維新史再考―公議・王政から集権・脱身分化へ (NHKブックス No.1248) | |
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●無償化、箱ものを集票の具に使うな 保育士を魅力的職業に
これも、安倍政権の悪しき慣例の部類に入る犠牲者だが、3歳児までの保育と云うものは、いわば、動物的生き物から、社会性を身につけた人間に変化してゆく最も重要な時期である。この動物と人間の境界線をつかさどる職業に携わる保育士の待遇が、時間給にすると最低賃金に満たないと云う実態は看過できない。
安倍政権の馬鹿度は、有権者の票に繋がる政策をキャンペーン的言葉に変える手法が多く、「保育園増設」「保育園無償化!」などの方向に突っ走る。当然自由主義市場では保育園の箱物に重点が移る。しかし、無償化するような金があるなら、最悪の労働条件と言われ、他職業より9万円近くの低賃金で働かされている保育士の待遇をあげるのが、至極当然の政策だ。
極悪環境なのだから、保育士不足は慢性化しているのを百も承知で、やることは、有権者に訴求する「無償化」などに走るのが安倍政権だ。この無償化案に批判的言葉が続くことで、集票に不具合ありとみたのか、「人づくり」の2兆円の中から、保育士対策費用も充当しようと考えたようだ。
しかし、その改善策の額は、保育士や潜在保育士の心を揺さぶるような効果は期待できず、上げました、と云うアリバイ作りに利用されるような額である。平均的職業よりも賃金が9万円くらい低く抑えられている保育士の給料。彼ら彼女らが、保育士でも社会生活を営める、と確認できる待遇改善策が講じられないと意味はない。
取りあえず、月額6000円増やすそうだが、若い保育士にとって、まったく魅力的給与アップではない。つまり、上げても上げなくても、同様の効果と云う金額だ。7年以上の経験を持つ場合4万円だ、などと言っているが、そもそもは、箱は余っている、足りないのは保育士だ、と云う実態には無関心なのは、保育士と云う職業が、票に結びつかないことなのだろう。保育の無償化など集票効果に目がくらみ、保育士が絶対的に増える労働条件を提示しない。おそらく、離職率や正職員が少ない保育士達には団結する機会が与えられないので、政治的発言が出来る圧力団体が構成されにくいのも問題なのだろう。だいたいが、保育園を自由市場で競争原理と云う発想が人間離れしている。なにが、人づくり元年だ(笑)。
全産業の平均月収が304,000円だったのに対し、保育士は215,800円と9万円近い開きがあるのだから、一気に一律4万円アップ。一年経験毎に1万円アップ。そうして、月額30万円になる職業にまず引き上げることだ。このくらいの刺激策がない限り、永遠に「保育園落ちた」は、安倍政権の足を引っ張り続けるだろう。また、保育士への事務負担など、保育園事務職など、構造的問題点も検討すべきだ。無償化する予算があるなら、するべき政策が間違っている。アリバイ作りではない、政策が求められる。
保育が充実し、働きながら子育てが可能な社会の実現は、少子化に一定の歯止め効果はあるし、場合によれば、少子化の甲斐性に向かうきっかけにもなりそうな課題だ。しかし、日本人の少子化が解消することは、日本人の労働力が増えることであり、新自由主義経済が望む、低賃金化で国際競争力という目標とは矛盾する。つまり、急遽の一策として“移民”の社会的認知可能な人口構成に齟齬が生まれると思っているような空気だ。
≪ 疲弊する保育士「自分の子を預けたくない」
急増するニーズで負担増、保育でなく流れ作業に「心苦しい」
核家族化がいっそう進む平成時代。地域の保育園は働く親と子どもだけでなく、慣れない育児に向き合うすべての家族の心強い存在です。しかし、その担い手である保育士たちは、急増するニーズの中で疲弊しています。理想と現実のギャップに悩んだ末、現場を離れる決断をした人もいます。(朝日新聞文化くらし報道部記者・田渕紫織)
■時給に換算すると最低賃金以下
埼玉県志木市の女性保育士(31)は、昨年9月に長男を出産して現在は育児休業中。今年9月には、勤めている認可外保育園で復職する予定だ。
復職に向け、保活を始めようとしている。しかし、葛藤もある。
「果たして、自分の子を預けたいと思える保育園ってあるの?」
都心から少し離れた志木市も駅前の再開発で大規模マンションが建ち、ここ数年で保育園に入る競争は激しくなっている。市内に勤める保育士は入園選考で優遇される制度がある。入りやすいかもしれないが、「自分の子を預けたくない」と思う理由とは――。
ネットメディアで4年間、広告営業をした後、保育士の資格試験を受け、東京都内の認可保育園に転職した。「前職も『24時間働けますか』の体育会的世界だったけど、保育園は次元の違う重圧と恒常的な忙しさで、すりきれるような毎日だった」という。
シフト上は、早ければ午前6時45分出勤、午後4時15分退勤。だがその後、午後9時ごろまでサービス残業が普通だった。タイムカードはなかったが、時給に換算をすると最低賃金を割った。
■「預けたいと思える保育園ってあるの?」
職員は新卒が中心。1年目から0歳児クラスの担任になり、6人の子どもを20歳の新人保育士と2人で受け持った。周りの新設保育園と同じように園庭はなく、散歩先では他園の園児と入り乱れ、見失わないよう、けがをしないように気遣うことで精いっぱい。保育士が1人でも休むと、晴れていても散歩に連れて行けなくなる。
子どもの記録や園便りを書くことやミーティングの大半は、子どもが帰った後のサービス残業。持ち帰ることもある。加えて、月1回のペースで行事があった。生活発表会の桃太郎劇では、子どもが着る服を家に持ち帰って未明まで縫った。
「このままだと、この子たちも自分も共倒れになる」と感じ、1年で正職員から非常勤に移った。2年後には、新規開園した系列の認可保育園に。駅ビルの中にあり、保護者からは人気で高倍率の保育園だったが、厳しい職場環境は変わらず、2年もしないで辞めた。
今回、子どもを預けようという側に回る。「質が低下する現場をよく知るだけに、保育士は自分の子を長時間預けるのは望まないと思う」。早く迎えに行きたくても、復職してシフト勤務に入ると難しい。保育士が出産後、現場に戻らない気持ちが今ではわかる。
■「潜在保育士」、86万人に上るが…
子どもが保育園に入れない「待機児童」が解消しないのは、保育士不足が背景にある。業務が忙しいことに加え、待遇の悪さから、現場から離れる保育士も多い。保育士の資格を持っていても働いていない「潜在保育士」は、2016年度で推計86万人に上る。
独立行政法人福祉医療機構が16年に発表した調査では、回答を寄せた全国5726施設のうち、保育士が不足していると答えた施設は25%。このうち、18.3%が受け入れる子どもの数を制限していた。
潜在保育士958人を対象にした厚生労働省の13年調査では、就労経験のない人が3割いた。就労を希望しない理由(複数回答)は、「賃金が希望と合わない」が48%、「責任の重さ・事故への不安」が40%、「休暇がとりにくい」が37%だった。
■保育園に耐えられず、シッターに
東京都足立区の女性(41)は短大の保育科を卒業し、保育園と幼稚園で3年ずつ勤めた。結婚を機に8年ほど現場を離れ、3人の子どもを育て、11年に復職。その後、私立認可保育園、小規模保育園、認可外保育園とさまざまな種類の保育園で働いた。
どの園にも共通していたのは、1人で多くの子どもをみる忙しさと、手書きで非効率な書類の山だ。保育士たちが少しでも休憩したいがために、子どもの保育より保育士の都合が優先される。
ある園では、子どもが離乳食を飲み込むペースを無視して次々に口に運び、戻しそうになっていると「食べなさい!」と声を張り上げていた。お昼寝をしない子どもを押さえつけて寝かそうとし、抵抗する子どもを大きな声で罵倒するのも日常。どの園も上下関係が厳しく、ベテランがそうしていると、従うしかなかった。
耐えられなくなり、2年半前に辞めて、今はベビーシッターをしている。多いときで週6回、1日に3軒の家をはしごすることもあるが、疲れはあまり感じない。無意味な工作や書類の持ち帰り残業もない。何より自分にゆとりが生まれ、1対1で子どものいろんな発達を余裕をもってみることができる。
今も保育士派遣会社からメールで次々と「急募」の求人が送られてくる。でも、戻る気持ちにはならない。
■最低基準並みの人数、保育でなく流れ作業に
私立の認可保育園で1歳児クラスを担任する茨城県内の50代の女性保育士は20年以上のベテラン。公立認可保育園の臨時職員だったときは、月給が10万円を割っても、子どもたちの成長ぶりを同僚と喜び合えることにやりがいを感じ、持ちこたえていた。しかし、私立認可保育園に移った5年ほど前から環境が一変した。
認可保育園には、保育士1人が担当する子どもの数に国の最低基準がある。例えば、0歳児クラスなら子ども3人、1~2歳児は6人。だが、これは老朽した家屋やバラックが当たり前だった戦後まもない1948年につくられた基準で、実際には多くの自治体や園が独自に手厚く配置している。一方、国は待機児童対策として、保育士1人が受け持つ子どもの数を減らす規制緩和を促す。
女性の勤める園でも、以前は保育士1人で1歳児クラス4人の子どもを見ていたが、今は最低基準並みの6人になった。
まだハイハイの子どもが活発に走る子どもにぶつかりそうになる。散歩の前に1人がゆっくり靴を履いていると、もう1人が目を離したすきに外に出ようとし、かみつきの多い時期の2人がけんかを始める……。
ベテランぞろいでも危ない場面は減らない。
食事は終わる時間がばらばら。食後に歯を磨き、着替え、トイレとタイミングの違う6人を見つつ、布団を敷いて寝かしつける。子どもたちの発達に合わる保育にはほど遠い、流れ作業になってしまう。
昼寝中は本来、約20分おきに体に触れ、鼻に手をあてて呼吸に異常がないか確かめる必要がある。でも、親への連絡ノートや日誌を書いたり行事の準備をしたりして手が回らず、寝ている姿を目で追い、せき込んでいないか耳で確認するのが精いっぱいだ。 「見学に来た保護者には行事が充実しているとアピールしているが、見えないところで命に直結する一番大切にすべきことがおろそかにされている。このままでいいはずがない」
園長にたびたび保育士の増員を求めても「国の基準がそうなんだから」と押し戻された。仕事があふれているため、休日は無給で出勤する。毎年5人ほどが離職し、求人をかけても応募はない。「この現場の悪循環に目を向けて欲しい」。そう訴える。
「待機児童が増え、対策としてハコだけは次々とできても、保育士1人あたりの負担は増し、後回しになるのは物言えぬ子どもたち。毎日心苦しい。質を落として量を増やす方法で本当にいいのか、よく考えてもらいたい」 ≫(朝日新聞デジタル)
≪ 保育園落ちた…大阪市で3千人「働かないと破綻します」
保育園落ちた――。4月からの認可保育園入園をめぐる1次選考の結果が、関西の自治体でも発表されている。落ちた親は「働けない」と怒りの声をあげる。自治体も保育園を増やそうと知恵を絞るが、ニーズになかなか追いつけない。
大阪市では1万4千人が4月からの認可保育園などへの入所を申し込んだが、約3千人が1次選考から漏れた。今月2日に結果が郵送されると、各区の窓口には親が相談に相次いで訪れた。
「働きたいのに、働けない」。ある区の窓口で男性(32)と妻(24)が訴えた。2歳と生後7カ月の双子の息子3人全員が落ちた。
手取りは月20万円ほど。無職の妻はフルタイムで働こうと求職中だが、子どもを預けられる場所が決まらず、内定に至らない。実家も遠くて頼れない。
市に出した認可保育施設の申込書には「金銭的にも共働きしないと、破綻(はたん)します」と書き、送迎できる距離にある9園を希望先に書いたが「全滅」だった。
認可外の近くの保育園に預ける手はある。しかし、所得に応じて保育料が決まる認可園と違って高い。3人で月に計約12万円ほどかかる見込みで、男性の手取りの半分以上が消えることになる。
男性は市に行政不服審査法に基づいた審査請求をすることを考えている。「結果は変わらないかもしれない。でも、市には各家庭の実情をもっと見て欲しい。今後、困る人が出ないようにするために動きたい」と話す。
中央区の窓口を長男(1)と訪れた会社員女性(29)も、希望した4カ所の保育園が全滅。勤務先の従業員は約30人。「4月以降のシフトも組まれている。従業員も少ないのに、今さら『落ちました』なんて言えない」 大阪のベッドタウンの吹田市。1次選考では約960人が落ちた。市役所に相談しにいった母親(31)は窓口で泣き出した。派遣社員で働き、5歳と3歳の娘を夫と育てる。下の娘が通うのは2歳までの小規模保育園。4月からの園を申し込んだが1次選考で落ちた。「本当は3人目が欲しいけれど、こんな子育て環境では現実的に産めない」
待機児童は都市部と、手厚い子育て支援で人口が増えた自治体で多い。ただ、園を増やそうにもまず場所の確保が課題になっている。
「保育園に適した土地が少ない。それなのにタワーマンションなどが建って局地的に就学前人口がどんどん増える」と大阪市の担当者は言う。市が目指す今年4月の「待機児童ゼロ」達成の見通しは不透明だ。
市は4月から、70戸以上のマンション内に保育園が整備された場合、入居者の子どもの優先入所を認める制度を始める。「マンション販売のアピール材料にもなる。マンション業者に一緒に待機児童対策をしてもらいたい」
兵庫県西宮市は離れた地域の園に通ってもらう方法を考案。保育園を探す「保活」の「激戦地」は地価が高く、建物が密集して保育園用地が少ない。このため、離れた地域に約60台の駐車場を併設した保育園を来春に開設する。園の近くに駅があるため、親が子どもを送った後、車を置いて電車通勤することを想定する。吹田市は来春に公園内に保育園を開く予定だ。
一方、保育園を増やせば、保育士も必要だ。待遇を改善して長く勤めてもらうため、1次選考で2千人超が落選した神戸市は、就職からの7年で最大計140万円の一時金を支給する制度を4月に始める。
手厚い子育て政策で就学前人口が増える明石市は保育士のアフターフォローを強化。今年中に、「保育士総合サポートセンター(仮称)」を設置し、保育の悩みに園長経験者がアドバイスをしたり、雇用関係のトラブルに弁護士資格がある市職員が相談に乗ったりする態勢を作る。
岡山市では認可保育施設で働く保育士らの賃金を、独自で1カ月あたり平均6千円上乗せする制度を今年度に始めた。ただ、1次選考に申し込んだ4827人のうち1767人が「落選」。市は「働く女性の増加に対応しきれていない」と話す。
こうした状況について、横浜市副市長在任中に保育所整備に関わった前田正子・甲南大教授(社会保障論)は「待機児童解消に夢のような解決策はなく、どの自治体も土地や保育士の確保に悩んでいる。幼児教育・保育の無償化をすれば、待機児童がさらに増える恐れがある。国は、保育園の量と質の確保を最優先にすべきだ」と話す。
≫(朝日新聞デジタル)
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