世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●去りゆくジャパン・ハンドラー:Gカーチスの戯言から学ぶこと

2017年11月27日 | 日記

 

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●去りゆくジャパン・ハンドラー:Gカーチスの戯言から学ぶこと

 コロンビア大学政治学者のジェラルド・カーティス氏の名を聞いたら、真っ先にジャパン・ハンドラーズのメッセンジャーを思い浮かべる人が多いことと思う。筆者も、その一人だ。“CIAの回し者め!”と思うのだが、安倍自民党政権では、彼のご託宣ささやき戦術も上手く機能していなかったようだ。以下の朝日のインタビュー記事を読んでみると、ワシントンが望む日本像と安倍官邸は必ずしも忖度しない動きを多発させている。

 ある意味でアメリカに逆らっているのだから、たいした度胸である。しかし、たいした度胸と云うより、時代が安倍首相に都合よく回っている。非常に不愉快だが、それが事実だ。しかし、アメリカのワシントンとホワイトハウスと云う二本の導線の一つに逆らっているだけで、ホワイトハウスはアメリカの主流ではない。つまり、単にホワイトハウスの主、トランプ大統領と同調しているだけで、ワシントンとは不仲と云うことだ。ただ皮肉にも、トランプの4~8年間が安倍首相の3期目と重なっている点がラッキーなのだ。

 この安倍首相の僥倖が悩ましいのは事実だが、世界的には、こういう人物が生まれる素地は、グローバリズム世界の中にあっては、自然発生的に生まれる可能性が高くなっている。グローバリズムの世界的席巻は、世界中の大小関係なく、国という単位を凌駕する形で進んでいるわけで、国境がボーダレスになっている。国教の垣根が低くなることは、国の威信や制約も低くなるわけで、総体的に国家の概念が、薄まっていることになる。それを良い方向と考える国と、悪い方向だと考える国や指導者が生まれる結果を生んでいる。

*その結果、トランプ大統領であったり、安倍首相であったり、ドゥテルテ大統領、プーチン大統領、習近平総書記、金正恩らを出現させる結果になっているのだろう。彼らに共通するものに、強権的態度と、立憲主義に違反してでも、秩序維持を重んじたり、民主主義自体に尊厳を感じていない傾向が強く見られる特長を有している。しかし、それゆえに、支持率が低いとばかりは言えないのが現実だ。アメリカや日本においては、彼らの支持率が40%を着る状況であっても、選挙制度や有権者の政治参加の低さに支えられ、その地位を得るという民主主義崩壊の中に生まれた“アダ花”の如く咲き誇っている。

 彼らは支持率が低くても、実は盤石なのである。つまり、必ず投票行動をとる、30%前後の岩盤支持者さえいれば、後はさほど考えることもなく、政権を維持できるのが、最近の民主主義だと、舐めてかかっているわけである。つまり、彼らが盤石であるために、その岩盤に向かってだけ政策を強靭化させておけば、彼らは、一層盤石な支持層となって、安倍やトランプに協力することになる。

 ここで筆者が言いたいことは、資本主義がグローバリズムの波に乗ることによって、国境の垣根を低くし、経済的成功に向かえば向かうほど、国家の概念を希薄化させてしまった。この国家の概念の希薄は、その国の国民に、日常の自然から生じるバーチュー(virtue:徳・美徳)や民族的同調意識とか、理念、理想ではなく、“損得感覚”に左右される国民の増加を意味している。つまり、民主主義と云う、危うい政治体形に必要な無形の共通感覚(正義、公正公平)などよりも、損得勘定で物事を合理的に決定する感覚が幅を利かせてしまうと、駆使できる政治権力ツールは、ナショナリズムと損得勘定の二つになってしまう。

 つまり、民主的近代国家の成立概念の基盤が崩れかけている、いや、崩壊した今、ナショナリズムと損得勘定が、政権維持にとって最も容易な政治ツールになっているわけで、トランプや安倍の場合、この二つのツールを見事に駆使して成立している政権だと言える。無論、彼らが正確に、これらの事情を認知していたわけではなく、時代の女神が微笑んだに過ぎないのだが、結果論から見て、うまく、その波に乗っている。

 ここで考えるべきことは、彼らが、民主主義にそぐわない人物であるという非難よりも、その国の国民が、民主主義と云う危うい政治体制に、まったくそぐわない人々になってしまった方に着眼すべきかもしれない。ワシントンが考えている民主主義(普遍的価値政治)が良いものではないとしても、それで、アメリカは世界の覇権を維持してきた。それが、経済のグローバル化で、国境の垣根が低くなり過ぎ、国家概念を希薄化させて、同時に、幻影的民主主義おも葬り去る方向にまっしぐらに突き進んでいる、と言えるだろう。

 グローバル経済による、国家の形骸化と人々のネーションへの意識喪失と損得勘定(感情含む)合理功利主義の蔓延は、ごく普通に眺めていると勢いを増すばかりである。この合理功利主義が完全に履行されれば、ナショナリズムなどが抬頭する隙間はないのだが、そこに出鱈目と云う人間性が強く関与した場合、グローバリズムによる国家喪失を食い止めようと、トランプ、プーチン、習近平、安倍晋三などが、ナショナリズムと云う武器を使う危険性は大いにあるのが現状だ。ナショナリズムの先には、戦争と云う誘惑が常態化しているので、戦争のリスクを常にはらむことになる。

 我が国においては、安倍自民党政権が、右派敵政党である希望の党、日本維新の会及び政権与党であるために存在する公明党の勢力により、ナショナリズム強化の基盤となる憲法改正により、戦争が発動しやすくなる国家体制を築こうと云うのが、現在の流れである。これを食い止める勢力が、立憲民主党と共産党だけというのは、何ともうら寂しい所為勢力図である。民主主義を強化する方向への勢いは、世界的に弱まっているだけに、日本だけが例外でいられる可能性は低いのだろう。

 個人的な考えだが、ムキになって民主主義を守るという姿勢から、ナショナリズムを健全に育てる方向性であるとか、日本の国家としての価値観を、欧米文化に属する、欠点だらけの普遍的価値に基づく民主主義とは異なる道を模索するのも、これからの民主主義逆風下においては、重要なミッションなのではないだろうか。明治回帰のような猥雑な野心ではなく、我が国三千年の歴史に学ぶ、民族の声(知恵)を聞き尋ねるような努力から、日本独自の価値観、そんなものを見出したいものである。

*以下は、ワシントン好みの日本像を語るGカーティス氏のインタビュー記事である。


≪ Gカーティス氏「日本のチェックアンドバランス壊れた」
 衆院選でなぜ自民党が大勝し、政治はどうなるのか――。長年の日本政治ウォッチャー、米コロンビア大のジェラルド・カーティス名誉教授が23日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で苦言を交えて語った。
 安倍晋三首相が衆院を解散したのは、議員任期の4年間さらに首相を続けたいからだ。加計・森友問題を避けるためといった批判もあるが、彼は首相の解散権を賢く使った。議院内閣制とはそういうものだ。  それでも希望の党が現れて自民党に危機感が走ったが、野党の分裂で地滑り的に勝った。自民党はラッキーだった。野党が協力すれば自民党は40~60議席を減らし、安倍首相は辞めざるを得ないと私は思っていた。小池百合子代表がそれを吹き飛ばした。
 1人が当選する小選挙区制では、政党は支持を求める有権者の幅を広げないといけない。中道から右の自民党に対抗するなら、中道から左だ。だが彼女は、合流を求めた民進党でリベラルな人たちを排除した。傲慢(ごうまん)な姿勢を示し、安倍首相に向いていた傲慢だという批判も弱めてしまった。
 彼女自身が衆院選に出なかったことも、「希望の党は政権を取れない。代表が首相になれると思っていないから」というメッセージになり、希望のない党になってしまった。次の衆院選までになくなりかねない。
 野党第1党になった立憲民主党は、無所属や希望の党からの離党者も入れて党勢を拡大しない限り、明るい未来があるとは思えない。枝野幸男代表は永田町での数あわせはしないと言う。草の根政治を語るのはいいが、政治で権力を求めずに何を実現するのか。
 安全保障政策も問題だ。彼らは集団的自衛権の行使を認めた憲法解釈の変更や、それを前提とする安全保障法制に反対している。政権を取れば日米関係に危機を招きかねず、自民党に代わる大きな政党の核にはなれないだろう。
 戦後日本政治の大きな問題なのだが、なぜ自民党に対する真の挑戦者が生まれないか。政治学的には、小選挙区中心の衆院の選挙制度は日本になじまない。二十数年前に政権交代可能な二大政党制を目指して導入されたが、いま8党もある。冷戦下では社会主義を掲げる強い野党があったが、いま野党は何をしようとしているのかわからない。
 このままでは、一党支配か、政権交代があってもスキャンダルによるものになる。日本のように貧富や民族などで社会的に深い溝がない国では穏健な多党制がふさわしい。複数が当選する中選挙区制に戻すか、政党に投票する比例区の定数を増やすのが適当だ。
 もう一つの大きな問題は民主主義制の下でのチェック・アンド・バランスだ。日本政治ではかつて自民党内で首相の座をめぐる派閥間の競争があり、対抗軸として市民団体と連携した社会党があった。官僚組織にも自律があった。それがここ数年で破壊された。
 首相官邸が自民党と官僚を支配している。これほど官邸が強かったことはない。政策は自民党ではなく官邸が主導し、人事を握られた官僚組織は忖度(そんたく)している。大統領制的な官邸主導を目指した1990年代の橋本政権での改革が、小泉政権に引き継がれ、安倍政権で強まっている。
 新たなチェック・アンド・バランスが必要だ。安倍政権で国民は必ずしも幸せではないが、野党は割れている。安定していてもチェック・アンド・バランスのない支配は健全な民主主義ではない。野党がまとまり役割を果たすべきだ。
 ただ、今回の衆院選で自民党が勝ちはしたが、安倍首相が掲げる憲法改正は進まないだろう。
 改憲は彼の信条だが、彼は現実主義者でもある。改憲の発議に必要な衆院、参院の3分の2以上に改憲しても構わないという声はあっても、具体的に何を変えるべきかの合意はない。9条を変えるのは最も難しい。無理に進めれば国会で非常に感情的な議論になり、何も生まれない。
 安倍首相が勝ってもうれしそうでないのは、小選挙区制では有権者の移り気で政権交代が起きかねないと今回改めて感じたからだろう。政権復帰から5年、自公両党は衆院で3分の2を保ってきたが、発議へ動かなかった。それをなぜこれから4年でできると言えるのだろうか。 (発言は英語。構成は専門記者・藤田直央)
 ≫(朝日新聞)

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●保守対リベラル 護憲(保守)改憲(リベラル)と云う逆転現象

2017年11月18日 | 日記

 

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●保守対リベラル 護憲(保守)改憲(リベラル)と云う逆転現象

 安倍首相が野党の要求で嫌々応じた所信表明演説は手抜きが目立つ手短所信表明だった。憲法改正や北方領土など、厄介な所信は飛ばすか、触れる程度で低い熱意を示していた。無論、憲法改正の衣の下の鎧は、国民投票で過半数絶対の自信がない限り、首相自身が陣頭指揮を執っているようには見せないのが電通広報方式である。

 それでも、なにか目新しいことが言いたかったのか、“改革”“革命”と云うニアンスが目立つ所信表明演説だった。すかさず、立憲民主党の枝野代表が突っ込みを入れていた。

≪ 枝野氏「自民は『革命政党』、正統保守は我々」
自民党は保守政党と名乗っていたと思うが、いつのまにか「革命政党」になったみたいだ。やたら「革命」「革命」と言って、革命政党なんだなとよく分かった。我々は寛容で多様な、リベラルな日本社会を守る。我々こそが正統な保守政党であることをしっかりアピールしたい。
 何か政権を担うというエネルギーを失っているんじゃないかと心配になった。党や意見が違っても、総理大臣として仕事をして頂く以上は、エネルギッシュにやっていただかないと困るので、覇気のない状況はちょっと心配している。
 問いただすべきことが多岐にわたっているので、どうメリハリをつけるかは戦術的に詰めていきたい。野党間では党が違う以上は立場の違う所が多々あるが、同時に共通する所もある。各党ごとに共通する所は連携していこうと思う。(安倍晋三首相の所信表明演説後、国会内で記者団に) ≫(朝日新聞)

 現在の自民党のバックボーンである経団連や霞が関の面々の多くは、市場原理主義に則って、今後の日本の針路を決めたいのだから、当然、戦後の日本社会を構築した枠組みは邪魔なのである。また、宗主国であるアメリカも、と乱歩大統領の出現で混乱はしているが、市場原理主義の教祖でもある。此処20年は世界は市場原理主義で突っ走ってきた、と云うのが現実だ。しかし、ここ数年の世界的動きを観察する限り、グローバリズムな市場原理主義が、99%の人々を幸福にするものではない事実が、数多く証明されてきて、局地的で、濃淡はあるが、鮮明に、人々をマネーの奴隷にさせるグローバリズムと市場原理主義という観点の動きも多数みられるようになってきた。

 乱暴な分け方をすると、グローバルマネーの奴隷国家か、社会民主的な共生国家か、経済的縮小もいとわない自主孤立国家か、そんな感じのイデオロギーがあるように思える。無論これらの概念が混合的なものになるだろうが、軸足は、どちらかに置かれるものと考える。安倍首相の場合、どうも戦後レジュームのなかで入手した日本の経済力は是としつつ、それを可能にした農村社会を崩壊させて都市住民を肥大化させた現在の日本社会の構造問題には大ナタを振るおうとしているように見える。無論彼らの犠牲の下で得た経済力は温存のままにと云う“良いとこ取り”の考えだ。

 経済と云う果実は貪り、その木々が生えている大地の国民連中には犠牲を強いる政策は、まさに“革命”である。いや、筆者から見れば“国民へのクーデター”として目に映る。米国においては、政府が社会や市場に対して積極的に介入して大きな政府を志向するのがリベラルであり、対して、市場での自由競争を重視し、減税や小さな政府を志向するのが保守なわけだが、日本においてはこの概念に加えて、改憲派、護憲派、右派、左派などイデオロギー的な要素も加わり、定義自体が無茶苦茶になっている。

 その意味で、色分けは難しいのだが、最近の安倍自民党の動きを見ていると、リベラル政党化に向かっているように思える。都市部やネット空間で生き残りをかけているようなので、気がつけば、リベラル政党になる日も近いのは確かだ。それに対して、日本憲法の精神に則り、今まで通りに民主主義を動かそうと云うのが立憲民主党なのだから、同党を、社会民主主義を堅持する保守政党と位置づけることも可能になるだろう。右派左派とは劇的に距離のある、このようなリベラルと保守の色分けも可能だ。

 以下の毎日新聞の記事も示唆的だ。それぞれの事例が適時適切かどうかべつにして、一つのケースとして参考になる。記事のように、多くの側面で有利な立場にある自民党と対峙していくには、どのような戦略が必要なのか、大いに悩む部分だと言えるのだろう。筆者自身、色々な角度から、その戦略を考えてみるのだが、良案が浮かばない。既得のエスタブリッシュメントが、グローバルな市場原理主義的傾向で動いており、いわば無自覚のマネーの奴隷状態なのだから、この流れに楔を打つことは容易ではない。

 自然災害による天変地異や戦争など、日本社会を取り巻く環境が劇的に変る事態が起きた時が楔の一種なのは判るが、それでは犠牲が大きすぎる。社会民主主義的共生社会は、必ずしも独り勝ちを生まなかったわけで、日本のような少子高齢化が過激な国では、そこ(戦後50年体制)のシステムに一旦戻るべきなのだろうが、現在進行形のグローバルな市場原理主義的傾向、いわば無自覚のマネーの奴隷状態の流れの中で、これに歯止めをかけるのは容易なことではない。

 おそらく、現在進行形のグローバルな市場原理主義的傾向、いわば無自覚のマネーの奴隷状態の流れに楔が打てる期間は、60歳以上が生存している今後15年間くらいが限界に思われる。楔の処方箋を提示できないことは心苦しいが、立憲民主党を中心にした社会民主主義な共生社会(国家)と云う理念を堅持して、次世代の国民層を動員できる戦略を練って貰いたい。一つのヒントは、現在の18~20代が自民系なら、15~17代を立憲民主のファンにする戦略を練るのも一考かと思う。


≪ 自民勝たせた若者の意識 「青春=反権力」幻想に
 若者は「保守化」しているのだろうか。そんな疑問が湧く。先月の衆院選では、10代、20代の自民党支持が他の世代に比べて突出して高かったからだ。「自民支持」の背景を探った。【庄司哲也】
 若者の投票行動は数字に表れている。まず、共同通信が投票日に行った出口調査を見てみよう。比例代表東京ブロックの投票先では、10代の47・2%、20代の42・1%が「自民」と回答。一方、30代~70歳以上の世代では20%台後半から30%台だった。60代では「自民」が28・3%だったのに対し、「立憲民主」は28・4%とわずかだが逆転した。若者が自民を支持する傾向は他の比例ブロックでも見られた。
 なぜ、自民支持の若者が多いのだろう。「選挙で野党は『森友・加計(かけ)学園問題』を訴えたが、政策の議論とは言えない。三権分立なのに、立法府に属する議員の候補者たちが司法の独立を侵食しているようにも見え、支持できませんでした」。慶応大1年の野上奨之輔さん(19)はそう話す。投票しなかったが、どちらかといえば「自民支持」という。
 若者特有の事情ものぞく。早稲田大2年の桑原唯さん(20)は「最大の関心事は就職です。一時に比べれば就職状況は改善しており、政権交代でこの状況が変わるようなことは避けたい」と、胸の内を明かした。
 自民大勝は、有権者が離合集散を繰り広げた野党に嫌気が差し、よりましな選択肢として自民に投票したと説明できそうだ。さらに、若者に関する気になる調査結果を見つけた。
 大阪大特任教授の友枝敏雄さん(社会学)の研究チームが、2001年から6年ごとに3回にわたり、福岡などの高校生延べ1万人超を対象に行った意識調査だ。グラフを見てほしい。例えば「校則を守るのは当然か」という質問に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた生徒の合計が、68・3%(01年)▽75・4%(07年)▽87・9%(13年)と大幅に増加。さらに「日本の文化・伝統はほかの国よりも優れている」への賛意は、29・6%(01年)▽38・7%(07年)▽55・7%(13年)と年々伸び続けているのだ。
 友枝さんは「リスクの多い社会では、従来の規律から逸脱するよりも同調した方がいい。そのため今の若者は縦社会を好む傾向にあり、秩序の維持を大切にするのです」と分析する。「空気を読んで従順」という姿が浮かぶ。
 また、友枝さんは、今の若者には、従来の「公共空間」に加え、ネット世界の「炎上空間」という二つの空間があることに気がついた。「若者は自己保身の意識が強い。公共空間で目立ってしまうと、そこでは面と向かって言われなくても、炎上空間でたたかれてしまう。だから論争を起こすことを避けるのです」
 集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法を巡って反対運動を続けた学生団体「SEALDs」(シールズ、昨年8月解散)の元メンバーらで設立した新団体「未来のための公共」に加わる大学3年生、馬場ゆきのさん(20)も「自分の主張を話すのはよくないという風潮があると感じます。私もこうした活動をしなければ、デモに対して悪いイメージを抱いていたかもしれません」と、目立ちたくない若者の特徴を説明する。
 昔からの習慣や制度を守ることを大切にし、不満を口にせず、現体制の維持を望む。政治的な変革も好まずに与党の自民党に票を入れる--。今の若者の意識を知ると「青春=反権力」はもはや幻想なのかもしれない。
 ■国への執心、空虚感の裏返しか
 自民支持が増えたのは若者の右傾化が要因という論調もある。一時期、右翼団体で活動していた作家・社会活動家の雨宮処凛さんに意見を求めると、加入動機から語り始めた。「右翼団体に入るまでは社会の息苦しさを自分一人で抱え込んでいました。でも、右翼団体の人が『お前のせいじゃない』と言ってくれたことで、気持ちが楽になりました」
 雨宮さんは「就職氷河期」の1993~05年ごろに社会人となったロストジェネレーション(失われた世代)だ。バブル崩壊後、希望していた美大への進学を諦め、フリーターになった。その職場では外国人労働者と競わされた。「ここが日本の底辺と思っていました。『日本人に比べ外国人は時給が安いのによく働く』と言われた。私と外国人との違いは、日本人であるということ以外になかったのです」と、右寄りの思想になった背景を説明した。
 現在の日本はどうか。雇用状況の改善は、非正規雇用の増加が主な要因だし、人口減の日本社会は経済成長のシナリオを描けない。若者はフラストレーションをためているのではないか。「自分には何もないと感じるから国に過剰な思い入れを持つ。閉塞(へいそく)感をぶつけるように改憲を訴える若者の姿はかつての私のようです」と雨宮さんは感じている。
 06年から10年間、新入生のゼミを担当した首都大学東京教授の谷口功一さん(法哲学)は、憲法9条に関するリポートを書かせてきた。これまでの学生の意識は6対4で改憲派が護憲派を上回っていた。中には「北朝鮮にミサイルを撃ち込め」と書いた女子学生もいた。だからといって谷口さんは、単純に「若者の保守化が原因」と決め付けることには懐疑的だ。最近、学生に「リベラルな政党はどの政党か」という質問をしたところ、立憲民主、共産、自民、希望の党と、全くばらばらの回答だったからだ。
 そもそも日本ではリベラルや保守の定義が明確ではない。「米国では経済政策の対立軸について、政府が社会や市場に対して積極的に介入し、増税や大きな政府を志向するのがリベラル。これに対し、市場での自由競争を重視し、減税や小さな政府を志向するのが保守です。でも、日本では護憲か改憲かなどといったイデオロギー的な側面が強調されています」
 さらにいわゆる「55年体制」からの考えにとらわれ過ぎだと指摘する。「今の学生たちはそんな考え方に縛られていません。保守=右派、リベラル=左派と位置付けてはいないのです」と話す。
 慶応大に在学しながら学習塾を経営する今井美槻さん(25)は「かつて『革新勢力』と呼ばれた野党は対案を示そうとしません。日の丸や君が代に反対するが、代わりの国旗や国歌を示したことがあるでしょうか。それでは議論のしようがない。新たな動き、変化の足を引っ張る政党こそ、もはや『保守』と見るべきでしょう」と話した。
 安全保障を見直し、消費増税、改憲といった改革を訴える自民こそ、若者には「革新」に見え、護憲を訴える共産党などは「保守」に映るのかもしれない。
 このまま若者が自民を支持していく傾向は変わらないままのようにみえるが、慶応大1年の大倉康寛さん(20)は「私たちの世代は物心ついた時に民主党政権ができ、投票で政権が代わることを知っている世代でもあるんです」と答えた。決して若者の自民支持は盤石ではないのだろう。
 高齢者中心の「シルバーポリティクス」が言われる。新たな若者の意識を上の世代はくみとれるだろうか。 ≫(毎日新聞)


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●保守化する若者票のゆくえ 自民の集票戦略とリベラル派の応戦力

2017年11月12日 | 日記
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●保守化する若者票のゆくえ 自民の集票戦略とリベラル派の応戦力 

 安倍一強、自公圧勝、与党大勝‥等という表現で、今回の総選挙は、マスメディアで総括されている。その評価を受けて、安倍政権は統一見解として、“謙虚”をキャッチフレーズに、国会運営を乗り切る戦術に出ている。そこでは、一強と云う立場の“驕り”を捨てて、謙虚に少数意見に耳を傾け、政権運営を行うような印象操作に余念がない。

 しかし、“謙虚に、真摯に‥等の印象操作紛いの言葉を、党内一致で統制的に発言していること自体が、今の安倍自民党政権の性格を現している。いわゆる言論統制に何の違和感を持たない政権と云うことだ。自民党議員が、マスメディア諸君同様に忖度世界の呪縛に陥っていると云うことが出来る。

 まぁそうは言っても、安倍官邸は強引な国会運営をする積りだ。現在見聞きする限り、安倍内閣が国会質疑等々から、政権を謙虚にチェックして貰うと云う姿勢とは程遠い運営方針が示されている。論戦は、実質1週間程度設けることで切り抜けようとしている。しかも、与野党の質問時間配分を大きく変えることで、野党の“モリカケ疑惑”への追求のチャンスを奪おうと試みるだろう。加計学園の今治市への獣医学部開設は認可方向に大きく動きだしただけに、その疑惑追及は国会の目玉のように思えるのだが、与党新人議員の“ヨイショ質疑”で国会は空転することになりそうだ。

 今回、先回の選挙の投票分析において、投票率は5割程度だし、自公に投票した有権者は全体の1/4に過ぎないと云う事実を以て、特別自民党の一強と云うのは“幻想言説”に過ぎないと云う意見がある。しかし、中選挙区において7割の投票率が維持されていたが、小選挙区においては民主党が政権を奪取した時以外は、投票率は安定的に5割前後となっている。つまり、小選挙区制度を続ける限り、投票率が7割などになることは、概ねないと考えておくべきだ。多くの選挙区で、勝者と敗者の色分けが、各メディアの世論調査で、決定的になるので、投票する意味は大きく阻害されるのが現実だ。

 こうなると、小選挙区においては、有権者の4割は棄権有権者という固定票があることを認識しておくべきである。つまり、今回の投票率53.60%が現状の投票率のベースであることを認識しておく必要がある。ゆえに、もっと投票率が上がれば、自民党に不利な結果が出ると云う解説は無意味なものかもしれない。常に、有権者の3割から4割は投票行動を起こさない人種なのである。彼らは1万円のクーポン券でも配らない限り選挙には行かない人々なのだから、彼らをあてにしてはいけないことになる。

 そうなると、53.60%から上積み可能な投票率は1割が限界だと思って戦略を立てるべきである。今回の選挙分析では、最も目立ったのが、10代20代世代の保守政党支持の傾向である。この世代の人々は刹那的であり即物的でありる。流行り言葉ではない“今でしょう!”という感覚が強い世代である。彼らに、50年後100年後の自分の国について考えて投票行動を起こせと云うのは、無謀な願望に過ぎないことを、先ずはリベラル派政党は考えておくべきだ。

 団塊世代を含む中高年層の支持傾向は概ね固まっているので、大きく揺らぐことは望めない。しかし、刹那的、即物的、損得勘定と云った言葉への抵抗があるので、意外にも“理念”が通用している。これから先、大きく人生が変わらないと思えば思うほど、理性的善人な思考経路を持っている点は、天国と地獄を意識しての為かどうかは判らない(笑)。いずれにしても、彼らは、50年100年の日本のことを語ることは有意義に違いない。しかし、長い将来が待っている若年世代ほど、将来について考えることは少ない。今日と明日の生活環境に敏感なのが、この世代の特長なのだ。

 それをケシカランとか言ってみても始まらない。そういう事実があることを、現実主義的に認めることから、若者世代への、リベラル派の接触機会を増加させる必要がある。しかし、社会経験や人生経験の不足は、風が吹くと何故桶屋が儲かるのか理解させることは困難だ。しかし、この世代の政治意識に安倍自民のアベノミクス経済政策は、実は間違っており、近い将来、あなた方が大人になった時、大迷惑を蒙る、という情報を提供する必要が急務だろう。再来年の参議院選までに、一定の若者世代の考えをチェンジさせなければならない。

 参議院選までにすべてを成就することは無理だが、その傾向くらいは得たいものである。やはり、現時点で思いつくのはフォロワーの多いツイッターによる発信が有効だろう。アベノミクスの将来的問題点や詐術的数値などをまとめて発信しても全部忘れる。ひとつひとつの情報を、その都度ごとに発信する方法と、画像化やコミック化など、あらゆる知恵を総動員して、いま自分たちに有利に働いている情報は、実はマヤカシで、近々しっぺ返しをくうから、充分注意しようと云う情報を執拗に発信する必要がある。

 なぜ、この若者世代に注目するかといえば、この若者世代がインベーダーゲームのように、日本社会の中心に移動する。理念が通用した世代は鬼籍に入るわけで、いつまでもリベラル派に理解を示す塊が存在すると思わないことである。特に、立憲民主党などは、百年戦争に挑むような気持ちで、政権を取るためには、理念も必要だが、損得勘定に走る世代への賢明なアプローチも欠かしてはいけない。これからは、理念をベースに、現実的損得にもウィングを拡げた活動が必要だ。その意味では、騙してでも損得勘定をロングなスパンでも考える有権者教育が必要だ。この辺にマキャベリズムが入り込んでも良いのだと思う。

 新党の場合、まだまだ地方組織などの構築には時間と金がかかるわけだから、それを乗り越えるSNSの有効活用は欠かせない。アベノミクスの錯覚経済指標を一個ずつ目標を定めて、糾弾し、その結果何が起きるかを発信すべきだ。リスト化など一覧表示は意味を持たない。例えば、なぜ日本の株価は好調なのか?世界的バブル化も手伝うが、日本の場合、日銀や年金基金の株価買い支えという危険が残されている。いつか、日銀もGPIFも株を売って現金化しなければならない。その時、株式市場にパニックが起きる。おそらく、あなた方が30歳40歳の頃、一番生活を安定させたい時、バブルが崩壊します。そんな感じで、コミックかも面白い。小林よしのり氏に頼む手もある(笑)。

 攻めるべきアベノミクスは山ほどあるが、全部を並べても、聞く耳持たれない。個別に丁寧に一個一個情報を発信すべきだ。彼らは、政治行政のメカニズムに精通していないのだから、個別的な問題点(時限ウィルス)と、近い将来の地獄絵図を示していくのが早道だろう。就職率が上がっているのはなぜか、有効求人倍率が上がっているのはなぜか、円安は企業業績に貢献したが、国の価値を貶めている事実を示すのも良い。世界をドルベースで評価して、我が国も価値を再評価することも重要だ。賃金やGDPのドル換算は惨憺たるものになっているなど。

 重厚長大の輸出大企業を優遇して、日本国民は何を得ることが出来るのか、刃物を突きつけて聞き質すことも必要だ。ビジネス環境などは世界34位でロシアに追い抜かれそうな按配だ。高等教育環境のランキングも崩落状態で、東大のランキングは下がるばかりで、世界第46位なのだ。しかし国内的経済数値は好調に見せるようにしている。財政のバラマキも参議院選までは続け、「国民投票」を有利に導くに違いない。

 安倍自民は、若者世代には騙し絵を見せ、既得権益集団には、組織あげて既得権益エスタブリッシュメントを強力に組織化するのだから、既得権益集団への切り崩しは意味がない。SNSや集会を通じて、女性層と若者層への関与が喫緊の課題だ。若者層を見捨ててはいけない。彼らは当分日本社会を構成し続けるのだから。訳のわからん単純な奴らだと見放した時。リベラル政党は団塊世代の崩落と同じ時期に崩落する。効果は薄いが、嫌でも、若者層に訴えていかなければならない。参議院選までは、安倍自民党は死に物狂いでニセの経済状況を継続させる努力を続けるのだから、その嘘を、必死で打ち消し伝える責務がある。


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