世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●経済の大破綻と再生 アベノミクス・ショックが来る日

2018年11月30日 | 日記
老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路 (講談社現代新書)
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ついに始まった日本経済「崩壊」 (SB新書)
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縮充する日本 「参加」が創り出す人口減少社会の希望 (PHP新書)
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●経済の大破綻と再生 アベノミクス・ショックが来る日

今日と云うか明日と云うか、ブエノスアイレスで開催されるG20における米中首脳会談が開かれる予定だ。米中貿易戦争の当事者であるドナルド・トランプ大統領と、習近平国家主席がガチンコで会談するのだから、世界は固唾を飲んで見守っている。国のあり方を、経済至上主義と位置づけた国にとっては、米中と云う経済大国の枠組みの中で、一喜一憂する日々が続くことになるのだろう。少子高齢化の人口構成を50年前から知りつつ、抜本的対策を放棄していた我国が、今さら「移民政策」と騒ぎだすなど笑い話である。

この安倍自民の「移民政策」にしても、入管法改正と云う東大法卒の、最も人間性からかけ離れた法務省官僚の手に委ねた法案なのだから、「人」が見えてこない法律を作る羽目に陥った。厚労省・文部省などが関われば、一年程度練ることで、もう少しはマシなものになったかもしれないが、目的が、安い労働力が欲しいと云う自民党集票マシーン層の要望に過ぎないのだから、人間的な法案では身も蓋もないと云うのが本音なのだ。21世紀になっても、我が国の支配層の精神的支柱は、アジア蔑視だ。その意味では、戦時中の慰安婦、徴用工問題で、お隣韓国の情念的復讐劇に出遭うのは当然の成り行きと言えるかもしれない。

アルゼンチンの米中首脳会談は、ロイターなどの報道によると、中国側が妥協点を探ろうと動いていると言われるが、果たして報道通りの結果が得られるか予断は許さない。一時休戦のような成果があるかもしれないが、米中の覇権争いは、50年スパンで見ていく必要があるものと承知する。日本が、今後50年以上続くであろう“米中覇権戦争”の渦に翻弄されるかどうかは、我が国の考え方一つで、どうにでも変わってゆく。

今までのように、夢よもう一度と、経済大国的思考の中でキリモミにあい、思想なく翻弄され続けるのか、経済第一主義から抜け出し(ドロップアウトとも言う)、独自の世界観・国家観を見出すかは、政党や政権や役人が考えるものではない。それを考えるのは、国民一人一人だ。その一人一人が、日本と云う国が、輸出産業で今後も生きてゆくのか、経済成長しないと国が滅びるような錯覚の中で生きてゆくのか、とことん考える時代がもうすぐやってくるだろう。おそらく、安倍首相が退陣した頃に発生する“アベノミクス・ショック”と言われるような副作用・後遺症の合併症の併発である。

冗談ではなく、日銀の異次元緩和による円安誘導と日銀が多くの上場企業の筆頭株主と云う、異常な状況によって演出された株高の収拾は容易なことではない。世界のどこの国も経験したことがない異常な好況経済演出の収拾の日が到来する。或る見方によれば、敗戦直後の日本に近い経済的惨状を呈する可能性がある。この時、日本人一人一人が、どのような生き方を望むのか、その価値が問われるだろう。筆者が生きている間に、上述のような経済の大破綻が起き、そこから新たな価値観を見出す人々を見たいものである。


≪「新たな冷戦」で近づいてきた中国 日本、立ち位置探る
 7年ぶりに実現した日本の首相の中国単独訪問。背景には、日米中3カ国をめぐる情勢の変化があった。米中が「新たな冷戦」と言われるほど対立を深めるなか、日本は立ち位置を模索する。安倍晋三首相は「新時代」の日中関係を呼びかけるが、その像はまだ鮮明ではない。
 26日、北京市の釣魚台国賓館。習近平(シーチンピン)国家主席は穏やかな表情で安倍首相と向き合い、机上の紙に時折、目を落としながら、ゆっくりとしゃべり出した。
 2千年に及ぶ両国の歴史に触れた後、最後に習氏は対日接近の意図をにじませた。「客観情勢の変化によって中日双方の高度な協力の可能性がもたらされた」
 「情勢の変化」とは何か。念頭にあるのは激しさを増す米中の貿易紛争だ。米国との長期的対立は避けられないとの判断から、長らく対立してきた日本を取り込む必要が生じている。
 「中国も環太平洋経済連携協定(TPP)に加入すべきだ」
 6月、北京に駐在する外交官は中国人学者にこう言われて耳を疑った。
 もともとTPPには、アジアに中国主導の経済圏が生まれるのを防ぐ日米の狙いがあった。中国は「包囲網」と警戒してきたが、ここに来て北京の経済・外交専門家が「TPP加入論」をささやき始めている。
 首脳会談直後の26日、ワシントンで開かれた米中関係のシンポジウムでも、ゲストの鞠建東・清華大教授が「日本が先導してきたTPPへの加入に中国は前向きになるだろう。米国が抜けたいま、なぜダメなのか?」と強調し、数十人の聴衆を驚かせた。
 この動きには、中国政府の思惑が反映されているとの見方が強い。研究者の一人は「日中が近づくいい機会だ。米国を孤立させることになる」と狙いを話す。
 加入条件の厳しさから実現は難しいとの見方が大勢だが、トランプ政権がTPPから脱退し孤立主義を強めるなか、自由貿易で日中が協調姿勢を示すこと自体、対米牽制(けんせい)になるというわけだ。
 習氏は安倍氏との会談で「中日両国が多国間のレベルでも幅広い共通利益と共通の懸念を有するようになっている」とも述べた。
 米政界には、日中の歩み寄りについて「中国と関係強化をする日本を信頼できるのか」(米議会関係者)といった声があるものの、広がりは限定的だ。
 米シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所のザック・クーパー研究員は「中国は日米間にくさびを打ち込みたいと考えているだろうが成功しないだろう。日米は同盟国として長期的な戦略を共有しているからだ」と話す。
 日中首脳は今回、海空連絡メカニズムに基づく会合の年内開催などで合意したが、尖閣諸島を巡る対立の根は残されたままだ。中国の脅威に直面する日本が、米国を安全保障分野で頼る構図は変わらない。
 しかし、トランプ政権の米国はこれまでの米国とは異なる顔をのぞかせる。
 トランプ政権にはトランプ氏と米政府という「二つの路線」があるとされる。
 国防総省は同盟国重視を変えていないが、「米国第一」を唱えるトランプ氏は極東などへの米軍の前方展開にコスト面から懐疑的な考えをもつ。自ら危機をあおり、強権的指導者と「ディール(取引)」をまとめ成果とする傾向も強い。中国の知財侵害など日欧も懸念を共有する課題の解決を置き去りにしたまま、11月末にも開く米中首脳会談で紛争の打開を演出するような展開も否定しきれない。
 米国の超党派グループが今月まとめた日米両政府への提言はトランプ氏の行為が「同盟に深刻な危機をもたらしている」と警告した。(北京=延与光貞、ワシントン=園田耕司、青山直篤)

 ◇首相、改めて「日米同盟が基軸」
 米トランプ政権を意識しながら首脳会談にのぞんだのは、安倍首相も同じだった。
 「日米同盟を基軸としつつ、アジア太平洋地域の平和と安定に貢献する」。安倍氏は26日の習氏との会談で、日本外交の基本的立場を改めて説明した。
 トランプ政権の保護主義を批判する習氏に対し、安倍氏は、中国が自国企業に交付する補助金が市場をゆがめかねない点、知的財産保護への取り組みが不十分な点を指摘した。
 米国に配慮しながらの対中接近だったことは、事前の準備でもうかがえた。
 日本政府関係者によると、今回の訪中の目玉だった第三国での日中インフラ協力は「(シルクロード経済圏構想)一帯一路への協力ではない」と米国に事前に伝えていたという。
 対中接近の裏には、米国をにらんだ思惑もあった。
 TPPからの離脱など保護主義に傾くトランプ政権を自由貿易体制に戻すためには、「中国のカードをちらつかせるしかない」(経済産業省関係者)と、あえて中国との関係立て直しを図った側面があった。  ただ、日中が今後協力していく分野には、米中が技術覇権を争うものも含まれている。
 今月、東京・台場で、自動運転に関する日中の官民合同セミナーが開かれた。
 「日中の自動運転に関する協力関係が強化され、世界をリードすることを期待する」。磯崎仁彦・経産副大臣はそうあいさつ。両国は自動運転の安全性評価などで連携して国際標準づくりを目指すことにした。
 首脳会談では「イノベーション協力対話」の設置が決まった。人工知能(AI)や自動運転など先端分野での協力が念頭にある。
 貿易紛争で、中国は先端分野で米国に依存できなくなった。米国が中国の技術覇権を押さえ込もうとする中で、先端産業での日中協力は抜け穴にもなりかねない。
 米中の間をどう歩くか。首脳会談で打ち出した経済協力を主導した経産省の中でも、意見は割れる。
 首相に同行して訪中した同省幹部が、先端分野を含めた日中協力について「対米関係にマイナスならこんな仕掛けはしない。日本が中国を国際標準の網にかけ、振る舞いを教えてあげるんだ」と話す一方、省内には「中国と米国が対立しているのに日本は仲良くするのかと言われる」との懸念も渦巻く。
 米中関係は貿易紛争にとどまらない「新冷戦」の局面に入りつつあるとも言われる。そうしたなかで、中国との関係改善に踏み切った背景を安倍政権幹部はこう解説する。
 「日本は日米関係を基軸にしつつ、言い方は悪いがうまく泳いでいかなければいけない時期ということだ」(鬼原民幸、西山明宏=北京、高橋克典)
 ≫(朝日新聞デジタル)


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●集団的自衛権容認・防衛費の闇 税が奈落の底に消えてゆく 

2018年11月29日 | 日記
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自民党本流と保守本流 保守二党ふたたび
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●集団的自衛権容認・防衛費の闇 税が奈落の底に消えてゆく 

以下は東京新聞の歯止めなく膨れ上がる、防衛費のお寒い内容についての調査報道だ。前半の4項では、北朝鮮の脅威が全面に出ているので、ピント外れの感があるが、現安倍官邸の考えなら、簡単に“北朝鮮”を“中国”と読み替えて貰って結構と言うに違いない。5項以降はリアリティがある日米貿易摩擦が原因で起きている防衛費増大の事実関係だ。

本日は引用も長いので、多くを語らず、日本の防衛費の中身を理解して貰えば、充分と考えている。しかし、集団的自衛権容認が、これほどまでに、歯止めなき防衛費の増大に繋がるとは、あまり一般には知られていない事実だ。正直、仮想敵国を北朝鮮から中国に読みかえれば良いだけ、などと思う考えも浅はかだと思う。軍事と経済が別次元で動いているわけではないのだから、中国を仮想敵と考えつつ、中国市場で商売がした日本企業の構図を、安倍官邸は、どのように辻褄をあわせるのだろう。

世界的好景気の大きな要因が、中国経済に牽引されているのは周知の事実なのだ。しかし、今後の中国は、生産設備の多くを自前で動かす時代がくるわけで、もう高度な生産装置を日欧米の市場から調達する時期は終わりつつある。つまり、中国が購入するサプライチェーン市場で儲けていた中小零細の日本や米国の企業の冬の時代が、そこまで来ているわけだ。つまり、世界経済の好況の多くは、中国の需要に支えられていたわけで、その需要がなくなると云うことだ。そんな時代に、中国を敵視する米国の尻馬に乗って、防衛装備品を買いまくって、どうなると思うのだろうか。


≪<税を追う>歯止めなき防衛費(1)かすむ専守防衛 官邸主導で攻撃兵器選定
 「いくらか分からないのに、われわれが予算承認しなければならないのはおかしい。国民の税金だということを考えろ」
 昨年十二月、自民党本部で開かれた国防部会。数日前に小野寺五典(いつのり)防衛相(当時)が導入を発表した、三種類の長距離巡航ミサイルの単価を答えない防衛省幹部に、議員らが口々に怒りをぶちまけた。
 戦闘機F15に搭載する米国製の「JASSM(ジャズム)」と「LRASM(ロラズム)」は射程が九百キロと長く、日本海から発射しても北朝鮮に到達する。F35に搭載するノルウェー製の「JSM(ジェイエスエム)」の射程は五百キロで、最新鋭のF35はレーダーに映りにくい。
 昨年八月の防衛予算の概算要求には入っていなかったが、同年十一月のトランプ米大統領の来日後、与党議員への説明もそこそこに導入が発表され、国防族の怒りを買った。
 荒れる国防部会。「予算を簡単にもらえると思うなよ。NSCとの関係はどうなんだ。説明しろ」。不満の矛先は、安倍政権で発足した国家安全保障会議(NSC)にも向けられた。
 NSCは二〇一三年十二月、首相、官房長官、外相、防衛相を中心に組織された。翌年一月、実動部隊の国家安全保障局(NSS)が内閣官房に置かれると、防衛省からの積み上げで決まってきた兵器選定の主導権は事実上官邸に移った。
 巡航ミサイルは相手ミサイルの射程圏外から攻撃でき、離れてにらみ合うという意味から「スタンド・オフ・ミサイル」とも呼ばれる。防衛省は「離島やイージス艦などを防衛するため」と強調するが、敵基地攻撃が可能なため、これまでの政権は専守防衛の観点から導入に慎重だった。
 元航空自衛隊空将の織田(おりた)邦男氏は「スタンド・オフ・ミサイルの導入は(自民党と旧社会党の)五五年体制なら絶対無理だった。それを軽々と超えてしまうのは、NSSができたメリットだと思う」と語る。
 NSSには防衛、外務、警察の各省庁を中心に約七十人が出向する。元外務次官の谷内(やち)正太郎局長を外務、防衛出身の二人の次長が支える。発足後、兵器調達面でも防衛政策が目に見える形で変化してきた。
 本年度四十六億円の研究費がついた「高速滑空弾」や来年度にはエンジンの研究に六十四億円を要求している「極(ごく)超音速ミサイル」は、「いずれも攻撃的兵器と見なされる可能性が高いとして、机上の研究にとどまっていた」。防衛省で航空機開発を担当した元空将の山崎剛美(たかよし)氏はそう話す。
 政策の転換は米国の望むところだ。米国務省の元高官は「日本は集団的自衛権を行使できるようになり真のパートナーになった。以前は日本が巡航ミサイルを導入するなんて想像できなかった」と喜ぶ。
 NSSのある幹部は「総理や官邸の話を聞きながら防衛省が出す選択肢を示して、日本の安保や外交政策の中で、どれがいいかを考えていくだけだ」と官邸主導の兵器選定を否定した。だが、防衛省の幹部が内情を明かした。
 「総理は『敵にやられっぱなしで、日本が守るしかないでは良くない。攻撃的な技術をやった方がいい』という考えだと周囲は受け止めている。NSSで『総理の意』をくんだ議論を重ね、防衛省に提示させたんだ」
 ◇ 
 安倍政権で初めて五兆円を突破し、増大し続ける防衛費。官邸主導で米国から高額兵器を次々と輸入、攻撃型ミサイルの導入計画も進める。聖域化する予算の流れを追い、専守防衛を逸脱するかのように、米軍との一体化を急激に進める政権の内実を報告する。
 (この連載は鷲野史彦、原昌志、中沢誠、望月衣塑子、藤川大樹が担当します)≫


<税を追う>歯止めなき防衛費(2)コストより日米同盟 覆った偵察機導入中止
 「GHの取得を中止する方向で、政務、関係省庁(NSS、官邸)と調整する」
 防衛省整備計画局が昨年六月に作成した内部文書。GHとは当時、米国から輸入を検討していた無人偵察機グローバルホークを、NSSとは国家安全保障局を指す。文書にはGH導入の経緯と輸入中止を検討する理由が記されている。その上で、防衛大臣ら政務三役とNSS、首相官邸と調整するとなっていた。  米政府の提案を受け、防衛省がGHの導入を決めたのは二〇一四年十一月。価格は三機で五百十億円だったが、米側は昨年四月、価格上昇を防衛省に連絡してきた。レーダー部品が製造中止となり、新たな部品の開発に追加費用が発生したとして、計六百二十九億円と23%も高騰していた。
 防衛省には装備品の価格が上昇した際の管理規則があり、価格が15%上昇したら事業の見直しを検討、25%の場合は事業中止を検討することになっている。
 整備計画局では、GHは今後も部品枯渇による価格上昇リスクがあると判断した上で代替策を検討。「近年の画像収集衛星の進展をふまえると、より安価な手段で相当程度が代替可能」と結論付けた。「日米同盟に与える影響」も検討の結果、「対処が不可能なものではない」と判断。導入中止の方向で、官邸などと調整するとあった。
 さらに導入中止に向けた段取りとして「自民党に事業中止の根回しを行った後、対外的に発表する」と記されていた。GHの導入中止へ防衛省の自信がうかがえる内容。ところが、わずか一カ月で覆った。
 昨年七月、整備計画局と防衛装備庁が作成した別の内部文書。「GHの価格の上昇リスクは引き続き存在する」としながらも、「能力はわが国を取り巻く安全保障環境に必要不可欠」として「事業を進めることとしたい」とある。正反対の結論を導いていた。
 文書は共産党の小池晃書記局長が入手した。整備計画局の幹部は本紙の取材に「外務省やNSSから『安全保障環境や日米同盟をふまえ、さらに検討を深めてほしい』と打診され、省内でもう一度議論した結果、購入継続を決めた」と回答した。導入中止の方針に外務省やNSSから異論が出て、覆ったことを認めた。
 ある欧米系軍事企業の幹部は「GHは米空軍でもコストが問題視されたが、政府はコストより日米安保を踏まえ、米国との関係を重視したのでは」と話す。
 実際、米空軍はGHの経費高騰などで、調達計画数を六十三機から四十五機に縮小している。ドイツでは一二年にGHの初号機一機を米から導入したが、コスト増加などを理由に追加購入を中止した。
 自衛隊の元幹部は「装備品の導入は現場で必要性を詰めることが重要。もともと現場はGHをいらないと言っていたのに、トップダウンで決めてしまうのがNSSの弊害だ」と話す。
 GH三機の年間の維持整備費は計百二十億円余り。かつて一時間飛ばすのに三百万円かかるという米側の試算もあった。日米同盟の名の下、兵器ローンのツケが国民に重くのしかかる。≫


 <税を追う>歯止めなき防衛費(3)進む日米一体化 軍事戦略の一翼担う
 四回目の核実験、続く長距離弾道ミサイルの発射。二〇一六年二月、北朝鮮の挑発行為に半島情勢は緊迫の度合いを増していた。
 その頃、海の向こうの米連邦議会では、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の日本導入が話題に上っていた。「アジア太平洋に配備されているわれわれのイージス艦の任務を軽減するのではないか…」
 議員から日本配備による米国のメリットを問われたハリー・ハリス米太平洋軍司令官(当時)は、質問を途中で遮り断言した。「もちろんだ」。まるで米国のミサイル戦略の一角を日本が担うと言わんばかりだった。
 昨年末、日本は地上イージスの導入を決めた。トランプ米大統領が日米首脳会談で、安倍晋三首相に大量の防衛装備品の購入を迫った翌月のことだ。
 ハリス氏は今年二月の米下院軍事委員会でも日本の地上イージス導入の効果を聞かれ、「私や海軍、太平洋艦隊の負荷の一部を軽減することになるだろう」と明言した。日本国内では今も、「トランプ氏に買わされた」との声がくすぶる。
 地上イージスを運用する陸上自衛隊でトップの陸幕長まで務めた冨澤暉(ひかる)氏は、日本で先にミサイル弾道を探知すれば米国は迎撃しやすいと分析。日米一体の運用を見据えた配備とみる。「日本にとってミサイル防衛はあったほうがいいが、米国は日本を守るためだけに売るわけではない」
 政府が配備候補地に挙げるのは、陸自の新屋演習場(秋田市)とむつみ演習場(山口県萩市、阿武町)。北朝鮮から秋田、山口に向かう延長線上には、それぞれ米軍基地のあるハワイとグアムが位置する。
 もし、北朝鮮がグアムを狙ってミサイルを発射したらどうするのか。防衛省の答えは「地上イージスで対応することも理論上は考えられる」。日本を守るための兵器が米国を守るために使われる可能性を認めた。
 「地上イージスだけでなく、どんどん日米の軍事一体化が加速している」。民主党政権で防衛相を務めた北沢俊美氏は、第二次安倍政権下での日米同盟の変貌ぶりに目を見張る。
 転機は一五年九月、他国を武力で守る集団的自衛権の行使に道を開いた安全保障関連法の成立だ。自衛隊の戦闘機や護衛艦が、米軍機や米艦を警備するケースが増えている。日米安保政策に長年かかわってきた米国務省の元高官でさえ、「五年前にはあり得なかった光景だ」と言う。
 官邸で安保政策を担当する薗浦健太郎首相補佐官は「今や日米同盟は、かつてないほど強固。揺るぎない絆により、同盟の抑止力・対処力は大きく向上し、日本の安全はより確固たるものになった」と主張する。
 今年九月、海上自衛隊は中国が進出を強める南シナ海で潜水艦の訓練を実施したと発表した。「極秘であるはずの潜水艦の行動を公表することは、本来ありえない」。北沢氏は異例の公表に、米国にすり寄る日本の姿を重ねて続けた。「集団的自衛権が容認された証しとして世界にアピールする。おもねってるんだ、米国に」≫


<税を追う>歯止めなき防衛費(4)レーダー商戦 しのぎ削る米メーカー
 九月二十八日、東京都内のホテル。サイバーテロやミサイル防衛(MD)のセミナーが開かれ、国内外の防衛企業の幹部や自衛隊OBら約三十人が出席した。主催したのは旧防衛庁長官や初代防衛相を歴任した久間章生(きゅうまふみお)氏が会長を務める一般社団法人・国際平和戦略研究所。久間氏は二〇〇九年の衆院選で落選後、政界を引退したが、日米の防衛分野に広い人脈を持つ。
 「これからの戦争はミサイルの時代になってきた」
 久間氏のあいさつの後、海上自衛隊OBの坂上芳洋氏が講演した。環太平洋合同演習の際、指揮官としてイージス艦を運用した経験があり、退官後は米軍事メーカー・レイセオンのシニアアドバイザーも務めた。講演のテーマは政府が導入を決めた地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。坂上氏はシステムに搭載されるレーダーに米ロッキード・マーチン製の「SSR」が選ばれたことに疑問を呈した。
 SSRは一基百七十五億円ほどとされるが、坂上氏は「まだ構想段階で、ミサイル射撃試験などをしていない。日本が試験費の負担を強いられ、価格がさらに膨らむ可能性がある」。
 会場からは「それは国会が止まるくらいの話だな」という発言も出た。斉藤斗志二(としつぐ)元防衛庁長官だった。
 北朝鮮は一六年以降、核や弾道ミサイルの実験を繰り返した。防衛省の幹部は「誰もがミサイル防衛強化が必要と考えていた。官邸は高高度(こうこうど)防衛ミサイル(THAAD)も地上イージスも米国製なので、どちらでも構わないという立場だった」と明かす。  地上イージスに決まったことで、防衛省は米ミサイル防衛庁からSSRと米レイセオン製のレーダー「SPY-6」の提案書を受け取り、レーダーの選定に入った。
 イージス艦にロッキード社製の「SPY-1」を搭載している米海軍が今後、レイセオン製のSPY-6に更新するため、日本の防衛業界でも「レイセオンが有利」とささやかれた。だが今年七月、ロッキード社に軍配が上がり、業界に驚きが広がった。
 ロッキード社と関係が深いコンサルタントで、元航空自衛隊空将の山崎剛美(たかよし)氏は「日本製の窒化ガリウム半導体を組み入れるなどして大きさを変えないで性能を向上させた」と勝因を分析する。お膝元の米国で失った商機を日本で取り返した格好だ。
 「今回のレーダー選定は単にイージス・アショアのレーダーを決めるというだけではない」。そう指摘するのは元米陸軍大佐で、レイセオンに勤めたことがあるスティーブン・タウン氏。次のレーダー商戦は海上自衛隊のイージス艦だ。
 海自は保有する六隻のイージス艦のミサイル防衛能力を向上させながら、二〇年度までに八隻に増やす計画だ。レーダーはロッキードのSPY-1が搭載される予定だが、「近い将来、レーダーの更新が始まっていくだろう」と海自OB。レーダー更新は一基百億円を超す一大ビジネスだ。
 今や米国製を中心に高額兵器を次々と導入するようになった日本。世界の軍事メーカーや商社が虎視眈々(たんたん)と商機をうかがう。≫


<税を追う>歯止めなき防衛費(5)貿易赤字解消図る米大統領 「兵器買え」強まる流れ
 「武器」と「カジノ」。
 今年の夏以降、訪ねてくる旧知の米国関係者たちから、何度この言葉を聞いたことだろうか。
 「彼らに訪日の目的を尋ねると、用件は必ずこの二つの利権だ」。日本総合研究所の寺島実郎会長は、急速に矮小(わいしょう)化している日米関係を肌で感じている。
 訪ねてきた人の多くは、知日派の元政権スタッフや元外交官ら。「日本通であることで米国の防衛やカジノの関連企業などに雇われた彼らが、対日工作のため動き回っている構図が、ここに来てくっきり見える」と明かす。
 一基で一千億円以上する迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に象徴されるように、安倍政権は国難を理由に米国製兵器の購入にアクセルを踏む。
 右肩上がりで増える日本の防衛費に、米軍需メーカー幹部は「安倍政権になってビジネス環境はよくなった」と手放しで喜ぶ。
 追い風を吹かしているのがトランプ米大統領だ。約七兆円に上る対日貿易赤字をやり玉に挙げ、日米首脳会談のたびに、安倍晋三首相に米国製兵器や化石燃料などの購入を迫ってきた。
 通商と安全保障をパッケージにして、兵器を「ディール(取引)」として売り込む。その姿は、さながら武器商人だ。元米海兵隊大佐で、日本戦略研究フォーラムのグラントF・ニューシャム上席研究員は「トランプ氏は、日本が自分の防衛を十分果たさず、米国にただ乗りしていると考えている」と指摘する。
 「私は(安倍首相に)『われわれは巨額の赤字は望まない。あなたたちはもっと買わざるを得なくなるだろう』と言った。彼らは今も大量の防衛装備品を買い続けている」。米紙ワシントン・ポストによれば、トランプ氏は九月下旬のニューヨークでの記者会見の際、直前に行われた安倍首相との会談で、そう迫ったことを強調した。
 対日貿易赤字の多くを占める自動車は、日本経済を支える基幹産業。トランプ氏が赤字削減のため、日本車の追加関税に手を付ければ、国内経済への打撃は避けられない。
 「米国装備品を含め、高性能な装備品を購入することが日本の防衛力強化に重要だ」と応じた安倍首相。大統領の得意のせりふ「バイ・アメリカン」(米国製品を買おう)への抵抗はうかがえない。
 「TPP(環太平洋連携協定)交渉で、自動車の輸出と農産物の輸入をてんびんに掛けられている農協の気分だ」。国内の防衛産業は、自分たちの食いぶちを奪われかねないと戦々恐々だ。ある大手メーカー幹部は、自民党の国会議員から「自動車を守るためのバーターとして、米国から高い武器をどんどん買えという流れになっている」と打ち明けられたという。
 小切手を切ってくれそうなところに請求書が行くように、増大する日本の防衛費に米国が群がっている。「今や米国にとって日本は草刈り場だ」という寺島氏は、対米交渉に警鐘を鳴らす。
 「日本に東アジアの安全保障に対するしっかりした構想がないから、米国に武器を売り込まれる。トランプ政権の期待に応えるだけでは利用されるだけだ」≫


<税を追う>歯止めなき防衛費(6)対外有償軍事援助 米優位 もの言えぬ日本
 いつ電話してもつながらず、留守電に要件を吹き込んでも連絡がない。らちが明かずワシントン郊外の米国防総省から一キロ先の米軍のオフィスに乗り込んだ。中に入ると、あちこちで電話が鳴っていた。それでもスタッフらは構わずに目の前の業務を続けていた。
 これは二十年ほど前、米国駐在だった防衛省職員が目にした「対外有償軍事援助」(FMS)を巡る米側の対応だ。米国から兵器を輸入する際、FMSでは米政府が窓口になる。
 職員は「米軍の担当者は高飛車というか、売ってやっているという、上から目線を感じた」。防衛装備庁有償援助調達室の森伊知朗室長は「今も状況はほとんど変わらない」と語る。
 FMSは米国に有利な取引で、価格や納期は米側が主導権を握る。昨年十月、会計検査院が装備庁に注文を付けたFMS取引の不備は、米国にもの言えぬ日本の立場を物語るものだ。
 パーツ番号が合わない、数量が異なる、空欄のままになっている…。検査院が調べたところ、早期警戒機など二〇一四~一五年度の六十四契約(総額六百七十一億円)すべてで、米側から届いた納品書と精算書の記載に食い違いがあった。検査院の担当者は「官の会計処理としてありえない」とあきれる。
 しかも、食い違いは常態化していた。原因は米側にあるというのに、森室長は「こういうものだと思って米政府には改善を求めてこなかった」と釈明する。
 契約金額は高額で、一歩間違えば日本に大きな損失が出る。米側に請求ミスがあっても、一年以内に通知しなければ補償してもらえない。にもかかわらず、確認を求めても回答は遅い。
 検査院によると、米政府から「あまりに問い合わせが多いので、もっと絞ってくれ」と言われた職員までいたという。
 食い違いを米側に問いただすのは最終手段で、米軍サイトで照合したり、書類の別の記載で類推したりしていたという。結果的にチェックは甘くなる。検査院は「十分に疑義を解明しないまま、装備庁は精算していた」と指摘する。
 「日本は足元を見られている」。そう語る元航空幕僚長の田母神俊雄氏も、かつてFMS取引の理不尽さを味わった一人だ。
 空幕装備部長だった約二十年前のこと。「リンク16」と呼ばれる米軍の情報共有システムの導入を決めた途端、米国は価格を一億三千万円から二億五千万円に引き上げてきたという。
 「米軍幹部に直接、『信義にもとる』と抗議すると一カ月後、元の価格に戻った」と田母神氏。「なぜ価格が上がったのか、なぜ元に戻ったのか説明もない。FMSって常に米国の勝手なんですよ」。今も米国の言い値であることに変わりはなく、FMSへの依存度を強める日本の将来に危機感を抱く。
 昨年十二月、検査院に背中を押されるように装備庁は、米政府に納品書と請求書の食い違いがないように求めた。だが米側の対応は鈍い。今年一~八月の六十六契約のうち、食い違いは実に七割超の五十契約(総額二千百八十億円)で見つかっている。≫


 <税を追う>歯止めなき防衛費(7)国内防衛産業 機関銃価格 米の7倍
 「日本は米国の七倍の値段で買っている」
 今年四月、財務省で開かれた財政制度等審議会の分科会。葛西敬之・JR東海名誉会長や永易(ながやす)克典・三菱UFJ銀行特別顧問ら経済界の大物委員の前で、主計局防衛係の内野洋次郎主計官が説明した。
 やり玉に挙がったのは住友重機械工業がライセンス生産する軽機関銃「MINIMI(ミニミ)」。ベルギーの銃器メーカー「FNハースタル」が開発、一分間に七百五十~千発撃つことができる。住友重機はハースタル社にライセンス料を払って設計図を購入、部品製造から組立まで行う。
 自衛隊はMINIMIを一九九三年度から購入し始め、陸・海・空で約五千丁を保有する。以前は毎年二百丁前後調達していたが、二〇一三年に機関銃の試験データ改ざんが発覚した以降は大幅に減少。一七年度は四十八丁だった。
 調達数の減少に伴い、単価が高騰した。同じライセンス生産をしている米国が一丁四十六万円、オーストラリアが四十九万円なのに対し、日本は三百二十七万円と七倍前後だ。
 「さすがに納税者は許さないでしょう」。日本の防衛産業界に広い人脈を持つ関係者はため息交じりに漏らす。住友重機の担当者は財務省の指摘にはコメントせず、「今後も企業努力を重ねていく」と話した。
 日本の防衛装備品が高額になる大きな要因の一つが「原価計算方式」。装備品は市場価格がないため、メーカー側が材料費や加工費などの原価を積み上げ、そこへ防衛省が一定の利益を上乗せして価格が決まる。利益率は製造業の平均を基にしており、関係者は「おおむね6%弱」と言う。
 「原価が増えれば利益も膨らむ構造になっており、企業が自主的に原価を下げる方向には向きにくい。そうした問題点は以前から認識していた」。防衛装備庁の担当者はそう話す。
 コスト意識が働きにくいだけでなく、原価を水増しして過大請求する事件も後を絶たない。最近十年間の主な事例でも、三菱電機の二百四十八億円など十三社で計四百九十五億円の過大請求が発覚。国庫に返納するとともに多額の違約金を支払っている。
 装備庁は抜き打ち調査を増やしたが、一六年度の契約実績は約六千七百件、二兆円近くに上り、別の担当者は「検査する人がとても足りない」と言う。
 防衛産業は専門性が高く自衛隊との関係は深い。防衛省と契約実績のある企業には毎年、自衛隊の一佐以上と本省課長相当以上の幹部だけで六十~八十人で天下る。自衛隊のある元幹部は「再就職先の企業が仕事を取るためにOBを連れて来ることはある」と話す。
 防衛産業界から政界への献金も毎年多額に上る。防衛省の契約上位十社のうち八社は一六年、自民党の政治資金団体「国民政治協会」に計一億三千二百八十万円という多額の献金をしている。八社の一六年度の受注額は地方分を除いて八千八百五十一億円と、全体のほぼ半分を占める。
 改善されない高コストや繰り返される水増し請求。財務省幹部は「防衛産業というムラ社会で、競争力が落ちている」と指摘する。
 その背後に政界と業界、防衛省・自衛隊のもたれ合いが浮かび上がる。≫


<税を追う>歯止めなき防衛費(8)中期防兵器リスト 
「八掛け」で詰め込む 「機動戦闘車、九十九両」
 「ティルト・ローター機(輸送機オスプレイ)、十七機」  
「戦車、四十四両」……
 二〇一三年十二月に閣議決定した現行の中期防衛力整備計画(中期防)。一四~一八年度の防衛費の総額を二十三兆九千七百億円程度と定め、購入する兵器の名前がずらりと記してある。中期防は五年ごとに策定される、いわば兵器の「買い物リスト」だ。
 各兵器の防衛省の見積額は、企業との取引に影響があるとして非公表だが、財務省が実際の購入額と比較すると、見積もりのずさんさが浮かび上がった。
 機動戦闘車は一両四・八億円の見積もりに対し、購入額は七・一億円(48%増)。オスプレイは一機六〇・五億円→七四・六億円(23%増)、戦車は一両十億円→一一・五億円(15%増)など、二十二品目のうち十五品目で見積もりより高騰していた。
 価格が高騰すれば数量を減らす必要が出てくる。国産の機動戦闘車は十二両、戦車は四両減らした。C2輸送機(一機二〇六・四億円)も当初の十機から七機に。計九品目で目標を達成できないという、ちぐはぐな結果だ。一方、オスプレイは計画通り十七機を米国から輸入する。その分、他の兵器を減らした格好だ。
 「こんなに購入単価が上がってしまっては(購入する)数量が達成できないのは当たり前だ。コスト管理ができていない」。財務省幹部は指摘した。なぜ取得価格は上がったのか。
 防衛省の末永広防衛計画課長は「消費税率が5%から8%に上がり、装備品によっては加工費や材料費も上がった」と説明。為替レートが円安になり、米国から兵器を調達するコストが増えたことも原因に挙げたが、財務省は為替の影響額を除いて計算しているので理由にならない。
 現場からは、別の声が聞こえる。「『ポツハチ』を掛けたりするんだよ」。十年ほど前に退官した元自衛隊幹部が明かした。ポツハチとは「見積もりを0・8倍する」という意味だ。
 「中期防のリストに(兵器の)アイテムが載っていないと、絶対に事業化されない。だから、見積額を八掛けにして無理やり入れている、というのが実態だ」
 このため調達の際には当然価格が上がり、逆に数量が減る事態が起きる。会計部署を経験したことがある現役自衛官の一人は「中期防に詰め込むだけ詰め込むやり方は、今も変わっていない」と証言する。
 「F35戦闘機や無人偵察機グローバルホーク、(ミサイル防衛に使う)イージスシステムなど、日本は高価な装備品を好むようだ」
 そう指摘するのは元米海兵隊大佐で日本戦略研究フォーラム上席研究員のグラント・ニューシャム氏。例に挙げた兵器はいずれも米国製だ。政府は来月、一九~二三年度の新しい中期防を決定するが、ニューシャム氏は戦略的視点が欠けているとする。
 「必要なものが何か。包括的・体系的に評価しないまま兵器を購入している。買うだけでなく、金額に注意を払い、必要に応じてお金を使うべきだ」 ≫


<税を追う>歯止めなき防衛費(9)米軍再編費、要求ゼロ 膨らむ予算「裏技」駆使  
「要求額を見掛け上、小さくしていると批判が来ることは分かっていた。でも、そうせざるを得ないほど、後年度負担がのしかかっている」。防衛省の幹部が正直に打ち明けた。
 二〇一九年度予算の概算要求は、本年度当初予算から2・1%増となる過去最大の五兆二千九百八十六億円。防衛費の概算要求上限のぎりぎりの額だが、実はそれでも足りず、本来盛り込むべき費用を外していた。本年度二千二百億円を計上した米軍再編関係費だ。
 原因は後年度負担と呼ばれる国産・輸入の兵器ローンにある。安倍政権による米国製兵器の輸入拡大に伴い、一九年度の返済は二兆七百億円に。同時に返済額より四千四百億円多い新たなローンが発生する。まさに自転車操業。ローン残高はわずか六年間で二兆一千億円も増え、来年度は五兆三千億円を超す。
 幹部は「概算要求に米軍再編関係費を入れるとパンパンになる。そこで上の判断でゼロにした」と言う。毎年発生する経費のため、通常は前年度と同額を仮置きするが、今回は額を示さずに項目だけ入れ、判断を政府に投げる異例のやり方にした。例年通りに盛り込んでいれば総額は五兆五千億円を超え、6・3%の伸びとなる。それを「小さく見せた」のだった。
 防衛費は北朝鮮情勢や中国の海洋進出などを理由に六年連続で増加している。第二次安倍政権発足後、毎年1%超と伸びているのは他に社会保障費だけだ。
 戦闘機F35や輸送機オスプレイ、早期警戒機E2Dなど、米国の対外有償軍事援助(FMS)に基づく輸入兵器のローン残高は、一三年度の千九百十九億円から本年度は約六倍の一兆一千三百七十七億円。そこへ機動戦闘車や潜水艦など高騰する国産兵器が輪を掛ける。
 ある幹部自衛官は「予算は増えても全然足りない。もっとつけてもらわないと日々の活動費を削らなければならない」と言う。  増え続ける本予算だけでは足りず、防衛省は補正予算にもローン返済を組み込む「裏技」を使うようになった。
 補正は災害対応などが本来の趣旨だが、一四年度以降は艦船やミサイルの取得費の計上が常態化している。政府ぐるみでなければ、とてもできない。予算編成に詳しい防衛省の元幹部は「かつて補正で装備品を買うことは考えられなかった。何でもありになっている」と懸念している。
 見た目以上に膨張している防衛費。安倍晋三首相は年末に策定する新しい「防衛大綱」と、向こう五年間の「中期防衛力整備計画(中期防)」に向け、ことあるたびに「従来の延長線上ではない防衛力」を強調してきた。防衛費拡大の布石は至るところに打たれている。
 「今のような政策を続け、中期防で予算を積み増していけば、どこかで財政的にパンクする。専守防衛で許される防衛力とは何か。根源的な議論が必要だ」。軍事ジャーナリストの前田哲男さんは、なし崩しの防衛費増大に危機感を覚える。
 予算増大の圧力が国の内外で強まり、専守防衛が揺らぐ。財政が危機的状況の中で、軍備増強を進める北朝鮮や中国と競うように、日本は軍拡へと転換するのか。来月示される政権の結論を注視する必要がある。≫


<税を追う>歯止めなき防衛費(10)辺野古新基地建設 県民抑え 際限なき予算
 ボートの舳先(へさき)に座る黒ずくめの乗員が威嚇するように、抗議船にビデオカメラを向けている。サングラスに黒のマスクで顔を覆った乗員は拡声器を手に、ひっきりなしに警告する。「ここは臨時制限区域です。速やかに退去してください」
 沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍キャンプ・シュワブから約五百メートルの沖合。今月二十日、海上で新基地建設に抗議する小型船に同乗した。工事区域への立ち入りを規制するフロートの内側にいたのは、防衛省沖縄防衛局から警備業務を請け負った民間警備艇だった。
 一日から海上工事が二カ月ぶりに再開。美(ちゅ)ら海(うみ)は再びフロートで仕切られた。基地反対運動を撮り続ける名護市の写真家、山本英夫さん(67)は「国はカネがないと言いながら、ここでは基地反対の民意を抑えるために毎日二千万円も使っている。モリカケ疑惑なんかの比じゃないよ」と、警備艇に怒りをぶつけた。
 新基地建設が本格化した二〇一四年度以降、海上保安庁の警備に加え、民間の警備艇が二十四時間態勢で監視している。海上警備の予算は一五~一七年度で計百六十一億円。座り込みが続くシュワブ・ゲート前での陸上警備の予算を合わせると、三年間の総額は二百六十億円に上る。
 「一日二千万円の警備費」は、新基地に反対する「沖縄平和市民連絡会」メンバーで元土木技術者の北上田毅(きたうえだつよし)さん(72)が防衛局への情報開示請求で暴いた。「一日の人件費が一人九万円で積算されており、あぜんとした。国策だったら何でもありなのか」と嘆く。
 その後、会計検査院が海上警備費を調べると、防衛局は「業務の特殊性」を口実に国の単価ではなく業者の見積もりをそのまま採用していたことが発覚。一五~一六年度で計一億八千八百万円を過大発注していた。
 コスト意識の乏しい防衛局。それが、かえって県民の反感をあおっている。名護市の自営業、島袋正さん(58)は訴える。「ヤマト(本土)の人は、辺野古は沖縄だけの問題と思ってるかもしれないが、自分たちの税金が無駄に使われているわけさ。国民一人一人にしわ寄せが来てるんよ」  そもそも政府は当初から「禁じ手」を使っていた。
 一三年十二月、当時の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事が辺野古埋め立てを承認すると、政府は一四年七月、建設費百四十二億円を予備費から支出した。国会審議を経ずに閣議決定だけで支出できる予備費は、災害などの緊急時に限られる。沖縄では当時、建設反対の大きなうねりが広がっていた。
 「野党の追及を避け、基地建設を強行したい政権の姿勢が表れている」と分析するのは新藤宗幸・千葉大名誉教授(行政学)。「予算は国会の議決が必要という財政民主主義に反する姑息(こそく)な行為」と批判する。
 埋め立てすら手付かずなのに、辺野古には既に千二百七十億円が支出されている。政府が当初、想定した総事業費は三千五百億円以上。巨額の税金を垂れ流しながら、今後いくらかかるのか、見通しさえ国民に明らかにしようとしない。
 沖縄選出の赤嶺政賢衆院議員(共産)は金に糸目を付けない政府のやり方に憤る。「辺野古で予算なんてあってないようなもの。県民を黙らせることが予算の最大の要件なんだ」 =おわり  (鷲野史彦、原昌志、中沢誠、望月衣塑子、藤川大樹が担当しました)  ≫(東京新聞)

属国民主主義論
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東洋経済新報社
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●F35爆撃出動なくスクラップ 無目的に戦闘機を買うのか

2018年11月28日 | 日記
自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 (講談社現代新書)
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講談社

 

武器輸出と日本企業 (角川新書)
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KADOKAWA

 

日本の国益 (講談社現代新書)
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講談社


●F35爆撃出動なくスクラップ 無目的に戦闘機を買うのか

実質的に防衛費が、右肩上がりで伸びている。意味不明の辺野古新基地建設も含め、狂気の沙汰だ。米国装備品の購入拡大を迫るトランプ米大統領の要望に応えて、と云う理屈にしても奇妙な点がある。何も、軍備装備品に限らなくても、貿易不均衡を是正する手段はあるはずだ。我が国は、絶対的に人手不足国家なのだから、米国の生産拠点を増やし、輸出入の構造を変える手もある。また、ふんだんに出ると言っているシェールオイルを輸入する手もあるわけだ。西海岸に製油所拠点を作っては如何か。

どこか“為にする”防衛省の米国装備品の購入拡大と云う図式が見えてくる。この問題で、国家や国民が、どのような利益を享受できるのか、さっぱり判らない。防衛省は、仮想敵国を中国と定めているようだが、中国が日本を攻撃して、何を得ようとするのか、とんと見当がつかない。物騒な想定だが、中国が攻めてくるとして、核攻撃しない前提なら理解するとして、そんな保証はどこにもない。中国やロシアが仮想的なら、核攻撃に備える核シェルターの大量設置の方が納得がいく。まぁ、先日までは仮想敵国“北朝鮮”だったことを思えば、防衛省や官邸が考える仮想敵国など、馬糞饅頭のようなものだ。

日経は、≪周辺国は最先端の戦闘機の導入を進めている。中国は独自開発の最新鋭ステルス戦闘機「J20」を2月に実戦配備。30年までに第5世代機を250機超導入するとの見方がある。ロシアも第5世代の「スホイ57」を19年にも配備するとみられる。最新鋭機の大幅追加でこうした軍備増強に対応する≫と解説している。つまり、最近の仮想敵は中国とロシアと云うことか。筆者の感覚で行くと、中国は日本攻撃をする気はないだろう。馬鹿げた守銭奴的新自由主義市場で、平和裏に日本支配が果たせていると云うのに、日本のインフラを破壊するような愚行を行うはずがない。中国の朝貢外交精神は、今も健在だと観測できる。敢えて、危ないとするなら、唯一国際競争力が軍事力であるロシアだろう。まぁそれも、日ロ平和条約が結ばれれば、相当にリスクは軽減する。

中国は、習近平が永遠の権力の座にいるわけで、日本など攻撃している暇があるくらいなら、AIIBの強化と一帯一路計画の推進で、ヘゲモニーが馬なりで果たせるわけだから、極東の島国を支配下に入れるなど、優先順位は低い。中国人の話し方が耳障りなのは、個人的に同意するが、中国人全体の考えには、良いもの、良い商品、良いシステム、良い礼儀等々、他国に学べと云う精神は健全に存在する。彼らの共産党独裁政権支配下の新聞でも充分に、その雰囲気は味わえる。

少なくとも、我が国の、アメリカの金魚の糞の癖に、中国人を、無批判、無節操に見下す態度の何倍か理性的で、合理的考えを持つ。まぁ、13億人以上の人口があり、懸案の自治区も多いわけだから、日本のテレビが、トンデモナイ国、中国と云う、トンデモ話題を積極に放映し、日本人の阿呆な“アジア人蔑視構造に拍車をかけている。まさに、日本人の質の劣化に加担する最大の敵は、自国のマスメディアなのだから、腐った国のデモクラシーほど、手のつけられないものはない。経済成長に縋りつかない国の姿は一切考えられない人種なのだろうか。

法治国家ではあり得ない脱法的手段を駆使して、着々と辺野古基地の埋め立てが進むわけだが、国会の議決が不要な予備費から、バンバン民間警備会社に銭を払っている。忍者のような黒づくめのファッションで、ビデオ撮影をしている人間の日当が6万円から9万円なのだそうな。あまりに嬉しくて涙も出ない。いっそのこと、技能実習生に体験実習して貰ったら良いのではないのか。民間警備会社の人材なるものも、手放しで信頼に足る人々かどうか疑問であるのにだ。

*明日は、東京新聞が力を入れて調査報道している、青天井の防衛費特集をお送りする予定だ。


 ≪F35戦闘機 最大100機追加取得へ
 1兆円、政府検討 政府は最新鋭ステルス戦闘機「F35」を米国から最大100機追加取得する検討に入った。取得額は1機100億円超で計1兆円以上になる。現在導入予定の42機と合わせて将来的に140機体制に増える見込み。現在のF15の一部を置き換える。中国の軍備増強に対抗するとともに、米国装備品の購入拡大を迫るトランプ米大統領に配慮を示す狙いもある。

12月中旬の防衛計画の大綱(防衛大綱)の閣議決定に合わせて、F35の取得計画を見直し、閣議で了解する。2019~23年度の中期防衛力整備計画(中期防)には追加分として40機程度を盛り込む調整を進める。現在はF4戦闘機の後継機として、F35Aを24年度までに42機導入する計画で順次配備している。

F35は最新鋭の第5世代機と位置づけられ、現在日本が導入しているA型と短い滑走で離陸し垂直着陸できるB型がある。政府は今後、A型を中心にB型も含め最大100機の取得を検討する。現在約200機あるF15のうち改修が難しい100機を置き換える。防衛省はF15について半分の約100機は改修して使い続けることを決めているが、残りの100機について扱いを検討してきた。

F35Bについては、海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」を戦闘機が離着陸できるよう改修し搭載する方針を防衛大綱に盛り込む方向で調整している。

政府は30年ごろから退役するF2戦闘機の後継となる次期戦闘機の選定も進めている。中期防に今後の方向性を書き込む方針だが、開発方法など詳細な決定は19年度以降となる方向だ。現状では、日本企業の参画を認める米防衛大手ロッキード・マーチン社の提案と、三菱重工業など日本企業連合が主体となる案がある。

F35の追加取得には、トランプ氏が米国装備品の購入拡大を繰り返し迫っていることも背景にある。高額の戦闘機を買い増し、トランプ氏が問題視する対日貿易赤字の削減圧力をかわす思惑もある。安倍晋三首相は9月にトランプ氏との会談で「米国装備品を含め、高性能な装備品を導入することが日本の防衛力強化に重要だ」と伝えていた。

日米両政府は年明けにも物品貿易協定(TAG)交渉を本格化させる。年内に決める防衛大綱や中期防で装備品の購入増を打ち出すことで、交渉を有利に運ぶ思惑もありそうだ。

政府は次期中期防で、外国機の監視にあたる最新の早期警戒機「E2D」を米国から最大9機追加取得すると明記する方向だ。総額は9機で3000億円超の見込みだ。こうした米国製の追加調達で防衛費は今後、増加するのが確実だ。

周辺国は最先端の戦闘機の導入を進めている。中国は独自開発の最新鋭ステルス戦闘機「J20」を2月に実戦配備。30年までに第5世代機を250機超導入するとの見方がある。ロシアも第5世代の「スホイ57」を19年にも配備するとみられる。最新鋭機の大幅追加でこうした軍備増強に対応する。

 ≫(日経新聞)

京都学派 (講談社現代新書)
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哲学の最新キーワードを読む 「私」と社会をつなぐ知 (講談社現代新書)
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マスコミ偽善者列伝 建て前を言いつのる人々
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●入管法 立ちどまれと言われて、立ちどまる政権ではない

2018年11月27日 | 日記
外国人労働者をどう受け入れるか―「安い労働力」から「戦力」へ (NHK出版新書 525)
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NHK出版

 

定常型社会―新しい「豊かさ」の構想 (岩波新書)
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岩波書店

 

新 移民時代――外国人労働者と共に生きる社会へ
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明石書店


●入管法 立ちどまれと言われて、立ちどまる政権ではない

日本民族に、あれほど執着しているネット右翼や日本会議、神社本庁などは、自分達のイデオロギーの中で、移民容認と云う事実を、どのような形で消化しようとしているのだろう。金のため、背に腹は代えられぬと云うご都合主義で切り抜けてしまうと云うのだろうか。まさに理解不能な人間たちだ。日本民族の、皇室含む伝統歴史文化が“いの一番”なはずなのに、彼らの口から、この問題への言及は少ない。不思議としか言いようがないのだが…。

まぁ、彼らだけが“ご都合主義”と批判される謂れはないかもしれない。立法府では、首相の外遊の都合で、議論せぬうちから、議論は充分に尽くされたと“一休さん”のような事を言い、人権蹂躙が大好きな法務官僚らが作った法案は支離滅裂、データの改竄まで暴露されている。本当に、こんな法律で、こんな議論のない中で“実質的移民制度”を導入して良いと云うことは絶対にない。移民制度導入の是非を考える前に、自分達の国は、21世紀、どのような国であるべきか、国民的コンセンサスが必要なはずである。

たしかに、安倍政権では、「この法案は移民法ではない!!」強弁しているのだから、彼らが説明する責務はないと思っているのだろう。いや、そのような態度で、何とか採決さえしてしまえば、と云う腹構えなのだろう。早い話が、50年以上前から判っていた人口減少になり、中小零細企業の労働力不足がひっ迫している事実はあるのだろう。この労働力不足層と自民党支持層はダブルことが多いので、直近の統一地方選の起爆剤として、安倍自民にとっては、喉から手が出るほど欲しい法案なので、強行採決すると云うことだ。

参議院選ではマイナスに響くかもしれないが、先ずは統一地方選で弾みをつけないことには、参議院選で戦えるツールを失うのが安倍政権なのだ。早い話が、政権運営の都合上、「移民制度導入法案」を可決しましたと云うのが本音だ。筆者は個人的には移民制度も悪くないと思うが、その前に、コンパクトな国づくりと云う概念が日本にはないのかなと云う疑問がある。定常経済社会と云う概念では、人口減少が急降下するようでは定常にもならないので、その定常を賄える程度の“移民枠”を国家の意志として国際的に宣言する必要があるのだと思う。

当然、移民を認めるわけだから、明確な規定を設け、移民を受け入れることになる。しかし、今回のハンチョロケ移民導入では、人格が見えてこない。日本社会で、日本人と同等の扱いを受け、日本に来ることで100万円単にの借金などせずに来日して貰う、制度設計が必要ではないか。一旦、移民として受け入れた以上、日本人と同等、或いは、経過的には、それ以上の支援制度をもうけるくらいの度量がないと、世界の労働力獲得競争で、大恥を掻くに相違ない。全然、応募がなかったら、大変に面白いのだが、さてさてだね。


 ≪(社説)入管法改正案 与党は一度立ち止まれ
 国会の自殺行為ではないか。
 出入国管理法改正案の衆院通過に向けて、自公両党が突き進んでいる。きのうは自民党の委員長が職権で法務委員会を開催し、野党欠席のまま議事を強行した。27日の本会議で一気に可決して参院に送る構えだ。
 朝日新聞の社説は、外国人労働者の受け入れ拡大に反対しているのではない。だが従来の政策を大きく転換するのだから、相応の覚悟と国内の態勢の整備が当然求められる。さまざまな観点から議論を重ね、疑問や懸念を消していかなければ、将来に大きな禍根を残す。
 ところが与党は、月末から安倍首相が外遊するので、とにかく急がなければならないと繰り返す。国会は首相の都合で動く下請け機関なのか。
 そもそも審議がスムーズに進まない原因をつくっているのは政府自身ではないか。
 外国人をどんな業種に、どれほどの規模で受け入れるのか。制度の根幹に関わる話なのに、政府が見込み数などを示したのは、本会議で趣旨説明がされた後だった。しかも根拠の妥当性は今もって不明だ。
 新設される「特定技能」資格と、現にある技能実習制度との関係も依然はっきりしない。
 政府は、新資格者の約半分、業種によっては全員が技能実習から移ってくる見通しだという。密接な関係にあるのは明白なのに、山下貴司法相は「二つは異なる制度で密接不可分ではない」と言い張り、実習制度が抱える問題の精査を拒む。
 かと思うと、改正法の成立・施行を急ぐ理由を問われて「来年4月より遅れれば、万単位の方々(実習生)が帰国してしまうから」と答える。支離滅裂ぶりは目を覆うばかりだ。
 信じがたい答弁もあった。
 日本で永住許可を得られる条件の一つとして、就労資格を持って5年以上在留することが定められている。だが法相は、特定技能の資格で働く最初の5年間は、この期間に含めないことを検討していると述べた。
 労働者だが「就労」はしていない。そんな話が通用するだろうか。新制度は移民の受け入れではないという無理な説明が、さらなる無理を生み、収拾不能に陥っている。
 日本語教育を始めとする支援態勢をどう整えるか。自治体の役割は。政府が約束する「日本人と同等以上の賃金」をどうやって保証するのか。これら重要な論点についても、国会ではまだほとんど審議されていない。
 立ち止まって議論を尽くす。その見識を与党に求める。
 ≫(朝日新聞2018年11月23日付社説)


外国人労働者受け入れを問う (岩波ブックレット)
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岩波書店

 

正義とは何か-現代政治哲学の6つの視点 (中公新書)
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中央公論新社

 

崩れる政治を立て直す 21世紀の日本行政改革論 (講談社現代新書)
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●ゴーン逮捕に思う 日本の人質・中世司法制度に世界驚がく

2018年11月26日 | 日記
青年市長は“司法の闇”と闘った 美濃加茂市長事件における驚愕の展開
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KADOKAWA

 

増補版 国策捜査 暴走する特捜検察と餌食にされた人たち (角川文庫)
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角川書店

 

日本版「司法取引」を問う
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旬報社


●ゴーン逮捕に思う 日本の人質・中世司法制度に世界驚がく

 今や、天下の大悪党扱いされている、まっ黒くろ助のゴーンさんだが、この問題は、注意深く観察する必要がある。先ずは、東京新聞の社説を読んで貰おう。


≪巨額報酬の闇にメスを ゴーン会長逮捕  
日産自動車のゴーン会長らが逮捕されるという衝撃的な事態が起きた。日産を救った人物だが巨額の報酬を過少記載していたという。格差拡大の中、富裕層に闇があるならメスを入れるべきだ。
 世界的なタイヤメーカー、ミシュランで頭角を現したゴーン容疑者は、フランス自動車大手、ルノーの役員を経て一九九九年、経営危機に陥っていた日産に乗り込んだ。工場の閉鎖、子会社の統廃合など、それまで日本人の経営陣ができなかった立て直し策を次々実行し、数年で経営を立て直した。
 「コストキラー」の異名を持ち、米経済誌が「最強の事業家の一人」と持ち上げた。以来、ゴーン容疑者は日産、ルノーのほか三菱自動車の経営トップにもなり、世界的な経営者として君臨した。
 その人物が長年、自分が得ていた巨額報酬を有価証券報告書に過少に記載していたと指摘されているもようだ。事実なら、あまりにショックが大きい。
 経営危機の際、日産は取引先を含め塗炭の苦しみを味わった。ライバルのトヨタ自動車に大差をつけられ辛酸をなめた。それを助けたのがゴーン容疑者だ。彼は社内では可能な限り日本語を使い、「信じてください」と呼び掛けた。社員は意気に感じただろう。
 その人物が裏切っていたとしたら、共に立て直しに頑張った社員や関連会社の人たちはどう思うのだろう。
 著書「21世紀の資本」で格差について警鐘を鳴らしたフランスの経済学者トマ・ピケティ氏は、金持ちに対する所得の累進課税を以前のように強化し、株式や不動産などあらゆる資産に対しても価値の大きさに応じた課税を導入すべきだなどと主張している。
 日本ではかつて所得税の最高税率は国税と地方税合わせ90%超だった。しかし、今では最高税率は55%にまで引き下げられた上、金融所得に対しては分離課税で一律20%と、富裕層にかなり有利な税制になっている。
 さらに最近、パナマ文書などで日本を含む世界の富裕層が巧みに課税逃れをしている実態も分かってきた。
 富裕層はどこまで貪欲なのか。これが一般の人々の正直な感想だろう。人生で、ゴーン容疑者が得ていたような年十億円以上もの所得は必要なのか。格差の著しい拡大は人々の心を傷つけ、働く意欲をそぐ。  今回の事態を、不条理な経済格差是正の突破口としたい。
 ≫(東京新聞2018年11月20日付社説)


当該社説の言う通り、超富裕層に対する累進課税率は90%から55%まで引き下げられ、金融所得は、分離課税扱いで、一律20%と優遇されている。また、法人税も大きく引き下げられている。金持ちぼろ儲け状態の日本の税制だが、欧米の金持ち国に右に倣えしたのだと言える。市場原理主義とグローバル経済下において、競争するために必要なツールだと云う経済学者や経産・財務省の考えなのだろうが、その減少分は消費税と年金支給減少と財政出動・金融政策と乗り切ろうとしているのが、現在の日本だ。

当該社説は、その問題と、ゴーンさん逮捕劇を無理やりくっつけようとして、情緒的観念も交えて、あらぬ方向に話を持って行こうとしている。まぁ、超富裕層への優遇税制問題は、あらためて、項を別にして議論すべきだと思う。たまたま、この社説の筆者は、優遇税制問題が頭に浮かんだのだろうが、問題は、情緒を排して、カルロス・ゴーンさんの東京地検特捜の逮捕劇そのものに、スポットを当てるべきだ。だいたいが、有価証券報告書の虚偽記載容疑だと地検がリークしているが、有報の虚偽記載容疑であれば、財務担当役員や監査法人の問題であり、ゴーンさんの直接の容疑にはなり得ない。

現時点では、検察と日産のリーク情報を元に、新聞テレビが面白おかしく報道しているわけだが、法廷のおける検事と弁護士と云う立ち位置でいえば、検事の言い分だけが、被告の人格を決定づけるような按配で進められているわけで、本来であれば、報道を自粛し、逮捕事実が明確になるのを待つのが正道だ。陸山会事件の地検特捜の秘書逮捕劇以降、小沢一郎がまっ黒くろ助になった事件を、よもや忘れてはいないだろう。あの事件の結果、菅直人、野田佳彦、安倍晋三と、我が国は、行き先のわからない、トンデモ列車に乗せられているではないか。

中世司法を意識しているであろう政権及び法務省・検察は、籠池夫妻のように長期勾留と云う選択はせずに、短期にゴーンさんやケリーさんを保釈するのではないかと推量する。まぁ弁護士に、ヤメ検の大鶴基成弁護士を指定したので、早々に、異なる弁護団を組織しないと碌なことになりそうもない。この大鶴弁護士は検察時代、疑獄事件と言われるゼネコン汚職、日歯連ヤミ献金事件、ライブドア事件、佐藤栄佐久福島県知事事件、陸山会事件と事件を作る検事として名を馳せた。事件を作るのは上手だが、事件を弁護するのは、どうなのだろう?

チョイと横道にそれたが、筆者は個人的に、今回の東京地検の捜査方法には、多くの疑問を持っている。司法取引云々とも言われているが、どちらかと云うと、闇司法取引だった可能性の方が高いと思う。藤井美濃加茂市長の逮捕劇における闇取引と酷似している。それにしても、現在表に出ているゴーンさんらの容疑は、まさに形式犯であり、交通違反と同様のもので、罰金刑になるのが関の山でしかない。業務上横領として確たる証拠があることを疑わせるが、裏金でも準備させ、ゴーンさんに渡したのなら、地検特捜の逮捕もあるだろうが、裏金を日産がどのように工面したにしても、取締の中に共犯がいるはずだ。

現時点では、ゴーンさん逮捕劇の白黒はまったく予想できず、報道すること自体がメディアリテラシーから言ってもフェアーではない。このような人質司法(自白主義)が国際的注目を浴びることは、我が国の司法が中世の司法制度に近いと云う事実を世に知らしめる意味では、国際人を逮捕したことは、皮肉だが意義がある。目的がカルロス・ゴーンさんを日産の代取でなくすことが目的で、ルノーの合併を阻止するためであったなら、まさに国策捜査そのものだ。ゴーンさんらに何ら感情移入のない筆者にしてみれば、彼らの裁判を通じて、日本の司法制度の醜悪さが、国際的に知れ渡ることにおおいな期待を持っている。まぁ、それにしても、累進課税は強化すべきだ。英語の話せぬ高齢富裕層が日本から逃げるなど、妄想だ!


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●米中新冷戦構造 はずれコラムを書き続けるH氏のご託宣

2018年11月24日 | 日記


●米中新冷戦構造 はずれコラムを書き続けるH氏のご託宣 

誰にでも、肌合いの悪い人間がいる。筆者にとって、その人物は長谷川幸洋氏だ。彼の物言いが、まったくもって気に入らん(笑)。正直、同氏が聡明な人物なら、上から目線も許されるだろうが、聞きかじりの知恵を振りかざし、相手に対する高圧的もの言いや、取って着けたような屁理屈の論評には、ホトホト参っている。しかし、不思議なことに、同氏のコラムなどに出遭うと、今度は、どんな嘘を書いているか、ついつい読んでしまう。もしかすると、筆者は、同氏の隠れファン(ホリック)になっているのかもしれない。先ずは、似非論者H氏のコラムを読んでみよう。


≪米国が本気で進める、米中新冷戦「新マーシャル・プラン」の全貌
北方領土問題とも無関係ではない
 ■米ソ冷戦下の「援助計画」に酷似
米国の「中国包囲網」作りが急ピッチで進んでいる。トランプ政権はインド太平洋諸国の社会基盤(インフラ)整備に、最大600億ドル(約6兆8000億円)の支援を決めた。米ソ冷戦下の欧州復興計画(マーシャル・プラン)を思い起こさせる。

支援計画は、来日したペンス副大統領と安倍晋三首相との会談後の記者会見で発表された。会談では、日本が100億ドルを上乗せすることで合意し、支援総額は最大700億ドル(約7兆9000億円)になる。各国の発電所や道路、橋、港湾、トンネルなどの整備に低利融資する。

これはもちろん、中国の経済圏構想「一帯一路」を念頭に置いている。中国は各国のインフラ整備に巨額融資する一方、相手国の返済が苦しくなると、借金のかたに事実上、取り上げてしまうような政策を展開してきた。スリランカのハンバントタ港が典型だ。

ペンス氏はこれを「借金漬け外交」と呼んで、批判してきた。今回の支援計画には、そんな中国による囲い込みをけん制する狙いがある。「自由で開かれたインド太平洋」というキャッチフレーズは、まさにインド太平洋が「中国の縄張り」になるのを防ぐためだ。

この計画を米国がいかに重視しているかは、なにより金額に示されている。ポンペオ国務長官は7月、インド太平洋諸国に総額1億1300万ドルの支援を表明していた(https://jp.reuters.com/article/usa-trade-indian-ocean-china-idJPKBN1KK1W4)。それが、なんと一挙に530倍に膨れ上がった。こう言っては失礼だが、ケチなトランプ政権としては「異例の大盤振る舞い」だ。 支援の枠組みも一新した。

この話をいち早く特ダネとして報じた読売新聞(11月10日付朝刊)によれば、それまで米国の海外支援は国際開発庁(USAID)と海外民間投資公社(OPIC)の二本立てだった。ところが、10月に海外支援を強化するビルド法(BUILD)を成立させ、国際開発金融公社(USIFDC)に一本化した。そのうえで、新公社に600億ドルの支援枠を設けた、という。

10月といえば、ペンス副大統領が中国との対決姿勢を鮮明にする演説をしたのが10月4日である(10月12日公開コラム、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57929)。その後、ペンス氏の来日に合わせて、日本の協力もとりつけたうえで計画を発表した。

ペンス演説から1ヵ月という動きの速さに注目すべきだ。本当の順番は逆で、トランプ政権は水面下で支援の枠組み作りを先行させ、メドが立ったのを確認したうえで、ペンス演説を世界に発信したのかもしれない。それほど、手際の良さが際立っている。

そうとでも考えなければ、わずかな期間で支援額を530倍にするような芸当は難しい。

支援額と発表のタイミングから、私は米ソ冷戦下の欧州復興計画(マーシャル・プラン)を思い出した。1947年6月、当時のマーシャル米国務長官が戦争で荒廃した欧州の復興を目的に発表した大規模援助計画である。

 ■「冷戦のセオリー」通りの展開
米国は1951年6月までに、ドイツやフランス、オランダ、イタリアなど西欧諸国を対象に、総額102億ドルに上る食料や肥料、機械、輸送機器など物資と資金を提供した。マーシャル・プランなくして、西欧の復興はなかったと言っていい。

マーシャル・プランは単なる経済援助ではなかった。チャーチル英首相の「鉄のカーテン演説」(46年)から始まりつつあった「ソ連との冷戦」を戦う仕掛けの一つだった。自由な西欧を早く復興させ、米国とともに東側の共産勢力と対峙するためだ。

クリントン元大統領が1997年のマーシャル・プラン50周年記念式典で明らかにした数字によれば、102億ドルの援助額は現在価値にすると、880億ドルと見積もられている。偶然かもしれないが、今回の700億ドルは当時の援助額にほぼ匹敵する数字である。

チャーチル演説から1年後のマーシャル・プランと、ペンス演説から1カ月後のインド太平洋支援計画というタイミングも、まさに「歴史は繰り返す」実例を目の当たりにしているようだ(チャーチル演説など米ソ冷戦との比較は10月26日公開コラム参照、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58138)。

トランプ政権はあたかも、かつて米国がソ連相手に展開した「冷戦のセオリー」にしたがって、政策を打ち出しているかのように見える。そうだとすれば、これから何が起きるか。

経済援助から始まったマーシャル・プランは、次第にソ連を封じ込める軍事援助の色彩を強めていった。同じように、先の読売記事によれば、今回のインド太平洋支援計画も支援対象を「外交・安全保障政策上の理由から戦略的に選べるしくみとなった」という。

トランプ政権は当分、認めないだろうが、支援計画は次第に「中国封じ込め」の色彩を濃くしていく可能性がある。

ペンス演説は中国との対決姿勢を鮮明に示していたが、トランプ政権は公式には「中国との冷戦」や「封じ込め」の意図を否定している。たとえば、ポンペオ国務長官は11月9日、ワシントンで開いた米中外交・安全保障対話終了後の会見で「米国は中国に対する冷戦や封じ込め政策を求めていない」と語った。

だが、それを額面通りに受け止めるのはナイーブすぎる。私はむしろ、国務長官の口から「冷戦」「封じ込め」という言葉が飛び出したことに驚いた。言葉の上では否定しながら、それが世界の共通理解になりつつあることを暗に認めたも同然だ。

安全保障の世界では、国家の意図を指導者の言葉ではなく、実際の行動で理解するのは常識である。トランプ政権の意図は国務長官の言葉ではなく、中国の「一帯一路」に対抗するインド太平洋諸国への大規模支援計画という行動に示されている。

 ■南シナ海は「中国の縄張り」に
一方、中国はますます強硬になっている。
米国は米中外交・安保対話で南シナ海の人工島に設置したミサイルの撤去を求めたが、中国は応じなかった。2015年9月の米中首脳会談で、習近平国家主席が「軍事化の意図はない」とオバマ大統領に言明した約束を守るようにも求めたが、中国側は「外部からの脅威に対抗する施設も必要だ」と開き直った。

それだけではない。 11月14日付読売新聞によれば、中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国に対して、南シナ海で外国と軍事演習するときは、事前に中国の承認を求めている。要求は中国とASEANが検討中の南シナ海における行動規範の草案に盛り込まれた、という。

草案が採択されたら、南シナ海で米国や日本とASEAN加盟国の軍事演習は事実上、難しくなる。南シナ海が中国の縄張りになったも同然だ。

米ソ冷戦下では、マーシャル・プランの後、1950年1月から対共産圏輸出統制委員会(COCOM)が活動を始め、東側諸国への軍事技術や戦略物資の輸出が禁止された。

米国は8月、情報漏えいの恐れから国防権限法に基づいて、米政府及び政府と取引のある企業・団体に対して、中国政府と関係が深い通信大手、HuaweiやZTE製品の使用を禁止した。この延長線上で、中国への輸出を規制する「中国版COCOM」の策定も時間の問題ではないか。

以上のような米中のつばぜり合いを目の当たりにしても、日本では、いまだ米中新冷戦を否定し「貿易戦争は妥協の決着が可能」といった楽観論が一部に残っている。おめでたさを通り越して、ピンぼけというほかない。

現実を真正面から見ようとせず、願望混じりの現状認識が日本を誤った方向に導くのだ。

■米中新冷戦とロシアの思惑
さて、ここまで書いたところで、北方領土問題についてニュースが飛び込んできた。安倍晋三首相が11月14日、シンガポールでロシアのプーチン大統領と会談し、1956年の「日ソ共同宣言」を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した、という。

日ソ共同宣言には、平和条約を締結した後、歯舞、色丹の2島を日本に引き渡すと明記されている。したがって、平和条約が結ばれれば、北方4島のうち、少なくとも歯舞、色丹は日本に戻ってくることになる。 ここに来て、日ロ交渉が前進しているのはなぜか。

私は、最大の理由はここでも「米中新冷戦」にある、とみる。11月2日公開コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58279)で指摘したように、ロシアは中国を潜在的なライバルとみている。中国が米国とガチンコ対決に入るなら、ロシアは逆に米国に接近する可能性があるのだ(この点は月刊『WiLL』12月号の連載コラムでも「米中冷戦で何が動くのか」と題して指摘した)。

その延長線上で、ロシア側には日本とも関係改善を図る動機があった。それが、今回の平和条約交渉加速につながっているのではないか。

9月14日公開コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57520
に書いたように、北方領土問題の最大のハードルは「返還された領土に米国が米軍基地を置くかどうか」である。つまり、米国が問題解決の大きな鍵を握っている。

だが、その米国が中国を最大の脅威とみて「戦う資源」を中国に集中させていくなら、北方領土に米軍基地を新設して、わざわざロシアとの新たな火種を作る必要はない。安倍首相もプーチン氏も、そんな安全保障環境の新展開を受けて、交渉加速を合意した可能性が高い。
東アジアはまさに大激動の局面を迎えている。
 ≫(現代ビジネス:国際―長谷川幸洋)



かなりの点で、H氏がCIA新聞(読売新聞)に頼っている点が明確になった。また、今さら歴史の教科書を引っ張り出して、マーシャル・プラン(1948年―1951年)などの事例を持ちだしたのには、のけぞった。H氏の脳内は、米国の覇権が揺らいでいる事実を無視した時点で、終わっている。無論、腐っても鯛なのは事実だが、時間経過を通して、残念ながら欧米的勝利の方程式は終わりに向かって動いている。H氏は残念なことに、この事実に、完全に目を瞑っている。既得権益擁護論者のH氏にとって、米国の凋落は、絶対に認めないと云う開き直りが原点だと白状している。


1948年当時の、瓦礫しか残っていなかった、ナチスドイツに蹂躙された欧州の状況と、今の東アジア、ASEAN諸国の状況はまったく異なる。グローバル経済の上で、市場的にも、生産拠点としても、終着点と言われている、2018年時点の、これらの地域を同一種類の環境だと思い込む時点でアウトだ。また1948年当時のアメリカは、唯一戦火を逃れた全盛国家であり、トランプのような大統領を輩出せざるを得なくなったアメリカとは、雲泥の差である点を、まったく無視している。愚かな話だ。

ポンぺオ国務長官が発した「米国は中国に対する冷戦や封じ込め政策を求めていない」を額面通りに解釈するのはナイーブだと断じて、米中冷戦を望んでいるような論説になっているが、それはH氏が、米中冷戦構造を希求しているからに相違ない。最近筆者は、反中、嫌韓の色彩の強い本を何冊か読んでみた。書いてある内容はフェイク情報や嫉妬妬みな感情が溢れていて、読むに堪えない面も多いが、漢文的に、“反中“ ”嫌韓“という意味は当たっているようだ。

韓国に対しては ”参ったね~“と云う呆れた感情に多くの点で納得だが、中国には対しては、歪んだ感情が溢れている。H氏にも、その傾向は強く、中国への妬み嫉みが感情的に植えつけられているようだ。反中国論を展開することを生業にしている感がある。工業国として、輸出する製品を多く持たないアメリカは、輸出出来るものは、武器と農業製品、医薬品だが、冷戦構造か、戦争でも起きない限り、中国経済の独り勝ちはほぼ確定している。CIA的言説論者であるH氏などは、最近では行き場のない論客になりつつあると言ってもいいのだろう。北方四島が云々の話で、米ロ接近の話も付け足しのように書いているが、単に同氏の願望と受けとめておくことにしよう。

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●経済大国の過去を捨て 現実的で合理的な国家像とは

2018年11月23日 | 日記
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●経済大国の過去を捨て 現実的で合理的国家像とは

外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が、今月中にも成立する可能性が高くなっている。最も、外国人労働者の受入れに前向きであろう日経新聞の社説を読んでみた。社説に書いているような議論はなされず、法務官僚と経産官僚の作文を、“め●ら判”よろしく、安倍政権は強行採決しようと企んでいる模様だ。どんなに法案に不備があっても、現行の技能実習制度を残したまま、見切り発車しようとしている。

東京などに住んでいる者の多くは、生活実感として、コンビニ、外食、介護、建設現場等々において、外国人労働者が働いている姿を見ているので、経済界から、人手不足の悲鳴が、政権に届いているのが実情なのだろう。来年の統一地方選や参議院選を、少しでも有利に戦うためには、この法案の成立は、安倍政権の死活問題になっていることが、よく判る。選挙を有利に展開したい安倍官邸の喫緊の課題なのだと理解すべきだ。ゆえに、法案の中身の詮議は、無意味だとも言える。実際問題、このような法案の成立が、安倍政権の思惑通り、選挙に有利に働くかは不透明で、逆効果の可能性もおおいにあるのだが。

野党側の指摘する問題が火を噴くのは、安倍晋三が、総理の座を3年無事経過した後に生じる弊害だろうから、痛くも痒くもない法案の欠点なのである。安倍政権の成立させた法案や経済政策の多くは、安倍晋三が、ただの山口県出身の元総理になった後に副作用や後遺症が生じるものが多いようだ。それゆえに、安倍晋三は「今だけ金だけ自分だけ」と揶揄されるのも納得だ。いま世界は、自由貿易経済、保護貿易経済か鬩ぎあいがスタートしたわけで、今までの自由貿易とグローバル経済に疑問の声が上がりはじめていると云う事実を無視出来る状況にあるとは思えない。

日経新聞の社説では、“日本の成長基盤づくりにつながる重要法案”と決めつけているが、日本の成長基盤と云う前に、“日本の成長”の是非と云う議論もしないままに、成長しなければならないと、「信仰」のような地点から論が進められている。

本質論として、日本にとって、成長すると云う意味は、どうも経済成長すると云う一点突破な考えに収斂されているようだが、問題は、本当にそうなのか?と云う問題だと思う。少子高齢化構造の国家においては、合理的に、あり得ない妄執の世界に引き摺り込まれている感が否めない。国の価値を経済的豊かさに求めるとしても、それがイコール経済成長と同一線上にあると決めつけるのは、短絡的に過ぎるのではないだろうか。


行政を預かる総理大臣としては、或いは選挙で勝ち抜き生き残る立法府の政治家にとっては、メディアの経済至上主義言説により、守銭奴う根性に蝕まれている、彼ら(有権者)の要望に応えないことには、政治家ではなく、只の人になると云う悪しき図式がまかり通っている所為なのだろう。その意味では、政治とは、与野党問わず、経済至上主義者で、時折、国家主義者や人道主義者になる厄介の国民のニーズに応えようとするのだから、碌な政治が行われないのは当然だ。しかし、これが民主主義であり、愚衆政治に 繋がるのだろう。

では政治に期待できない国家像は、いつ、どのようにして生まれるのか、とんと見当がつかない。日本において、哲学者や社会学者や宗教家が、これからの日本の国家像を提示できるだけの環境はまったくない。一部に、それなりの主張はあるものの、メジャーな広がりを見せる気配はない。個人的には、定常社会、或いは下降経済下でも生き残れる国家像を見出すことは可能だと考えている。経済成長神話は、一時期(バブル崩壊、リーマンショック、原発事故等)バッシングを受けたが、既得権益層の逆襲により、早々に元のさやに戻ったわけだが、既得権益層の牙城は堅牢だ。容易なことでは崩せないだろう。

しかし、このような堅牢な既得権益層も、いずれは一敗地に塗れ、日本軍のように総崩れになるのも、時代の要請だと考えている。総崩れするまで、国民は誤った道をまっしぐらに政治家の号令の下、走らされるが、最終的には、ぐうの音も出ない状況で、肌感覚で諦めると云うのが現実なのだろう。

ただ、20代、30代の人々の中に、退廃的な国家観があるのは、残念なようだが、実は、幸運の兆しだと考えている。経済力でしか、国の価値を勘定できない人間から見れば、それは“負け犬根性”なのだが、案外、日本のこれらからの付加価値を高める駆動力になるのではないかと、淡い期待を抱いている。我々は、日本の現状と、20年後だけを考え、ジャパン・アズ・NO1を忘れよう(笑)。



 ≪社会不安招かぬ外国人政策へ議論深めよ
外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が、13日の衆院本会議で審議入りする。日本の成長基盤づくりにつながる重要法案だが、問題は社会不安を防ぐ手立てを含めた新しい制度の全体像がみえないことだ。明確な説明を政府に求めたい。

介護、建設、農業など14業種が対象の「特定技能1号」、熟練者を想定した「同2号」の新たな在留資格について、取得するための能力基準は曖昧なままだ。家族の帯同と長期滞在を認める2号の対象業種と併せ、はっきり示さなければ議論は深まらない。

政府は人手不足の状況に応じ、業種ごとに外国人労働者の受け入れの停止を判断するとしている。肝心なのは、何を根拠に判定するかだ。日本人の雇用への悪影響を防ぐため、外国人の受け入れの調節は重要になる。具体的な方法を政府は明示すべきだ。

先進国では外国人労働者の受け入れにあたり、一定期間求人を出して国内では充足されないことを確認する、といった労働市場テストが普及している。こうした仕組みを取り入れるべきだろう。

問われているのは、社会に混乱を起こさず外国人の受け入れを広げる、責任ある政策である。

低賃金で外国人労働者を雇う企業が増えれば、国内労働者の待遇も悪化しかねないとの指摘がある。低賃金の労働力に頼って生産性向上が遅れるのを放置しないためにも、外国人の労働条件の監視を強める必要がある。

とりわけ国会審議に求められるのは、外国人が日本で支障なく生活するための環境整備の議論だ。今回の法案が従来のようなその場しのぎの受け入れ策ではなく、正面から外国人労働者を迎え入れるためのものであるなら、生活支援はより重要になる。

日本語学習や住宅の確保、子どもの就学などの支援策に関して、議論を尽くす必要がある。

社会保障をめぐっては、外国人が母国にいる家族を健康保険の被扶養者にし、家族が母国で使った医療費を日本の健保に請求する悪質事例もある。厚生労働省は扶養家族に日本国内の居住という要件を設ける検討をしている。こうした社会保障制度の持続性を考えての見直しは妥当だろう。

違法残業などが後を絶たない技能実習制度をこのまま続けることには問題がある。抜本的な見直し作業も並行して進めるべきだ。  

≫(日本経済新聞2018年11月13日付社説)


日本政治史 -- 外交と権力 増補版
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福祉政治史: 格差に抗するデモクラシー
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●北方領土を契機に考える 情緒的な領土拡張は必要か?

2018年11月22日 | 日記
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●北方領土を契機に考える 果たして領土拡張は得策か?

以下は、朝日新聞の北方領土2島返還と日ロ平和条約についての、自己主張なき“社説”である。 最終的に、4島返還に拘れと言っているように読めるが、何がなんでも4島一括でなければならないとも。今までの日本の主張と異なる解決の道筋だから、気に喰わんと言っているようにも見える。 しかし、日露平和条約の締結の条件が、2島なのか4島なのか、解散して信を問えと主張しているようにも読める。つまり、問題点を羅列しただけで、朝日の主張がどこにあるのか、さっぱり判らないのだ。

そもそも筆者は、北方4島返還に関して、それほどの興味自体がない。いや、領土の返還や拡張そのものに、国の重大性を見ることが出来ないと思っている。 この考えに賛同してくれる人々が多いとは思っていないが、観念上、領土が大きいことが、国として、或いは、その国に住む国民にとって、扱いやすい案件かどうかと考える時、単なるナショナリズムの惰性に依ることなく、時代や、国の状況を含んだ合理的考えも考慮に入れるべきと考える。

しかるに、日本と云う国は、北海道や沖縄と云う領土を充分に活用し、そこに住む人々にも、充分な政治行政を行き渡らせているのか、そこから考えを巡らす必要があると思うわけだ。 本州に比べれば、四国、九州、その他の島々に、充分な政治行政を行き渡らせているのか、胸に手を当て考えるべきだ。都市と地方の格差問題にも解決の道は示されていない。 極論すれば、領土である以上、防衛しなければならなくなる。尖閣諸島が、あのザマだったことをよもや忘れてはいない筈だ。

まして、少子高齢化で、経済界の足元の人手不足問題の解決策として、泥縄式に“移民容認”の方向に、完全と舵を切ろうとしているではないか。 沖縄や北海道さえも持て余し気味の我が国が領土をあらためて入手することは、その領土には、それなりの人材や労働力が必要になるわけだが、ロシア人に移民の誘いを企てるつもりなのだろうか。 ロシアのプーチン大統領がクリミアを併合した話を持ちだす朝日新聞だが、ウクライナ内乱を嗾けたのは、米国CIAである事実は明白であり、プーチンの所為とばかりは言えない事実に蓋をしている。 また、ロシアは、クリミア併合により、多くの資材と投入することとなり、本国の資材投入が減らされたと云う事実にも目を向けるべきだ。

上述の通り、情緒的には、大変喜ばしいような事実関係も、時代によって変容してゆく状況によっては、国家の領土が拡大することは、それ相当の覚悟が必要だ。 尖閣諸島を国有化したことで、日本の中国市場獲得競争は、ドイツに10年近く越されたわけで、無頓着な領土拡張と云う“空気”は、諸刃の剣である。 過去において、朝鮮半島、満州、南方と領土を拡張し、兵站を置き去りにした我が国だ。 意味なく飛び地を領土にすることの弊害を、合理的に論ずる必要も大いに語るべきである。


 ≪(社説)日ロ条約交渉 拙速な転換は禍根残す
 日本とロシアの間には、戦後70年以上にわたり平和条約がない。正常な隣国関係をつくるうえで、領土問題を含めた交渉に力を注ぐことは重要だ。
 ただし、国境の画定と安全保障がからむ重大な国事である。その基本方針を変えるなら、国民と国際社会の理解を得るための説明を尽くす必要がある。
 安倍首相とプーチン大統領が会談し、1956年の日ソ共同宣言を「基礎」として平和条約交渉を進める、と合意した。
 宣言は、大戦後の国交を回復させたもので、北方四島については歯舞(はぼまい)群島と色丹(しこたん)島の引き渡しだけが約束されている。今回の合意は、2島の返還を軸にする意思を確認したといえる。
 日本政府はこれまで、4島の帰属の問題を解決して、平和条約を結ぶ方針を貫いてきた。菅官房長官は、方針に「変わりはない」としつつ、4島すべてを求め続けるか言及を避けた。
 外交交渉の過程で手の内を明かすのは適切ではない。だが少なくとも今回の合意は、日本政府の方針の変化を示している。歯舞、色丹を優先し、択捉(えとろふ)、国後(くなしり)は将来の課題とする「2島先行」方式に、安倍政権は踏み込もうとしているようだ。
 はっきりさせておきたい。条約を結ぶ際に、「2島返還、2島継続交渉」といったあいまいな決着はありえない。国境を最終画定させない「平和条約」は火種を先送りするものであり、両国と地域の長期的和平をめざす本来の目的にそぐわない。
 妥協の道を開くには、現実を見すえた一定の柔軟さは求められるだろう。しかし4島の要求は、国会も繰り返し決議してきた。19世紀に帝政ロシアとの平和的な交渉で、日本領だと認められたという歴史を主張の基盤としてきた。
 その方針を変えるとすれば、なぜか。国民が納得できる説明をするのは当然の責務だ。日本が対外的に発する様々な主張の信頼と正当性にもかかわる。
 その点でこれまで安倍首相が続けてきた不十分な説明姿勢には、不安を禁じえない。
 「新しいアプローチ」などを掲げて対ロ交渉を演出してきたが、実質的な進展はなかった。その末にプーチン氏に領土問題棚上げを突きつけられ、窮したなかでの「2島」論である。
 首相が残り任期をにらみ功を焦っているとすれば危うい。
 ロシアは4年前、自ら認めた国境を無視してウクライナのクリミア半島を併合した。その国といま、平和条約を結べば、国際社会からどんな視線を受けるかも留意すべきだろう。
 ≫(朝日新聞2018年11月16日付社説)


機密費外交 なぜ日中戦争は避けられなかったのか (講談社現代新書)
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国権と民権: 人物で読み解く 平成「自民党」30年史 (集英社新書)
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FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実
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●本質論が抜け落ちた国 空気で右往左往してどうなる?

2018年11月21日 | 日記
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矛盾社会序説
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言論の飛礫(つぶて)不屈のコラム
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●本質論が抜け落ちた国 空気で右往左往してどうなる?

国であれ、人であれ、本質と云うものは、簡単に究明出来るものではない。政治、特に民主主義、自由主義、資本主義、ナショナリズム‥等、概念的ものごとを考えること、多くの日本人は不得手である。スペイン、イタリア、フランス、ロシア映画などを観ていると、哲学概念的な言葉が、市井の人々の口から聞かされる。このような映画の1シーンは、敢えてシナリオで創作しなくても、自然と日常的に人々の口からもたらされていると云うことだろう。この哲学的引用が、邦画においては不自然になる。それは、日本人の日常に、哲学的概念が乏しいことを意味しているのだろう。

いや、小津安二郎時代の映画では、江戸から明治期の格言などがスクリーンの一部で表現されているが、ほんのわずかだ。ネット言論などを眺めていても、多くは感情論であり、よく表現しても観念論的要素が強い。共同体としての社会が充実している、いないと云う理由で、概念が強いか、観念が強いかの別れ道が出来ると云う考えも、かなりの点で納得出来ない。個人的な感想だが、堅牢な石造りの家と、木造の家と云う生活様式の違いが、概念性と観念性の違いに繋がっているのではないかと、勝手な解釈をしている。

何百年も続く石造りの家や堅牢な家具を愛する人々と、スクラップビルドする必要が生じる、木、皮、草などで家を作る人々の間に、文化の違いが生まれても、何らおかしくはない。国民性の違いを、こんな一括りの要因で決めつけるつもりはないが、これらの国の人々の文化や思考は、違っていて当然なわけで、相似性を探す方が、よほど難しい。昨日終了したAPECにおいて、1993年以降で初めて、首脳宣言をすることが出来なかった。米中の原則論が衝突したわけだが、国を愛する民がある限り、そして、彼らの情念や劣情であったとしても、そこに意思があるわけで、見過ごすわけにはいかない。

このような世界観のようなものを認める限り、異なる国家、民族、宗教、歴史などの違いを乗り越えて、多くの価値を共有しようと云う理想的考えには、どこかひ弱さと欺瞞を感じる。そのような共通認識が創出されることは理想的ではあるが、どこまでいっても夢物語のようである。国際連盟も国際連合等が有名無実化したのも肯ける。世界を網羅するものとは言いがたい。一定の価値の共有レベルであれば、その連携の成立は有効性があるのだろうが、ウィングを拡げた途端おかしくなる。APECなどは、アメリカが太平洋を跨いで、一国だけ参加するから、妙な話ばかり繰り返される。

まぁ、APECにしても、経済的思惑で協力しようと云うだけのことなので、共通認識を持つといっても、経済目的で限定的だ。金儲けをしようと云うことで、文化の違いを乗りこえられることはあるが、そこに国家、民族、宗教、歴史等の観念論が入り込むと、途端に破綻する。オバマ時代が過ぎ、お伽話デモクラシー時代にピリオドが打たれ、トランプ、習近平、安倍、プーチン、ネタニャフ、エルドアンといった独裁的資質を所持する指導者が生まれている事実も、経済的強力のみで、グローバル世界を包括的に束ねることの困難さを示している。

11カ国を束ねてTPPだと嘯く安倍政権だが、実態は、日米FTAを結ばされ、将来的に雁字搦めになるのは確実な情勢になっている。つまり、世界のトヨタが、どんなに頑張っても、技術以外の自動車が主流になる近未来の電気自動車市場は、群雄割拠の部品調達戦争になるのは確実な情勢なのだ。だからと言って、日本が経済的に凋落の一途をたどるとは思っていない。やはりモノ作りや、農産物など、世界と戦えるものは充分に残る。キラリと光るソフト産業、部品製造や農産物生産は充分に残るが、GDP戦争を米中を相手に繰り広げることは、第二次大戦に突入したように、自己像の勘違いが再び繰り返されるのは確実だ。

既得権益の勢力に、媚びへつらうことで政治を動かしている限り、本質論に目を向け、日本の将来像をイメージして、議論し、本質に近づく努力をしない限り、既得権益層のメディアコントロールの波に流され、正論にルートに乗ることはない。米国従属の世界は、50年後には終結しているだろうが、日本人全体が、本質論から逃げている限り、米国の代わりが中国になるだけで、従属国家と云う汚名の十字架は、100~200年背負うことになるか、中国と戦い再度焼け野原になるか、そういうことだ。安倍政権の退場以降、日本の政治シーンに、明るい兆しが見えるかどうかは、腐っても鯛の自民党に変化の兆しが見えるかどうか、そして、共産党、立憲民主党が議席を伸ばせるかどうか、将来を占うことになる。

 *最後になったが、電力行政の問題の本質論を語る、古賀茂明氏のレポートを参考掲載しておく。


 ≪ 古賀茂明「大問題の原子力損害賠償法改正案を国会でこのまま通してはいけない」
 連載「政官財の罪と罰」
 政府は今臨時国会で「原子力損害賠償法改正案」を提出した。

 原子力損害賠償法は、一言で言うと、原子力発電所などで事故が起きた時に、何十兆円、いや百兆円に及ぶかもしれない損害について、誰がどれだけの責任を負うか、そして、被害者救済のための資金をどう確保するかを決める法律だ。 私たちは、福島第一原発事故の際に、東京電力が損害賠償する準備をほとんどしていないことに驚いた。また、東電の株主や債権者であるメガバンクが全く責任をとらない仕組みになっていることに憤りも感じた。

 結局は、政府がいろいろな形で資金援助したり、電力料金として国民が負担することにより、かろうじて被害者救済が進められている。そうした未曽有の過酷かつ理不尽な経験をさせられた後に、原子力事故の損害賠償責任の在り方を見直すのであるから、本来は、国を挙げた大議論が展開されてもおかしくない。もちろん、電力会社による損害賠償への備えを飛躍的に強化するという方向での見直しをすることになる、と誰もが期待するであろう。

 実は、電力会社による損害賠償への備えについては、この法律が1961年に成立して以来、10年ごとに計5回見直しが行われ、電力会社が保険などによって損害賠償に備える義務は毎回必ず強化されてきた(当初の50億円から徐々に引き上げられ、09年には1200億円とされた)。今回は、福島の事故を踏まえた改正だから、上限のない保険契約か10兆円台への大幅引き上げが行われるのではないかと思っていた。

 ところが、今回だけは、電力会社の責任は強化されないことになった。しかも、過去何年も議論を行った審議会の報告書を見る限り、この金額の引き上げについてまともに議論を行った形跡がない。
 この論点一つを取っただけで、いかに今回の改正案がおかしなものかがわかるだろう。
 しかし、国民やマスコミの反応は静かで、今のままでは、ほとんど議論もないまま、衆・参各々数時間の議論だけで法案が通過してしまいそうな情勢だ。 

 ◆事故の損害賠償を東電は払えず、国民が負担している事実

 福島第一原発の事故が起きたとき、本来損害賠償の義務を負っている東京電力は、破たんの危機に瀕した。

 そこで、国が原子力損害賠償支援機構(現在は廃炉も含めた事業を支援する原子力損害賠償・廃炉等支援機構となっている)を作り、国がその機構に資金支援し、機構が交付するお金で東電が賠償金を支払うことになった。また、除染費用も中間貯蔵施設の費用も国が立て替えているし、その他にも様々な面で、東電が国におんぶに抱っこで、損害費用の工面をしているという状況だ。これまでに東電には8兆4000億円を超える資金が交付され、今後これがどれだけ拡大するかもわからない。その資金は、実質的には、東電への貸付金だが、出世払いと同じで、いつまでにいくら返すとは決まっていない。毎年少しずつ、東電と他の電力会社が互助会的なスキームで返済していくが、いつまでに返せるのかはわからない。

 一方で、東電自身は、本来は破たんしていたはずなのに、今では、巨大な利益を上げている。また、東電の株主や、東電への巨額の融資で毎年膨大な利益を出している銀行は、全く無傷のままだ。

◆被害者救済より電力会社のための法律

 この問題を考えるために、まず、「原子力損害賠償法」の内容を解説しよう。
 「原子力損害賠償法」の目的は、法律に「被害者の保護」と「原子力事業の健全な発達」の2つだと書いてある(第1条)。このうち、特に後者が非常に重要なポイントになる。

 次に具体的な内容を紹介しよう。
 不法行為による損害賠償については、普通は民法が適用される。民法では、事故を起こした人に故意または過失の責任があることを立証しなければならないが、原子力事故の場合には、これは非常に難しい。そこで、この法律では、故意過失の有無にかかわらず、電力会社が責任を負う「無過失責任」を定めている(第3条)。
 また、事故の原因が機器や設備の製造者の過失によるものであっても、損害賠償の責任はまず原子力事業者が負うことにしてある。その方が被害者は迷わなくて済む。「責任集中」という制度だ(これも第3条)
 また、これは特例ということではないが、損害賠償金額の上限については、何も書いていない。つまり、損害がある限り、限度額なしで賠償しなければならないという「無限責任」を電力会社に負わせている。
 ただし、電力会社が責任を負わなくても良い「例外」が二つある。 「異常に巨大な天災地変」と「社会的動乱」だ(第3条1項但し書き)。
 次に、この法律は、事故が起きた時に損害賠償を支払えるようにする措置を採る義務(「損害賠償措置義務」)を電力会社などの事業者に課している(第6条)。それをしなければ運転は認められない。

 ところが、その義務が、何と、1200億円の準備だけで良いとされている。前述したとおり、61年の法制定当時の50億円から10年ごとの見直しで引き上げが続き、JCOの臨界事故などを受けて1200億円になった(第7条)。それが、2009年だ。福島事故の前で、「安全神話」が健在の頃。大規模事故のことなど議論されなかったのだろう。

 この1200億円は現金供託でも良いが、実際には他のやり方が認められている。それは、民間の保険をかけて備える方法と国の「補償契約」による方法の併用だ(これも第7条)。補償契約は国が保険を引き受けるようなものである。

 国が引き受ける事故の対象は、地震・噴火・津波と正常運転によって生じた原子力損害に限定されるが、1200億円まで損害の補填に応じる。それ以外の原因による事故の場合は、民間の保険で1200億円までカバーする。

 政府の補償率は0.2%。1基あたり、年間2億4000万円で済む。滅茶苦茶に低い水準の保険料と言える。  1200億円で足りないケースは2011年の福島事故までは生じたことはなかったが、法律では、念のために、国は電力会社が賠償するために必要な援助を行うことになっている(第16条)。

 ここまでが制度の概要だ。

◆原発を維持するために何が必要かと議論を進めてきた政府
 実は、過去数年かけて、原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会では、官僚主導で、電力会社の責任強化を避ける驚くべき議論が行われてきた。

 そこでは、原発「国策民営」論が議論の大前提となるように官僚が誘導し、その考え方は、以下のような形で使われた。

――国が原子力発電を「重要なベースロード電源」と位置付けたので、電力会社はそれに応じて原発を運転しなければならない(『国策民営』。)したがって、事故の時には、電力会社だけでなく国も責任を負うべきだ――

 電力会社は、福島の事故後、原発は安全で安いと主張し、経産省もそれを前提にして、「重要なベースロード電源」と位置付けた。ところが、いったん「重要なベースロード電源」の地位を得ると電力会社は、全く逆のことを言い出す。 「原発を維持するには、事故の損害賠償額が少額に抑えられないとリスクが大きすぎて誰も運転できない。損害賠償の上限を設け、それを超えたら国が責任をとることにすべきだ」というものだ。

 しかし、これは全く矛盾している。本来、非常に安全で、しかも、それが客観的に評価できるはずだという彼らの主張が正しいなら、損害賠償責任保険の上限を無くしても保険料はたいして高くはならないはずだ。それを含めても、原発は他の電源よりも安くならなければ、原発は安いとは言えない。

 もし、保険料が高すぎて、事業として成り立たないというのなら、それは、保険会社が、原発は十分に安全ではないと判断しているということになる。原発は危なくて高いということと同義だ。

 国は電力会社に原発事業を義務付けているわけではない。民間企業として、リスクが大き過ぎて運転できないのなら、経営判断として止めるのは自由。現に、いくつもの原発を廃炉にする決定がなされている。 また、「諸外国では有限責任の国が多い」という意見も出た。しかし、危険過ぎる、あるいは、ごみの処理まで入れればコスト的に合わないという理由で、国が原発を止めている 国もたくさんある。それに比べると、日本の規制は緩い。「無限責任は厳しすぎる」というのは根拠がない。

 原発を動かすために、損害賠償責任を軽くしろというのは、全く本末転倒の議論だ。

◆懸念はなくなったと安心させる高等作戦
 審議会の議論を見ていた私は、政府は、「損害賠償に上限を設ける法改正をしてくるぞ」と警戒した。「無過失責任を止めるという議論も出るかもしれない」「天災地変の際だけでも上限を入れるのではないか」という懸念もあった。しかし、春の統一地方選や夏の参議院選で野党の攻撃材料になるような改正は避けざるを得なかったのだろう。

 実際に出てきた法案は、非常に簡単なものになった。

 その第一の柱は、原発事業者などに、事故に備えて、「損害賠償実施方針」を作成して公表することを義務付けること。

 第二の柱は、事故が起きた後、正確な損害額が確定していなくても迅速に仮払金を払いたい場合には、原発事業者に国がそのための資金を貸し付けること。

 第三の柱は、和解仲介手続きにおける時効中断の関係の技術的な規定の整備。  これらは、少なくともその趣旨に反対するような内容ではない。

 そして、第4の柱は、官僚によって、次のように解説される。 「政府が原発事業者に提供する1200億円の補償契約の規定と原発事業者が1200億円超の損害賠償責任を負った時に政府が支援できるという規定が、ともに10年ごとに期限が来るので、これらを単純に10年延長する。10年ごとの慣例的な改正である」  こう言われると、ああそうですかとなってしまいそうだ。

 多くの議員は、これは大した法案ではないと思って、簡単に国会を通してしまう。このやり方は官僚の常とう手段だ。

 しかも、この法律は、成り立ちの経緯もあって、所管が文部科学省。審議は文科委員会で行われる。彼らは原発のプロではないので、問題意識が希薄である。

 そこが経済産業省のねらい目だ。この法案は、ほんの小さな改正で、改正しないと期限切れになって政府の補償契約ができなくなりますと言えば、すぐに通してもらえると計算しているのだ。

 しかし、ここまでの話を読んでもらえばわかる通り、この法案の最大の問題は、改正する部分にあるのではない。今後、福島のような事故が起きた時に備えた改正をせず、これまでと同じように電力会社を守り、その分を国が肩代わりして、最終的には消費者と納税者に負担させる「仕組みを維持すること」が最大の問題なのだ。

 正しく理解すれば、これを機会に抜本的大改正を行うべきことは自明だ。来年の通常国会までかけてじっくりと議論すべきテーマである。

 ◆目的を変更して上限なしの保険契約を義務付けよ
 では、福島第一原発の事故を受けて、どのような改正を行うべきだろうか。

 私がまず第1に挙げたいのは、法律の目的の変更だ。前述したとおり、この法律では、「原子力事業の健全な発達」がその目的に入っている。しかし、これが理由で、「原子力事業が発達できなくなるなら、少し被害者の救済を抑えよう」とか、「事業者の責任を国が代わりにかぶって国民負担にしてしまおう」という議論を認める根拠になる。現に、これまで国は、東電が潰れないようにすることを至上命題としてきた。そのために、被害者救済を渋ったり、除染の範囲を狭くしたりして、本来なすべきことを大幅に制限してきたのだ。

 したがって、目的から原子力事業の発達を削除し、第1の目的を被害者の救済に絞るべきだ。そのうえで、二次的な目的として原子力事業者のみならず、株主、銀行などの利害関係者の責任の明確化と国民負担の最小化を書き込むことが必要だ。

 次に重要な点は、福島の事故でわかったとおり、ひとたび大事故が起きれば、電力会社には損害賠償を行う資金力がないということだ。その結果、国が尻ぬぐいを強いられ、全く無関係な全国の国民にまでその負担がおよぶことになる。

 事故を前提に「世界最高水準」の規制基準が整備されたことで環境は変わったはずだ。原発の安全性は「十分に確保されるようになった」という政府や電力会社の主張を前提にすれば、民間の保険料はかなり安くなるだろう。原発事業者に、事故の時の損害賠償責任保険を1200億円ではなく、上限なしで民間の保険会社と契約することを義務付けることができるはずだ。  保険料は電気料金に上乗せして、その原発電力の利用者だけが負担することになる。事故が起きれば、民間の保険でカバーされるので、それ以上の国民負担は生じない。

 この方法により、事故の平均的な予想コストが、保険料という形でいくらかわかる。電力会社が言う通り、原発が本当に安いのかどうかが非常に客観的に示されるのだ。

 おそらく、この提案に対しては、何兆円もの損害に対する保険の引き受け手はいないという反論を政府や原発事業者がしてくるだろう。しかし、それは、原発が十分安いという電力会社の主張と矛盾する。それなら、どうして安いと言えるのか。むしろ、高いことの証明ではないのかという反論が可能だ。世界の保険会社の力をもってしても、背負いきれない大きな負担をしてまで原発を動かすメリットなどどこにもない。

 第3に、「異常に巨大な天災地変」は免責という規定も削除すべきだ。今日では、巨大噴火のリスクまで議論されている。また、これまで経験したことのない地震以外の大災害も頻発している。どんな大災害も「想定の範囲内」だ。免責にすべき「異常に巨大な天災地変」などないはずだ。

 その他にも、論点はある。例えば、損害の範囲を広げることだ。除染の範囲を政府が恣意的に縮小する現在の制度はおかしい。さらに、広く環境汚染の被害なども明確に損害として認めるべきだろう。これらを法律で明確化することが必要だ。

 株主や銀行の責任をどうやって問うのかも重要な論点になる。電力会社の破たん処理についても特別な規定を整備すべきだ。

 野党は、上記で述べたような幅広い議論を展開すべきだ。そのうえで、目的変更、上限のない保険契約義務、免責条項廃止という三点セットを含めた抜本的改正案を対案として提出して欲しい。特に、野党第一党であり、脱原発を明確に掲げる立憲民主党に対する期待は大きい。

 国会で、「対案型野党」として、この案を思い切り主張すれば、必ず有権者の強力な支持がえられるはずだ。

■古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。主著『日本中枢の崩壊』『日本中枢の狂謀』(講談社)など。「シナプス 古賀茂明サロン」主催
 ≫(AERA.dot:コラムニスト・古賀茂明:政官財の罪と罰)


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●経済界のオネダリ “入管法改正”は改憲以上の影響力

2018年11月17日 | 日記
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●経済界のオネダリ “入管法改正”は改憲以上の影響力

最近の日韓関係には、関東大震災時には朝鮮人大虐殺の歴史や第二次大戦時の慰安婦問題、徴用工問題が横たわる。その前には日韓併合の歴史がある。これら歴史における恩讐は、様々な取り決めがなされても、韓国から日本は攻撃され続ける。おそらく、この恩讐の歴史は永遠に継続されるもので、終止符はないと思われる。或る日本人は「毟られるだけだ」、「あいつらはゆすりタカリが得意だから」と苦虫を噛み潰す。しかし、ある日本人は「現に酷いことをしたのだから、謝り続けなければならない」と思う者もいる。

個人的には、韓国の世論は、かなり執拗な資質なのだろうな、と云う印象はある。世界標準と比較して、韓国への戦後賠償が不足だったのではないかと云う疑念もある。それこそ、どこよりも多額の賠償費を支払っておけば、国際世論的にも優位に展開するのだろうが、どうも、ケチった傾向が明らかなので、国際比較でも、充分な賠償額だったと、胸を張ることは難しいようである。ネトウヨのフェィク情報では、ドイツは戦後賠償をしていないなどと、FOXニュース並みの情報を平然と報じている。日独の賠償額の差は、地続きと海を隔てた侵略の差があることで、侵略地の面積や数の違いとユダヤ人虐殺が重なるため、日独の賠償額比較論は意味がないのが結論だ。

日独比較論を待つまでもなく、日韓の賠償交渉時の韓国は、当時、朝鮮戦争後でもあり、発展途上国であった。つまり、今の韓国では考えられないほど貧しい国であった。朝鮮特需の日本とは経済的に大差があったわけで、当然、当時の交渉は、日本優位で展開された。問題は、公正公平の立場で、日韓は交渉したのかどうかと云う疑念だ。また、ドイツは戦争責任をナチスに負わせたが、日本は皇軍の頂点である天皇制が残されたことで、責任を転嫁する道が閉ざされていた。しかし、ドイツも東西分裂と云う重荷を背負わされた歴史がある。ただここで言えることは、韓国が日本を侵略して、国土を蹂躙でもしない限り負の歴史として受けとめ続けるのは、日本人としては仕方のないことで、特別逃げる必要はない。個々人なりに歴史認識をするだけのことであり、“べき論”にする問題ではない。

ただ、今回の徴用工問題は、日韓関係のネックになる危険性は充分にある。仮に、朝鮮戦争の終結、韓国・北朝鮮の融和、統合がなされた時、“日本vs朝鮮半島”の対立は先鋭化してくる危険は大いにある。在韓米軍、在日米軍が重しになるので、戦争などは起きないと云うのが主論だが、現在とトランプ大統領の傾向から類推した場合、両国からの米軍撤退の可能性は充分にある。各論においては、米軍撤退は、まことに結構なことだが、総論において、戦争で日本も朝鮮半島も焼け野原になったのでは、各論賛成でも、笑うに笑えない。

本日は、安倍政権が“泥縄式”な経済界の需要に応じて外国人労働者を受け入れる入管法改正は今までの移民政策の方向性を180度変更すると云う話題である。このような国のあり方を大きく変えてしまうような法案を、ろくすっぽ議論もせずに、来年4月には施行を目指すというのは、あまりにも拙速だろう。“人手が足りないから、景気が良いから”と足元だけを見て、政府に強請る(ねだる)のが守銭奴経済界なのだ。バブル期の反省などどこ吹く風で良い気になるのが日本の経済界の特性だ。

今にして思えば、バブル期には、景気は青天井で好くなる筈だから、大卒なら誰でも良いから入社させたのが、日本企業だ。そして、その結果、今になって50代前半の正社員のリストラや出向などの人減らしに躍起になっているのが日本企業だ。おそらく、ここ数年、“人手が足りないから、景気が良いから”と云う理由で雇用された人々も、2,30年後には、無用の長物扱いされるのは目に見えている。日本企業には、経営哲学の乏しい企業が多く、何度でも、労働政策に関して、同様の過ちを繰り返している歴史がある。

企業にとって、人材に世代の断層があることは、成長の継続において重大な瑕疵になるわけで、必要な人材は、世代において万遍なく平均的に雇用すべきで、“人手が足りないから、景気が良いから”が雇用のコア係数にすべきではない。それ程日本企業の経営哲学は欠落している。このような日本企業の、人材や労働者に対する思考に哲学がないことで、徴用工なども生まれたのだと考える。日本人よりも低賃金で奴隷のように働かせることが出来ると考えた結果、短絡的雇用政策が、何の躊躇いもなく行われたのだろう。

徴用工と同様に、今日の日本で、怪しげな「技能実習制度」を悪用した悪質な外国人雇用がまかり通っている。まともな雇用者もいるだろうが、悪用を知りながら、見てみぬ振りする日本政府の態度は、徴用工や慰安婦と相似の問題点が同根に存在する。人手不足の深刻な業種で、即戦力となる労働者を期限をつけて受け入れると政府は言うが、間違いなく、外国人の労働者数が急増するのは確実だ。その数はマックス60万人とされ、受け入れ先は農業、建設、介護、外食などの人手であり、どう考えても「稀有な人材」と呼べる労働力とは言えない。また、彼らの立場を守る、社会保障制度は手つかずで、医療や年金、失業手当など何も決まっていない。これでは、外国人労働者の使い捨てに過ぎず、まさに徴用工を彷彿させる。そもそも、政府が考えるほど、外国人労働者が応募してくるかどうか怪しい面もある。

筆者は、殊更に「移民」に否定的ではない。しかし、今回のような経済界の“人手が足りないから、景気が良いから”と云う足元の理由で、簡単に「移民」を導入する政策は拙速であり、禍根を残すのは確実と考える。この事実は、安倍首相が騒ぎ立てている「改憲案」よりも、日本社会への影響力が大きい政策転換と捉えるべきである。慰安婦問題や徴用工問題には、一概に韓国政府や同国国民の考えには首を傾げるが、日本企業は日本政府の、労働哲学の欠如がもたらした結果と云う意味では、どうも我が国は反省しているようには思えない。

たしかに、韓国ネット社会の“坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”と云う劣情の発露には、いささか辟易するわけだが、これらの諸問題に、日本企業や日本政府の労働哲学の、いや、国際社会における公平公正の感覚が、悪しきアメリカと云う覇権国とつき合う中で、欠落したような気にもなる。“虎の威を借る狐”なのだ。しかし、明治期以降、日本は、一番強そうな国、英国、ドイツ、アメリカと、親分を代え代えして、金魚の糞の如く生きてきた国なのかもしれない。この理屈から見えてくる「次なる金魚」がチャイナになのは当然だ。歴史が一回りしたようなもので、隋や唐から始まり、ポルトガル、スペイン、オランダ、英国、ドイツ、米国。そして、チャイナに戻ると云うことなのだろう。正直、“武士は食わねど高楊枝”の精神文化は、どこに行ったのだろう?


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●偽装された普遍的価値 アメリカン・ドリームの崩壊

2018年11月12日 | 日記
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●偽装された普遍的価値 アメリカン・ドリームの崩壊

欧米が創りあげた民主主義と資本主義が、いま悲鳴を上げてのたうち回っている。マネーの奴隷と目される市場原理主義経済は、本来の資質通り、善悪や正義不正義、人道的見地‥等、公式な民主主義の定義に含まれている本質論には目もくれず、地球上を剥き出しの欲望のまま闊歩している。この自由な闊歩がグローバリズム経済により極大化されたと云うのが、最近の現状だろう。マネーの奴隷として象徴的に見られるのが企業であるとすれば、民主主義を持たない企業群に自由な活動環境を提供する国家と云うものは、結果的に、自発的なマネーへの従属を意味する。

昔の社会科の教科書には、企業には社会的使命が実存するかのように教えていたが、最近の企業を見る限り、この言説は嘘くさい。マネーの悪癖に振り回された市場原理主義な世界にある企業群には、社会的使命を果たす余力は奪われてしまったと考えるべき時代になった。国境なき経済活動を推進するグローバリズム経済と云うものは、国境のある経済活動の限界から生まれた鬼子のようなもので、マネーの欲望を極大した姿なのだ。しかし、このグローバリズム経済もフロンティア地域(今までは中国)で行き止まりを迎えている。

なぜ行き止まりなのかと言えば、グローバル経済(マネー)のご馳走であったフロンティア地域(中国)が、或る時点から共産党独裁の国家資本主義の担い手として成長した。フロンティア地域だと思い込んでいた中国が、いまや、市場を提供するばかりではなく、生産拠点となり、グローバル経済の良いとこ取りに成功した。尚且つ、その国家主義的経済の推進力を利用して、近隣諸国までも呑み込む経済活動区域(一帯一路)を拡大させるに至った。グローバル経済で良い思いをしていた国際金融(マネー)は虚を突かれたと云うべき状況になった。これが現状だ。

たしかに、一党独裁国家主義体制の下で、意思決定と責任が各企業に任されている自由主義企業群の経済活動と勝負するのだから、同じ土俵に乗っているとは言えない。ましてや、その国家資本主義が、実力に裏打ちされている場合、その勝負は自ずと知れる。国家資本主義国の勝利だ。中国と云う国家の実力がホンモノだと周辺国が思い込めば思い込むほど、その活動は波に乗る。おそらく、習近平の一帯一路構想にEU、ロシア、ASEANが乗り気になる気持ちも判る。安倍首相率いる日本でさえ、一帯一路への参加を表明するに至っている。現実、筆者は、諸手を上げて、中国の実力を信じていいものかどうか判断はつかない。

それよりも、中国の実力を推し測る代りと言ってはなんだが、日米欧などのグローバル企業群の動きに注目した方が賢明だろう。つまり、彼らの多くは、米国の市場を失ってでも、中国の市場を欲している動きが強く見られる。或る意味で、一帯一路の市場を、中国と共に分け合いたいと手もみしているようにさえ見える。しかし、これら企業群のマネーの多くは、米国ウォール街や英国シティー派生のものである。この点が、話を複雑にするのだが、マネーが自国に相当する英米の市場から遠ざかろうとしているのだ。マネーが、巣食う肉体を変えようとしている。

事実問題として、肉体の主である米国では、トランプ大統領による孤立主義が鮮明化しているのだ。格差や差別を美辞麗句で覆い隠す、偽善的民主主義を捨て、現存する醜悪な差別や格差を鮮明化すること、事実を事実として映像化してしまう、欲望剥き出しの民主主義と米国一国主義の米国を作ろうとしている。かなりの点で、グローバル経済からの撤退である。そして、個別的な利権を主張する傾向を鮮明にしている。おそらく、この状況が続けば、日欧等の企業による、米国市場へのアクセスは限定的にならざるを得なくなる。

このような状況は、米国経済の収縮を意味するわけで、限定的だが覇権の揺らぎにも繋がることになる。米国の揺らぎの分だけ、覇権の流れは中国に向かうわけだ。もし仮に、米国が同様の政策を取り続ければ、米中と云う、新たな東西冷戦構造を、意図的に再構築することになる。意図的にと言ったが、レーガン政権以降の米国経済は、紆余曲折はあったものの、中間層を失いながら、格差を拡大させ、辛うじて世界NO1の経済力を維持してきたが、経済活動の無理が、重大な格差を抱え、国民を分断するに至っているようだ。

つまりは、レーガン時代のプラザ合意以降、結局、米国の経済的ヘゲモニーは終焉に向かっていたことになる。トランプ大統領が、経済的ヘゲモニーを投げ捨てた大統領のように言われるのは少々気の毒で、格差と云うおもりを課された大統領と解釈する方が、公平なジャッジではないのだろうか。ただ彼は、その格差の鮮明化によって、大統領の岩盤支持層を纏めきると云う手法を使っていることが悪徳保安官のように見えるだけで、米国の弱点を晒して、世界に吠えているわけだが、単に悪者を一手に引き受けただけで、トランプ大統領のみの責任ではなく、レーガン以来のツケを、いま世界に晒しているに過ぎないと云うことだ。

このようなに、米国トランプ大統領や米国の格差状況をみた後で、先進国の「普遍的価値」等と云う言葉が、如何に空疎な言葉であったか、安倍晋三に聞いてみたいところだが、安倍は、今の米国も「普遍的価値」を共有している国だと思い込んでいるかもしれない。いや、「普遍的価値」なんて言葉は、カッコ良いから使っただけで、普遍的の意味すら知らない可能性がある。まぁ、いずれにせよ、米国が経済的ヘゲモニー競争から脱落することは時間の問題になってきた。ただ、軍事的ヘゲモニーは離さない点が気がかりだ。

経済における失地回復に、優位に立つ軍事を使わない保証がないことだ。米国と云う国は、CIAを通じて、世界の多くの国家の政府に干渉し、時には裏技で、政府転覆を得意技にしてきた国なのだ。ゆえに、何をするか判らないと云う裏の顔で、世界に睨みを利かせてきた覇権国だけに、どこに火をつけるか判ったものではない。シリア(IS誕生)、イランに限らず、香港、台湾、中国・新疆ウイグル自治区等々、CIA工作からは目を離せない。日米同盟の見直しを考えていた日本の政治家が早期に潰された姿も印象的だ。しかし、トランプ政権下だからこそ、日米同盟を見直す好機のように筆者には見えてくる。

いまだに、北朝鮮への米軍攻撃も可能性を残しているわけなので、現時点で言い出すわけにはいかないが、朝鮮戦争の終結が宣言された時がチャンスに思える。米軍への経済的支援を増額してでも、沖縄の基地負担軽減を計るべきで、玉城デニーが知事である間に、間隙をついて、トランプ大統領に直談判をして、日本政府の尻を突いて貰えれば、トランプ大統領の独裁も悪いものとばかりは言えないだろう。いずれにせよ、状況判断が難しい世界に突入した。まさに「Gゼロの世界」だ。


自由市場の終焉―国家資本主義とどう闘うか
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知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた (講談社現代新書)
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FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実
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●「Gゼロ」の混乱 G20、唯一の民主国家・日本?

2018年11月09日 | 日記
対立の世紀 グローバリズムの破綻
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ルポ 漂流する民主主義 (集英社新書)
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異端の時代――正統のかたちを求めて (岩波新書)
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●「Gゼロ」の混乱 G20、唯一の民主国家・日本?

以下は『Gゼロ時代』を論じたイアン・ブレマー氏への朝日新聞のインタビューだ。筆者の知るかぎり、同氏の世界観が特に優れたものとは思わないが、朝日新聞が、彼にインタビューしたことに、何らかの意味があるのかと深読みしてみたが、意図は曖昧なままだった。

ブレマー氏は論の中で、≪日本は「先進国のなかで例外的にポピュリズムの台頭から免れている。きちんと機能している世界最大の民主主義国だ」と評価した≫、この発言を読んだ筆者は、背中に虫が入ってしまったように、如何ともしがたい思いを抱いた。この発言に、朝日新聞は特別な論評を加えず、ありのままに掲載していることには、違和感をおぼえた。
先ずは、以下のインタビュー記事2本を読んでいただこう。


≪ イアン・ブレマー氏インタビュー
 ■「Gゼロの混乱、想像よりひどい」米政治学者ブレマー氏
 米政治学者のイアン・ブレマー氏(ユーラシアグループ社長)は朝日新聞などの取材に応じた。米国が保護主義的な行動で国際社会での役割を低下させている現状について「日本にとって非常に悪い状況だ」と分析。日米関係も悪化に向かうと予測した。
 ブレマー氏は「世界がリーダー不在の『Gゼロ時代』に入った」と以前から主張してきた。トランプ米大統領が、Gゼロに向かう世界の潮流を加速させたと分析し、「Gゼロのもたらす混乱は想像よりはるかにひどかった」と述べた。
 通商問題をめぐる米国の孤立ぶりが際だった6月上旬の主要7カ国首脳会議(G7サミット)については「過去最悪のG7だった」と振り返った。「日本は米国が主導する多国間の制度から利益を得てきたが、その米国が弱まる一方、中国が強力になりつつある」と、日本を取り巻く環境は悪くなりつつあると指摘した。
 トランプ氏が「二国間の貿易協定」を求める姿勢を崩さず、日本からの輸入車への高関税措置もちらつかせていることに触れ、日米関係は「今後悪化する」と分析した。
 一方で、日本については「先進国のなかで例外的にポピュリズムの台頭から免れている。きちんと機能している世界最大の民主主義国だ」と評価した。中国との軍事的な競争は得策ではないと述べ、ソフトパワーの強化や、インドや東南アジアとの連携が重要だと訴えた。(ワシントン=青山直篤)

■リーダー不在のGゼロ時代「日本こそ指導役に」 米学者
 米中の対立が激化し、各地で戦後国際秩序の基盤となってきた民主主義が揺らぐなか、世界の秩序は大きく変わりつつある。米国際政治学者のイアン・ブレマーさんは、リーダーとなる国が存在しない「Gゼロ」を予測した。10月に来日したブレマーさんに世界の現状と日本の役割を聞いた。 ――世界の現状をどう見ますか。
 「今は『地政学的不況』下にある。第2次世界大戦以来、経済不況は7年おきくらいに訪れ、我々は経済不況から脱するのにどういう手段があるか、ある程度理解している。2018年も世界が一堂に会し、『我々に違いもあるが、不況は望まない。景気刺激の救済策で連携する必要がある』と声をあげた。だが、地政学的秩序はゆっくり変化し、より危険だ」
 「米国が主導した世界秩序が終わり、世界から飛び込んでくるニュースを見れば、米国は同盟国の反対にもかかわらずイラン核合意から離脱し、サウジアラビアはトルコでジャーナリストを殺害。ロシアはあらゆる国にサイバー攻撃し、選挙の妨害を試みる。中国は国際刑事警察機構トップを拘束する。明らかに秩序が崩壊していることを示している。国際機関やリベラル民主主義が弱体化しているのに、リーダーが集まってもそれをどう修復するか議論もしていない」

 ――トランプ米大統領をはじめ、反グローバリズムをアピールする指導者が増えてきました。

 「四つの理由がある。第一は、先進工業民主主義国で中産階級が置いてきぼりにされている。第二は、特に欧州でそうだが、移民の流入を好まず人口構成が変わるのに反感を持つ。第三は、米国が牽引(けんいん)した戦争にかり出される貧しい人々の反発。最後はソーシャルメディアの発達。自分好みや同意できることのみを提供するアルゴリズムによってニュースや政治情報を得る人々が多くなったことだ。最後の技術やソーシャルメディアはこの5年間で起きたもので、最も影響が大きい。二極化に拍車をかけ、ポピュリズムや過激主義の台頭を生んでいる」

 ――日本の政治情勢をどう見ていますか。

 「Gゼロの唯一の例外は日本。人口減少で1人当たりの所得は悪くない。日本は移民をさほど受け入れず、反移民感情も低い。日本は戦争に反対し、軍を戦地に送らず問題を抱えていない。ソーシャルメディアについても、日本の利用者は人口の39%に過ぎず、大人はあまりそれを好まない。世論調査によれば、日本人はまだ新聞や雑誌を信用しており、ソーシャルメディアを信用していない」
 「欧米がリベラル民主主義の危機に直面しているなかで、日本はリベラル民主主義が機能している事例となっている。多様性は共に協力し、相互交流して何かを構築する時には強みになるが、互いに交わらず、別々の場所から情報を得る時、多様性は弱みになる」
 「日本は自分たちのモデルを宣伝していないが、危険な状態に突入する可能性がある世界で、それは日本にとっても好機であるばかりか、責任がある。リベラル民主主義が崩壊するなか、日本が国際的に発信しなければ、それは非難に値する。日本がすべきことは多く、IMF(国際通貨基金)やWTO(世界貿易機関)のような国際機関を守るため、さらに活発な指導的役割を果たさなければならない。これまではあまり好まなかったのかもしれないが、日本の外交力で声高に主張すべきだ」

 ――米中関係をどうみますか。

 「米中では二つのことが起きている。これまで米国民が中国を気に留めていなかったような様々な問題で、中国がさらに強力になってきていることと、両国がウィンウィンの関係からゼロサムの競合に軸足を移している。これらが組み合わされると非常に危険だ」

 ――国際社会で日本はどう振る舞うべきですか。

 「安倍晋三首相はトランプ氏に好意を持っているように随分と振る舞っているが、2人の関係はうまくいっていない。日本人は礼儀正しく、争いを避けるのがうまいが、それは実際の友情とかけ離れている。トランプ氏は他国の指導者のことなど気にもかけず、米国の長期的方向性も気にしない。ほとんどの政治家は、ある程度自己陶酔的になるが、彼のレベルは過去の大統領と比べものにならない」
 「安倍首相が憲法改正や日本の軍事力構築を推し進めるのは、よい考えではない。日本が不必要に脅威とみられる。多くの米国の外交専門家は来日すると『日本には強力な軍事力が必要だ』と発言するが、それは日本に聞こえのよいことを言っているからで真実ではない。もし日本が賢いのなら、大きなシンガポールのような国になるべきだ。脅威とも見られず、米中双方とうまくやることだ」
 「サービスやインフラ、高齢者の健康管理など、日本には中国が必要とする優れた物がたくさんある。米中関係が窮地に陥れば、日本は米国に付かざるを得ず、軍事や技術協力、経済貿易の側面から、その選択の余地はない。(中国に)敵対姿勢を示したいと思わないのなら、米中関係が悪化しないよう望むべきだ」(聞き手・佐藤武嗣、清宮涼)
 ≫(朝日新聞デジタル)


安倍官邸にも出入りしている同氏の論を、ここまであけすけに朝日が報じるのは何なのだろう?どうしても、考えたくなる。敢えて、ブレマー氏や朝日が、何を言わんとしているのか、彼らの罠に嵌ることで、考えを巡らしてみたいものである(笑)。筆者が気にかかる点は、同氏が好んで使う『リベラル民主主義』と云う言葉だ。世界で起きている社会・政治現象を、個別に見ていけば、その一つひとつから、民主主義の崩壊を読み解くことが出来るのは事実だ。

しかし、そもそも民主主義と資本主義、敢えて言えば“企業論理(マネー・利潤追求)”は相いれない関係性を持っていることだ。企業の活躍しやすい社会を目指せば目指すほど、その国の政治は民主主義から遠ざかる。それは当然のことだ。マネー・利潤追求、つまり企業には民主的互助的原理は存在しないと云うことだ。日本社会の共通の興味は、ここ何十年も、“景気・雇用・社会保障”に集約されている。前者の二つは企業の活性化を求めたものである。後者の社会保障の充実等々は財源が必要なのだから、歳入の是非にかかっているので、やはり、企業の活性化だ。

つまり、リベラル民主主義体制においても、その大衆が求めているものは、企業活動で得た利益の再配分を期待していることになる。大衆は、民主主義と云う観念のない企業に、リベラル民主主義的行為又は観念を求めていることになる。無論、このような大衆の望みは、ない物ねだりなのだから、実現することは、毛ほどもない。民主主義を維持することと、その大衆が求める諸課題を解決するプロセスには、自己矛盾があるのだから、実現することは、ほぼ皆無なのだ。

企業経営者は、1年ごと或いは四半期ごとの経営成績に一喜一憂する地位であり、少ない資本で、いかに最大限の利潤を出すかが死活問題なのだから、法人税などの社会還元は、限界点まで少なくしようとするわけで、大衆が求めるトリクルダウンとは真逆の行為に始終している。だからと言って、企業経営者が悪だとは言えない。彼らは役割を果たしているに過ぎないのだから。個々の経営者は、自分の行動が民主主義の原理に反しているかどうかなど考えている暇はない。常に、利益の最大化を目指す存在なのだ。そして、リベラル民主主義の論理とは真逆な行動で評価されることさえある存在だと云うことを大衆は忘れている、或いは気づいていないと云うことだろう。

リベラル民主主義と企業活動は、ある点で合意形成可能だが、最終的には破綻の道に突入せざるを得ない関係性を持っている。その調整弁に、政治や行政が存在する理由があるわけだが、最近の安倍政権の動きなどを観察すると、企業(マネー)の性格と、大衆の要望のミスマッチを調整する気はさらさらない姿を露わにしている。アメリカ市場の拡大は望めないので、現状維持に努めるが、低下は確定的だ。それなら、行くべき市場は中国やASEAN市場だ。安倍政権も経団連も、パンツ一枚まとわずに、中国に詣でた。

このような国、日本であるにも関わらず、ブレマー氏が、≪日本は「先進国のなかで例外的にポピュリズムの台頭から免れている。きちんと機能している世界最大の民主主義国だ」と評価した≫と評した理由はわからないが、米国・EUのポピュリズムが最悪なので、相関的にマシだと評したのか、リップサービスなのか、単に無知なのかは判らない。いずれにせよ、企業(マネー)は市場を彷徨うのだが、最終的には行きづまるしかないわけで、こんなチキンレースを、いつまで続けていくのか誰も判っていないのだ。

いや、次なる処方箋が見えないので、このままでは駄目だと思いながらも、惰性でものごとを判断しているのかもしれない。こうして考えていくと、民主主義と資本主義が、経済の成長期には成り立つペアーであったが、低成長時代においては、離婚の危機にあると云う事実を知ることになる。しかし、長年連れ添ったペアーだけに、多くのしがらみがあり、容易にペアー解消には至らない。おそらく、日本も世界も、“普遍的価値観”をチェンジする難題に直面している。筆者は以前から、定常経済における国家観を考える時期が来ていると主張しているが、安倍政権は、まだまだ市場原理主義に則って、世界の市場を彷徨おうとしている。困った政治家だ。

最後になったが、朝日新聞はブレマー氏のインタビューで語られた≪世論調査によれば、日本人はまだ新聞や雑誌を信用しており、ソーシャルメディアを信用していない≫。ここの部分だけ言いたかったのかもしれない(笑)。次回は、新たな“普遍的価値観”否、“固有の価値観”と云うものを考えてみようと思う。


ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来
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新世界秩序
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未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか (PHP新書)
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●安倍訪中が意味するもの 日米安保脱却の扉をひらく?

2018年11月01日 | 日記
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「新自由主義」の妖怪――資本主義史論の試み
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自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 (講談社現代新書)
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安倍訪中が意味するもの 日米安保脱却の扉をひらく?


自称、良識的日本人を自負するあいば達也は考えた。安倍晋三をコケにすることにも飽きたので、安倍を名宰相にするためには、どのようにすればいいのか、様々に吟味してみた。無論、どれほど理論上の名宰相有資格者であっても、国民から、「あいつは嘘つき」「あいつの人格は許せねえ」と評価された場合、有資格者であっても、二次面接で落とされることは言うまでもない。

最初にオチを言ってしまっているので、これからシタタメル様々な吟味は徒労に終わることは承知だが、3期も自民党総裁を歴任する政治家なのだから、吟味くらいはしてやらないのは礼を失すると考えている。安倍政権の個別案件においては、収賄や強要、恐喝、隠蔽など、何らかの刑法に抵触するような振舞いをしているわけだが、その個別の罪はさておくと、世界の大きな流れの中で、ウッカリ正しい方向に走りだした傾向が観察できる。

歴史の悪戯と云うものは不思議だ。最も愚劣な政治権力者が、右顧左眄する内に、自国を最も正しい方向に導いてしまう出来事があるものだ。無論、安倍政権が論理的に正しい方向性を出したわけではなく、時代の流れの勢いに流され“意地汚い浮き草”のように振る舞った結果、正しい道を歩みだしたということだ。いや、歩みだしているように見えているだけで、逆戻りするかもしれないので、既成事実として評価は出来ないが、現在進行形の範囲で、評価出来る。

無論、その心得の中には、不遜や裏切りの臭いも残っているわけだが、一歩だけでも、正しい日本の方向に足を踏み入れた事実は評価しよう。第一に、対中国政策を最重要に考え出したフシがあることだ。より近い大陸に覇権が移行する臭いの誘惑に負けたと言って良いだろう。近い将来の米国、中国のマーケットの市場規模の差は歴然としているわけで、意地汚い経団連が、中国マーケット重視を、経産省を通じて官邸に強く働きかけたことは容易に想像がつく。そして、その選択は、概ね間違っていないのは事実だ。

今までであれば、外務省が主体になって、官邸を対米従属の強い政権に方向づけていたが、安倍官邸の内閣人事局と云う強権が、官僚独裁政治を打破し、政治主導を実現した。結果、財務省、外務省の力を骨抜きにしたので、フリーハンドの外交が可能になった。政治主導と官僚主導の、どちらが適正な政治を行うかは、その時代の要請によって適性の判断はかわるので、どちらとも言えない。ただ、現時点だけで判断すれば、政治主導だったから、あれほど不用意に安倍は外交が出来たと言える。

そして、その無目的だった外交をしていたわけだが、最後の最後になって行きついた訪中外交で、的を射た。このようなフリーハンドな外交が出来たのは、超強権安倍官邸だから出来たことだが、オバマ時代には絶対に不可能な外交だった。また、トランプと云う米大統領の誕生で、流石の安倍官邸も我に返ったに違いない。こんなアメリカとつき合うくらいなら、中国と朝貢外交した方が得策だと。前門の虎より後門の狼に方がつき合い易そうだと踏んだのだろう。トランプのお蔭で、貿易上は対米輸出で酷い目に遭うが、その分だけ、米国からの政治介入は回避出来るわけで、痛み分けである。であるなら、対中国への接近は当然の結論だ。

親オバマだった独メルケル首相も、やる気をなくした。米国一流の、民主化と云う内政干渉イデオロギーの衰退は確実なもので、この流れが急に止まることはない按配だ。トランプ大統領は名実ともに、世界の警察はやめる、名誉職のような覇権国家でなくても構わない。軍事同盟している国は、米軍駐留経費を全額持つべきとまで言っている。つまり、払わないのなら、米軍を撤退させると言っているの。つまり、話の持っていきようでは、日米同盟が緩やかに氷解する可能性さえあるのだ。

米国が同盟を結んでいる主だった国は、英・EU(NATO)・日豪韓・サウジ・イスラエル・トルコなどだ。その一つひとつを吟味してみれば判ることだが、英はEU離脱で浮足立っているし、EUの盟主ドイツ。メリケル首相はトランプ大統領とは水と油でやる気を失った。ドイツが混乱すれば、EUのスポンサーが消えるわけだから、EU本体の命運にも疑問符がつく。韓国は、北朝鮮と朝鮮戦争終結に向けてステップを踏んでおり、韓国駐留米軍の撤退は、現実的に視野に入った。サウジは王子の乱行で、当てに出来ない国になっているし、トルコも露中への接近が露わだ。つまり、世界で、クソ真面目に米軍とつき合っている国は、日本と豪州だけである。

余談になるが、このような状況下で、辺野古新基地建設に猛進する安倍官邸の姿勢には、どこかで矛盾が露呈している。玉城知事が本気でトランプと話をすれば、「米軍には不必要だが、自衛隊には必要なのだろう」と云う言質を得るだけで、防衛省へのカウンターパンチになるし、官邸の強硬策のイカサマぶりが露呈するだろう。まぁ言いようによっては、自主独立の国家として、辺野古基地は重要だ。普天間、嘉手納より、辺野古が公共事業としても重要と云うのが、経産省政権の言い分になるだろう。

いずれにせよ、安倍官邸は環太平洋よりも、一帯一路への参加を選択すことになるだろう。それがハイエナ経団連の切なる願いなのだから。しかし、下卑た市場原理主義的イデオロギーの名の下、到底無限とは思えない市場を拡大する考えには無理がある。民主主義と云う欺瞞のイデオロギーに裏打ちされたように見えるグローバリズム経済が、持つ者と持たざる者の差を拡大し、最終的には民主主義を破壊する方向に動きだすとは、誰が考えただろう。市場原理主義には無理があった。彼らの考えが正しいと証明するためには、魚や昆虫までを顧客にしなければならなくなる。或いは、地球を2つ3つ用意しなければならない。

安倍首相は、意味が分かっていないだろうが、自由貿易を守ると言っても、グローバリズム経済は金融経済とタッグを組むことで、国境を亡くし、マネーに勢いを与え、人間がマネーに傅く結果を招く。マネーがいくら生き物だと例えられても、マネーに従属する人間たちと云う世界は、想像を絶する醜く空々しい世界になるに違いない。その意味で、トランプ大統領自身は理解してないだろうが、彼の保護貿易主義がグローバル金融資本主義世界に警鐘を鳴らす結果になるかもしれない。

或いは一定期間、残された市場を食い荒らすまで、グローバル企業群が宴を愉しむだろうが、期間限定であり、市場が細ればジ・エンドなのだ。この現在の流れは、自主独立を目指す日本にとって、日米安保体制からの脱却のチャンスだが、米国の重しを失った日本と云う国も、想像してみれば、相当に怖い気もする。米国の従属からの脱却は望むところだが、重しを失った日本と云う国に、本当の意思があるのかどうか、かなり不安である。渋谷のハロウィーン騒ぎを観ながら書いているが、更に不安になる日本の現状だ。

貧困を救えない国 日本 (PHP新書)
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正義とは何か-現代政治哲学の6つの視点 (中公新書)
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徹底検証 神社本庁 (ちくま新書)
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