世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●今日のひと言 自民に投票イコール安倍晋三を支持すること

2014年11月30日 | 日記
地政学の逆襲 「影のCIA」が予測する覇権の世界地図
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●今日のひと言 自民に投票イコール安倍晋三を支持すること

 たまには、近く行われる衆議院選挙について少し語ってみようと思う。現時点では、安倍自民与党の立場が逆転するような現象が起きるとは思えない世間の「空気」があるようだ。以下は共同通信の直近の世論調査の数値だが、有権者の意識構造に逆説性がみられる。このような二面性のある答えが出ると云うことは、政治への期待度が酷く低下していることを物語る。

≪ 内閣不支持が逆転、共同世論調査 比例自民28%、民主10%
  共同通信社が28、29両日実施した衆院選に関する全国電話世論調査(第2回トレンド調査)によると、比例代表の投票先政党で自民党は28・0%と前回調査(19、20日)から2・7ポイント増加した。民主党は10・3%で0・9ポイント増にとどまった。内閣支持率は43・6%、不支持率47・3%で、不支持が支持を逆転した。
 望ましい選挙結果について「与党と野党の勢力が伯仲する」が53・0%と過半数で、前回に比べ微増した。
 第2次安倍政権の経済政策で景気が良くなったと実感しているか聞いたところ「実感していない」が84・2%を占めた。 ≫(東京新聞・共同)


 比例代表の投票先が、自民と民主では、トリプルスコア―になっている。安倍内閣は嫌だが、自民党以外の政党に政治を任せる気もないと云うのが、まさに現状なのだろう。メディアの調査は、どこでも似たような傾向があり、選挙で自民党以外に入れても無駄になるからね、と諭されているようにも思える。自民党では、今回の選挙の低投票率は間違いがないと見込んでいるので、確実な基礎票と組織票を持つ自民や公明に有利な上、盛り上がる争点が何なのか、まったく国民の側に意識の共有がないのである。

 争点がないと云うのは間違いで、争点だらけなため、どれを争点に絞れば良いのかが判らない状況なのだろう。外交は、金のバラマキに奔走しただけで、肝心の中国、韓国、米国から、まともな人扱いされていない。これは、日本人の本質を誤って世界に喧伝することになっている。

 特定秘密保護法で、基本的言論の自由が脅かされるリスクを抱えたし、個別的自衛権で対応可能な自衛隊の存在を、米軍と共に戦う集団的自衛権容認で、最終的には防衛か侵略かの峻別が難しい状況において、安易に戦争に参加する危険を抱えた。政府支出の立地自治体補助金、放射能廃棄物の最終処分場未決のまま、原子力は目先の勘定では安いと云う幼稚園児を騙すような形で、原発政策を元の木阿弥化させようとして、強力な原発村の再構築を推進している。

 トドメがアベノミクスだが、これも笛吹いて踊ったのは海外ファンド及び国内金融企業、一部個人株主の利益は誘導したが、実体経済には、何ひとつ貢献をしていない。いや、貢献どころか、公共事業専用の雇用を増大させ、あたかも雇用が改善したと嘯き、一部大企業に、減税とのバーター取引で、賃金を上げさせたが、極めて一部が実施しただけで、9割の生活者の実質収入は減少させた。安倍晋三と云う人は、負の現象は切り捨て、都合の良い数値をつまみ食いして強弁するのだが、政治にニヒルになってしまった国民には、どうでもいい言葉となり響くのかもしれない。

 連合の組織力は下がる一方で、農協などの力も衰えてきた。より一層、利口に振舞い、イデオロギーとか信条とか、ややっこしいものはかなぐり捨て、長いものに巻かれるふりをして生きていくのが賢明だと云う世間の「空気」を象徴するような選挙になる可能性がある。そうなると、国民のフォーマルに対して応じる答えと、本音との間には大きなギャップが生まれるのだが、それを忸怩たる思いと捉われない国民性が醸成されているとも言えるのだろう。

 この流れを読めば、民主党の枝野幹事長ではないが、「せめて100議席」は得たいと云う発言に表れるように、小政党から、中政党程度になって、政治の場での存在感を示したいと云った、腰の抜けた発言になるわけだが、現状を分析する限り、そのようになるのだろう。つまり、政権選択の選挙ではなくリハビリの途中であると言い放ったわけである。ある意味で、大変正直なコメントだが、それ程民主党内部の病巣が改善されていないと露呈したようなものである。

 このような現象の一番の元凶は、政権交代し、政権政党になった時の民主党があまりにも無様だった事に起因するのだと思う。鳩山・小沢が官僚(検察含む)とメディアに引き摺り下ろされた後は、もう阿鼻叫喚のような政権内の足の引っ張り合いで、学級崩壊の態を晒したのだから、その後遺症は、おいそれとは拭えないだろう。それゆえに、辻褄の合わない世論調査の数値が出てくる。自民党に当面政権は任せたいが、安倍晋三はどうも、と云うのが、おそらく「空気」なのだろう。

 しかし、安倍首相が「信なくば立たず」と発言しているので、自民党を勝たせれば、意に沿わなくても安倍晋三を指示したことになり、彼が内閣総理大臣として、今後4年間、好き勝手に、日本のカジ取りをする信任を与えたことに他ならないのだ。筆者は個人的には、どこまで酷いことをするのか見てみたい衝動があるが、あくまで個人的趣味の範囲だ。生活者にとっては、驚くべき塗炭の苦しみを味合わされるだろうから気の毒だ。「自民党を勝たせる=安倍政権の継続」となる。

 アベノミクスの副作用と後遺症が襲ってくる今後の4年間だが、その出鱈目な方向性の政治の修復には、20年、30年掛かるのではないかと思われる。経済成長させようとして、緩みきった金融の蛇口を閉じることは、三重野康(平成の鬼平)が急激な金融引き締めをして、過度な政策をとることで、バブル崩壊後の日本経済を徹底的に痛めつけた事と同じことが繰り返されるに違いない。

 ありもしない「成長神話」を捨てきれないのは、何も経済界や経済学者だけではなく、無謬的に成長こそ善とする世代層と、グローバルな市場を開拓することで、勝ち組になりたいと思うアグレッシブな若い連中の、応援も背中に受けるので、成熟経済や往路の哲学とか、聞いていて楽しくないのだろう。気持ちはわかるが、それは事実から目を背けている、原発推進者とあまり本質的に変わらないような気がする。米国依存にしても、いまの日本では「国是」に近いものであり、米国依存から自主的に出た場合にはどうなるのか、その時の為には、どのような選択肢を残しておけばいいのか、議論さえしない。トンデモナイのひと言で、意見を封殺することが思考停止のはじまりだ。

 民主と維新が選挙後に統合するくらいの期待は僅かに残されているが、民主も維新も2大派閥があるようで、四つの閥が、二つになれるのが関の山で、「オリーブの木」にまで至るとは思えない。やはり、ここは過酷事故に相当する大ショックが起きない限り、日本人が自ら考えるとは思えないし、投票率80%のような政治が起きない限り、国民不在政治は続くのだろう。筆者が死にそうな年齢の時に起きるかどうかだろう。30年後に愉しみを残しておくか(笑)。

孤独の価値 (幻冬舎新書)
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●1億金融資産で富裕層? それよりも資産ゼロ3割がヤバイ!

2014年11月29日 | 日記
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●1億金融資産で富裕層? それよりも資産ゼロ3割がヤバイ!

 昨日の朝日が「金融資産1億円超、100万世帯に ゼロは3割」と云う見出しの記事を書いていた。ここで云う“富裕層”と云う概念の基準値が正しいのかどうか判らなかった。なぜなら、貧相な筆者でも、その資産額が1億円を超えているからである。筆者が富裕層と呼ばれるのであれば、日本の富裕層と云うものは、なんとも貧乏臭いものである。

 Wikipediaによると、富裕層(ふゆうそう)とは、セグメンテーションのひとつであり、一定以上の比較的大きな経済力や購買力を有する個人・世帯を指し示す。国際的に確たる基準はないようで、各金融機関等により、少しずつぶれているようだ。わかり易いので野村総研の基準だと、「超富裕層(世帯の純金融資産5億円以上)」、「富裕層(同・1億円以上、5億円未満)」に分類した調査を報告している。この報告によると、2011年の富裕層マーケットの規模は76万世帯、純金融資産の総額は144兆円、超富裕層マーケットの規模は5万世帯、純金融資産の総額は44兆円である。また、団塊の世代の定年退職、および少子高齢化を背景とする遺産相続の増加に伴い、今後しばらくは富裕層マーケットが拡大していくという予想が示されている。

 なぜ貧乏臭く感じるかと云うと、現在の自主介護とか、年金受給状況を勘案すると、子供のいない老々夫婦は自助で「有料老人ホーム」に入居しようと考える可能性がある。現に、筆者も20年後は、そのような選択をする可能性が高いのである。ところで、極端に贅沢な有料老人ホームを想定しなくても、入居時に3000万円程度は必要になる。夫婦だと5~6000万円が必要になる。また、運営管理費が月額で20万~30万程度請求されるので、受給時に支払われるであろう年金を月割りしても、まず不足が生じる。

 その不足分を、蓄えから切り崩すことになる。何歳で死ぬかが分かっていれば別だが、そういう事はないので、どうしても90歳以上を死期として設定する。入居の月額費用も不足であり、この上に、医療、介護割増、衣服費、娯楽費などは別途である。このように考えていくと、夫婦で月々15万程度の不足が生まれる。年間180万円の不足である。10年で1800万円、20年で3600万円。30年、108歳まで生きたら5400万円不足になる。まあ現実には、10年目以降は当初の10年とは、不足の費用も減るだろうが、理屈上はそうなる。

 つまり、日本人の富裕層基準程度では、有料老人ホームで余生をのんびり過ごすには、1億円の純金融資産を持っていても安心できないと云うことだ。おそらく、筆者の感覚では、純金融資産が2億円程度ある場合に、リッチな老後が約束されるわけで、1億では安心など一切できないのだ。金融関係者の見積もりでは、今後少子高齢化の恩恵で、遺産相続の額が多くなると予測されるので、富裕層の増加が見込まれる、となっているが、これも怪しい。実は意外にも、高齢者と云うもの、現預金を持っていない事が多い。

 良くて1千万円程度で、これでは一軒家を相続した場合、荷物の整理費用、解体更地費用で費消される可能性がある。特に、40年以上両親が暮らした家などは、その荷物の整理だけでも300万近くする場合もある。両親の自慢の庭園の松の木も、奇怪な形状の岩も、トンデモナイ荷物になる。大木いっぽん**万円の見積もりに目を丸くするだろう。両親にとって、自慢の家、家財、庭のすべてが、実は足を引っ張るのだ。

 ところが、現在80歳、90歳の人々にとって、焼け野原のマイナスから出発した人生なのだから、家も土地も家財も庭も、すべて遺産として鼻高々で遺すわけである。特に、キャッシュで遺そうが、現物で遺そうが、同じ価値だと思う傾向がある。ゆえに、美田を残さずではないが、これ以上遺すのは子供たちのためにも善くない、と思うかどうか別にして、意味なくサプリメントなどで費消している。多くの場合、購入したサプリメントの半分も飲んでいないことが多いようだ。

 特養に入れば良いだろうと云う意見もあるが、宝くじに当たるような確率だし、最近では入居基準が制限されているので、(特別養護老人ホーム(特養)は、現在は要介護1から入所する資格がありますが、これからはより介護の必要性の高い「要介護3」以上に限定されます。厳格化の対象は新規の入所者になるため、現在入っている要介護1~2の方はそのまま。)なので、入居できるイコール「要介護3」以上になっていると云うのだから、目出度いのかどうかも判らない。

 公共の老人ホームが根本的にない。自宅介護であるとか、民間で出来ることは民間での前向きな発想に名を借りて、実は福祉の投げ出しが行われているのだろう。国の老人ホーム運営が財政上問題があるとしても、プワービジネスが成り立つとか、民間運営による暴利の貪りなど、有料老人ホームの水準は、ピンキリで野放しに近いと認識している。こういうものこそ、一定の規制は必要なわけで、老人各位の自主的判断と言われても、それは過酷すぎるだろう。

 朝日の記事によると、高額品の販売は好調で、美術品や宝飾品、貴金属、高級時計、海外ブランド品が売れていると言うが、少々怪しい伝聞な気がする。実際問題、筆者と同レベルにいる連中で、そんなバブルな買物をしている連中はいない。あぶく銭が入った連中であり、決して富裕層の動きとは異なる。それよりも、金融資産ゼロ家庭が3割に達した事実が一番重要だ。精々5%程度だった金融資産ゼロ家庭が3割になった事が忌々しいわけだ。彼らが、働かず浪費した末と云うのではないのだから、悲惨なわけである。これがアベノミクスであり、働けど我が暮らしは悪くなるばかりの世の中は、今以上に心が荒み、人を憎む国民が増えることを予感させる。そんなこんなを考える今日この頃だ。


≪ 金融資産1億円超、100万世帯に ゼロは3割
 安倍政権下で進んだ株高で、富裕層が増えている。預貯金や株式、投資信託などの金融資産を1億円以上持っている「富裕層世帯」は、2013年に初めて100万世帯を超えた。一方で、資産を持たない「ゼロ世帯」も3割と高止まりしている。
 富裕層の規模は、野村総合研究所が1997年から2~3年に1度、推計している。資産から負債を引いた純金融資産保有額をみると、13年は1億円以上が100万7千世帯で、前回の11年より2割強増えた。全世帯に占める割合は約2%で、50世帯に1世帯は「富裕層」がいる状況だ。
 資産額の増加は株価の値上がりが主な理由だ。13年末の日経平均株価は1万6291円31銭で、11年末の2倍近い。富裕層の資産規模は、13年に計241兆円となり、11年より28・1%増えた。株式や投信をたくさん持っていた世帯ほど、恩恵を受けている。
 野村総研は「リーマン・ショックや東日本大震災後の株価低迷で一時減っていた富裕層が、アベノミクスもあって回復してきた」とみる。
 お金持ち向けのビジネスは盛り上がりを見せており、中堅の岡三証券は、東京・日本橋に富裕層に対象を絞った豪華な店舗を12月に開く。「投資意欲が高い人たちを取り込んでいきたい」という。野村証券や大和証券など大手証券各社も、富裕層向けの運用相談や相続対策に力を入れる。
 百貨店の高額品の販売は好調で、日本百貨店協会の調べでは、美術品や宝飾品、貴金属の13年の売り上げは、12年より15・5%増えた。高級腕時計や海外ブランドの衣類も人気で、資産がふくらんだ富裕層の消費意欲が刺激されている。
 輸入高級車の販売も伸びている。日本自動車輸入組合によると、今年1~10月に売れた1千万円以上の輸入車は、前年の同じ時期に比べて5割増えた。
 日常の生活費以外に預貯金や株式といった金融資産を持たない世帯(2人以上)は、金融広報中央委員会(事務局・日本銀行)の今年6~7月の調査では30・4%あった。過去最高だった昨年の31・0%に次ぐ高水準だ。
 全国8千世帯を調べた推計調査だが、金融資産ゼロの割合は、1970~80年代には5%前後にとどまる年が多かった。バブル崩壊後から増加傾向で、03年に2割、昨年は初めて3割を超えた。
 1人の世帯に限ると、この割合は38・9%に上がる。物価上昇分を差し引いた実質賃金が伸び悩み、給料が少なめの非正社員に収入を頼る家庭が増えていることも背景にありそうだ。
 ファイナンシャルプランナーの藤川太氏は「若者を中心に非正社員が増えた。正社員でも住宅ローンなどを抱えて貯蓄できない世帯も多い」と分析する。 ≫(朝日新聞デジタル:真海喬生、鈴木友里子)

内田樹の大市民講座
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●経済成長とグローバル化を信奉し、「くに」失う哀れなり

2014年11月28日 | 日記
昭和編4昭和五十・六十年代 ゆらぐ成長神話 (池上彰の現代史授業??21世紀を生きる若い人たちへ)
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●経済成長とグローバル化を信奉し、「くに」失う哀れなり

 まあ安倍の狂気のファシズム政権でなければ実行しえない言論統制を、公式な形で表明してくるとは驚きだ。評論に値しないので、語りようもないが、選挙報道の公平中立を求める要望書(日米の年次改革要望書と同じで、命令の一種)をぬけぬけと出してきたのには驚く。しかし、この要望書に嬉々として従うメディアが続出すると云う危惧だけは残る。賞味期限切れのデモクラシー、そして資本主義。どうすべきは、考えているが何も浮かばない今日この頃(笑)。「公平中立」なんてさ、主観的問題だからね、安倍自民の有利になるよう報道せよと同じなんだよ。

 以下のコラムはだいぶ前にチェックしたのだが、紹介する時間がなく、いまに至った。多忙なこともあり、コラムも数日サボっているが、今日は「小さな巨人」つまりは、日本らしい、山椒は小粒でピリリと辛い。それでこそ、ユーラシア大陸の辺境の島国、我が国の運命であり、個性であり、歴史的行動美学であることを認識したいものである。米国の真似をしても、どこまで行っても猿真似に過ぎない。そんな真似事は韓国さんに譲りなさい。

 内田樹氏が“対米従属を通じての対米自立”という戦後日本の国家戦略は、たしかに存在した。筆者は、面従腹背な壮大な戦略的欺瞞(矛盾しているようでしていない)があったわけだが、戦後の焼け野原や死者の声を聴く歴史観を忘れてしまった現在の政治家、官僚、経済人、学者、ジャーナリズムに変容してしまったのだと思う。植民地のような顔をして、いずれ、完全な独立を勝ち取る。この精神は、当初はあったに違いない。しかし、50年も経てば、そんな大それた思惑よりも、長いものに巻かれている方が、楽ちんだと知らず知らずに、文化が生まれてしまうのだろう。参考のコラムの檄にも、相通じる視点だと思われる。


≪ 日本企業よ、「小さな巨人」でいいじゃないか
    欧米流の規模追求と決別、日本らしい経営の姿

 ■日本の「世紀の大合併」が霞んだ アルストムを巡る仁義なき規模追求の戦い
「One giant and others」  これはドイツの官僚が発した一言だ。
 一方、日本の経産省の官僚はこう呟いた。
「これでは、我が国の世紀の合併が霞んで見える」
 ゼネラル・エレクトリック社(GE)とシーメンス・三菱重工連合による、アルストムのエネルギー部門の買収合戦は、記憶に新しい。
 GEの独り勝ちを何としても阻止したいドイツのシーメンスは、日本の三菱重工に声をかけた。日々、ライバルとして戦っている両社も、このときばか りは盟友となった。結果はGEに軍配が上がり、エネルギー部門だけで7兆円、ガスタービン単体でも3兆円という巨大企業が誕生した。
 このときドイツと日本の関係者が発したのが、冒頭のセリフである。
 このGEの大買収劇に先立つこと、わずか半年前。三菱重工業と日立製作所が、火力発電部門の合併を決めた。記者会見に臨んだ三菱重工の大宮社長は、「日本企業同士が国内外で消耗戦をするよりは、一緒に海外の競合と戦うことが重要だ」と語った。
 名門同士がプライドを捨て、志を持って世界へと歩み始めた歴史的一歩は、世紀の大合併と報じられた。新会社の売上高は約1.2兆円、世界の巨人であるGEやシーメンスの背中が見えた瞬間でもあった。
 しかし喜びも束の間、わずか半年後にはGEがアルストムのエネルギー部門買収を実現させて、再びその差は開いてしまった。日本企業の大決断さえ小さく感じられた「欧州夏の陣」だった。
 三菱重工の売上高は約3兆円。太平洋戦争中はかのゼロ戦を創り出し、日本最高の技術者集団として日本の産業界を牽引してきた企業だ。その企業がさも「負け組」のように捉えられてしまう「仁義なき規模追求の戦い」とも言える。

 ■赤字を垂れ流す一人負けのソニーは
  業績を犠牲にして改革に専念できないか?
 三菱重工を日本が誇る重電企業の雄だとすれば、弱電業界の雄はソニーであった。「ウォークマン」は新しい生活スタイルを世界に提案した。かのス ティーブ・ジョブズもソニーフリークだった。しかし、世界中を虜にしたソニーがこの5年間、もがき苦しんでいる。期初の業績見通しでは積極的な目標を掲げるも、期中で業績の下方修正を繰り返す。メディアにとって、ソニーのトップやCFOが深々と頭を下げる映像はデジャブのようだ。
 なぜ1年や2年間、業績を犠牲にして改革することが宣言できないのか。大きな病を患った人が、社会復帰に時間を要するのは当然だ。ソニーは大病を患った。大きな手術が必要だ。日常生活に戻るには時間がかかる。そう宣言しても良いのではないか。
 中途半端な治療で復帰しても、入退院を繰り返すだけだ。じっくり休みをとって治療に専念すべきだ。幸いなことに、金融、音楽、ゲームと優秀な子どもたちがいるではないか。ここはしばらく子どもたちに甘えて、親は治療に専念してもよいのではないか。
 芳しくない業績を報告したり宣言したりすることに、企業はためらいを感じるようだ。わからないでもない。しかし、誰もがわかっているはずだ。山が あれば谷はある。明けぬ夜もなければ、沈まぬ太陽もない。むしろ、「今年は仕込みの時期」と宣言する方が説得力もあるし、信憑性も高いはずだ。  成長とは負荷だ。スポーツに喩えればトレーニングと一緒だ。高負荷をかけ続ければ、体に影響が出る。休憩は必要だ。その休憩が、将来の飛躍を約束する。
 成長を我慢することも、成長のために必要なはずだ。
 一方で、こんな声が聞こえてくる。
「松本さん、それは理想だよ。仮にそんなこと言ったら、株価は下がるし銀行への説明がつかない」
「でも、結局下方修正するなら同じでしょ?」
「違う。計画が大切なんだよ。『やる前から弱気でどうするんだ』と搾られるよ。無理でも前向きな計画を出せば、通るんだ。現実的な計画を出すと、『その程度であれば、あなたにお願いする意味がない』とまで言われるんだよ」
「つまり、こうですか。実現困難な計画であっても立てることが重要である、と」
「そこまで極端なことは言わないし、その現実と理想のギャップを埋めるために経営は仕事をするわけだからね。でも本音を言えば、成長路線を脇に置いて、じっくり組織の改編や伸び切ったゴムのようなSCM網を再構築したいところだよね」
「すればいいのでは?」
「それは難しい。世の中には、『成長しなくてはならない』『大きくならなくてはならない』という論拠のない暗黙の前提条件のようなものがあるよね」
 社会に蔓延する「成長は是」という暗黙の前提条件。いつ誰が決めたのだろうか。それとも、人間の性なのか。

■世の中に蔓延する
  成長を是とする暗黙の前提条件
 意外な例を紹介しよう。以下はフォルクスー・ワーゲン(VW)グループの売上と利益一覧だ。 *表省略 VWは、生産台数でトヨタとトップを争う会社だ。その売上と利益分布を見てみると、グループの利益の6割は、生産台数で言えばグループ全体のわずか 1割にも満たないアウディとポルシェの2社で稼ぎ出している。利益確保のため、シェア確保のためにひたすら拡大を続け、車種や企業間を超えた共通化に取り組むが、実態としてブランド力がありエッジの効いた小さな巨人たちが、屋台骨を支えている。
 かたや、最近話題の自動車メーカー、テスラモーターズ。
 キーを持って接近すると、ドアハンドルが「ウィーン」と自動で顔を出す。ゴチャゴチャしたボタン類は一切存在せず、巨大なタッチパネルがセンターコンソールに鎮座する。まるで、映画の世界から飛び出したような車だ。
 一般的に電気自動車は、デザイン性よりも機能性重視だ。だがテスラは違う。見た瞬間、「マセラッティー?」と思うような高級感のあるボディだ。
 電気自動車は加速が弱いという常識を覆す加速をする。時速100kmに到達するまでに、低位モデルで6.2秒、中位モデルで5.6秒、上位モデル では3.4秒だ。GT-Rの2秒台には及ばないが、市販のガソリン車のスポーツカータイプで5秒から6秒であることを考えると、十分なパフォーマンスだ。

 ■わずか3万5000台で注目されるテスラ
  中堅でも高利益率のマツダとスバル
 一時期ハリウッドのセレブたちが、こぞってプリウスに乗り換えた。「環境に優しい行動がお洒落」という価値観が広がり、プリウスの大ヒットのきっ かけになった。最近は、テスラが人気だという。「目指せ、第2のテスラ」……そんなフレーズが出てくるほどの存在になってきた。
 しかし、年間生産台数はわずかに3万5000台だ。世界の自動車会社が年間1000万台を目標にし続けてきた事実に鑑みれば、まだ騒ぐほどの脅威ではないはずだ。しかし、世界中の自動車メーカーや感度の良い消費者は、逐次テスラを注視している。
 テスラモーターズのCEOであるイーロン・マスク氏は、「世界を電気自動車中心の社会へと導くことで、21世紀の最も有力な自動車会社になる」と、自社のミッションステートメントで宣言している。
 最も「巨大」な企業になろうとしていない。最も「有力」な企業になろうとしているのだ。
 日本に目を移すと、マツダとスバルが絶好調だ。スバルは日本の自動車会社で唯一利益率が10%を突破している。販売台数は最下位の第8位だが、利益は第4位だ。マツダの「デミオ」は、今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。スバルとマツダは共通点が多い。
 共通点の1つ目は、技術者の意地が商品を通じて消費者に訴求されている点だ。時代は環境重視の自動車へと大きく軸足を移し、エンジンはモーターに なりつつある。各社がこぞってこの流れを踏襲した車づくりにシフトしているなか、スバルとマツダはエンジンにこだわり続けた。「エンジンが同じになったら、カーエンジニアをしている意味がない」そんな技術者の意地が聞こえてきそうな車を開発している。
 スバルは水平対向エンジンと独自の空力設計により、地面に吸い付くような走りをする。この走りが車好きを魅了する。日本では「スバリスト」、アメリカでは「スーバ」と呼ばれるスバルフリークが存在し、スバルのブランド価値を一層盛り上げている。
 マツダは不可能と言われていた領域に挑戦し、世界最高性能の省燃費ディーゼルエンジン「スカイアクティブ」を実現した。「車は手段ではない。楽し むものだ。目的だ。モーターでは走りを楽しめない。地球に優しく走る喜びも感じられる車をつくる!」そんな技術者の意地が、ディーゼルエンジンでハイブリッド車並みの燃費を実現した気がする。
 結果、両社とも「移動手段としての車」ではなく「嗜好品としての車」をつくっている。思うに、スバルとマツダのエンジニアは、本当に車と技術が好きなんだと思う。

 ■その孤高なる技術者魂の裏側
  量の追求よりも独自性を追求する小さな巨人
 2つ目は、国内生産へのこだわりだ。競合他社が揃って海外生産比率を高めている中で、両社とも70%以上を国内で生産している。
 そして3つ目は企業規模だ。大規模ではなく、むしろ小規模だ。大規模になるとその規模を維持するために、生産台数を確保しなくてはならない。する と、ボリュームゾーンと呼ばれる最も競争が激しい市場で戦わなくてはならない。この領域は、常にコモディティ化と背中合わせだ。
 スバルやマツダは企業規模が小さいので、自分たちがターゲットとして絞り込んだ市場で評価されれば、採算が取れる。概して、企業は規模拡大や生産 台数ばかりに目が行きがちであるが、この2社は自社が究めたい技術や訴求したい顧客を見失ってまでも、それを追い求めようとはしない。
 スバルの社長は、インタビューで「売れるからと言って大幅増産をしない。微増産が良い。多少品薄感が良い」と答えている。「成長できるならドンドン成長しよう」などという考えはない、自分たちの価値観を優先している。

 ■「失われた20年」など
  そもそも日本に存在しない
 次は、日本と米国、英国、ドイツの株式市場の推移を表したものだ。  日本以外は、いずれの国もいまだに右肩上がりを維持しているように見受けられる。右肩下がりなのは、日本だけではないか。やはり日本は「失われた20年」なのかと思えてしまうが、実は筆者は違う見解を持っている。
 そもそも、「失われた20年」など存在しない。
 戦後の高度成長期が特殊だっただけだ。朝鮮戦争という特殊な状況や、敗戦により全てがゼロリセットされたことで、ソニーなどの今で言うベンチャー が育ちやすい環境や、アメリカがアジアの要所として日本の存在感を高めたいという思惑など、多様な特殊要因が重なり合って、日本としては過去に例がない高成長期が訪れた。
 その特殊要因がなければ、日本は粛々と成長をしていたはずだ。バブル崩壊によって、特殊要因による特需効果の賞味期限が切れただけだ。よって正確 に言えば、バブル崩壊から現在までを「失われた20年」と呼ぶのではなく、戦後からバブルまでの成長期を「奇蹟の50年」と呼ぶほうが適切な気がする。
 今、我々は気づくべきではないか。欧米流の価値観をインストールして大規模や大量を追求する経営だけではなく、日本に適した経営スタイルが存在す ることを。大なる組織をぶんぶん振り回し、積極投資を重ねて、スピード勝負でアメリカ的な土壌で戦うことは、日本人には適さないのではないか。
 日本の誇るソニーや松下電器産業(現パナソニック)が、激しい成長競走の渦に巻き込まれ、サムスンなどといった海外企業のスピードと資金力に圧倒され、疲弊し、憔悴し切った姿から、何を学ぶべきだろうか。
 そもそも日本は、世界とは一線を画して独自の歴史を歩み続けてきた。「ユーラシア大陸の東の果ての島国」という辺境の地としての地理的特殊性が、独自の価値観や文化を育んできた。

 ■なぜわざわざ欧米のマネをするのか?
  筆者の考える日本らしい経営の軸
 日本は、存在自体が独自で稀有なのだ。わざわざ、欧米流の「大規模」「大量」「勝ち負け」の価値観に歩み寄る必要はなく、独自の価値観や土壌で成長していくことでも十分成功できるし、その方が理に適っているのだ。むしろ日本の軸を世界に広めることが、世界中に良い価値観を蔓延させ、好循環へと誘うことができると考える。

筆者の考える日本らしい経営の軸を、次に挙げる。
「大」よりも「小」
「量」よりも「質」
「面」よりも「線」
「効率」よりも「手間暇」
「論理」よりも「感性」
「組み合わせ」よりも「すり合わせ」
「速度」よりも「熟成」
「儲け」よりも「こだわり」
「成長」よりも「貢献」

 規模=強さは否定しない。ある面、正しい。ただし、正しいから適しているとは限らない。肥大化する組織の中で歯車のように働くよりも、顔が見える 規模の組織を心がける。また、変化に対して俊敏に小回りよく対応する方が、日本には向いている。すでに大なる組織の場合は、大きいながらも「小なる」を常 に心がけるのが良い(「大」よりも「小」)。
 新興国向けに「量」が求められる際に、経営合理化のために品質も落とすべきではないかとの議論もあるが、本当に「質」を落とさずに「量」が確保で きないならば、やるべきではない。「質」を維持しながら「量」が確保可能な新しい方法が発見されればやれば良い。重んじるべきは「質」である(「量」より も「質」)。
 全方位的なラインナップを揃えるのではなく、自社の強みが活かせるシリーズに絞り、その領域で世界トップを狙う。点では弱すぎる(「面」よりも「線」)。
 行き過ぎた「効率」は単調かつ創造性を阻害する。「手間暇」かけて取り組む姿勢も尊重する。この文化が、背後から忍び寄るライバルよりも先んじることとなる(「効率」よりも「手間暇」)。
 何事も「論理」的に判断すると窮屈だ。ときには、「論理」で判断できない肌感覚的な判断の方が、結果につながることは多い。ソニーの「ウォークマン」などは、その最たる例だ(「論理」よりも「感性」)。 「すり合わせ」で編み出されたモノや技術が、成熟の過程で「組み合わせ」へと進化する。常に先を走るには、「すり合わせ」にこだわるべきだ。ただし、戦略的にこの両者をハイブリッドする姿が最近はトレンドだ(「組み合わせ」よりも「すり合わせ」)。

■先に来るべきは儲けよりもこだわり
  松下幸之助も唱えた「先義後利」の精神
 スピードは否定しない。しかし、時間をかけることでしか生み出されない極みがある。ワインなどはわかりやすい。これからの日本は、コストに見合う高い付加価値が求められる。瞬間的な成功に目を奪われると、5年後、10年後の失速が待っている(「速度」よりも「熟成」)。
  「それをやれば儲かるのか?」は、企業においては大変重要な問いだ。だが、「儲け」を前面に押し出すことは虚しい。「この技術はやりたいか?」 「好きか?」「いけると思うか?」――その感性を信じた上で、いかにその技術をキャッシュ化するかを考える。先に来るべきは「儲かる」ではなく「こだわ り」である。これは、技術者の意地のようなものだ(「儲け」よりも「こだわり」)。
 世の中には「成長=是」という暗黙の前提条件が漂っている。「成長」自体は否定しないが、先に存在すべきは「貢献」だ。最近は、「お客様第一」す ら利益獲得の手段と化している。本気で「お客様のために〇△をしたい」ではなく「お客様のためを考えることが儲けの近道だ」となっている。本気の顧客主義ではなく、裏のある顧客主義だ。
 松下幸之助氏は、儲けよりも先に社会貢献や顧客を考えていた。事業=儲けではなく、社会の課題を解決することが事業であった。洗濯機や掃除機や冷 蔵庫は、儲かるから開発したのではない。お母さんが毎日買い物に行かなくて済むように、冷蔵庫を開発し、毎日の洗濯や掃除にかかる時間から解放してあげたいから、洗濯機や掃除機を開発したのだ。「先義後利」の精神だ(「成長」よりも「貢献」)。

 ■日本らしい経営を目指せばいい
  そして、先進国から成熟国へ
 現代は物質消費文明だ。モノを造り、販売し、購入し、何をするにもお金がかかる。金銭的に裕福な人に、勝ち組的な雰囲気が漂う。お金が万国共通の 物差しとして扱われる以上、わからなくもない。だが、誰もが気がついているはずだが、全ての資源は有限だ。世界中の人々が牛肉を食べ、鶏肉を食べ、スマホを購入し、自動車を運転したら、地球は悲鳴を上げる
 日本に求められるのは、行き過ぎた物質消費文明がつくり上げた様々な課題を解決する「課題先進国」としての姿だ。言うなれば、「先進国」から「成熟国」への進化である。
 超大企業になり、社員が社長どころか役員とも酒を酌み交わしたことがないような組織が幸せとは、筆者は思えない。儲かることが、社員にとっての幸せとは限らない。自己の成長や仕事の充実、人間関係の温かさなどを兼ね備えた企業こそが、正しい姿なのではないか。
 日々難しい開発に挑戦し、エンジニアとしての知的な喜びを感じる。組織の歯車ではなく、大切な仲間と共に自覚と実感を持って仕事に携わる。そんな 働き方ができる適正規模と適正速度は、あるのではないか。そのような企業を目指すことが経営者としての使命であり、その実現こそが経営者冥利に尽き、社会への真の還元につながるのではないか。
 株主還元ばかりが貢献ではない。もちろんそれも大切だ。しかしこれからは、それらに加えて知識や知恵、安心や安全、そして喜びや充実など、アナログで温かな価値観を社員や地域に還元していくことが、求められていくのだろう。
 日本食をはじめ日本文化や日本精神は、世界中から高い評価を受けている。その価値観に立脚した企業経営の姿は、世界中から賞賛を持って受け入れられるだろう。これからも、こだわり持った価値づくりを通じて世界に貢献していこうではないか。
 僕らには僕らの企業の姿がある。日の丸製造業よ、勇気を持って「小さな巨人」を目指そう。 ≫(ダイヤモンドオンライン:経営・戦略:松本晋一 [株式会社O2/株式会社XrossVate/株式会社安田製作所代表取締役]))

あなたに褒められたくて (集英社文庫)
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●【主論と裏読】金融世界では「アベノミクス2」に賛辞?

2014年11月25日 | 日記
絶望という抵抗
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●【主論と裏読】金融世界では「アベノミクス2」に賛辞?

 二期連続GDPマイナスを記録したアベノミクスの第二弾「アベノミクス2」なる言葉が金融界で喧伝されている。7-9月期は急回復、消費増税の影響軽微を社論に掲げていた日本経済新聞が、青菜に塩になるかと思いきや、こともあろうか「アベノミクス2」(エクソシスト2じゃないぜ!)と云う言葉を創り、株式相場を煽りに煽っている。

 幾ら贔屓目に見ても、アベノミクスは大失敗政策で、尚且つ後戻りする時、劇薬を飲みなおさなければならないのだから、悲劇的だ。原油価格が暴落が、円安を考慮に入れても、日本の産業全体にプラスの貢献をするのは判っている。しかし、円高対策を打ちだし、海外拠点をわんさと造ってしまった製造業が、今度はUターンして、国内に製造拠点を作る機運があるかと言えば、実はあまりない。全世界が供給不足の市場であれば、それも可能だが、世界全体がデフレ傾向をみせて、市場の拡大は鈍化しているのだから、その必要性に至る事はないだろう。

 それに、単純労働者が減っていく日本。購買欲も高齢化で縮小気味なのだから、基本は消費地の近くで生産する方が理に適っている。為替相場が、これだけ投機的動きをするのなら、円安、円高準拠で企業経営を考えることは意味をなさない。原油価格も、対ロ制裁の一環である可能性が高く、いつ梯子が外されるか判ったものではない。筆者が経済成長にネガティブ論者だと云う非難も耳に入るが、事実を眺めれば、当然そういう真実が見えてくるわけで、我が国の経済が疲弊すれば良いとニヒルに言い放っているわけではない。

 特に悟りの境地と云うものでもないが、成長させようとする分野の方向性が総花的、折衷的で腹が座っていない。安倍与党に対峙すると云う民主党もマニフェストを発表したようだが、やはり一番抜けているのが魂の部分なんだね。自民も民主も、今後100年先の自国のイメージが描けていない。50年、100年後に成長していることが望ましいものへの集中的投資が見えない。やはり、目につく政策は、利益誘導にならざるを得ない。つまり、政治家にとっては、当選してなんぼな世界だから、政治の限界が此処にあるのだろう。

 ある意味で、国民の意識にあわせて政治家は政治をするだろうから、銭ゲバな国民意識が大きければ、それに対応するわけで、物的利益誘導が政治の中心に座ってしまうのは致し方のない現象でもある。そう考えると、民主主義と云う理想は、理想に近い国民層が6割くらい存在しないと成り立たないシステムじゃないのか、と云う疑問が起きる。

 本来であれば、選挙の洗礼がない、霞が関に暮らす官僚たちが、離れですき焼きなど囲まずに、天下国家を論じ、世に問うくらいの根性があれば救われるのだが、それもない。精々、我が国の救いは、天皇陛下が、最もリベラルやニュートラルに、自国民を見守っているのが救いと云うのでは、やはり民主主義は間違っているのだろう。そんなことを考えながら、日経の以下の解説記事を読むと、なんとも空々しい。おまけに、リテラのコラムも貼り付けておく。対比しながら読むと、ホントに空々しさが増すのだ(笑)。

≪ アベノミクス2、「やるならトコトン」求める米国勢
編集委員 滝田洋一
 安倍晋三首相は今回の総選挙を「アベノミクスへの信任を問う選挙」だという。ならば、日本の株式市場で売買の過半数を占める海外勢は、日本経済と政策運営にどのような審判を下そうとしているのか。   先週いっぱい、ニューヨーク、ワシントンでファンドや投資銀行の関係者に、この話を聞いた。日本の7~9月期の国内総生産(GDP)は実質で2四半期連続 のマイナス成長になった。米国流の定義ではリセッション(景気後退)だが、「これでアベノミクスもおしまい」といった思い詰めた感じは、ちっともない。
 「日本経済が思ったより元気がないのは、どうしてなんだい?」
 投資ストラテジストの大御所、バイロン・ウィーン氏(ブラックストーン・グループ)を自宅に訪ねると、いきなり切り出された。 デフレからインフレに変わろうとする局面で、4月に消費税が引き上げられたので、家計に重圧になりました。普通の消費者は増税分込みの物価を実感しますからね――。そう答えると、ウィーン氏はうなずいた。
 当方から来年の見通しをただすと、「楽観的」という。景気のもたつきに配慮して消費再増税を先送りし、補正予算を組む。金融は追加緩和したし、円安で企業の輸出採算は好転する。原油安は日本からの所得流出を抑える――というわけだ。 ウィーン氏に会ったのは19日。GDPショックの当日17日に訪ねた、有力エコノミストのエド・ハイマン氏(エバーコアISI)は、「金融緩和の結果としての円安」による企業収益押し上げ効果を重視する。
  大手ヘッジファンドの幹部も17日、「注目する日本企業への投資姿勢を変えるつもりはない」と語っていた。アクティビスト(物言う株主)でもある、このファンドが注視しているのは、「安倍政権が進めるコーポレートガバナンス(企業統治)が本物かどうかであり、企業の資本効率の向上」である。
  円安は「競争的通貨切り下げ」の批判を招かないか。別の大手ファンドのエコノミストに聞くと、「今のところ米財務省は静かだ」という。日本は金融財政の 両面から景気悪化に歯止めをかけようとしている。その結果としての円安ならばあえて責めたりすまい、ということだろう。ワシントンの当局者の雰囲気もほぼそんなところだった。 有力格付け会社のエコノミストは、「経済が立ち直りきらないうちの増税にはもともと反対」としつつ、一連の政策対応を評価してみせた。10人以上と会ったなかで、「金融緩和に依存しすぎている」と渋い顔をしたのは、スティーブン・ローチ氏(イェール大学)であり、「企業が巨額のお金を抱え込んだままでは、需要サイドの景気刺激を繰り返してもダメ」と強調したデービッド・アッシャー氏(経済・安全保障問題専門家)だった。
 20日付の米 紙ウォールストリート・ジャーナルは「日本のリセッション話を気にするな。アベノミクスは生きている」というコラムを載せている。そう、米国の金融関係者の感じはこんなところなのである。日本はデフレ脱却と経済の好循環達成を目標に掲げ、政策を総動員しようとしている。実際の経済が目標から外れそうになったら、ちゅうちょなく持てるカードを切った。景気最重視をうたった政策の仕切り直しは「アベノミクス2(第2幕)」と呼べる。
 天は自ら助くる者を助く。折からの原油価格の下落は輸入国である日本にとってボーナスとなる。国際金融情報センター・ワシントン事務所の試算では、1バレル80ドルが定着すれば、天然ガスと合わせ約3.7兆円の輸入コストの軽減となる。ともあれ、ユーロ圏の政策対応がもたつき、デフレの縁にあるなかで、アベノミクス2はいかにも米国人好みなのだ。
 ただし、解散総選挙について、多くの人が首をかしげていたことは、付言せねばなるまい。大義がないといった道義論ではない。「議席を減らすと分かっているのに、なぜ選挙に打って出るか理解できない」というソロバン勘定である。この点は米金融関係者のわだかまりと言ってもよさそうだ。 ≫(日経新聞電子版)


≪ GDPマイナスは当然! アベノミクスのまやかしはデータが証明していた
  解散・総選挙を控えて発表されたGDPがまさかの二期連続マイナスだったということで、与党関係者や御用マスコミの間で動揺が広がっている。 「“消費増税による落ち込みは夏から回復する”という政府予測の見込み違いはすでにわかっていましたが、消費税で大幅に落ち込んだ前回よりは、微増に転じると思われていた。それがマイナスですからね。政府は天気のせいとか消費増税の影響力が続いているといっていますが、さすがに説得力がない」(全国紙経済 部記者)

 しかし、これは驚くに値しない結果だ。そもそも、今回のGDP発表以前にさまざまなデータから、アベノミクスがまったく効果をあげられていないことはわかっていた。

 周知のように、アベノミクスは「第一の矢:大胆な金融政策」、「第二の矢:機動的な財政政策」、「第三の矢:民間投資を喚起する成長戦略」からな るが、『アベノミクスと暮らしのゆくえ』(山家悠紀夫/岩波ブックレット)によれば、これらはすべて的外れの矢ばかりで、どれひとつ目標を達成できていないという。

 まず、「第一の矢:大胆な金融政策」。これについては、株高・円安が生じているという指摘があるが、これは副次的な効果で本来の目的ではない。最大の目標は、金融緩和で民間貸出を増大させて、景気をよくすることだった。
  「マネタリーベースの残高は、二〇一三年末で二〇二兆円であり、計画通り二〇〇兆円を超え、一二年末に比べ六四兆円増えています。それでは民間金融機関の 貸出の方はどうでしょうか。二〇一二年末が四三四兆円で、一三年末が四四九兆円です。つまり、一五兆円しか増えていません」(同書より)
 したがって、景気(GDP・国内総生産)も「一二年一〇~一二月期の一二三兆円が一三年一〇~一二月期の一二五兆円となっており、二兆円の増加に止まっている」。

  「第二の矢:機動的な財政政策」は「機動的」とは名ばかりで、実は、単なる「公共事業拡大政策」にすぎないという。
  「この一年半の安倍内閣の財政政策を見ますと、ひたすら公共事業の拡大に努めているばかりだからです。『機動的』と言いますと、状況に応じて財政支出を増 やしたり、減らしたりする臨機応変の政策ととれますが、実際はひたすら増やすばかりで、少しも『機動的』ではないのです。また『財政政策』と言いますと、 所得再分配政策=社会保障政策も含むはずですが、こちらはひたすら削る一方で、公共事業は増やすばかりです。言葉の意味を知らないのか、あるいは知ってい てごまかしているのか(おそらく後者でしょう)、『第二の矢』については正しくは『公共事業拡大政策』と呼ぶべきでしょう」(同書より)
  安倍政権の公共事業拡大政策を振り返ってみよう。安倍内閣発足直後の2013年1月には公共事業の拡大を柱にした総額10兆円の巨額の2012年度補正予算を編成。
 2013年度の当初予算は92兆6000億円(前年度当初予算比2.5%増)の大規模予算だ。このうち公共事業関係費は5兆3000億円(前年度比15.6%増)。2013年度補正予算も公共事業が中心で総額5兆5000億円だった。
 そして、2014年度の当初予算は95兆9000億円(前年度当初予算比3.5%増)で過去最大規模の超大型予算だった。このうち公共事業関係費は約6兆円(ただし、特別会計の統合分0.6兆円を含む。これを除けば5兆4000億円、前年度当初予算比1.4%増)だ。
 「二〇一三年の公共投資の前年比実質伸び率は一一%を超え、リーマンショック後の〇九年の伸び率(七%)や、一九九七、九八年の大不況からしゃにむに日本 経済を脱出させようとした九九年の小渕内閣時の伸び率(四%強)、そして、バブル破裂による不況からの脱出を図った九六年の伸び率(五%強)を大きく上 回っています。平時としては異常な大きさとなっています。その分、経済成長への寄与も大きく、二〇一三年のGDP実質成長率一・五%のうち〇・五%は公共 投資の伸びによるものでした。この寄与率の高さは一九九六年(〇・五%)以来のことで、近年で最高です」(同書より)
 公共事業を増やせば経済は成長し、その分景気が良くなるが、国債残高も膨らむ。
  「二〇一四年四月から安倍内閣は消費税率を八%とし、三%引き上げました。それによる一四年度予算の国の税収増をおよそ五兆円と見込んでいます。しかし、 一四年度予算では国債発行額を四一・三兆円と見込んでおり、一三年度比一・六兆円しか減らせないとしています。この結果、一四年度末の国債残高はおよそ七 八〇兆円と、一三年度末比三〇兆円ほど増える見通しにあります。増税しても年間の財政赤字の額(国債発行額)はあまり変わらず、政府の借金残高(国債発行 残高)は増え続けるという状況です」(同書より)
  「世界一の借金王」という自嘲的な言葉を吐いたのは在任中の小渕恵三首相だったが、安倍政権は小渕政権を超えた“借金王”に上りつめた。公共事業拡大とい う旧来の土建国家型政策では、潤うのは自民党とそれを支持する建設業界だけなのだ。多くの国民の生活はいっそう苦しくなるが、さらに「毒の矢」ともいうべ き「第三の矢:民間投資を喚起する成長戦略」が追い討ちをかける。

  「第三の矢:民間投資を喚起する成長戦略」では「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指し、そのために「財政、税制、規制改革、金融政策などのツールを駆使する」というものだが、減税に労働規制の緩和などの構造改革によって企業にとっては都合の良い国になるのだ。
  「企業収益の更なる拡大が実現し、雇用機会の拡大、賃金の上昇、配当の増加というさまざまなチャネルを通じて、脱デフレの果実が最終的に国民に還元される、真の好循環が実現する」(「『日本再興戦略』改訂二〇一四──未来への挑戦」2014年6月閣議決定)
 しかし、現実には企業収益は長期停滞が始まる直前の1997年比で見て大きく増えている。 「一九九七年度の日本の企業(略)の経常収益は二八兆円でした。(略)二〇一二年度には四九兆円に増えています。九七年度に比べ二一兆円、七〇%強の増加です。この間の税引き後の純利益や内部留保の動きも同様です」(同書より)
 一方、98年から大きく減っているのが、雇用者報酬(国内で雇われて働いているすべての人が、一年間に受け取った給料、賞与、手当等の総額)と、 国内の民間需要、国内総生産(景気)だ。賃金が減っているために、需要が減少し、ひいては景気も低迷し続けているのだ。この長期停滞の原因は「構造改革」 にあるという。
  「労働者派遣法の改正その他の政府の規制緩和政策(「構造改革」政策)が、賃金の上がらない(むしろ下がる)日本経済をつくり出した、その結果として、九八年以降の長期停滞がある、と私は見ます」(同書より)
 しかし、誤った現状認識のアベノミクスでも「構造改革」路線は続く。
 第三の矢による「企業減税の代償として消費税はさらに増税され、社会保障予算はさらに削減される、規制緩和により労働現場は一段と厳しくなり、雇用はさらに不安定化する──(略)暮らしの視点でみますと、きわめて厳しいものといわざるをえません」(同書より)
  「一層の労働規制の緩和により働く人の賃金(企業にとってのコスト)はさらに下がるでしょう。そうすると需要はさらに落ち込み、日本経済は停滞から脱出できない。それどころか、落ち込みは一段と深まり、停滞はさらに長引く──」(同書より)

 15日に始まった20カ国・地域(G20)首脳会議でも安倍首相は、アベノミクスについて「『三本の矢』で経済政策を力強く進めてきた結果、経済 の好循環が生まれ、成長力を回復しつつある」と成果を強調したが、実態は「国の借金を増やし、国民の労働環境を悪化させ、土建業界を始めとする企業にとって都合の良い国になりつつある」ということに過ぎないのだ。
 これ以上、安倍政権にこんなデタラメな経済政策を続けさせてはならない。  ≫(リテラ > ビジネス > 経済 > アベノミクスのインチキは証明ずみ!? 小石川シンイチ)


PS:ヘーゲル国防長官更迭
オバマ政権が益々混迷を深めている。そもそも、国防省とホワイトハウスには捲縮予算等から派生的に生まれる問題で、常に軋轢があった。シリア、イスラム国、ウクライナなどの米国の軍事的オプションに対する判断がぶつかり合った結果だろうが、或る意味で政権と軍部の対立が鮮明化してきているのだろう。オバマは搦め手が好きだし、国防省はドンパチやりたいわけで、考えが水と油になっている。また、共和党が両議会を支配してしまったことによる、パワーバランスの崩れが鮮明になってきている。国防省は、予算削減とのバーターでイスラム国掃討に地上軍を出したくてウズウズしているところに、共和党の躍進が追い風になったため、軍人たちの鼻息が荒くなり、制御不能になりかけているのかもしれない。現に、国防省幹部は、地上軍の派遣を準備していると公言しているのだから、リスキーな話である。

アベノミクスと暮らしのゆくえ (岩波ブックレット)
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●安倍選択は、国家の危機ではなく、国民の危機なのだが?

2014年11月24日 | 日記
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●安倍選択は、国家の危機ではなく、国民の危機なのだが?

 歳川氏の当てずっぽうコラムに、7割同意してしまう現実は、まさに日本の危機である。いや、日本と云う国家自体は、どのような中身であろうと存在するわけで、よく考えれば、国家の危機ではないのだね。安倍の生温いファシズムとネトウヨが跋扈する国家になっても、国家は国家だから、国家の危機ではない。

 そう、「国家の危機」と云う表現は大袈裟すぎてアジテーションな言葉だ。ネトウヨや安倍官邸、官僚が駆使する言辞であり、概ねマヤカシが内包している場合に多用される言葉なのだろう。「国家の危機」に対比して考えられるフレーズは「国民の危機」と云うのが適当だろう。まあ、この場合の「国民」の中には、立場主義において安倍自民のような政党が都合がイイと考える層、そもそも“あべちゃん的”に共感できる層、民主党のような政党は信用できない層等々が存在するので、全国民の6割から7割の人々を「国民」と見做し、その人達の「危機」だと言っておこう。

 この6~7割の「国民」の半分近くが、政治には何も期待していない人々が含まれるので、安倍が言い放つように、「烏合の衆」である可能性があるので、歳川氏が、99%安倍自民が勝つと予測することは、自然体では当然の帰結である。ある意味で、予想でさえないのかもしれない。そこで、あまりにもコラムがツマラナイので、野田聖子や小池百合子の名前をつけ足したのだろう。

 歳川氏が、さり気なく「生活も分裂」と書いていたが、そこは大いに嘘が含まれているのは当然だ。小沢一郎の直近のご機嫌はすこぶるヨロシイのだそうだ。曲がりなりにも、“オリーブの木”の実現に一歩近づいたことを実感したのだろう。社民と共産を放置したのは、彼ら独自の選挙戦を進めた方が、幾人かの当選者を出す可能性があると読んだのだろう。一番問題になるのは維新の党の候補者の力量だ。民主が候補者擁立を断念して、維新に協力して当選できるのかどうか、この辺が今一つ判らない。

 たしかに、アベノミクスの弊害が、全国民の悲鳴になっているとは言い難く、来年の夏以降辺りから酷くなるのだろうが、安倍の自己都合解散はギリギリの期限だったろうが、いいタイミングで解散を打ったものだ。そういう意味で、解散時期においては、安倍自民の勝ちである。このまま物価高だけ続けばヤバクなると思っていても、国民の尻から火が噴きだしている状況ではなく、なにやらキナ臭い段階なので、トリクルダウン現象が起きないとは言い切れないと思う国民も多いような気がする。

 ただ、今回の選挙で、安倍政権が信任され、今後4年間も惨状を、国民は指をくわえて見ていなければならないのか、というとそう云うものでもない。国民生活に重大な支障を来し、国民が惨状を肌身で痛切に感じるようになれば、自民党自身が、次期参議院選のことも念頭に、党内で権力闘争が起きることもあるので、今回の信任選挙の結果が致命傷になるわけでもない。尻のキナ臭さが、己の尻の火事だと気づけな、「烏合の衆」も目を覚ますのが理である。

 蛇足だが、それにしても、読売新聞と産経新聞の見出しが長ったらしいのが目につく。どうも簡潔にまとめる力が整理部にないのか、説明文を挿入しないと理解する能力に欠けた読者が多いからなのか、面白いほど共通して、二紙の見出しが長い(笑)。 

≪ 衆院選で99%安倍政権は信任される! 新たな女性閣僚二人を予測する
 安倍晋三首相が消費再増税先送りと衆院解散を表明した翌日の新聞各紙の社説・見出しを読み比べると面白い。

■争点は「安倍政治」 6紙の見出し(11月19日朝刊)は以下の通り。
『朝日新聞』:「首相の増税先送り―『いきなり解散』の短絡」   
『毎日新聞』:「首相解散を表明―争点は『安倍政治』だ」    
『読売新聞』:「安倍政治の信任が最大争点だ―消費再増税できる環境が要る」 
『日本経済新聞』:「アベノミクスに通信簿をつける選挙」     
『産経新聞』:「首相解散表明、『安倍路線』の継続を問え―経済再生へ実りある論戦を」                       『東京新聞』:「『安倍政治』問う機会に―衆院21日に解散」

 興味深いのは、安倍政権と距離を置く『毎日』、強く批判する『東京』、そして理解を示す『読売』、支持する『産経』の4紙がいずれも「安倍政治(路線)」というワーディングを使っていることだ。 12月2日公示・14日投開票の衆院選で「安倍政治」、即ち、アベノミクス(安倍政権の経済政策)だけでなく消費再増税の是非、外交・安全保障政 策、税制・財政・金融政策、原発再稼働を含むエネルギー政策、そして安倍首相の憲法観まで全てを争点にすべきだと主張しているのだ。
  一方、『朝日』は衆院解散に果たして大義があるのかと疑問を呈している。『日経』はアベノミクスを評価するのかどうかを争点にすべきだと言う。

 ■自民党は99%、233議席突破だろう
 問題視したいのは、前者4紙の「安倍政治」の方である。総選挙の結果が自民党単独で安定多数の249議席を上回った場合、公明党の現有31議席(落としても1、2議席)を合わせると絶対多数の266議席を大幅に上回る。つまり、「安倍政治」が信任されたことになるのだ。
  強烈な安倍政権批判を展開するブロック紙で稀有の存在である『東京』は21日付朝刊一面トップにヨコ大見出し「安倍政治を問う」を掲げている。現有295議席の自民党が今総選挙で50~60議席減の「大敗」を喫すると読んでいるのだろうか。
  筆者は、総選挙後の『毎日』と『東京』の総括・解説報道を心配する。何故ならば、現時点で予測すれば、民主党(海江田万里代表)と共産党(志位和夫 委員長)は確実に議席を増やすが、みんなの党(浅尾慶一郎前代表)は解党し、生活の党(小沢一郎代表)は分裂した上に維新の党(橋下徹・江田憲司共同代表)、次世代の党(平沼赳夫党首)、社民党(吉田忠智党首)は軒並み議席を減らす。公明党(山口那津男代表)は横バイ。
 みんなの党の浅尾前代表、生活の党の鈴木克昌前副代表らが合流するが、民主党は小選挙区全区に候補者を擁立できる状況にない。現有の55議席が三桁 の100に届く可能性はかなり低い。比例代表の票読みは難しいので断定はできないが、良くて90、恐らく80議席を何とかクリアする程度ではないか。
 となると、自民党が過半数の233議席を下回ることは99%考えられないどころか、単独で安定多数の249議席(現有からマイナス46議席以上)確保の可能性が高いと言わざるを得ない。
  ただ、『朝日新聞』の世論調査(11月19、20日実施)で内閣支持率が前回比マイナス3ポイントの39%(不支持率40%で初めて逆転)という数字は気になるところだ。共同通信調査(同)では内閣支持率47.4%、不支持率44.1%であった。
  がしかし、比例投票先を見ると、共同通信調査は自民党25.3%、民主党9.4%、『朝日』調査が自民党37%、民主党13%であり、自民、民主両党には大きな開きがある。それにしても、安倍首相(総裁)で12年12月衆院選、13年7月参院選を勝利した自民党に必ず「揺り戻し」が来るというのがこれまでの常識である。果たしてどうなるのか。

■野田聖子経産相、小池百合子防衛・安保法制相
 だが筆者の関心は、早やクリスマスイブの12月24日かクリスマス当日の25日に発足する第3次安倍改造内閣にある。首相会見の翌日に会った安倍首相側近は「恐らく閣僚の交代はないだろう」と語ったが、筆者はあると見ている。 ズバリ、9月3日に入閣したばかりの江渡聡徳防衛・安保法制相、西川公也農水相の2人(西川氏落選の可能性も)。そして、宮澤洋一経済産業相もあり得る。
 その場合、野田聖子前総務会長と小池百合子元防衛相の2人が、それぞれ経済産業相、防衛・安保法制相に就くのではないか。先の「ダブル辞任」で女性 閣僚が去った分を取り戻すだけでなく、党内の「アンチ安倍」勢力が来年9月の総裁選に担ぐ可能性がある野田氏を閣内に取り込めば、挙党態勢をブチ上げるこ とができるからだ。 予測は外れるもの、は自戒している。 ≫(現代ビジネス:ニュースの深層・歳川隆雄)

財界主権国家・ニッポン 買収政治の構図に迫る
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●田中龍作、ウクライナ取材で奮戦 カンパしてあげようね

2014年11月23日 | 日記
原発と大津波 警告を葬った人々 (岩波新書)
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●田中龍作、ウクライナ取材で奮戦 カンパしてあげようね

 本日のご挨拶のひと言は、個人消費者の財布の紐がギュッと締められてしまったことについて。筆者は外食する機会が多いのだが、夏以降、様々なレベルやジャンルの飲食店の、客の入りの悪さが目につくようになってきた。リセッションから一気にスタグフレーションと云う経済状況を、国民の生活レベルでは感じてしまっている可能性が高いようだ。輸出グローバル企業には見せかけの利益が上乗せされるので有難いのだろうが、内需の牽引役である生活者には有難迷惑なアベノミクスであるようだ。

 筆者の個人的感覚から考えるに、国家が「社会保障」を、どのようなものにしてしまうのか、疑心暗鬼になっている点が一番問題なのだと思う。これから、高齢者の仲間入りをする団塊世代や、それ以降に続く世代にとって、定年退職後の生活レベルが、最低限どの程度のものになるかまったく判らない状況は、どうしても「自助」に神経を使うことになる。増えない収入と否応なく押し寄せる生活費負担増に対抗する手段は、「ケチケチ戦術」以外にないと、消費者が腹を決めたからではないか、と考えている。

 収入が増えず、出費が嵩むだけなら、おそらく此処までの「ケチケチ戦術」に出ないのだろうが、年金医療介護に何ひとつ明確な保障らしい保障がないのだから、不安になるのは当然である。共同体が壊され、マスになってしまった社会において、頼れるものは「自助」に帰結するのは当然で、自民党政府や財務省の思い通りだろうが、ブーメランのように「非消費社会」が政府を圧迫するとは、思いもよらなかったに違いない。朝日の調査によると、大企業のボケ経営者でも、6割の者たちが、個人消費の停滞を心配しているそうだ。

 本日の見出しの話だが、フリージャーナリストの田中龍作氏が、カンパ資金と個人資金を利用して、ウクライナに単身乗り込み、欧米メディアが伝えない、生のウクライナ情勢を必死で伝えている。こういう情報を共有するために本来ネットはあるべきで、あべちゃんの心を和ませるために存在しているわけではない(笑)。以下は、田中氏の報じるウクライナに関与するアメリカの厚顔無恥度の様子だ。どだいアメリカと云う国は、こういう国であり、唯我独尊とゴリ押しで、世界を支配していたい帝国国家なのである。しかし最近になっては、軍事も外交も経済も、すべてがマネー集団に乗っ取られ、国家でさえなくなっている感もある。

≪ 米強欲資本が姿を見せた 「ウクライナ危機」
  これほど舞台裏を見せてくれる催しが、かつてあっただろうか? 米国の強欲資本主義が「ウクライナ危機を仕掛けたのはウチだよ」と名乗り出たようなものである。
 19日、首都キエフのヒルトンホテルで「マイダンから一年」と題するシンポジウムが開かれた。
 「マイダン」とはキエフ中心部の広場の名前だが、ヤヌコビッチ前大統領を追い出した勢力がここに結集していたことから、この政変の呼称となった。
 シンポジウムに大きく絡んでいるのは、「世界経済フォーラム」だ。ゴールドマン・サックスをはじめとするグローバル企業やロックフェラー財団などが出資する団体である。世界を貧困と戦禍に突き落とす強欲資本主義の巣窟と言い換えることもできる。
 パソナの竹中平蔵会長が絶賛する「ダボス会議」の主催団体と言った方が分かりやすいだろうか。 世界経済フォーラムは昨年11月、『ウクライナの将来についての戦略的対話』と題するシンポを開いた。
 当時、ヤヌコビッチ大統領(当時)はEUとの貿易協定締結を拒否し、ロシアとの関税同盟に加盟するよう迫られていた。
 ヤヌコビッチ大統領がEUとの貿易協定締結を拒否すると、マイダンの火が一気に燃え盛った。
 世界経済フォーラムは、ウクライナの政財界人を欧米側に引きつけるべくネジを巻いていたのである。  19日に開かれたシンポには、前駐ヨーロッパ米軍総司令官、米国務省高官、駐ウクライナ米国大使らが出席し発言した。
 ウクライナ側からは現職の外相、前貿易相、国営石油会社CEOらが出席した。
 プログラムは次の4部で構成されている―
1、安全保障の新パラダイム
2.情報戦争
3、新しい市場をつかむ
4、ウクライナ危機後のシナリオ
 いずれもウクライナをそそのかす内容となっている。
 「ウクライナは世界で最も肥沃な土地に恵まれ、高等教育も行き届いている。経済的に成功する多くの可能性を秘めている」と持ち上げている。
 そのうえで「ウクライナの持続可能な経済成長はグローバルエコノミーの文脈の中にある」として西側経済との連携強化を促す。ロシア離れを加速させろ、と言っているようなものだ。
 「ロシアからの天然ガスの輸入を減らす・・・」。シンポジウム後半にはウクライナの国会議員から勇ましい発言も飛び出した。  (つづく)


≪ 「米製兵器買え」ってことか ウクライナ危機 アメリカ人がオープンなのには驚く。オープンというより「あからさま」と言った方が正確だろう。
 19日、キエフのヒルトンホテルで開かれた「ユーロマイダンから1年」と題するシンポジウム。二人は会場に到着するなり近づいて顔を合わせた。
 二人とはウクライナのハンナ・ホプコ議員と米国のジェフリー・パイアット大使である。
 ジェフリー大使はマイダンのさなか、ヤヌコビッチ大統領追放後(※)の閣僚人事を米国務省高官と電話で協議していた御仁だ。
 電話はロシアに盗聴されユーチューブ上に流れた。マイダンへのアメリカの関与が改めて明らかになった“事件”だった。
 ハンナ・ホプコ議員(32歳)は、ポロシェンコ与党の一角をしめる政党「自助(Self Reliance) 」の所属だ。
 汚職まみれでウクライナ国民の支持を失ったティモシェンコ元首相に代わって、米国が新女王と期待する議員である。国際情勢通であれば「ハンナ」と言う名前でピンとくるだろう。
  ~米国産シェールガス輸入計画も~
 ハンナ議員は「ウクライナ危機後のシナリオ」と題する分科会で「ロシアからの天然ガスの輸入を減らす」と発言した。
 ウクライナはエネルギーの70%をロシアから輸入する天然ガスに依存している。(財団法人 高度情報科学・技術研究機構調べ)
 出席者から「他に代替エネルギーはあるのか?」と質問が飛んだ。ハンナ議員は「アメリカをはじめとする他の国々が助けてくれる」と答え、ジェフリー大使を喜ばせた。
 ハンナ議員が所属する政党「自助」のエネルギー政策担当者によれば、米国産シェ―ルガスの輸入ターミナル建設計画がある、という。 さらに驚いたのは、前駐ヨーロッパ米軍総司令官のマーク・ハートリング氏の発言だ。総司令官は次のように述べた―
 「ウクライナの国防予算は断食ダイエットだ。GDPの0.8%しかない。軍隊を改造するのに一番いいタイミングは戦時下だ」。
 要は軍備を増強せよ、ということである。
 ウクライナが今さらロシアの兵器を買うことはできない。そうなればオレンジ革命(2004年)からの浅からぬ関係で米製兵器ということになるだろう。
 総司令官は米製兵器を買えと言外に迫ったのである。総司令官と符帳を合わせるように、ジェフリー大使は「ロシアの戦車に脅えるな」と檄を飛ばした。
 米国はエネルギーと軍事でウクライナをロシアから切り離し、さらにはこの2つでウクライナを がんじがらめ にするつもりのようだ。
 ウクライナの財政は崩壊に近い所にまで来ており、常識で考えれば米製兵器を買う金などない。
 米国はウクライナの豊かな地下資源、森林資源、穀物を担保に資金を貸し付けるものと見られている。  経済が崩壊した後、ウクライナは国の天然資源まで、ハゲタカにしゃぶり尽くされることになる。
(※)電話の時点で、まだヤヌコビッチ大統領は追放されていない。  ≫(田中龍作ジャーナル)


≪ ラヴロフ外相:欧米は制裁の目的が政権交代であることを隠してはいない
 欧米は、対ロシア制裁の目的が政権交代であることを隠してはいない。ロシアのラヴロフ外相が、外交・防衛政策会議の会合で述べた。
 ラヴロフ外相は、「以前制裁が発動された時、私はニューヨークで働いていたが、その時に北朝鮮、イラン、その他の国について話された。その時彼らは、損害を与えず、エリートだけを攻撃し、社会分野や経済には害を与えないという形で行った」と指摘し、「いま欧米の政治家たちは、(ロシアの)経済を崩壊させて、国民に抗議行動をおこさせるような制裁を発動するべきだと発言している」と述べた。
  またラヴロフ外相は、「強制手段適用(軍事的)へのある概念に基づいたアプローチに関する点では、欧米がロシアに政策の変更を強要するのではなく、ロシアの政権交代(プーチンの失権)を成し遂げようとしていることは明白だ」と語った。 ≫(ロシアの声:イタル・タス)

 つまり、アメリカはあからさまに、ロシアを挑発していると云うより、欧米を含む世界で、最もカリスマ的指導力を持つと評価されているウラジミール・プーチン大統領が権力の座から追い落とすために、“将を射んとする者はまず馬を射よ”の譬えではないが、兄弟国ウクライナを馬に見立てて、そこから手をつけた。

 アメリカは、独立国ウクライナに右派セクターを先導役に雇い入れ、一見ウクライナ人によるクーデターに見える内乱を起こさせた。そうすることで、間接的にプーチンの精神を揺さぶり、人気を貶めようとしたわけだが、プーチンはその期に乗じて、逆にクリミアをウクライナからロシアに取り戻した。且つ、ウクライナ東部南部で起きた対ウクライナ独立運動でも、アメリカの内政干渉を逆手に取り、ウクライナを二分すると云う運動に手を貸しているのが事実関係だ。

 そのような画策を行っても、いまだプーチン政権は人気が衰えるどころか、逆に支持率を上げる、虻蜂取らずになっている。そこで、今さら引っ込みがつかないアメリカは、徹底的な経済制裁を本格化させている。嫌がるメルケル首相をはじめ、EU諸国、日加などを恫喝的に経済制裁に巻き込み、彼らにロシアとの貿易関係を封鎖し、金融にも拡大させ、サウジをも巻き込む原油暴落戦術にまで及んでいる。しかし、現時点のロシア内の反プーチンNPO,NGOの動きは封鎖されている模様で、プーチンをロシア人の手で追い落とす汚い戦術は実っていない。

 最後の手段が、田中氏が伝えるところの、ウクライナに武器を買わせ、その保証として、シェールガス鉱物採掘権を米国企業が担保に取る戦略に出ているようだ。思惑が外れたのは、中国習主席がプーチンと現時点で親和的な関係にある事は、頭の痛い現実になっている。中国の強硬手段辞さずの抬頭、プーチンの盤石さ、中露の分断は、アメリカの覇権維持には欠かさないファクターなのだが、現時点では上手くいっているとは言い難く、強制的に協力させられている西側各国の不満が爆発するリスクも抱えてしまったようだ。

放射線を浴びたX年後
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●『日経大予測2015』1944円也 俺は買わないけど…

2014年11月22日 | 日記
アベノミクス批判――四本の矢を折る
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●『日経大予測2015』1944円也 俺は買わないけど…

 本日のご挨拶のひと言は“解散総選挙”なのだが、争点がないようで、実はあり過ぎる選択選挙なのだと思う。何が秘密かさえ判らないブラックボックスだらけの特定秘密保護法。日本が積極的平和主義で海外派兵を行えるように、たかがヘッポコ内閣で閣議決定した集団的自衛権容認決定。貧乏人を益々貧乏にし、働く者をマネーの奴隷として、官制相場で株式だけ上げたアベノミクス。安倍晋三自身が「アベノミクス解散」と言ったのだから、安倍的なすべてを込々でゴチャマゼにして、YES・NOを選択してくれ、と言っている選挙なのだろう。つまり、安倍で良いのか悪いのか、それだけを考えればいい選挙だ。この際、自民・公明以外で当選可能性のある候補を探して、なに党でも構わないから、選択する選挙と云うことだ。皆様方の選挙区に、該当する候補者がいることを祈る気持ちになる選挙である。

 『これからの日本の論点 日経大予測2015』と云うのが、正式な名称。内容紹介には…。
≪厳選26テーマで未来をつかむ! アベノミクスは踊り場を抜けられるのか。業界を超えた再編の波はどこまでひろがるのか。緊迫する国際情勢の行方は──。 日経の編集委員が大胆かつ丁寧に、それぞれの専門分野でこれからの動きを予測します。
論点01 正念場のアベノミクス、失速への懸念は?
論点02 電力自由化が加速する「エネルギー大再編」の行方
論点03 迷走続くTPP交渉、日本は試練を乗り越えられるか?
論点04 迫る耕作放棄地激増の危機。日本の農業の将来は?
論点05 人口「1億人維持」は達成可能か?
論点06 消費税率は20%台まで上がるのか?
論点07 「人手不足」は日本の働き方をどう変えるか?
論点08 日銀首脳も警鐘、異次元緩和に「意外な結末」?
論点09 経常赤字は定着するのか、日本にとっての意味は?
論点10 日経平均株価は2万円を超えるか?
論点11 「自動車の呪縛」を振り切った日本企業、M&Aは加速するか?
論点12 「ジャパン・イズ・バック」──企業業績は好調を維持できるか?
論点13 フラット化する自動車産業、グーグルカーのインパクトは?
論点14 次の本命「IoT」、市場はどこまで拡大するか?
論点15 「つながる世界」で生まれるネットビジネス、日本発の新サービスも
論点16 伸びるネット通販、「ショールーミング」の次のターゲットは?
論点17 コンビニ神話はいつまで続くのか?
論点18 東京五輪を観光立国にどうつなげるか?
論点19 安倍首相は「長期政権」を実現できるか、2015年は勝負の年
論点20 日本を待つ「3つの嵐」、ふりかかる米ロ大げんかの火の粉
論点21 漂流するEU、どこへ向かうのか?
論点22 泥沼のウクライナ介入、追い詰められるプーチン大統領
論点23 「アラブの春」後に続く中東の混迷、国家分裂の連鎖
論点24 揺れる新興国経済、BRICsはどうなる?
論点25 民営企業の時代の幕開け 中国経済大改革の行方は?
論点26 米国で勢い増す「長期停滞説」、成長のカギは?


 上記、26の論点を眺める限り、チョッと読んでみたくなる。ところが、日経新聞は何を思ったのか、その本の一部を抜粋して電子版で配信していた。これが、困ったことに、官邸ヨイショ、関係官庁のレクチャーと米国市場原理主義勢力の思惑そのものを通り一遍になぞっただけで、大胆さなどは微塵もないのには驚いた。これが我が国の経済全国紙なのだから、絶望的気分になる。

 欧米と言わず米欧と云う表現からも判るように、アメリカ一辺倒依存経済が最善だと思い込んで新聞を編集しているとしか思えない。歴史的俯瞰感覚がゼロで、この新聞社が信じる、米欧至上主義が永遠に続く前提ですべてが書かれているようだ。やはり、出版社が、それぞれの書き手に委ねた大胆予測から見ると、金太郎飴予測になっている。敢えて、こういう特集を組んだのは、推測だが、全然売れていないのかもしれない。

 引用しておいてケチをつけるのは気が引けるが、本当だから致し方ない。しかし、いまでも、この日経新聞の記事やコラムを信じて経済界は動くし、そこに勤める、役員も幹部社員も、まずは日経を読むのだから、日本経済が飛躍的に変貌することはあり得ないだろう。結局、読んでみて、絶対に確実なことは、GPIFとTPPが今後の日本経済の牽引力だと言っている。つまりは、国家なんかいらない。マネーが自由に動ける環境整備が、日本に未来を決定づけると言っているようだ。まあ、時間のある方は、引き続き、以下引用の3本のコラムを読んでいただきたい。


≪ 正念場のアベノミクス、失速への懸念は? ~日経大予測2015(1)
編集委員 滝田洋一
【2015年の日本と世界の経済はどうなるのか、日本経済新聞のベテラン編集委員の見通しをこのほど出版した『日経大予測2015』(日本経済新聞出版社)をもとに紹介する。】

 アベノミクス、つまり安倍晋三政権の経済政策は失速するのだろうか。デフレ脱却と経済の好循環実現という目標をぶれずに追求し続けるかどうかが、カギを握っている。結論をいえば、「強い国家」を目指す安倍首相にとって、「強い経済」の回復という目標に揺らぎはない。2015年も日本はさまざまな乱気流には直面しようが、政府・日銀は経済の失速を防ぐために全力を尽くすとみられる。

 ■金融緩和はぶれずに続く
 14年4月の消費税引き上げ後の中だるみを克服し、景気を再び押し上げていく施策を整理しておく必要があるだろう。まず、金融政策は引き続き重要な 役割を担う。アベノミクスの診断では、日本経済の低成長の原因は継続的なデフレにある。大胆な金融緩和で円安と株価上昇を引き起こし、企業業績を回復させ賃上げを実現させるところまではきた。  
 黒田日銀による金融緩和で際立っているのは、長期金利を抑え込むことだろう。政府と日銀が第一に狙っているのは実質金利(名目金利から物価変動を差し引いた正味の金利)の押し下げで、消費と投資を刺激することである。
 カチカチ山の狸のように、家計や企業のおカネをいぶり出して、消費や投資に向かわせようというのが、異次元緩和のもくろみである。政府と日銀が2%の物価目標を掲げていることは、ぶれずに金融緩和を続けるという意味である。
  と『日経大予測2015』(10月24日刊)で記したが、日銀は10月31日に追加金融緩和に踏み切った。景気や物価が足踏みしだしたためだ。「デフレマインドの転換が遅れるリスクを未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタム(弾み)を維持する」と、黒田総裁自身がフリップを使って政策意図を明言した。
 市場は意表を突かれた格好だ。日銀ウオッチャーが考えていた以上に、黒田日銀は物価目標の達成に真剣だったことになる。円安・株高という市場環境を演出することは、デフレ心理を払拭するうえで、とても重要である。原油など国際商品市況の下落で日本から所得流出が減少することと併せて、 追加緩和は15年にかけて、冷酒のようにジワリと効果を発揮していくと思われる。

 ■消費再増税に慎重、景気対策には積極的
 2本目の矢である財政政策については、2つの側面がある。ひとつは公共投資を柱にした財政支出。13年度には景気を押し上げ、14年度も引き続き景気の下支えを狙った。人手不足、つまり雇用の改善が物語るように、その効果は表れている。一方、もうひとつは財政の立て直しを狙った消費税の引き上げである。14年4月の8%に続いて、15年10月には10%とすることが法律で決められている。
 忘れてならないのは、この消費税増税は本来のアベノミクスにはなかったメニューである点だ。なるほど、安倍首相も財政健全化を経済成長と並ぶ重要課題と位置付けている。ただし、まずデフレ脱却と経済の持続的成長を達成してこそ、税収も持ち直してくると確信している。「成長なくして財政再建なし」という立場といってもよい。
 そうした安倍首相の視点からすると、民主党の野田佳彦政権のときに民主・自民・公明の3党で決めた消費税の引き上げは、不本意なものだ。14年4月の消費税引き上げにしても、デフレ脱却と経済の好循環を見極めるまで待つべきだった、という気持ちがあろう。消費増税後も景気の落ち込みが予想外に大きかったことで、「だから言わんこっちゃない」という気持ちが強いはずだ。
 消費を立て直すために、家計の実入りを増やす必要がある。安倍政権の問題意識はここにある。14年12月に予定される消費税の追加引き上げの判断も、文字通り景気次第となる。
 7~9月期の国内総生産(GDP)がちゃんと持ち直せばよし。戻りが弱ければ無理をせず、増税時期を1年程度延ばす。ドイツの長期金利が一時1%をも下回るなど、経済活動の体温である長期金利が世界的に低下している現状は、そんな安倍流の自然体の判断と整合的である。
 もちろん再増税を見送れば、基礎的財政赤字の名目GDP比を15年度には10年度の半分に減らすとの国際公約がほごになってしまう。このため7~9月期の GDPの足取りが重いときには、補正予算を組み、景気を下支えしつつ、再増税に踏み切ることも考えられる。ただ首相の最優先課題が経済の立て直しにあり、景気に目をつむった再増税には反対の姿勢をとっていることは、念頭に置いておくべきだろう。

■減税+ガバナンス強化で企業を揺さぶる
 第3の矢である成長戦略については、今がラストチャンスであると、安倍政権は考えている。14年6月に打ち出した成長戦略では、企業を動かすことに焦点を当てた。法人税減税や公的年金による株式運用拡大が明らかになるにつれて、市場の評価も次第に前向きになってきた。
 国と地方を合わせた法人税の実効税率は35.64%(東京都)。その税率を数年内に20%台に下げるが、まず15年度から法人減税に乗り出す。1%の減税で企業の税負担は4700億円減る。日本企業の純利益は12年度で約30兆円なので、減税が実れば企業の手元に残るおカネは相当増える。
 とはいえ、企業が浮いたおカネを抱え込んでは、次の成長の見取り図が描けない。そのおカネを投資、賃金、配当に回すように促すべきだ、という話になる。 14年の成長戦略(日本再興戦略)は「コーポレートガバナンス(企業統治)」の強化で、経営者の背中を押そうとしている。
  麻生太郎財務相が「法人税を減税しても企業の内部留保に充てられては何の意味もない」と述べ、「コーポレートガバナンスが必要」と強調していることに注目したい。麻生氏は金融相も兼任するが、その金融庁がいま活発に動いている。
  そうしたメッセージは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)をはじめ、公的資金の運用改革にも通じる。公的資金が株式投資で成長資金の供給を増やす一方で、収益力向上を求める声を強めようというのだ。年金運用の受託者であるGPIFが、企業経営者との建設的対話を通じて企業収益を向上させるとともに、資金運用の実績を改善させようというのである。
 企業のガバナンスはこれまでリベラルな学者や弁護士のおはこだった。ところが保守の理念を掲げる安倍政権が一丸となって、このテーマに取り組んでいるのが面白い。14年9月の内閣改造で、GPIF改革やガバナンス問題で積極的だった塩崎恭久氏が厚生労働相に就任した点に注目したい。

 ■株価を意識した政策運営が続く
 潜在成長率が低下し成長の天井が意識されだした今こそ、情報技術を生かした合理化や省力化のための投資が欠かせない。2020年には団塊の世代が全員70歳代になる。超高齢化に備えた介護ロボットの開発など、需要を先取りするときでもある。
 岩盤規制という名のしがらみと足かせを取り払い、企業の投資を引き出してこそ、低すぎる成長の天井を突破することができる。正規雇用と非正規雇用に分断している労働市場の流動性を高め、成長性の高い分野に働く人が円滑に移動できるようにすることも肝心だ。
 こうした成長戦略が実際の成長率を高めるまでには、ふつう数年単位の時間を要する。その間の時間を買うために、安倍政権は株価が上向く環境を整えようとしている。成長期待が株高を促すばかりでなく、株価の上昇を通じて経済の先行きへの期待を担保しようとしている。
 法人税減税やGPIFの株式運用拡大、株主還元を企業に促すコーポレートガバナンス強化、日銀による上場投資信託(ETF)の購入拡大などは、そのための手段と位置付けられる。
 株価を気にしすぎることは邪道との批判もあるだろうが、今は長く続いたデフレ均衡から脱却できるかどうかの正念場だ。日銀の追加緩和、GPIFの株式運用拡大の決定、補正予算の検討――。本書で指摘した課題は、本書刊行後に現実のものとなった。着実に政策を実施するのは結構なことだ。政権が経済最優先の基本線を守り、引き続き機動的な政策対応を進めるならば、新たな15年も市場を味方につけることが可能だろう。

[10月24日発売の『これからの日本の論点 日経大予測2015』の一部を抜粋、再構成]

滝田洋一(たきた・よういち) 金融部、経済部、チューリヒ支局、米州総局(ニューヨーク)編集委員、論説副委員長を経て2011年から日本経済新聞編集委員。金融市場を足場に景気や経済動向を解説している。主著に『通貨を読む』『金利を読む』(いずれも日経文庫)など。


≪ 日経平均株価は2万円を超えるか? ~日経大予測2015(2)
編集委員 三反園哲治
 日経平均株価は2015年に2万円に迫る可能性がある。上場会社の業績が過去最高益にほぼ並ぶ水準にあるうえ、国内の年金マネーが株式市場に流入す るのが追い風だ。政府が成長戦略の柱として企業の「稼ぐ力」の向上を盛り込んだのをきっかけに、日本企業でも資本効率を重視した経営が広がりつつある。こうした企業の変革に着目し日本株を見直す海外投資家も増えそうだ。世界で地政学リスクが落ち着き、国内外の景気が安定するなど外部環境で好条件が重なれば、日経平均が2万円を超える局面もあるかもしれない。

■時価総額で過去最高の水準に
 日経平均2万円という水準には、単なる節目という以上の意味がある。現状の株価水準と時価総額から推計すると、日経平均が2万円をつけると東京株式市場の 全体の時価総額は600兆円を超える。日経平均が史上最高値3万8915円をつけた1989年末の時価総額611兆円にほぼ並ぶ水準だ。
  日経平均が史上最高値をつけた89年末と今では、東京株式市場の中身が様変わりしている。時価総額が国内2位のソフトバンクをはじめ、現在の上場会社の半数以上はバブル経済が崩壊した90年以降に上場した会社だ。「失われた20年」と呼ばれた長期低迷のなかでもマーケットの新陳代謝は進んできた。東京市場がピーク時の時価総額を回復することは、日本の株式市場がバブル崩壊をようやく克服し成長に向け新たなスタートをきることを象徴する。
 予想PER(株価収益率)やPBR(純資産倍率)などの株価指標を日経平均が過去に高値をつけた時点と比べても、現在の株価指標に割高感はない。PERは 10倍台半ばという世界でも標準的な水準にある。内外の経済環境が大きく変わるようなショックが起きなければ、株式相場にはまだ上昇する余地がある。

 ■ITバブルからアベノミクスへ
 先行きを考えるうえで、これまでの流れを振り返るのが有益だ。日経平均が2万円の大台を回復したのは2000年春が最後だ。当時はIT(情報技術)ブームが巻き起こり、ハイテク企業や通信会社が人気を集めた。しかし、米国でITバブルがはじけると日本株も失速した。
 日本で株価が再び上昇トレンドに戻るには銀行の不良債権という構造問題の解決が不可欠だった。旧りそな銀行への公的資金投入をきっかけに03年から 株式相場が上げに転じたのも、日本の金融システムがいよいよ正常化するとの期待感が国内外で高まったことが背景だった。05年には小泉政権での「郵政解 散」をきっかけに日本経済が変わるという期待を海外投資家が抱き、株価の上昇にさらに弾みがついた。同時に世界景気も拡大しており、日本の上場会社は08 年3月期に過去最高益をあげた。そのなかで日経平均がつけた高値が07年夏の1万8261円だった。
 ところが、米国で住宅バブルが崩壊し、08年秋にはリーマン・ショックが起きた。日経平均は2万円の大台を目前にして下落に転じたうえ、09年3月にはバブルが崩壊した後の最安値である7054円まで下げてしまった。
 東日本大震災なども重なり株価がなかなか浮上するきっかけをつかめないなかで、12年暮れに登場したのが安倍晋三政権の経済・金融政策「アベノミクス」だった。円高から円安トレンドへの転換、デフレ経済からの脱却という政権の明確なメッセージに、ヘッジファンドなど海外マネーが飛びつき日経平均は13年 末、ほぼ6年ぶりに1万6000円台を回復した。
 日本経済が大きく転換するかもしれないというマクロ材料に海外勢が反応した。そういう意味では2000年代半ばの株高と同じ構図を持つ。相場上昇をけん引した海外マネーは個別の企業ではなく日本株全体を買ったのだ。政策など大きな材料(イベ ント)を手掛かりに目先の利益を求める短期マネーも含まれていた。それだけに、14年上半期に相場が下がったのも自然な流れだった。

 ■公的年金と個人マネーが動き出す
  株式相場の流れをこのように整理すると、日経平均が2万円を超えるための大きな条件が2つみえてくる。(1)短期の海外マネーに代わる中長期の買い手が登場する、(2)上場企業そのものが投資対象としての魅力を高めマネーを呼び込む--この2点だ。
 ひとつは株式需給の問題であり、もうひとつは株式価値をいかに高めるかという当然のポイントだ。 株式需給の面で最大の注目点は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を中心とした公的年金マネーだ。GPIFは約127兆円の運用資産を抱 える世界最大の機関投資家だ。これまでは国債に偏った資金運用を続けてきた。政府は成長戦略の一環としてGPIFのポートフォリオに占める株式の比重を高める方針を打ち出している。14年3月末時点で運用資産に占める日本株の比率は16.5%だった。
 くわえて、一般に「3共済」と呼ばれる公的年金もある。国家公務員共済や地方公務員共済、私学共済の3つの運用資産を合わせるとざっと30兆円にのぼる。GPIFに歩調を合わせ3共済でも日本株を買い増すと市場では予想している。
  そのGPIFは10月31日、日本株の運用比率を25%に高めるなど新たなポートフォリオ構成の目安を発表した。ゴールドマン・サックス証券はGPIFと 3共済を合わせた株式への追加投資額を次のように試算する。仮に5年間で積み増す場合は年1.7兆円、3年間の場合は年3.5兆円が東京株式市場に新規に流入するという。
 さらに、日銀が上場投資信託(ETF)を買い入れることで実質的な株式購入が年3兆円に膨らむことも加えると、今後 3~5年間で年4.7~6.5兆円の株式への資金流入につながる。13年に年間で日経平均が6割近く上がった時の海外投資家の買越額が15兆円だったことを考えれば、その規模の大きさがわかる。
 約1600兆円にのぼる個人マネーの存在も無視できない。14年からスタートした個人向けの投資 優遇税制であるNISA(少額投資非課税制度)を通じた資金流入が期待できる。NISAの枠を超え個人マネーが動き出す可能性も残る。個人金融資産の過半を超える874兆円が預貯金として眠っている。アベノミクスがうまく働き経済がインフレへ転換すると実感できるようになれば、個人投資家も証券投資に前向きになるだろう。

 ■企業の手元資金を引き出せ
 株式の需給面では最後に、国内勢としては上場会社そのものが自社株買いを通じた日本株の買い手として注目だ。自社株買いは株式の需給を引き締めるだけでなく、実施する企業の資本効率を高め投資対象としての魅力を増す効果がある。企業が自社株買いをすると、市場に流通する株式数が減り1株当たりの価値がその分高まる。株主にとっては配当を受けたのと同じ効果を持つ。 海外投資家が自社株買いに注目する理由は、そうした株式の利回り改善効果だけではない。現金を手元にためこむことを優先してきた日本企業が、資本効率を高める経営に転換するシグナルとして海外勢は好意的に受け止める傾向がある。
 象徴的な例が金属加工機械メーカーのアマダだ。期間利益の半分を配当に、残り半分を自社株買いにあてると14年5月に発表し、株価が急騰した。アマダは実質無借金で手元資金を豊富に抱え、株主配分にはそれほど前向きな会社とはみられていなかった。それだけに、変わる日本企業の代表例として海外の機関投資家は歓迎した。アマダのような会社が今後も相次ぎ出てくれば、日本企業に対する世界からの評価も高まり海外マネーをひき付けられるはずだ。

 ■日経平均2万円台も現実的に
  足元の企業業績は最高益を記録した08年3月期に肉薄しつつある。08年3月期中の07年7月に日経平均は1万8261円の高値をつけた。足元でも最高益に近い企業業績が見込めるだけに、日経平均が1万8000円台を回復できるかどうかがひとつの節目として意識されている。
 15年3月期に踊り場にさしかかった企業収益が15年にかけ再び上向く兆しが出てくれば、日経平均も1万8000円を上回る上昇トレンドに入る可能性がある。もちろん、アベノミクスの成果が出て国内景気が着実に回復を続けることが大前提だ。
  投資家の不安心理を高めている世界各地の地政学リスクが落ち着き、米国の景気も順調に拡大し、欧州経済が深刻な低迷期に入らなければ、日経平均が15年中 に2万円台を回復する局面がくるかもしれない。ただ、裏を返せば株価は過去の例と同様に世界経済の動きの影響を受けやすいリスクは残る。もちろん円相場の 動きも見逃せない。適度な円安が続けば株価にもプラスだ。

[10月24日発売の『これからの日本の論点 日経大予測2015』の一部を抜粋、再構成]
三反園哲治(さんたぞの・てつじ) 株式市場や上場企業の財務などの取材経験が長い。バフェット氏ら海外の大物投資家の動向にも詳しい。1999年から4年間駐在したニューヨークではウォール街を中心に取材し、エンロン不正会計事件などを報道した。


≪ 日本を待つ「3つの嵐」、ふりかかる米ロ対立の火の粉 ~日経大予測2015(3)
編集委員 秋田浩之
 ■2015年、待ち受ける「歴史の時限爆弾」
 「このまま2015年に突入したら、大変なことになってしまう……」。日本政府内で外交や安全保障政策にたずさわる当局者らが、こう危惧していることがある。大きな原因が、歴史問題である。
 15年は危険な年である。日本に深くかかわる2つの歴史の記念日が控えているからだ。第2次世界大戦の終結70周年と、日韓国交正常化50周年である。
 このうち、前者をめぐっては、すでに中国が大々的な反日キャンペーンの準備にとりかかっている。その姿勢がはっきりしたのが14年7月7日、習近平国家主席による極めて異例の行動だった。 この日は日中が全面戦争に入り込むきっかけとなった盧溝橋事件の、77年目にあたる記念日。盧溝橋近くで大きな式典が開かれ、習主席が演説したのだった。彼は名指しこそしなかったものの、日本をあからさまにけん制した。
 「今日もなお一部の人々が歴史の事実を無視し、歴史の潮流に逆行し、侵略の歴史を美化し、地域に緊張を招いている」
 何の区切りでもない「77周年」に、国家主席が自ら出席するのは近年、ほとんど例がないという。中国各部局では翌年の対日戦勝70周年に向けた反日キャンペーンの足音も高鳴っている。
 習近平政権の思惑はどこにあるのか。中国外交に精通した複数の外交筋はこう解説する。
 中国はアジアでの影響力を広げるため、日本を孤立させ、日米同盟を弱めたいと考えている。そんな戦略から70周年を機に、靖国神社参拝や日本の“右傾化”といった歴史問題を宣伝し、日本を強くたたこうとしている。 
 「軍国主義」を復活させ、戦後秩序に挑戦しようとしているのは日本という言説を広めれば、尖閣諸島問題でも中国の理解者を増やせると踏んでいる――。
 もっとも中国が単独でキャンペーンを展開するだけなら、日本が深刻な窮地に追い込まれる危険はさほど大きくない。気がかりなのは、中国の反日キャンペーンに同調したり、便乗したりする国々が出てくるかもしれないことだ。

■韓国の出方が波乱の芽に
 なかでも焦点になるの が、韓国の出方だ。民主主義国であり、米国の同盟国でもある韓国が中国と組み、反日キャンペーンを進めれば、米欧社会で一定の注目を集める可能性がある。逆に、韓国が中国と一線を画し、同調しなければ、中国のキャンペーンは空回りに終わる公算が大きい。
 朴槿恵・韓国大統領はどちらの路線を選ぶのだろうか。この段階では、楽観、悲観両方のシナリオがあり得る。
 日本の植民地支配からの解放を祝う、8月15日の「光復節」。この日の式典で、朴大統領は従軍慰安婦問題にふれ、こう訴えた。
 「この問題が正しく解決されれば、15年の国交正常化50周年を両国民がともに祝える」
 「(15年は)友情を背景に、両国民が新しい未来に向かう出発の年にしたい」
 従軍慰安婦問題で日本に善処を迫る一方で、国交正常化50周年を機に、日本との関係を修復したいという意向もにじませた。いわば、半身の姿勢である。安倍政権がどこまで歩み寄るか、15年にかけてひとまず、様子を見るつもりだろう。
 しかしながら、日韓国交正常化50周年で韓国内のナショナリズムが盛り上がれば、歴史問題で中国と連携しようという機運が高まる危険もある。
  実際、複数の日韓関係筋によると、韓国は中国から、歴史問題で共闘するよう、猛烈な誘いをかけられている。習近平主席が14年7月初め、長年の慣例を破って北朝鮮よりも韓国を先に訪問したのも、そんな狙いからだ。中国側はこの訪問で、「中韓共同声明に『歴史問題』を明記するよう求めたほか、15年に対日戦勝70周年記念式典を共催するよう、強く働きかけた」(同関係筋)という。
 韓国の行方に加えてもうひとつ、日本を揺さぶりかねない波乱要因がある。プーチン大統領が率いるロシアの動きである。

 ■対日圧力、ロシアが中国と組む日
 尖閣諸島や歴史問題をめぐり、中国はロシアにも、再三にわたって対日共闘を要請してきた。ロシアから協力を得るため、中国は水面下でかなり大胆な取引も持ちかけている。中ロ関係に通じた外交筋は証言する。
 「日本が尖閣諸島を購入した12年ごろから、中国は数回にわたり、プーチン大統領に秘密提案を持ちかけている。それは、北方領土問題で中国がロシア支持に回る代わりに、尖閣諸島問題ではロシアが中国を支持するというものだった」 1960年代末の国境紛争を受け、中国とソ連は事実上、天敵になった。中国はこのため、北方領土問題で日本の支持に回ってきた。この立場はソ連が91年に崩壊し、中ロが和解した後も変わっていない。だが、中国はこの原則を180度、転換。中ロが手を結び、領土問題で日本に対抗する構想をプーチン大統領に申し入れたのだった。
 いまのところ、ロシアは中国の誘いには乗らず、頑として中立を保っている。最悪なのはロシアがこの中立策をやめ、中国と一緒になって日本に圧力をかけてくる構図だ。
 プーチン大統領はいま、ウクライナ危機でオバマ政権と真っ向から対立し、厳しい制裁を科されている。米国は日本にも「ロシアにもっと厳しい制裁を科してもらいたい」との圧力を強めている。
 米国に背中を押されるように、日本は8月5日、ロシア政府関係者らの資産凍結を柱とする追加制裁に渋々、踏み切った。日本批判を控えていたプーチン政権が豹変(ひょうへん)したのは、まさにその時だ。
 「日ロ関係の全般に深刻的な影響が及ぶだろう」。ロシア政府は日本の追加制裁にこう警告し、8月末に予定されていた領土問題の日ロ次官級協議を延期した。
 米国に押され、日本は9月にも新たな追加制裁を決めた。日ロ関係が冷え、日本は中国、ロシアとの2正面対立に追い込まれる危険が増している。

 ■日本を待ち構える3つの嵐
 そんな展開が現実になったとき、日本は「3つの嵐」に苦しめられることになるだろう。
 1つ目の嵐は、「歴史包囲網」である。ロシアが中国の誘いに乗り、15年、対日戦勝70周年を一緒に盛り上げるという展開だ。そこに韓国も加わり、中韓ロがそろって反日キャンペーンを仕掛ける可能性もある。
 こうした事態になっても、米国や欧州がすぐには同調することはないだろう。ただ、日本が歴史問題で自ら墓穴を掘り、米欧諸国からも批判され、孤立してしまうリスクはある。
 なかでも大きな地雷は従軍慰安婦問題だ。この問題が日本に与える影響を懸念する知日派の元米政府高官は語る。
  「日本は、従軍慰安婦が強制されたかどうかといった事実関係にこだわる。だが、米欧世論は強制性があろうがなかろうが、従軍慰安婦は『性の奴隷の犠牲者』 と受け止めている。日本の政治家が釈明を繰り返せば、安倍政権は米欧からも批判を浴び、結局、中国の反日キャンペーンを利することになる」
 2つ目の嵐は、領土問題だ。中ロないしは中韓ロが歴史問題で協調すれば、領土問題でも連携する公算が大きい。領土と歴史はいわば表裏一体の関係にあるからだ。尖閣諸島、北方領土、竹島問題について、3カ国がそれぞれの立場を支持し合うという構図である。
 3つ目の嵐は、中ロの軍事協力である。中国は東シナ海や南シナ海での米軍優位を崩すため、軍備増強を加速している。
  中国がいま、いちばん欲しがっているのが、ロシア製の最新兵器であるステルス戦闘機SU35と地対空ミサイルS400である。14年5月下旬にプーチン大 統領が訪中した際、2つの売却で合意するとの観測もあったが、結局、ロシアは合意を見送った。条件が折り合わなかったことに加えて、安倍政権への一定の配慮もあるとされる。
 ロシアと日米が決定的に対立し、中ロ接近に拍車がかかれば、こうした日本への遠慮は必要なくなる。日本の安保担当者は顔を曇らせる。
 「ロシアが孤立し、中国に一段と接近すれば、玉突きで日本にも多くの火種がふりかかってくる。特に心配なのが、ロシア製の最新兵器がこれまで以上の勢いで、中国に流れ込むことだ」
 世界の危機や紛争によって米中ロの力学がどう変わり、日本にどんな影響が跳ね返ってくるのか。地球儀を片手に考えると、決して安心できない現実が待っているようにみえる。

秋田浩之(あきた・ひろゆき) 1987年、自由学園最高学部卒、日本経済新聞社入社。政治部編集委員兼論説委員。外交や安全保障政策担当。1994-98年北京、2002-06年にワシントン支局。ボストン大学大学院修了(91年)。著書『暗流 米中日外交三国志』 ≫(以上3コラム、日経新聞電子版)

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●オバマ政権、マネーの魔力に逆らえず共和党化を加速

2014年11月21日 | 日記
農業問題: TPP後、農政はこう変わる (ちくま新書)
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●オバマ政権、マネーの魔力に逆らえず共和党化を加速

 どこまで経済情報の嘘を重ねれば懲りるのだろうか、この日経という新聞社は。10月の貿易収支も7,100億円の赤字だが、“輸出持ち直しの兆し”だと、並行的に記事を配信している。たしかに、まったくの嘘ではないが、漸く現地での販売価格に為替還元セールのような事を行った結果だ。このような販売戦略は、その企業の為替差益と云う収益を減ずることであるので、輸出総量には貢献するが、企業の利益の勘定科目がチェンジするだけになる場合もある。また、アメリカあたりでは、ダンピング問題として政治課題化することも考慮しておかなければならない。

 貿易収支に関する日経の記事は以下であるが、この中で、最も注目しておくべきは対中貿易の収支が5,868億円の赤字になっている点だ。日中における貿易の不均衡は、構造的な側面もあるが、貿易収支における赤字の8割強が対中貿易であることは、忌々しき問題だ。本来であれば、政治がある程度、その不均衡を是正する議論がなされるべき重要ポイントであるにも関わらず、議論の場、余地さえない安倍政権の大きな負の遺産と云うことが出来る。たかが慰安婦問題と靖国参拝のお陰で、その赤字幅が最大化しているのは、日本経済の大損失である。

 尚、その上に、対中関係の外交マターを糊塗するために、他の諸国に無償・有償の借款等々を大盤振る舞いしなければならなくなったのだ。円安容認の為の米国債買い入れ50兆円を含んだ海外バラマキの総額は、安倍政権発足以降70兆円に達している。70兆円のバラマキの中で、対中、対韓外交のギクシャクから派生している額がどのくらいなのか、正確には見積もれないが、「たかが」で、半分の35兆円くらいはムダ金だと言えるのだろう。

 ≪ 貿易収支最悪脱したか?
  財務省は20日、2014年10月の貿易統計(速報、通関ベース)を発表した。それによると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7,100億 円の赤字となった。赤字は28カ月連続で、過去最長を更新した。赤字額は10月としては過去最大だった前年と比べて35.5%縮小した。

 輸出額は前年同月比9.6%増の6兆6,885億円で、2カ月連続の増加。品目別では、自動車が同6.2%増、船舶が同53.9%増、鉄鋼が11.8%増などとなった。

  輸入額は前年同月比2.7%増の7兆3,985億円で、2カ月連続の増加。品目別では、通信機が同29.6%増、肉類が同36.9%増、液化天然ガスが同6.1%増、原粗油が同10.8%減などとなった。

  地域別に見ると、対米国は、輸出額が前年同月比8.9%増の1兆2,683億円、輸入額が同11.0%増の6,538億円で、6,145億円の黒字。黒字額は2カ月連続で増加した。輸出品目では、自動車の部分品が同19.0%増、建設用・鉱山用機械が同61.5%増、自動車が同3.3%減など。輸入品目では、石油製品が同117.6%増、穀物類が同25.2%増、肉類が同23.9%増などとなった。

  対EUは、輸出額が前年同月比5.4%増の6,817億円、輸入額が同4.9%増の6,997億円で、180億円の赤字。赤字は22カ月連続となる。輸出品目では、自動車が同11.8%増、電気計測機器が同36.4%増、鉱物性燃料が同90.5%減、原動機が同12.8%減など。輸入品目では、肉類が同118.3%増、原動機が同43.8%増、自動車が同6.3%増などとなった。

 対アジアは、輸出額が前年同月比10.5%増の3兆6,003億円、輸入額が同4.2%増の3兆4,619億円で、1,384億円の黒字。黒字は2カ月ぶりとなる。輸出品目では、船舶が同319.7%増、半導体等電子部品が同9.2%増、金属加工機械が同42.3%増など。輸入品目では、通信機が同29.8%増、半導体等電子部品が同14.2%増、石油製品が同30.1%減、原粗油が同50.6%減などとなった。

  対中国は、輸出額が前年同月比7.2%増の1兆2,296億円、輸入額が同9.6%増の1兆8,164億円で、5,868億円の赤字。赤字は32カ月連続で、10月としては過去最大となる。輸出品目では、通信機が同67.4%増、科学光学機器が同15.1%増、有機化合物が同16.2%減、鉱物性燃料が同 49.4%減など。輸入品目では、通信機が同45.0%増、半導体等電子部品が同43.1%増、衣類・同付属品が同6.9%減などとなった。 ≫(日経新聞)

 もっと新聞読者を惑わす記事が目についた。安倍の解散宣言で、日本株買いの主役が、海外ヘッジファンドから、長期保有の海外の優良ファンドに飼い主が変わる傾向が見えてきた、と云う驚くべき記事である。まあ、信じるも、眉に唾するも、皆様の勝手だ。しかし、この情報が真実であれば、長期保有の海外の優良ファンド様が日本株の買い主になると云うことは、オバマ政権が、民主党を切り捨て、共和党にすり寄る政策に血道を上げて、TPP交渉における貿易促進権限(trade promotion authority;TPA:ファースト・トラック)を手にして、強引に締結に持ち込むことが既成事実化されたリスクを抱えるので、少々危険な臭いのする情報でもある。日経は、敢えてその事は書かずに、臭わせたのかもしれない。


≪ 日本株買いの主役、解散表明で交代の兆し
  証券部 酒井隆介
 安倍晋三首相が衆院解散と消費税率引き上げの延期を表明して一夜明けた19日の東京株式市場で、買いの主役に交代の兆しが出てきた。躍り出てきたとみられるのは、長期保有を目的とする海外投資家だ。彼らが買いに動き始めたきっかけは、安倍首相が消費増税を再延期せず、経済動向次第では見送るという「景気条項」も撤廃するとの表明だったという指摘がある。

 安倍首相は2015年10月に予定していた消費税の税率10%への引き上げは1年半先送りする考えを示した。同時に17年4月に増税を必ず実施し「景気条 項」も外すとの方針を表明し、財政健全化への配慮を示した。大和証券グローバル・エクイティ・トレーディング部の沖宗和弘担当部長は「財政悪化に歯止めをかける意思が伝わり、債券安・株安という『日本売り』への不安心理が取り除かれた」とみる。

 沖宗氏はそのうえで「中長期の目線で運用する海外投資家が、少しずつ大型株に資金を振り向け始めているようだ」と指摘する。特に、業界を代表するような「シンボルストック」への買いが目立ったという。

 19日の株式市場では、そうした傾向が表れた。大型株の動きが影響しやすい東証株価指数(TOPIX)は続伸した。時価総額の大きさで選んだTOPIXコア30を構成する30銘柄のうちセブン&アイ・ホールディングスや日立製作所、トヨタ自動車など10銘柄が年初来高値を付けた。日経平均株価採用の高値更新は34銘柄で指数全体の225銘柄に対して15%にとどまる。大型株の堅調ぶりが目立つ相場展開だったといえる。

 首相の表明前は、先物主導の相場上昇が続いていた。消費増税先送りが景気に好影響を与えるとの見方で、海外ヘッジファンドなど短期資金が目先的な値幅を狙う売買を膨らませてきたためだ。18日に首相が正式発表したことで「いったん材料出尽くし」との受け止めが広がり、こうした短期売買は一服してきた。

 このため19日の日経平均は取引時間中は方向感が乏しく、終値は前日比55円安と小幅に反落した。日経平均先物の日中売買高は5万5193枚で、直近では最も活況だった17日の11万2960枚から半分以下に落ち込んだ。

  株買いの担い手が変化してきたとの声は、まだ一部にとどまる。クレディ・スイス証券のバジル・ダン株式営業本部長は「海外の中長期投資家は持ち高を調整している程度。選挙はリスクとみて、結果が判明するまでは大きく動かない投資家は多い」と話す。市場では「相場が大きく反応してくるのは、各党のマニフェス ト(政権公約)が出て、選挙の趨勢が見えてから」(みずほ投信投資顧問の岡本佳久執行役員)との声もある。

 とはいえ、相場の主導権が短期資金から中長期志向の投資家に移りつつあることは確かなようだ。そうなると相場の安定感は増し、業績面での選別など個別銘柄を見極める目が一段と求められてきそうだ。 ≫(日経新聞)

TPPで暮らしはどうなる? (岩波ブックレット)
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●ネオコン妥協で欧米は“中露”を失い BURICsも失う恐怖

2014年11月20日 | 日記
綻(ほころ)びゆくアメリカ―歴史の転換点に生きる人々の物語
ジョージ・パッカー
NHK出版


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●ネオコン妥協で欧米は“中露”を失い BURICsも失う恐怖

 本日は、常々筆者が、欧米幻想にいまだ惑わされている皆様に、警鐘を鳴らしすぎて、ウザく思われているのは承知している。しかし、語るべきことは語っておくのが言論だと思う。以下の二つのコラムは、筆者の代弁者のように振る舞ってくれているので、嬉しくなって引用しておく。

 どんなに喚き散らしても、成長する地域はBURICs及びASEANを中心とするアジアである。ドル基軸は、国際通貨としての絶対的役割から、3割は地位を低下させるだろう。今後、更なる金融危機を起こす国の一番手はアメリカである。日本も危ないが、意外に消費者のノリが悪いので、バブルの再来には至らないとみるのが妥当。その点で行くと、アメリカ人ってのは凄い教養レベルだから、99%の一部を煽れば、必ずバブルを起こせる国家。

 だいたい、考えたら判ることだが、グローバル経済の中で、アメリカ経済だけが好調持続なんてことは、論理的に起きない筈なのだ。にもかかわらず、起きている。つまり、マジックハンドで起こしているわけだ。EUもロシアも中国も、中東もデフレの方向に進んでいるのに、どうしてアメリカだけがインフレGDPなのか。彼らは、我々がNO1だからなんて寝言を言っているが、そう云うことは経済論理からあり得ない。

 ≪ ウォルフレン氏 日本人は「プーチン=悪」の米宣伝信じ込む
30年以上にわたって日本政治を研究してきたカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(アムステルダム大学名誉教授)は安倍政権の「官邸主導」は日本の大メディアと官僚が作り上げた虚構だと指摘する。
  記者クラブ制度をはじめ数々の既得権を持つ大メディアにとっては「現状維持」が望ましいが、この点でメディアと官僚の利益が一致、安倍首相が何かを決断 しているかのような虚構を国民に振りまいているというのだ。ウォルフレン氏はこうした「現状維持中毒者」が日本を危うくすると警鐘を鳴らす。
 * * *
 日本国民は「虚構」の存在に気付き、現状を打破するために声をあげなければならない。現在の世界情勢は「現状維持中毒者」による意思決定で乗り切れるほど甘くはないからだ。
 米ソ冷戦の時代は、確かに核戦争の恐怖は存在したが、その一方でバランスの取れた「予測可能な世界」であったとみることもできる。日本は共産主義の脅威から逃れるために、ひたすらアメリカに付き従っていれば良かった。
 その後ソ連が崩壊して冷戦が終結した時、多くの人々は民主主義に基づく理想的な世界が訪れることを期待した。だが、現実は違った。アメリカの権力者は、新しい敵を必要とし続けた。そして米軍はイラクやアフガニスタンの泥沼に足を踏み入れていった。
 現状維持を志向するメディアと官僚は「ひたすらアメリカに付き従えばいい」という冷戦時代そのままの価値観を流布しようとするが、それを信じれば国益が著しく損なわれることになる。
 今年勃発したウクライナ危機が日本でどう報じられたかを見るだけでもそれはよくわかる。日本では、民主化運動の盛り上がりによってウクライナ国内に混乱が生じた隙に、ロシアのプーチン大統領がクリミアを併合して領土の拡大を図った、と理解されている。
 しかし、真実は全く違う。ウクライナ危機は、アメリカが中央ヨーロッパやアジア地域での支配権強化を目論んでいるがゆえに起きたものだ。
 アメリカの意図は、経済的な結びつきを強めるドイツを筆頭とする欧州とロシアの関係を分断することにあった。ウクライナの親露的な政府を転覆させるため に、右翼勢力に資金援助を行なったのである。その結果、(腐敗はしていたが)民主的に選ばれた政権が、クーデターによって倒された。欧州各国はアメリカの やり口を好ましくないと思いつつも、アメリカに従ってロシア制裁の道を選択してしまった。
 日本ではそうしたアメリカのプロパガンダがそのまま、官僚やメディアによってバラ撒かれた。「プーチン大統領は『悪』で、世界にとって脅威だ」と情報操作され、多くの日本人はそれを信じてしまっているのだ。
 戦後70年、日本政治のトップを占めるエリートたちは、アメリカの要求や要望に対して、時折反抗的な態度を見せながらも、最終的には隷属国としての振る舞いから外れないように政策決定してきた。安倍政権はそうした慣習を忠実に守っている。
 アメリカの権力者にとっては冷戦時代のような緊張状態は大変好ましいもので、「旧敵は決して消滅していない」と西側諸国に信じさせたい。だが、そうした緊張状態はいとも簡単に武力衝突を招き、世界に不幸をもたらす。日本人はそんな事態を本当に望んでいるのだろうか。

【プロフィール】1941年、オランダ生まれ。ジャーナリスト、政治学者。NRCハンデルスブラット紙の東アジア特派員、日本外国特派員協会会長を歴任。『日本/権力構造の謎』『人間を幸福にしない日本というシステム』などのベストセラーで知られる。 ≫(NEWSポストセブン:週刊ポスト2014年11月28日号)



≪中国・ロシア・ユーラシア貿易圏、オバマの“ネオコン策謀”を弱体化

プーチン大統領、経済制裁に反撃すべく、中国とアジアとの貿易を増大すると誓約
マイケル・ハドソン教授
The Real News 2014年11月13日
 中国とロシア間の、4000億ドル、40年間の石油とガス契約は、ロシアに対する新冷戦の圧力と経済制裁への反撃だと、マイケル・ハドソン教授は語っている。
  RNN製作責任者シャーミニ・ペリーズ: リアル・ニューズ・ネットワークにようこそ。私、シャーミニ・ペリーズが、バルチモアからお送りしています。
 今年、ウクライナにおける親ロシア派による社会不安とされるものに関与したかどで、多数の政府が、対ロシア経済制裁を課しました。対ロシア経済制裁 は、アメリカ合州国と欧州連合が率先し、多くの国々によって課されています。
 報復措置として、ロシアは、経済制裁に対して、多数の国々に反撃しています、 欧州連合、アメリカ合州国、ノルウェー、カナダやオーストラリアからの食品輸入の全面禁止を含め。
 ヨーロッパ、アメリカ合州国にとって、一体どういうことになるのでしょう。貿易協定に関する地政学的再編成はどうなるのでしょう? これを皆お話しすべく、マイケル・ハドソン氏においでいただきました。ハドソン氏は、アメリカのニューヨークから来られました。彼はミズーリ大学カンザス・シティ校の著名な経済学教授です。
 
ハドソンさん、今週、北京で、何が行われているのですか?

ミズーリ大学カンザス・シティ校経済学教授マイケル・ハドソン: APEC会議です。過去数年間、G20会合(ブリズベンで今週末開催)を含めて、そうした会合の大半で、何も実際にはなされてはいません。アメリカ合州国は、仲間外れとして参加しているのです。
 問題の的は、経済はどう発展すべきかに関する、二つの異なる見方です。中国は、民営化・大企業志向の貿易圏に入るのでなく、自らの貿易圏を志向して います。それは混合経済です。
 そこで現実にあるのは、中国経済は極めて急速に成長していて、アメリカ経済は停滞しているというものです。 この様な状況では、本当に、ほとんど言うべきことはありません。
 中国とアメリカ合州国とが、それぞれ自分達が、何があろうと推進するつもりのことを発表し、あたかも協調しながら、そういうことをするふりをしているのです。
 オバマ大統領は主として、アメリカの基盤、特に共和党に向かって、環太平洋戦略的経済連携協定に取り組むと語っています。彼の構想は、政府の環境規 制を廃絶し、金融に関する規制を廃絶し、金融規制改革の為のドッド・フランク法を事実上破棄する協定です。
 もし銀行が不行跡を働いたり、あるいは政府がよ り多い準備金を要求したりした場合、オバマ大統領が推進している新しい国際法の下では、政府が、民間銀行に対し、規制されていないかのごとく、金をはらわ なくてはなりません。そしてもし、ある政府が、ある企業に、環境汚染のかどで、環境上の罰金を科せば、政府は、その会社に対して、そのような罰金がなければ得たであろう金額を、何であれ、支払わなければなりません。
 アメリカ・マスコミの大ニュースは、中国が大気汚染を改善することに同意したというものです。もちろん中国は、そうしなければなりません。北京で住んだ経験があれば、汚染された都市だというのはわかります。ですから、これは、中国が向かっている方向の発表なのです。
 ロシアは、会合で、ガス輸出を増大する、中国との4000億ドル、30年間のガス契約を発表しました。多少の石油も中国に輸出されます。そこで、中国は石炭を使う工場を削減し、大気中の石炭の煙が減るというわけです。
 アメリカ合州国も炭素排出量を削減する予定だとオバマ大統領は言いました。しかし、彼はいまでも、カナダのアルバータ州から、タール・サンド・オイルをアメリカ合州国に送るXLパイプラインを推進しています。これは地球上で最も汚染の大きな活動です。
  発表されたのに、余り語られなかったものに、金融制度の変更があります。

 ペリーズ: 先に進む前に、ハドソンさん、中国は一方で、排出を削減すると約束し、アメリカ合州国と折り合いながら、その一方、ロシアとは、明らかに排出削減ではなく、増大する化石燃料の石油を含む契約をまとめるというのは、いささか皮肉ではありませんか?

ハドソン: あらゆる経済は、一定程度石油を必要とします。中国はガスでは済まない様々な用途に石油を使います。あらゆる国のGDPは、エネルギー消費に伴って増加し ます。過去百年間、産業革命の間も、生産性の上昇とともに、f労働者一人当たり、あるいは、生産高の単位当たりの、エネルギー使用は増大しています。
 つまり、成長を押し上げているのは、エネルギーなのです。そして、もちろん中国は石油を必要としています。実際、人々が豊かになる時の問題の一つは、自動車をもちたがり、車にガソリンを食うことです。ですから、もちろん中国はロシアからの石油に依存することになります。
 プーチン大統領は、これらの契約の結果、中国や他のアジア諸国とロシアの貿易は、ロシアGDPの、25パーセントから、40パーセントに増加しつつ あると語りました。
 これで、ヨーロッパは蚊帳の外に置かれます。会議で明らかになったのは、中国とロシアの一体化がおきつつあるということです。
 これは、 アメリカ外交政策が、1980年代以来、ずっと目指してきたことと真逆です。皮肉なのは、アメリカ合州国が、ロシアに圧力をかけ、NATOによるウクライ ナでの冒険後の経済制裁をしてきたのに、実際に起きたのは、ロシアと中国とのより親密化なのです。
  二国協力の最も重要な形は、ロシアは、いわゆるSWIFTシステムから独立した、自前の銀行間決済システムを立ち上げるという、プーチン大統領声明 に反映されています。
 ある銀行から、他の銀行に送金をしたり、どこかの銀行が、米ドルを使用したりする場合、アメリカ合州国にある、SWIFT決済システ ムを経由しなければなりません。 現在、SWIFT決済システムにはいっていない唯一の国はイランです。
 ロシアは、懸念しましたが、これがアメリカの手だったとわかったのです。アメ リカ冷戦戦士が本当に望んでいたのは、ロシアと中国を仲たがいさせ、両国の金融サービスを妨害し、両国の経済を混乱させることだったのです。
 そこで、ロシ ア、中国とイラン、そして多分他のアジア諸国も、現在、彼等自身の通貨決済システムを立ち上げる方向に動いています。SWIFT決済システムと、米ドルから独立する為に、ロシアと中国は、貿易と投資を、ドル建てではなく、ルーブルと元建てにしています。
 つまり、過去数日間、我々が北京で目にしたものは、ドル基準の否定であり、その背後にあるアメリカ外交政策の否定なのです。
  中国はオバマ大統領が、2009年にここに来た時以来、軍事支出を倍増しました。中国首席は、空なり、海なりで、不慮の衝突がないようにしましょうと、上品に言いました。彼が意味していたのは、“我が国のものだと我々が主張する島の上に、空域を設定したのだから、御国の飛行機が余りに我々の空域に接近しすぎると、我々はそれと鉢合わせして、撃墜するが、これをアメリカ攻撃とは思わないで欲しい。我々は決してそういうつもりはないのですよ。
 ” 中国は、実際、実力をふるっているのです。 オバマ大統領が、これらの会合で、いかにも居心地悪そうに見えこのはそれが理由です。彼は自分が望んでいたことは何も得られないことがわかっているのです。アジア諸国は、環太平洋戦略的経済連携協定に参加しようとしておらず、彼等は今やオーストラリアのブリズベンへと向かっています。 今後数日間、ヨーロッパが取り残されるのを目の当たりにするでしょう。
 アメリカ合州国とNATOが、ロシアに課せと主張した経済制裁は、フランス や、バルト諸国やヨーロッパの輸出に、ロシアが経済制裁をする結果になっています。フランス農民は既にデモをしていますし、マリーヌ・ルペンの国民戦線が、次回選挙で勝利する可能性があります。
 バルト諸国も、農産物輸出を失ったと騒いでいます。フランス、ラトビアや、ドイツすらもが、過去数年間、ロシアを成長市場として見なしてきました。ところが連中の指導者は、ロシア市場に関わるなというアメリカの要求に屈したのです。
 これでヨーロッパは、景気低迷状況におかれることになります。 ロシアを経済的に孤立化させる経済制裁については、これままさに、自国産業復興と、経済的独立を保護する為に必要なものなのです。中国と協力して、ロシアは経済を、中国、カザフスタンやイランの経済と統合しつつあります。
 ロシアは現在、少なくとも二基の原子炉を、イランで建設しようとしています。世界投資の中心は、アメリカ合州国もヨーロッパも置き去りにして、アジアへと移動してます。
  ですから、来週のG20ブリズベン会合では、アメリカ経済制裁から離脱しようとする、ヨーロッパの圧力の増加を目にする事になるでしょう。アメリカ合州国が、現在、外交的に行使しているのは、軍事圧力だけですが、ロシアと中国とは経済成長しています。市場と投資の機会が開きつつあるのです。
 アメリカ 合州国と中国との間で、ハイテク貿易の協定が結ばれたという事実にもかかわらず、アメリカは、基本的には孤立しているのです。これが、オバマ大統領が、会議で、あれほど元気がなく見えた理由であるように思われます。ネオコンに与えられた戦略が逆効果になったことを、彼はわかっているのです。

 ペリーズ: 最後に、ハドソンさん、今後、議会、共和党が多数を占める上院が、どのように対処するとお考えでしょう?

ハドソン: もはや民主党には対処する必要がないので、オバマ大統領は、共和党に対処するのを楽しみにしていると語っています。共和党は、彼の企業寄り、反労働者の環太平洋戦略的経済連携協定に同意する唯一の党です。彼は自ら、チェイニーや、ジョージ・W・ブッシュと同じ志の共和党だと言っています。
 ワシントンのハリー・レイドや民主党指導部から聞こえてくる雑音は、オバマが、経済の処理で大変なヘマをしたので、選挙に負けてしまったという非難です。まるで、自分達がしでかしたことではなかったかのように。あるいは、スティーブ・ イスラエル米下院議員が、共和党の縞が入った民主党ブルー・ドッグ(保守派)候補を支持したのを無視して。本質的にオバマが語ったことを、もし私が言い換えれば、それは“私は共和党で、私はウオール街を支持しています。”です。
 ロビイスト連中が環太平洋戦略的経済連携協定の中に盛り込んだ一種のおまけの実現を、彼は、強く要求するつもりであることを、共和党に知らしめようとしています。
 TPPとは一体何かを、しっかり説明しているロリ・ワラックさんを、この番組に既にお呼びでしょう。予想されるのは、オバマは、一層急激に右旋回し、共和党の支持を得、一方、民主党は、ヒラリーを支持しながら、苦し紛れに、 叫ぶふりをして、“おー、こんな奴を送り込んで、我々は一体何をしてしまったのだろう?”というのでしょう。

ペリーズ: マイケル・ハドソンさん、いつもながら、ご出演有り難うございます。
ハドソン: 呼んで頂けて嬉しく思います。ありがとうございます。 ペリーズ: リアル・ニューズ・ネットワークをお聞き頂き有り難うございます。 記事原文のurl:http://therealnews.com/t2/index.php?option=com_content&task=view&id=31&Itemid=74&jumival=12648
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≫(マスコミに載らない海外記事様サイトから引用)
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post-9910.html


ユーラシア胎動――ロシア・中国・中央アジア (岩波新書)
堀江 則雄
岩波書店


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●どこまでが人の富で、どこからがマネーの強欲かの見極め

2014年11月19日 | 日記
国家の暴走 安倍政権の世論操作術 (角川oneテーマ21)
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KADOKAWA/角川書店


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●どこまでが人の富で、どこからがマネーの強欲かの見極め

 巷もメディアもネットも、解散総選挙の話題で盛り上がっている。興味がないではないが、コラムに書くほどの興味は、なぜか起きない。再来年の春まで、安倍政権が生き残っている筈もないの、景気条項は削除した法案を成立させ、今度こそ本当に消費税を上げるぞ、と高らかに宣言している。例の集団的自衛権容認閣議決定の時も語ったことだが、権力を中道リベラル勢力が握れば、国家の根幹を何度でもひっくり返す事が可能だと教えてくれた安倍政権は、唯一の功績を遺したともいえる。

 戦後の日本政治に呪縛を与えていた、様々な制約が、横紙破りが通用することが判明したことは、あべちゃんの功績と云えば功績だ。ただ、そのことで外交的摩擦が激しくなることも証明された。その意味では、戦後レジューム脱却には、米国の足かせがある以上無理と云うことも判った。あったことでも、無かったと言い続けることが大切とか、無かったことも、あったと言って良いとか、色々と勉強させられた。菅官房長官に至っては、都合の悪い事が起きた場合「問題ない」と答える技術も参考になった。アメリカさんが良く口にする“ノー・プレブレム”ってことでしょう(笑)。

 今や、世界はデフレの奔流に突入しているのだから、EUや中国の経済成長の停滞は、ごく自然な現象であって、殊更に嘆く必要はない。「iPhone」が世界経済を波及的に牽引しているなんて経済で、世界経済が大きくうねりを見せることなどあり得ないでしょう!(笑)。「iPhone」じゃ負けるから、武器輸出だ。そんなにしてまで、経済成長したいわけ?アンタ、飯が食えないの?着る服がないの?住む家がないの?

 古臭い奴だとお思いでしょうが(これは鶴田浩二でしたね)、男は黙って(これは三船敏郎)、衣食住足りて礼節を知り、背中で語りかける器量が必要なだけですよ。無論、女の人の背中にも器量がありますけどね。高倉健氏が亡くなったが、彼のCMのセリフを出すつもりで、違う俳優ばかりの引用になった。あまり、CM向きな人ではなかったのかもしれない。

 健さんの記憶にあるCMはレナウンのシンプルライフだが、そうシンプルに生きていけば、衣食住+αで、充分、人は壮大な夢が見られる。大きなことも実現できる。その為に、身体に不釣り合いな脳みそを抱えている。エテ公じゃないんだから、脳みそをフル活用しよう。マネーの強欲な富と、人間的な富の境界線を見出す哲学が明確にならないと、果てしなく追い求め、足るを知らず、地獄の沙汰も金次第な人間ばかりになる。

 まあ、今日はわけの判らんことが書きたい日だったと云うことで、他意はない。中国経済が、大々的な汚職追放の所為で、経済が停滞しはじめたように書かれているが、そういう事ばかりではないだろう。富が一定水準に達したことから起きる、冷静さだと見ることも可能だ。逆に言えば、熱病から醒めて、痘痕は痘痕に見えてきたと云う健全な傾向かもしれない。EUは既に精神的成熟をみせているわけで、日本が一番早く、実は成熟したのかもしれない。それなのに、成長だ!という「空気」が政治家の足を引っ張っているのかもしれない。

 以下の日経のコラム、全面的に賛意を持つものではないが、かなり面白い情報にも触れることが出来るので、引用しておく。デフレが悪いと規定する前提は、経済成長神話であり、財務省からすれば、より借金の嵩が目立つので、インフレ起こして、目立たないようにしたい。出来たらチャラにしたいと考えていると云うことは、借金が自分たちの責任の範囲で起きた不都合だと云うことを、それなりに認識している証左かもしれない(笑)。


 ≪ 中国消費に異変 日系企業「内陸×おてごろ」で攻める
編集委員 後藤康浩

 行きすぎたインフラ投資やシャドーバンキングなど中国経済の異変を「未来世紀ジパング」は現地ルポも含め、伝えてきた。異変のなかに中国の経済や社 会のリスクが潜んでいると考えるからだ。中国の国内総生産(GDP)伸び率は今年7~9月期にはついに7.3%まで低下し、2015年には6%台に落ち込 むという予測も広く語られるようになった。中国の高度成長の「異変」である。ただ、その要因は輸出競争力の低下などだけでなく、習近平政権の「構造改革」 にあるのも事実だろう。

 ■腐敗招く「ぜいたく」にメス
  腐敗汚職の摘発はかつてない深さと広がりをもって進められている。前体制で中国共産党中央の指導部の一角を占め、石油産業に絶大な影響力を持っていた周永康・前政治局常務委員や人民解放軍のトップだった徐才厚・前中央軍事委員会副主席が摘発されるとは数年前なら想像できなかったことだ。腐敗を正さなければ 共産党一党支配への国民の信認は得られないという危機感が指導部には強くある。 腐敗にもつながる公務員や国有企業幹部のぜいたくにもメスが入れられた。高級な宴会は姿を消し、贈答品なども減った。海外視察と称した公費を使ったぜいたく出張にも厳しい制限が加わっている。高級レストランで毎夜繰り広げられた高額の茅台酒などによる乾杯も姿を消した。

  対照的に活発なのは中流層の日用品への支出だ。数年前まで北京や上海にできるショッピングモールに出店するのは欧米の高級ブランドが中心で、役人が公費を使って贈答用に購入したり、不動産や石炭などで大金を手にした事業家がこれ見よがしに買い物をしたりする姿だけが目立った。今、中国各地にオープンするモールはお手ごろな値段の実用性の高い商品を売る店が中心だ。そこで主役となっているのはニトリ、ユニクロ、ダイソー、JINSなど日本の製造小売業だ。 自ら開発し、生産した商品をお手ごろな価格で販売する、いわば“デフレ日本”で鍛えられた企業ばかりだ。しかも、そうした質実なショッピングモールは沿海部から所得の伸びが続く、武漢(湖北省)、西安(陝西省)、成都(四川省)など内陸に新規出店の中心が移っている。「内陸×お手ごろ」が日本企業の新しい 成功の方程式になってきた。

 ■日本の技術が医療を変える
 中国のお手ごろは実は日本企業にはチャンスだ。たとえば100円均一で売る商品は中国ではきりのよさから「10元均一」になる。それでも今の中国なら品質対比で割安に感じら れ、売れ行きがいい。だが、考えれば10元は180円。商品を日本から輸入すればもちろん物流費、関税などコストがかさむが、お手ごろ品は中国や東南アジア製が多い。やり方さえうまくすれば、中国市場は日本より高い利益率を得られる可能性もある。長いデフレと激しい市場競争に耐え抜いた日本企業は企業や店舗がひしめく中国でも高い競争力を持っている。ポイントは伸びる土地の見極めだろう。

  まったく違う分野で今回、日本の強さを感じたのは医療だ。「医は算術」が続く中国では医療格差が激しい。日本の皆保険制度になれた目からすると、カ ネを持たない人は切り捨てといった中国の医療の現状には憤りも感じる。そのなかで、少しでも効率的、効果的な医療を多くの人に与えようと高度な内視鏡技術を実地指導する大圃研医師(NTT東日本関東病院)の姿には心打たれた。使う内視鏡もペンタックス、オリンパスなど日本製ばかり。日本の技術、技能が中国の医療を改革しようとしていた。これも中国の“異変”のひとつだろう。

 11月のAPECで、日中首脳会談が実現し、日中関係は改善の軌道に乗りつつある。それが日中双方のプラスになる「ウイン・ウイン」の軌道であることを望みたい。 ≫(日経新聞)

【「私が見た『未来世紀ジパング』」はテレビ東京系列で毎週月曜夜10時から放送する「日経スペシャル 未来世紀ジパング~沸騰現場の経済学~」(http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/)と連動し、日本のこれからを左右する世界の動きを番組コメンテーターの目で伝えます。随時掲載します。筆者が登場する「緊急拡大スペシャル!“中国異変”第3弾」は11月17日放送の予定です。】

たかが一内閣の閣議決定ごときで
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●滑るアベノミクス、転ぶ異次元緩和 増税延期でもとまらない

2014年11月18日 | 日記
復路の哲学ーーされど、語るに足る人生
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夜間飛行


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●滑るアベノミクス、転ぶ異次元緩和 増税延期でもとまらない

 日本経済新聞の新聞紙上で“消費増税影響軽微”のフレーズは、同新聞社のキャッチフレーズに定着しそうな勢いだったが、当たり前だが、もう日本経済の惨状は、救いようがない。この新聞社が経済紙である事は、極めて忌々しい日本の経済界を象徴しているのだろう。今や、最も経済事情に暗い全国紙と認定して問題はないだろう。朝日の誤報どころではなく罪は重い。99%の人間を、「お前達だけが取り残されている」と云うコンプレックスを植えつけたのだから、害悪である。尤も、99%の中にネトウヨが5%くらいいるだろうから、94%の国民への詐術行為だと言える。

 マイナスGDPで日経平均が17日517円下げたが「GDPショック」と呼ぶそうだ。大手の証券会社さえGDPのマイナスに考えが及ばなかったようだが、生活者の真っ当な目で、今現在の生活状態を見れば、「相当に悪そうだ」と云う実感が伴うのが自然で、エコノミスト、経済学者、政治家、官僚らは、雲の上で生活しているために、生活者目線を失っているのだろう。嘘八百の増税の影響軽微と云う嘘をついたことを、忘れているのかもしれない(笑)。嘘も百回で眞に。そんなことはないのだ、ダメなものは、どこまで行ってもダメなのである。

 公益社団法人に属するエコノミストと称する奴らのメンタマも、腐れきっていると云うか、濁りきっている。彼らがまとめたGDP予測値も、猫の目のようにコロコロ変わり、年率4.01%増から年率3.66%増になり、2.47%増になったが、数値予測の下げは、まだ終わらないだろう。この調子だと、2014年度のGDP成長ゼロが、最も妥当な予測数値だと言えるだろう。マイナスにならなければ消費者の皆さんにお礼を言わなければならない。

 消費が戻ってくると云う過去のデータに根拠を求めているようだが、日本と云う国の、消費者の質が劇的に変わっているのだから、過去のデータは参考程度にするべきで、想像力が求められる。消費税を20%以上貰っても、「皆さんの借金は消えません」と云う財務省の宣伝が、実は命取りだったんだね。国民に「日本の借金は官僚たちが作りました。政治家が利益誘導に必要だからと言うので、ジャンジャン出し、途中でかなりピンハネしたけど、国民も良い思いしたンですよ。でも、借金は国が国民の皆様から拝借しているので、国民の皆様の借金ではありません」

 そのように、不都合でも真実を述べていれば、国民は必ずしも、将来を憂いて、「死んでも消費しないぞ」と云う心理に追い込まれることはなかったわけだ。つまり、官僚とマスメディアによる詐欺的脅しが効きすぎて、消費しない消費者を生みだしたわけである。これこそ典型的な自業自得である。拙コラム11月09日付「消費者とマネーの戦い 消費しないことで人間性を取り戻す」という見出しがあるが、まさに消費者の無言の抵抗がはじまった予感さえする。

 東証日経平均が17000円を超える相場の時点で、その1週間を切り抜くと、日本株式市場からファンド系の資金は38億ドル流出していた。資金が流出しているのに、異なるところから、それ以上の資金が流入したわけだが、民間や個人の資金が、それを埋めたと考える能天気はいない。誰が考えても、ミスターXの資金が流入したのだ。最近はミセスワタナベじゃなく、ミスターXだ。その正体は、今さら言うまでもない政府の公的機関の資金、及びGPIF資金である。以下のレポートが参考になるだろう。


 ≪ GPIFが政府系ファンドになる日(安東泰志)
ニューホライズン キャピタル会長兼社長
 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) は、日銀の追加金融緩和と同日の10月31日、新たな資産構成の目安を発表した。内容は事前にある程度予想されていた範囲のものであり、サプライズはなかったが、今後のGPIFの改革は、一般的に考えられているよりも大胆に進展していく可能性があることに留意が必要だ。

 ■株・債券半分ずつ、国内6割・海外4割
 前回も書いたように、GPIFの改革は、資産構成(ポートフォリオ)の見直しと、ガバナンスの見直しに大別される。
  まず、資産構成の見直しについては、GPIF運用委員会に設置された検討作業班がリスクとリターンの計算を踏まえた複数の案を用意し、三谷隆博理事長、塩崎恭久厚生労働相の認可を得て今回の発表に至ったものだ。運用委員会の委員は8名で、過去半年で7名が入れ替わった。特に、委員長に就任した米沢康博・早大教授と、委員長代理の堀江貞之・野村総合研究所上席研究員は、昨年11月にGPIF改革についての報告書を提出した有識者会議の主力メンバーだ。
 その有識者会議の報告書では、デフレからインフレ環境への移行に伴い、金利リスクのある国内債中心の運用を見直すことが提言されていたので、運用委員会は当然、同じ方向にかじを切った。すなわち、今までは 6割を占めていた国内債券の比率を大幅に下げ、「債券と株式を半分ずつ」「国内資産は6割、海外資産は4割」とされた。
 さらに、最近運用委員に加わった英投資会社コラーキャピタルの水野弘道氏はPE(プライベート・エクイティ=未公開株式)に造詣が深い。今回の見直しでは、いわゆる「代替投資」(株や債券など伝統的資産ではなく、PE・インフラ・不動産などの資産)についても資産全体の5%までを配分できることになった。特に、海外の公的年金ではPEへの相当割合の配分は常識であり、GPIFはようやく重い腰を上げたことになる。

 ■ガバナンス体制を強化
  資産構成変更の発表に先立つ10月29日、厚生労働省は、GPIFの組織改革の検討作業班を立ち上げると発表し、11月4日に初会合が開催された。また、10月31日の資産構成変更に際しては、GPIFの運用委員会から、理事長に対して、(1)内部統制を強化するために運用委員会の下にガバナンス会議を設置し、また、コンプライアンス担当者を配すること(2)リスク管理体制を強化すること(3)専門人材を強化すること、などを趣旨とするガバナンス体制の強化について建議があったことも明らかにされている。
 GPIFが運用を多様化するためには、その運用能力を格段に高める必要があるのは当然だ。現在のGPIFは、わずか80人の職員が約130兆円もの資産を運用しており、決裁権限は三谷理事長1人である。そして、理事長は所管の厚生労働省の影響を受けやすいといわれている。これでは、多様性のある運用はできないし、国民への説明責任も負えるはずがない。運用委員会の建議は理にかなったものといえるだろう。 なお今後を考えると、GPIFが「独立行政法人」のままでよいのかという問題に帰着する。
 独立行政法人の場合、最小限の予算で繰り回すことを第一原 則としているため、とことんコストを抑えることが優先されてきたからだ。今後、検討作業班では、GPIFの形態を独立行政法人から認可法人に変更し、合議制の理事会を設置することが検討されるであろう。それによって、専門性を持った理事が責任を持って運用に携わることができるようになるばかりでなく、特定の官庁や政府からの独立性を確保することができる。

■あってはならぬGPIF運用への政治介入
  今回のGPIFの資産構成の変更を発表したのは、日銀がサプライズの追加の量的緩和を行ったのと同日であった。日銀もGPIFも、それは単なる偶然だとしているが、多くの市場関係者は、政治的意図を感じたのではないだろうか。仮に、今回は、あくまでも「方針」についての話であるという理由で許されるとしても、GPIFの使命が年金受給者の利益を守ることであるとすれば、今後は、実際のGPIFの運用現場に政治が介入することはあってはならない。
 先述のように、GPIFを認可法人に変更し、合議制の理事会で運用をしていくことは、こうした政治介入を防ぐ意味でも重要である。 なお、資産構成の株式の比率が引き上げられたからといって、GPIFがこれから株式を買ってくると考えるのは早計だ。なぜなら、これだけの規模の資産を預かるGPIFとしては、資産配分比率を公表する前に株式を買うのが当然だからだ。
 そうでないと、株式を高値づかみし、自分で自分の首を絞めることになりかねない。実は、資産配分比率には一定の乖離(かいり)幅(乖離許容幅)が認められている。国内株式の場合は、元の資産構成割合12%に対して上下6%だった。しかも、GPIFの「平成26年度計画」では、今年度に資産構成の見直しが行われることを見越して、その乖離許容幅についても弾力的運用が許されていたことはあまり知られていない。
 6月末時点のGPIFの実際の株式運用比率は既に17%以上になっていたのだが、それは株価の上昇による自然増だけではなかろう。GPIFは、6月以降も、乖離許容幅を気にすることなく既に国内株式の運用比率を相当上げていた可能性がある。

 ■さらなる急進的な展開も
 このように、GPIFの改革は、運用委員会が刷新されて以降、資産構成・ガバナンスの両面で、実は市場の予想を上回るペースで進んでいると考えられる。しかも、筆者には、GPIFは、更に「その先」まで見据えているように思われる。
  それは、GPIFが日本の政府系ファンド(SWF)としての存在感を出していく方向だ。たとえば、中東やシンガポールなどのSWFは、特定の企業の株式の数十%を買うことなども普通に行っている。「国が民間企業の経営に口出しするのはけしからん」という意見があり、筆者もその意見には一般論としては賛成だ。
 しかし、GPIFの場合は、上述の組織改革が終わった後は、あくまでも純粋な投資家として、政府(国)から独立して(機関投資家に企業との対話を求める)スチュワードシップ・コードを果たす、という投資手法を取ることも決してあり得ない話ではない。
 将来的には、「未公開株やマジョリティー投資(議決権の過半を取る投資)については民間のPEファンドへの出資を通して行い、公開企業への50%未満の株式の取得は自己勘定で行う」というような方法で、 GPIFが日本企業の経営改革を促していくということもあり得ると筆者は考えているが、それは長期的な企業価値(株価)の向上を通して、広い意味で国益、 ひいては受益者の利益にもかなうものであり、注目していきたい。

*安東泰志(あんどう・やすし)  1981年に三菱銀行(当時)入行。88年からのロンドン赴任中に英国、欧州大陸の多数の私的整理・企業再生を、参加各行を代表するコーディネーターとし て手掛け、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ(私的整理ガイドライン)ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして参加した。三菱銀行企画部等 を経て2002年、フェニックス・キャピタルを創業。06年にニューホライズンキャピタルの代表に就任。三菱自動車など流通・建設・製造業はじめ数多くの 企業の再生と成長を手掛ける。最近は公的年金の運用改革に注力してきた。東京大学経済学部卒業、シカゴ大学MBA取得。事業再生実務家協会理事。
≫(日経新聞:マネーブログ カリスマの直言)


 以上のコラムは金融関係者の自己都合な意見の開陳だが、最も重大な論点が抜けている。GPIFのオーナーは、国民一人一人であり、その国民の意志確認はゼロなわけである。であるならば、監督官庁である厚労省とGPIFなる組織が、一定の範囲で、国民への損害に対し、補てんする規定等々がない限り、正直容認することは、「俺が上手く運用して倍にしてやるから」とお年寄りを騙す手口と変わらない。いや、騙す言葉さえなく「流用」元金保証ではない市場に投棄するのだから、相当にヤバい。

 コンプライアンス、ガバナンス等と綺麗ごとが並べられているが、GPIFが日本の政府系ファンド(SWF)の方向に向かっているのは、グローバル化とTPP参入を見越した金融の革命的自由化論に立っての枕詞だろうが、詐欺的世界に足を踏み入れるわけで、政治介入がない組織等と云うものは、この世に存在しないわけで、特に安倍自民のような政権が続く限り、幻想的おためごかしだ。トンデモナイ国家に我々も金を預けてしまったわけだが、裁量権を奪われているのだから、まな板の鯉なのである。18日の東証が大幅に下げたら、下げ止まらない感じだ。

日本‐喪失と再起の物語:黒船、敗戦、そして3・11 (上) (ハヤカワ・ノンフィクション)
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早川書房


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●那覇市長選で自公敗北、知事選は翁長 沖縄から変わる日本

2014年11月17日 | 日記
沖縄差別と闘う: 悠久の自立を求めて
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未来社


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●那覇市長選で自公敗北、知事選は翁長 沖縄から変わる日本

 2014年11月16日は“オール沖縄”が勝利した記念すべき日になるだろう。政府の「金目でしょう」と云う沖縄統治の常套手段に、毅然と立ち向かった沖縄県民の姿は見事である。有力な対抗馬のいなかった福島知事選ではあるが、福島と云う本土の有権者とはかなり味の違う答えを出したように思える。

 「沖縄の誇り」と云う大きな社会学的テーマを前面に出した翁長候補の戦略は、沖縄のアイデンティティとしてしまえば、本島だけの存在理由になってしまう面を上手にハンドリングした点では、高度な選挙戦術だと評価できる。仲井真現知事がどのような言い訳をしようと「最後は金目でしょう」の菅官房長官の掌で踊った情けなさが、今の沖縄県民の意志を強固なものにしていったことになる。

 菅官房長官が、飽きもせずに嘯いた「USJ誘致」も「500億基金」同様に胡散霧消するだろうが、よくもまあ恥じらいもなく、このような事を公言できる神経は、宮台氏ではないが「感情の劣化」そのものだろう。官房長官からして、教養の劣化を通り越し、感情の劣化を体現するのだから、永田町が、どんな世界なのか、思わず考えてしまうところである。

 また、今回はニュース性をマスメディアには隠ぺいされているが、同日に行われた那覇市長選において、前那覇市長翁長氏の後継者である城間幹子候補が、自民公明推薦の候補を破った選挙結果は、オール沖縄の「沖縄の誇り」を全世界にアピールする権利を取得した選挙だと評価できる。なにせ、沖縄県民、普天間飛行場、辺野古新基地と云う、重要ポイントの地方首長全員が、日米両政府が胡坐をかいたままの沖縄への基地押しつけ行政に反意を示しているのだから、相当手強いものになることは確実だ。

 皮肉な話だが、第二次大戦で米軍に上陸された唯一の地「沖縄」の不幸は「生贄」、「金目と基地負担」に翻弄され続けてきたわけだが、21世紀の日本の決断の一端を、その沖縄から教えて貰っているような状況に、本土でぬくぬくと生きている筆者としては、あらためて、権力と闘う民意と云うものを見せられた気がする。

 辺野古基地承認の撤回に至る法的プロセス等々は、テクニカルな部分なので、筆者は把握していないので対応は判らない。しかし、瑕疵は必ずあるだろうから、そこを突くのも手だし、世界やアメリカ自身の世論に訴えかけ、「空気」を醸成することも可能になる。沖縄から日本が変わる。正直、日本本土の国民たちの恥を世界に知らせることになるが、致し方あるまい。こういう悲しい言葉を書きたくないが、現状を見ると、そのような気分になってしまう。

 ≪ 那覇市長選、城間氏が当確 移設に反対、自公敗北 
 沖縄県知事選に立候補した前職の辞職に伴う那覇市長選は16日投開票され、無所属新人の前副市長城間幹子氏(63)が、無所属新人の元副知事与世田兼稔氏(64)=自民、公明推薦=を破り、初当選が確実になった。
 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設が争点の知事選との同日選だった。
 城間氏は、辺野古反対を掲げる前那覇市長翁長雄志氏の後継であることをアピール。選挙戦では翁長氏と並んで街頭に立ち移設反対を主張した。自民党を除名された那覇市議や共産、社民両党などが支援した。
 与世田氏も、辺野古推進の知事仲井真弘多氏と連携した選挙運動を展開したが及ばなかった。 ≫(東京新聞:共同)

◇那覇市長選開票結果
当101,052 城間 幹子 無新  
  57,768 与世田兼稔 無新        
            =確定得票=


≪ 沖縄知事選、翁長氏が初当選確実 辺野古移設阻止を主張
 沖縄県知事選が16日、投開票され、前那覇市長の翁長雄志(おながたけし)氏(64)が現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)氏(75)=自民、次世代 推薦=らを破り、初当選を確実にした。最大の争点だった米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設問題で、翁長氏は「移設阻止」を主張。県民が移設反対を明確に突きつける形となった。 安倍政権は8月に辺野古での海上作業に着手し、知事選結果に関わらず移設作業を進めるとの姿勢だ。しかし今後、県の判断が求められる工事関連手続きも予想され、計画の進展に影響が出そうだ。

 日米両政府が普天間返還に合意した1996年以降5回の知事選で、辺野古移設反対を掲げる候補の勝利は初めて。自民などが支える保守系候補と、共 産、社民などの革新系が争う選挙構図が沖縄では長く続いたが、今回は崩れた。翁長氏は自民系地方議員の一部や県政野党など幅広い層に支えられ、沖縄の政治 史に新たな局面を開いた。同日選となった那覇市長選でも、翁長氏の後継の前副市長が初当選を果たした。

 翁長氏は辺野古移設反対を繰り返し主張。「沖縄の誇り」を掲げ、仲井真氏による昨年末の辺野古の埋め立て承認に不満を持つ多くの県民から支持を集めた。当選後は、仲井真氏の埋め立て承認の過程を検証し、承認の撤回や取り消しも視野に入れるとしている。

 3選をめざした仲井真氏は、前回知事選では「辺野古移設反対」に踏み込むことは避けつつ「県外移設」を求める立場を取った。しかし今回は「普天間の危険性除去のためには辺野古移設が現実的だ」として、国の移設計画を積極的に推進する考えを強調した。

 政府とのパイプや観光客増加、失業率改善などの実績を挙げ、「流れを止めるな」と県政継続を呼びかけたが、埋め立て承認を契機とした逆風を跳ね返せなかった。前回、仲井真氏を推薦した公明は、辺野古移設に県本部が反対していることから自主投票とした。

 県民投票による移設問題解決を訴えた前衆院議員の下地幹郎(しもじみきお)氏(53)と、埋め立て承認の取り消しを掲げた元参院議員の喜納昌吉(きなしょうきち)氏(66)は支持を広げられなかった。  県選管によると、11月6日時点での選挙人名簿登録者数は110万8269人。 ≫(朝日新聞:泗水康信)

◇沖縄県知事選開票結果
当360,820 翁長 雄志 無新
 261,076 仲井真弘多 無現  
  69,447 下地 幹郎 無新  
   7,821 喜納 昌吉 無新        
           =確定得票=

     ………………………………………………………………………………

これが沖縄の生きる道
宮台 真司,仲村 清司
亜紀書房

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●世界の七不思議 GDP3位で「幸福度」最下位の日本

2014年11月16日 | 日記
昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来
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日本経済新聞出版社


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●世界の七不思議 GDP3位で「幸福度」最下位の日本 

 以下の記事は少々稚拙な部分があるが、ピュー・リサーチセンターの調査結果は、日本人の資質を的確に捉えているのかもしれない。同じような傾向が、韓国人にもあるところが、非常に面白い。犬猿の仲でありながら、「似ている」近親憎悪と切って捨てれば、ネトウヨが怒り狂うかもしれないが、真実に近いだろう(笑)。

 ディリーメールもキャリコネも、なぜGDP3位の日本の幸福度が最低なのか、分析を放棄している(笑)。この問題は、儒教に根ざす宗教や文化の影響が強いことを、彼らはわかっていないのだろうと思われる。日本人、韓国人には、おそらく手放しで「今はハッピーです」などと表現する文化がそもそもないのかもしれない。不幸でもそれ程不幸な顔もせず、凄く幸せでも、妬みを怖れ、非常に幸せなどと言わない傾向の文化がある事を理解してないようだ。

 韓国の場合は判らないが、日本の場合には、今は好くても、先々はどうだろう?と云う、杞憂と云うか、将来を見据えた上でと云う意識が織り込まれていることも考慮に入れるべきだろう。特に、経済的問題に非常に敏感になっている日本人と云うのが目につく。論理的に見込まれた不安と云うより、悪い方向に向かっていけば、どの辺まで悪くなるのか、ネガティブに物事を見るのは、日本人独特だろう。

 たしかに、老後の生活を約束していた筈の年金だけでは生活困難者になるのではないか?と云う疑念が浮かんでしまいそうな政治を眺めていれば、そのような状況を「杞憂だ」と笑い飛ばすのも難しい。経済誌などでは「固定資産除き老後資金は最低1千万円」などと煽られれば、気の毒だが不安になるのも肯ける。医療介護と年金生活費は、国家の責任だと思い込んで生きてきたのだから、今さら、「自助だ共助だ」と国家に責任逃れを言われたのでは、将来展望が真っ暗になる人々が多いのも肯ける。

 おそらく、調査に対して、他国は、素直に「いま」を受けとめたが、日本人は「いま」の中に「先々」をも含めて「いま」を考える伝統文化があるのだろう。また、戦後復興における経済成長が驚異的だっただけに、横ばいである事が後退のように思ってしまう罠もあるだろう。また、横ばいで、同じ生活が続くのなら悲観もしないが、横ばいだと、途中で掠め取る連中に食い尽くされ、残り滓を食べさせられるに違いないという疑心暗鬼も働くのだろう。自国の民が、こんな感情で政治を見ているというのに、内閣総理大臣は豪州で、豪遊しながら、三本の矢は着実に成功しているなんて豪語するのだから、そりゃ、筆者でも「幸福度ゼロ」である。漸く豪州でレームダックで暇になったオバマが、安倍と会談。速報など流すな!(笑)。


≪ 日本人の「幸福度」は先進国で最下位 「幸せはお金で買えない」国民性なのか  
 
米シンクタンクのピュー・リサーチセンターが2014年に世界各国の「幸福度」を調べたところ、国民1人あたりのGDPが向上した新興国における幸福度の伸びが顕著ということが分かったそうです。 英タブロイド紙のデイリーメールは、この調査結果を「幸せはお金で買えることが証明された(More money DOES make you happier)」という刺激的な調子で報じています。

 ■上位にはイスラエル、米国、ドイツ、英国

 この調査は世界43か国の国民に対し、アンケート形式で実施。「生活の満足度」をはしごに例え、考えうる中で「最も良い生活ができている場合」は10段目、「最悪な場合」は1段目を選ばせ、7段目以上と回答した人の割合で「幸福度」を算出しています。 2014年の「幸福度」では、イスラエルが75点、米国が65点、ドイツが60点、英国が58点といった国が上位を占めています。 一方、前回調査の2007年から最も「幸福度」が伸びたのは、インドネシアで35ポイント(23点→58点)。次いで中国(26ポイント)、パキスタン (22ポイント)、マレーシアとロシア(ともに20ポイント)と続きます。経済成長が著しくGDP(国内総生産)が上昇した国が目立ちます。

  経済や社会が比較的成熟してGDPも高い先進国は、「幸福度」では上位を占めていますが、欧米諸国の不景気の煽りをあまり受けなかったドイツを除き、「幸福度の伸び率」の動きはほとんどありませんでした。 GDPの高さと幸福度がほぼ比例していることから、デイリーメールは「幸せはお金で買えることが証明された」と報じていますが、その一方で、 「お金がなくても幸せな家族はいるし、お金持ちでも夫婦喧嘩が絶えず子どもがドラッグに走る家だってある」 というベトナム人のコメントを掲載するなど、お金が幸せの全てではない、という見方も一応フォローしています。

■インドネシアを大きく下回る「日本の幸福度」

  タブロイド紙のデイリーメールらしい拝金主義を煽る品のない記事ですが、寄せられたコメントには「健康」や「愛」といったお金以外の幸せの要素について触れているものが多く見られました。 「お金はモノを買うためだけのものじゃない。ストレスを減らしたり健康的な生活を保障するものでもある」 「お金があったって早死にする億万長者だっている。お金で健康が買えないこともあるよね」 「そんなに健康じゃなくても、真実の愛があれば人生は豊かになるでしょ」 しかし中には、こんな皮肉を言う人もいます。…

 「『お金で幸せは買えない』なんて言うのは、すでにお金を持っている人だけだ」 また記事によると、2014年の日本の「幸福度」は43点で、韓国の47点やイタリアの48点、フランスの51点を抑えて先進国最下位となっています(EU加盟国ではギリシャの37点がありますが)。これはインドネシアの58点をも下回っています。 日本は2002年が驚異の39点ですから、そこから見たらだいぶ回復したのかもしれません。

 とはいえ日本のGDPは、米国と中国に次いで世界第3位のはず。「幸福度はGDPに比例する」という推論を真っ向から否定する結果となっています。 GDPは高いのに、幸せを感じられない日本人。もしかすると「幸せを感じられないお金持ち」の皮肉が最も当てはまるのは、私たちなのかもしれないですね。
(参考)More money DOES make you happier (Daily Mail Online) / People in Emerging Markets Catch Up to Advanced Economies in Life Satisfaction (Pew Research Center) ≫(Excite・News:キャリコネ)


PS: 以下のレポートが正確だとなると、ここ最近の株価上昇の資金流入は何処のカネなのか?非常に興味深い。これも解散総選挙がらみの、公的資金による官制相場だとなると、自民党幹部議員のインサイダー取引疑惑が問題になる。

≪ [ニューヨーク 14日 ロイター] - バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが14日公表したリポートによると、12日までの1週間に日本の株式ファンドから世界全体で38億ドルが流出した。2010年5月以来の大幅な流出となった。 消費増税先送りへの期待から、日経平均.N225はこのところ約7年ぶり高値を更新しているものの、資金は流出した。日銀が10月末に実施した「サプライズ緩和」も株価への追い風となっている。 ボーヤ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオ・マネジャー、マーティン・ジャンセン氏は「日本をめぐるセンチメントはそれほど良好とは言えない。日銀の追加措置がそれを反映している」と指摘した。 同週、世界の株式ファンド全体には70億ドルが流入。3週連続で資金流入となった。債券ファンドにも75億ドルが流入した。≫(ロイター)

ドラッカーと論語
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ネトウヨ 「あれは知性の劣化ではなく感情の劣化だ」 宮台真司

2014年11月16日 | 日記

 

熱狂なきファシズム: ニッポンの無関心を観察する
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河出書房新社



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注:一昨日の宮台真司インタビューの後篇

【宮台真司インタビュー後編】
 宮台真司がネトウヨを語る「あれは知性の劣化ではなく感情の劣化だ」
 日本は反知性主義の時代に突入した。路上では排外主義的デモや人種差別が繰り広げられ、インターネットではネット右翼たちが跋扈している。政治家 はこれを利用し、自らの都合のいいように歴史の修正をもくろむ。そして、これらに対抗する言論はまだまだ主導権を握ることができていない。なぜなのか。  社会学者・宮台真司は言う──連中に理屈を説いてもムダ、と。この愚昧さが筒抜けの社会をひも解く鍵は〈感情の劣化〉にあるという。感情のるつぼと化した政治、ネット、ヘイトの深層を〈大衆〉という観点から分析する宮台。インタビュー後編をお届けする。
………………………………………………

 ──近著『これが沖縄の生きる道』で、内地と沖縄における〈我々〉意識の違いを論じていますね。そのなかで“感情”という概念を頻繁に用いつつ、ネット右翼たちへの言及もあります。とりわけ宮台さんが問題にする〈感情の劣化〉ついて詳しくお聞かせください。

宮台真司(以下、宮台)
 〈感情の劣化〉とは、簡潔に述べると、真理への到達よりも、感情の発露の方が優先される感情の態勢です。つまり、最終的な 目的が埒外になってしまい、過程におけるカタルシスを得ようとする傾向。別の言い方だと、感情を制御できずに、〈表現〉よりも〈表出〉に固着した状態です。

 ちなみに〈表現〉の成否は相手を意図通りに動かせたか否かで決まり、〈表出〉の成否は気分がスッキリしたか否かで決まります。部族的段階では「政りごと=政治」と「祭りごと=祭祀」とが区別されなかった。つまり〈表現〉と〈表出〉が癒合していた。癒合を支える前提が、濃密な共同性です。でも複雑な社会になると全域を濃密な共同性で覆えない。だから、文明的段階(帝国的段階)になると、必ず〈表現〉と〈表出〉が峻別されるようになります。

 例えばプラトンは、紀元前5世紀後半になると、政治に〈表現〉と〈表出〉の峻別を求めるようになります(哲人政治)。近代社会も複雑だから、〈表現〉と〈表出〉の峻別がないと社会システムが淘汰されてしまう。血縁集団であれ、企業組織であれ、国民国家であれ同じこと。だから近代では人々に以前より感情の制御能力が強く求められます。

──つまり感情が制御されないとき社会システムは崩壊する、と。具体例としてはどのようなものがあるのでしょう。

宮台 例えば、民主主義は無条件では成り立たない。民主制が健全に作動するには、エリートから庶民まで〈表現〉と〈表出〉を区別できなければダメ。 前編で話した通り、これが難しいことだと考えるのが大衆社会論の伝統です。大衆社会論は19世紀末に新聞大衆化と共に始まり、マスコミの発達に並行して深化します。未曾有の最終戦争だった第1次大戦の後、民主制が戦争を回避できなかった理由として、ラジオと新聞の感情的動員が挙げられました。

 いわく、人々 が分断され孤立すると、感情的に動員されて、選挙や議会決議で愚昧な開戦に道が開かれるのだと。動員される人々を〈公衆〉ならぬ〈大衆〉と呼びます。にもかかわらず、メディア的動員でナチスが誕生しました。第2次大戦後はナチスへの反省から、マスコミ効果研究と亡命ユダヤ人の批判理論が、人々が分断され 立した状態に置かれない条件を実証研究した。そして、分厚い中間層が可能にする近隣ネットワークが見出されました。

 幸い、第2次大戦後の20年間は重化学工業化と郊外化で──専門的には技術革新の限界効用の高さゆえに──先進各国で中間集団が膨らんで中流意識も拡がり、それを背景に民主制の妥当な作動を支える〈公衆〉が信頼された。ところが以降、まず福祉国家体制が財政的に破綻して新自由主義の時代が始まり、続いて冷戦体制が終焉して資本移動自由化(グローバル化)の時代が始まる。かくて過去20年間、先進各国の中間層が一挙に分解したのです。そして21世紀に入ると、先進各国で〈大衆〉の感情に訴えて溜飲を下げる勇ましい連中が、議員や大統領に選ばれるという〈感情の政治〉が始まり、資本移動自由化にブレーキがかからぬばかりか、浅ましい排外主義が跋扈します。

 ──たしかに、俗にいうポピュリスト政治家たちの躍動は、まさに宮台さんの言う〈感情の政治〉の必然であるように思えます。それはときに、社会の構成員から肝心の政策的関心を矮小化させるという意味で危険を孕んでいる。これを回避する方法はないのですか?

宮台 回避には、短期には浅ましい輩から主導権を奪うスモールユニットでの〈熟議〉と〈ファシリテイタ〉の組合せ(フィシュキン&サンスティーン) が、長期には〈感情の教育〉(ローティ)による〈感情の民主化〉(ギデンズ)が必要です。

 要は、〈感情の劣化〉を被った〈大衆〉を煽動する〈感情の政治〉を潰すべく、短期・長期の戦略を駆使して、〈大衆〉を排除して〈公衆〉を取り戻す。この課題設定は、過去20年間、政治学やその周辺で常識化しています。 スモールユニット(マイクロプロセス)が機軸だとされる理由は、マクロな風景が変質したからです。かつてはブルーカラーや地方出身者は見ただけで判りました。

 今は誰がマクドナルド難民やデリヘル難民なのか外見で判りません。しかも勝ち組も負け組もマクドナルドやネットを使うし、高偏差値大学の子もデリヘルで働く。だからウマクやれる奴とやれない奴の違いがあるだけと意識され、排除された者たちが連帯できなくなり、さもしい嫉みが蔓延します。また性愛ワークショップをして分かるのは、ブルーカラーや地方出身者が一目瞭然だった頃に比べ、性的機会からの排除が強い劣等感と嫉みを来たすこと。イケメンでも同じで外見から分からない。一部は劣等感を回避すべく草食化します。こうした状況を福祉学周辺で〈疑似包摂社会〉(ヤング)と呼びます。

 機会から排除された人々が、それを適切に意識できず、排除された人々同士が浅ましい妬み嫉みでつぶし合う。オーソドックスにはこれがヘイト現象の背景です。こうした分析が妥当なのは、ヘイト連中が、かつてのブルーカラーや地方出身者と違い、僕らの友人知人の範囲に見つかる独特のキモさを漂わせることで分かります。〈自意識の困難を社会の困難にすり替える輩〉独特の佇いです。

 ──ネット右翼やヘイターたちにその種の人々がいることは事実だと思います。しかし一方で、そこから社会保障の拡充やアファーマティブアクションの肯定を志向する人たちもいるんじゃないですか。とすれば、ネット右翼たちには他にも彼ら特有のメンタリティがあると想定されるわけですが。

宮台 最初に対処法のヒントになる話をしてから、現象をどう捉えるべきかを話します。僕が若い頃は「左翼」の時代でした。71年に麻布中学に入ると、すぐ半年近くの学校封鎖。それが解けても全校集会と学年集会の嵐だった。麻布中学も、中核と反戦高協と叛旗派など新左翼の牙城。大勢が三里塚に出かけ ました。教員には革マル教師連合の委員長もいて、中三の修学旅行の帰りに中核派の生徒によるレポで「撃沈」される事件もあった。まあ、暴力の嵐。僕の周辺では、“ヘタレ優等生“が日共やそのフロント学生団体の民青で、“ゴロツキ”が新左翼だと考えていた。僕の周辺の人間関係でも、イデオロギー以前に、佇まいとして、民青はキモくて許せなかったというところがあります。

 これとイデオロギーが実は関係していた。日共など旧左翼は〈システム〉を整えれば人は幸せになれると考える。だから平等主義一辺倒です。だがそれで良いのか。身を捨てて貢献したい共同体やパトリの存在こそ大切じゃないか。身を捨てて貢献したい共同体を持ち出すのは新左翼です。ちなみに〈システム〉とは損得勘定の〈自発性〉に覆われた領域。損得じゃない情念の〈内発性〉が賞賛される領域が〈生活世界〉。これはハーバマスの用語法ですね。紀元前5世紀来の思考伝統だと、計算可能性を重視するのが〈主知主義〉。情念を重視するのが〈主意主義〉。前者を左と呼び、後者を右と呼ぶのがシュライエルマッハ。その意味で、新左翼は〈主意主義〉で、実は右の系譜です。

 ──一般に右は、自集団が獲得したベネフィットを広範囲に配分することを好まないと思うのですが?

宮台 これは説明が必要だね。戦後の日本人は馬鹿になったので、市場主義が右、配分正義が左だと思い込む。ならば戦前の北一輝や石原莞爾や宮沢賢治 はどうよ。彼らは法華経ないし日蓮主義に帰依し、自他共に認める右だが、資本主義を否定したじゃないか。だから僕は高校時代からこう言います。社会が良くなれば人は幸せになると見るのが旧左翼。社会が良くなったくらいじゃ幸せになれないと見るのが新左翼。

 より一般的には、前者が左、後者が右。実際それが戦前の用語法でした。冒頭の言い方に翻訳すると、「話せば分かる」の〈表現〉一辺倒が左。言語化できない〈表出〉の基底を重視するのが右。その意味で、新左翼は右。それが70年代以降は、左といえば、戦後旧左翼の「話せば分かる」に頽落した。だから「左はヘタレで不格好、右が血気盛んで格好いい」というイ メージになった。もう言いたいことは分かったでしょう。昔は、ヘタレで不格好なイメージだったのは旧左翼だけ。血気盛んで格好いいゴロツキ新左翼がいた。

 ──なるほど、〈表現〉/〈表出〉の軸から考えると、昨今のリベラルの凋落も説明できそうですね。実際、リベラル的言説がネット右翼現象を充分に抑止できているとは言いがたいですから。

宮台 朝日新聞系の識者は、ネトウヨに対し、歴史を知らないとか教養がないとか言うだけ。歴史を知らないのも教養がないのも本当だが、それを「ネトウヨに対して」言っても始まらない。〈感情の劣化〉とはそういう現実を言うわけ。僕がハッキリ気づいたのは2000年のアメリカ大統領選だった。アル・ゴアが知能指数200、ブッシュは100以下の馬鹿、とネットで喧伝されたら、逆に「だったら俺たちはブッシュの味方だ!」という動きか盛り上がったわけ だ。

 同じことが安倍晋三にも言える。安倍が立憲民主主義の何たるかさえ弁えず、先進各国のエスタブリッシュメントから馬鹿にされまくっているのは事実だけど、それを指摘しても安倍支持者は動かない。それがB層狙いの意味です。B層とは「社会的弱者なのに、それを自覚できないIQの低い連中」のこと。 2005年小泉総選挙の際、竹中平蔵関連コンサルの戦略メモにこれを標的にせよと書いてあった。ネット動員を軸とする昨今の自民党の基本戦略でもある。この戦略は、民主制を妥当に回すことに反していたにせよ、先の〈疑似包摂社会〉を前提にした動員戦略として極めて妥当です。学生企業の取締役だった80年代 に統計的なマーケット分析の仕事をした僕の経験からも断言できます。

 ──「馬鹿だからこそ支持する」という心性は理解しがたいです。通常、愚かしさは恥ずべきものと考えられます。

宮台 ネトウヨは年長から見れば恥知らずな輩だけど、恥の感覚は周囲の視線を気にして初めて可能になります。河野太郎と河野洋平も区別できず、お門 違いに河野太郎に河野談話問題で文句をつける、劣化した輩を例にとります。ネットが一般化する90年代半ばまでなら「それは親父の方だろ。そんなことも知らねえの?」と周囲に一喝されて終了。なのに「それでも河野太郎は気に食わねえ!」と恥なく返せるのは、それを許容する〈劣化空間〉があるから。

 ネットは開かれた参加スペースに見えて、サンスティーンいわく「他を遮断して同じ穴のムジナだけで戯れる閉鎖空間」を与える。それが〈劣化空間〉。昔ならあり得ない恥知らずな議論が超伝導回路の電流みたいに永久に流れ続ける。その意味で、〈感情の劣化〉を被った人々が涵養や陶冶の機会に出会わずネグレクト(放置)されるのが、ネット空間の特性です。それが恥ずべき言論や行為が先進各国で蔓延する背景を与える。何度も言うけど日本だけじゃない。昨今のアメリカでのエボラ騒動もそう。アフリカで自己犠牲的にエボラ熱拡大阻止に奮闘した医師らが、科学的に無根拠な愚民迎合によって幾つかの自治体で隔離対象になり、オバマ 大統領が涙を浮かべて抗議会見をしたでしょう。

──彼らは根本からして反知性的であるようにしか思えません。教養がないから何かと比した選択を自発的に決定することができず、また想像力も足りないから相手の立場になって考えないということなのでは?

宮台 自分が日本人というだけでゴキブリ呼ばわりされたらどう感じるか想像しないのは、想像力より感情能力の問題だ。アダム・スミスは、資本主義が 神の見えざる手を駆動させるのは、市民が〈同感能力〉を持つ場合だけだと考えた。僕だって君だって、「日本人にネトウヨが大勢おり、それが支持する安倍晋三が首相をやっている」というだけで、他国でゴキブリ扱いされたくないよね。スミスの〈同感能力〉は、自分が嫌なことを人にしない感情の能力のこと。でも、そんなことを〈感情の劣化〉を被った輩に言っても始まらない。佐藤優の「反知性主義の時代」に知性的言説を発したところで所詮は一部界隈にしか届かない。届かない界隈には、知性的折伏でなく、感情的感染で臨む他ない。学校の教室なら、「◯△はゴキブリ!」みたいに、見も知らぬ人を一括して敵だ味方とホザく輩は、馬鹿認定で終了。ただのイジメられっ子になっちゃう。

──でも馬鹿認定して放置したことで、ヘイトやネット右翼が増殖していった部分もあるんじゃないですか?

宮台 そう。問題はそこなんだ。その場合、教室の全員が「◯△はゴキブリ!」と叫ぶ哀れな子だったら、どうだろう。特殊教室内で連帯して、「自分たちを馬鹿認定する世間こそ、ゴキブリの仲間、つまりゴキブリだ!」と言い続けるでしょう。そんな幼稚な展開が今この社会で起こっている。僕らが「ゴキブリ」なら、知的な折伏などできません(笑)。

 どうするべきか。初期ギリシヤの教育が参考になる。そこでは自立が尊ばれ、依存が恥とされた。だから絶対神を持ち出すセム族が軽蔑され、神が報いようが報いまいが、理不尽や不条理に体ごと突っ込む営みが愛でられました。ただし言葉で愛でるのでなく、凄い人の近くで〈感染(ミメーシス)〉することが奨励されました。アッシリア起源でギリシアに拡がったファランクス(集団密集戦法)が専らだったことが背景です。

 要は、キモいか立派かということ。結論です。僕が推したいのは “左翼ゴロツキ戦略”です。しばき隊が好い例。「ヘイトはキモい。YouTubeとかで観たらキモいオヤジとオバハンばかり。筋骨隆々としてタトゥーが入ったしばき隊の方が格好いいぜ」という戦略です。

 ──C.R.A.C.(旧・しばき隊)については「どっちもどっち」という意見もありますね。

宮台 「ニューズウィーク」の記事みたいに「どっちもどっち、喧嘩両成敗」などと言ってる場合じゃない。中間層分解を背景に〈感情の劣化〉を被った 人々が量産される今日では〈感情の政治〉に〈感情の政治〉で対抗する他ありません。威勢のいい排除主義者に感染しがちな人々を前に、“排除主義者”と“排除主義者を排除する排除主義者”が戦う構図です。 宗教者ならどちらも同じだと言わなければならないだろうが、どっちもどっちという者はどこの宗教者なんだ。むろん“排除主義者”と“排除主義者を排除する排除主義者”とでは国際的なウケが全く違う。

 ヘイトデモが国連人権委員会から日本政府への勧告を招く一 方、11月2日の反ヘイト東京大行進は海外メディアが好意的に報じたでしょう。〈感情の政治〉に〈感情の政治〉で抗う場合、別の次元にも注目する必要があります。 これからはビッグデータ処理で浮かび上がった相関関係を使った政治的動員がますます優位になります。そうした動員のイメージを紹介します。道徳心理学者J・ハイトは実験心理学的には政治的表現に5つの感情の押しボタンがあるとします。

 ケアという弱者共感、公正と自由たる平等、忠誠たる伝統、秩序をなす権威、そして聖性。アメリカの民主党は、このうち弱者共感と平等のボタンしか押さないでやってきたと言います。他方の共和党は、弱者共感と平等のボタンを(やや低頻度であれ)押した上、伝統・権威・聖性のボタンも押すから選挙に強いが、オバマは従来の民主党候補と違い、伝統・権威・聖性のボタンも押したから大統領になれた、と言います。過去2年性愛ワークショップをやってきて思います。今は僕が指南するけど、未来には胸につけたカメラとマイクから情報を受け取ったサーバーが、小型イヤホンを通じ、ビッグデータ解析に基づく指南をリアルタイムで送ってくる⋯…。これは便利だが、それでナンパに成功したとして、いったい誰の達成か。そこでは主体の在処が疑問です。

 ──ビッグデータの時代では政治の場にどのような変化が見られそうですか。

宮台 人々がビッグデータ処理に基づいて感情のボタンを押されて投票する場合も、投票行動の主体性の在処が疑問になります。ネットでは、検索語の検 閲や、検索語に関連する広告表示(アドセンス)や、購買履歴のアグリゲイション(集計)に基づくお勧めについて、疑念がくすぶってきました。今後はその比でなく、ビッグデータ解析が常套手段になります。ビッグデータ解析は予測に基づく行動制御を可能にするので、カネ儲けだけでなく、政治的動員も使えます。

  でもビッグデータ解析の利用機会には階層格差がある。だから富む者が一層富み、力を持つ者が一層力を持ちがちです。ここでも「感情でなく理性で戦う」と呑気なことを言っていたら、ビッグデータ解析を用いた広告代理店的動員に敗北します。同じやり方で抗うか、顔が見えるスモールユニットでの〈熟議&ファシリテータ〉で抗うか、です。ビッグデータ解析を用いた動員は、感情の押しボタン等に関する情報非対称性(知る者と知らない者の差)を利用するけれど、〈熟議&ファシリテータ〉の組合せは完全情報化の戦略なので、ユニットは小さいながらも有効に抗えます。

──では今、知識人はどう振る舞えばよいのでしょうか?

宮台 知識人はアル・ゴア的なポジションに追い遣られがち。「頭がいいからイヤな奴だ」と。中間層分解による〈感情の劣化〉とネット的分断による 〈教養の劣化〉を背景にした〈感情の政治〉を、理性的説得では越えられない。マクロには、ヘイトデモに抗う反ヘイトデモにせよ、広告代理店的動員に抗う広告代理店的動員にせよ、〈感情の政治〉に〈感情の政治〉で抗う他ない。ミクロには、〈熟議&ファシリテータ〉の組合せで完全情報化を図る他ない。それで言えば、このリテラは、ゴシップ的に相手の梯子を外す“左翼ゴロツキ路線”の下品さで〈感情の政治〉に参戦しているし、従軍慰安婦問題や朝日捏造記事問題など丹念な探索で完全情報化を図っている。良い方向だと思う。

──ここまでの宮台さんの話を聞いていると、ネット右翼はとるに足らない存在のように思えますが、実際には朝日報道問題への反応などから察するに、無視できない影響力を持っています。

宮台 違うと思う。言論の場に参加する年齢層が若くなって若干敏感になっただけで、僕らの世代は気にしていないと思う。気にしているのは、ネトウヨ の動向じゃなく、それをカサに着た首相官邸の意向でしょう。映画監督の想田和弘氏が、昨今は〈参加民主主義〉ならぬ〈消費者民主主義〉に傾斜しがちだと言います。

 僕の言葉では、政治をネタに鬱屈を晴らす〈表出〉が、〈表現〉より優位する。要は〈実存と社会の混同〉。これはクソ。ネットに集う──その延長上 でオフネットに出現する──ネトウヨが、政治に〈参加〉しているのか〈消費〉しているのかは一目瞭然です。でもそれは、マスコミの政治談義が〈消費者民主主義〉に過ぎない事実の「映し鏡」です。他の先進各国のように地方議会をウォッチせず、専ら霞が関がどうたら永田町がどうたらといったコミュニケーションに淫するマスコミと大衆の存在が、〈消費者民主主義〉を象徴します。それが「痴呆議会」とネトウヨを準備したわけです。

──しかし今日の言論の模様を、若い世代は基本的にネットで受容しているわけで、消費のために編み出された言論を〈ガチ〉だととらえる。すなわち「そうか納得!やっぱ朝日って売国奴だわ」というふうになり、政治参加にまで向かう層もいるのではないですか?

宮台 そう。だからこそ、しばき隊やリテラが体現している“左翼ゴロ路線”が有効なんだ。なぜ有効かといえば、まさにその“消費という場所”で戦え るからです。今までそういう戦い方がヘイトに独占されていたのを奪還するわけだ。それを圧倒的な〈知的物量作戦〉を伴った形で遂行すると良い。

  これには実例がある。1979年3月から2004年4月まで25年間続き、僕もたくさんゴシップを書かれた「噂の眞相」が、まさにそれを実践していたじゃないか (笑)。世の中に鬱屈した連中がいて、ネタは何でもいいから〈表出〉したいと思っているなら、「君たち、政治ネタを消費するなら、こっちの方が格好いいぜ」と“ガス抜き勝負”する部門が、ネトウヨだけでなく多方面になきゃいけない。僕たちが中高生のときに経験した学園闘争だって、今から振り返れば、ネタは何でもいいから〈表出〉したいという“ガス抜き”という面があったことは否めない。だって「暴れられて楽しかった」っていう同級生がたくさんいたしね。

 ──“ガス抜き”だけで本当にいいんですか?

宮台 “ガス抜き”だけでいいわけないじゃないか(笑)。ここでの僕の話も“ガス抜き”かよ。ただ、“ガス抜き”勝負になっているとき、そこで建設 的かどうかなんて考えても、そもそも勝負のフィールドを勘違いしていると言いたいわけ。昨今重要なのは多方面作戦です。1960年代から70年代にかけて の人文書全盛時代のような〈知的物量作戦〉の機能的等価物を復活させなければいけないし、同時代の“左翼ゴロツキ”の機能的等価物を復活させる必要もあります。ただし、間違っても、〈知的物量作戦〉によってネトウヨを論破できるとか説得できるとか思っちゃいけない。同じく「彼らにも他者の悲しみを自分の悲しみとする能力があるはずだ」などと考えるのもダメ。現実を見ましょう。
 (語り手=宮台真司〈敬称略〉/聞き手=HK・吉岡命)

■宮台真司プロフィール 1959年生まれ。社会学者。映画評論家。首都大学東京教授。権力論、国家論、宗教論などに通じ、なかでも女子高生のブルセラや援助交際の実態などを フィールドワークにより明らかにするなど、性愛論や文化論に関する著作で若者たちから熱狂的な支持を集める。近著に、作家・仲村清司と沖縄問題について対談した『これが沖縄の生きる道』(亜紀書房)がある。 ≫(リテラLITERA:社会・宮台真司インタビュー)

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●日本の疫病神参上!“野田佳彦” 野党潰しに奔走か?

2014年11月15日 | 日記
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●日本の疫病神参上!“野田佳彦” 野党潰しに奔走か?

 民主党を財務省に売り渡し、既存の勢力に媚を売った天下の田舎者・野田佳彦が、恥も外聞もなく「選挙応援活動全開宣言」なるものをして、暗に野党潰しに奔走するようだ。時事通信が以下のように報じていが、「社会保障と税の一体改革」と云う名称を敢えて外している。議員定数の削減など、どうでもいいことで、削減より、議員歳費の削減と政党助成金の廃止の方が筋は通っている。

 野田の詭弁はとまらない、「社会保障と税の一体改革」が「国民に負担をお願いするなら」、当然、社会保障を充実させるものだと、誰もが思うだろう。ところが開けてびっくりだ。社会保障は削減ばかりが目立ち、且つ、現役世代に対しては負担増なのだから、すべてが財務省中心の霞が関官僚の騙されたか、確信的にバカ殿の役回りを演じ、永遠の国会議員の地位とバーター取引したかの、どちらかだ。騙されたとしても、一国の総理だったのだから、騙された己の責任を回避できるわけがない。

 このように、民主党を叩き売り、国民に大枚な税負担を押しつけ、分配どころか、更なる保険料とかの負担を強い、その上、その消費増税のお陰で、今や、“アベクロノミクス”は風前の灯火になっている。考えてみれば、尖閣国有化で、日中関係も最悪を迎えたのも、この田舎者のお陰である。その野田佳彦が選挙応援をするという。筆者から見れば、選挙運動荒らしな行動なのだが、民主党候補者は、この男の応援を依頼するのだとすると、落選運動を自ら行っているのに等しいだろう。

 穿った見方をすれば、自民党に有利な展開になるために、天下の裏切者が、民主党候補者の応援だと称して、またまた「シロアリ退治」と云う嘘をかませるのだとすれば、これは猛烈な逆風が民主党候補に吹きつけることになる。謂わば、野田は公然と選挙運動妨害を宣言したも同然だ。やはり、民主党と云う政党は、野田、前原らを排除しない限り、どうにもならない政党となり、10年以内に消滅する可能性が大いにある。

≪ 民主・野田氏、「活動全開」宣言
 「抑制的にやってきたが、もうそうは言っていられない」。これまで本格的な政治活動を控えてきた民主党の野田佳彦前首相は14日の講演で「活動全開」を宣言した。
 野田氏は首相として2012年に衆院を解散したが、民主党は衆院選で惨敗。その責任を感じ、言動も抑え気味だった。しかし、当時、解散の条件として安倍晋三自民党総裁と約束した抜本的な定数削減は政権交代後も実現しないままだ。
 それから2年。政界は再び衆院解散・総選挙の流れとなっており、野田氏は「約束を破られた相手は私だ。前面に出て全国の仲間を応援していく」と誓っていた。 ≫(時事通信)

 話題は変わるが、時事通信の世論調査によると、≪従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めて謝罪した河野洋平官房長官談話に関し、「見直すべきだ」との回答が45、1%で、「現在のまま踏襲すべき だ」の32.6%を上回った。≫と云う調査が報じられている。仮に、この調査が本物だとすると、日本人の思考経路はズタズタに破壊されているようだ。河野洋平官房長官談話だけで、従軍慰安婦問題が非難されているのではなく、事実が、談話以外にもあったわけで、今さら、この問題を蒸し返すことこそ、未来志向に反するのだ。

 従軍慰安婦問題はあったと世界が追認しているのなら、そうかもしれないで良いわけで、それ以上でも以下でもない。腹の中で、その実行の方法が稚拙であった、と反省することかもしれないが、公には頭を垂れ続けても、特段の損失があるわけではない。安倍が、世界中に国民の財布から金を抜き取り、ばら撒いている金の1/100以下で片づく話。永遠に、誹りを受けるだけで、何ら有益性のない感覚である。

 もう一つ、お笑いな話題があるようだ。どうも、消費増税延期決定に際し、「景気条項」を削除して、世界に向けて、財政健全化への意思を明確に示し、金利急騰(国債暴落)といった混乱を未然に防ごうとなんて馬鹿げたことまで議論されているそうだが、どうも財務省も、景気後退は確実なので、延期やむなしだが、将来的に絶対増税を担保する戦略に切り替えたのかもしれない。しかし、経済の好転より先に、世界的デフレの波が地球上を席巻するだろうから、そんな姑息な小手先の議論は阿保くさい。まあ、今夜はこんなところで。 時間出来次第、宮台のインタビュー記事は掲載予定。

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