されたように米国では「1%の強者が99%を支配することの不当」が叫ばれている。 ホワイトハウスに働きかけているのは、多国籍企業で構成するTPP推進企業連合である。薬品の特許期間を長くしろと主張をするファイザー、コン ピュータソフトの著作権を主張するマイクロソフト、日本に攻勢をかけている米国保険会社協会、金融ビジネスの拡大を目指すシティバンクなど、そうそうたる 企業が名を連ねている。米国の政党は党議拘束がないので、政治資金が豊富なビッグビジネスの攻勢に弱い。グローバル企業に雇われたロビーストがTPP推進 をオバマ政権に振り付けたのだろう。その一方で「反グルーバリズム」の潮流も増している。
 資金力ではTPP推進派が有利でも、格差社会の敗者は頭数で上回る。11月には議会の中間選挙が行われる。上院議員の3分の1、下院議員は全員が改選される選挙でTPPが争点になれば、一波乱あるだろう。
 それを見越してオバマ政権は、「目立った成果」を早急に求めている。その矛先の一つが日本に向かっているのだ。オバマ政権は、少なくとも牛肉・豚肉の関税を限りなくゼロに引き下げたい。小麦やコメも同様である。目に見える成果が必要なのだ。

 ■悲劇か、それともチャンスか
 安倍政権は甘かった。昨年秋にバイデン副大統領が来て、「関税ゼロ」の要求は建前でなく、本音だと知った。
 日本は、重要5品目のコメ、ムギ、肉、乳製品、砂糖で関税表に載っている586品目の中で、あまり重要でない品目を選んで形だけの関税撤廃で凌ごうとしていた。役人流の判断なら「日本は聖域に踏み込んで身を切った」となり、農協の非難を浴びても、実質的には本丸は護(まも)った、という形を作りた かった。
 そんな芝居はオバマ政権には通じなかった。
 米側の強行姿勢を知って甘利明TPP担当相は「ワシントンに行かなければよかった」悔やんだ、というが、見方が甘かったというしかない。
 というより日米に互いを理解するパイプがなく、米国の事情がわからなかった。 底流には安倍晋三首相の登場がある。支持勢力の期待に沿って国粋的な言動を繰り返す。靖国参拝問題では「失望」と米政府が表明するほど険悪な状況の中で、TPP交渉が大詰めを迎えてしまった。これを悲劇と見るか、チャンスとみるかは、立場によって違う。
 私は、国際的な通商ルールを創ることは大事なことと思う。ただ、どんなルールを作るかが問題なのだ。1%の強者を喜ばすルールであってはならない。地域の文化や特性を大事にする配慮も必要だ。大事なことは公開の原則に立ち、多くの立場の人が参加する民主的な話し合いだ。
 そんなことをしていたら決まらない、というかもしれないが、合意形成への努力が互いを知ることに繋がる。急ぐ必要はない。
 日本のグローバル企業はTPP推進だが、大企業の利益=国益という考えも再検討すべきだろう。21世紀になって企業利益が雇用や賃金に連動しなくなった。民主主義になっても、カネと情報と人脈を持つ強者が政府を動かし、自分たちに有利な政策を進めているのは現実である。
 官僚もグローバル企業の幹部も、それぞれ善良な人たちだが、所属する組織の都合や利益で動く。その限りでは正しい判断でも、全体の流れの中では誰かを痛めつけている。TPPはそうした個別の利益を積み上げた、地球規模の強者支配の道具になりかねない。
 TPPが秘密協議になっているのは、公開したら交渉が瓦解する、という事情があるからだ。人々が気付かないうちにサッサと決めてしまおう、というのが推進側の事情だ。立ち止まってもう一度、TPPとは 何か、考えよう。
≫(ダイアモンドONLINE:山田厚史の「世界かわら版」)


正直、TPPのとん挫は、日本社会全体には良い傾向だと云えるだろう。農業分野の問題などは、些末な話で、本質的狙いは「知財の独占」が主力のテーマだったろうから、医薬品関連だけでも、充分に救われたと言えるだろう。また、グローバリズム企業(資本)の貪欲に対するアンチテーゼが、本家の足元で大きなウネリになっていることは心強い。トランプが大統領になった場合は当然だが、クリントンが就任しても、国民への掌返しが容易ではないアメリカにおいては、とん挫の可能性の方が高いだろう。政権公約をコロコロ変えても、許される民主国家は日本くらいのもので、他の国なら、政変になる。またまた、世界の潮流やアメリカの潮流で、日本は救われることになるのかもしれない。

安倍政権は、TPP関連法案を閣議で決定した。4月中に国会で審議し、法案を通すつもりのようだが、アメリカ大統領選を眺めていれば、戦意喪失になっても不思議ではないのが、現状なのだが、果たして、独り興奮状態で、TPP法案を通過させるかもしれない。安倍政権なら、闇雲にやってしまいそうだ。ただ、甘利問題に触れずにTPP法案通過は厳しいので、W選等々が頭にあれば、モラトリアムにする可能性も残される。ただ、政府は、TPPの経済効果の試算をまとめ、貿易や投資でGDPを約14兆円押し上げる効果があると嘘をつき、損害軽微と云う試算を出している。GDP600兆円の話もまだ生きているので引くに引けないだろう。また、アメリカに逆らう気もないので、阿呆のような立場に取り残されても、実行すると見るのが順当だ。

何とか、一度くらいは、「日本による、世界のための、情報発信」そう云う歴史を作ってみたいものだが、安倍政権レベルだと、文化の日本回帰を明治維新に持って行くか、戦前に持って行くか、国家神道に傾注するかがオチで、地域の特性を生かすことに尽力した藩と云う地域共同体に目を向ける知的レベルはないだろう。民進党でも怪しいし、現状の日本人の「空気」では、まだまだ、無理な領域なのだろう。日本を文化大国として、売り出す力は、日本と云う国にも、日本人にも潜在的に存在する。残念なことは、それを引き出す、何ものもないことだ。やはり、どこまで行っても「茹で蛙」の世界から抜け出せそうもない。

TPPで暮らしはどうなる? (岩波ブックレット)
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●トランプ大統領誕生とアメリカ孤立化の道 日本への影響力

2016年03月21日 | 日記
政府は必ず嘘をつく 増補版 (角川新書)
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●トランプ大統領誕生とアメリカ孤立化の道 日本への影響力

以下は、北海道大学大学院准教授・渡辺将人氏の、米大統領選において、共和党の本命と言われたルビオ候補の敗北の分析がテーマのコラムだ。書いてあることは、個々の現象的には正しい分析になっているのだろうが、どうも、木を見て森を見ていない専門家独特の誤謬に陥っているような印象を受けた。知識的に詳細な情報を持つゆえの罠のようなものだが、筆者はもっと直感的に、理解する方が正しい分析に接近出来るのではないと考えている。

同氏も“次回以降は現実味を増したトランプ指名をめぐる問題について考察する。”と述べているので、それを読む必要があるが、ルビオ候補に関するコラムは、時間稼ぎ的な印象が強い。特別に非難することではないが、なんともピント外れなものになっているのは残念だ。事情通が「空気」を読まずに、情報や知識をひけらかすと、こう云うコラムになりがちである。いずれにしても、トランプが共和党大統領候補に可能性は限りなく100%に接近中である。であるならば、トランプがアメリカの大統領になった時は、世界はどうなるのだろう?と想像する方が愉しい。

筆者の個人的感覚だが、民主党ヒラリーと共和党トランプのガチンコ勝負になったら、概ねの常識的見識を裏切り、トランプがアメリカ大統領になる可能性の方が高いと考えているからだ。トランプが米大統領に就任した場合、世界全体に対してみると、ひと言で、アメリカの世界警察隊意識が減少すると云うことだろう。無論、その結果、様々な問題を惹起するだろう。あらゆる国や勢力の自己主張の高まり(エゴ)の乱立で、収拾のつかない地域が出てくる事も想起できる。しかし、その変事を網羅した話は、コラムのレベルを超えるし、筆者の能力をも超えるので、敢えて、日本と云う立ち位置でだけ推論してみようと思う。

日本に関してだけでも、トランプ氏がアメリカ合衆国第45代大統領に就任した場合の、日本への影響はどのようなものなのか、考えるだけでも、充分に頭の体操になる。そして、関係性の希薄化から、どのようなプラスマイナスな社会政治現象が生まれてくるのか、推理小説的で面白い。トランプやサンダース現象は、既に多くの世界の識者から指摘されている「資本主義の曲がり角」、「資本主義の自壊」として語られていた。そして、とどめが、ピケティやトッドによって総論的に語られている。単に、アメリカのエスタブリッシュ層に激震が走るだけではなく、アメリカ一国主義が永遠なものだと思考停止していた他の国々のエスタブリッシュ層にも多大な影響を及ぼすのは必定だ。

特に、日本のエスタブリッシュメントな人々には、米国依存を極端に信心して来たわけだから、激烈な危機を想起しているに違いない。TPP協定で、良いところ取りを企んでいた経済界の連中などは、戦々恐々なのは間違いがない。米軍基地ありきの、思考停止勢力にも、青天の霹靂が起きるかもしれない。ただ、日本会議や安倍晋三的思考の持ち主にとって、意外にも、追い風になる可能性もあるので、ことは複雑だ。シェール革命で中東の地位は遥か彼方の地政学的位置に落ち込んだ。サウジの石油なんかどうでも良いじゃないかとなる。

おそらく、現状のアメリカの対中、対ロ姿勢は後退せざるを得ない。何処まで、日本防衛に手助けすべきかも重要課題になる。そりゃそうだ、アメリカ合衆国の問題を是正するだけでも数十年掛かりそうなのに、日本防衛なんてのは、意味不明だ。中露は、一時であっても、アメリカの影響力の低下は大歓迎だ。駐留なき日米安保などと、言わないとも限らない。外務防衛の官僚はひっくり返るだろうが、可能性はゼロではなくなる。日本は、自国を守ることに、もっと熱心であるべき。安倍が泣いて歓ぶ事態もあり得る。

日本からの車や家電の輸出も大打撃を受けるだろう。TPPの逆さま、大幅な関税増が予測できる。まあ、トランプと云う人、実務主義者で、実体経済主義者なので、ワシントンの知恵をつまみ食いのように取り入れることもあり得るので、損得勘定は正確なのが救いだ。ただ、ウォール街のような金儲けは、酷く嫌っている。金融経済で最後の資本主義の抵抗に参加している連中にとっては針の筵になるだろう。日本の金融経済で飯を食っている連中も無傷ではいられない。円安政策などは目の敵になる。モノを作って売りたければ、米国にきて、米国人を雇い、部品も米国産を使え。それ以外は、100%関税掛けると(笑)。

世界各地域で起きる戦争も、好き勝手にやらせればいい。武器製造販売で儲けたければ、せっせと作り、せっせと売って儲ければ良い。ただ、儲けた利益は取り上げるからな、そう云うことになる。これじゃあ、日本は踏んだり蹴ったりな話だが、物事がストレートに見えてくるので、米国依存さえしていれば、と云う思考停止国家に喝が入る。自分で考えて生きてくれとい言われるのだから、厭でも考えなければならなくなる。その答えが、右に転ぶか、左に転ぶか判らないが、日本の大転換が訪れる。おそらく、黒船来襲や第二次世界大戦以上のショックが日本を襲う。

しかし、米国支配で二進も三進も行かなくなった、現在の日本の閉塞状況よりも、断然良い状況になると、筆者は考える。外交防衛のあり方も真剣に考えるだろう。対中外交が、外交の中心をなす可能性が強くなる。現在、日本は誰が、中国政府に太いパイプを持っているか、大変興味ある課題になるだろう。安倍政権や外務官僚に、その伝手はない。伝手がないから、対中外交を「仮想敵国外交」に、と表明したら、その政党は政権から滑り落ちる。本当の外交が試されるわけだし、日本が成人になる機会だと捉えるべきで、嘆く必要はない。日本会議、安倍勢力は「核武装だ」と言うだろうけど、それが支持されるかどうか、その辺が興味深い。

いずれにしても、米国の支配下、被支配の妙味。そういうモラトリアム国家から、一人前に生きていかなければならない、言い替えれば、独り立ち出来るチャンス到来なわけだから、国民が真剣にどれだけ考える器量があるか試される。おそらく、東日本大震災や原発事故対応程度のお茶濁しで切り抜ける積りであれば、日本は2020年オリンピックをもって、中国の属国になっているのかもしれない。だから、軍備を増強し「核武装」なのか、中国にも利益のある外交に一歩踏み出すか、国民の試案のしどころだ。


 ≪ 共和党主流派「期待の星」ルビオはなぜ敗れたか トランプ旋風の裏側で

■「反トランプ」連合はなぜ生まれないか
「ミニ・スーパーチューズデー」は、トランプがフロリダ州とオハイオ州という勝者総取りの大票田で勝利すれば、トランプ指名は決まったようなものだとされていた。 しかし、ルビオ候補が事前の予想通りフロリダ州で敗北して撤退したものの、オハイオ州現職知事のケーシックは地元での強さを見せて逃げ切った。
共和党内には党大会での逆転を狙う勢力も存在するが、他方で「トランプを受け入れて、トランプを操縦していこう」という打算的かつ戦略的な「受容派」も急速に増大し始めている。フロリダ州でのルビオの劣勢が決定的になったあたりから、その兆候があった。
主流派「期待の星」ルビオには、日本の外交筋も期待を寄せていた。ルビオ敗北の舞台裏に、トランプ旋風の意外な理由があった。
* * *
トランプ以外が代議員競争で首位を奪うことは困難な情勢の中、無理な「一本化」よりも、勝者総取りの大票田で、複数の非トランプ候補がそれぞれ強い州で勝利し、トランプ単独での過半数獲得を阻止するのが抵抗のシナリオだった。
しかし、ルビオが大票田フロリダ州で完敗し、このシナリオも現実性は薄くなった。
「反トランプ」が一本化できないのは、反トランプのフロントランナーが主流派ではなく、宗教右派系の「ティーパーティ保守」クルーズだったからだ。
日和見主義だが「フレキシブル」でもあるトランプ以上に、原理主義クルーズは危険視されており、上院でも「外れもの」だった。クルーズをエスタブリッシュメントが支持することは困難だった。
前回の論考「続発する「反トランプ」抗議デモ」でも述べた通りだが、ある連邦議会補佐官は「銃をこめかみに突きつけられ、トランプかクルーズか、どちらか1人を選べ! と究極の選択をさせられれば、トランプを選ぶ」とすら言う。
この認識は両党にまたがっている。
クルーズ支持者はルビオやケーシックに入れないし、ルビオやケーシックの支持者は「反トランプ」でクルーズを支持するのは自殺行為だと考えてきた。
そうこうしているうちにトランプがトントン拍子に勝利した。

 ■「トランプ旋風」4つの理由
2016年トランプ旋風の理由として、改めて4つの要因を確認しておきたい。
①トランプの第三候補化を懸念しての「党内への取り込み」策が、甘い判断に過ぎた(トランプが共和党に怒って飛び出さないように、初動ではトランプ批判を意図的に控えた)
②共和党の候補者が多く出馬し過ぎた(トランプだけ票田が他と重複していないので利益を得た)
③非トランプのフロントランナーが原理的クルーズだったこと(主流派は支持できない)
④ジェブとルビオという主流派内の身内争い(後述する)
これらの外部要件が揃っていなければ、どんなに経済格差が深刻化して、不法移民がメキシコから流れ込み、大衆の怒りが暴発していても、トランプがここまでスムーズに勝利できなかった。
第1に党幹部が公認指名に影響を与えられない予備選制度、第2に、第3候補が出れば相手側に漁父の利を与えるリスクが付きまとう二大政党制のジレン マが根底にある。
つまり「トランプ旋風」は制度的には、起こるべくして起こった現象で、諸条件さえ重なれば、これまでいつ起きてもおかしくなかった。
以前も「トランプ旋風が止まらない!? アメリカでいま何が起きているのか」で述べたように、ジョージ・ウォーレス、ロス・ペローなどの「旋風」過去例との違いは、共和党内部で勝者を目指したトランプの本格的な共和党乗っ取り策だ。
今後アメリカの政治学者の間では、アメリカ式デモクラシーの特質とされてきたこの開放的予備選制度とアメリカ特有の二大政党制の問題が深く議論されていくことになろう。
ここにきて民主党エスタブリッシュメントから「だから、特別代議員制度を共和党も導入したほうがいいのだ」との声まで聞こえる。
特別代議員とは、主として議員や知事など党幹部に与えられた権限なので、「ワシントンの意向」が草の根の民意をひっくり返すものだとして批判も根強 い。
だから、ヒラリーは「正統性」を高めるために、特別代議員の加算なしに、各州の民意による代議員だけでの圧勝を目指してきた。

■ブッシュ家の逆鱗に触れたルビオ
そもそもルビオに勝ち目はあったのか。
日米外交筋の間では、ヒラリー以外ではルビオ人気が突出していた。上院外交委員会所属で政策を知っており、日本に対して深い理解があった。
外務省も 以前からルビオに注目し日本に招き、2014年の安倍総理への表敬訪問でも、東アジアの安全保障について日本の立場を支持する意向を表明している。 外交の安定的な継続性という点では、共和党側ではルビオというのが共通認識だった(ただ、それだけに過度な「親日」期待から、日本のプレスからの質問や、東アジアについての質問に答えてくれないと取材現場ではイメージ上のギャップが増幅されたようだが)。
しかし、これは外交フロント、特に日本目線からのルビオ像(期待)であって、アメリカの国内政治の文脈での政治家ルビオは、深刻な脆弱さを抱えていた。
第1に、フロリダ州地盤でありながら、知事だったジェブ・ブッシュの組織の支援が得られなかったことだ。 両者の関係は、元々は悪くなかった。
1998年のルビオの初の公職選挙以来(ウエストマイアミ市)、ジェブは「保護者」として支援してきた。
ルビオもフロリダ州議会議長としてジェブの政策を支え、両者の関係は「ウィン・ウィン」に見えた。 2016年大統領選にジェブが出るなら、弟子のルビオは「待つ」のが筋という暗黙の了解が支援者筋にはあった。
しかし、ルビオには魔が差した。 「ブッシュ王朝」の継続に思いのほか、共和党有権者が不満を抱えていて、兄のジョージ・W・ブッシュ前大統領の不人気も根強かったからだ。
なるほど筆者も2015年夏にジェブの支援者の内輪の会合で、元知事本人と面会したことがあるが、カウボーイのイメージの兄とは真逆で、神経質でいい意味で繊細な人物で、それだけに草の根の人気が今ひとつなのも頷けた。
ルビオも同じように感じたかもしれない。「今出れば行けるかも」と。 しかし、これがブッシュ家の逆鱗に触れた。「弟子が師匠を追い落としたようなものだ」と関係者は言う。
ジェブの支援者との暗黙の約束を破って出馬しただけでなく、ジェブを上回る代議員を獲得。
ジェブは自分が知事を務めた州まで生き残れず撤退し、政治人生の晩節を汚された。それもこれも可愛がっていた弟子の裏切りによるものだ。
フロリダ州共和党幹部は、ルビオがアイオワで3位になった直後、「ルビオでの一本化」について質問した私に、匿名条件にこう断言した。 「ブッシュ家はルビオの野郎を許さない」 「ルビオ大統領誕生だけは許せない」と、ジェブと2回のブッシュ政権に特に忠誠心の高い層は息巻いていた。
ジェブが知事として張り巡らしたフロリダ 全土の組織は、ルビオのために活発には動かず(動くなとまでは命じていないだろうが)、ジェブは最後まで公にルビオを支持しなかった。
「トランプ阻止」のためですら支持できない深いわだかまり。これがルビオのフロリダ敗北の1番の理由である。トランプの高笑いが聞こえる。

 ■裏切られたフロリダ州の有権者
第2に、今年上院の再選年のルビオが、上院議席を放棄して、大統領選挙に出ることを宣言したことだ。 一般的には「背水の陣」として評価されそうな「決意」に見える。
しかし、それはフロリダ州外の「他人の目線」だ。フロリダ州の有権者は裏切られたと感じた。
日本と同じでアメリカも議会では、再選回数が権力への道だ。
委員長ポストは再選を重ねないと手に入れられない。
当然、地元への利益誘導も再選が前提だ。 同じスペックなら若い方を当選させるのは、フレッシュな才能云々の「建前」とは無関係で、寿命までの当選回数を冷酷に考えての判断だ。
あまり高齢の新人では、再選回数が期待できない。 だから、ルビオと同じ再選年のランド・ポールは、早期に大統領選を離脱して、上院選に戻り、ケンタッキー州の支持基盤に誠意を尽くした。
かくしてランドはまた、地元の支持層の協力も得た上で大統領選挙に出られる。
ルビオの若さに「永久再選」の利益をあてこんで応援したタニマチ筋は、突然「ぼくは、やっぱり大統領になります」と言いだして、議席を放棄する態度に激怒した。
それでも、育てた若手が大統領になるのであればと応援してきたが、フロリダ州共和党の顔であるジェブにまで逆らうのはどうかと「ルビオ離れ」の空気が渦巻いていた。
支援組織の心の結束がこれほど弱いキャンペーンは、筆者も見たことがなかった。
なぜルビオはジェブに譲って将来のチャンスまで待てなかったのか。
オバマを意識していたからだという周囲の声がある。たしかにオバマも連邦上院1期目で彗星の如く飛来して大統領になった。
しかし、今回まで負け知らずのルビオと違い、オバマは2000年に連邦下院で大敗している。
予備選で地元の黒人議員に負け、それから反省に反省を繰り返し、黒人同胞の心と掴む方法を身につけた。 「外交通」という日本での好印象とは裏腹に、上院でのルビオの立法成果は少ない。
実際、50個の州という「国」でできているアメリカでは、州知事が連邦議員の臨時任命権まで持つ「上司」であり、州知事のほうが小さな実績をワンマンで残しやすい。
「選挙区に説明しやすい実績が作れない上院をルビオはつまらない、知事は羨ましいと思っていた」と関係者は語る。 まだ上院に残る選択肢もあるが、将来的にはルビオは可能性があれば州知事、その他の道を考えるのかもしれない。
いずれにせよ、ブッシュ家への「詫び」が先かもしれない。

 ■「あいつはキューバ系だ」
第3に、ヒスパニック系という属性を活かしきれなかったことだ。 キューバ系は実はヒスパニック系の「主流」であるメキシコ系などと緊張関係にある。
「ルビオはヒスパニック系だから、支持しますよね?」とメキシコ系の有権者に聞けば、「あいつはキューバ系だ。俺たちと違うから」という答えがよくかえってくる。
カストロの圧政を逃れ「反共移民」になった初期のキューバ系は、中南米系の中で唯一共和党支持だった。
最近の若者は民主党支持も増えているが、ヒスパニック社会の中での「異端感」は消えていない。
また保守的な政策とヒスパニック系への親和性が矛盾する問題もある。
クルーズもキューバ系で、片言程度のスペイン語がしゃべれるが、公の場でほとんど話さないのは、バイリンガル教育を否定し、移民は英語を学ぶべきとの自らの主張と矛盾してしまうからだ。
ルビオもティーパーティの支援で当選したにもかかわらず、超党派の移民制度改革法案に参加したりして、ヒスパニック系の武器を活かす方向で穏健派に「転向」した前科がある。
保守派内に「あいつは保守の仮面を被った親不法移民派だ」という疑念を残した。 共和党候補なのにヒスパニック系という属性は、本選でかなりの武器になる。民主党はそれを恐れて「ルビオ相手だとヒラリーが危ない」と言っていた。
しかし、予備選ではそれが足かせになってしまった。
折しも、キューバとは民主党のオバマ大統領が国交を回復。88年ぶりに現職大統領として歴史的な訪問を実現するという時期であるだけに、ルビオとクルーズの共和党「キューバ系」という独自の記号は、かつての「反共」のアナクロニズムを漂わせるだけに終わってしまったのかもしれない。

 ■カリスマが欠けている
そして第4に、政治家としての臨機応変さだ。 フロリダ州での地上戦が絶望的になったルビオは、終盤戦ますますメディア戦略や支持者への雨あられのようなメール散布に依存したが、「ロボット・ルビオ」の悪印象がテレビ討論で刻印され、「空中戦」も総崩れだった。
筆者はニューハンプシャー州予備選直前、同州ハドソンでルビオの小さな集会に参加した。たまたま聴衆が貧血か何かで倒れる騒ぎが起きた。幸い救急隊が駆けつけて、病人はすぐに運び出された。
しかし、演説中だったルビオは立ち尽くしたままで、どうしたらいいのか分からないといった風だった。
米メディアのカメラは回り続けていた。米メディアは「事件」を悪意をもって報じなかった。武士の情けというより、トランプを利すネタだったからかもしれない。
しかし、「オバマやビル・クリントンなら、いやレーガンだったら、タウンホールミーティング中に目の前で人が倒れたらどうしただろうか」と現場では疑問の声がくすぶっていた。腕まくりをして手を貸さないまでも、集会の中止と人命優先を叫んだのではないか。
それは「ポピュリズム演出」かもしれない。しかし、アメリカ大統領は危機に即して、臨機応変に対応してほしいと有権者は願っている。
「人気取りの行為と思われようと、あのときのマルコには、マイクを握って何か言って欲しかったよ。悔しいよ」と支持者はこぼしていた。ルビオはその意味で、政治家にしておくには、真面目過ぎるのかもしれない。嘘があまりつけない人物なのだと思う。
「ルビオは未熟過ぎる」と批判していた共和党重鎮の評論家たちが、現場でルビオに会って「あいつ、いい奴だった」と評価を変える行為に何度も遭遇してきた。 しかし「会ったらいい人で、対外的にはカリスマが欠けている」のでは大統領としては難しい。
「会ったら気に食わない奴」でもいいから、対外的にカリスマを示せていれば問題はないのだが。 次回以降は現実味を増したトランプ指名をめぐる問題について考察する。

*渡辺将人(わたなべ まさひと) 1975年東京生まれ。北海道大学大学院准教授。シカゴ大学大学院国際関係論修士課程修了。早稲田大学大学院政治学研究科にて博士(政治学)取得。ジャニ ス・シャコウスキー米下院議員事務所、ヒラリー・クリントン上院選本部を経て、テレビ東京入社。「ワールドビジネスサテライト」、政治部記者として総理官 邸・外務省担当、野党キャップ。コロンビア大学、ジョージワシントン大学客員研究員を経て現職。『見えないアメリカ』(講談社現代新書)、『現代アメリカ選挙の変貌』(名古屋大学出版会)、『アメリカ西漸史』(東洋書林)など著書訳書多数。
 ≫(現代ビジネス:オトナの生活・賢者の知恵―渡辺将人)

誰がアメリカンドリームを奪ったのか?(上) 資本主義が生んだ格差大国
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●神の国を信じる人々 純粋日本人がいない、不都合なDNA研究

2016年03月20日 | 日記
宇宙からいかにヒトは生まれたか: 偶然と必然の138億年史 (新潮選書)
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DNAで語る 日本人起源論 (岩波現代全書)
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●神の国を信じる人々 純粋日本人がいない、不都合なDNA研究

筆者は、特別に神話を否定する積りはない。ただ、事実上、そのような神話は、どこまで行っても物語と云う範疇から抜け出せるものではないと認識している。だからと言って、それらの神話の価値が減ずるものでもない。日本昔ばなし同様に、愛すべきものであるが、信じなければならないものではない。ゆえに、日本人の起源に関しての興味は尽きない。未だ、道半ばだろうが、DNAの発見移行、人類学の分野は、飛躍的に科学的実証において、成果を見せている。以下の海部氏の研究も、その事例を示す著書である。

ミトコンドリアDNAを中心に書き進めた、篠田謙一氏の『日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造』も読んだが、大変面白い。Amazon書評の文面を引用すると
 ≪最近、DNAの分析技術が飛躍的に進歩し、現代人はもとより古人骨に残された遺伝子から日本人のルーツとなる人々が溯れるようになった。アフリカを出た人 類がどのような道をたどって東アジアに到達し、日本列島へ渡ったのか、分子遺伝学の立場からその足跡に迫る。また、縄文人が先住する日本に大陸から稲作技 術を持った弥生人が移り住んできたという日本人の二重構造論をDNA分析から検証。縄文から弥生への移行は平和的に行なわれたのか?渡来した集団の規模 は?さまざまな疑問に縄文・弥生人の遺伝子分析から答える意欲的な一書。≫と書かれている。

篠田/謙一 1955年静岡県生まれ。京都大学理学部卒業。博士(医学)。佐賀医科大学助教授を経て現在国立科学博物館人類第一研究室長。専門は分子人類学。日本や周 辺の諸国の古人骨DNA解析を進めて、日本人の起源を追求しているほか、スペインによる制服以前のアンデス先住民のDNA研究から、彼らの系統と社会構造 について研究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


『日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造』は、母親から子供に伝えられるミトコンドリアDNAのDループ部位と、父親から息子へ伝えられるY染色体上のDNAは変らないことが多い点に着目して、ヒトの分子人類学によって得られたデータを基礎に日本人の起源が語られている。皮膚の色などは、遺伝子的に見れば些末な問題に過ぎないようである。日本に関しては、女性が持つミトコンドリアDNAと男性が持つY染色体で分布に違いがある点を指摘している。

男性が持つY染色体の分析を行うと、女性が持つミトコンドリアDNAの分析と重なりあわないと云う現象だ。つまり、男性と女性では、子孫の残し方が異なっている事実を解明している。Y染色体の子孫の残し方が有力者のY染色体が多いと云う事実だ。中国北部や朝鮮半島におけるミトコンドリアDNA(女性)は共通性を持つのに、Y染色体においては、その差異が顕著である。つまり、征服者側のY染色体が生き残ってと云うことになる。逸話的に語られているが、チンギス・ハン由来のY染色体保有の現代人が1600万人いると云うのだから笑える。

それに比べると、日本のミトコンドリアDNAとY染色体の関係性には、差異が見られないことから、過大な征服者が出現しなかったことが推測される。また、縄文、弥生と云う歴史的移行期においても、ミトコンドリアDNAとY染色体の関係性は概ね維持されている。つまり、この時代から、日本は、征服者の横暴に晒されていなかった事も推測できる。現代の社会においては、皮肉にも、リッチで伊達な男が、妻以外に愛人などを持ち、数人を囲い込んでいる現象を想像した。挙句にワーキングプワーで草食?結婚できない中年男が増えるのは当然なのだなと、余計なことまで考えた。

篠田氏も海部氏も、国立科学博物館勤務であった流れから、年齢的に師弟関係にあったかとも思われる部分があるが、事実関係は確認していない。内外の社会・経済・時事などの情報ばかり追いかけていると、人間性が、知らず知らずに疑い深くなるのもだが、時には、こう云う情報に触れるのも、原点回帰であるとか、リフレッシュと云う点で、有効だろう。このように日本人に限らず、人類は悠久の歴史の中に存在するわけだから、現代人のご都合主義(些細な経済事情)で、放射能を敢えて生み出すと云うような行為は、人類への冒涜なのだよな?そんな風に思う一日だった。


 ≪ 新説「グレート・ジャーニー」
~ホモ・サピエンスはどうやって日本にたどり着いたのか?

『日本人はどこから来たのか?』著者インタビュー 


 


■マッピングでわかった爆発的な拡がり

――私たち人類の直接の祖先である「ホモ・サピエンス」はいったいどのようにして日本にやってきたのか。この点について、人類学者である海部さんが信頼の置けるデータをもとに自説を展開したのが本書です。

そもそも数十年前まで、ホモ・サピエンスは世界各地でそれぞれが独自に進化したと考えられていました。しかし近年では、彼らがアフリカで生まれ、そこから各地に移住していったという「アフリカ起源説」が定説となっています。
そこで当然疑問となるのは、彼らがどういうルートで世界に拡散したのか、そして、どのようにして日本列島に入ってきたのかということ。
これまで、ユーラシア大陸への拡散については、「海岸移住説」が主流でした。中東やインドなどの海岸を伝った「第一波」の移住があり、その後しばらく経ってから「第二波」でアジア各地へと人々が移り住んでいったというものです。
ですが、10年ほど前から、新たに出てきた様々な研究を参照しているうちに、この説への疑問がわいてきた。そこで世界中の様々な学者と協力しなが ら、ホモ・サピエンスの初期の遺跡を年代とともにマッピングしてみると、彼らが海岸や内陸を問わず、一度に、爆発的にユーラシア全体に広がったというストーリーを描けるような地図ができあがりました。


――本書では、この爆発的な移住に関連して、ホモ・サピエンスの「創造性」に焦点をあてています。

爆発的な移住の背景には、彼らの「豊かな創造性」に裏づけられた「自信」と「チャレンジ精神」があったと、私は思っています。 ・ヨーロッパを見ると、ホモ・サピエンスである「クロマニョン人」は、「ラスコーの壁画」(フランス)など、動物壁画を描き、素晴らしい創造性を発揮しています。こうした力が移住の際にも生きていたはずだと思うのです。
また、クロマニョン人の遺跡などと比べると、僕らの「アジアの祖先」は何も残していないと思われがちです。しかし、この爆発的な移住を念頭にアジアを見ると、文明的な行動の痕跡が見つけられるんです。
たとえば、スリランカの約3万7000年前の遺跡からは、ビーズなどの装飾具が見つかっています。彼らは、クロマニョン人に近い創造性を、別の形で 発揮していたように見える。ほかにも、彼らはアジアの熱帯雨林でサルを獲っていたと考えられますが、この時、弓矢や吹き矢を使っていた可能性すらあります。


 ■「純血の日本民族」などいない
――そんな中、私たちの祖先は、日本列島に入ってきました。

対馬を通る「対馬ルート」、台湾からの「沖縄ルート」、シベリアからの「北海道ルート」を使って移住してきました。これ自体は目新しい説ではないのですが、最新データを使って裏づけています。
私が強調したいのは、そもそも日本人は大陸の様々な場所から移住してきたホモ・サピエンスの「混ざりもの」だということです。
現在、東アジアには民族的な対立がありますが、そもそも、祖先は「混ざり合って」いる。しかも日本では、その後しばらくすると、弥生人が大陸から渡来してきて、さらに重層的な「混ざり合い」が起きている。「純血の日本民族」がいるわけじゃないんです。
民族の優劣を強調した言説も少なくありませんが、人類学の研究者の立場で見ると不可解で仕方ありません。

――海部さんは、移住ルートの中で特に「沖縄ルート」に興味を持っているということですが。

はい。台湾と琉球列島は少なくとも過去10万年間、海で隔てられていますが、沖縄からは、約3万年前のホモ・サピエンスの遺跡が見つかっています。つまり、沖縄ルートで日本に入ってきたホモ・サピエンスたちは、台湾から沖縄まで、航海をしてきた可能性が高いんです。
彼らは目的地が見えない中で航海をしなければならなかったし、現在と同じルートで黒潮が流れていたならば、その速い潮も横断しなくてはならなかっ た。地図も天気予報もGPSもない中で、これは並大抵のことではありません。しかも、移住先で社会をつくったのだから、男女が混ざった、ある程度の人数も必要だったはずです。
私は彼らに思いをはせてしまいます。台湾の海岸から琉球列島は見えませんが、山の上からなら発見できたかもしれないとか、島を渡る鳥や蝶を見て、「向こうに陸地がある」と思ったのではないか、とかね(笑)。

――いま、こうした仮説を実証するための「実験」を準備されていると、うかがいました。

「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」です。当時の技術で果たして本当に台湾から沖縄にたどり着くことができたのか、実際に試してみるというもの。今年7月、与那国島- 西表島間を航海する予定です。
いまもクラウドファンディングなどで資金集めをしています。これまで研究ばかりしてきましたが、生まれて初めておカネを集めなきゃいけない状況に置かれ、会社で営業をやっている人の気持ちがわかりました(笑)。
実験が成功すれば、私たちはきっと、自分の祖先を、いまよりもずっと尊敬するようになると思います。数万年前、祖先たちが創造性とチャレンジ精神で誰もやったことのないことを成し遂げ、その結果、僕たちはいまここにいるんですから。 (取材・文/土屋敦)

海部陽介 かいふ・ようすけ/'69年生まれ。人類学者。東京大学理学部卒、同大学大学院理学系研究科博士課程中退。'95年より国立科学博物館に勤務し、現在は人類史研究グループ長を務める。著書に『人類がたどってきた道』がある
 ≫(現代ビジネス:メディアと教養・日本一の書評―『週刊現代』より)

日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)
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日本人はどこから来たのか?
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●国民の合法的自由侵害「緊急事態条項」 自公お維で2/3が分水嶺

2016年03月19日 | 日記
失敗史の比較分析に学ぶ 21世紀の経済学
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●国民の合法的自由侵害「緊急事態条項」 自公お維で2/3が分水嶺

最近、永田町の政局話が登場することが増えている。珍しく、日経も政局話に触れだした。日経の予測では衆参W選が濃厚と云う言い回しだが、断定的ではない。そりゃそうだろう、当の本人が「解散なんか考えてもいない」と言っているのだから、断定するわけには行かない。

≪ 衆参同日選、与野党に観測 増税巡る首相発言  
7月の参院選にあわせた衆参同日選挙の観測が18日、与野党に広がった。2017年4月に予定している消費増税を巡る安倍晋三首相の発言がきっかけだ。首相が増税延期を決断し、衆院解散・総選挙に踏み切った14年11月の状況と重ねる議員らは、危機感を募らせている。
「衆参同日選があってもおかしくない」。自民党の二階俊博総務会長は18日のTBS番組収録で永田町の空気を解説してみせた。7月の参院選を間近に 控え、参院自民党幹部らは「増税先送りと同日選の流れが止まらなくなる」「もう解散だ」と浮足立つ。民主党の岡田克也代表は記者会見で「何があってもしっかり対応できるようにするのは当たり前だ」と、同日選も視野に候補者擁立を急ぐ構えを示した。  同日選と増税再延期の観測が広がったのは、首相がそう思わせる行動をとっているからだ。
  5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向けて世界経済の動向を勉強したいと、首相自身がはじめた国際金融経済分析会合。16日にはノーベル経済学賞 受賞者のスティグリッツ米コロンビア大教授が消費増税に慎重論を唱えた。17日の講師、ジョルゲンソン米ハーバード大教授は消費増税の必要性を説いたが、 時期への言及を避けた。22日には消費増税に慎重とされるクルーグマン米プリンストン大名誉教授が招かれている。


 

4月以降は経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長や、国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長らが出席する。消費増税に否 定的な意見を述べるとは限らない。しかし、首相が用意した分析会合で、世界的権威のある学者が増税に慎重姿勢だったという事実だけでも、議員の警戒心をあおるのには十分だった。
 首相は14年11月に増税先送りを決断した際、解散・総選挙に踏み切り、国民の信を問うた。今回は7月に参院選がある。サミット前後に再延期を決断するとしても、参院選で是非を問う、という選択肢がありうる。増税延期と同日選は、必ずしもセットではない。
 ただ、民主党と維新の党は27日に「民進党」を旗揚げし、参院選に向けて共産党とも共闘態勢づくりを進める見通しだ。政権選択を迫る衆参同日選なら野党を分断できるとの議論は、自民党内にくすぶっている。  
  「総選挙についてはまったく考えていない」。18日の参院予算委員会で、首相は社民党の吉田忠智党首の質問にこう答えた。17日の日本商工会議所の会合では「今年は大切な年になる。中身についてはあえて言わないが、だいたい皆様には想像がつくのではないか」と、年内解散を想起させる表現をしていた。  「消費増税を延期するのか、同日選をするのか。様々な動きは政権運営の選択肢を広げるためだ」。首相周辺は解説する。  ≫(日経新聞電子版)


「今年は大切な年になる。中身についてはあえて言わないが、だいたい皆様には想像がつくのではないか」と、17日、日本商工会議所の会合で安倍首相は、解散を臭わしているのだから、ほぼ間違いなく、参議院選Wか、それより以前かに、解散総選挙は持ってくるだろう。「民進党」だけでは、何も出来ないことは、安倍首相も先刻承知。共産党と小沢一郎の存在が、目障りなのだ。目障りと云うことは、視点を変えれば「怖い」と云うことでもある。民主党と維新の党の吸収合併で出来る新党の名前が「民進党」に決まると知っていたかのように、敵は「民共」だと、断言していた。

今夜は、政局について多くを語る気はない。安倍首相は、参議院選、乃至は衆議院選において、伊勢志摩サミットで、日本の存在感を国内的な意味で、“G7首脳が認めた”という印象操作の為に利用するだろう。本来であれば、G8として、ロシア・プーチンも同席なら好都合だが、オバマによって排除されている以上、事前にプーチンからも“日本の姿勢を歓迎する”と云う“白紙委任”を取りつけようと企んでいる。伊勢志摩サミットの目玉スローガンは、資本主義の危機、民主主義の危機の為に、“日本はあらゆる手立てを尽くして、世界共通の普遍的価値に貢献する用意がある”と宣言し、世界経済に寄与するべく、積極的財政金融政策を打つと、大見得を張るだろう。

無論、その結果、財政はさらに痛み、日銀はのっぴきならない程にバランスシートを膨らませるに違いない。おそらく、累積財政赤字は対GDP2倍程度が、3倍になることも厭わないレベルの暴政だが、安倍首相なら、きっと実行するに違いない。その落とし前をどうするか迄、情報は入手しているだろう。何処と戦争するのかは判らないが、「戦争経済」に持ち込めれば、一気に問題は解決する。日本陸軍的発想だが、それしか選択は残らなくなる。国際金融経済分析会合に呼んだビッグネームも、積極財政を主張し、増税など財政問題は、後日の話だ風になっている。

「戦争経済」を念頭に、いずれ何とかなるだろう?が安倍首相の日本財政に関する認識だが、悪魔の囁きも聞こえている筈だ。戦争してしまえば、何もかも、チャラですよ。経済はアベノミクス不況ですが、それでも500兆円弱ですよ、GDP600兆円なんて、朝飯前の話で7~800兆円も夢ではありません。ただし、その為には、二つの難関があります。一つは言うまでもなく、衆参両議院で2/3議席を確保すること。次に、ウルサイ国民を黙らせなければなりませんので、「緊急事態条項」の憲法への追加です。我々が考え、覚悟しなければならないことは、安倍改憲支持勢力に2/3議席取らせないこと。確保されたら、間違いなく「憲法改正」にひた走る。

まあ、年内にアメリカの風向きが変わるので、現時点では何とも言えない。クリントンが勝てば、安倍には追い風だろうし、トランプが勝つと、何が何だかわからない(笑)。米国の問題を別にして、世田谷区長の保坂氏は以下のようにブログに綴っている。良くまとまっているので、安倍首相の改憲初級編「緊急事態条項」の追加について、学ぶには最適のコラムなので紹介しておく。まあ、緊急事態条項であろうが、9条改正であろうが、改憲勢力に、参議院だけで良いから、2/3議席を取らせなければ、一応、野党側の勝ちと云うのが、現時点での勝負所。


≪「改憲の入口」は「緊急事態条項」という罠
年明け早々から、参議院選挙のテーマは「改憲」であると、安倍首相は自ら争点設定を急いでいます。1月4日の年頭記者会見で「今夏の参院選で改憲を争点にする考えを表明」(東京新聞) しただけでなく、1月10日放送のNHK番組でも、自民・公明の与党に加えて「おおさか維新の会」等を合わせて「3分の2」の改憲議席を狙うと表明しました。
 安倍晋三首相は10日のNHKの報道番組で、夏の参院選について「自公だけではなく、改憲を考えている責任感の強い人たちと、3分の2を構成していきたい」 と述べた。自民、公明両党のほか、おおさか維新の会など憲法改正に積極的な政党を合わせて、憲法改正の発議に必要な3分の2の議席確保をめざす考えを示し たものだ。(朝日新聞2016年1月10日)
 昨年の安保法の強行採決後、議論の場となる国会を開かずに、低下した内閣支持率の反転を意識して「次は経済だ」と安倍首相が呼号してきたのが、「一億総活躍社会」でした。「女性活躍」に続いて、今度は「総活躍」です。
 「女性活躍」という言葉の飲み込みの悪さは、客観的評価を誰がするのかが不明であることにもありました。「一億総活躍」と対象が広がると、ますますその感を強 くします。... そもそも「活躍」とは何でしょうか。物事に秀でていたり、傑出した業績をあげたり、地道な努力を実らせたり、他者から見て評価できるという場合に使う言葉 です。「総活躍」とは「全員が活躍する社会」という意味になり、裏を返せば「非活躍者ゼロの社会」となります。ありえない話です。 (「一億総活躍」と「みんな違ってみんないい」2015年10月6日「太陽のまちから」)
 安倍首相は安保法強行採決の余韻を消すようにして、内閣改造と共に「一億総活躍社会」をスローガンとして「新3本の矢」を打ち出しました。「希望を生み出す 強い経済〜GDP600兆円をめざす」「夢を紡ぐ子育て支援〜希望出生率1.8」「安心につながる社会保障〜介護離職ゼロ」はどれも重要なテーマですか ら、秋の臨時国会で十分に議論する時間はありました。
 ところが、「新3本の矢」が根拠薄弱な願望であることは明らかでした。安倍首相の 「夢」実現にいたるプロセスも、制度改革も、財源も示されていないことから、「議論」に耐えるレベルの政策ではありません。「GDP600兆円」の目標を 掲げることは国民を幻惑するだけです。IMF(国際通貨基金)の国別名目GDP比較では、日本すでに27位の中位に落ちています。
 非正規労働が蔓延する貧困・格差の是正と、長時間労働の禁止等の労働政策を推進しないで、「希望出生率」を語る資格はありません。介護報酬の切り下げで、介護職の 勤務条件の改善は見られず、福祉専門学校には学生が集まらなくなっています。「介護離職ゼロ」の前に、「介護職場からの離職ゼロ」を集中目標にすべきで す。
 それでも、戦時国家体制を彷彿とさせる政権戦略よりも、経済政策・社会政策・福祉政策に力を入れるという方向は国民の関心にも合致して います。政治とは、粘り強く現実に向き合い、法制度を見直して、国民生活の改善をはかる仕事です。これが大事だということは意識していても、政策執行に身 が入らないのが現在の安倍首相ではないでしょうか。
 「安倍首相の悲願である改憲」と書くメディアがありますが、冗談じゃないと思います。国民の悲願はどこへ行ったのでしょうか。そもそも、内閣総理大臣は専制的支配者でも、絶対的統治者でもありません。有権者によって託された政治の現場で、 「国民の悲願」の成就に最優先で取り組む政治であることが必要だと、私が出会った90年代後半の自民党の重鎮たちはよく理解していたと思います。
 しかも、安倍政権は「衆参ダブル選挙が可能な日程」をチラつかせて、準備の整わない野党側に揺さぶりをかけています。加えて、ちょっと待ったと言いたいの は、フランス・パリでの同時多発テロ事件や北朝鮮の核実験を奇貨として、憲法に「緊急事態条項」がないことが改憲の焦点に浮上していることです。
 改憲が争点に 緊急事態条項は許されない [琉球新報]社説 2016年1月9日  昨年の国会で首相は緊急事態条項を憲法に創設したい考えを示しており、与党もそれを軸に改憲論議を進める構えだ。
 確かに衆院・参院の任期満了選挙が災害で実施できないことがあれば、政治空白が生まれる可能性はある。だが自民党が4年前にまとめた憲法改正草案では、緊急事態宣言で内閣は法律と同じ効力を持つ政令を出せることになっている。国民の私権制限も一方的にできる。戒厳令そのものだ。そうなれば政権はまさに万能で ある。民主的政体も立憲主義も完全に霧消する。断じて許容できない。
 ヒトラーのナチスが、国会議事堂放火事件を契機に緊急事態を理由にした全権委任法(1933年)を成立させ、ワイマール憲法が保障していた国民の諸権利を 「永久停止」させて独裁政権を樹立したことを歴史の教訓にしなければなりません。「緊急事態」に特別な統治状態をつくることが、「憲法の一時停止」を生ん で、民主主義を崩壊させる契機になる危険があることは十分に議論しなければなりません。
 日本国憲法には、解散・総選挙によって、衆議院議員不在の政治空白を埋めるために、「参議院の緊急集会」を制度化しています。長谷部恭男教授の発言に注目しました。
 改憲の「初手」? 緊急事態条項は必要か 長谷部恭男×杉田敦「考論」(朝日新聞2016年1月10日) ・憲法に緊急事態条項を新設する意味があるのは、最高裁の判例が現在認めている以上に、国民の基本的人権を制限する権能を、政府や国会に与える場合だけです。
 しかし、それはまさにドイツのワイマール憲法が採っていた制度で、ナチスに悪用されたことは周知の事実。緊急事態を理由に停止された基本的人権は元には戻りませんでした。 (中略)
 憲法54条には「衆議院が解散された時には、参議院は同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要がある時は、参議院の緊急集会を求めることができる」 とある。それで十分だというのが憲法制定者の理解だったと思います。緊急事態に際して法律をつくる必要があるなら国会を召集する、衆議院が解散している場 合は参議院の緊急集会で対応すればいいと。
 「改憲」の入口として、政治空白を埋めるために「緊急事態条項」を課題にするのだとすれば、そもそも参議院議員半数の改選にぶつけて解散・総選挙を打つ「衆参 ダブル選挙」が話題にのぼること自体が二律背反です。「集団的自衛権行使可能」の論拠として、一言も「集団的自衛権」に言及していない「砂川判決」を持ち 出した非論理性をふりかえれば、このぐらいの矛盾には国民は気づかないはずだと見くびってはいないでしょうか。
 「一億総活躍」から「一億総動員」に転じるような歴史の逆行を許さないために、「緊急事態条項」の議論は大いに掘り下げる必要があります。衆参両院での補正予算・本予算審議で、「緊 急事態条項」を自民党がどのように考えてきたのかを検証し、安倍首相の基本姿勢を正す必要があると感じます。「危機管理体制の強化」は一般的に多くの人の 了解を得ることが可能なテーマですが、「憲法の空白」を逆手にとった統治者の手で、自由自在に「国民の権利」「基本的人権」が制約される社会は、誰も望ん でいません。
 憲法を捨てるのか、生かすのか。これが今夏の参議院選挙のテーマだとすれば、安倍首相は自ら目の前に高いハードルを置いたことになります。「国民の悲願」を実現するために政治があることを見せつける結果を生まなくては、と強く思います。 ≫(HuffingtonPost:ソシアル・ブログ・保坂展人)

世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠
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●民進党は期待できないが 小沢と志位の後方支援は侮れね

2016年03月18日 | 日記
「人間国家」への改革―参加保障型の福祉社会をつくる (NHKブックス No.1231)
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●民進党は期待できないが 小沢と志位の後方支援は侮れね

今夜は思考能力が、いつも以上に低下しているので、英・経済誌エコノミストと田原総一朗氏のコラムを引用しておく。前者は、衆議院の参議院同日選か前倒し解散を示唆している。最近、めっきり耳にすることがなくなった「アベノミクス」は、成功しているとは言えず、時間が経つにつれて、安倍政権は追い込まれるリスクが増えると、中々の着眼点がある。筆者も、衆参W選よりも、解散総選挙は前倒しで打つのではないかと予測している。プーチン会談で、領土問題の一歩前進くらいしか、安倍が得点を挙げられそうなものが見当たらないのだから、このプーチン会談の結果次第で、解散を早める段取りは決めてあるだろう。

シリアに潜入したジャーナリスト安田純平氏の拘束問題が浮上しているが、昨年の7月に拘束された情報が流れていたが、「自己責任論」を振りかざし、アルカイダ系の武装組織「ヌスラ戦線」に拘束されているとされている。動画では「私の国に何かを言わなければなりません。痛みで苦しみながら暗い部屋に座っている間、誰も反応しない。誰も気にとめていない。気づかれもしない。存在せず、誰も世話をしない」と組織に言わされているが、官邸は相当前から知っていて、後藤健二氏同様に、見殺し戦法に徹しているようだが、選挙間近となれば、身代金支払いに応じるものと推量する。

田原氏の“期待されていない民進党”は、田原氏の指摘以前から、日本人なら判っていることだ。岡田・枝野・前原・細野・江田・松野の民進党で何が変わるのか、まったく判らない。田原氏は、判っていながら、共産党・生活・社民党3党の連携協力を確実なものにする為に、その受け皿的存在が必要だったと云う「便法」と云う点を語っていない。逆に岡田は、敢えて“民主”となることを忌避したと筆者は読んでいる。菅・野田で「民主」は地に落ちたのだから、いまさら「民主」では戦えないと、腹を括ったのだろう。

安倍が期せずして「自公対民共」だと、レッテルを貼ったわけだが、実は、その通りなのである。実は、民進党の誕生は、一層、日本共産党の協力が得やすくなるお膳立てに過ぎない。そこまでのシナリオを描いたのは小沢一郎だろう。演じる連中の顔ぶれが、いささかお粗末だが、「オリーブの木構想」(小沢一郎)、「国民連合政府構想」(志位和夫)、の変形バージョンだ。安倍自公政権にとって、民進党なんてのは怖くはない。ただ、民進党のバックボーン、揺れることのない信念を持っている小沢と志位が存在するゆえの怖さなのだ。バーニー・サンダースがクリントンを慌てさせた世界の流れは確実にある。今どき、更なる経済成長などと世迷言に逃げ込むくらいなら、「増税する前にやることがある」原点回帰がタイムリーなのだ。


≪ 同時選勝利を目論む安倍首相、障害は首相自身
安倍晋三首相が前回、総選挙に踏み切ったのは、2012年に首相に就任してからわずか2年後のことだった。即座に解散総選挙を決めた安倍首相の目は、野党陣営の混乱ぶりと、議席数を増やすチャンスをとらえていた。
 それでも安倍首相は「公約の重大な変更について国民の信を問う」という大義名分のもとにこの選挙を進めた。経済が停滞するのに鑑み、以前から決まっていた消費税引き上げを延期すると決断したからだ。選挙は自民党の圧勝に終わった。そして今、国民の信を問う必要がある重要政策が再び浮上すると思われる。
日本経済が一向に回復の兆しを見せない中、安倍首相がまたしても消費増税を先送りする可能性があるのだ(現時点では2017年4月に8%から10%に引き 上げることが予定されている)。決断のタイミングは、日本が議長国を務める5月のG7(先進国首脳会議)を終えてからになるだろう。前例に従うならば、この問題に関して解散総選挙を行わないわけにはいかない。6月か7月には参議院選挙が予定されている(参院議員の半数が改選される)。安倍首相はおそらくこれに合わせて総選挙の日程を決めるだろう。

 ■原発、安全保障、スキャンダル  
自民党の中にはより早い時期の総選挙を望む者もいる。安倍首相の運が尽き果てないうちに、急いで済ましてしまいたいのだ。現在、安倍政権の前には 様々な困難が立ちはだかっている。最大の懸念は経済だ。個人消費の冷え込みを受け、2015年10~12月期の日本経済は年率換算で1.1%縮小した。日 本銀行(日銀)は1月、マイナス金利政策を打ち出して需要の喚起を図ったが、その狙いとは裏腹に株価は下落し、円高が進んだ。
 遅かれ早かれ日本の有権者は、停滞する経済への不満を安倍首相にぶつけることになる。同首相は経済建て直しを約束していたのだから。
 国民の支持を得られていない政策は他にもある。安倍首相はそれらに対する制裁をまだ受けていない。原子力発電所の再稼働はその一つだ。5年前のこの時期に発生した福島第1原発のメルトダウンという最悪の事態を受け、日本の原発はすべて運転を停止していた。
 昨年成立した新たな安全保障関連法について、多くの専門家がこれを違憲だとしている。この法律は海外でこれまでより幅のある行動を日本に許すもので、多くの日本人が不快に感じている。
 ただでさえこうした不満が渦巻いているところに複数の与党議員が不祥事を起こした。1月には安倍首相の側近だった甘利明経済再生担当相 が政治献金疑惑をめぐって辞任した。また、男性国会議員として初めて育児休暇をとると宣言して話題を集めていた議員が、妻の妊娠中に他の女性と不倫関係に あったことが発覚。それ以来、安倍政権の支持率は50%を下回っている。

 ■安倍首相が進める改革は十分か  
消費税に関しては、2014年に行われた最初の増税(5%から8%)が個人消費に打撃を与えた。安倍首相の経済アドバイザーを務める本田悦朗氏 は、安倍首相が経済を回復させるべく広く取り組んでいる政策について国民の信頼を失いたくないなら、今度の引き上げを延期することが不可欠だと話す。
 3年間にわたって大がかりな金融緩和を行った今でもコアインフレ率はゼロに近く、日銀が目標に掲げる2%には程遠い。労働組合の幹部たちでさえ、 大幅な賃上げを要求してはいない。そして銀行が貸出によって得られる利ざやは相変わらず圧迫されている。こうした状況はすべて、安倍首相が約束する「賃 金・消費・投資の増加による好循環」を脅かすものだ。こうした状況下で夏の選挙に臨んだ場合、有権者が安倍政権に投票するかどうかは疑問だ。
 日本経済の自由化を進めるべく安倍首相は一層努力すべきだ、と考える人は多い。例えば、労働市場を徹底的に改革する。非正規労働者は低賃金に甘ん じており、個人消費の足かせとなっている。これを改善するためのもっと強力な政策を打ち出すこともできる。だがある政府官僚によると、踏み込んだ改革計画が発表される予定は当面ないという。

 ■冴えない民主党  
一方、中道左派政党の野党・民主党は総選挙に向け候補者の擁立に奔走している。だが確固とした足掛かりは築けそうにない。世論調査によれば民主党の支持率はわずか10%にすぎず、哀れなほどの水準にとどまっている。これに対して自民党の支持率は4割にのぼる。
 民主党は消費増税の2度目の延期を取り上げ、アベノミクスの失敗がその原因であると追求する構えだ。だが普通世帯を取り巻く困難な状況を考慮し、増税の延期そのものには反対しないと思われる。

 ■確かな憲法を求める安倍首相  
衆参ダブル選挙を実施することの是非を考えるにあたり、安倍首相は自らの夢の実現につながる大勝利が可能かどうかを検討することになる。安倍首相の夢、それは憲法改正だ。その中心にあるのは、1940年代後半に進駐軍が策定した平和憲法を書き換えたいという思いである。
 安倍首相はこうした改正が必要となる理由について、次のように説明している。あの悲惨な戦争から70年が過ぎた今、日本はもはや、時代遅れの平和主義によってがんじがらめにされる必要はない。日本を取り巻く環境は日増しに危険度を増しているのだから――。
 日本で憲法を改正するためには、衆参両院のそれぞれで議員の3分の2以上が賛成し、国民投票で半数以上の賛成票を得る必要がある。自民党とその連 立相手である公明党は、衆議院では議席の3分の2以上を確保している(475議席中325議席)が、参議院においてはかろうじて過半数を超える程度である (242議席中136議席)。
 安倍首相が参議院で議席数を増やすことは可能かもしれないし、右派の小政党、おおさか維新の会の協力も期待できる。それでも憲法を改正しようとす れば、日本の平和主義を誇りに思う国民の多くが大きな警戒心を抱くだろう。つまり、選挙での勝利を願う安倍首相にとって、憲法改正の取り組みについて嬉々 として話すその性向が最大のリスクとなるのだ。

© 2016 The Economist Newspaper Limited. Mar 12th 2016 | TOKYO | From the print edition, All rights reserved. 英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
 ≫(日経ビジネスONLINE:アジア・国際-エコノミスト誌)


 ≪ 「民進党」は果たして参院選で勝負できるのか
民主党と維新の党が合流して結成された新党は、「民進党」という名前に決まった。民主党は「立憲民主党」、維新の党は「民進党」を提案し、どちらがふさわしいか世論調査を行った。2つの調査会社に依頼したが、いずれも「民進党」が上回り、この名称に決定した。

 ■民主党にとって党名決定は意外な結果  
「立憲民主党」という名前ならば、略称では従来と同じ「民主」となるため、比例代表選挙で「民主」と投票すれば有効になるはずだった。ところが、「民進党」では略称が「民進」になり、「民主」では無効となる可能性がある。  こうしたことや党名の一部に「民主」が入ることで、民主党は「立憲民主党」になることを強く願っていたところがある。それが叶わず、「民進党」に決まった。
 この決定について、民主党のほとんどの人間は「意外だった。こうなるとは思わなかった」と述べている。
 彼らの多くは、「立憲民主党」に決まると思っていた。民主党は「民意だと受け止めるしかない」と言いながらも、「民進党」という名称には大いに不満を抱いている。
 民主党内では、世論調査で党名を決める方式を決めた岡田克也代表への不満も非常に高まっている。「岡田は、肝心なときに思惑違いをやる」と漏らしているのだ。

■安全保障政策は一致しているが経済政策が問題  
民主党と維新の党は選挙を戦うために合流したが、果たして政策面で両党は合致しているのか。
 実は、民主党と維新の党は、安全保障に関してはそれほど大きな政策の違いはない。安保関連法や集団的自衛権の問題については、ほとんど意見が一致しているのだ。
 例えば、安保関連法について、両党は「後方支援はするが、周辺事態法の枠だ」と主張している。周辺事態法とは、日本周辺の地域で、日本の平和や安全に大きな影響を与える事態が起こった場合、自衛隊が米軍に行える後方支援の内容を定めたものだ。
 安倍内閣は周辺事態法を改正し、「周辺」を外して、地球の裏側まで行けるようにした。しかし、民主党と維新の党は、「周辺」に留めるべきだと主張している。
 それから集団的自衛権の行使についても、今のところ、民主・維新は「米艦防護」は認める方向で考えている。朝鮮半島で戦争が起こった場合、参加した米艦が北朝鮮や中国から攻撃されたときに、日本は防護するというものだ。
 これが唯一の「集団的自衛権の行使」だと言っている。つまり、ホルムズ海峡での機雷掃海などは認めないというのだ。
 ただ、問題は経済政策だ。維新よりも民主内部の方で意見が割れているからだ。

 ■民主党内で経済政策の意見は割れている  
民主党内部にはアベノミクスの失敗は、貧富の格差を広げたことだという意見がある。だから次の選挙では、政策に「経済の成長」ではなく、「格差是正」を入れ込むべきだというのだ。
 エコノミストの水野和夫氏は、「もはや日本に成長はない。資本主義は終わりだ」と述べているが、こうした考えに賛同する勢力は民主党には少なからずいるのだ。成長は厳しいのだから、格差是正や資源の分配を重点的に考えるべきだというわけだ。
 だが一方で同じ民主党内で、「経済の成長」を入れ込むべきだという意見もある。経済は生き物だから、成長を考えなければ格差是正もできない。さらには、「格差是正」を強調し、「資本主義は終わり」という考え方は、左翼的過ぎるというのだ。
 このように、民主党内部では「経済政策」という点で完全に二つに割れている。果たしてこの状態で、維新の党と合流した民進党として、経済政策をまとめることができるのか。

■民進党に対する国民の期待値は低い  
民主党が維新の党と合流して民進党に生まれ変わった最大の理由は、7月に控える参議院選挙だ。衆議院選挙とのダブル選挙にならないとしても、少なくとも参議院選挙は行われる。今回、維新の党と合流したのも、できる限り選挙を有利に戦うためだ。では、民進党になって果たして次の選挙に勝てるのか。
 次の選挙の民主党の改選議席は42。これは、6年前の菅直人内閣時に獲得した議席数だ。そして、3年前の野党時代の海江田万里代表時に行われた参議院選挙では、民主党は改選議席44に対し、獲得した議席はわずか17議席だった。
 このことから、民主党の執行部からは、「次の選挙では、改選議席42のうち30取ることができれば上出来だが、実際は20も取れないのではないか」という声も上がっている。民主党は民進党となっても、次の選挙で、大幅に議席を落とす恐れがあるのだ。
 第一、先ほどの述べたように、次の参議院選挙では民主党がそのまま戦っても、大幅に議席を落とす可能性があった。維新の党と合流して「民進党」になっても、この状況は変わらないだろう。
 朝日新聞社が3月12~13日に実施した世論調査によると、民進党に「期待する」は31%、「期待しない」は57%だった。読売新聞社が3月4~6日に実施した世論調査でも、「期待する」は31%、「期待しない」は60%だった。
 要するに、国民から見れば、「民主党と維新の党が合流しても、日本の状況が変わるとは思えない」というわけだ。その点では、非常に苦しい合流だと思う。これから国民が納得する政策を打ち出せるかどうかが焦点となるだろう。

■参院選後に「一波乱」が起こる可能性も  
20議席にも届かないとなると、参議院選挙の後で岡田代表が辞任するなどの「一波乱」が民進党に起こる可能性があると思う。
 政党に求心力がないのだ。これは容易に解決しない問題だろう。  僕は、今の民主党の一番大きな問題は、仙谷由人という人物がいなくなったことだと思う。
 仙谷氏はかつて民主党代表代行などを歴任した人物で、党内を二分する原発再稼働問題にもけりをつけた。仙谷氏は、前原誠司、細野豪志、枝野幸男といった党内の論客をうまくまとめることができた。  今は三人の意見が全く異なってバラバラな状態だ。例えば、経済に関して言えば、前原氏と細野氏は政策に「経済成長」を入れるべきだと言っているが、枝野氏は「格差是正」を強く主張している。
 だから、もし一波乱が起きてしまうと、再びまとまるのが非常に難しい。下手をすると、分裂の可能性もある。

■次の選挙で民進党は厳しいが自民党の圧勝もない  
おそらく、自民党は今年、参議院選挙のみならず衆議院選挙もやると思う。ダブル選挙にはならなかったとしても、二つの選挙を行うだろう。
 この二つの選挙をやる前に、おそらく自民党は、来年に控える消費税2%の増税を先送りにすると発表するのではないかと思う。
 それでも自民党は圧勝しないのではないか。最近の内閣支持率は、東京新聞46.7%、毎日新聞42%など、総じて40%台半ばで推移している。安倍政権に期待する人は、ほとんどいない。「他に投票する政党がない」とう理由で、自民党に投票する人が多いのだ。
 ただ、民進党にも「これで何かが変わる」と思えるようなビジョンがない。新しい要素がないのだ。これから国民の支持を得られるような政策を打ち出せるかどうかが、参議院選を戦う上での焦点になるだろう。  ≫(日経Bizアカデミー:田原総一朗の「ここだけの話」)

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●「世界の孤児になりたい現象」 歴史の転換に目を転ずる時代到来

2016年03月17日 | 日記
資本主義の本質について
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●「世界の孤児になりたい現象」 歴史の転換に目を転ずる時代到来

以下の笠原敏彦氏のプーチン絡みの世界展望コラムは、相当に欧米エスタブリッシュメントに毒された解説になっている。無論、日本のマスメディアの論調と似たような流れで書かれているので、反プーチン、反ロシアになるのは当然だろうが、プーチンを偏狭なナショナリズムの持ち主と決めつけている根拠が欧米情報に頼りすぎであり、結論ありきなコラムになっている。多くの人は、笠原氏が書いていることを、抵抗なく読むだろうが、ロシア情報にもアンテナを張っている人々の感覚から言えば、ただ、欧米的都合によればと云うストーリーをなぞったに過ぎない。

現在、ウクライナや中東で起きていること、乃至はリビアやエジプトで起きている地政的混乱、中国習近平の一帯一路構想、アメリカ大統領選における、二大政党制から四大政党化現象など、歴史的に観察する必要に迫られているのだと理解する。局地的な現象や情報を繋ぎあわせて、行先の定められた列車に乗り込むべし的な言説は、意識的に排除する、知恵が必要だ。

現在の世界のいざこざの多くは、経済的事情が大きく絡んでいる。地政学的問題も絡むが、その核心を探れば、殆ど経済的権益の拡張か維持にたどり着く。なぜ、世界一の経済大国であったアメリカが、金融危機までひき起こさなければならなかったか。そこに、歴史的なポイントが見いだせる。アメリカ合衆国の実物経済では、資本が望むべき利益率が構造的に得られなくなったことに、起因する。

歴史的に見ても、資本とは、10%近い利潤を求める傾向がある。嘗ての、オランダも、イギリスも10%以上の利潤に向かって突き進んだ。おそらく、イタリア・ジェノバでも、同じことだったろう。しかし、これらの資本覇権は、10%前後を境に、2、3%に落ち込んで行く。そして、外に利益を求めて、流出する。所謂、フロンティア地域を求めて、資本が外に出てゆく。ジェノバの資本はスペインをフロンティア的位置づけにして流れた。スペインから、フロンティアはオランダに移り、東インド会社がフロンティアになる。オランダから、イギリスは海洋と植民地がフロンティアで、アメリカも新大陸的フロンティアになる。

つまり、実物経済の利潤が10%に達すると、国内では利潤の低下が起きる。そこで、資本は実物経済から、金融経済の方向に常に流れる。流れる先は、所謂フロンティア地域にである。このような資本と云う魔物のサイクルは、100年から200年周期で、ヘゲモニー経済国家で起きてきた。この点は、2009年出版のアリギの『長い20世紀――資本、権力、そして現代の系譜』で詳しく述べられているが、アリギによると、このサイクルは、アメリカの次のフロンティア地域に資本が移動すると述べている。資本主義の永遠のサイクル論なのだが、どうも、そこには歴史の見誤りがありそうだ。

何故なら、アメリカの金融危機は既に起き、フロンティア地域はグローバルに分散しているので、今までの資本主義の定期的サイクルに狂いが生じているのが、現在である。おそらく、この資本主義の実物経済の興亡と金融経済へのシフト。そして、フロンティア地域誕生というサイクルの歴史的法則に挑戦したのが、アメリカ経済なのだろう。フロンティア地域を分散させることで、資本主義のジレンマ的法則を覆そうと試みているのが、アメリカ経済である。オバマが、実物経済回帰に舵を切ったのも、覇権資本主義の法則を覆そうと云う流れの中にある。

フロンティア地域の分散が、グローバル経済になる。と云うことは、資本主義の法則を、覇権国死守の為に、自ら乱したとも言える。それが何を意味しているか、現時点で断定は出来ないが、中世から近代と云う歴史的事実と異なるフェーズをもたらしていると言えるのではないのだろうか。つまり、中世ローマカソリックの荘園制度から、近代主権国家による近代資本主義システムへの移行と似た現象が起きている。今や、国家ではない、国境なきEU諸国同様に、TPPによる地域の囲い込み、国境なき世界の実現に向かっている。

今は、国境なき、地政学無視のグローバリズムとナショナリズムのガチンコ対決が起きていると見るのが妥当だ。安倍自民の立ち位置は、この対立軸を8:2程度の割合で抱えている。ナショナリズムの方の軸足はかなり恐々だ。安倍のナショナリズムはささやかな抵抗を見せる程度で、本気度は低い。憲法改正の公約を但し書きで書くレベルなのだから推して知るべしだ。多くは、グローバル経済下での、護送船団方式で、国家の繁栄を夢見ている。つまりは、似非ナショナリズムで、すねて見せる程度のナショナリズムだ。歴史的に、中世から近代。そして、次のフェーズと云う認識のもとに動いている兆候は見られない。

ロシアのプーチン大統領は、ナショナリズムに軸足を置くものの、笠原敏彦氏ら西側情報筋の「ロシア帝国の復活」であったとしても、アメリカ的帝国を目指しているようには見えない。プライドが「地域大国」の呼称に腹立ったとしても、そこまで無知蒙昧な野心を抱くには、経済的ウィークポイントが多すぎる。ロシア人自身も、そこまでの大国になろうと思っていると云うのは、怖がり過ぎで、「一国主義」には応じられないと云うスタンスと読むのが、最も妥当な線だ。ナショナリズムと言っても、トランプ氏同様、世界支配と云うよりも、東側陣営として、NATOの拡張路線には応じられない。内輪の世界で生きてゆくので、邪魔立てするな程度である。

トランプ氏も、感性的そう云うことで、一種の孤立主義だ。プーチンも旧ソ連邦的孤立主義だ。人の国のことは構わない。全世界が孤立主義に徹して、理性的に、民主主義はこうあるべきとか、資本主義は永遠でなければいけない的なイデオロギーを貫徹するために、世界中を火の海にして、「正義だ!」などと宣う偽善はやめましょうね、と云うのが、アメリカ的ではない、中露の姿勢だし、英国もその方向だ。にも拘らず、アメリカは、キューバに楔を打ち、ブラジルを掻きまわし、まだまだ、影響力行使に余念がない。中世から近代と似た、歴史的フェーズがあるとすれば、アメリカのオバマが行っている陰謀的外交は的外れだと云うことだろう。

資本主義のサイクル法則は終わったのだろうが、アメリカは普通の経済大国の道を進む方が、世界は平和だ。世界の警察は卒業して、さっさと、トランプ氏に大統領の座を明け渡せ。個人的には、クリントン女史とトランプの戦いなら、トランプ有利とみている。アメリカの将来は、既に孤立化に向かっている。バーニー・サンダースの流れも、孤立化に向かう。クリントンが大統領になった時だけ、世界への介入は止まらず、阿鼻叫喚な政界情勢に拍車が掛かるのだろう。あくまで、個人的見解だが、日本も孤立主義になりたいものだ。世界中の国で、「孤児になりたい現象」が明確に起きている。


 ≪ プーチン色に染まる世界
  〜「偏狭なナショナリズム」が次々台頭する理由
  トランプ現象と共鳴する新たな国際潮流

■プーチン大統領の「報復」
世界は今、アメリカ大統領選に耳目を奪われている。共和党候補指名争いで快走するドナルド・トランプ氏は具体的な政策などそっちのけで、ひたすら「アメリカを再び偉大な国にする」と絶叫し、支持者の喝采は高まるばかりのようだ。
スマホでのショート・メッセージなどがコミュニケーション手段で重宝される現状に照らすと、トランプ氏は時代精神を映し出すデマゴーク(扇動政治 家)のようにも見える。彼が大統領になった場合の国際政治への影響を憂慮する声が強まっているが、アメリカで進行する「トランプ劇場」はどこか、コメ ディ・タッチだ。
 「これは一体、悲劇なのか、喜劇なのか」。そんなセリフを吐きたくなるアメリカの現状である。
その一方でと言うべきか、トランプ現象とも共鳴する形でと言うべきか、世界を見渡すと、新たな国際潮流のうねりが起きているように思える。それは、端的に言うなら、ロシアのプーチン大統領が世界を「自分色」に塗り替え始めているということだ。
筆者が世界の現状を象徴する写真を1枚だけ選ぶとするなら、躊躇なく、冷めた笑みを浮かべるプーチン大統領の写真を選ぶ。彼はその虚無的な目つきで本心を隠しながらも、「報復」を果たしつつあるというある種の優越感に浸っているのではないかと想像する。
 なぜ、そう思うのか。そして、そのことが国際政治にどのようなインパクトを持つのか。以下に説明していきたい。
* * *
プーチン大統領は14日、シリアに派遣しているロシア軍の「主要部隊」を15日から撤退させると発表した。ジュネーブで14日に1ヵ月半ぶりに再開 したシリア和平協議に合わせた外交攻勢だろう。プーチン大統領は軍事基地は残すと表明しており、ロシア軍の動向は慎重に見極めなければならないが、この 「意表を突く行動(surprise move)」(英BBC)の伏線はあった。
英エコノミスト誌の2月20日号に「ウラジミール・プーチンのシリアでの戦争 彼はなぜ今停戦するのか」という長文の記事が載った。ロシアは昨年9月、アサド政権側についてシリアで空爆を始めたが、突如、停戦へと舵を切った背景を探る記事だ。
停戦は米露主導で合意に達し、2月27日発効。プーチン大統領は2月22日の声明で「米国との合意がシリアの危機的状況を劇的に転換させると確信している」と述べている。大統領自身の停戦への強いコミットメントを示唆する発言である。
エコノミスト誌の記事は、ロシアのシリア内戦をめぐる深謀遠慮、野望を分析するもので、「プーチン大統領は明確な戦略を持ち、ほとんど全てのレベルで成功しているように見える」と総括している。 その要点は次の通りだ。
アサド政権は一時崩壊寸前だったが、ロシアの支援で生き残りに自信を持つようになった。 ・欧州諸国はロシアがシリア難民を“兵器化”していると批判。空爆強化で難民流出に拍車をかけ、その受け入れ先である欧州を脅し、トルコを罰している。
プーチンは、反欧州連合(EU)を掲げる欧州のポピュリスト政党を支援してきた。難民危機はこうした政党へのボーナスだ。EUが弱体化すれば、ロシアはウクライナやジョージア、ベラルーシなどの影響圏を維持し易くなる。 記事の中で衝撃的なのは、ロシアの軍事作戦の非情さだ。
反政府勢力が支配する地域では2月中旬、ロシア軍の意図的と見られる空爆で国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」が運営する病院など複数の医療施設が破壊された。記事は専門家の分析を引用し、ロシアの狙いは、市民を恐怖に陥れて逃避させ、その地域により徹底的な攻撃を加えることだと説明している。
エコノミスト誌の記事の内容をぎゅっと凝縮するなら、プーチン大統領はシリア軍事介入の目的をほぼ達しつつあるということだ。
だから、ここで国連主導の和平プロセスへ移行し、アサド政権が奪還した支配地域を固定化する▽関係が悪化したトルコへの圧力としてシリアのトルコ国境沿いにクルド人自治区を確立する、ことなどを狙っているのだろう。事実上のシリアの分割である。

 ■なぜシリアに軍事介入したのか
ここから、問題の核心に入りたい。プーチン大統領がシリアに軍事介入した真の理由とは何なのかということだ。
この点についてはこれまで、シリア・タルトゥースにあるロシア海軍唯一の地中海に面した補給拠点の維持が目的だとか、中東での影響力拡大が狙いだとか説明されてきた。しかし、必ずしもそうではないようだ。
筆者は最近、軍事・安全保障戦略を担う欧州の政府・軍首脳らと話す機会があり、この疑問をぶつけてみたのだが、その答えは明快だった。
彼らはプーチン大統領の真意について異口同音に「ロシアを大国として復活させることだ」と断言したのである。外交だ、安全保障だと言ってもしょせんは人間がやることだ、ということなのか。
ある首脳は自国の安全保障上の脅威としてロシアを筆頭に挙げた上で、こう語った。 “プーチンは、オバマ米大統領に「ロシアは地域大国 (Regional Power)だ」と言われたことを根に持っている。彼は元KGB(旧ソ連・国家保安委員会)で、「20世紀最大の地政学的悲劇はソ連崩壊だ」と言った男だ。自分が影響力を行使してシリア問題をリードし、米国と並ぶスーパーパワーであることを見せつけたいのだ。 シリア内戦で急に停戦へ舵を切ったのは、かつてのアフガニスタンのように泥沼に入り込みたくないからだろう。プーチンは出口戦略が必要だと思っている”
オバマ大統領の「地域大国」発言とは、ロシアが2014年3月、ウクライナ紛争に絡みクリミア半島を併合した直後に行われたものだ。オバマ氏は「ロシアは近隣諸国を脅す地域大国だ。それは、強さに基づく行動ではなく、弱さに基づくものだ」と批判している。
アメリカ大統領から「弱い」と言われ、プーチン大統領は何を思っただろうか。推して知るべし、である。
そして、それからほぼ2年。プーチン大統領は昨年12月31日、新たな国家安全保障戦略を承認したが、そこでは「世界の紛争の正常化でロシアが果たす役割は強化された」と強調された。
プーチン大統領はシリア内戦を足がかりに、オバマ大統領から受けた屈辱へのリベンジを果たしつつあるのか。
シリア空爆開始後の昨年10月の世論調査では、プーチン大統領の支持率が過去最高の89%にはね上がった。プーチン大統領が「ロシア帝国再興の体現者」というその自画像にほくそ笑んでいてもおかしくはない。

■「プーチン化」する世界
ここで、視点をぐっと広げてみたい。すると、世界の「プーチン化」とでも呼びたくなる現象が進んでいることに気づくはずだ。
アメリカ大統領選でのトランプ氏の想定外の躍進は、その一例である。プーチン氏がトランプ氏を「聡明で才能がある」と褒め、トランプ氏はプーチン氏を「力強い指導者」だと称賛している。2人に共通するのは、独善的かつ偏狭なナショナリズムである。
先のエコノミスト誌の記事が指摘しているように、プーチン大統領が欧州のポピュリスト政党を援護射撃する形になっているのも異常な事態だ。
難民危機は、極右政党や暴力的な反移民組織を勢いづかせ、社会・政治を不安定化させている。プーチン大統領のEU分断策は一定の効果を上げていると 見るべきだろう。フランスの極右政党「国民戦線」の党首で、来年の大統領選への出馬が予想されるマリーヌ・ルペン党首もプーチン氏を称賛しているという。 ・シリア情勢が欧州に及ぼしている影響の深刻さは、ポピュリスト政党の台頭に止まるものではない。
EUは8日、難民危機をめぐりトルコと首脳会議を開き、その対応策で大筋合意した。その柱は、EU側がトルコからギリシャに密航した全ての難民・移民をトルコに一端送還し、その中のシリア人と同じ数だけ、EU側がトルコに滞留するシリア難民を受け入れるというものだ。
トルコへ送還するという措置だけでも、人権的な見地から「欧州の理想はどこへ行ったのか」という批判が強い。そして、それ以上にEUの危機的状況を示すのが、トルコの言論弾圧に口をつぐんでいることだ。
エルドアン政権は3月4日、政府批判の急先鋒だったトルコ最大の新聞ザマンを政府の管理下においた。EUはこの問題で沈黙しており、難民問題への協力ほしさから「背に腹は替えられない」とばかり、理想を封印した形になっている。
この欧州の「退化」も、プーチン戦略と無関係とは言えないだろう。筆者が話した欧州の政府・軍首脳らがプーチン大統領への強い不快感を口にしたことが、欧州で高まるロシアへの苛立ちを物語っていた。

 ■なぜこんなことに?
なぜ、こうなってしまったのか。
その原因を考えるとき、明確に浮かび上がるのは、オバマ大統領とプーチン大統領のシリア内戦への個人的コミットメントの濃淡である。
オバマ大統領は一貫してシリア内戦への介入に消極的だった。一昨年9月に空爆に踏み切ったのは、過激派組織「イスラム国(IS)」の支配地域が急拡 大して地域の混迷が深まり、アメリカへのテロの脅威も増したからである。オバマ大統領は、シリア内戦への対応を対ISの視点でしか捉えてこなかったように見える。
プーチン大統領のシリア軍事介入の在り方が道義的、人権の観点から厳しく非難されなければならないことは言うまでもない。それでも、プーチン大統領がシリア情勢の行方で主導権を握り、そのことが国際秩序を大きく揺さぶっている事実は動かせない。
ここに至った経緯を振り返るとき、米露両指導者のシリア問題に対するコミットの濃淡が、事態を深刻化させてしまったとしか思えないのである。

笠原敏彦(かさはら・としひこ)
1959年福井市生まれ。東京外国語大学卒業。1985年毎日新聞社入社。京都支局、大阪本社特別報道部などを経て外信部へ。ロンドン特派員 (1997~2002年)として欧州情勢のほか、アフガニスタン戦争やユーゴ紛争などを長期取材。ワシントン特派員(2005~2008年)としてホワイ トハウス、国務省を担当し、ブッシュ大統領(当時)外遊に同行して20ヵ国を訪問。2009~2012年欧州総局長。滞英8年。現在、編集委員・紙面審査 委員。著書に『ふしぎなイギリス』がある。
 ≫(現代ビジネス:オトナの生活・賢者の知恵―笠原敏彦)

長い20世紀――資本、権力、そして現代の系譜
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