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世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●「アベを倒したい!」金平茂樹vs室井佑月対談

2019年04月27日 | 報道

●「アベを倒したい!」金平茂樹vs室井佑月対談

本日多忙につき、以下に、リテラ掲載の正統派言論人、金平茂樹氏と室井佑月氏との対談「アベを倒したい!」を参考掲載します。リテラでは、前・後半に別れていましたが、一気掲載です。

:全体に流れている情報に捏造や盛ったような話がないことは、筆者が確認した。

しかし、産経新聞がすべて無料でネットにニュースを流し、朝日。毎日、日経、読売などとの差別化が、実は、若者世代のメディアリテラシーに重大な瑕疵があることが判ったことは重要だ。




≪室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第13回ゲスト 金平茂紀(前編)


金平茂紀と室井佑月、萎縮するテレビで孤軍奮闘を続ける二人が語る実態! メディアはなぜ安倍政権に飼いならされたのか



 



 安倍政権の言論弾圧体質によって、どんどん悪化している報道の萎縮。なかでも、ひどいのがテレビだ。第二次安倍政権発足以降、政権に批判的なキャスターやコメンテーターが次々と降板に追い込まれ、上層部から現場までが政権の顔色を窺い、批判的な報道はほとんどできなくなっている。

 そんななか、今回は地道に果敢に政権批判を続ける数少ない番組のひとつ『報道特集』(TBS)キャスターを務める金平茂紀氏をゲストに迎えた。金平氏といえば、『筑紫哲也NEWS23』番組編集長、TBS報道局長、アメリカ総局長などを歴任。定年退職後の現在も、『報道特集』キャスターを継続し、政権への厳しい批判も厭わない姿勢を貫いている。

 そんな金平氏に、やはりテレビでコメンテーターを続けている室井佑月が迫る。なぜテレビはここまで萎縮してしまったのか。御用ジャーナリストが跋扈する理由とは何か、そして、安倍政権下でテレビに何が起きたのか。テレビで孤軍奮闘を続ける二人の激論。まずは、前編をお読みいただきたい。 (編集部)

********************

室井 金平さんがこの対談に出てくださってすごいびっくりしました。これまでレギュラー的にテレビに出ている人にはみんな断られていたんです。金平さんは『報道特集』のキャスターをしているのに、こんな対談に出てくださって!

金平 僕はもう2016年にTBSの執行役員の任期も終わっているから、契約ベースでやっている。というか、TBSも扱いかねているんじゃないですか? TBSには定年まで長く勤めていたけど、以前、室井さんと一緒に共謀罪反対の呼びかけ人をしたことあったでしょ? あの記者会見をやった1週間後に呼び出されて上層部に言われたんです。「お引き取り願おうか」と。呼びかけ人と直接の因果関係はないんだろうけど、「もうそろそろ、こういうことをやる人間は扱いかねる」っていう空気があったんじゃないかな。

室井 あると思います(笑)。だって、わたしも同じですから。かれこれ20年情報番組に出ていますが、最近は毎回、会議で名前が挙がってるみたい。「次、降板」って。でも、わたしを降ろしたあとに番組と同じ考えの人を呼んじゃうと、わかりやすすぎるし、ちょっと休んだだけでネットにすごく書かれるから、降ろされそうで降ろされない(笑)。まあ、今後は分かりませんけど、たぶん、五輪前に辞めさせたいんじゃない。

金平 こう言っちゃなんだけど、同じような立場の2人で対談なんかやっていいのかな(笑)。

室井 TBSはかつて“報道のTBS”と呼ばれていて、とくに『筑紫哲也NEWS23』 時代の、家族でやっているような雰囲気は大好きでした。金平さんも筑紫ファミリーだったでしょ。

金平 筑紫時代は全スタッフ、そして番組もが一体となった感じで、うまく回っていた。筑紫ファミリーという疑似家族のような。でも、いまでは良き疑似家族はとっくに壊れています。「老壮青」って言っていたんですけど、いまは誰もファミリーとか思っていない(苦笑)。

室井 でも、TBSと言えば報道だったじゃないですか。

金平 かつてね。

室井 いまでも他局よりは頑張ってると思うけど。

金平 他が酷すぎるんでしょう。論評にも値しないようなところがほとんどになっちゃって。僕はいま65歳だけど、僕らが学生時代のテレビは、NHKは体制を代表する本当のことは絶対言わないメディアで、“お上の代弁者”として捉えられていた。そんななか、民放の報道ではTBSが圧倒的に強かった。かつて『JNNニュースコープ』(1962〜1990年放送)という番組があって、田英夫や古谷綱正、入江徳郎とかのベテランどもがいて、結構な迫力があったんです。当時、「NHKとTBS、どっちが本当のことを言っているのか」と問われれば、みんながみんな「TBSに決まってるじゃん」と言うくらいに力があった時代だった。その頃、他の民放は、テレ朝は、NET=「日本教育放送」時代で報道には力を入れていなかったし、フジテレビは娯楽路線、日本テレビはプロレスと野球。報道をやっていたのがTBSだった。だから本来強いのは当たり前なんです。

■ワイドショーが報道化して報道がワイドショー化、重要な問題が無視

室井 でも今後はどうなんですか? わたし、情報番組に20年出てますけど、どんどん変わってきていると実感していて。たとえば政治的な問題が起きても、ワイドショーで取り上げるのは「細野豪志が二階俊博と会った」とか本質に関係ない話ばかりで、あとは安倍応援団が安倍首相の代弁を主張していて。

金平 かつてワイドショーとストレート報道の関係は、新聞社でいうと週刊誌と本紙みたいな、妙な上下関係があった。「報道は偉いんだ」という意識ですね。ワイドショーや情報番組はいわゆる井戸端会議。でも、現在のようなネット社会になり、ネットで出ている言葉と、印刷されて出るオールドメディアの言葉が受け取る側から見ると等価になっている。そんな時代ですから、報道番組もワイドショーも等価と捉えられる時代になっちゃった。だからテレビの本質からいうと、どっちもどっちなんです。

室井 テレビも視聴率至上主義だから、森友事件や辺野古新基地建設のことより、「貴乃花が離婚した」ということを取り上げる。ある意味仕方ないとは思うけど、カルロス・ゴーン事件では、その本質にはほとんど触れず、ゴーンが釈放されて変装していることを延々とやる。すごく変だし、本質をごまかそうとしている意図を感じるほど。

金平 ワイドショーが報道化して、報道がワイドショー化したということじゃないかな。いま、夕方のニュースを見ていてもほとんどワイドショーじゃないですか。やってるネタも変わらない。「テレビなんだから同じ」と平準化されてしまった。

室井 テレビ局も番組づくりを制作会社に任せている体制だし、制作会社もなんだかネトウヨ路線の会社も多くなっていて。だからそういう政治ネタを延々流されるより、むしろ「スズメバチが民家の軒先に巣をつくっちゃった」という特集を組んでくれたほうがマシって思っちゃいますよ。しかも沖縄の基地問題という日本にとって需要な問題も、アリバイ的に触れるだけ。

金平 興味ないもん、制作側も視聴者も。実は本土の多数派は沖縄のことに興味ないんですよ。悲しいですけれど。

室井 あります! わたしは興味ありますよ。だって基地問題は沖縄だけの問題じゃないもん。

金平 本来はその通りなんです。僕も在京メディアのなかでは沖縄問題を取り上げ続けている自負はあるし、通い続けてもいる。でも、普通の報道マンは違う。「沖縄やったって数字ついてかないから、やったって仕方がない」と平気で公言している局員もいます。

室井 取り上げ方だと思う。「安倍政権に歯向かってる」みたいなつくり方したら、みんな面白いから絶対見るはず。

金平 いやいや、「安倍政権に歯向かってる」というつくり方をしようと思う報道関係者なんて何人いると思ってるんですか? 室井さんも本当はわかってるでしょう。どんなスタッフがどういうことを考えながら原稿を書いているか(笑)。

室井 確かに、すっとぼけて論点をずらしてるとは思います。それは嘘をついているのと同じことだと思う。たとえば、消費税を取り上げるにしても、ポイント還元の話を何時間も延々とやる。それより増税前の約束と違う使われ方をされようとしていること、大企業は減税されて税収入のトータル額はほとんど変わってないということを指摘すべきなのに。

■メディアが生み出した安倍政権の傲慢、統計不正問題でも厚労省が酷い会見

金平 わかりやすいからね。自殺した西部邁さんが言ったようにJAP.COM(アメリカ属国株式会社)になっちゃったんだよ、日本は。西部さんの言う通りで、国全体が株式会社みたいになっちゃって、儲けをいくらにするとか、ポイント還元とかの話ばかり。日本人のなかに数値主義、視聴率主義がすっかり根付いてしまった。でも、日本の1968、69年頃はめちゃくちゃ面白かったんです。たとえば最近、「1968年 激動の時代の芸術展」に行ったけど、赤瀬川原平のニセ千円札事件についての展示があって。ニセ札をアートとして制作したが起訴された事件だったけど、裁判になって、法廷で証拠物として“ニセ札”が陳列された。それを彼らは「展覧会」と称していて。しかも当時、時代の最先端にあった彼らは数値をバカにするんです。何でも数値化して何かやるのって「バカじゃないの?」って。でも、いまは数値、数値、ポイントポイントばかり(笑)。原子力資料情報室の伝説的人物の故・高木仁三郎も、1970年代、すでに「朝日ジャーナル」で数値化への批判をしていた。数字を物神化させ、それが唯一の価値の尺度となっている批判だったけど、実際、いまの世の中そうなってしまっている。もちろん税金の話もね。

室井 消費税増税にしても「ポイント還元で儲かる」って言われても、そもそも自分たちが払った税金でしょ。それを還元するって言われてもなんだか詐欺にあっている気分だもの。詐欺といえば、福島第一原発の事故対応費が民間シンクタンクの資産によると最大81兆円だというのが朝日新聞に出ていたけど、数値化がそんなに好きなら、81兆円ってすごく大きい金額だし、ワイドショーで出したら国民ぶったまげだと思うけど、ぜんぜんやらない。

金平 いまの政権にとって数値は自分たちの主張を通すための後ろ盾として使う道具だって考え方だから。数値は客観的な事実とか、そういうものではないという。道具だから。だから都合のいい数値しかあげられない。都合の悪い数値は隠す。

室井 最近では厚生労働省の統計不正なんか典型でしたよね。国民を騙すために政権と官僚が好きなように数字を操作できちゃう恐ろしい時代だと実感しました。

金平 ひどい話だよね。あのとき、厚生労働省が報告書を出したときの記者会見に行ったんです。厚生労働省特別監察委員会の樋口美雄委員長が、とにかくひどかった。会見の時間を区切っちゃって、ろくな解説もしないし、記者もあまり突っ込んだ質問しないんだよ。見てて腹立っちゃって。こんなことで記者クラブの連中も納得しているのか?と大いに疑問に思いましたよ。そのなかで僕は一番の年寄りだから「こんなので納得すると思ってるんですか?」というような質問をしたら、会見場が何だかシラっとするわけです。

室井 すっかり飼いならされてる感じがします。番記者なんか政治家が外遊するときにも同じ飛行機で同行したりして。

金平 ドキュメンタリーをやっていた先輩にこんなことを言われたことがあるんです。「記者の起源なんて(取材対象者に)同行して飯食わされたり飲まされたりして情報の密使の任務を果たす、そういうやつがおまえらの起源だよ」って。たとえば今野勉とか村木良彦などTBSが輝いていた時代のドキュメンタリストは「報道のストレートニュースをやっている記者は敵だ」なんて言ってたからね。「どうせ御用聞きだろう?」って。そのくらいラディカルだった。そういう人たちと番記者の間には緊張関係があったから、逆に僕なんかは悔しいから「そんなことストレートニュース部門の俺たちは言われたくない」って思って、一生懸命がんばって、スクープをモノにしようとしましたけどね。

■望月衣塑子記者問題の官邸前デモに参加した記者はわずか20~30人

室井 番記者との緊張関係といえば、東京新聞の望月衣塑子さんが話題ですよね。それまでほとんどまともな質問をしなかった記者クラブのなかで、菅偉義官房長官に果敢に質問して。それで官邸から排除され恫喝されているのに、他の記者は知らんぷり。逆に「彼女がいると邪魔だ」って言われちゃったりして。会見を見ていても、記者はみんなうつむいてパソコンをカタカタしてるだけ。

金平 3月14日に首相官邸前で新聞記者などメディア関係者らと市民約600人がデモをおこなって、望月記者への嫌がらせに抗議したけど、しかし現役の報道記者は、正直に言うと、20~30人くらいかな。あとはOB、OG、リタイアした人。現役記者としてはデモに参加すると会社に睨まれる可能性もあるからね。でも、それでは大きな力にならない。一線にいるメディア関係者が大挙してやらないと。人ごとじゃなくて自分たちの問題だという意識が希薄なんてすね。しかも望月記者が孤軍奮闘しているなか、江川紹子などが“どっちもどっち論”を主張するなど、ひどい状況です。

室井 自分は関係ない。自分の問題じゃない。番記者なんだから政府幹部センセイの言い分を聞いていればいい。そんな意識なんじゃない。だから望月さんの記者としての当然の問題意識も理解しないし、ひとり怖い思いをしているのも理解できない。わたしも秘密保護法のデモに行ったことありますが、周りを見渡したらメディア関係者や新聞社の人すら本当に少なくて。味方がいないって、本当に怖い。

金平 僕らの本来の仕事は、「権力は監視するものだ」ということで、とにかく権力を批判することです。「ウォッチドッグ」とも言うけど、そうした批判精神を失ったらメディアは存在価値がない。あと、これは筑紫さんが言っていたことだけど「マイノリティになることを恐れちゃダメだ。マジョリティなことを言い出したらダメ」だと。ダイバーシティ、多様性が大切で、一色に染まるのは「気持ち悪い」と。それはメディア人にとって基本ですよね。権力監視、少数派を恐れるな、多様性を尊重する。この3つがあれば少々の失敗は仕方ない。でも、いまのメディア状況を見ると、全部逆の方向にいっている。権力監視じゃなくて、ポチ、御用記者に成り下がり、それを恥じるどころか嬉々としている。田崎史郎とか岩田明子とか、大昔の山口敬之とかね。権力の真横にすり寄って、人事にまで口を出すようになる。

室井 なんでそんな御用記者がうじゃうじゃいて、まかり通っているのか、まったくわからない。

金平 特に最近顕著だと思うけど、テレビの制作側からしたら「政権に近い=便利に使える」という意識もあると思う。一方、御用記者は、政権や総理に近いことを、社内的生き残りの処世術、人事に使うわけです。「わたしは総理と直接話ができますから」と。みんな苦々しく思っているけど、そういう記者は社内的に力を持ってしまう。

室井 安倍政権で置かれた内閣人事局の構造、やり方と一緒じゃない。安倍さんに近い人、お友だち、イエスマンばかりが出世する。

金平 そうです。それがメディアがダメになった原因のひとつですね。御用記者が優遇され社内で出世する。メディア企業で、安倍政権と同じような構造が出来上がっている。ガタガタうるさいことを言う奴はパージされ、吠えないやつのが「かわいい、かわいい」と重宝される。

室井 なんか話を聞いていると、悔しくて絶望的な気持ちになるね。
(近日公開予定の後編に続く)


≪ 室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第13回ゲスト 金平茂紀(後編)

『報道特集』金平茂紀と室井佑月が激論! なぜメディアは沖縄を無視し、韓国ヘイトに覆われてしまったのか 『報道特集』(TBS)キャスターの金平茂紀氏をゲストに迎えた室井佑月の連載対談。前編では、安倍政権下で萎縮するジャーナリズムや御用メディア化、テレビの現場で何が起きているかを語ってもらったが、後編ではさらに、無視される沖縄基地問題と嫌韓報道の増殖、リベラルの退潮と排外主義の蔓延がなぜ起きたのか、にも踏み込む。ヒートアップするふたりの対論をぜひ最後まで読んでほしい。 (編集部)

********************

室井 メディアの御用化について話してきたんだけど、私が怖いのは、直接的な圧力とか忖度で黙らされてるうちに、みんなの価値観じたいが変わりつつあるということなんです。昔は社内的にマイノリティでも、カッコいいジジイがいて、頑張っていた。本多勝一とか筑紫哲也とか、リベラル左寄りのカッコいいジャーナリスト、メディア関係者が多かったと思うけど、いまは逆。ヘイト発言をするネトウヨみたいな人や、「高齢者の終末医療費を打ち切れ」なんて新自由主義的な主張する古市憲寿みたいな人、体制寄りの人がもてはやされて支持される。百田尚樹や高須クリニッックの高須克弥院長にも熱狂的ファンが付いている。いま、なんでこっち側が「カッコいい」と思ってもらえないんだろう。カッコよければ流れも変わると思うのに。

金平 “カッコいい”。それは大事なキーワードで、今後考えなければならないテーマだね。たとえば沖縄のキャンプシュワブの前で座り込んでいる人たちのスタイルは、確かにカッコよくはない。沖縄平和運動センター議長の山城博治さんとかが「すっわりっこめ〜♪ここへ〜♪」と歌うように促して。これって1950年代の三井三池闘争のときの労働運動歌なんです。それじゃあ若い人はついてこない。安保法制のときのSEALDsの成功を見て、ラップなど新しい試みが必要だね。ところが、いまの若者のなかには、「人と違ったりすることが嫌」という意識も大きい。自分の意見を自分だけで言うのがストレスだと。でも、戦前には自分の主張を貫いた若者もいた。先日『金子文子と朴烈』という韓国映画を観たんです。金子文子は大正天皇の暗殺を計画していたとされ、大逆罪で逮捕有罪(死刑判決、のちに無期に減刑)になった人物だけど、公判で「天皇陛下だって人間だろう。クソも小便もするだろう」と言い放ったらしい。それを演じる韓国人女優のチェ・ヒソもめちゃくちゃ魅力的で、セリフも自分たちで公判記録に基づいてつくって。“天皇陛下だって人間”のセリフも再現している。

室井 カッコいい人はいるんだもの。でも、それが広がらないしムーブメントにならない。若い人たちにもなかなか受け入れられない。そもそも弱者でもある若い人が、自分たちの首を絞めてる安倍政権を応援しているんだから。そういう人に議論を挑んだりもするけど、「自民党以外にどこがあるの?」「安倍首相以外、適任者いないですよ」なんて言われるだけ。

金平 僕も絶望的な気持ちになることもありますよ。僕からすると「格好いいな」と思う若い人はいるんです。でも、同世代にとってそういう若者は「怖くてついていけない」存在らしいしね。ラディカルだったり、自分で考え主張することを嫌う。お利口で聞き分けがいい。しかも30代、40代のメディア企業でいうと編集長とかデスク、キャップクラスがものすごい勢いで保守化している。韓国の金浦空港で厚生労働省の幹部が酔ってヘイト発言して逮捕されたけど、メディア関係者だって「いまの韓国政権なんか大嫌いだからあんなの叩きゃいいんだよ」って平気で口にする人もいるんだから。

■ポータルサイトに氾濫する産経の記事、無視される沖縄の米軍基地問題

室井 そうした保守化というより国粋主義・排外主義化ってどうしてなの? わたしには本当に理解できない。

金平 はっきり言うとお勉強していないんです。たとえばここ数年、ベネズエラでは深刻な経済危機で略奪が頻発し、強権的な政権の下、危機的状況が続いている。でも、ベネズエラのことを語るとき、南米の国々が、これまでアメリカにどんなことをされてきたかを知らないと、まともな報道はできないはずです。しかしそうした歴史に興味を示さないし、勉強しない。

室井 勉強じゃなくても、映画とか小説からとかでもいいのにね。わたしはそうして勉強した。

金平 みんなスマホしか見てないからね(笑)。これってすごい大事なことで、つまり、知識を得るときに、最初の入り口がスマホだと、ここで目にするのはポータルサイト。そしてそこにはライツフリーの産経の記事が氾濫している。僕のようにアナログ世代は、新聞を読み比べることでリテラシーを取得してきたけど、それがない。しかもネットニュースの字数は少ないから、ロジカルに物事を考える機会も少なくなる。しかもコミュニケーションの基本が変わってきているから、考え方も大きく変わる。僕らの仕事も、スマホとPCがないとなりたたなくなっている。

室井 価値観も大きく違っちゃってるしね。でも、ある意味、楽。若い編集者は飲み会もしないし誘ってもこない。原稿をメールで送って終わりだから(笑)。

金平 でも、そうした変化には弊害も感じますよ。ポリティカル・コレクトネス(PC)ってあるじゃない。PCがあらゆるところに行き渡った社会ってどういう社会になるかって話をある哲学者が書いていたけど。ベトナム戦争の時代にアメリカ軍が空爆してナパーム弾で村が焼かれて、裸の女の子が逃げてくるピューリッツァー賞を取った写真があった。戦争の悲惨さを伝える写真の一枚でベトナム戦争終結にも寄与したはずだけど、いまあれはダメなんだって。女の子が真っ裸で局部も写っているから、PC的に言うとNG、ダメだと。その話を聞いてびっくりして。それがまかり通ってる。

室井 すごい時代になった。文脈とか一切無視なんだね。効率主義がここまできたのか。

金平 だから右の政治家たちが「文学部とか廃止しよう」なんて言い出す。そしてポスト・ヒューマニティ、つまりAI・人新世・加速主義といった社会の諸問題が絡み合うという新潮流のことだけで。でも、効率主義で言うと、これは実は沖縄問題にも通じると思っています。沖縄の基地や経済について東京のメディアは「面倒臭い、関わりたくない、数字取れない」と。沖縄のことは自分たちに関係ないというスタンスがまかり通る。彼らにとって沖縄のことは実感がない=バーチャルなんでしょうね。それがいまの沖縄と本土、そして政府との関係を二重写しにしている。だから沖縄タイムスや琉球新聞が報道しようが、東京のメディア関係者には関心さえない。これはひどいよね。

室井 基地だって、アメリカのまともな学者や軍人は「いらない」って言ってるんでしょ。しかも沖縄では1995年に小学生の少女がアメリカ兵3人に暴行されたというひどい事件があったじゃないですか。それで沖縄だけじゃなく日本全体が反基地・反米感情で盛り上がって。でも、いまは沖縄問題を取り上げない。テレビ関係者は「視聴率が取れない」って言うけど、それは言い訳で嘘だと思う。東京オリンピックだってこれからますます盛り上げる気満々でしょ? テレビで取り上げた商品も爆発的に売れるでしょ? そう考えると、能力はあるくせに、基地問題をやろうとしない。安倍政権になって沖縄と政府の関係が悪くなって。だから忖度している部分もあるんじゃないかと勘ぐってます。

■局内にアンチ筑紫哲也の人たちがたくさんいることに気づかなかった

金平 残念ながら、いま僕が担当している番組だって、「沖縄の基地問題をやろう」って言ってもあまり反応はないと思います。生活密着型と称して、身近な、小さなストーリーを取り上げるのは一定の意味はあるでしょう。けれども一方で、社会的なこと、政治的なこと、世界のホットスポットで起きている論争や対立を取り上げることは、どこかで面倒臭いという意識が強いのではないかと思う。

室井 でも、韓国軍のレーダー照射問題とかは喜んで延々と放送して。みんな拳をあげて「けしからん。韓国許せない」って。政治評論家もコメンテーターも煽ったほうが儲かるからか、煽る煽る。しかもネトウヨ評論家になったほうが、講演の仕事も来るし。わたしは安倍政権前は講演がたくさんあったのに、いまはほとんどこない! 原発事故もそう。放射能はきちんと測るべきと言ったらバッシングされ、メディア関係者も「そういうことを言うのはいじめだ。福島の物を食べて応援しよう」って。食べてもいいけど、まず測れって言っただけなのに。本当に変な世界にいると思っちゃった。

金平 すぐに風評被害を持ち出すのがメディア。子どもの甲状腺がんにしても、すごい数になったら「検査をしちゃいけない」って。室井さんの言うように本当に変な世界に迷い込んだようだ。昨年、文科省の放射線副読本が改定され、そこから「汚染」という文字が全部消えた。その代わりに強調されるようになったのが、「復興」と「いじめ」という言葉なんですから。

室井 でも、こうして金平さんと話していると、考え方は似てるけど、ひとつ違うのは年代です。金平さんの時代は筑紫さんとかカッコいいジャーナリストがいたけど、わたしたちの世代にはいない。上の世代から引き継げなかった。

金平 僕らの時代にしても、先行世代の背中は見てた。日本赤軍とか連続企業爆破とか、三島由紀夫とか。それらの現象は、内実が解明されないまま、いまだに突出している、宙づりになっている、と僕は思ってるんです。そして、幸いなことに筑紫哲也というオヤジがいた。一緒に何でも話し合い、好き放題できた。迂闊だったのは、それを快く思っていなかった人が局内にいっぱいいたってこと。気づかなかった(笑)。だから筑紫さんが死んだ瞬間に、「なんだこのやろう」と反発を受けた。本当に迂闊だった。いまのテレビがなぜダメになったかというと、こうした継承がうまくいかなかったというのはあると思う。

室井 それで逆に左翼オヤジでもヒドいのが広河隆一。あれは本当に許せない!

金平 実際、ひどいことをされた被害者がいっぱいいたわけで、僕も申し訳ないけど、知らなくて。昔、「DAYS JAPAN」のDAYS国際フォトジャーナリズム大賞の審査委員を3、4年やったけど、結構勉強になったんです。3日間くらい写真ばかり見るんだけど、報道写真は目に焼きついているものが多い。広河さんが編集部でそんな権勢をふるって、そんなことをやっていたなんて思いもよらなかった。

室井 御用ジャーナリスト山口敬之の事件と重なっちゃう部分もあるしね。自分の立場を利用したっていう。でも、山口事件のような、体制寄りの人が、性暴力ふるってもあちらの陣営は権力を使ってもみ消すけど、広河さんみたいな人がやると致命的になる。わたしが正直に思うのは、右のオヤジと左のオヤジがいて、両方女性差別主義者なんだけど、右のオヤジは「女は自分より下で弱いものだ」と思っているから庇ってくれることもある。でも左のオヤジはそれさえなくて、ただ差別してくる(笑)。「どうせバカなんだから」って。女性差別オヤジで言うと、右も左もひどい。ちなみに左のオヤジは食事しても割り勘にしようとする。でも右のオヤジは「俺が払うよ」って金は払う。

金平 わかりやすすぎる。ただそれでその人の、写真家としての業績も同じように終わっちゃう、全否定されるというのは……難しい問題も残りますね。

室井 ピエール瀧が逮捕されたときに作品をお蔵入りにしたのとも似ている話で、ピエールには被害者がいないけど、広河問題は被害者がいる。単なる愛人問題とかじゃなく、性暴力の問題だから。

■エコー・チェンバー・エフェクトをどう乗り越えるか

室井 それにしても金平さんと話していると、メディア状況は最悪だし、その背後の安倍政権を言葉や言論によって倒せそうにないし、どうしたらいいんですか!

金平 並大抵じゃないんですよ。今回の対談もそうだけど、結局、室井さんと僕の考え、ベースは同じでしょ。それは市民運動をやってる人たちや、“良心的”ジャーナリストなどもそう。“内輪”だけで話をしても、「そうだよね」「そうだよね」となる。それは密室のエコー・チェンバー・エフェクト、こだまになっちゃう。これではやはり、政権は倒れないし、カッコ悪いと思っていて。そこから一歩進んで、安倍政権を支持している人々とも対話する。マイケル・ムーア監督の映画『華氏119』なんかいい例だと思うけど、ムーアはドナルド・トランプの熱狂的支持者と話をすることで、トランプ大統領を誕生させたアメリカ社会に切り込んだ。そして全員が「トランプ! アメリカファースト!」と叫んでいるなかで、講演をする。すごかったのが「お前たちの言っていることはわかるし、だけどお前たちも俺もアメリカ人で、こういう方向を目指してたじゃないか」って言うと、みんなトランプ支持者だった奴らが泣き出して。最後は「マイケル・ムーアが選挙出ろ!」みたいなことになる。日本でもこれは可能なんじゃないか。もちろんネトウヨや在特会なんかはしんどいかもしれないけど、安倍政権を支持している普通の人とは会話ができると思っている。「他に誰がいるの?」くらいに思っている人たちって、結構いっぱいいるはずだからね。

室井 確かに、一方的なテレビの報道で、ここ数年で考える正義の方向性がちょっと歪んでしまった人、いびつになっちゃった人って多いかもね。でも、そういう人たちに対して、上から目線で距離を置いたり、自分が無関係なスタンスを大人だと考えている人はずるいよね。

金平 安倍首相の自民党総裁4選も大っぴらに語られているし、元号が変わって大騒ぎしてるけど、このままでは何も変わらない。変わったのはむしろ若い人たちの考え方、思考様式だと思う。望月衣塑子記者の件でも思ったけど、たとえばスマホの普及で、スマホ的価値、つまり記者会見で「なに面倒臭いこと言ってるんだよ」「もっと簡略にお願いします」「質問は10秒以内」などと邪魔する人間は、すでにそうした価値観に毒されている。ロジカルに長々と質問することだって記者にとっては大切なはずだし、面倒臭いことは大切なんことだと思う。面倒臭い奴は必要だとさえ思う。

室井 わたし、生まれたときからずっと面倒臭い人間だから。あっ、金平さんも同じだね。

*金平茂紀 1953年生まれ。1977年にTBS入社後、モスクワ支局長、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長などを歴任。2016 年執行役員退任後も現在まで『報道特集』のキャスターをつとめる。
* 室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『大竹まこと ゴールデンラジオ』(文化放送 金曜日)などに出演中。
 ≫(リテラ)

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●薄っぺらな議論 日本は独立国家なのかなんて

2019年04月26日 | 報道

●薄っぺらな議論 日本は独立国家なのかなんて 

公式な発言としては、日本と云う国は独立国だ。国連に加盟して、安保理の非常任理事国などに、何度も就任しているのだから、国連的には独立国なのだろう。

なのだろう、と疑問符を付けておいたのは、国連憲章の条文に「第二次世界大戦中に連合国の敵国であった国」(枢軸国)に対する措置を規定した第53条および第107条等による「敵国条項」は、事実上、無効化しているは言うものの、いまだ削除されていない現状があることだ。

つまり、国連に加盟できているから、独立国なのは当然だと云う論にも、実はどこか怪しげだ。

昨日書いた点でも、わが国が、純粋な意味で独立国とは言いがたい幾つかの要件がある。

それにしても、英国やフランスと戦ったドイツやイタリアは、戦後、英国が覇権国の座から下り、米国に、その座が移ったことで、独伊に対する米国支配は手ぬるく見える。

理論的ではないが、白人国家と東洋人国家の差別も感じないわけにはいかない。

その思いを鮮明にするのが、唯一、人体実験のような原爆投下だ。それも、唯一の人体実験だと強く認識した、周到な準備を経た原爆投下で、2都市を壊滅的に破壊した。

そして、戦後70年を過ぎても、米国による日本占領は、事実上継続していると言って過言ではない。

日本では、一見、自由な選挙により、国会議員が選ばれ、立法行政が民主的に運営されているフリを、国民全体で、欺瞞の世界を作り上げている。

テレビから新聞に至るマスコミも、多くの学者や文化人も、全員が、本当に独立国かどうか訝しく思いつつも、ポジショントークで時代を見過ごしている。

自分達から仕掛けた戦争だとはいえ、開戦間際を除き、物量作戦でボコボコにされ、沖縄戦では沖縄県民に犠牲を強い、最終的には、東京大空襲と二発の原爆投下で完全降伏。

諸事情から、わが国にも言い分はあるのだが、戦勝の白人系諸国から見れば、東洋人の敗戦国、日本を痛めつけることは、国際的承認欲求に対応できるものだった。

その東洋の敗戦国を明治以来の、天皇制と官僚制を温存することで、米国に隷属することを、暗に示し、見えない統制力で70年以上、日本を植民地並みに支配しているのが米国なのは、知識人の多くは薄々知っている。

しかし、その事実を有効に使い泳ぐように生きている、属国の支配階級が、見せかけの支配を行っている。

ただ、この見せかけの支配をしていること自体、行っている人間が自覚的かどうか、その辺は曖昧だ。

この曖昧さが、罪の意識を薄め、不思議な安定を生んでいる。まさか、ここまで都合よく、隷米な日本が復興し、70年も、いや、今後の70年も続くのかと思えば、米国にしてみれば、笑いが止まらないだろう。


≪ F35墜落事故と武器“爆買い”の闇 事故原因究明まで米国の言いなり 日本は独立国家なのか

【 中谷元・元防衛大臣、山崎拓・元自民党副総裁、宮本徹・共産党准中央委員、半田滋・東京新聞論説兼編集委員が深層を語る 】

 航空自衛隊三沢基地の米国製戦闘機F35Aが青森県沖で墜落した。日本は同機を米国に105機発注しており、安倍首相とトランプ大統領の密月の証しとも言えるが、かねて様々な欠陥を指摘されてきた。事故原因の調査、同機「爆買い」の理由究明など、日本の主権が問われる重大な課題が浮上している―。

 気になる事故である。

 航空自衛隊三沢基地所属の米国製最新鋭ステルス戦闘機F35Aが、4月9日青森県沖に墜落した。

 F35Aとしては世界初の墜落事故。自衛隊からすると飛行隊編成後2週間足らず、しかも、ベテランパイロットによるものだった。同機は最先端の軍事技術の結晶とも言われ、今後数千機レベルで量産される米国最強の輸出商品である。日本も100機レベルで発注、安倍晋三首相、トランプ大統領の日米蜜月同盟のシンボルとも言える。

 それが落ちた。両政府の衝撃は深く重い。連日自衛隊中心に懸命の捜索作業が続く。米国は在韓米軍から高高度偵察機U2を派遣、異例の対応をしている。

 このニュースをどうとらえるか。実は苦手な分野である。政治記者として防衛省を担当したことがない。  ただ、専門家の話を聞くにつけ、これはある意味、日米安保体制の核心を突く事故ではないか、と思えてきた。以下取材報告をしたい。

 まずは、中谷元・元防衛相である。事故発生直後、某テレビ番組でご一緒した時の彼のコメントだ。

「大変なことが起きた。世界最新鋭の機密が詰まった戦闘機が、部隊配属されて2週間もたたないうちに事故が起きて墜落した。ただ事ではないと思う」

 自衛隊出身で現場を誰よりも知る中谷氏の言である。私の中でニュースバリュー判定の針が激しく揺れた。その後改めて聞いた。

 欠陥機だった? 「世界の中で一番技術を持った航空機だ。導入自体は間違いなかったと思う」

 操縦士はベテランだ。 「F35Aで約60時間、他の機種を含め、約3200時間の飛行経験があり、編隊長として訓練を率いていた。ただ、最新ハイテク兵器を使いこなすためには、F1レーサーのようなテクニックと、IT機器を使いこなす能力の両方必要だ」

 事故原因はどっちにあるのか。機体の問題か。それとも操縦ミスなのか。中谷氏は事故原因の推測には慎重だった。さもあらん。尾翼の一部しか回収されていない段階である。

■F35は様々な欠陥が指摘されてきた

 調べると、一つ手がかりが見つかった。今年2月15日の衆院予算委員会で共産党の宮本徹衆院議員がF35について、米国会計検査院(GAO)から未解決の欠陥を966件指摘されていたことを明らかにし、政府を追及していたのである。

 早速、宮本氏に聞いた。

「墜落したと聞いた時? ショックですよ。私も欠陥機だと追及してきたが、本当に落ちてしまったと」  なぜF35の質問を? 「安倍政権が昨年12月18日の閣議了解で、F35を新たに105機追加取得することを決めた。そんなに買うのか、という素朴な疑問だ。防衛計画大綱と中期防衛力整備計画を決めた同じ日に、大綱や計画にはないF35大量購入を別途決めている。一体どういう代物なのかと調べ始めたら、いろんな欠陥が会計検査院や国防総省運用試験・評価局で指摘されていることがわかった」

「すべて中身が公開されているわけではないが、『主要な技術的なリスク(危険)』の一つとして、F35のパイロットが酸欠症状を訴えた事例が2017年5~8月までに6件発生したと指摘している。『墜落の危険』ともあったので、そんな危ないものを飛ばし続けていいのか、と政府を質(ただ)した。岩屋毅防衛相は、原因は米国で調査中で、各国に情報を提供している、という」

「F35に関する情報については全部米国頼みであって、日本政府が独自に検証できるものは何もない、ということがわかった。検査院の欠陥指摘も米国に大丈夫だと言われているだけできちんとした情報をもらっていない。パイロットにも国民にも極めて無責任な形で運用されていると感じた」

 ここからは、東京新聞・半田滋記者に疑問をぶつけてみる。F35について軍事ジャーナリストの中では最も精通している、と言われる人物である。中谷、宮本両氏からの推薦もあった。 

 あなたは、F35は技術的には未完成の戦闘機だ、と以前から指摘していた。

「ついに起きたかと。F35の先輩機種にF22があるが、これは1機も落ちていない。なぜか。空軍が使う専用機で、米の技術陣が総力を挙げて真剣に取り組んだ末にできたものだ。それに比べ、F35は、空軍、海兵隊、海軍の3軍が使うので、それぞれの要求を一つの機体に盛り込み重量オーバーになる。しかも、F22が2個のエンジンなのに、F35はコスト削減のため重たい機体を1個のエンジンで飛ばさなければならない」

「結局F35はあれもこれも詰め込まねばいけなくなりコスト高になり、トランプが就任前にツイッターで『高い』と呟(つぶや)いたら製造元のロッキード・マーチン社の女性社長が値引きした、という話もあった」

 機体発見の可能性は?

「戦闘機が海に落ちると、墜落場所を探すのが難しい。戦闘機自体が凄(すご)い速度で飛んでおり、海に落ちてもコンクリートに激突するのと同じで、バラバラになる。青森沖は親潮があり、日によって流れも変わる」  操縦ミス、体調不良の可能性は低い、との見方だ。

「いずれも考えにくい。自分の体と相談しながらやっていたはずなので、無理のない、基地に戻れる範囲で訓練を打ち切っているはずだ。ただ捨て切れないのは、空間識失調(バーティゴ)という平衡感覚喪失状態に陥った可能性だ。機体が逆さまになっているのにパイロットが気付かず操縦桿(かん)を引くと逆に海に落ちてしまう。最近の戦闘機はボタン一つで機体制御してくれるが、パイロットの自覚がないとそういう動作をしないことはある」

 現時点では、墜落機はノック・イット・オフ(訓練中止)と通信してから1分後にレーダーから機影消失した、という状況証拠しかない。 「緊急脱出していれば救難信号が自動的に出るが、それがなかった。1分間の間に機体を立て直そうとして何もできないうちに海に突っ込んでしまった……」

 1分間に何があった? 「機体がアンコントロール(制御不能)になった、というのが一番わかりやすい解釈だ。F35はよくできていて、人工知能で機体を自動的に制御できる設計になっている。多少変な操縦をしても飛行機のほうが正しく制御してくれる。だとすると、全く別の要因でそういった機能が全く失われた可能性がある。御巣鷹山に落ちた日航ジャンボ機も、垂直尾翼が吹き飛んで制御不能となった。F35に詳しい関係者は、エンジンが爆発するなど深刻事態の発生ではなかったかと指摘する」

■貿易摩擦を武器購入で解消?

 17年に米ルーク空軍基地で6件の酸欠症状があったこととの関連は? 「あの基地だけで起きたというのがわからない。ただ、深刻なのは、防衛省がGAOの指摘を米国防総省から伝えられていない疑いがあることだ。彼らは自分たちにとって不都合なこと、自分のポストが危うくなるような事態が起きると平気で嘘(うそ)をつく。そもそもF35選定時は未完成の機体だった。マイナスになるような情報を出すわけがない」  遡(さかのぼ)って機種選定に問題があった?

 F35はF4の後継機種として、野田佳彦民主党政権の11年に42機の導入が決まった。

「航空自衛隊がステルス性戦闘機が欲しいと、他の意見に聞く耳を持たなかった。欧州のユーロファイターがいい、という意見もあったが押し切った。今さら空自も泣き言を言えない」

 なぜステルスに?

「F22の存在が大きかった。相手から見えないのに、こちらからは丸見え、戦えば必ず勝つ、という性能だ。F22は海外には売らないと米議会が議決、F35しか買えなくなったからだ」

「だが、実はその時は立ち止まるチャンスでもあった。中露でもステルス機の開発が始まり、ステルス機を発見して撃墜する能力を各国が身につけ始めた時期でもある。ステルス機といってもエンジンから出る熱は隠しきれない。赤外線探知で一発でばれる。レーダーでも近代的高周波でなく低周波、例えば第二次大戦のころ使っていたレベルの低いのだと見えてしまうとか、いろんなことがわかり始めていた。だが、米国も採用している、ステルスがいいと凝り固まってしまった。ライバル機との飛行テストを排除して、カタログ性能だけで選択した。ボタンの掛け違いがあった」

 それから7年後。安倍政権はそのF35を計147機体制とする方針を決めた。決定済みの42機に加え、1兆2000億円以上かけてF35A63機、F35B42機、計105機を追加する、という。短距離離陸・垂直着陸型であるF35Bは、空母化される「いずも」型護衛艦での運用が念頭にあった。トランプ政権との通商摩擦解消策ともいわれた。トランプが米国の対日赤字を重視し、自動車への関税措置をちらつかせていたからだ。

「今回は自動車との引き換えだ。それ以外は考えられない。一石二鳥だ。自動車の引き換えにもなるし、いずもの空母化にもなる」

 17年11月の日米首脳会談後の共同記者会見が思い起こされる。トランプが「日本の首相が、必要な防衛装備品を大量に購入しようとしている。完全なステルス能力を持つ、世界最高のF35戦闘機や、様々なミサイルだ。率直に言って、1~2年前はそれほど購入していなかった」と発言している。その時点でディール済みだった可能性がある。

「貿易摩擦を安易に武器購入で解消しようとするべきではない。武器は適正価格がない。丼勘定で、相手の言い値で買う。赤字解消に役立つように見えるが、戦争になった時に欠陥品を買い続けることにもなる」

■日米関係の根幹に触れる問題

 今回の事故は、対外有償軍事援助(FMS)という現行調達システムの問題点も浮き彫りにした。値段から作り方、機密維持などすべて米側の言いなりだ。

「墜落機は三菱重工業小牧南工場で組み立てられた1号機。ただし、その実態は、三菱重工がロッキード・マーチン社の『下請け』に入ったようなもので、指示通りに組み立てるだけで、部品の大半はブラックボックス化され、部品の持つ意味も製造技術も日本側には開示されていない。しかも、最終検査は日本人関係者を締め出した別棟で米側だけで行われた。こういう米政府による秘密保持の姿勢が、今後の事故原因解明の妨げとなるおそれがある」

 責任だけは日本が押し付けられる可能性があると?

「工作上の問題だと言ってくる可能性がある。ロッキード・マーチン社で作っているのは1機も落ちていない、と。情報がない中、丁々発止のやりとりをするのが不可能だ。事故調査は一方的なもので、結果だけが伝えられる可能性もある。今回のことを機にFMSについて、こんな不公正な取引は改善してほしいと言うべきだ」

 調査結果はいつごろ? 「事故発生から4カ月以内に防衛相に報告する義務がある。機体引き上げができるか、フライトデータレコーダーが見つかるかがポイントだ。飛び方によって機体の問題か操縦ミスか、ある程度推測できる。問題は、機体の安全性について確証が持てない段階で、米国のお墨付きによって使い続けるかどうか、だ」

 自民国防族のドン、山崎拓元自民党副総裁は、以下の見解を示してくれた。

「問題は二つある。一つは、FMSで買っているから原因究明を我が国の手でできないということだ。企業機密を盾に本当のことは教えてくれない。もう一つはそれにもかかわらず、105機も追加注文したことだ。安倍氏が貿易赤字解消のためトランプにおもねった。負債、負担を国民に与えるとんでもない買い物だった。しかも不必要だ」

 F35は必要なかった?

「ステルス能力は価値がある。ただ、そんなにたくさん買ってどうするの、ということだ。どこに置き、誰が操縦するのか。自衛隊も新たにパイロットを養成しなければならない」

 戦闘機購入といえば、かつては商社や政治家の介在もあり、カネも動いたが?

「そんな小さな利益の問題より105機も必要ないものを買った国民的不利益のほうがずっと大きい」

 二つの問題がある、と思う。一つは、自国の防衛装備の欠陥について、FMSの壁を突き破り、どこまで納得のいく調査を行い、それを今後に生かせるか。それができなければ独立した主権国家とはいえない。  今一つは、なぜ105機も爆買いするに至ったのか。トランプ側からどういう圧力があり、安倍政権がどう応えたのか。国会でぜひ検証してほしい。日米関係の根幹に触れる問題である。
≫(毎日新聞)

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●限界と綻び鮮明 国連と米国による日本支配の構図 

2019年04月25日 | 報道

 

「縄文」の新常識を知れば日本の謎が解ける (PHP新書)
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PHP研究所

 

戦争にチャンスを与えよ (文春新書)
Edward N. Luttwak,奥山 真司
文藝春秋

 

国連の政治力学―日本はどこにいるのか (中公新書)
北岡 伸一
中央公論新社


●限界と綻び鮮明 国連と米国による日本支配の構図 


米国による日本支配は、戦前からのことである。第二次大戦中に一時途絶えたが、戦後、再び元の支配体制に戻っただけだ。

特に、第一次大戦の勝利に酔う我が国は、ウォールストリートの金融マフィアらと共謀して、金儲けに勤しんでいた歴史がある。

日本の旧財閥の殆どが、このウォールストリートの金融マフィアとは友人関係にあった。

当然、ユダヤ人を中心とする金融マフィアの連中だったので、安倍首相などは、イスラエルに親近感を抱いているのだろう。

ただ、歴史の皮肉なのだろうが、ドイツにおいては、この金融マフィアの横暴な支配が、ナチスを生み、トンデモナイ、ユダヤ人迫害に繋がったのだから、歴史はボタンの掛け違いで、右にも左にも激しく転ぶものである。

日本と米国の関係は、日米の軍事同盟(日米安保)に限らず、米国は、戦後の官僚制と天皇制を保持することを選択、支配構造に、その力を組みこんだ。

ゆえに、戦前の天皇制と官僚制は、戦後においては、米国の意図に逆らう選択のない永遠のポジションと云う哀しげな地位が与えられたと理解する。

天皇制は、相当程度、治外法権な位置づけで、政治とは一線を画しているので、米国の意を汲む思想は、特段に壊されるリスクはなかった。

ただ、今回の天皇の生前退位などは、おそらくCIAの協力があったことが窺える。その後ろ盾があったので、安倍政権も、嫌々従ったと観るのが自然だ。


現在も、安倍政権が宮内庁にゲシュタポを送りこむものの、天皇制の存在依拠である「日本国憲法」護憲の精神は、米国の意志で維持されている。

安倍政権が、声高に「改憲」を一部の支持者にアピールしているようだが、両院で2/3議席を有しているにも関わらず、改憲発議まで持って行かないのは、持って行けないと云うより、持って行く気がないのが真実ではないかと思う。

表立った「改憲」には、日本国憲法を共同作業で生みだした、米国による、日本封じ込めの精神に反するわけで、米国中枢の怒りを買うリスクは残されている。

或る意味で、戦勝国全体への約束を反故にする意志表示にみえるリスクを抱えている。


天皇制を堅持したい皇室は、あくまで、“このままこのまま”を望むのは当然だ。

官僚制の側は、天皇制と異なり、日々日常において、政治との軋轢があり、米国支配と現行政権支配と云う、二重の管理者に使える身になっている。

このような立ち位置にある官僚たちは、原則は、行政のサボタージュを行う。

しかし、現在の安倍政権のように、官僚らの人生にまで手を突っ込むような管理体制を敷き、強圧的支配に置かれる。

米国というビッグ・ブラザーと政治と云うビッグ・ブラザーの両方の顔色をみる慌ただしい行政が必要になる。

結果、自己矛盾に満ちた法律や行政に手を出し、あやふやだった自分の国のバランスを、己の手で掻き交ぜる愚行に走っているのが現状だ。

つまり、ふたつのビック・ブラザーに挟まれ、身動きが取れないならいざ知らず、この二つの管理人は、言うことが異なるため、あちこちと命じられるままに弄りまわし、わが国の行政の仕組み自体を破壊した。

だいぶ前に書いたことだが、消費増税再々延期と衆参同日選を占ったが、現実味を帯びてきたようだ。

最近気づいたことだが、安倍政権と云うのは、米国を裏切ろうと云う心根を持ちながら、接近するたびに、様々なミッションを言い渡され、唯々諾々とそのミッションを受け入れてきた。

結局、安倍晋三の心根などは、些細なもので、米国の意志の前では、常に風前のともし火に似たもののようである。

つまり、日本の政府は、条件闘争は或る限られた範囲で認められているが、基本的な戦後の条件を覆すことはまかりならぬと戦勝国に言い渡された国家だと云うことだ。

このように考えてしまうと、なんだか、籠の鳥のようで物悲しいが、筆者は、さほど気にならない。

エコノミック・マニアな日本人の場合、経済大国という誇りとか、“ニッポン最高”みたいな感覚の人々にとって、現状の世界の枠組みは、息苦しいのは理解する。

ただ、その息苦しさは、偶然得たポジションに汲々として、己の真の姿を見失った人々と言えるだろう。

我々は、いつまで、経済大国の亡霊につきまとわれるのか、不思議でならない。

NHKを中心とするマスメディアの方向性が、日本人をエコノミックな価値にのみコミットする人々に教育したと言っても良いだろう。

世論調査の結果、政治に望むことは、景気・雇用、社会保障・年金など、経済事情に限定され、平和とか、豊かとか、平穏とか、融和とか、共生とか、そういう方向に人々が向かうような方向性を提示しないのだから、利己的動物の人間が向かうはずもない。

 災害が起きた時にだけ、経済以外の価値観を賛美してもダメなわけで、経済というものは、人間の煩悩であり、或る意味賤しいものでさえあると云う教育が欠如しているとしか言いようがない。

何が言いたいかと云うと、国連主義における戦勝国である常任理事国5か国+5Gが、ビッグ・ブラザー(ここまで来ると、ブラザーズになるのだが)であり、この基本的考えは永久に?変わらないのが国連主義である。

日本の一部の人には、だから再度戦争をして、戦勝国にならなければならない、と力む人もいる。

このようにギュウギュウ締めつけられている状況であれば、国連主義が保持している価値観から抜け出せば、彼らビッグ・ブラザーとの接点も消える。

つまり、彼らの管理範疇の外の世界にいることは可能なのだと思う。

国連主義も万能ではないわけで、彼らの価値観から遠ざかれば、彼らは、自らの枠をはみ出して、管理範疇の外の世界に足を踏み入れることはないのだ。

おそらく、まだ明確には見えていないが、これからの日本が国連主義の管理下から脱出する方法は、第三次大戦の戦勝国になるのではなく、戦勝国の管理下以外の価値観の世界に向かって行くことではないかと考える。

その姿は、まだおぼろげだが、幾分見えてきている。


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●F35の墜落 官邸は最新戦闘機で何がしたいのか?

2019年04月24日 | 報道

●F35の墜落 官邸は最新戦闘機で何がしたいのか?

安倍官邸は、アメリカが推し進めるForeign Military Sales(FMS)の制度に沿って、見境もなく、自衛隊が欲しいと言っているわけでもない米国製の最新鋭?とセールストークされる戦闘機やイージス艦やミサイル防衛システムを買い込んでいる。

その金額は、米国に支払う購入費のほかに、その戦闘機等の維持管理費も含めると、5兆から10兆円の出費が確定している。当然ながら、これらの費用は防衛費なので、本来自衛隊が必要とする日常的防衛装備品の予算を圧迫し、トイレットペーパーもまともに支給されないと冗談はなしまで出ている。

そもそも、憲法第9条の専守防衛の枠をあきらかに逸脱した武器の購入に、何の意味があるのかが判らない。

防衛に役立つからと言う屁理屈を並べれば、核兵器だって、当然だが防衛に役立つだろう。

いや、官邸などに棲んでいる人間の中には、防衛上致し方ない行動だったと位置づけながら、どこかの国と戦争になることを望んでいるフシさえ見られる。

無論、現状の仮想敵国としてイメージしているのは「対中」らしいが、核を一発見舞われて、へなへなとなるのは火をみるよりもあきらか、流石の安倍官邸にも、中国と戦火を交えるバカはいないだろう。

それに、アメリカ自体が世界の権力図を変えようとは思っていないのだから、対中戦争などに共同歩調を取ることはない。我が国は、孤立無援だ。

となると、北朝鮮か?いや、これも、制御不能な核を撃ち込まれた場合、「対中」以上に怖い結果が生まれそうである。

核大国ロシアも同様で、手も足も出ない。

近隣の国で、核を保有していない国は、どうみても一国しかない。

同盟国であるアメリカは、三国同盟のつもりでコントロールしているわけだから、戦火を交える筈はないと考えている。

しかし、交戦状態になれば、米軍は日本から撤退するだろう。しかし、北朝鮮がある以上、隣国から撤退するとは限らない。

戦火を交えると、米軍基地にも被害が及ぶ可能性があり、腰の引けた戦いになる。 :まかり間違って、米軍基地に撃ち込むようなことが発生したら、一発アウトだ。

つまり、最終的には、米国製の戦闘機等は、宝かどうか別にして、宝の持ち腐れなのである。

それでも、どこかと戦火を交えたい心根の人々がいるようだ。

おそらく、その勢力の狙いは、日本経済を「戦争経済」の坩堝に投げ込みたい意図がある場合だけだ。

常識的にはあり得ないのだが、現実の世界では、不合理で、非常識なことが起きるものである。

どこか日本の権力中枢には、常に、この戦争を好むDNAが潜んでいるように思われる。

それを封じ込めるのが憲法なのだが、解釈改憲で、法はどのようにでも扱えると味を占めた連中が手ぐすねを引いているのは事実だろう。


≪ F35A事故が照射する 防衛政策 根源的疑義=高村薫
 季節外れの寒波で関東甲信越が雪景色になった10日、早朝からメディアはどこも「平成最後の雪」と騒ぎ続け、前日夜に青森県沖で消息を絶った航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35Aについての続報は、見る影もなかった。

 4月の大雪と、鳴り物入りで導入された一機140億円の次期主力戦闘機の、世界初となる墜落事故と。比べること自体がむちゃなのは承知の上で、いったい事故の扱いを極力小さくするよう国から圧力でもかかったのかと、思わず勘繰ってみたことである。

 というのも、AIで高度に自動制御された最新鋭の戦闘機で、搭乗員が緊急脱出もできないような事故とはいったいどんな事故なのか。この2月に山口県沖でF2戦闘機が墜落したときには搭乗員は脱出しているが、今回はなぜできなかったのか。最新鋭の機体でそんなことがあるのか。一国民の頭は単純な疑問でいっぱいである。

 搭乗員が飛行時間3200時間のベテランで、しかも機器はほぼコンピューター制御となれば、事故が操縦ミスである可能性は低いだろう。ならば、過去にも2度あったという機体の不具合か。何らかの設計ミスか、ソフトのバグか。自衛隊はもちろん、米軍も艦艇や哨戒機を出して水深1500メートルの海底に沈んだ機体を捜索しているが、仮にフライトレコーダーや機体の回収ができても、そもそも機体の全部が米軍の軍事機密であるし、点検整備さえ自前で行えない自衛隊は、原因究明の作業も当然蚊帳の外だろう。いったい、自ら事故の検証もできない兵器を戦力と呼べるのだろうか。

 報道によれば、2012年から順次導入が進むF35A、42機の取得費が約6000億円。30年間の維持整備費1兆2877億円。さらに昨年末の中期防衛力整備計画で追加購入が決まったA型63機、垂直着陸機のB型42機の取得費が合わせて1兆2000億円。そしてその維持整備費が30年で約3兆円。

 この莫大(ばくだい)な買い物はすべてアメリカ政府のForeign Military Sales(FMS)の制度を利用して行われている。同制度を日本政府はなぜか対外有償軍事援助と呼んでいるが、読んで字のごとく原意はずばり「セールス」である。

 同制度は、自国で開発できない最新兵器を入手できる半面、価格や納期などの契約条件をメーカー側が一方的に握っており、非常に割高な買い物になることが前々から指摘されている。しかも維持整備もメーカーが行うので、日本は大金を払って、まったくのブラックボックスを買うことになる。

 かくしてF35のほか、輸送機オスプレイ、早期警戒機E2D、無人偵察機グローバルホーク、迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」と、現政権はアメリカの言いなりに続々と高額な兵器を購入し続けているのだが、FMS調達の増大は当然、防衛予算を圧迫する。現に昨年末には、防衛省がついに国内企業62社に装備品代金の支払い延期を要請するに至り、私たち国民を唖然(あぜん)とさせた。

 さらにF35Aの導入以降、スクランブル用のF15をはじめ、訓練機や哨戒ヘリコプターの維持整備に十分な費用や要員を回せず、自衛隊本来の任務や備品の補充に支障をきたしているとも言われる。しかも、現場よりも官邸主導で購入されたこれら最新鋭兵器の一部は、現場が必ずしも必要としておらず、十分に使いこなすことのできない代物だという話も聞く。

 憲法9条の是非以前に、まともな戦略も知識もない非常識な官邸主導によって、自衛隊の装備と人員の双方で深刻な疲弊が進んでいる。墜落したF35Aは、去年6月まで機関砲や短距離空対空ミサイルさえ持たずに配備されていた。国会では2月、その機関砲の精度が米軍の仕様基準を満たしていないことが問題になった一方、専守防衛を逸脱する長距離巡航ミサイルを搭載する話が進んでいる。

 いったいこの国はF35Aに何をさせたいのだ? 戦争ごっこなら、せめて無人機でやれ。 (高村薫)

*たかむら・かおる  1953(昭和28)年、大阪市生まれ。93年『マークスの山』で直木賞。98年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞。2016年の『土の記』で野間文芸賞、大佛次郎賞、毎日芸術賞をそれぞれ受賞する。
 ≫(毎日新聞)

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●吹き荒れるビッグ・ブラザー ノーテンキな「令和」な人々

2019年04月23日 | 報道

 

オーウェル評論集 (岩波文庫 赤 262-1)
小野寺 健,小野寺 健,George Orwell
岩波書店

 

東京プリズン (河出文庫)
赤坂 真理
河出書房新社

 

箱の中の天皇
赤坂 真理
河出書房新社

 

●吹き荒れるビッグ・ブラザー ノーテンキな「令和」な人々
後半の統一地方選が行われた。選挙の起動力となる市議レベルの選挙だが、あいかわらず自民党、公明党の強さが目だった。

未だに日本維新の会がそれなりの勢力を保っているのは不思議だが、大阪の不思議と云うか、東京への対抗心が変わった形で生まれた結果なのだろう。横山ノックさんが知事になったのだから、東京人が口出しすべき問題ではないと言われているようだ。

ただ、維新の力量は大阪地域のみなので、国政レベルで気になるものではない。気になるのは、共産党の退潮だ。最も野党共闘で、自己犠牲している同党が傷だらけと云う状況は幾分痛ましい。

しかし、同日に行われた衆院2補選は、鮮明に自民党が敗北を喫した。

このことは、自民にとって、相当の痛手だと言えるだろう。沖縄、大阪では、反自民と云う政治風土が定着したと言っても過言ではない。

同党議員の死去に伴う弔い選挙で楽勝だったはずの大阪12区でも、日本維新の会の新人に大差で敗れた。

最近、大阪は反東京と云う風が吹いているらしく、当分は維新にお任せムードになっている。

正直、安倍自民は、このまま参議院選挙に単独で突き進む気にはなれない情勢になっている。

つまり、消費増税の再々延期であるとか、5%への減税を謳い、その信を問うくらいの目玉政策を掲げ衆議院解散で、衆参同日選に打って出る可能性が高くなった。

5%への消費税減税案を持ち出された場合は、野党に勝ち目はなく、自公維の勝利で、改憲派で2/3議席を確保することになりそうだ。

ただ、現実に、消費税の5%減税案は、容易に打ち出せる案ではないだけに、再々延期程度でお茶を濁せば、安倍晋三お茶の間劇場の演出も空振りとなる確率が高い。

ウッカリすると、野党の闘い方にもよるが、衆参共に大敗を喫する悪夢を見ることもあり得るだろう。

安倍自民党にしてみれば、当面国会は休みなので、ボロも出ず一安心。安倍外遊で岩田明子とNHKで外交劇場を演出、トランプとも4月に続き、5月、6月と会談を行い、日米の絆を演出する。

現実には、日米同盟の蜜月が深ければ深いほど、日本の隷米度が深まり、不要な軍事費が肥大するのは確実だ。マスメディアの安倍一強報道で、そうなのかなと思ったが、実態は電通の振り付けで、安倍晋三劇場が演じられていただけかもしれない。

現に、外交面で、まともな成果がないと云うことは、霞が関の範囲で、嘘の世界を演出していると云うことだろう。

軍事費の肥大は、わが国の社会保障制度の崩壊を早め、与党自民党は思わぬしっぺ返しを食らうかもしれない。

政治は一寸先が闇と言うが、思いもよらないかたちで、最強の安倍自民党が崩壊する姿が見られるかもと妄想するだけで、愉快である。

話は全然変わるが、以下の3本の日経の記事は、様々な意味で、需要な意味を持つ情報だと思うので、参考掲載しておく。

個人的感情論だが、ルノーの記事は、日産が、ルノーとの提携を破棄するために出来る選択はあるのか。あるとして、それは、どのようなものか、記事として物足りなさを感じた。

アメリカと云う国は、イランが全面的に覇権国への忠誠を誓わないと云う理由で難癖をつけ、自国が産油国NO1になったことで、オイル産油国を自国のコントロール下に置こうと躍起である。

イラク、リビア、ナイジェリア、ベネズエラ、そしてイランだ。誰が見ても、アメリカのよる産油コントロールの陰謀と見て差し支えない。こんな国の言うがままの国が平和で安定した経済を営むのは無理である。

ロシアから引き剥がしを敢行したウクライナへの興味を失ったアメリカが、ウクライナ大統領選で取りこぼしをしたのもおかしい。

オバマが手を出したウクライナ、商売人のトランプにとって埒外の国なのに違いない。

いずれにせよ、安倍政権の外交方針で行くと、無駄な軍事費防衛費は増大するし、原油価格の上昇に寄与するばかりで、ほとんど売国政策の自民党になっていくのだろう。

それでも、国民は気づかずに場に送られて行くのだろうか。或いは、縄文のDNAのしぶとさが、そうさせるのだろうか。



≪ルノー、日産に統合再提案 日産は拒否へ
仏ルノーが今月中旬、日産自動車に経営統合を提案したことが22日、関係者の話で分かった。経営の独立性を求める日産は提案を拒否するとみられ、販売台数で世界2位の日仏連合の協力関係に影響が出る可能性もある。規模や技術力で日産に劣るルノー側は経営基盤を強化するため、かねて統合を目指していた。カルロス・ゴーン元会長が逮捕されて以後、両社間の具体的な動きが明らかになるのは初めてだ。


 


ルノー側は経営統合することで日仏企業連合の相乗効果(シナジー)を最大化できると主張した。ルノーに飲み込まれる形での統合を懸念する日産はこれを拒否し、より対等な資本関係を求めるもようだ。ルノーは43.4%を日産に、日産はルノーに15%をそれぞれ出資している。日産の持ち株には議決権がない。

日産はゴーン元会長時代の規模拡大路線が業績悪化を招いたとの考えから、経営統合ではなく、単独で経営効率を高めた方が企業価値が高まると判断している面もある。

ルノーは同社に15%を出資する筆頭株主である仏政府の意向もあり、かねて日産との経営統合を目指していた。規模などの面から単独では生き残れないとの考えがある。

ゴーン元会長によると、同元会長は2018年9月、ルノーと経営統合する意向を西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)に伝えた。仏政府も1月、共同持ち株会社方式を軸として、ルノーと日産を経営統合する意向を日本政府関係者に伝えた。

一方、日産は一貫して統合に否定的だ。ルノー中心の連合運営に弊害も出ていたからだ。ルノーの仏国内にある工場の稼働率を維持するため、日産のインドの工場で造る予定だった車種の生産を振り向けたこともある。

ただ、両社はゴーン元会長から新たな経営陣への移行が進むこの数カ月は表だった対立を避けてきた。4月12日には三菱自動車を含む3社の首脳らが集まってルノー本社で新しい会議体「アライアンス・オペレーティング・ボード」の初会合を開催。これまではゴーン元会長に権限が集中していたが、元会長の退場を受けて、3社トップの4人による合議制での意思決定に改めた。

資本面で優位に立つルノー側も、無理に主張を通そうとすると協力関係自体を壊しかねないとみて、最近は融和姿勢をみせていた。ジャンドミニク・スナール会長は3月の記者会見で経営統合について「仏政府を株主として尊重するが、ルノーや日産、三菱自にも将来がある」と統合棚上げを示唆した。

今回、対立が表面化したことで日仏連合の連携強化の取り組みが遅れる懸念も出てきた。日産は6月の定時株主総会後も西川社長が続投する方針だが、筆頭株主のルノーが反発する可能性もある。
 ≫(日本経済新聞)


≪米、イラン産原油の禁輸を発表 米が制裁強化、原油価格上昇も
【ワシントン=中村亮】ポンペオ米国務長官は22日、イラン産原油の禁輸措置について、日本など8カ国・地域を適用から外した特例措置を5月2日に撤廃すると発表した。アジアの主要国はイラン産原油の調達が難しくなり、原油価格の一段の上昇を招く可能性がある。米国の禁輸措置を受けて、中国やトルコなどが輸入停止に踏み切るかは不透明だ。

米政権は2018年11月にイラン産原油を制裁対象としたが、原油価格への影響を考慮して8カ国・地域については180日間の適用除外を認めていた。日中韓と台湾、インド、トルコ、イタリア、ギリシャが輸入を認められている。

米メディアが米国の全面禁輸の方針を先行して報じると、原油市場では買いが優勢になった。国際指標となるニューヨーク原油先物は日本時間の22日、前営業日(18日)より1.87ドル(約3%)高い1バレル65.87ドルまで上昇した。

市場には部分的な輸入制限にとどまるとの見方もあっただけに、全面禁輸の報道が原油先物への買いを加速させた。産油国ベネズエラでも大規模停電で3月から原油生産が細っている。同国の生産量は3月が日量87万バレルで、4月以降は一段の減少が見込まれている。

リビア、ナイジェリアといった産油国にも政情不安が広がる。これにイラン産原油の全面禁輸が加わり、世界的に原油の不足感が意識されやすい。

市場関係者によると、中国はイラン産原油を日量40万バレル程度、インドは30万バレル程度輸入している。この2カ国でイランの原油輸出の過半を占める。ただ中国の原油輸入全体に占めるイラン産の比率は5%程度とみられ、それほど高くない。

日本では1月からイラン産原油の調達が再開された。ただ2月のイラン産原油の輸入量は全体の4%強と前年同月(約6%)から低下していた。

JXTGエネルギーなど石油元売り各社は5月で特例措置が打ち切られるとみて、3月から順次イラン産原油の輸入を停止している。サウジアラビアなどから代替調達をしており、安定供給に影響はない。

菅義偉官房長官は22日の記者会見で、イラン産原油の取り扱いを念頭に「日本企業の活動に悪影響が及ぶべきではないとの立場から米側と緊密に意見交換している」と語った。

もっとも、米国の禁輸措置に8カ国・地域が同調するかは不透明だ。中国外務省の報道局長は22日の記者会見で「米国が国内法に基づいて単独制裁を科すことに一貫して反対してきた」と述べ、米国の全面禁輸措置の方針を批判した。米メディアによると、トルコ政府高官は先週、原油輸入をめぐり「トルコがイランを見捨てることはない」と強調。米国が禁輸措置を講じても従わない意向をにじませた。
 ≫(日本経済新聞)


≪「敵失」追い風、ウクライナとの融和めざすロシア
編集委員 池田元博
旧ソ連のウクライナで大統領選の決選投票が実施され、コメディアンの新人候補ボロディミル・ゼレンスキー氏が現職のペトロ・ポロシェンコ氏を大差で破り、当選した。選挙戦でロシアとの対決姿勢を誇示したポロシェンコ氏は国民の支持を集められず自滅した。ロシアは政権交代をひそかに歓迎し、極度に悪化した両国関係の改善をめざす構えだ。


 


 「4月21日は決定的な選択の日だ」。選挙戦でポロシェンコ陣営はこんな標語とともに、大統領とロシアのプーチン大統領が対峙するポスターをつくって国民にアピールした。

ロシアは2014年 3月、ウクライナ領のクリミア半島を自国に併合。続いて、ドンバスと呼ばれるウクライナ東部地域で起きた政府軍と親ロシア派武装勢力による泥沼の戦闘にも加担した。ポロシェンコ大統領はウクライナ国民にとって「最大の敵」となるはずのロシアを政策の争点に掲げ、ゼレンスキー氏を暗にロシアの回し者と吹聴する一方で、プーチン大統領に互角に対抗できる指導者は自分しかいないと強調したわけだ。

だが、ポロシェンコ陣営は選挙戦略を大きく見誤った。「次の大統領は就任後の最初の 100日間で何をすべきか」。キエフ国際社会学研究所が決選投票前の4月中旬に実施した世論調査では、公共料金の引き下げがトップで39.1%を占めた。さらに大統領や議員、裁判官に対する不逮捕特権をなくす法案の提出(35.5%)、大規模な汚職犯罪捜査の着手や加速(32.4%)と続いた。国民の関心は、生活環境の改善や政財界にはびこる汚職対策に向いていたといえる。

一方、当選したゼレンスキー氏は、これまで政界とは全く無関係だった。一部で報じられているように、平凡な教師が大統領になって汚職対策などに奮闘する連続テレビドラマで、主人公を演じて人気を博した。選挙戦ではドラマさながらに庶民派を自任し、オリガルヒと呼ばれる大物財界人と政界の癒着や既存政党の汚職体質の打破などを訴えた。政治家としての資質は未知数ながら、「すべてに反対する候補者」(ロシア上院のコンスタンチン・コサチョフ外交委員長)として国民の人気を集めたようだ。

ウクライナの国家指導者が誰になるかは、旧ソ連の盟主である隣国ロシアにとっても大きな関心事だった。民族的にはともにスラブ系が主体で、かつては兄弟国といわれたのに、クリミア併合後の両国関係は完全に冷え込んでいる。大統領選の結果はそんな関係を修復できるかどうかを占う重要な要素となるからだ。実際、国営メディアは選挙戦の状況を詳細に伝えるとともに、専門家を集めた討論会などを連日のように放映してきた。

では、ロシアのプーチン政権にとってゼレンスキー氏の当選は、理想的なシナリオといえるのだろうか。実は最終的に39人もの候補が乱立したウクライナ大統領選を巡り、クレムリンが暗に支持してきた候補は別にいた。野党候補の1人でロシアとの対話の必要性を訴えたユーリー・ボイコ氏と、世界的に著名な女性政治家のユリア・ティモシェンコ元首相だ。


 


ボイコ氏については 3月31日の第1回投票に先立つ 3月下旬にモスクワに呼び、メドベージェフ首相が直接会ってウクライナに対するエネルギー支援の可能性などを話し合っている。一方のティモシェンコ元首相は必ずしも親ロ派ではないが、ロシアとも欧米とも良好な関係づくりを演出できる政治家だ。天然ガスを中心にエネルギー利権を押さえているともいわれ、ロシアも水面下で交渉できると踏んでいたようだ。ただし、2人とも決選投票に進めなかった。

選挙戦の発言をみる限り、当選したゼレンスキー氏のロシアに対する見方は厳しい。地元メディアのインタビューでは、「プーチン大統領を敵とみなすか」という質問に「当然だ」と答えている。ウクライナ東部地域の親ロ派武装勢力に恩赦を与える可能性も完全に否定している。当然のことながら、「クリミアは(ロシアに)占領されたウクライナの領土」としてロシアによる併合を容認していない。

ゼレンスキー氏自身は「単なるビジネスの関係」と否定するが、同氏の後ろ盾はウクライナの大富豪イーホル・コロモイスキー氏ではないかとされている。そのコロモイスキー氏はウクライナ東部地域の紛争で私財を投じて親衛隊を組織し、親ロ派武装勢力による占領地区の拡大を阻止した経緯がある。

とはいえ、ゼレンスキー陣営はクリミア問題やウクライナ東部の紛争を収拾する目的もあって、プーチン大統領との首脳会談には前向きだ。クレムリンもこうした対話姿勢は前向きに評価している。ゼレンスキー政権の発足後、比較的早期に首脳会談が実現する可能性がある。

そもそもポロシェンコ政権は14年の政変で親ロ派のヤヌコビッチ政権が倒され、それを受けて発足した。ロシアは政変による政権交代を「違法」とみなして当初から激しく反発。対するポロシェンコ政権も対ロ強硬策を次々と打ち出すとともに、クリミア併合やウクライナ東部に軍事介入したロシアの「罪」を国際社会に繰り返し訴えてきた。

関係は大きく悪化し、いまや両国間を直行する航空便が運航できない状況が続いている。経済制裁の応酬も続き、ウクライナは天然ガスを欧州から調達せざるを得なくなった。昨年11月にはクリミア周辺の海域で、ロシア軍がウクライナ艦船を銃撃して拿捕(だほ)する事件も発生。プーチン大統領は大統領選を控えたポロシェンコ政権による陰謀と非難し、逆にポロシェンコ大統領は戒厳令を導入し、ロシア国籍の成人男性のウクライナ入国を一時的に禁止したこともある。

プーチン政権がポロシェンコ大統領を嫌っていたのは間違いなく、仮に再選されればウクライナとの関係修復は不可能とみなしていたはずだ。プーチン政権は思わぬ「敵失」を追い風に、当面はゼレンスキー次期政権との間で融和に向けた対話を続け、懐柔策がどこまで可能かを模索していくことになろう。その際にまずは、天然ガス供給を含めたエネルギー分野の協力をちらつかせる公算が大きい。

先のキエフ国際社会学研究所の世論調査に再び戻ると、外交政策で興味深いウクライナ社会の風潮が垣間見えている。ロシアとの対話の再開を望む声(23.3%)が意外に大きかったことだ。半面、ポロシェンコ政権が非ロシア化の一環としてめざしてきた欧州連合(EU)への加盟問題については、交渉開始を求める声は3.3%にすぎなかった。ロシアとウクライナの関係改善は決して容易ではないが、ゼレンスキー氏の大統領当選がその転換点となる可能性は否定できない。
 ≫(日本経済新聞)

続 昭和の怪物 七つの謎 (講談社現代新書)
保阪 正康
講談社

 

アメリカ(河出新書)
橋爪大三郎,大澤真幸
河出書房新社

 

違和感のススメ
松尾 貴史
毎日新聞出版
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●ちょいと変 浮かれてリスクを忘れた株式市場

2019年04月21日 | 報道

●ちょいと変 浮かれてリスクを忘れた株式市場

改元、新札、新天皇即位、G20,オリンピック、万博……。

安倍政権は、ふたつの統一地方選、そして、本番の参議院選までの間、兎に角、自分自身の活躍をNHKを核とするテレビ局に追いかけるよう命じているようだ。

そうすることで、日本の政治には、自民党、延いては安倍晋三と「こんな人たち」しかいないような、「空気」を作りだしている。

世界全体の経済は、米中経済摩擦、英国ブレグジッド、中国経済の減速、トランプの保護主義と、客観的に見て、良い方向ばかりとは言えない。

経済界では、AIだ、ロボットだ、自動運転だ、ips治療だ、5Gだ、ブラックホールだと、手を変え品を変え、次なる時代の経済成長のエンジンはこれだ、と囃し立てる。

この先々の夢物語は、姑息な安倍晋三のトラップ、改元、新札、新天皇即位、G20,オリンピックなどと、或る意味で変わらない臭いがする、などと、皮肉な筆者はいつも思う。

あやふやな安倍のイベント攻勢や、あやふやな21世紀のテクノロジー賛美と云う現象は、或る意味で似ているのだろう。

世界の株価は、未だにマネーの吹き溜まりとなり、経済を反映する指標から、幾弾も遠のき、経済指標として、説明できる段階を失った。

毎日新聞にエコノミストの熊野英生氏が以下のように述べている。


≪ 回復する日米株価「でも皆さん楽観的過ぎませんか?」
2019年2月27日 熊野英生 / 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

 日経平均株価は、昨年末の12月26日に直近の安値1万8948円(取引中の安値)をつけた時は、「2万円割れして株価はどこまで下がるのか」と心配させた。

 それが一転、最近は2万1000円台まで回復している。株価急落前の高値は昨年10月4日の2万4247円(取引中の高値)で、これからみるとまだ半値戻しに過ぎないが、年末年始の悲観からは抜け出したようにみえる。

 こうした株価の変動は、ニューヨーク株価とも連動している。ニューヨーク株価の方がより堅調で10月初の水準近くまで回復している。日本株が相対的に回復が遅れているとしても、ニューヨーク株価に次第に追い付いていく公算は大きい。

■株価を支えているのはFRBなのか
 株価回復の理由は次の三つが挙げられる。(1)米中貿易協議への楽観的期待(2)米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ停止に動いた(3)トランプ政権が大胆に動きにくくなった--である。

 米中協議を巡ってはさまざまな思惑が交錯する。米国産品の輸入拡大や人民元安誘導の制限など閣僚級協議で合意できた部分もあるが、知的財産保護問題のように前進しない部分もある。ただ、ここにきてトランプ米大統領は、3月中にも習近平・中国国家主席と首脳会談を開き、さまざまな問題をトップ会談で解決させたい意向を示している。ニューヨーク株価の回復は、協議の前進を好感するものだろう。

 しかし、仮に米中貿易摩擦問題が解決の方向に向かったとしても、これまでの経済悪化が進んでいく流れが改善するとは思えない。

 深刻なのは、米国よりも中国だ。特に中国の対米輸入は、2019年1月は前年比41%減と著しい。7月から8月にかけて制裁関税が課され、9月に2000億ドル相当の中国製品へ10%の関税がかけられたことへの報復関税が効いている。こうした打撃が、協議がうまくまとまったから即座に改善するとは思えないことには留意が必要だろう。

 だとすると、株価を支えている影の主役は米国の金融政策なのか。FRBは、利上げをいったん停止して様子見する姿勢に変わった。6月から再度利上げを再開するという見方があるが、もう利上げを打ち止めにするという見方が支配的になってきている。

 米長期金利は、3%近くから2.6~2.7%へと低下した。利上げ打ち止めの観測は、景気を減速させる要因がなくなるという意味で株価にプラスである。また、米国の利上げはドル建て債務のコスト上昇を通じて新興国の利払い負担を高める懸念もあったが、そうした懸念をやわらげる効果もある。

■鈍る「トランプ外交」はプラスに作用
 昨年はトランプ大統領は大暴れだったが、中間選挙で、下院で共和党が多数派を失ってから微妙に変わってきた。

 一見このことは、経済に悪影響とみられやすい。トランプ大統領が議会での主導権を失うのだから経済にもマイナスという見方である。しかし、少し時間がたつと、トランプ外交が自由度を縛られることは株価にもプラスの側面があるように思えてきた。

 例えば、日米物品貿易協定(TAG)交渉は、当初の1月から春先の4月ごろまでずれ込みそうだ。米国内でトランプ大統領が議会調整に力を奪われて、18年ほどは外交に集中できない。

 貿易交渉では、日本や欧州連合(EU)との交渉をできるだけ簡単に済ませて、中国に集中する構えである。否、議会で民主党に足かせをはめられた今、中国との貿易交渉も早期結着させるプレッシャーがかかっている。

 株価は、トランプ外交が思ったほど強権を振るえなくなったことを見透かして、貿易交渉のソフトランディングを予見しているのかもしれない。

■米国の小売りは「期待を裏切る」
 日米株価が年末からリバウンドしてきたのは、最悪の事態からの回避に反応したもののように思える。だが、四半期決算が予想以上に悪く、中国経済の減速が日米企業の業積をさらに厳しいものにしていくとみるならば、株価は再び悪化する可能性もある。

 好調が予想されていた米国の小売売上高は期待を裏切った。米政府機関閉鎖の悪影響は必ずどこかに表れてくるとみられる。悪材料が注目されにくい理由は、投資家心理が悪い条件に驚かなくなり、政策面での期待の方に敏感だからであろう。この状態を「楽観的」という。経済が悪化するとまたFRBが助けてくれるという期待も楽観しすぎだ。

 結論として、筆者は日米株価の回復には懐疑的である。「回復が続く」に3割、「もう一度下落が進む」7割といった感じであろう。明言できないのが苦しいが、みな少し楽観的だと思う。
 ≫(毎日新聞:熊野英生の「けいざい新発見」)


熊野氏の株式展望は、テクニカルにも正鵠を得ている。

筆者の場合、NY株式市場に関しては、米国社会のファンダメンタルから考えて、マネーの動きや、株式市場の動きは、テクニカルに考えて問題はないと思う。

しかし、東京市場の株価については、日銀やGPIF等のマネーが湯水の如く投入され、日経平均で5000円は下駄を履かされている事実を見逃すことは出来ない。

つまり、日経平均が2万2千円であれば、実質は1万7千円と考えておけば良い。

この数字は、日銀が債務超過に陥る株価の線上を、未だに綱渡りしていると云うことだ。

また、アメリカ社会にも、トランプ爆弾と云う不安材料はあるが、産業構造の変化は確実に進められており、人口構成上の不安も大きくはない。

白人人口の比率云々問題はあるが、白人が絶対的に優勢なわけでもないのだから、世代間バランスは許容範囲だ。

しかし、官製相場で株式を大きく膨らましている日本の市場は、本質的に違う。

無論、根本的、人口減少社会が鮮明なわけだから、NY市場と連動する局面もあるだろうが、或る閾値を越えたとき、そこからの連動を期待するのは間違いなのだろう。

東京市場が、幻の22,000から23,000円を保持している間に、日銀がいくばくかでも、売り抜け、身を軽くしてくれれば良いと願っているが、スーパーコンピュータの監視の中では無理なことだろう。

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●参議院第一党? タローの新選組に、立憲+共産+社民+有権者

2019年04月20日 | 報道

 

僕にもできた! 国会議員 (単行本)
雨宮 処凛,山本 太郎
筑摩書房

 

山本太郎 闘いの原点: ひとり舞台 (ちくま文庫)
山本 太郎
筑摩書房

 

みんなが聞きたい 安倍総理への質問
山本 太郎
集英社インターナショナル


●参議院第一党? タローの新選組に、立憲+共産+社民+有権者


これからの左翼は、共産党を含めて自民党の右派ポジションを奪いに行くべきだ。イデオロギーがどうだこうだは、奪ってから考えろ。

安倍の“改悪民営化政党”に歯止めをかけられるのは、逆張りで、有権者に、「まだ、その手が残っているのか!」と気づかせる“反NHK”な話題がSNSで盛り上がる必要がある。

NHKが正しそうに報じることを、ことごとく否定して、嘘を暴き、日本が向かうべき道は、緊縮ではなく、大盤振る舞いだと主張。無論、穴埋めは、高所得者や、民営化で不当に利益を得ている勢力への課税で補う。
 
民営化ではなく、公営化である。

NHKは即刻、国営化である。国営企業は準公務員の給与体系に合わせるので、現状の7割程度の収入になる。

筆者の山本太郎「れいわ新選組」の綱領をみると、以下のような事が書いてあった。それに、筆者の考えを加えた形なら、共産党・立憲が乗れなければ、彼らも、実はニセ改革派の正体がばれてしまう。

■日本に必要な“緊急政策”として、*れいわ新選組が言っているものとは異なる
・消費税の廃止 ・奨学金徳政令(支払免除等)

・全国一律最低賃金1500円

・保育・介護・原発作業員の公務員化(曖昧な民営化で、搾取を阻止)

・一次産業戸別所得補償(100年先の日本の生き方で重要)
 ” 第一次産業が、今後の日本の社会構成の根幹になる。縄文的生き方、元禄文化と徳川幕制を機能的組み合わせる  ”

・デフレ脱却給付金月3万(一種の臨時低額ベーシックインカム)インフレ2%達成時に終了)

・財源問題は、実績財政事情考慮。状況により、税の応能負担原則に立ち返る。(法人税増税と累進課税は当然。タックスヘイブン違反者は国外退去)

・日米地位協定の見直し  (辺野古基地建設は中止。普天間即時の運用停止。在沖海兵隊にはカリフォルニア等への移転をお願いし、これまでの駐留経費と同等の費用を日本側で持つことを前提に、米国側と再交渉。沖縄の民意を尊重します。)

・「トンデモ法」の一括見直しと廃止 (TPP協定、PFI法、水道法、カジノ法、漁業法、入管法、種子法、特定秘密保護法、国家戦略特別区域法、所得税法等の一部を改正する法律、派遣法、安全保障関連法、刑訴法、テロ等準備罪など)

・原発即時禁止 (エネルギーの主力は火力。自然エネも拡大します) Etc.

問題点や疑問点もあるようだが、日本と云う国を、国民の手に取り戻そうとする意思を感じる緊急政策案だ。



≪改革バカにケンカを売る山本太郎「れいわ新撰組」の本気度

 山本太郎が自由党を離党し、政治団体「れいわ新選組」を立ち上げた。団体名からして、維新的なもの=安倍晋三、菅義偉的なもの=改革バカにケンカを売っている。それだけでも笑えるが、打ち出した政策を見て声をあげて笑ってしまった。完全に保守のど真ん中。あまりにも直球なので優秀なブレーンがいるのだろうが、山本も政治家として急成長している。

 私は以前、週刊誌で山本を批判したことがある。国会で出される弁当は「ベクレてる(放射能汚染されている)」などと風評を流すデマ体質の左翼だと当時は思っていたが、自民党を筆頭に政治家が劣化していく中、山本のまっとうな部分が目立ってきたのは皮肉な話だ。

 まだ社会的には誤解されている人だと思うし、私も全面的に信頼しているわけではないが、政策の9割は高く評価できる。残りの1割もツッコむ場所があるといった程度の話。

 消費税の廃止、安い家賃で住める公的住宅の拡充、奨学金チャラ、最低賃金1500円……。平成の30年間にわたりメディアが垂れ流した「構造改革」神話に洗脳された人にはほとんどデタラメに聞こえるかもしれないが、実現までのプロセスは政策に書いてある。額に青筋を立てて「財源はー!」と騒ぐ前にその部分はチェックすべきだ。

「公務員数の増加」という項目も素晴らしい。「世界から見て日本は公務員の数が少なく」「1万人あたりの公務員数をみると日本は、英国の約3分の1、米国の約2分の1」とあるが、こちらも「民営化=善」という妄想からの脱却を目指しているように見える。

 1次産業戸別所得補償、防災庁の創設、国土強靱化、公共投資の拡充、独立国家を目指すための日米地位協定の改定、辺野古基地建設中止などの政策もいい。今大事なことは安倍政権の売国を止めることだ。これまで押し通されてきた「トンデモ法」(TPP、水道法、カジノ法、漁業法、入管法、特定秘密保護法、国家戦略特別区域法など)の一括見直し・廃止も唱えているが、これはすぐにやってほしい。

 実現には困難がつきまとうだろうが、日本にも「保守政党」がひとつくらいあってもいい。

 山本は「政策と言論を持って天誅を加える」と言っているが、本気かどうかはすぐに判明する。参院選に誰を擁立するかである。

*適菜収作家 1975年生まれ。早大で西洋文学を学び、ニーチェを専攻。ニーチェの「アンチクリスト」を現代語訳した「キリスト教は邪教です! 」、「ゲーテの警告 日本を滅ぼす『B層』の正体 」など著書多数。近著に「もう、きみには頼まない 安倍晋三への退場勧告 」。
 
≫(日刊ゲンダイ)

シルバー・デモクラシー――戦後世代の覚悟と責任 (岩波新書)
寺島 実郎
岩波書店

 

幸福の増税論――財政はだれのために (岩波新書)
井手 英策
岩波書店

 

「幸福な日本」の経済学 (講談社選書メチエ)
石見 徹
講談社
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●国民から千円植林費収奪 山林無断伐採業者のツケ払い

2019年04月19日 | 報道

 

ニュースが報じない神社の闇――神社本庁・神社をめぐる政治と権力、そして金
「リテラ」神社問題取材班
花伝社

 

対米自立
木村 三浩
花伝社

 

一億総他責社会 (イースト新書)
片田 珠美
イースト・プレス


●国民から千円植林費収奪 山林無断伐採業者のツケ払い


時折、投稿サイトなどで、引用元サイトとして紹介される“長州新聞”という新聞社がある。

この新聞社は、山口県下関に本社を構える、れっきとした新聞社である。隔日紙であるが、時折、きらりと光る記事を書いていることがあるので、注目している。

山口県かとか、長州かとか、時折、腐すようなことを書いている筆者が、長州の新聞社を称賛するのも奇妙だが、まぁ、山口県や長州のすべてを腐しているわけではないので、この際はさておこう。

なぜ、今回長州新聞を取り上げたかと云うと、ひとつは、同紙の“「100年の計」の森林管理を放棄 知らぬ間に進む戦後林政の大転換”と云う記事に注目したことがひとつ。

そして、同社の編集理念(編集綱領)に納得したからである。以下に、その編集綱領を紹介しておく。


≪ 長州新聞【編集綱領】
・一、勤労人民の新聞として政党、政派や思想信条、職業にかかわりなく、正しい世論を代表し、日本社会の進歩発展のため、真実の報道につとめる。

・一、権力をほしいままにするひとにぎりの独占ブルジョアジーの搾取と抑圧、軍国主義と戦争政策に反対し、労働者、農漁民、都市勤労人民の生活と民主的権利を擁護し、人民文化の発展につとめる。

・一、世界のいたるところで帝国主義勢力が諸民族を搾取、抑圧し、植民地再分割のための世界戦争への道をすすんでいることに反対し、世界史の発展のためにたたかう。 

・一、われわれの目標は、貧困も失業も戦争もない、すなわち搾取と抑圧のない自由な社会を、幾千万大衆とともに実現することである。
≫(長州新聞HPより抜粋)


我が国のマスメディアにも、同様の編集綱領が存在する可能性は高いのだが、実態は、綱領通りの編集をし、新聞を発行している社は稀である。

各省庁に設けられた“記者クラブ”が各省庁の広報的役割を果たし、利益共同体と化している現実は、無惨なほどである。

特に、強権と嘘、隠ぺいが得意の安倍政権になってからは、わが国のマスメディアは、権力によって完璧に去勢されてしまった。

まぁ、筆者の思い込みはさておき、早速、当該新聞の記事を紹介してみよう。


≪「100年の計」の森林管理を放棄 知らぬ間に進む戦後林政の大転換
2019年4月17日
 農業や水産業に続き林業をめぐっても、国民の知らないところで戦後林政の大転換が進行している。昨年5月に国会で成立し今月から施行となった民有林対象の「森林経営管理法」と、そのための財源づくりである「森林環境税」(3月に国会で成立。今月から施行)、そして現在国会に提出中の「国有林野管理経営法案」がそれである。森林科学者やジャーナリストが、これまでの「持続可能な森林管理」を放棄し、林業を外資をはじめとする民間企業に開放するものだとして警鐘を乱打している。どんな内容なのか調べてみた。

■公共性高い森林整備の役割
 森林経営管理法は、安倍政府の規制改革推進会議が主導して成立させたもので、「林業の成長産業化」を掲げ、「日本では意欲の低い小規模零細な森林所有者が多く、手入れが行き届きにくくなっている」といって森林所有者に経営管理権を手放させ、市町村に経営委託する。そして市町村が森林の集約を進めたうえで、もうかる森林は民間企業に再委託し、もうからない森林は市町村で管理するというものだ。

 これに対して愛媛大学名誉教授の泉英二氏(森林学)を委員長とする国民森林会議提言委員会が、「林政をこのような方向へ大転換させてよいのか」と題する提言を発表した。そのなかで泉氏は、「林業構造全体を、公共的な利益から経済性の追求に転換させるものだ。これまでの政策では、災害の防止を目的とした間伐に重点が置かれていた。しかし今後はもうけるために大量の木材を供給する主伐(皆伐)を主軸に据え、所有者から経営管理権を奪ってまで主伐しようとしている」と批判している。

 森林生態学では森林の発達段階を、「林分初期(幼齢)段階」=10年生ぐらいまで、「若齢段階」=50年生ぐらいまで、「成熟段階」=150年生ぐらいまで、「老齢段階」=150年生以上、と評価する。そして若齢段階までの森林は構造が単純で、生物多様性が乏しく、土壌構造は未熟で、水源涵養機能は低い。森林生態系は時が経つほど生物多様性が豊かになり、植物と動物の遺体(落葉、落枝、死骸、糞)の質量は増え、土壌生物の活動が活発化し、そうなると土壌孔隙など土壌構造が発達して保水機能は高まる。  ところが森林経営管理法では、政府・林野庁は「日本の人工林は50年前後をもって主伐期に達した」と評価し、若齢段階で皆伐する短伐期皆伐・再造林方式を推進しようとしている。それは以上の自然法則に逆らい、災害に対して今以上に脆弱な森林をつくることにならざるをえない。また、一度にすべてを伐ってしまうと、苗木を食べ尽くすシカの被害のリスクも高まり、成林が困難になると指摘する研究者もいる。

 この法律でもうかるのは、大型木材産業とバイオマス発電業者である。2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まってから、各地で伐採量にこだわる大規模な皆伐が横行し、丸裸になる山が急増しているという。

 そして、この財源をひねり出すために新設されたのが森林環境税だ。2024年度から、住民税に国民一人当り一律1000円を上乗せして徴収し、それを国が都道府県と市町村に分配する。なぜ2024年かというと、その前年度に東日本大震災の復興特別税の1000円が終わるからで、追加負担をごまかすための姑息なやり方である。今年度から23年度までの自治体分配金は、国が税金で立て替える。

 それに加え、国有林野法を改定する国有林野管理経営法が国会に提出されている。ジャーナリストの橋本淳司氏はこの法律を、国有林を水道民営化と同じコンセッション方式で外資に売り飛ばすものだと批判している(『世界』5月号)。

 同法案は、農林水産大臣が外資を含む特定の林業経営者に、50年以内という長期間、国有林の樹木採取区に成育する樹木を伐採する権利(樹木採取権)を与える、というもの。その下敷きになったのが、未来投資戦略会議の「国有林について、民間事業者が長期・大ロットで使用収益を可能とする仕組みを整備し、コンセッションを強化する」という方針だった。

 日本の商社がコンセッション契約を結んだフィリピンやインドネシアの森林で、木材を大量伐採してはげ山にした後、同国に返還したという例もある。橋本氏は、現在国内では大規模なバイオマス発電の燃料用木材チップの需要が急増しており、企業が安価な木材の大量供給を国産材に求めていること、そこにこの法律を使って、成長の早い品種を用いて短期間に伐採して回転率を上げる企業が参入する可能性があることを指摘している。

■国土の7割が森林の日本
 「100年の計」といわれる森林経営に、短期的利益追求主義を持ち込むことがいかに危険かは明らかである。日本の国土の67%は森林であり、先進国のなかでこれほど豊かな森林率を持つ国はまれだ。日本の林業の成り立ちは3世紀ともいわれ、長い歴史を誇っている。

 だが、第二次大戦中は過伐が進み、戦後復興から高度成長期にも木材需要が拡大し続けた。この時期政府は、天然材を伐採してスギやヒノキなどの人工林にかえる拡大造林政策をとった。この人工林が成長して伐採可能になった1990年代以降、日本の木材供給量(生産量)は増大するはずだったがそうならず、60年代からの半世紀で3分の1に縮小した。原因は1961年の丸太の輸入完全自由化を手始めに、木材関連の関税を撤廃したからだ。安い外材が流入し、輸入自由化前に90%以上あった自給率が、今では36%に落ち込んでいる。

 一方、国内の人工林の多くが間伐されないまま放置されている。お互いもたれあうようにして立つヒョロ長い木の集団は、根系の支持力も弱く、強風や冠雪で一気に共倒れを起こすし、豪雨時には表層崩壊を起こしやすい。また、密集した人工林は非常に暗く、下層植生がきわめて乏しいため、雨水による土壌の浸食を招きやすい。それが、台風や集中豪雨のたびに大規模災害を引き起こす要因の一つになっている。

 森林科学者の藤森隆郎氏(元農林省林業試験場勤務)は、日本の自然を生かした第一次産業を軽視することは、日本社会の持続可能性を根底から危うくすると指摘している(築地書館『林業がつくる日本の森林』)。

 健全な森林は、それぞれの地域の気象緩和、水資源の保全、土壌保全、生物多様性の保全といった、国土保全に不可欠な機能を持っている。また木材は、光合成によって水と二酸化炭素をもとに生産し続けることができるし、木材は長期にわたって炭素を貯蔵し続け、使用後は燃焼や腐朽などによって二酸化炭素と水に還元される。この木材を、森林生態系の持続性を損なわない範囲でできるだけ多く生産し、有効に利用するなら、人間社会に利益をもたらす。

 林業先進国ドイツでは、林業は国の安全保障に欠かせないとして、林業従事者に所得補償や補助金を出し、林業の振興に努めているという。それとは対照的に、民間企業の利益を優先し、森林の国土保全、水源涵養機能は壊れるにまかせるという日本政府に、厳しい批判の声が巻き起こっている。
 ≫(長州新聞)


我が国の林業が廃れたのは、わが国の法律が輸入材の関税を限りなくゼロにしたために起きた現象だ。

ここにも、マクロ経済学者のインチキが透けて見える。

輸入する外材が輸送コストを加えても、国内木材より安価に輸入されていると云うことは、他国の森林を、タダ同然の価値で伐採輸入できるからだろうが、他国の森林伐採イコール他国の山がまる裸と云う足跡を残すことを忘れてはならない。

この地球規模の資源の損金が計上されないのが、自由貿易や市場原理主義の重大な欠点だ。

地球の環境にとってマイナスな事実は、最終的に、我が国にとってもマイナスな出来事だと云う思想を持たない。

つまり、マネーによって突き動かされる人間の行為は、善悪といった判断能力がない点に注目しておく必要がある。

ゆえに、政治が、競争の原理が必要と認めても、その競争が正当なルールの中で行われるように監視していくのが責務のはずだが、今の安倍政治などは、率先して、その監視監督の責任を放棄し、積極的に加担しているフシまで垣間見える。

それにしても、木材の需要が急増した理由が、バイオマスだと云う事実も衝撃的だ。

このエネルギー産業への知識が乏しかったが、バイオマスエネルギーなどは、小規模の発電だと思い込んでいたが、木質ペレットを資源として、大規模事業が試みられているのが現状のようだ。

現に、この事業で代表的企業であるイーレックス株式会社は東証一部に上場する規模の会社なのである。この辺、時代は見えない中で、猛烈に動いているようだ。

原発からの撤退や化石燃料発電の縮小など、自然エネルギーへの転換が叫ばれている世界的傾向から、たしかにバイオマス発電も有効性が認められるが、その材料(チップ)として、自国の山を丸裸にすると云うのは、どこか本末転倒な動きに思える。

最近の豪雨災害や土砂崩れの現状をみると、必ずしも森林が土壌を強くするとは限らないような議論も生まれるが、実際には、無理な宅地開発によるものだと言われている。

しかし、本質的に考えた場合、森が多い国土というものは、豊富な水にも恵まれるわけだ。 :豊富な水は、農業用水や飲み水に欠かせないわけで、我が国が工業製品の輸出で、経済大国の仲間入りをした時代において、縁の下の力持ち的役割をしていた事実を、国民はあまり知らない。

昨今では、その我が国の大きな自然のメリットが、世界中の“ハゲタカマネー”の目に留まり、商売の材料に使われようとしている事実を報じている。

その上、バイオマスエネルギーの為に切り払われた山林に植林するための費用を、国民に押しつけようとしているとは、夢にも思わなかったが、事実のようだ。

この特別税は、確信犯的に、東日本大震災の特別復興税、1000円が終わるのに乗じて、ドサクサ紛れの森林環境税を国民から搾取しようと云うのだから、悪意の徴税である。

かの田沼意次もビックリな所業だ。

経産省のバイオマス発電事業者の窮状を伝える、なかばエクスキューズなきじがあったので、公正公平な報道の為に、以下に参考掲載しておくが、放置されている山林の伐採と植林は必要だろうが、植林費用を国民に押しつけるのには納得いかない。


≪バイオマス発電8割動かず 林業人手不足、燃料輸入頼み
2018/12/11
植物などの生物資源を燃やして電気をつくるバイオマス発電がカベに突き当たっている。燃料の確保が難しく、政府の固定価格買い取り制度(FIT)の認定を受けた案件の8割以上が稼働していない。天候に左右されない安定した再生可能エネルギーとして期待がかかるバイオマス発電だが、人手不足もあって国内の森林資産を生かし切れず、燃料の輸入頼みに拍車がかかっている。

国内のバイオマス発電で主に燃料とするのは、木くずなどを固めた木質ペレットとパームやしの実の殻(PKS)だ。光合成で二酸化炭素(CO2)を吸収する植物を使うことで、燃焼時のCO2排出を相殺するとされる。

政府が掲げる2030年度の電源構成の計画では、バイオマス発電は全体の4%程度を占める。同7%の太陽光よりも低いものの風力(同1.7%)を上回る。国内の林業や製材業で生じる木材を有効活用できる安定的なエネルギー源として期待されている。

■FIT認定のうち稼働2割弱
しかし現状はそのシナリオ通りに進んでいるとは言いがたい。18年3月時点で政府がFITで認定しているバイオマス発電の容量は約740万キロワット。当初、買い取り価格が1キロワット時当たり24円と高く設定されたため、地場企業から大手電力まで多くの企業が参入。ただそのうち稼働したのは約130万キロワットと2割弱にとどまっている。

「燃料の調達が難航している」。福島県にバイオマス発電所の建設を予定していたある再生エネ事業者の担当者はこう明かす。19年春の稼働を予定していたが、燃料の確保のメドが立たず大幅に遅れる見込みだという。

■輸入量は5年で6倍に
バイオマス発電の主な燃料となる木質ペレットの場合、国内生産量は過去5年間、ほぼ横ばいだ。日本は国土の3分の2を森林が占めるが、山が多いため木材を切って下ろす手間がかかる。林業の従事者は高齢化が進み年々減少しており、生産量を増やすことは簡単ではない。

一方、木質ペレットの輸入量は5年間で約6倍に増加しており、「自給率」は約2割に低下した。ただ輸入燃料を確保できている事業者は一部に限られると見られ、多くが稼働にたどり着けない状態が広がっている。

再生可能エネルギーのレノバが16年に稼働させた秋田県の発電所では、県内の未利用木材が燃料の80%を占めた。それでも21年に稼働する7万5000キロワットの大規模発電所では国産燃料の利用は数%程度にとどまる見込みだ。

燃料不足に目を付けた海外企業も攻勢をかけている。木質ペレット世界大手の米エンヴィーヴァは三菱商事や丸紅と長期契約を結び、21年から年150万トンを米国から輸出する。豪アルタス・リニューアブルズも10月、木質ペレット10万トンを10年間供給する契約を三井物産と結んだ。

新電力大手のイーレックスは自ら燃料調達に乗り出した。東南アジアのPKS集積所に出資し、12月上旬にはマレーシアからPKSを積んだ船が日本に到着する。自社で使うだけでなく、外部のバイオマス発電事業者への販売も始める。

■安定調達にリスク
自然エネルギー財団の相川高信上級研究員は燃料の輸入依存が強まっていることについて、「長期的な調達のリスクが高まる」と警鐘を鳴らす。

例えばPKS。主産物であるパーム油の生産過程で熱帯雨林を伐採するため、環境破壊につながるとの声も多い。すでにパーム油の生産量は頭打ちで、副産物であるPKSの供給量は増えにくい状況だ。

間伐材からつくる木質ペレットについても、プラスチックの代わりに木材を使う動きが世界的に広がるなど、市場環境が一変する可能性がある。

11月末の自民党の再生エネを巡る議連では、国産材の活用を重要視する声が上がった。ただ木質ペレットの場合、国産の価格は海外メーカーの工場で生産される輸入品の2~3倍とされる。バイオマス発電ではコストの約7割を占めるとされるだけに、発電事業者が割高な国産燃料を使う動機が働きにくい。

FITでは買い取り価格の一部を電力価格に上乗せしており、家庭や企業が負担している。国民負担分が燃料を供給する海外企業に流れることを問題視する声もある。バイオマス発電を持続可能なエネルギー源とするためには、燃料のコスト低減を促す仕組みのほか林業の活性化が必要になりそうだ。(坂本佳乃子)    ≫(日本経済新聞)


世界一のモノづくりで競っているドイツだが、この国には、銭儲けと云う知恵と別に、倫理道徳的非合理性を認める文化がある。

残念だが、今日の日本政府や経団連などとはかなり違う世界にまで考えが及んでいるようだ。

ドイツは、この、倫理道徳的非合理性のために、アメリカや日本より不利な経済競争に晒されるが、その不利益も、ナチスの所業への贖罪と納得している部分もあるのだろう。

ドイツでは、時代的に、利益を捻出出来ない農林業従事者に対して、所得補償や補助金を出してでも、森林を守ろうとしているそうだ。

尤も、反動的歴史修正主義なファシズム賛美を主張する一定の勢力が台頭しているのは、複雑な流れだが、ドイツにも、日本にも、似たような考えの人は生まれるようである。

出鱈目な、経産省のベースロード電源の末席に、このバイオマスも含まれるが、上記の日経の記事が報じるように、バイオ資源の高騰で事業がどん詰まり状態のようである。

そこで、長州新聞が報じるような無茶な課税が、一部バイオ事業者救済に利用されているのであれば、何らかの利益誘導が含まれている疑惑が生まれるのだろう。

正直この問題は、わが国のエネルギー政策と深くかかわる問題で、最終的にはベースロード電源に、原子力を入れるべきかどうかと云う議論に繋がるので、さっさと片付く問題ではなさそうだ。

この経産省作成の、尤もらしい“ベースロード電源疑惑”に突入せざるを得ないが、直ぐに手をつけるつもりはない。多くの場合、暗く深い闇に阻まれ、苦戦するのが確実だから、簡単には手を出せない(笑)。

フェイクと憎悪 : 歪むメディアと民主主義
永田 浩三
大月書店

 

タネはどうなる?!~種子法廃止と種苗法運用で
山田 正彦
サイゾー

 

自民党という病 (平凡社新書)
佐高 信,平野 貞夫
平凡社

 

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●縄文が売り払われる 戻るべき原点の喪失は痛恨

2019年04月18日 | 報道

 

資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界
佐々木 実
講談社

 

完本 しなやかな日本列島のつくりかた: 藻谷浩介対話集 (新潮文庫)
藻谷 浩介
新潮社

 

食の戦争 米国の罠に落ちる日本 (文春新書)
鈴木 宣弘
文藝春秋


●縄文が売り払われる 戻るべき原点の喪失は痛恨


個人的な考えだが、日本と云う国の仕組みや、人々の、最も優れている部分は、この国土に1万年にわたり続いた“縄文の精神”ではないかと、常々考えている。

平易な言葉で表現するなら、「地産地消」と云うことだ。

ところが、この「地産地消」すべき原材料が、金融資本の餌食にされているのが現状である。

以下の、守旧派と批判に晒される東大農学部教授鈴木宜弘氏のコラムを読む限り、“生み育てる農林漁業”こそが縄文の精神に根づいた制度の生き残りだったが、この制度を根こそぎ金融資本からに叩売りしているのが、今の経産省主導の安倍政権の行動だ。

本質的に、このような国民が固有に有していた「社会的共通資本」を、国内外のハイエナ企業に売り渡す行為は、売国である。

百歩譲って、竹中平蔵的な金融資本主義や市場原理主義による“金儲け”が実際に実現し、国と国民が豊かになれるなら、そういう“今だけ、金だけ、自分だけ”も、まあ一つの選択だと言える。

しかし、この金融資本主義も、規制改革と国富の叩売りと云う宴が終わった時点で、国が、国民の生活を保障しない日本と云う国が出現することを、国民が十分理解出来ずに、ことが進んでいるのが大問題だ。

早い話が、市場原理主義の貫徹で、日本が勝てる要素がまるでない。つまり、敗北しか見えない。


狩猟民族としてのDNAがあるアングロサクソンと、採取民族のDNAを持つ日本人が、同一の土俵で戦ったら、採取民族が敗れるのは火をみるよりも明らかだ。

このような考え方をすると、「しっぽを巻いて逃げるのか」との非難があるが、合理的に考えて、勝てない戦場に出向くのは、愚かなだけだ。

安倍晋三などは、日本スゴイ!、日本人スゴイ!を提唱する日本会議やネトウヨらにの支持を得て、選挙制度の罠で政権を握っている内閣にとっては、自由貿易で、正々堂々戦おう、と主張するしかないのだが、勝ち目はゼロの土俵だ。

まさに、第二次世界大戦に踏み込んだ時と同一な、質的過ちに陥っている。

今さらヤメラレナイ。

そんなことはない。


あっ!場所、間違いました。会場は隣の部屋でした、と扉を閉めれば良いことだ。

人口の増加が見込めない。領土の増加も見込めない。経済活動に必要なエネルギー資源がない。

ITやAIの技術的ノウハウも世界レベルとは言いがたい。ビッグデータも1億人あまりでは、たかが知れている。14億に敵うはずもない。

しかし、どう猛なアメリカ人や、それに挑む4千年の歴史に裏打ちされた中国の戦場に、同じルールで参戦するなど、愚の骨頂だ。

本質論的な話だが、なぜ縄文時代が1万年も続いたのか、その辺を紐解きながら、日本は、独自の土俵を作り、その土俵の中で、独自の文化や文明を築くことに本気になる方が、生きている満足度や幸福度は、相当上昇するものと考える。

逃げるのではなく、異なる世界を切り拓くのだ。ヒントは、縄文文化と元禄文化だ。

そういう意味で、その土台となる、日本の農業や林業、漁業が持っている“既得権”は、悪の権化ではなく、実は、次の時代の日本の宝なのである。

それを売り払われるのだから、この痛手は大きい。買い戻すのに、売却費の何倍もの資金が必要になるからだ。

ハゲタカな資本とは、そういうものだ。

まぁ、今さらやめさせようとしても、当分は、行くところまで行くのだろう。


≪コラム:食料・農業問題 本質と裏側
■2019.04.04 
【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】霞ヶ関の奮起に期待する
 霞が関の「変節」を批判するのはたやすいが、良識ある官僚とOBの「闘い」にも目を向ける必要がある。

◆TPP交渉参加はあり得ない選択肢だった
 振り返ると、日本の農林漁業を守り、国民への安全な食料供給の確保を使命としてきた農林水産省にとって、TPP(環太平洋連携協定)交渉への参加は、長年の努力を水泡に帰すもので、あり得ない選択肢であった。何としても阻止すべく、総力を挙げて闘ったが、押しきられた。痛恨の極みだった。次には、重要5品目を除外する国会決議も守れなかったが、コメなどの被害を最小限に食い止めるために農水官僚が必死に頑張ったのは確かだ。  

◆築き上げたものが次々と崩壊させられる~民有林・国有林の「盗伐」も合法化
 重要品目の国境措置だけでなく、酪農の指定団体制度(畜安法)も、種子法も、漁業法も、農林漁家と地域を守るために、知恵を絞って作り上げ、長い間守ってきた仕組みを、自らの手で無惨に破壊したい役人がいるわけはない(特定企業による民有林・国有林の「盗伐」も合法化し、森林環境税まで補助金として供与する)。それらを自身で手を下させられる最近の流れは、まさに断腸の想いだろうと察する。

 官邸における各省のパワー・バランスが完全に崩れ、従来から関連業界と自らの利害のためには食と農林漁業を徹底的に犠牲にする工作を続けてきた省が官邸を「掌握」している今、命・環境・地域・国土を守る特別な産業という扱いをやめて、農林漁業を「お友達」の儲けの道具に捧げるために、農水省の経産省への吸収も含め、農林漁業と関連組織を崩壊・解体させる「総仕上げ」が進行している。  

◆世界に例のない酪農協弱体化法
 2017年6月には、生乳の特質から世界のすべての国が全量出荷を義務付けているのに、日本だけが酪農協の共販の弱体化を図る畜安法改定を断行した。懸念を表明した(将来を嘱望されていた)担当局長と課長は「異動」になった。それでも、「省令で『いいとこどり』の二股出荷は拒否できるように規定するから」と担当部局は酪農関係者に説明し、実際、彼らは一生懸命知恵を絞っていた。しかし、「上」からの「小細工すると、わかっているよね」との圧力で、結局、有効な歯止めはできなかった。  

◆海は企業のもうけの道具に差し出せ
 水産庁は、様々な形で立体的・重複的な「漁場利用の分割不可性」に基づく資源の共同管理の有効性・必要性を指摘していた(農林中金総研.田口さつき主任研究員)が、その根幹となる漁業法における、漁家の集合体としての漁協による共同管理を優先する仕組みは、あっけなく崩壊させられた。

 長年にわたり、そこに住み、前浜を生業の場とし、資源とコミュニティを持続させてきた地元漁家たちから、「適切かつ有効に」海面を利用して「成長産業化」する=漁家のノリ養殖を企業のマグロ養殖に明け渡せば何倍もの利益が上がる、として、漁業権を剥奪する。資源管理もコミュニティも崩壊する。

 これは「強制収用」より悪質である。強制収用も大問題だが、それは空港建設など公共目的のために補償して合意の上で権利を剥奪するものであるが、今回は、特定企業の利益のため、補償もなく、合意もなく、地元漁家の生存権が剥奪されるというのだから、憲法29条に対する重大な違反である。

 農・林・水、すべてに関わる特定企業もある。国家「私物化」特区で農地買収し、森林「盗伐」によるバイオマス発電も合法化してもらった同じ企業が、洋上風力発電で海にも参入する。

 また、沖合漁業についても、水産庁は「個別割当方式・譲渡性個別割当方式の概要と我が国における導入の考え方(論点整理)」(平成20年11月7日)で
(1)漁獲量の迅速かつ正確な把握のための多数の管理要員など、多大な管理コストを要する(437億円と試算)
(2)操業が各漁業者の判断に委ねられ、漁業者団体による管理が行われなくなった場合には、価格の高い時期に漁獲が集中し、市場が混乱するおそれ
(3)特に、譲渡性個別割当方式を導入し、全面的に自由な割当ての移譲を認めた場合、 ・各種規制(トン数規制、操業区域、操業期間、操業方法等)の見直し、撤廃に伴い操業秩序が混乱するおそれ ・生産性が高く資本力のある漁業者に割当てが集中し、結果として、漁村地区が崩壊するおそれ、を指摘し、欧米型の資源管理には問題点が多く、我が国の漁業形態にも合わないと論陣を張っていた(前出・田口氏)。

 ところが、今回は、一転して、漁獲の個別割当から譲渡性個別割当に移行させ、さらに、船のトン数制限も撤廃して、一部企業の漁獲独占を後押しする方向が露骨に示された。漁業権の個別付与も含め、水産庁が「やるべきでない」と主張し続けてきたことを一気に「すべてやる」ことになってしまった。良識ある官僚やそのOBには許容できるはずがない。実は、「水産庁内での議論がないどころか、案文もほとんどの人は知らなかった」との指摘さえある。  

◆種はグローバル種子企業に渡すと決めたのだ
 種子法の重要性を理解していない農水官僚はいない。しかし、グローバル種子企業の世界戦略は世界の種を握り、買わないと生産・消費ができないようにすること。それには公共種子が一番じゃま。これをやめてもらって開発した種子はもらう。さらに、自家採種を禁じて種を買わせる(在来の種は勝手に登録して農家を特許侵害で訴える)。F1(一代雑種)化、GM(遺伝子組み換え)化すれば、買わざるを得なくなり、これで生産者・消費者の支配完了となる。

 公共種子事業をやめさせ(種子法廃止)、国と県がつくったコメの種の情報を企業に譲渡させ(農業競争力強化支援法)、自家採種は禁止する(種苗法改定)という3点セットを差し出した。もっと言えば、特定のグローバル種子企業への「便宜供与」の「7連発」、
(1)種子法廃止、
(2)種の譲渡、
(3)種の自家採種の禁止、
(4)non-GM表示の実質禁止、
(5)全農の株式会社化・買収、
(6)輸入穀物のグリホサートの残留基準値の大幅緩和、さらには、
(7)ゲノム編集を野放しにする方針、が進められ、世界中でグローバル種子企業の排斥が強まる中、日本国民が「世界で最後の唯一最大の餌食」にされようとしている。

 種子法の廃止(2018年4月1日)にあたっても「従来通りの都道府県による推進体制が維持できるよう措置する」との附帯決議(与野党が頑張ったアリバイづくり)が入ったが、案の定、都道府県への「通知」(2017年11月)は、都道府県は事業を続けてよいが、それは民間に移譲する移行期間においてのみで、その期間における知見も民間に提供しろと指示した。

 つまり、至れり尽くせりで、グローバル種子企業が儲けられるよう早く準備しろと要請しているだけだ。  実は、役所の担当部局と主要県の担当部署が相談して「都道府県は事業継続できる」との案を作ったのだが、「上」からの一声で、「それは企業に引き継ぐまでの間」と入れさせられてしまったのだ。酪農と同様、担当部局が頑張っても、最後は「鶴の一声」でジ・エンドである。

 漁業法でも、法に明記されなかった「適切かつ有効に」の詳細を定める省令などに期待する声もあるが、畜安法や種子法と同様に、そもそも、「既存漁家(漁協)から参入企業に漁業権を付け替え、その権利を固定化する」ために入れた「お上の意思」は重い。抵当権設定も可能にして、競売で企業が権利を集積していく(浜を買い占めていく)道筋もつけられている。

 それでも、良識ある官僚とOBは頑張って闘っていることは忘れてはいけない。全国の都道府県の自治体も、現場の農林漁家も、国民も、農協も、漁協も黙ってはいない。農水省をなくしてはならない。
 ≫(JAcom:コラム鈴木宜弘)

 

悪夢の食卓 TPP批准・農協解体がもたらす未来
鈴木 宣弘
KADOKAWA

 

タネはどうなる?!~種子法廃止と種苗法運用で
山田 正彦
サイゾー

 

種子法廃止でどうなる?: 種子と品種の歴史と未来 (農文協ブックレット)
農文協(編集)
農山漁村文化協会
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●腑に落ちない新元号、次時代を予感 「令」は冷たい

2019年04月17日 | 報道

 

天皇はなぜ生き残ったか (新潮新書)
本郷 和人
新潮社

 

「承認欲求」の呪縛 (新潮新書)
太田 肇
新潮社

 

違和感のススメ
松尾 貴史
毎日新聞出版


●腑に落ちない新元号、次時代を予感 「令」は冷たい


世論調査などによると、新元号「令和」は6~7割の国民が好感を持って受けとめたとの報道がめだつ。

端から新元号にケチをつけるのも憚られるので、「まぁ、良いんじゃないですか」と云う感じの回答が多かったようである。

そういう意味では、日本人は如才がないと云うか、よほど“忖度”が好きな国民なのだろう。

古代史を紐解くと、日本と云う地においては縄文と云う時代が一万年も続いていたのだそうだ。

つまり、縄文人の一万年の歴史が土台にある国と考えれば、ここ10年くらいで起きた出来事で、四の五の考えるのは冗談的でもある。

イメージ的にも、言葉の響き的にも、“rei”には温かみはない。“wa”が温かいから良いじゃないかと云うが、冷温で帳消しだ。

以下のコラムで指摘するように、筆者も確認したが、”「令」を大修館書店の「大漢語林」を繰った。令の項には(1)命ずる。いいつける。法令などを発布する。「命令」(2)みことのり。君主の命令。「勅令」(3)のり。おきて。法令。布告書。「律令」……と続く。”と。

安倍晋三首相は発表当日の自民党役員会で「令はいい意味」と説明したが、「よい」の意味が出てくるのは6番目だ。旧い漢和辞典なら7番目に漸く「よい」と云う意味が出てくるが、ほとんどが「命令」的な意味合いで、律すると云う上から目線な文字だと言える。


そもそも、無理やり国書だと言いながら、古事記や日本書紀からならいざしらず、謂わば、当時の歌謡曲である歌集から選んだ点である。

穿った見方をすれば、当時の藤原の統治権力を正当化させる古事記、日本書紀ではなく、政治性の薄い万葉集から選びました、とエクスキューズを言いたいところだろうが、正当な歴史哲学が欠けており、田舎育ちの長州武士的だとも 言える。

しかし、日本の歴史の中において、点にしか過ぎない議院内閣制から誕生しただけの安倍総理が、己の物のように「元号」を扱うのは控えたら如何なものだろう。

NHKのニュース報道などを見聞きしていると、安倍総裁の所有物であるような扱いが目立つのは、顰蹙ものである。

しかし、わが国の愚民な人々は、安倍政権の手柄であり、内閣支持率を5~8ポイント上昇させるのだから、目出度い。いや、フェークな調査なのかもしれない。

まぁ、暗黒の時代の幕開けとして、残念であるが“暗黒の令和”と云うゴロの良さも手伝い、かなり日本には厳しい時代が訪れるようだ。

しかし、国の立場が厳しくなる時代には、救世主のように多くの国民が目覚めるとも言われているので、その歴史的事実に期待しよう。


≪新元号「令和」 礼賛一辺倒だが…「負」の面にも目を
世の中が新しい元号「令和」ブームに沸いている。各種の世論調査で7割前後の人が「好感が持てる」と回答。出典となった万葉集にも注目が集まり、関連本の増刷も相次ぐ。だが、そんな「礼賛一辺倒」に疑問を投げ掛ける人もいる。【小松やしほ】 「いやあ、参りましたよ」。東京大学史料編纂(へんさん)所の本郷和人教授は開口一番、こう言って頭を抱えた。テレビの歴史バラエティーやクイズ番組で、分かりやすく楽しい解説で人気の教授が何に「参った」のか。

 新元号が発表された翌2日のこと。テレビ朝日の情報番組に出演し、「令」の字の「悪口」を言ったことで、ツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で猛批判され、胃の痛む日々を過ごしているという。

 そんな思いをしてまで、口を開いたのはなぜか。「僕がテレビに出てバカやっているのは、歴史学の面白さを少しでも多くの人に分かってもらうため。学界と皆さんをつないで、研究の成果を分かりやすく伝える人間が必要だと考えているからです。そんな僕が今回、元号の問題に目をつぶって『政府万歳』ってやったら、曲学阿世(きょくがくあせい)と言われてもしかたない。さすがにそれはできないなあと思いました」  曲学阿世--。学を曲げて世にへつらう、の意。学問の真理に背いて時代の好みにおもねり、世間に気に入られるような説を唱えることを言う。「研究者にとって一番の恥だ」と本郷さんは断言する。

 さて「令和」である。この元号を評価しない理由を改めて聞いた。候補となった6案の中でふさわしくない漢字は「令」の字だけだという。「一度、漢和辞典を引いてごらん」と本郷さん。大修館書店の「大漢語林」を繰った。令の項には(1)命ずる。いいつける。法令などを発布する。「命令」(2)みことのり。君主の命令。「勅令」(3)のり。おきて。法令。布告書。「律令」……と続く。安倍晋三首相は発表当日の自民党役員会で「令はいい意味」と説明したが、「よい」の意味が出てくるのは6番目だ。

 「令和を『order and peace』と訳した海外メディアがありました。それに対して外務省が『Beautiful Harmony』と伝えるよう在外公館に指示したそうですが、漢字の意味からすれば、その解釈には無理がある。安倍首相は、憲法9条を拡大解釈している現状が嫌だから改憲したいと言うならば、元号も拡大解釈はやめるべきです。ダブルスタンダードの極みですよ。安倍さんの周りには誰も『令という字は良くないですよ』という人はいなかったんですかねえ」

 令嬢、令息、令夫人は令を「良い」の意味で使った熟語だが、本郷さんが令を使った熟語でまず思い浮かべたのが「令色」であり「巧言令色鮮矣仁(巧言令色、鮮(すくな)し仁)」だ。「論語」に出てくる孔子の言葉で、巧みな言葉を用い、表情をとりつくろって人に気に入られようとする者には、仁の心が欠けている--という意味だ。「孔子にとって一番大切な概念が仁。今の言葉で言えば愛です。その仁に一番遠いのが巧言令色。言い換えれば、そんたくです」

 本郷さんは「令旨(りょうじ)」という言葉を挙げて、令は皇太子につきものの漢字でもあると解説してくれた。「令旨とは、皇太子の命令を言います。学問的に見れば、令という字のついた天皇なんて、皇太子殿下に失礼ではないですか」。平安時代の高級貴族は政所という私的な役所を持つことを許され、役人に荘園の経営や管理を任せた。そのトップを令という。「家令という言葉がありますが、令は律令に規定のある役人であり、使用人です。それを元号に入れるとは」

 本郷さんは自身を「日本の伝統文化が大好きな愛国者だ」と言う。「元号を国書から選ぶことは構わないし、国民が選んだなら民主主義なので文句を言いません。だけども、候補を公に示さず、『これに決まりました』と。その中に令という字が入っている。これでは、政府は国民に何かを下す存在なんだと思われてもしかたがない。黄櫨染(こうろぜん)のように天皇陛下だけが着られる色があるように、上に立つ人にはそれにふさわしい字がある。安倍首相に皇太子殿下を侮辱しようという意図があったとは思いませんが、周りの学者は何をしているのかと。気がついていないなら学者として失格だし、気がついていて言わないなら、それこそ最大のそんたくですよ」

■歌集は格下、戦争利用の過去も
 万葉集の研究者も喜んでばかりではない。青山学院大の小松靖彦教授は、万葉集を出典としたことは「意外だった」と言う。なぜなら、「万葉集が編まれた7~8世紀には、中国文化圏に由来する厳然とした書物の序列があった」から。一番上は、仏教や儒教、道教の経典、次に律令などの法典、そして時の政権の正統性を説明する日本書紀などの歴史書、その下に政治の担い手である教養人が文章や詩を作る時に手本にする漢詩文集。歌集はそれよりも格下だ。「元号が国書から選ばれるかもしれないと言われても、古事記や日本書紀からと思っていました」

 そして、「万葉集が注目されるのはうれしいですが、戦争で利用されたという歴史もきちんと知っておかなくてはいけない」と言うのだ。まず、万葉集の成り立ちとその魅力を解説してくれた。

 「舒明天皇に始まり、聖武天皇に至るまでの皇統の歴史を描こうとしたものであり、天皇のための古代の理想像の歌集です。けれども一つ一つの歌には歌集の意図を超える力がある。それは古代人が洗練して作り上げた詩であると思っています。言葉を磨きに磨いた末に、文学の持つ力に気がついた、その時代に生きた人々の大事な証言です。人間が生きていく、そのどこか根本的なところに触れるような調べがある。そこが最大の魅力だと思います」

 次に、小松さんは「かつて、万葉集が戦争に利用されたという歴史に、今日、あまり触れられていない」ことを危惧する。

 万葉集の歌風は「勇壮な男子」を意味する「ますらをぶり」が特色とされているが、「当時の貴族か官僚にしか使わない表現です。例えば兵士である防人(さきもり)には、自分のことを『ますらを』などと、恐れ多くて絶対に言えないという意識が当時はありました」。

 ところが、時代が下り、幕末の倒幕派の志士たちがこの言葉を使い始めた。「彼らは身分が低いので、自分たちのことを『侍』や『もののふ(武士)』と名乗るのに抵抗があったようです。彼らは万葉集に古代の天皇中心の理想的国家像を見て、天皇に忠誠心を持つ勇壮な男性は『ますらを』だと。自らそう名乗り、自分たちの行動に意味を与えようとしたのです。以後、この精神は徐々に浸透し、日清、日露戦争を経て、太平洋戦争下で一気に広まりました」  例えば、楽曲「海ゆかば」は万葉集巻十八の大伴家持の長歌から引用されている。

 海行かば 水(み)漬(づ)く屍(かばね)  
 山行かば 草生(む)す屍  
 大君(おおきみ)の 辺(へ)にこそ死なめ  
 かへりみはせじ

 「満州事変(1931年)後に万葉集が小学校の教科書に載るようになりました。『海ゆかば』の曲は楽曲としては優れたものですが、これを胸に死んでいった人たちがたくさんいたことを忘れてはならない」と小松さん。戦中、「万葉の精神で」や「醜(しこ)の御盾(みたて)となって」という言葉も飛び交った。「万葉集をどう享受し継承していくか、それは今を生きる私たちにかかっています」

 おめでたいムードにけちをつける気は毛頭ない。だが、こうした「負」の部分もしっかり見つめて、新しい時代に踏み出したい。  ≫(毎日新聞)


≪新元号発表、どうして支持率が上がるの?
 この国は、新しい元号「令和」が発表されて、政権の支持率が上がるという不思議の国だ。こんなものが手柄になるなら毎年元号を変えればいい。一体、その人たちは何を評価したというのだろうか。ある調査では、10ポイント近くも跳ね上がっている。第一、政権が元号の選考に口出しするという、越権というかやぼというか、その差し出がましさのどこに支持率を上げる要素があるのかまったく理解不能だが、こんなことを言い出せばきりのないこの数年間ではある。

 元号は伝統文化の一つであるとは思う。文化、伝統として尊ぶのであれば、古式ゆかしく命名すればいいと思うのだが、歴史に名を刻みたいのだろうか、とにかく自身の影響で何かを変えたかったのだろう。

 出典が中国由来ではなく、初めて和書からの抽出でつけられたふうなことに胸を張る人々がいるが、それとて中国の書物からの孫引きになっているということには不思議と頓着しない。なぜここで伝統の形をゆがめてまで日本の書物から取った元号にこだわったのか、これまた不可解だ。

 「レイワ」と音読みになっている時点で中国由来の印象は残るから、それほどこだわりたいのならば訓読みにしても良かったのではないか。そして、中国で作られた漢字ではなく、いっそのこと、日本で生まれた平仮名にすればいい。いや、平仮名とて漢字を崩してできたものだから中国由来だが、そこまで言えばきりがない。だが、「万葉集」から取ろうが「古事記」や「日本書紀」や「古今和歌集」から取ったとしても、そもそも元号の制度自体が中国に倣ったものではないか。

 私たちの生活で、ちょっとした煩わしさをもたらすこの西暦と和暦の併用は、これから先も続いていくのだろうか。最近運転免許を更新した人によると、今までは「平成34年○月○日まで有効」などと表記されていたのが、西暦が加えられるようになったらしい。国際化する中で、旅行でやって来たり日本で暮らしたりしている外国人に、このドメスティックな文化を強要する必然は感じられない。さらなる外国人の労働力に頼らねばさまざまな産業の維持ができないといわれる状況の中で、これからもこの「和暦」なるものを公文書などでは使い続けるのだろうか。

 よく話題に上るのが、この「令和」の発音アクセントだ。「こんぶ」「つばき」「たぬき」のように最初の文字にアクセントを置いて発音するのか、「かつお」「さくら」「きつね」などと同じように平板で発音するのか。これはもちろん、前者なのだが、なんでも平板化する昨今では、後者の発音で話す人も多い。  4音の元号は、「安政」「大正」「平成」など、アクセント核の無い平板で発音する(平板型)が、3音で読む元号は、「元和」「元治」「明治」など、最初の音にアクセントを置く(頭高型)。しかし、「昭和」だけは使われた期間が過去247の元号で一番長く、長くなじんだものは平板化する傾向があるので、結構な年配の人でも平たく発音する人が多い。

 在りし日の立川談志師匠と「昭和」のアクセントについて、小論争になったことがあったが、師匠は平板説を唱えておられた。しかし、話の中で何度も無意識に頭高型で発音しておられたのがおかしかった。

 蛇足ながら、どこかのアナウンサー氏、元号を「248個目」と。「個」で数えることには違和感があるなあ。(放送タレント、イラストも)
 ≫(毎日新聞)

 

団地と移民 課題最先端「空間」の闘い (角川書店単行本)
安田 浩一
KADOKAWA / 角川書店

 

東大教授がおしえる やばい日本史
本郷 和人,和田 ラヂヲ,横山 了一,滝乃 みわこ
ダイヤモンド社

 

橋の下のゴールド
泉 康夫
高文研

 

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●晋三は改憲をあきらめたのか? いや違うだろう!

2019年04月16日 | 報道

 

お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか? (光文社新書)
エノ・シュミット,山森 亮,堅田 香緒里,山口純
光文社

 

拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々
蓮池 透
講談社

 

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働
野中 香方子
文藝春秋


●晋三は改憲をあきらめたのか? いや違うだろう!


ここしばらく、マスメディアが、“改憲”に類した話題に触れることがなくなった。


筆者も、今夏の参議院選で、憲法改正派が2/3議席獲得することは不可能に近いと考えていた。

この主流の観測を覆すような政治的シーンは現時点はないので、流石の安倍晋三も改憲をなかば諦めたのだろう、と考えていた。

そうなると、汚い手を使い、3期も政権与党の総裁の地位にいながら、結果的にレガシーらしいレガシーのない凡庸な首相の一人に過ぎなかったことになる。

アベノミクスと云う経済政策は、副作用や後遺症だけは確実に実現させたが、多くの経済的効用の殆どが実現できず、一敗地に塗れた重大な愚策であった負のレガシーを残すことになる。

外交の安倍だと、日本中のマスメディアを抱き込み、電通仕込みの広報活動を通じて、愚民に“外交の安倍”を刷り込んだが、愚民の多くは、外交に興味がなく、無駄な鉄砲を限りなく撃っただけで、無意味だった。

対ロ北方領土交渉は、プーチンに手玉に取られ、赤っ恥の連続は、見るに堪えないものだったが、愚民は見ていなかったのが、安倍にとって救いだろう。

北朝鮮問題は最悪だった。Jアラートのバカ騒ぎで、東北の住民を慌てさせたのだから、罪である。縄文人を馬鹿にすると、祟りがあるぞ、シンゾウ!

「拉致問題を解決できるのは私だけ」と拉致被害者家族連中を政争の具にした罪は深い。蜘蛛の糸を晋三が切ったと言っても過言ではない。

トランプ大統領率いるアメリカとの外交は、一見上手くいっているように見えるが、簡単に言えば、日本側が全敗の外交交渉なのだから、せめてシンゾウは友達だくらいの、リップサービスを得ているに過ぎない。

イスラエル外交も、禍根を残す外交姿勢を徹底した。この咎めは、後々の日本外交で表れるものと推量する。

イラン外交も、折角、中東外交の足掛かりになるはずの同国を、トランプのひと言で、即座に「はい!」外交姿勢で、アメリカ穴舐め外交を世界に示した。

そのほか、ありとあらゆる国を巡った安倍晋三だが、我々の金を配りまくっただけで、何の効果も聞かされていない。

外交と言えば、お隣韓国との外交は、いまや“国交断絶”一歩手前の状況になっている。特に仲良しな隣国である必要もないが、いがみ合う状況を和らげる外交姿勢も一切なく、火に油外交を継続中だ。

たしかに、隣国韓国問題は、感情論的であり、一概に安倍政権が悪いとは言えないだろうが、文政権が終わるまで、大人の対応に徹する手もあるのではとも考える。

対中外交は、トランプ外交の被害者同士という共通認識の下、関係は改善されつつあるように見える。

まぁ、あくまで親善外交の範囲にとどまるが、覇権争いが本格化するまでのポジションとしては好い位置なので、後方待機状態は悪くはない。

それにしても、山本太郎(れいわ新選組)が主張するように、「トンデモ法」を法案成立させた罪は重大だ。

逆に言えば、そこまで悪に手を染めて「憲法改正」は」あきらめると云う方が不自然なのはたしかだ。

その意味で、永田町雀が囁く、6月末W選や7月W選の噂には信憑性が加わる。

やはり、シンゾウにしてみれば、捏造や自画自賛ではなく、本物のレガシーが欲しいに違いない。

それは、憲法改正だ。せめて、発議まで持ち込みたいだろう。

このまま、何らかの仕掛けをしないことには、参議院選単独では、参議院で2/3議席は確保できない。つまり、改憲発議も出来ずに終わる。

ただ、ここまで強権や不法な行為で政権の勢力維持に奔走している安倍政権なのだから、憲法審査会を強引の多数決で通過させて、発議出来ないこともなさそうだが、いまのところ、自民党内でも纏められずにいるので、現実的ではないようだ。

となれば、やはり“目玉政策”を打ち出して、衆参W選挙と云うシナリオは魅力的だ。

では、その“目玉政策”とは何ぞやとなると、内政的なものに限られる。有権者全体に行き渡り、好ましく思われるものとなると限定される。

これが巷で言われる“消費増税の再々延期”を宣言して、衆参W選挙に突入する方向が考えられる。

もしかすると、これではインパクトに欠けると考える場合、麻生財務大臣の勢いに陰りが出てきた間隙をついて、「消費税5%減税」、つまり、延期ではなく、減税に舵を切る可能性も残されている。

 どちらにしても、消費税で、これからの社会保障費を捻出するには、30%の消費税になるわけで、日本では現実的ではない。

ということは、いずれなし崩しにベーシックインカム方式の話が出るに違いないのだから、消費税を減税しても問題ないと説明はつくだろう。

 

持続可能な発展の経済学
Herman E. Daly,新田 功,大森 正之,藏本 忍
みすず書房

 

定常型社会―新しい「豊かさ」の構想 (岩波新書)
広井 良典
岩波書店

 

「憲法改正」の真実 (集英社新書)
樋口 陽一,小林 節
集英社
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●日米FTA 造語TAGで逃げ切れない日米貿易協定

2019年04月15日 | 報道

●日米FTA 造語TAGで逃げ切れない日米貿易協定 

先ずは以下の日経の記事を読んで貰おう。

≪日本に為替条項要求へ 米財務長官、貿易交渉で明言

【ワシントン=河浪武史】ムニューシン米財務長官は13日、日米が15日から始める貿易協定交渉で「為替も議題となり、協定には通貨切り下げを自制する為替条項を含めることになる」と述べた。法的拘束力のある通商協定に為替条項が盛り込まれれば、日本側の円売り介入などが制限される可能性がある。日本は為替条項の導入に反対しており、日米協議の大きな争点となる。



ムニューシン長官は国際通貨基金(IMF)の関連会合後に一部記者団の質疑応答に臨み、対日貿易交渉で為替問題を議論すると明言した。モデルケースとして、新しい北米自由貿易協定(NAFTA)である「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」を挙げ、対日交渉でもUSMCAと同じく協定本文に為替条項を入れる考えを強調した。

法的拘束力の強い通商協定の本文に為替問題を巡る条項を入れこむのは極めて異例だ。ムニューシン氏は条項の内容として「為替政策の透明化と、競争的な通貨切り下げの自制」を挙げた。日米は円ドル相場を巡ってさや当てを繰り返してきたが、貿易協定に為替条項を盛り込めば、市場は米国がドル高是正で貿易赤字の解消を目指すと解釈する可能性もある。

日米は15日から貿易協定交渉を開始する。茂木敏充経済財政・再生相が訪米し、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と2日間の日程で協議する。ムニューシン氏は「日米は貿易問題や2国間の経済関係など幅広い案件を議論する」との見通しを述べた。

日本は自動車や農産品などモノに限った物品貿易協定(TAG)を求めているが、米国はサービスも含めた包括的な自由貿易協定(FTA)を想定しており、まず交渉範囲を取り決める必要がある。ムニューシン氏は締結期限など交渉の先行きについて「現時点で固まっているわけではない」と述べるにとどめた。
 ≫(日本経済新聞)

「アメリカ・ファースト」を連呼する米国大統領にフェアプレーを求めるのは無駄である。

ムニューシン米財務長官は13日に、日米が4月15日から始める貿易協定交渉で「為替も議題となり、協定には通貨切り下げを自制する為替条項を含めることになる」と安倍政権にとって厄介なカードが切るそぶりを見せている。

思えば、安倍首相が国会で「日米FTA交渉はしません」といった都合上で、“TAG”等と云う子供染みた造語で、民度の低い有権者層を騙し続けていたようだが、バレる日が今週やってくる。

あの嘘をついた日が、どれほど子供染みたものだったか、懐かしくさえある状況だ。

本来は、安倍外交の危機なのだ。いや、日本にとって重大な危機なのだ。

しかし、最近の有権者の5割は、まったくと言っても過言ではなく“政治離れ”している。

この大半の国民にとっては、景気や社会保障には興味があるが、外交などは殆ど興味がない。

農畜産物の関税の逐次撤廃で、国内の農畜産業の人々が、どれほど痛めつけられるか、生活の埒外にあるのは確実だ。肉が安くなったね、ラッキーで終わりだ。

日本の円安誘導政策が議題に上ることで、株価に大きな影響が生まれた時、ニュースが大きく報じるかもしれないが、大半の国民は“株長者が泣きをみてる、ざまぁみろ”なだけだろう。

まぁ、現実には、噛みつき犬として“為替操作疑惑”を持ち出しておいて、実際には、他のものを差し出させる腹と、筆者は観察しているが、現実がどうなるか注目に値する。

日銀の異次元緩和の継続、円安誘導は、当面の間はFRBも望むところなので、当面は、議題に乗せる程度の話なのだと思う。

本気かどうかは、15日の東証株価を睨んでおけば判るだろう。

ただ、北米自由貿易協定(NAFTA)では、メキシコやカナダと交渉して、アメリカに有利になる協定(USMCA)結んだだけに、日本だけ見逃すと云うのも現実的ではない。

しかし、トランプの横暴を認めてしまうと云うことは、自由貿易論者の安倍晋三が認めたら、自己矛盾
の典型になるのだが、“仕方なかった”と云うロジックを振りまいて仕舞にするのだろう。

そして、国民の殆どが、安倍官邸がNHKニュースを通じて垂れ流すフェーク・ニュースにまんまと騙されるに違いない。

いや、或る意味では、面倒だから、騙されておこう、なのかもしれない。

結局、最近の地方選をみながら思うことだが、国際政治など、頭の片隅にすらある人がほとんどいないような国には、民主主義は育たない。

やはり、民主主義や正義を実現するためには、一定の土壌の法則があると云う説は正しいのだ。

そして、日本においては、その欠片すらない国になってきていると云うことなのだ。

30代以下で、能力のある人々は、他国をめざすべき、と云う言説は正しいと思う今日この頃だ。

それにしても、共産党が主張する“日本の経済・食料主権を尊重する、公平・公正な貿易ルールを確立することがますます重要”だとすれば、その行きつく先は「半鎖国」な国になる。

まぁ、個人的には、そのような生き方の方が、現在の日本人には合っているように思える。


≪主張 日米のFTA 「米国第一」危険な交渉やめよ
 安倍晋三首相とアメリカのトランプ大統領が昨年9月の首脳会談で開始を合意した、日米貿易協議の初会合が15~16日、ワシントンで開かれる予定です。

 安倍政権は「日米物品貿易協定(TAG)」交渉と呼んでごまかしますが、交渉対象は物品だけでなく、サービスや金融なども含んでおり、まぎれもない「自由貿易協定(FTA)」交渉そのものです。トランプ政権は、環太平洋連携協定(TPP)や日本と欧州の経済連携協定(EPA)以上の成果を目指すと公言し、農産物や自動車に照準を当てて、日本に譲歩を迫ろうとしています。 経済外交破綻の象徴  交渉開始を前にした3月、アメリカ通商代表部(USTR)は、今年の年次報告書と、「外国貿易障壁報告書」を発表しました。

 トランプ政権で3回目になる年次報告書は、「主要な競争相手国は日本との自由貿易協定(FTA)を結び、米国の輸出産業に対する価格競争力を強めている」と指摘しました。農畜産物に対し、「関税削減・撤廃で米国産農産物の包括的な市場アクセス(参入)を確保する」と明記しています。

 貿易障壁報告書は日本の項で、日米交渉に言及するとともに、前年とは記述の順序を変えて、かんきつ類・乳製品・加工食品・他の農産物の“高関税”を各論の冒頭に置きました。

 3月の米大統領経済報告でも、「日本とは自由貿易協定(FTA)交渉に入る」と明言しました。

 安倍政権は、2017年に大統領に就任したトランプ氏が一方的にTPP離脱を表明した後も、復帰させるとしてきました。しかし、実現できず、アメリカを除く11カ国によるTPP11の発足や日欧EPAの発効とともに、日米2国間での交渉を受け入れたのです。日米交渉は文字通り、安倍経済外交破綻の象徴です。

 トランプ政権は昨年末公表した「対日貿易交渉目的」という文書で、農産物や自動車、金融、通貨など22項目の交渉事項を列記し、「TPPを下回らない水準」での成果をあげると主張しました。

 もともとTPPは、国際競争力の強い国や多国籍企業に利益をもたらす、貿易や投資のルールづくりです。トランプ政権がTPPを離脱したのは、「アメリカ第一」の立場から、多国間ではなく2国間交渉で、いっそう自国に都合の良い内容を相手にのませるためです。TPPと同時に離脱した北米自由貿易協定(NAFTA)では、メキシコやカナダと交渉して、アメリカに有利になる新しい協定(USMCA)を結びました。

 TPPを離脱したアメリカは、農畜産物などでカナダやオ―ストラリアに日本の市場を奪われることを恐れています。そのため日本に、「TPPを下回らない水準」の合意を押し付け、市場を確保する魂胆です。

“亡国”の道は許さない
 TPP11や日欧EPAに加えて、日米交渉でアメリカ言いなりになれば、日本の農業や国内産業はいよいよ立ち行きません。すでにTPP11によって、牛肉などの輸入急増が問題になっています。  “亡国”の日米FTA交渉は、直ちに中止すべきです。
 日本の経済・食料主権を尊重する、公平・公正な貿易ルールを確立することがますます重要です。
 ≫(しんぶん赤旗)

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●ポンコツ!!F35残骸探し 中露も機体に興味津々

2019年04月14日 | 報道

 

「日米合同委員会」の研究:謎の権力構造の正体に迫る (「戦後再発見」双書5)
吉田 敏浩
創元社

 

本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 (戦後再発見」双書2)
前泊 博盛
創元社

 

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか (講談社+α文庫)
矢部 宏治
講談社


ポンコツ!!F35残骸探し 中露も機体に興味津々

なにかと評判の好くない就役したての戦闘機(F35A)が、青森の沖合約150キロ内の排他的経済水域(EEZ)の内部に墜落した。

一応、排他的経済水域内に墜落しているようなので、ロシアのサルベージ船が引き揚げにくる心配はないようだが、米軍は、初動において、かなり緊迫した予備的緊急発進で威嚇行動を示したようだ。

初期ロットの戦闘機なので、欠陥だらけなのは承知の上で、購入者の要望を聞きながら、少しずつ、まともな戦闘機にしていくと云うのは、米国内では常識なのだ。

大金を払う他国にも、同様の協力を要求して憚らないのが、米国の戦闘機や戦艦を導入する他国に要求する。

つまり、悪辣大魔王国が、戦闘機やイージス艦を売ってやるから有難く思え。故障があるとか、欠陥品だとか、つべこべ言うなら、叩き潰すぞと言った、強迫時におけるリボ払い契約のような状況下で結ばれる売買契約である。

日米同盟下においては、これまでも、これからも、同盟関係にある限り、この異様な武器装備品等々の売買契約は、米国の思いつくままに実行される。

日本国憲法にあきらかに反する自衛隊の軍備の増強なのだが、このF35Aと同様に、米国から詐欺契約のようにして売りつけられる軍備武器装備品は、際限がない。

安倍政権のように、米国大統領の尻を舐めに行くような外交姿勢である限り、まったく理屈に合わない軍備をしてしまうのは当然で、海のない国が、空母を買うようなものである。

それにしても、専守防衛であるはずの日本国憲法を守る意味では、完全に憲法違反と断じても良いレベルの軍事力なのは歴然だ。一応、判る範囲の日本の軍事費が比較できるグラフを以下に載せておく。


■日本の軍事費

 



■世界の軍事費


 



筆者がグタグタと、このF35Aの購入問題を論じようと苦戦していた処、しんぶん赤旗さんが、タイムリーに以下のような社説(主張)を掲載してくれたので、赤旗さんの方が正確なので、以下に参考引用しておく。筆者の言いたいことが、明確に語られているので拝借(笑)。


≪しんぶん赤旗 
・主張 F35戦闘機の墜落 「欠陥機」の大量導入をやめよ
 航空自衛隊の次期主力戦闘機F35Aが9日、青森県沖に墜落しました。F35Aは2018年1月に空自三沢基地(同県三沢市)に国内で初配備され、墜落のわずか2週間前(3月26日)に正規の飛行隊(第302飛行隊)として新編されたばかりでした。F35はこれまでも欠陥が指摘されてきたにもかかわらず、安倍晋三政権が「飛行の安全性に影響を及ぼすような課題はない」(岩屋毅防衛相)として配備を進めてきたことは重大です。事故原因の究明・公表はもちろんですが、F35の導入・配備計画は白紙に戻すべきです。

未解決の欠陥が966件
 F35は、米国の巨大軍事企業ロッキード・マーチン社を中心に開発した最新鋭ステルス戦闘機です。米空軍の実戦配備も16年と最近です。F35の欠陥については、今年2月15日の衆院予算委員会で日本共産党の宮本徹衆院議員が、米政府監査院(GAO)の報告書などを示して追及していました。

 F35の開発計画に関するGAO報告書(18年6月)によると、同機には966件(同年1月現在)の未解決な欠陥があり、このうち111件が「安全性や他の重要な性能を危険にさらし得る欠陥」であり、855件が「任務の遂行を妨げたり、制約したりし得る欠陥」だとしています。

 報告書はこれらの欠陥の中で「主要な技術的なリスク(危険)」の一つとして、F35のパイロットが酸欠症状を訴えた事例が17年5月~8月までに6件発生したと指摘しています。こうした事例に関わる問題として、パイロットの座席にある呼吸調節装置が頻繁に故障していることや、コックピット内の気圧変化による耳の痛みや副鼻腔(ふくびくう)の損傷がパイロットを消耗させ、複雑な作戦行動で状況認識能力が失われれば、墜落の危険があることなどを警告しています。

 GAO報告書が指摘するF35の966件の欠陥について、岩屋防衛相は宮本議員の質問に対し、「防衛省としては、そのリストは保有していない」と述べ、把握していないことを明らかにしました。パイロットの酸欠の問題でも、「(米国防総省が)原因の調査を行っている」とし、改善されていないことを認めています。

 一方で、具体的な根拠も示さず、「これらの課題について(米側に)確認したところ、わが国が導入するF35Aの機体については、運用能力や飛行の安全性等に影響を及ぼすような課題はないことが判明している」と強弁していました。

 F35は「車に例えて言えば、新車をつくったけれども毎年、毎年、リコールをし続けるようなもの」(宮本議員)です。しかも、F35は機密の塊で詳細な情報は日本側に開示されません。

1機の価格が116億円  安倍政権は、トランプ米大統領の「バイ・アメリカン(米国製品を買え)」の要求に応え、F35の大量購入を決めています。今回墜落した空軍仕様のF35Aと、海兵隊仕様のF35Bを合わせて147機を導入する計画です。F35Aの1機当たりの価格は約116億円に上ります。

 今たたかわれている衆院大阪12区、沖縄3区の両補選、統一地方選、7月の参院選では、国民の安全を脅かし、膨大な税金を浪費するF35の“爆買い”計画にもノーの審判を下す必要があります。
 ≫(しんぶん赤旗:4月12日付主張)



逆に以下の日経の記事のように、F35の素晴らしさを賛美する記事も多数ある。個人的には、あらゆる実験飛行や訓練を重ねて戦闘機なのは収斂していくものだろうが、パイロットの脱出方法は、優先的に確保されるべきものと考える。



≪F35墜落で始まった日米vs中ロ「海中の攻防」  編集委員 高坂哲郎




航空自衛隊が導入した初のステルス戦闘機F35Aが4月9日、青森県沖の太平洋上で訓練中に墜落した。自衛隊と米軍による捜索活動が続いているが、墜落機と搭乗員の発見には至っていない。次世代の航空戦を左右する先進技術の固まりでもある機体には、中国やロシアが触手を伸ばしてくるおそれがあり、過去の戦闘機の墜落事故とは大きく異なる緊張感が漂う事態になりつつある。

■即座に捜索に動いた米軍の危機感
三菱重工業の小牧南工場で完成した「国内組み立て」初号機だったF35Aの機影が空自レーダーから消えて間もない9日夜、在日米軍はただちに自衛隊による捜索活動に協力すべく動き出した。日米が共同使用する三沢基地からは、P8A哨戒機を発進させたほか、横須賀基地を拠点とするイージス駆逐艦ステザムを現場海域に派遣した。グアム島アンダーセン基地からB52戦略爆撃機を現場海域まで飛ばしたとの情報もある。

米軍は、自衛隊と協力するとはいえ、今回のF35の事故ではなぜ、そこまで踏み込んだのか。米軍も航空機の事故を起こしてきた。18年12月には岩国基地配備のFA18戦闘攻撃機とKC130空中給油機が夜間訓練中に接触して墜落し、計6人の搭乗員を失った。その際にも、今回のような大規模な捜索は実行しなかった。自衛隊のF35Aの事故は、過去の事案とは大きく意味合いが異なるのだ。

F35は、米空軍や日英豪など米国の同盟国の軍において、防空や攻撃などさまざまな任務を今後数十年にわたって担う主力戦闘機となるが、実は同機の任務はそれだけにとどまらない。

あまり知られていないが、F35は敵の弾道ミサイルを迎撃するミサイル防衛(MD)任務にも使える「空飛ぶ超高性能レーダー」であることが、完成した後の搭載センサー類の性能確認作業でわかってきたのだ。

先々、弾道ミサイルを撃ち落とす新型空対空ミサイルが完成し、それを搭載したF35部隊を米軍や航空自衛隊が保有するようになったと仮定する。その際、周辺の中国や北朝鮮などが日米を標的にした弾道ミサイルを発射しても、兆候を探知してあらかじめ上空でF35を待機させておくことによって、弾道ミサイルの速度の比較的遅い上昇(ブースト)段階で破壊できるようになるわけだ。

つまりF35は、有事の際に小型核兵器の使用のハードルが低いロシアなどが真っ先に標的にする恐れがある陸上配備型イージス・システムよりも効果が確実で、副次的な被害も非常に少なくて済む、頼れる防衛システムになる可能性がみえてきたのである。

米国が最近、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国でありながらロシアにすり寄ろうとするトルコに対し、F35の供与を渋り始めたのもうなずける。

中国は既にサイバー攻撃を通じて米軍からF35の設計情報などを窃取したと報じられている。また、J20など類似するステルス機を着々と開発・配備もしている。ただ、いかにサイバー攻撃で情報を得たところで、使う素材やステルス用の特殊な塗装の内容などつかめない情報も多い。米軍がわざと、入手しやすいサイバー空間に偽の技術情報をおいておき、中国に欠陥付きの戦闘機を開発させようとしている可能性もある。

中国やロシアにとって最も望ましいのは、米軍が開発した実物を入手することであり、中ロの軍や情報当局が空自F35Aの墜落海域を注視していることは想像に難くない。

米軍が今回、墜落海域に戦略爆撃機B52を派遣するという異例の反応を示したのは、「墜落機体を中ロが奪うことは絶対に許さない」との強い決意を示すためだったようだ。

■過去に実際にあった「深海の回収攻防戦」
米軍がそう考えると推察される根拠がある。実は、ほかならぬ米軍が、敵対相手の虎の子の兵器を海中からそっくり手に入れた史実があるのだ。


 


冷戦時代の1968年、核ミサイルを搭載した当時のソ連軍の潜水艦K129が米ハワイ近海の海中で爆発・沈没した。米軍は、世界各地の海底に張り巡らせた潜水艦探知システムで爆発音を探知し、その後、米海軍の潜水艦が沈没したK129を発見。当時のソ連の軍事機密の固まりであった同潜水艦を引き揚げるため、米中央情報局(CIA)はわざわざ専用の大型サルベージ船を新造し、沈没から6年後の74年、表向きは海底のマンガンを採掘するという口実のもと、K129を引き揚げることに成功した。この作戦の正式名称は「アゾリアン計画」だが、「ジェニファー計画」という俗称で呼ばれることも多い。

 ソ連軍も独自に回収を目指したものの、探知能力や捜索海域の場所(ハワイ沖)などの点で米側が優位だったため、目的を達成できなかった。
今回墜落した空自のF35Aは墜落海域の深度約1500メートルの海底のどこかにあると推測されている。容易ではないだろうが、引き揚げが不可能な深さでもない。K129を引き揚げた45年前よりも探査やサルベージの技術などは進歩しているし、墜落機体はK129よりもはるかに小さい。

墜落海域は青森の沖合約150キロメートルと、日本の排他的経済水域(EEZ)の内部で、中国やロシアがCIAがしたように資源探査などを名目に墜落機体の捜索や引き揚げ作業を日本に無断ですることはできない。ただ、中国軍やロシア軍が潜水艦や無人潜航艇などを繰り出して、機体の入手を試みる可能性が皆無とはいえない。

墜落機の回収は、搭乗員の収容や墜落事故の原因究明のため不可欠なことはいうまでもない。同時に、日米対中ロの航空戦力バランスを将来、中ロ優位に傾かせかねない事態を回避するうえでも回収は果たさなければならない。英国や豪州、イスラエルなどほかのF35導入国が今後の推移を注視している。

*高坂哲郎(こうさか・てつろう)
 国際部、政治部、証券部、ウィーン支局を経て2011年編集委員。05年、防衛省防衛研究所特別課程修了。12年より東北大学大学院非常勤講師を兼務。専門分野は安全保障、危機管理など。著書に「世界の軍事情勢と日本の危機」(日本経済新聞出版社)。
≫(日本経済新聞)


PS:
買ったようで所有権がない戦闘機や艦船は、レンタルとかリース契約の方が、商取引上マッチングはいいように思える。返すことも可能な契約は出来ないものか?半分無理を承知で考えた。今後の墜落原因追及は米国の手で行われ、パイロットの操縦ミスなどいう、いい加減な答えが導かれるかと思うと、自国で作れる範囲で国防を考えるのが、本来の国防なのかもと、ふと、思う。


≪最先端機とベテラン操縦士がなぜ=米で「欠陥」指摘、軍事機密壁も-F35墜落事故

 航空自衛隊三沢基地(青森県)の最新鋭ステルス戦闘機F35Aが墜落した事故。原因究明に結び付く手掛かりはなく、最先端の機能を備えた機体とベテランパイロットに何が起きたのか謎は深まるばかりだ。防衛省は行方不明になっている隊員の発見と機体の回収に全力を挙げているが、機体は軍事機密の塊で、回収できたとしても、どこまで日本が原因究明の主導権を握れるか不透明な面もある。
 空自によると、事故機は9日午後6時59分ごろに三沢基地を離陸し、4機編隊で太平洋上で2機に分かれ訓練を実施。事故機には総飛行時間約3200時間(うちF35約60時間)の経験を持つ編隊長の細見彰里3等空佐(41)が搭乗していた。
 レーダーから消失する約1分前の同7時26分ごろ、「ノック・イット・オフ(訓練を中止する)」と通信し、途絶した。一緒に飛行していた3機のパイロットたちも音声を聞いたが、事故機は肉眼では見えない有視界外だったとみられる。
 通常、緊急時にはパイロットは戦闘機から座席ごと機外に脱出し、自動的に救難信号が発信されるが、信号は確認されていない。「中止」の送信後、機体の不具合や意識喪失などで突発的な異常事態に陥り、対処できなかった可能性がある。
 細見3佐はF4戦闘機パイロット出身で、2018年4月から三沢基地のF35飛行部隊で勤務。防衛省高官は「経験豊富で編隊長の資格もあり、技量不足だとは思っていない」と話す。
 米議会付属の政府監査院(GAO)は昨年、F35について966件の未解決の欠陥があることや、パイロットの酸素欠乏の症状などを指摘したが、防衛省は「現時点で、米国政府が公表している課題はない」としている。
 防衛省によると、F35に関しては、「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」に基づき、その性能などの情報をより厳格に保全するため「SSA」と呼ばれる実施細目が日米防衛当局間で取り決められている。
 政府関係者は「F35は秘匿性が一段と高い。回収された機体の検証は、米の協力がなければできない」と話している。機体を回収できたとしても、性能に関わる機体制御ソフトなどの解析は、日本側は触れられない可能性もある。
 ≫(時事通信)

 

新・日米安保論 (集英社新書)
柳澤 協二,伊勢崎 賢治,加藤 朗
集英社

 

世界から核兵器がなくならない本当の理由 (SB新書)
池上彰+「池上彰緊急スペシャル! 」制作チーム
SBクリエイティブ

 

基地と財政 沖縄に基地を押しつける「醜い」財政政策
川瀬 光義
自治体研究社
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●普天間、辺野古両基地並存? 米国の枷から抜ける方法

2019年04月13日 | 報道

 

辺野古に基地はつくれない (岩波ブックレット)
山城 博治,北上田 毅
岩波書店

 

普天間移設 日米の深層
琉球新報「日米廻り舞台」取材班
青灯社

 

普天間・辺野古 歪められた二〇年 (集英社新書)
宮城 大蔵,渡辺 豪
集英社


●普天間、辺野古両基地並存? 米国の枷から抜ける方法


辺野古新基地工事は、大浦湾の軟弱地盤を前に、実はすでに暗礁に乗り上げている。

日本の官僚は、辺野古新基地は、途中で工事不能となり、その理由をもって米国に報告し、あらためて普天間基地をどうするのか、そういう流れをつくろうと企んでいるようにも思える。

まぁ、利権に群がるだけで、後のことは後輩らが、善きに計らうだろう、と無責任に開き直っているのかもしれないが、まぁ、善意に解釈しておく。 

おそらく、日米合同委員会では、幾つかの仮説をもとに、議論されていると考えるのが妥当だ。

そこまで、日米同盟上注目されている、沖縄普天間基地移設問題なのだから、その移転先である辺野古基地建設が埋立不可能と云う事態が想定されるわけだから、議論していないわけがない。

無論、日本外交の恥部情報が、記者クラブ温室育ちのマスメディアに漏れてくることはない。

結局のところ、米軍海兵隊が沖縄にいようとする限り、普天間基地が返還される可能性は相当程度ゼロに近いと云うことだ。

辺野古に代わる基地提供が、現実的にあるのなら別だが、現時点、その他の候補を探している気配はない。

しかし、日米同盟が大切だからと言って、そこに住んでいる住民の7割近くが、嫌だと言っているのに、ここまで強行する日本政府の態度は、或る意味で不自然でもある。

沖縄県民と敢えて対峙することを選択することが目的化しているようにさえ見えるのだ。

現に、計画は暗礁に乗り上げていると言っていいのだから奇妙だ。それでも、工事を無手勝流で強引に進める安倍政権は、利権目的だとしても異様だ。

7割の県民の反対の意志を受けて、立ちどまるチャンスはあった筈なのに、県民投票の絶対反対を想定した上で、土砂投入工事をしたのだから、確信犯なのだ。

軟弱地盤への技術的エビデンスは不明で。やるだけやってみようと云う、精神論に頼る関東軍のような無謀さにも似ている。

単に、日本独特の“ヤメラレナイとまらない”と云う勢いだけで、このような不条理がまかり通るのは、少し不自然だ。

現在の政府の甘い試算でも、大浦湾の軟弱地盤工事に7万6千本以上の杭を打ち込み、工事を進めるようだが、実現可能かどうかも不明な工事に2~3兆円の税金を投じ、工期も10年だか15年だか、そもそも出来ないこともあり得るのか、明確に答える部署さえない。

このような問答が聞けるのは、菅官房長官vs望月記者なのだが、官房長官の「問題ない」のひと言が返ってくるだけだ。

以下、小沢氏がインタビューで答えるすべてが、確実な情報かどうか、定かではないが、ここに一縷の望みがると云うのでは、かなり心許ない。

ただ、米軍にしてみれば、普天間基地に追加で、辺野古基地も使えるようになるのは好都合なわけで、特別反対する合理的意味はない。

特別、辺野古基地と普天間基地のバーター取引の約束はしていないので、その時の情勢で判断するに過ぎないのだ。

つまり、沖縄の普天間基地と辺野古基地に海兵隊の飛行場が出来ると云うことも、この流れだとあり得ることだ。

政府は、世界で最も危険な米海兵隊基地、普天間返還には、代替基地は不可欠と云うロジックを公式見解にしているが、米海兵隊はふたつとも使いたいと言い出すかもしれない。

現状の、日米の力関係では、二つは無理よと米国に言える力は日本にはない。

つまり、どこかで、日米同盟関係に楔を打たない限り、日本の隷属国家概念は定着化し、独立を自ら放棄する国家になってしまうだろう。

鳩山由紀夫が楔を打とうとしたが、あっけなく潰された。次の日本の首相は現れるのか、現れないのか。

少なくとも、枝野レベルだと、楔を打つ可能性はない。結局は、山本太郎的な政治家が政権を握らない限り、日本の独立はないのだろう。

いや、個人的には、もう一つのチャンスはあると考えている。それは、日本が破産した時だ。

もう、米軍に対して、思いやり予算など出すことが出来ず、駐留経費の負担は不可能になったので、駐留の解消を申し出ることが可能だ。

金の切れ目が縁の切れ目、国内の安保業者らも蜘蛛の子散らすようにいなくなるわけで、利権も同時に消えていく可能性だ。

案外、腰の抜けた日本の政治家連中は、自国が破産することで、正常化の道を選ぶチャンスが生まれるくらいに考えているかもしれない。

 
≪「本音は辺野古不要」小沢一郎氏が語る、米軍の意外な真意とは?

 県民投票で示された「辺野古反対」の民意実現を目指す玉城デニー知事。カギを握るのが、「政治の師」であり、現在は野党共闘を主導する小沢一郎氏だ。

*  *  *
 故翁長知事の「遺言」で、後継者として玉城デニー氏に白羽の矢が立ったのは昨年8月。当時、沖縄3区選出の自由党衆院議員だった玉城知事が、知事選立候補を表明する直前に相談したのは、「政治の師」と仰ぐ党の小沢一郎代表だった。

「翁長さんの遺志を継いで出馬する以上は勝たなければならない」。小沢代表はそう助言。「オール沖縄」を構成する各党の支持を取り付けた時点で、あとは知名度とキャラクターの魅力で「勝てる」との手応えはあったという。小沢代表は当時の思いをこう振り返る。

「沖縄の革新政党は強いが、保守の浮動票を取りこまないと知事選には勝てない。それができる立場の人物はデニー君しかいない。翁長さんが後継指名したのも無理はない」

 就任から半年を迎えた玉城知事を「誠心誠意、全力でやっている」と評価する。しかし、現政権が交渉相手では「辺野古」に対する「ゼロ回答」は続くと見る。

「安倍政権ではだめ。政権を代える以外にない。ただ、沖縄の人たちにトラウマがあるのもわかります」

 2009年の政権交代で誕生した民主党の鳩山由紀夫首相は、普天間飛行場の移設先として「最低でも県外」を掲げたものの挫折。結局、沖縄県内の「辺野古」に回帰した。鳩山政権の失敗の本質はどこにあったのか。当時、閣外にいた小沢代表は「詳細な経緯は知らない」と断った上でこう話す。

「自民党政権同様、民主党政権でも米政府との間で真の普天間問題の解決に向けた対話ができなかった、ということだと思います」

 小沢代表は今、野党共闘を主導している。政権交代が実現すれば、民主党政権も自民党政権も破れなかった「壁」を突破できるのか。

「同じ過ちは繰り返しません。もう一度、政権交代すれば辺野古は停止し、普天間も返してもらう。それには国内だけで議論していてもダメ。米政府と話し合わないとらちがあきません」

  小沢代表が米国との協議によって「解決可能」と見通すのは、米軍内部の本音を耳にしているからだという。

 そもそも米政府が、地元の反対を押し切り、日米同盟全体に打撃となりかねない政治的リスクを負ってまで、普天間代替施設としての要件を満たさない空港をつくろうなんて思うわけがない──。辺野古新基地に対して、小沢代表はかねてそんな疑問を抱いていたという。

「軍の強い要求があって、米政府も何も言えないのかなと思っていたら、政府も軍も辺野古に新しい基地など要求していない、と内部関係者から聞いたので驚きました。現政権下では公式に認めないでしょうが、米軍内部も『辺野古新基地は不要』というのが本音です」

 その上で、小沢代表は玉城知事にこうアドバイスする。

「何らかの形で米政府の本音を探る手立てを考えるべきだと思います。米政府中枢とつながらないといけない」

 しかし、米国内部で不要論が出ているなら、政府はなぜ新基地建設を止められないのか。

「利権以外の何ものでもない、と考えています。原発はもうやめた方がいいと専門家を含む多くの人が発言していますが、止められないのと同じ構図です」

 沖縄県は、例のない深度の軟弱地盤改良などで、辺野古の総事業費が2兆5500億円以上に膨らむと試算している。

「埋め立て用土砂の確保や地盤改良でコストが膨らめば業者だけでなく、官僚も防衛省の予算増を求める根拠になるため都合がいいのです。まさに政官産学が密接に絡む利権。結局、負担を負わされるのは国民です」

 小沢代表は民主党代表だった07年に「軍事戦略的に米国の極東におけるプレゼンスは第七艦隊で十分だ」と発言した。これは沖縄県が求める「海兵隊の県外・国外移転」と通底する要素もある。小沢代表は今もこの考えに変わりはないのか。

「全く変わりません。中国や朝鮮半島情勢を見れば、米軍のプレゼンスは極東に必要です。ただし、抑止力と米国の政治的プレゼンスの維持をシンボリックに言うと、第七艦隊で十分だということです。あとは、有事の際の展開能力さえ維持しておけばいい。本当のいくさのための部隊が平時からすべて日本に駐留していないといけないという理屈はない、と言っているのです」

  政府は「沖縄の海兵隊は抑止力のために必要」と説明している。小沢代表はこれを「嘘だ」と一蹴する。

「世界中で、在外米軍の撤退が潮流になっています。沖縄の海兵隊の実戦部隊も大幅削減されます。これは、有事に即応展開できればいいという米政府の考えの反映です」

 小沢代表は自公政権の対抗軸として、どのような安保政策をイメージしているのか。

「日米関係は最も大事な二国間関係です」。小沢代表はそう強調した上でこう言う。

「安倍首相はトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦しましたが、こうした太鼓持ちのような外交では通用しません。日米同盟は対等であって主従の関係ではありません。軍事力を対等にというのではなく、国どうし、首脳どうしが対等な関係でなければならないのです」

 さらにこう指摘する。

「安倍首相は日米関係を盾にとって軍事大国への道を歩もうとしています。集団的自衛権の行使を容認し、国際紛争に自衛隊を派遣できるよう道筋を付けました。国際連合憲章は、国際紛争には国際社会で一致して対応することを掲げ、日本国憲法はその理念を踏襲しています。軍事力は国連としての発動に限定しなければ歯止めなき軍拡競争になり、第2次世界大戦前の状態に戻ってしまいます」

 政権交代の実現に大事な要素は、受け皿となる政治勢力を結集できるかの一点に尽きる。その帰趨が、沖縄と「辺野古」の将来にも直結する。(編集部・渡辺豪)※AERA 2019年4月15日号

≫(AERAdot.)

 

安保論争 (ちくま新書)
細谷 雄一
筑摩書房

 

在日米軍 変貌する日米安保体制 (岩波新書)
梅林 宏道
岩波書店

 

日米安保体制史 (岩波新書)
吉次 公介
岩波書店
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●「れいわ新選組」小沢と太郎が仕掛けた? ステルス立憲対策

2019年04月12日 | 報道

 

リベラルは死なない 将来不安を解決する設計図 (朝日新書)
井手英策
朝日新聞出版

 

幸福の増税論――財政はだれのために (岩波新書)
井手 英策
岩波書店

 

未来の再建 (ちくま新書)
井手 英策,今野 晴貴,藤田 孝典
筑摩書房


●「れいわ新選組」小沢と太郎が仕掛けた? ステルス立憲対策


https://www.reiwa-shinsengumi.com/index.html


上記のURLは10日に突如立ち上げた、(新党)「れいわ新選組」の公式サイトだ。

正確には、議員は山本太郎ひとりなので、政党と言わず“政治団体”状態の「れいわ新選組」である。

タロー君のスタンドプレイのように見える面もあるが、経済政策中心に新自由主義経済の“巨視的立ち位置”から一転、市民の立場から、“微視的立ち位置”からの経済政策を訴えて、立ち上げたようである。


■日本に必要な“緊急政策”として、

・消費税の廃止

・奨学金徳政令

・全国一律最低賃金1500円

・保育・介護・原発作業員の公務員化

・一次産業戸別所得補償

・デフレ脱却給付金月3万(一種の臨時低額ベーシックインカム)インフレ2%達成時に終了)

・財源問題は、実績財政事情考慮。状況により、税の応能負担原則に立ち返る。

・日米地位協定の見直し
(辺野古基地建設は中止。普天間即時の運用停止。在沖海兵隊にはカリフォルニ ア等への移転をお願いし、これまでの駐留経費と同等の費用を日本側で持つことを前提に、米国側と再交渉。沖縄の民意を尊重します。)

・「トンデモ法」の一括見直しと廃止
TPP協定、PFI法、水道法、カジノ法、漁業法、入管法、種子法、特定秘密保護法、国家戦略特別区域法、所得税法等の一部を改正する法律、派遣法、安全保障関連法、刑訴法、テロ等準備罪など)

・原発即時禁止 (エネルギーの主力は火力。自然エネも拡大します) Etc.



以上、問題点や疑問点もあるようだが、日本と云う国を、国民の手に取り戻そうとする意思を感じる緊急政策案だ。


消費税は5%への減税が正しいし、不足予定分は法人税の増税で賄えば良いだろう。どうせ、産業として退場すべきものであり、大きいから潰せないは間違いだろう。

労働市場の移動が滞留している問題も、給料や下がるが、公務員になれるとなれば、かなりの流動は促進されるだろう。

残念な点というか、筆者が主張している、日米同盟の見直しや、日中、日露の平和条約の締結など、まだまだツッコミは足りないが、現実路線としては、このタロー君の主張は合理的であり、妥当性もある。

実際問題、安倍政治の逆さまをすることで改善する問題が実存しているのだから、立憲民主党も、このくらい思い切る必要があると云うことだ。

おそらく、タロー君は小沢一郎と綿密な計画を練っている可能性が高い。

不退転の決意で、自由党と袂を別つというものではなく、当面、決死隊的に永田町の空気を掻き交ぜようとしている。

無論、タロー君の「れいわ新選組」に瓢箪から駒が出るような政治現象が起きれば、小沢らが、押っ取り刀で駆けつければ良いことになる。

この「れいわ新選組」には、安倍晋三へのアイロニーが徹底して埋め込まれている。

まず、令和と云う元号を、己の所有物のように取り扱う安倍官邸に対して、完璧なカウンターパンチを繰り出した。

何といっても、政党名に元号が付いているのだから、安倍達が、「れいわ、れいわ」と言うたびに、新選組を応援する羽目になるので、発言する数がどうしても減らざるを得ない。これは愉快だ。

次に「新選組」も軽妙だ。 :新撰組とも書く。新選組は維新に負けたのではと云う揶揄的質問に対し、維新の会は政権ベッタリになった。過去のことは気にしていないに止めたが、腹では、長州の維新意識をひねりつぶしてやると云うアイロニーが込められていると受けとめるべきだろう。

だからといって、この「れいわ新選組」一本やりで、安倍自民党を倒せると云う気負いはないだろう。 :問題は、立憲民主党の尻に火をつけるのが、主たる目的である可能性が大きい。

二人区以上で、立憲は単独候補擁立を考え、野党共闘に消極的だ。このような場合、立憲潰しに「れいわ新選組」が候補者を立てる戦術も可能なわけで、枝野の保守面に平手を食らわせた。

無論、立憲の方が強いが、政権公約上は、「れいわ新選組」の方が断然フレッシュなので、大きく足を掬われる可能性がある。

少なくとも、今までのように、自らが“排除の野党第一党”のように、世間から見られている事実を顧みなければならないだろう。

実際に、「れいわ新選組」の公約はフレッシュで道理にかなっている。日本共産党は快く乗れるだろう。

立憲が一人区で、共産党と連携することで、立憲の支持者が逃げたと云う話はまったくのガセ。

立憲枝野が保守本流などと口走り、あの風貌なのだから、右翼の闘士と誤解されている、笑えない現実があるのだ。

立憲枝野は、戦略・戦術共に見直すべきである。


 

山本太郎 闘いの原点: ひとり舞台 (ちくま文庫)
山本 太郎
筑摩書房

 

みんなが聞きたい 安倍総理への質問
山本 太郎
集英社インターナショナル

 

僕にもできた! 国会議員 (単行本)
山本 太郎
筑摩書房
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