世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●民主政治家の言葉遊びは飽きた 怖いもの見たさの本音政治

2017年01月19日 | 日記

 

ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店


●民主政治家の言葉遊びは飽きた 怖いもの見たさの本音政治

 毎日新聞に限らないが、バラク・オバマ米大統領を評価するコラムや社説を読んでいると、筆者は、ひどくトンチンカンナ言説が、未だに世間を牛耳っている事実に愕然とする。

 オバマの米大統領としても功績評価等を、表向きの公式に表明された絵空事的な“標語のような理想”を追いかけて論じることへの、怒り、虚しさ、“本音で行こうぜ”みたいな動きが、全世界で起きたことと対比して、オバマの功罪は論じられるべきである。

 いや、バラク・オバマの功罪ではなく、デモクラシーや資本主義の本質的問題が露呈した時代という事実に対し、正対する姿勢が問われる時代に突入したと云うことだ。その時代的課題に対して解を持たない知識人、有識者などが、訳知り顔で、何かを口にしているわけだが、彼らは、ポジショントーク以上の、自分の言葉を持っていないのだから、聞くも観るも、無駄骨ということだろう。オリジナルに、デモクラシーやグローバリズム経済に変る、次の世界を創造するよう人類は追い込まれている。但し、今現れている「極右政党」のようなものは、一過性の過渡期に起きる現象で、世界の基本理念にはならないのも確かだ。

 オバマが就任以降取り組んだ経済不況からの脱出も、グローバル化した資本主義や、そのことで歪んでゆく民主主義や自由主義のシステム上の過ちは、公式に誰一人認めず、何ごともないかのように隠密裏、事実関係が無秩序に世界的に発生した。

 オバマの「核兵器のない世界」は、オバマの無能と演説上手に役立ったが、世界の平和に役立つことはなかった。アフガン、イラク戦争の終結を宣言したが、福島原発事故収束宣言の野田佳彦同様、その言葉とは裏腹に、問題のすべては終息していない。オバマに至っては、隠密裏にウクライナとシリアで内乱や騒乱が起きるべく、裏道から反政府勢力に手を差し伸べていたのだから、実質的には戦争や混乱の当事者であることは確実だ。当事者である点、ロシアと遜色のない地位に米国はある。

 自由や民主主義を通じた、経済システムが明白に行き詰り、壊死状態であることは、認めたくないとしても、目をそらせない現実である。いま、生きている人類に、次のシステム構築の器量がないのであれば、次なる地球規模の民主主義に替わる「理念」の誕生を邪魔する勢力に似にならないようにしたいものだ。

 オバマを理念の人と持ちあげることが多いが、彼も、単にエスタブリッシュメント層においては、幾分リベラルなフリがしたい人間だったというだけど、20世紀的欧米理念に関して、守旧派な政治家に過ぎない。演説で、米国民や日本のメディアを上手いこと騙したが、上手な言い逃れを沢山振り撒いたに過ぎない。次期大統領トランプは散々な支持率のようだが、現実と本音のマッチングを間違えなければ、退任時にはオバマ以上である可能性は多いにある。


 ≪ オバマ政権8年 「チェンジ」の決算 理念の実現に苦しんだ
 バラク・オバマ大統領は米国史においてどう位置づけられるか。世界に何を残したのか--。この問いに答えるのは容易ではない。 理念の人ではあった。8年前、打ち続く戦争と不況にあえぐ米国で変革(チェンジ)を訴えて就任し、プラハで「核兵器のない世界」構想を唱えてノーベル平和賞を受賞した。  アフガニスタンとイラクでの戦争終結に努め、「イスラムとの和解」演説でアラブ・イスラム圏との融和姿勢を見せた。戦場の硝煙のにおいが忍び込む米国に、「イエス・ウィ・キャン(私たちには可能だ)」の楽観的な掛け声が、さわやかな風のように駆け抜けた。

勇気を見せた広島訪問
 確かに米国は変わった。ブッシュ前政権は、米国の力で世界を変えようとするネオコン(新保守主義派)の影響を受け、対テロ戦争では各国に「米国の敵か味方か」と踏み絵を迫る息苦しさがあった。
 オバマ氏はそんな傲慢さとは無縁だった。同氏が敬愛する政治学者ラインホールド・ニーバー(1892~1971年)は、第二次大戦後に最強国家になった米国に対し、強国は憎しみやうぬぼれゆえに目が見えなくなって進路を誤ると警告した(「米国史のアイロニー」)。
 オバマ政権が新たな紛争への介入を極度に嫌ったのは、無い袖は振れぬ台所事情とは別に、超大国が腕力を使う際の、思わぬ落とし穴を警戒したのだろう。謙虚さでは史上まれな大統領だったのは間違いない。
 リーマン危機を乗り切り、イラク撤兵を実現したのは政権1期目の成果である。お別れ演説でオバマ氏は2期目のキューバとの国交回復やイラン核問題での合意などを外交成果に挙げた。
 「民主主義は、それが当然と思った時に危機に直面する」として民主的な社会を大切にするよう訴え、8年前の変革の精神に基づいて「『イエス・ウィ・キャン』を信じてほしい」と締めくくった。
 外交成果では昨年5月の被爆地・広島訪問も特筆したい。核軍縮は進まず、北朝鮮は挑発するように核実験を繰り返す。「核なき世界」のために切れるカードは米国のタブーを越えた被爆地訪問しかない。たとえそうだったにせよ、意義深く勇気ある訪問だった。
 その一方で、「理念の人」は理想と現実の落差や実行力不足に苦しみ、打開に向けて悩み続けた。  代表的な例がシリアだ。お別れ演説でオバマ氏は、同時多発テロの首謀者ウサマ・ビンラディン容疑者の殺害や8年間のテロ対策を誇りつつ、シリアには全く言及しなかった。
 2013年、シリアのアサド政権による化学兵器使用が確実になった時、オバマ政権はシリア空爆を予告しながら、プーチン露大統領のとりなしもあって空爆を事実上中止した。その際、オバマ氏は「米国は世界の警察官ではない」と明言した。
 だが、91年の湾岸戦争以降、中東に強い影響力を持つ米国が腰くだけになれば、シリアのアサド政権軍や過激派組織「イスラム国」(IS)が勢いづくのは目に見えている。化学兵器使用を「レッドライン」としていたオバマ政権の朝令暮改的な方針転換は重大だった。

自画像が小さすぎた
 未曽有の人道危機を生んだシリア内戦の収拾に、米国は全力を尽くしたか。オバマ氏の政治責任を問う声は、今後も尾を引くだろう。
 しかもオバマ氏がシリア空爆を中止した翌年、ロシアはクリミア半島を奪いISは独立国樹立を宣言し、南シナ海での中国の埋め立ても本格化した。アジア重視の「リバランス」とは裏腹にオバマ政権は中露や北朝鮮から甘く見られた感がある。
 オバマ氏は初の黒人大統領でもあり、米国の新たな自画像を描きたかったのだろう。米国だけが「警察官」ではなく、各国が応分の負担をする。大国は威張らず、小国も大国の顔色をうかがう必要のない、平等な国際社会をめざす。そんな考え方が間違っているとは思わない。
 だが、理想の社会の建設には時間がかかる。オバマ氏は米国の役割を軽く見て自画像を小さく描きすぎた。逆に次期大統領のトランプ氏は米国の像をことさら大きく描いた印象があり、今の世界では米国の像が二重に見えている。
 8年間、スキャンダルと無縁だったオバマ氏は、冷静で理知的な大統領だった半面、自分のスタイルを崩さず難しい問題は遠ざける傾向が目立った。米議会の多数派・共和党がオバマ氏の手足を縛ったにせよ、大統領として局面を打開する力を欠いたことは否めない。
 00年に同じ民主党のクリントン大統領が中東和平の実現をめざし膝詰めで関係3首脳会談を続けたように、たとえ失敗しても、泥をかぶっても、世界のために身をていする覚悟を見せてほしかった。
 それでこそ可能な「チェンジ」もあったはずだ。  ≫(毎日新聞1月12日付社説)


トランプは世界をどう変えるか? 「デモクラシー」の逆襲 (朝日新書)
クリエーター情報なし
朝日新聞出版
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●幻想、経済成長信仰の学者、藁にしがみつく濡れネズミ

2017年01月10日 | 日記

 

世界の貧困・日本の貧困:国際比較 世界と日本の同じと違いを考えよう! (シリーズ・貧困を考える)
クリエーター情報なし
ミネルヴァ書房


●幻想、経済成長信仰の学者、藁にしがみつく濡れネズミ

 高橋洋一や長谷川幸洋な既得権益の枠内でしか、論を展開できない有識者紛いの連中は、パラダイムシフトに異様な抵抗を見せている。何故かと言えば、仮に、安倍官邸の改革と叫びながら、旧いシステムの地盤固めをするような、お笑い草に近い決定政策の数々は、後々の我が国の歴史の中で、赤面するほど勘違いな地獄への道に向かっていたと気づくのだろうが、井の中の蛙な日本人の習性として、致し方ないのだろう。

 高橋洋一氏は文中で、“「成長否定論調」には、すでにネット上でも批判が出ている。一言でいおう。成長を否定したら、幸福の実現は難しくなるのだ。”と自説が真実のように断言した上で、都合の良い数値を引っ張り出して、経済成長が埋蔵金のようにあると云う。しかし、そもそも、資本主義がグローバルな展開に進んだことこそが、先進国の経済成長の限界を証明しているわけだから、いまや、同氏の主張は引かれ者の小唄に近いのである。

 同氏が批判している朝日新聞の記事等々に関して、多くを語る必要はないが、資本主義の歴史的意義が、あきらかに強固な踊り場に着ているわけで、経済学者が考えるだけの、地球や世界の平和に貢献する人類の為になる経済学は、今後、世界的激動の混沌を経て、人類が疲労困憊した時見えてくるのだろう。残念ながら、この世界的パラダイムシフトなフェーズにおいても、場違いな島国を体現するのだろう。


≪ 朝日新聞のあまりに稚拙な「経済成長否定論」を一刀両断してみせよう
 経済面でも、この国をミスリードするか
■朝日はなぜそこまで成長を否定したいのか
また慰安婦像を巡って、日韓で大問題が起こった。 2015年12月、ソウル日本大使館前の慰安婦像撤去などを約束した日韓合意が行われたが、ソウルの慰安婦像撤去が進められない中、釜山領事館前に新たな慰安婦像が設置され、日本政府は合意違反であることを訴え、駐韓大使一時帰国などの対抗措置を講じた。 韓国が、国家間の約束違反を平気で行うことにあきれる。さすがに今回は韓国人のなかにさえ、「韓国が悪い」という人が多いようだ。 韓国内で慰安婦問題が正しく理解されない原因の一つは朝日新聞の誤報にあるが、そんな朝日新聞が、国際面だけでなく経済面でもやってくれた(http://www.asahi.com/articles/ASJDY5DR2JDYULZU005.html)。
新年特集の記事のなか(4日付)で、 《ゼロ成長はそれほど「悪」なのか。失われた20年と言われたその間も、私たちの豊かさへの歩みが止まっていたわけではない》《いまのような経済成長の歴史が始まったのは200年前にすぎない》《成長の鈍化はむしろ経済活動の「正常化」を意味しているのかもしれない》 といった論評をしている。 この「成長否定論調」には、すでにネット上でも批判が出ている。
一言でいおう。成長を否定したら、幸福の実現は難しくなるのだ。 この論評は、いろいろな識者の意見や身の回りの経済現象をつまみ食いしながら、今の安倍政権の経済政策を批判している。識者の意見の引用も的外れで、最近の経済現象にも無理解があるなど、ほぼ全編に突っ込みどころが満載である。だから、ネット上でも叩きやすい。
特に茶化しやすいのは、 《いまのような経済成長の歴史が始まったのは200年前にすぎない》 《成長の鈍化はむしろ経済活動の「正常化」を意味しているのかもしれない》 という箇所だ。例えば、 《朝日新聞が読まれていたのは、せいぜい140年にすぎない》 《朝日新聞を読まないのは、正常化を意味している》 といったように、これを引用して皮肉で返すこともできる。この「200年に過ぎない」という指摘は、現代のもののほとんどに成り立つことなので、論法としては説得力のないものになる。
筆者は、いくつかの正月番組に出演したが、やはりこの話題を聞かれた。例えば、5日のテレビ朝日「ワイドスクランブル」で、成長不要論が出ているがどう思うかと聞かれた。 ちょうど番組では、人々の満足度をどのように高めるかという話題になっていたので、筆者のほうから、経済成長と失業には密接な関係があり、経済成長しないと失業が増えるという「オークンの法則」(Okun's Law なお番組後、出演者から英語のスペルを聞かれた)を紹介し、成長なしでは人々の満足度は高まらないと説明した。 失業は人々をもっとも不幸にするものだし、本コラムでも紹介したが、失業が増えると自殺率や犯罪率が高くなったり、生活保護率も高くなるなど、社会へのマイナス効果ははかりしれない。 このため、少なくとも筆者が首相官邸で経済担当として働いていた小泉政権や第一次安倍政権では、最優先で改善すべき経済指標は失業率だった。

■朝日新聞「経済政策批判」の常套手段とは
テレビ朝日の番組では、この点を踏まえて、失業の低下は最低限政府が行うべきことで、日本の場合成長率が1%下がると失業率は0.2%くらい上がると指摘した。 この対応は、その場のやりとりで出た話であるが、成長率と失業率の関係を示すオークンの法則について筆者は常に意識しているので、定量的な関係もすぐわかる。以下は、その根拠となる図である。



 


なお、メインキャスターの橋本大二郎さんから、人口減少が進んだとしても、オークンの法則は成り立つのかと聞かれたので、成り立つと答えている。もちろん日本を含め先進国で成り立つことが知られているからこそ、経済法則の名前に値している。
朝日新聞の成長否定論はおかしいことが、多くの人にもわかるだろう。 成長否定論は、これまでも経済運営がうまくいっているときに、戦後左翼系の識者がしばしば行ってきた。成長という実績の前に、政権批判したいときの常套手段である。こうしてみると、安倍政権の経済運営は朝日新聞が批判するほどになったかと笑ってしまう。 1970年代、日本経済が急発展を続けていた頃、やはり朝日新聞は「くたばれGNP」という連載を行っていた。その後、石油ショックで本当に日本経済が成長しなくなると、「くたばれGNP」どころでなくなったため、このスローガンは消え去った。
経済がダメになったら、そもそも日本が終わりになるからだ。 上のオークンの法則が如実に示すように、経済成長は失業を減らす。そうなると、自殺率、犯罪率、生活保護率なども良くなる。 このように、経済成長は全ての問題に万能とはいえないが、それでも経済成長がないよりは、ある程度の問題を解決できる。経済成長は国民全ての所得を増やすことになるので、弱者を助ける分配問題においても、パイが大きくなるので解決が容易になる。
ボーリングでたとえれば、経済成長は1投目でセンターピンを倒すのに相当する。1投目でセンターピンにあたれば、うまくいけばピン全てを倒せるが、そうでなくても7、8本を倒せて、2投目でスペアがとりやすい。 逆にセンターピンを外すとスペアをとる確率が悪くなる(なお、筆者は50年ほど前のボーリングブーム時代にボーリングにのめり込み300点ゲームを達成したこともあるので、このたとえが好きである)。 さて、問題はこれからだ。 たしかに、成長否定論はおかしいことが今では多くの人にもわかる。しかし、どのようにしたら成長できるのか。ここがわかっていない人は多い。

 ■「成長率批判」はあまりに身勝手
マスコミでよくある意見は、成長戦略こそがその解決策というものだ。そして、安倍政権では成長戦略ができていないのでダメだ、という批判にもってくる。 この論法は一部当たっているが、多くは的外れだ。 そもそも成長戦略は、長期的には成長率を高めるだろうが、短期的な効果はまずない。成長戦略の効果が出るのは早くても数年先であり、短期的な効果はない。
しかも、成長戦略で当てるということは、成長産業を探すことであり、それは至難の業である。筆者は、しばしは成長戦略を当てることは、千に三つほどの確率で、下手な矢でも1000本打てば、数年後に3本も当たれば御の字であるといっている。 短期的な手法は、アベノミクスの第一の矢の金融政策と第二の矢である財政政策によるしかない。
この意味で、アベノミクスが金融政策、財政政策、成長戦略という3本の矢を用意したのは、短期的・中長期的には正しいのだが、マスコミはその関係をきちんと理解できないために、処方箋の説明はかなりデタラメになっているのだ。 その理由は、マクロ経済学への無理解にある。そもそも、オークンの法則はマクロ経済学の基本原理であるが、こうしたことを理解せずに、アベノミクスを語りたがるのはマスコミの悪いところだ。
せっかくであるから、この際オークンの法則を題材として、失業を可能な限り減少させるような経済政策を考えてみたい。 オークンの法則の背後には、マクロ経済の基本概念として総供給と総需要の差であるGDPギャップがあり、景気の良し悪しはGDPギャップではかることができて、成長できずにGDPギャップが大きくなると、失業が増えることがわかる。 ここまで来ると、次に述べるように、金融緩和と財政出動はともにGDPギャップを縮めることもわかる。 財政出動は公的部門の有効需要を直接創出するのでわかりやすい。
一方、金融緩和については、実質金利の低下、為替安などで民間部門の有効需要短期的に、長期的には効果累積額でみると大きく作用する。 財政政策は直接有効需要を作るので、短期的な効果は大きい。一方、財政政策が財政事情などで継続的にできない中、金融政策は継続的に実施しやすいので、金融政策は長期的に効果が出やすいともいえる。
こうして、短期的な効果は財政出動の方が強いが、中長期的には金融緩和も効果が出る。となると、金融緩和のほうが失業率低下の累積効果が大きくなる。 こうしたマクロ経済学の基本的な理解があれば、財政出動とともに、金融緩和も失業を減らすということがわかるはずだ。そして、累積効果が大きくなる金融緩和の場合、インフレ目標は緩和しすぎないための歯止めだ。これは欧米先進国の常識でもある。
また、最近の失業率の低下は、金融政策の効果ではなく、生産年齢人口の低下のためであるという議論もあるが、これは、人口減少だからデフレになると同じくらい、間違った考え方である。それは、生産年齢人口が増えていた以前のときのほうが失業率が低かったことからもすぐわかる。 こうした誤解は、マクロ経済学の理解ができていないばかりか、統計データのリテラシーに欠けていることの問題でもある。

■失業率を上げないための、具体的な策とは
失業率と生産年齢人口の推移をみれば、最近の失業率の低下は生産年齢人口の低下とは結論付けられない。 失業率は、労働力人口から就業者数を引いたものを労働力人口で除して定義される。労働力人口は「15歳以上の人口」であり、生産年齢人口は15歳以上65歳までの人口。 両者はパラレル概念だ。労働力人口(生産年齢人口)が減少するとき、それを所与とし、経済状況によって就業者数が決まってくる。なので失業率は分子も分母も労働力人口の動きを見込んだものとなって、景気だけに左右される。 まともに統計分析すれば、生産年齢人口はコンスタントに減少する一方、失業率は景気で上下となるので、傾向を除去して考えれば両者は無関係であることがわかる。 ちなみに、オークンの法則のように前年からの失業率の差と前年からの生産年齢人口伸率をみれば、無関係であることは明らかだ(下図)。



 


雇用を守るべき左派系識者や経済評論家はそうした常識が欠けていると、筆者は本コラムで何度も指摘してきたが、実は右派系にもいるのが現実だ。 金融政策と雇用の関係はマクロ経済学のイロハである。
もっとも、日本では、金融政策を正しく理解しているに過ぎないのに「リフレ派」と呼ばれ、特殊扱いされてしまうのは困ったモノだ。 そこで、今の日本で、失業を増やさないための、具体的な政策を提示しよう。 昨年に日銀は金利管理に移行した。
これは、金融緩和に対し積極的ではなく受け身になったことを意味する。この方式では金融政策が財政依存になる。政府が国債を発行しないと金利が下がる。それを日銀が引き上げると金融引き締めになりかねないが、政府が国債を発行すれば逆に金融緩和になるという具合だ。
そうした状況では、財政政策の出番(国債発行)であり、そうなれば、財政・金融一体発動になって、日本経済に好都合となる。 幸いなことに、日本の財政問題も、現時点で考慮しなくてもいいくらいだ。この点は、本コラムで再三指摘してきている。
さらに、国債を発行して財源調達すべき分野も、法律改正が必要だが、教育など未来への投資と言われる分野で多い。金利環境がいい現在は、未来への投資に事欠かない状況である。 というわけで、未来への投資として、国債発行による財政出動(自動的にこれは金融緩和にもなる)をすべきというのが、失業を増やさないための筆者の解である。
朝日新聞の論評が文中で言及しているシェアリングエコノミーは経済成長を促進するものであるため、朝日新聞の主張は支離滅裂になっている。いっそのこと、そういた新しい動きを利用するとともに、政府に国債発行による教育支出増などを提言し、さらに経済成長して、貧困をさらになくせという言うべきなのだ。 ≫(現代ビジネス>経済財政>経済成長願望の主張・高橋洋一)

 

一気にわかる! 池上彰の世界情勢2017 トランプ政権誕生編
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●救いのない日本中枢 井の中の蛙首相、現実に目背ける有識者

2017年01月07日 | 日記

 

月刊 紙の爆弾 2017年 02 月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
鹿砦社


●救いのない日本中枢 井の中の蛙首相、現実に目背ける有識者

 2017年、日本の内閣総理大臣は、世界の誰からも注目されないにも関わらず、安倍首相の側近軍団と、エスタブリッシュメント層に留まっていたい有識者の“オベンチャラ合唱”に気を良くして、自らの“内弁慶政権権力”をパワフルなものと勘違いして、世界で最も安定した最強のリーダーだと云う、重大な自己分析に嵌った事実は、憂慮に値する。

 年頭所感において【「日本はもはや成長できない」、「日本は黄昏を迎えている」といった、未来への不安を煽る悲観論】などの杞憂はあったが、【一億総活躍社会を創り上げ、日本経済の新たな成長軌道を描く。激変する国際情勢の荒波の中にあって、積極的平和主義の旗をさらに高く掲げ、日本を、世界の真ん中で輝かせる。】と宣い、中華思想のように世界の真ん中とまで言いはじめた。あまりにも酷い自信過剰のサイクルに入ったわけだが、年初の円安株高は、その致命的勘違いに拍車が掛かることだろう。

 安倍首相は、己の発言や主要メディアの分析に関わらず、20日常会召集、即解散総選挙の目はないと強調しているが、まだまだ予断を許さない。今の円安株高は、アベノミクスが上手く行くように見える状況だし、カジノ法案の強行採決など、意味不明な政治スケジュールをこなした説明がつかない。また、野党共闘は、実はかなりのパワーがあり、安倍政権における衆院解散総選挙の勝利が盤石と言える状況にない。

 選挙時期として、遅くなれば、南スーダン駆けつけ警護で、自衛官の死傷者のリスクも増すばかり、衆議院選は、自民党にとって早ければ早い方が良いのだが、現時点、解散の気配はみられない。トランプ米国との関係が良好な方向に向かうよりも、ギクシャクな方向になる可能性が高い。ロシアとの関係も細くなるだろうし、為替の関係で株価は好転するかもしれないが、経済が好転することはないのだから、流石の国民も、ウンザリと気づくだろう。

 ≪ 安倍内閣総理大臣 平成29年 年頭所感
あけましておめでとうございます。
 「わが国の たちなほり来し 年々に  あけぼのすぎの 木はのびにけり」
 30年前の新春、昭和62年の歌会始における昭和天皇の御製です。
 戦後、見渡す限りの焼け野原の中から、我が国は見事に復興を遂げました。昭和天皇がその歩みに思いを馳せたこの年、日本は、そして世界は、既に大きな転換期に差し掛かっていました。
 出生数が戦後最低を記録します。経済はバブル景気に沸きましたが、それは、長いデフレの序章となりました。世界では、米ソが中距離核戦力の全廃に合意し、冷戦が終わりを告げようとしていました。
 あれから四半世紀の時を経て、急速に進む少子高齢化、こびりついたデフレマインド、厳しさを増す安全保障環境。我が国が直面する、こうした課題に、安倍内閣は、この4年間、全力を挙げて取り組んでまいりました。
 私たちが政権を奪還する前、「日本はもはや成長できない」、「日本は黄昏を迎えている」といった、未来への不安を煽る悲観論すらありました。
 しかし、決して諦めてはならない。強い意志を持ち、努力を重ねれば、未来は、必ずや変えることができる。安倍内閣は、さらに未来への挑戦を続けてまいります。
 本年は、日本国憲法施行70年の節目の年にあたります。
 「歴史未曽有の敗戦により、帝都の大半が焼け野原と化して、数万の寡婦と孤児の涙が乾く暇なき今日、如何にして『希望の光』を彼らに与えることができるか・・・」
 現行憲法制定にあたり、芦田均元総理はこう訴えました。そして、先人たちは、廃墟と窮乏の中から、敢然と立ち上がり、世界第三位の経済大国、世界に誇る自由で民主的な国を、未来を生きる私たちのため、創り上げてくれました。
 今を生きる私たちもまた、直面する諸課題に真正面から立ち向かい、未来に不安を感じている、私たちの子や孫、未来を生きる世代に「希望の光」を与えなければならない。未来への責任を果たさなければなりません。
 女性も男性も、お年寄りも若者も、障害や難病のある方も、一度失敗を経験した人も、誰もが、その能力を発揮できる一億総活躍社会を創り上げ、日本経済の新たな成長軌道を描く。
 激変する国際情勢の荒波の中にあって、積極的平和主義の旗をさらに高く掲げ、日本を、世界の真ん中で輝かせる。
 そして、子どもたちこそ、我が国の未来そのもの。子どもたちの誰もが、家庭の事情に関わらず、未来に希望を持ち、それぞれの夢に向かって頑張ることができる。そういう日本を創り上げてまいります。
 私たちの未来は、他人から与えられるものではありません。私たち日本人が、自らの手で、自らの未来を切り拓いていく。その気概が、今こそ、求められています。
 2020年、さらにその先の未来を見据えながら、本年、安倍内閣は、国民の皆様と共に、新たな国づくりを本格的に始動します。この国の未来を拓く一年とする。そのことを、この節目の年の年頭にあたり、強く決意しております。
 最後に、本年が、国民の皆様一人ひとりにとって、実り多き、素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
平成二十九年一月一日 内閣総理大臣 安倍晋三  
 ≫(首相官邸HPより)


 ≪ 私たちはどんな時代を生きているか〜世界を覆う新しい「戦争の構造」
 蔓延する武力紛争、危機的な国際秩序

■アレッポ陥落が象徴するもの
:2016年はアレッポ陥落の知らせによって終わることになった。
:この12月、欧米系のメディアやSNS、あるいは国連機関やNGOは、アレッポに関するニュースやアピールなどであふれかえった。われわれが生きる時代の象徴のひとつが、シリアのアレッポだろう。
:アレッポで見られたのは国連やら国際社会の人道主義やらの限界だけではない。
:そこには、アメリカの力の低下のみならず政策の迷走が大きくかかわっていた。あるいはロシアやトルコやイランの地域的な影響力が明白になっていた。そして中東内部の宗派対立の図式に沿った分断が色濃く反映されていた。
:さらに言えば、中東の諸国に代表される20世紀国民国家の存在の脆弱性が劇的なまでに露呈されていた。
:冷戦終焉直後の1990年代初頭に歴史的な最大値を記録した世界の武力紛争数は、その後の約20年間でゆっくりと減りつづけた。しかしその傾向は、過去5年間ほどの間の急激な武力紛争数および紛争犠牲者数の増加によって、終止符を打たれた。
:今日の世界では、冷戦直後の記録を抜く数の武力紛争が発生している。われわれは歴史的な数の武力紛争が蔓延している時代に生きている。その傾向を牽引しているのが、中東であり、シリアである。
:2001年の9.11以降、アメリカのブッシュ大統領は「体制変換」を狙う軍事行動で中東に「民主化のドミノ現象」を起こそうとした。その後、「アラブの春」と呼ばれた大衆運動が巻き起こった。
:しかし2010年代の6年間において、中東の独裁政権の崩壊は、「混乱のドミノ現象」しか生み出さないことが明らかとなった。
:拙著『国際紛争を読み解く五つの視座―現代世界の「戦争の構造」』(講談社選書メチエ、2015年)においては、冷戦終焉とともに世界標準のイデオロギー体系となった自由主義を標榜する米国およびその同盟国群が維持している国際秩序にたいして、いくつもの深刻な挑戦がなされていることを論じた。
:2016年の世界情勢は、その国際秩序が、さらにいっそう深刻な危機にさらされた年であったと言えよう。

■自由主義的な国際秩序にたいする挑戦
:『国際紛争を読み解く五つの視座』では、自由主義陣営が中心となって維持している国際秩序にたいする挑戦を、地域ごとの特徴を持つものとして描き出した。
:東アジアには勢力均衡論、ヨーロッパには地政学の理論、中東には文明の衝突論、アフリカには世界システム論、アメリカには成長の限界論という視座を適用し、各地の紛争の構造的な背景も明らかにすることを試みた。この視座は、2016年の世界をふりかえる際にも有効だろう。
:東アジアでは新たな超大国・中国の台頭が、伝統的な地域の勢力均衡を揺るがせている。
:7月、国連海洋法条約(UNCLOS)にもとづく南シナ海仲裁裁判所が、中国の領有権の主張を退ける判決を下した。ところが提訴国であるフィリピンに生まれたドゥテルテ大統領は、むしろ中国に配慮を示して多額の援助を受け入れながら、反米的発言をくりかえした。
:2015年末からおこなわれている米海軍による南シナ海における「航行の自由」作戦も、その効果は不明瞭である。
:ヨーロッパでは、ウクライナ情勢が硬直化している間に、シリア問題への対応をめぐるロシアとトルコの間の駆け引き、難民大量流入をめぐるヨーロッパ諸国とトルコの間の駆け引きが顕在化した。そのなかでマッキンダー流の地政学でユーラシア大陸の政治情勢を見る視点が、いっそう重要になった。
:「ハートランド」としてのロシアの南下姿勢と、それを食い止めようとするヨーロッパ諸国のロシアへの根深い警戒心、そして両者の中間に立つ位置を占めるトルコの存在感は、2016年も顕著であった。
:なお6月にイギリスでEUからの脱退の是非を問う国民投票が実施されたが、ブレグジット派の勝利によって、史上初めてEUが拡大を停止し、縮小しはじめることになった。これは地政学的意味における「海洋国家」群と「大陸国家」群の再編を予兆させる大きな歴史的分岐点になりうるだろう。
:ユーラシア大陸の東と西で、勢力均衡や地政学の視点から理解すべき権力政治の動向が激しくなっている。
:いずれの場合でも、欧米諸国を中心とする諸国が既存の国際秩序の維持を目指す一方で、有力な非欧米国がその秩序に挑戦しているという流れが出てきている。

■イスラム世界内の「文明の衝突」
:よりいっそう激しい政治動向を見せたのが、マッキンダーの言う「世界島」の中央に位置する中東であった。 :2016年はサイクス・ピコ協定締結100年目にあたったが、あらためて中東の政治秩序の脆弱性に注目が集まった年でもあった。
:イラクからシリアにかけて広がる戦乱は依然として甚大であった。イスラム国の組織的勢力は削ぎ落とされているが、壊滅したわけではなく、むしろ組織化されていないテロが拡散する傾向がある。シーア派とスンニ派の対立構造は、イエメンなどを舞台にして、中東の至るところで激しいものでありつづけた。
:統計上はイランとサウジアラビアでは紛争が起こっていない扱いになるが、両国の間では地域的覇権争いが激しい。
:イランの東側であるアフガニスタンとパキスタンから、北アフリカのリビアなどにかけてのイスラム圏は、現代世界の紛争地帯の中核だ。
:文明の衝突論は、あまりにも通俗化されてしまった。文明の存在を実体的に考えすぎるならば、それは非現実的なフィクションでしかない。戦うのは常に人間であり、文明ではない。
:しかし本来の文明の衝突論で問題なのは、文明といった概念で表現しうる人間集団のアイデンティティが、現代世界の紛争に大きく関わっているという認識だ。
:もともとサミュエル・ハンチントンが1990年代前半に文明の衝突の着想を得たのは、当時のボスニア・ヘルツェゴビナの紛争などからであった。それはアイデンティティの境界線をめぐる闘争が武力紛争を引き起こす、という見かたであった。
:ところがハンチントンは、世界的規模の文明の衝突をめぐる議論では、西洋文明vsイスラム文明という対立図式に焦点を定めた。少数の過激主義者がいるだけでイスラム文明は西洋文明と対立していないというエリート層の公式見解を、ハンチントンは否定した。
:2016年の大統領選挙で勝利したドナルド・トランプは、ハンチントンに親和性のある見かたを持っているだけだとも言える。
:今日の中東では、紛争が地域に内在するかたちで頻発している。おそらくは対テロ戦争の勃発にともなうアメリカの中東への直接介入が、流れを変えた。 中東内部に西洋文明の暴力が入りこんでしまえば、中東内部において文明の衝突の現象が誘発されるようになる。そしてヨーロッパ人が定めた国境線を超えたイスラム主義の運動が必要だという議論が勢いを持つようになる。さらに、そのことがかえってイスラム文明の内部の紛争も誘発するようになる。
:拙著『国際紛争を読み解く五つの視座』で論じたが、イスラム文明圏の統一が目指されるがゆえに、イスラム世界の代表の地位を得るための中東内部の紛争も劇化するのである。スンニ派対シーア派という対立図式が非常に重要なものとなるのも、文明の代表をめぐる争いが切実なものとなっているからだ。
:文明の衝突論は、対テロ戦争の時代における西洋対イスラムという対立図式だけでなく、真正なイスラムの代表をめぐる地域内の「内戦」の構図にもかかわる視点なのだ。
:イスラム国という具体的な政治運動は長続きしないかもしれないが、同じような現象はくりかえされるだろう。なぜなら終わりの見えない対テロ戦争の国際政治構造が、文明の代表をめぐる地域内の戦いもまた誘発するからである。 中東の紛争構造に影響されるアフリカ
:ところでアフリカに目を向けてみるならば、過去数十年の間、一貫してそうであったように、依然として紛争多発地域だ。しかし20年前と比べてアフリカが変わったのは、南部アフリカが平穏化したことである。
:代わって北・東・西アフリカで新たな紛争が起こりつづけている。サハラ砂漠の南側のサヘル地域が、紛争多発地帯として立ち現れてきた。マリ、ナイジェリア、チャド、スーダン、南スーダンなどが、具体例である。
:厳密にはサヘルには属さないが、政治的には同じようなサハラ砂漠を越えてくる中東の影響を受けやすい帯に属する紛争地域として、さらに中央アフリカ共和国、ソマリアなどの紛争地が存在している。
:基本的な構図として、北アフリカでは「アラブの春」以降の中東の混乱が、継続して発生している。サヘル地帯の諸国では、イスラム過激派勢力が台頭し、紛争状態が蔓延している。ボコ・ハラム、AQIM、アル・シャバブなど、アルカイダやイスラム国の影響を受けているテロリスト勢力が紛争に大きくかかわっている。今日のアフリカの戦争は、中東を震源とする紛争構造に大きく影響されながら進展しているのだ。
:1990年代以降、世界の地域紛争分析の主な対象は、アフリカだった。甚大な「格差」が広がる「世界システム」の中で、冷戦終焉の余波を最も激しく被ったのがアフリカだった。
:中東を震源とする「対テロ戦争」が継続中の現代世界においては、別のかたちをとりながら、アフリカは新しい時代の構造的な影響を激しく受けているのだとも言える。

■対テロ戦争とトランプ大統領
:過去25年ほどにわたって、多くの識者が同時代を「冷戦終焉後」の世界と描写してきた。近年は、新しい冷戦が始まった云々といった言説で、「冷戦終焉後の後」の国際社会が語られる場合が見られるようになった。
:だが世界の紛争状況を見るかぎり、「冷戦終焉後」の時代はすでに相当前に終わっていたと言うべきだろう。すでに新しい世界戦争の構造が発生している。
:われわれは、「対テロ戦争」という終わりが見えない新しい構造的な世界戦争の時代に生きている。「対テロ戦争」とは、中東で、アフリカで、アジアで、ヨーロッパで、アメリカで、甚大な影響をまき散らしている世界的規模の構造的な戦争のことである。
:アメリカではトランプ政権が誕生する。「アメリカ・ファースト」を掲げる大統領の就任によって、アメリカは数々の国際協調の場面から撤退することになるだろう。自由主義的価値規範の世界的な広がりを推進していた冷戦終焉以降のアメリカの外交政策に、トランプは大きな変化をもたらすだろう。
:しかしそれは、日本のマスコミが言う「孤立主義」の政策だけをトランプが採用することを必ずしも意味しない。中東で大規模な軍事介入を試みるということはないだろう。しかしそれでも安全保障面でアメリカが「対テロ戦争」の構造から逃げ出すことは想定しにくい。
:むしろ「対テロ戦争」の構図の中で、勝ち抜くことを目指していくだろう。そのとき、戦争の構造は、いっそう強くわれわれを縛りつけることになるだろう。
:日本の高校の教科書で「孤立主義」と描写されている「モンロー主義」が導入された19世紀前半のアメリカでは、たとえばアンドリュー・ジャクソン(第7代大統領。ちなみにジェームズ・モンローは第5代大統領)が白人男子普通選挙を導入して「ジャクソニアン・デモクラシー」を進めた時代だった。 そのジャクソンは、インディアン(ネイティブ・アメリカン)にたいする大量虐殺や強制移住を主導する苛烈な人種差別主義者であった。
:トランプもまた、国際協調主義からは逸脱するとしても、なお経済面において、そして軍事面において、アメリカの利益を確保するかたちで無限の「成長」を追い求める大統領になるのではないか。
:トランプの言説を見ても、安全保障政策にあたるトランプ政権の閣僚の顔ぶれを見ても、「対テロ戦争」の構造は、トランプ政権下のアメリカによって弱められることはないと予測するのが妥当だ。
:2017年を通じて、アメリカの同盟国である日本は、その現実を思い知らされることになるかもしれない。
 ≫(現代ビジネス:国際・『私たちはどんな時代を生きているか』:篠田 英朗 東京外国語大学教授 国際関係論、平和構築)

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●悲鳴を上げ脱皮を試みる世界 ネジが緩み歴史逆向させる日本

2017年01月01日 | 日記

 

プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア
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●悲鳴を上げ脱皮を試みる世界 ネジが緩み歴史逆向させる日本

 安倍晋三が、漸くバラク・オバマと云う似非リベラリストが云うところの“アメリカに都合の良い価値観(安倍が得意気に口にする”普遍的価値“)”が理解できたのが2016年の総括と締めくくっても良いのだろう。そして、バター取引で、広島&真珠湾もめでたく成就した。しかし、ここで重要なポイントは、相手のオバマは、裏も表もレームダックな権力者であり、毒にも薬にもならないのが現実だから、オバマに波長を合わせた全ては、無駄な努力、時には足かせにさえなると理解しておくべきだ。

 なぜ、安倍官邸が急にオバマの顔を立てる外交に偏ったのか理由はわからないが、ひどき奇妙だ。オバマは器質的に、安倍晋三を嫌っていただろうから、辞任寸前だけ帳尻を合わせる思惑が、双方の政権内に存在したのかもしれないが、帳尻合わせが、足枷になるのなら、本来避けるべきだったと思う。

 オバマが退任1か月を切った段階で、米露と云う大国同士の関係を一段と悪化させるような制裁などが含まれる外交政策を打ちだすことは、常識的にあるべき姿ではない、子供じみた、イタチの最後っ屁的であり、オバマは、自ら自らを辱めたと云える。これからという、プーチンとトランプは歯牙にもかけない応対は、中々のものである。

 それにしても、上述オバマの子供じみた態度の記事が目についたが、世界の主だったプレーヤーのチェンジも見逃すことは出来ない。我が国の政治だけが、余りにも無風なために、世界情勢を日本政府及び日本人が見誤る可能性が非常に高い状況が高まる2017年になるものと思われる。安倍晋三は、壊れかけている「欧米価値観」に追いつき追い越せな心境だろうが、彼のイメージする「欧米価値観」は崩壊寸前で、追いついた観念が消えてゆく悲劇に気づいているのだろうか、チョイと心配になる。その上、年頭所感では、中華思想に出も被れての加、世界の中心で~~、などと叫んだようだが、頭は大丈夫だろうか?


≪ プーチン氏、米外交官追放しない方針 トランプ氏に期待
 米大統領選へのサイバー攻撃をめぐる問題は、オバマ政権がロシア政府の関与を断定したことで、米ロの報復合戦に発展しかねない危険な状況に陥った。3週間後に発足するトランプ政権はロシアとの関係改善に前向きとされ、オバマ大統領の措置を撤回するかどうか注目される。
 「ロシアは今後の米国、世界中の選挙に干渉し続けるだろう」。米政府高官は29日、世界がロシアによるサイバー攻撃の危険にさらされていると訴え、報復措置の正当性を強調した。
 オバマ政権は大統領選中から、ロシア政府の関与を指摘。オバマ氏は今月の会見で「プーチン大統領なしでこうした行為は実行できない」とプーチン氏を名指しで批判した。
 これに対し、プーチン氏は23日の記者会見で「重要なのは誰が攻撃したかではなく、暴露された事実だ」と反論。米大統領選の結果に影響があったとしても、暴露された情報が事実だから問題ないという立場を強調していた。
 プーチン氏は30日発表した声明で、米国の制裁を「ロ米関係を損なうための挑発」と厳しく批判した。一方で、米国の外交官の追放などの対抗措置は見合わせる方針を表明。「トランプ次期大統領の政策に応じてロ米関係回復のための方策を決める」と、トランプ氏への強い期待を示した。
 現在の米ロ関係は、ウクライナやシリア問題を巡って対立し、冷戦後最悪とされる。今回の報復措置で、オバマ政権とロシアは完全に決裂してしまった。
 ただ、オバマ氏はあと3週間で退任し、トランプ政権に代わる。トランプ氏はロシア寄りの立場を取っており、プーチン氏と米ロ関係を改善させたい意向だ。
 ロシアがサイバー攻撃で大統領選に介入したとされる問題についても「ばかばかしい」「陰謀説」などと一蹴。29日の声明では「来週、米情報機関のトップと会って最新情報を得る」としつつも、「もっと大きく、良いことに関心を移す時だ」と述べ、問題に向き合おうとしないような発言に終始している。
 今回のオバマ氏が決めた報復措置は、議会の承認が必要ない大統領令に基づいている。このため、トランプ氏が大統領に就任した後に取り消すことは可能だ。
 しかし、オバマ政権の高官は「もし、将来の大統領がロシアのスパイをたくさん米国内に入れたいのなら、制裁を覆せばいい。しかし、ロシアの行動に懸念が無いという疑問に答えなければならない」と指摘。ロシアの関与は決定的だとの自信を見せている。
 さらには、もともと「反ロシア」の立場を取る共和党主流派の存在もトランプ氏を悩ませそうだ。
 共和党重鎮のマケイン上院軍事委員長とグラハム上院議員は声明で「米国の民主主義に対する不快な攻撃にロシアが払う代償としては小さい」として、オバマ氏の報復措置は不十分だと指摘。「議会でロシアにより強い制裁を科す」と強調した。トランプ氏が報復措置を取り消すと、就任早々、議会との対立が先鋭化する恐れがある。 ≫(朝日新聞デジタル:ワシントン=杉山正、モスクワ=駒木明義)


≪ トランプ氏「プーチン氏とても賢い」 ツイッターで称賛
 米政府の制裁に対し、ロシアのプーチン大統領が対抗措置を見合わせる方針を示したことについて、トランプ米次期大統領は30日、プーチン氏を称賛した。
 トランプ氏はツイッターで「すばらしい対応」とした上で、「私はいつも彼がとても賢いと知っていた!」とつづった。
 オバマ大統領は、米大統領選でロシア情報機関がサイバー攻撃を仕掛けて介入したとして29日に、スパイと認定した米国駐在のロシア外交官ら35人の国外退去処分などの報復措置を発表した。米政府は、ロシアがトランプ氏の当選を狙ったとみており、プーチン氏自身の関与の可能性も示している。
 プーチン氏は30日、「トランプ次期大統領の政策に応じてロ米関係回復のための方策を決める」として、ロシア寄りの立場を取るトランプ氏に期待を寄せた。
 在米ロシア大使館はプーチン氏を称賛するトランプ氏のコメントをリツイートした。 ≫(朝日新聞デジタル:ワシントン=杉山正)


≪ 米英の「まさか」、世界を揺らす 激動2016
米次期大統領にトランプ氏、英国はEU離脱決定 2016年は1年前には想像もしていなかったニュースの連発だった。過去の経験や世論調査で固められたメインシナリオは一瞬で崩れ、小さな可能性とみていたことが新たな常識になった。各分野の担当記者が歴史的な出来事を振り返るとともに、17年の気になるテーマを展望してみた。

 ■リベラルに反発、分断あらわ
 米大統領選の最終盤まで劣勢とみられていた不動産王ドナルド・トランプ氏がヒラリー・クリントン前国務長官を破り、次期大統領に就く。8年のオバマ政権の間にたまった社会への不満を代弁したトランプ氏への支持は、予想以上に強かった。英国の欧州連合(EU)離脱など驚きの投票結果が続いた2016年の余波は17年も続きそうだ。
 米政治専門サイトのリアル・クリア・ポリティクスの集計では、大統領選直前の全米支持率(11月1~7日)の平均はクリントン氏が3.2ポイント差をつけて優位だった。本番の得票率でもクリントン氏が約2ポイント上回り、調査はほぼ誤差の範囲だったといえる。
 しかし鉄鋼業など輸出不振企業が集まるラストベルト(さびた地帯)と呼ばれる中西部の一部の激戦州で、トランプ氏の得票が想定以上に伸びた。州で勝った候補が選挙人を総取りする制度によって、トランプ氏が過半数の選挙人を確保する結果となった。
 クリントン氏の誤算は「女性初の大統領」への抵抗が強かったことだ。トランプ氏の男性の得票率は53%に達した一方、女性のクリントン氏への投票は伸びなかった。白人労働者の票を掘り起こしたこともトランプ氏の勝利につながった。この層は普段は投票に行かない人も多いとみられていたが、移民や環太平洋経済連携協定(TPP)批判など、労働者層の不満を代弁したトランプ氏に共鳴して動いた。
 SNS(交流サイト)で飛び交った偽ニュースの影響も大きかった。米主要テレビ・新聞がトランプ氏批判のニュース一色だったなかで、トランプ支持層は主要メディアをエスタブリッシュメント(支配階級)とみなし、信用しなかった。
 逆に支持を集めたのが、極右的な思想「オルトライト(ネット右翼)」を標榜するネットニュースだ。差別や偏見に反対する「ポリティカル・コレクトネス(政治的な適切さ)」を批判し、白人至上主義を公然と唱える。クリントン氏が人身売買をしていると信じた男性が、現場とされた首都ワシントンのピザ店を襲撃する事件も起きた。
 オバマ大統領の任期中に進んだ米国社会のリベラル化への反発は強かったようだ。政治やメディアが信頼を失い、大きな分断があらわになった米国社会をトランプ氏がどう立て直すのかにも関心が集まっている。

■来年は… ツイッター発「劇場型」政治展開
 トランプ次期政権は選挙戦と同じく「劇場型」政治を進めることになりそうだ。トランプ氏は政権づくりにあたってツイッターを多用。「ベン・カーソン氏を住宅都市開発長官に真剣に検討している」と意中の人物を正式発表前に明かすこともある。
 米とキューバの国交回復再交渉や、中国の南シナ海進出への批判、大統領専用機の開発費高騰を指摘したのもツイッターだった。「報道機関が正しく立派に報じていればツイッターを使う理由はほとんどないのだが」とトランプ氏は語る。
 ロシアとの接近を示唆するトランプ次期政権では、テロとの共闘など中東情勢に大きな変化をもたらしそうだ。2020年以降の温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を主張していることも、国際社会への衝撃は大きい。
 一方で公約の多くが実現しない恐れもある。メキシコ国境への壁建設、巨額のインフラ投資は財源の見通しが立たない。撤廃をうたっていた医療保険制度改革法(オバマケア)はすでに軌道修正を表明した。  日米同盟への影響はまだ見通せない。駐留米軍の費用負担増を主張していたトランプ氏だが、大統領選勝利後には言及を避けている。安全保障の担当閣僚を元軍人が占めたことから、次期政権が同盟重視の姿勢を維持するとの観測もある。 (ワシントン=川合智之)

 ■「反移民」の波高く
 「英国は欧州連合(EU)を離脱することが決まりました」――。国民投票結果の大勢が判明した6月24日早朝、BBCのキャスターが沈痛な表情で宣言した。EU離脱が現実になった瞬間だ。英国のキャメロン首相(当時)は「新しい指導者が必要だ」と、即日辞意を表明した。
 英選挙管理委員会による全382地区の集計の最終結果は、離脱支持が1741万(51.9%)、残留支持は1614万(48.1%)。残留支持が優勢だった事前の世論調査に反し、離脱支持は残留支持に120万票以上の差をつけた。
 離脱の衝撃はすぐさま世界の金融・資本市場を揺さぶった。離脱決定を受けた同日の日経平均株価は1日の下げ幅が8%近くと16年ぶりの大きさを記録し、主なアジア株市場は全面安に。欧州株も大幅に下落し、英通貨ポンドは対ドルで31年ぶりの安値を付けた。
 なぜ英国はEU離脱に傾いたのか。
 英国は2000年代、労働党のブレア政権時代にEUに新規加盟した中・東欧諸国から大量に移民を受け入れた。近年の移民純増数は年間30万人に膨らみ、労働者層や白人の保守層を中心に「移民が不当に雇用や社会福祉を奪っている」という不満が蓄積されていった。
 キャメロン氏の後任の首相選びは混乱を極めた。同氏の盟友ジョンソン前ロンドン市長、ゴーブ司法相……。数々の候補者が浮かぶ中で、国民投票で残留派だったメイ内相が、与党保守党内の投票を経て新首相に選ばれた。戦後の英政治でサッチャー氏に次ぐ2人目の女性首相の誕生だ。
 国民投票では離脱を決めたが、今後の離脱に向けた道筋は不透明だ。
 メイ首相は17年3月末までにEUに離脱を通知し、離脱交渉を始めたい考え。原則2年間の交渉期間を経て、19年春にも離脱する絵を描いているが、いまなお英国内でもどのような形で離脱するかの議論は収まっていない。
 英産業界はEU域内無関税のEU単一市場に参加できなくなることへの不安が強い。メイ首相は単一市場への参加は多少犠牲にしても移民制限を最優先にする「強硬離脱」の姿勢だが、EU側は「いいとこ取りは許さない」(ドイツのメルケル首相)考えで、交渉は難航必至だ。
 来年は仏独の国政選挙も控えており、EUの要である両国の次期指導者が決まるまで、交渉時間が空費される恐れもある。
 離脱決定後に進んだポンド安で輸出は好調。足元の英経済は堅調さを保っている。だが、離脱を巡る不透明感が長引けば、英国への投資は大幅に減少しかねない。市場は17年も離脱に関するニュースに揺さぶられることになりそうだ。 (ロンドン=小滝麻理子)





 ≫(日本経済新聞)



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