世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

化学兵器が悪と言うなら、原爆は更なる悪 弱者の兵器に難癖をつけるアメリカ

2013年08月31日 | 日記
フォーリン・アフェアーズ・リポート2013年8月10日発売号
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●化学兵器が悪と言うなら、原爆は更なる悪 弱者の兵器に難癖をつけるアメリカ

 今日は“そもそも論”を語ってみよう。金のある国が、己らが抱える産軍複合組織の継続性を維持する為に、定期的に軍需産業が色めき立つ特需を与えなければならない。つまり、何処かで、どうにかして諍いが起きる環境が必要と云う論理、これは概ね当然の自明である。その好例的国家がアメリカであることに異論を唱える人はいないだろう。居るとしても、彼らはその手先か、或いは虚構の平和維持の為と云うプロパガンダを信じている人々に過ぎない。

 百姓一揆で、代官や大名と闘う時、平民は鍬・鋤・竹槍で対抗するだろう。時に、糞尿の袋を投げつけるかもしれない。或いは南蛮入りの目潰しも投げるだろう。時には毒矢を射るかもしれない。筆者の思考経路から行くならば、「化学兵器」が絶対悪で、「核爆弾」の使用が絶対悪でないとしたら、あまりの屁理屈になるのではないのか。オバマが、それほど化学兵器の使用が、人類への挑戦とまで言うのであれば、実際に広島・長崎に原爆投下した謝罪をすべきだ。

 自分の屁は臭くなく、他人の屁は臭いと言っているも同然じゃないか。強者の使用する兵器は善で、弱者が使う兵器が悪だと規定するのなら、つねに軍事的規模を維持する国家しか、マトモに主張を展開できない世界が生まれるだけだ。「テロ」と云う言葉が、アメリカでは諸悪の根源のように思わせる言説が流布しているが、それに踊る国民がアホなのである。そうして、異様に「テロ」に過剰反応を示す。マッチョなヘタレな態度には、“アメリカアズナンバーワン”が聞いて呆れる。

 常々思う事だが、人類の歴史は「怨念の歴史」なのだろう。その意味で、アメリカは覇権国と云う地位と怨念の対象となる被怨念国家である。しかし、その種を播いたのもアメリカなのだから、怨念と云う根本的なものを封じるために、どのような屁理屈をつけようと、怨念の連鎖は止まらない。このアメリカ発の「怨念の連鎖」に嬉々として安倍自民が賛同するのであれば、それは日本への好感度が最も高い中東と云う地域に、日本への怨念を生みだすことになる。英国も不参加を決定。NATOも不参加、ドイツ・カナダも不参加。

 アサド・シリア政権は、やけっぱちな行動を取る可能性は高い。イランも積極的に参加するかもしれない。これほど懐疑に満ちた攻撃が、イスラエルを含む中東に戦火を拡大させるかもしれない。おそらく、その時は、悪と言われる弱者の兵器は総動員される。しかし、戦争なのだから、どの兵器が善で、どの兵器が悪とか云う議論は、バカバカしくさえある。WSJは尤もらしく、シリアの化学兵器使用証拠の信頼性などを検証しているが、己の政権が風前の灯火になった時、窮鼠は猫を食むわけで、そのネズミを悪だと断罪出来る権利は誰にもないのが哲学だ。シリア政権が保有する化学兵器が使われたと立証しても、それをアサド政権が側が使用したと主張すること自体にも無理がある。


≪ シリア化学兵器使用の証拠はどの程度信頼できるものなのか
 情報の専門家は30日、シリアが今月21日にダマスカス郊外で化学兵器による攻撃を行ったとする米国政府の情報分析について、信頼できる可能性が高いとの見方を示した。
 2000年から04年まで米中央情報局(CIA)副長官を務めたジョン・マクローリン氏は米政府の分析について、「非常に強力な評価」と述べた。 同氏によると、「情報コミュニティーでは徹底的に議論されないかぎり、『high confidence(強い確信)』とは言わない」という。情報機関は調査結果の確信の度合いを高・中・低で表す。
 特に03年にイラクに関する情報活動で失敗して以降は「強い確信」という言葉が「安易に使われる」ことはないとマクローリン氏は言う。しかし、同 氏は政府の分析結果の中に、米政府はシリアによる化学兵器の使用を強く確信しているが、それを確認するには至っていないというただし書きがあることを指摘 した。
 マクローリン氏によると、慎重な扱いが求められる情報は、確認されたり議論の余地のない証拠が得られたりすることがめったにないという。同氏はシ リアの場合、物理的なサンプルかシリアの政権関係者の自白が証拠である可能性があると話している。不確実な「要素は常に存在しており、今回のケースではわずかながら」そうした要素があると述べた。
 05年の国家情報局(DNI)創設後に情報分析の見直しを担当したトマス・フィンガー氏は政府の分析について、証拠が裏付ける事態を誇張したり過小評価したりしないように慎重に言葉を選んだもののようだと述べた。
 フィンガー氏は「政府は決定的な証拠があるとは主張していないようだ。状況証拠や論理に基づいた判断だ」と述べた。「政権は多くの情報を入手して いること、そのかなりの部分に信ぴょう性があると考えていること、情報は一貫していて筋が通っていて、事態の論理に合致すること、政権が別の説明も検討し たこと。これらのことと矛盾しない言葉が選択された」という。
 それでもシリアの化学兵器使用に関する主張は説得力があるとフィンガー氏は言う。米政府は分析に基づいて判断を行う一方で、主張は「状況(証拠)以上のもの」に基づいているという。
 また、政策立案者は情報だけに基づいて対応を決めるべきではないとくぎをさした。 「このプロセスを動かすのは情報コミュニティーではない。情報コミュニティーの役割は政策決定者に情報を提供することだ。証拠が十分に確かなものであるかどうかを判断するのは政策担当者である」とフィンガー氏は述べている。
 フィンガー氏は今回のケースでは、分析は単独で政府に何らかの行動をとらせるようなものではないとの見方を示した。
 それでは、シリア政府が化学兵器を使用したとする米政府の主張の証拠の確度はどのくらい説得力があるものなのだろう。ウォール・ストリート・ジャーナルは米政府が挙げた証拠について独自に評価を行った。

 証拠:シリアの高官が8月21日の政権による化学兵器の使用に言及し、国連調査団が証拠を見つける可能性について懸念を表明した通信記録がある。
 強みと弱さ:政権の関与を直接的に示唆する証拠。しかし、傍受内容は公開されなかった。

 証拠:攻撃が行われる前に化学兵器の担当者が化学兵器を合成する区域でガスマスクを着用して活動していることがわかった。
 強みと弱さ:具体的で、政権の関与を示しており、人的情報活動、通信、映像に基づいている。しかし、状況証拠だ。
 証拠:衛星からの映像やその他の詳細が開示されない種類の情報によると、政権が支配している地域からのちに化学兵器による攻撃が報告された地域に向けてロケット攻撃が行われた。
 強みと弱さ:信頼できる視覚的な証拠ではあるが、状況証拠である。また、政権の報告書では視覚的な証拠以外の証拠について説明していない。

 証拠:情報活動によると、シリアの化学兵器担当者は8月21日午後に活動をやめるよう指示を受けた。
 強みと弱さ:政権の指示を示しているが、情報活動の性質が説明されておらず、単独で評価することはできない。

 証拠:100本のビデオ映像に神経ガスにさらされたときの症状と一致する身体症状が映っている。反政府勢力にはこれほど多くのビデオ映像をねつ造する能力がない。
 強みと弱さ:視覚的な証拠ではあるが、神経ガスによる症状とは断定できない。

 証拠:現地のソーシャル・メディアで化学兵器による攻撃について報告され始めたのは8月21日午前2時30分で、化学兵器が搭載されたロケットについて複数の報告があった。
 強みと弱さ:現地の目撃談は一連の事態のタイミングと一致している。しかし、証拠は自己申告に依存しており、物理的な確証に基づくものではない。

 証拠:ダマスカス地区の3つの病院が神経ガスの症状と一致する症状のある約3600人の患者を受け入れた。
 強みと弱さ:医療専門家による目撃談だが、物理的な証拠ではなく自己申告に依存している。 ≫(WSJ日本版抜粋)

日本のアジア外交 二千年の系譜
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その通り! 日本の歴史や政治を考える時、維新以降に埋没する思考停止な人々

2013年08月30日 | 日記
日本のアジア外交 二千年の系譜
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●その通り! 日本の歴史や政治を考える時、維新以降に埋没する思考停止な人々

 今日は引用した記事(キーパーソンに聞く)が長いので、筆者は多くを語らない。ただ、多くの部分で、非常に同感した。すべてではないが、90%小倉氏の“ものの味方考え方”は正解だろう。しかし、生活者目線で生きている、一般人も、政治家も官僚も、総論賛成と言うかもしれないが、各論でブーイングが出そうだ(笑)。まぁ所詮日本人の教養なんてのは、哲学や宗教がないのだから、こんなものだろう。

注:【小倉和夫(おぐら かずお、1938年11月15日 - )は、東京都出身の外交官。学者。韓国大使、フランス大使などを務めた後、青山学院大学教授、立命館大学教授、元国際交流基金理事長。
*1962年 - 東京大学法学部卒 、1964年 - ケンブリッジ大学経済学部卒。
*アジア局北東アジア課長時代に中曽根康弘首相の訪韓に尽力。
*1991年 湾岸戦争勃発時に海部俊樹内閣から国際連合平和協力法案成立に向けた準備室長に任命され法案成立に尽力したが同法案は廃案となっている。
*1997年 デンバーサミットで橋本龍太郎首相の個人代表を務めた。
*外交官の佐藤優によるとフランス大使時代に公邸修復が行なわれた際に高級ホテルのスイートルーム(1泊20万円程度)に宿泊したことが明らかにされ、野党民主党議員によって国会で追及された。】(Wikipedia抜粋)


≪ 日中は過去5回も戦争をした経験から学ぶべき
元外交官で『日本のアジア外交 二千年系譜』の著者、小倉和夫氏に聞く

【 日本と中国との戦争というと、日中戦争ばかりを思い浮かべがちだが、両国は663年の白村江の戦い、豊臣秀吉による朝鮮出兵に伴う明との戦争などを含め、これまで5回も戦火を交えている。いずれも、朝鮮半島における勢力争いがその始まりだった。  韓国大使やベトナム大使を務めた元外交官である小倉和夫氏は今春、過去2000年の歴史を「日本の外交」という視点から分析し、なぜ日本が5回も中国と戦争をするに至ったのかを読み解いた『日本のアジア外交 二千年の系譜』を出版し、日本は歴史から学び、「外交を考えていくための視点を根本から問い直すべきだ」と提言する。  昨年来、尖閣諸島や竹島、従軍慰安婦問題を巡り日中、日韓の関係がぎくしゃくする中、日本の外交を考えるうえで必要な視点について聞いた。】

―――中国との戦争と言えば、近代史以降の日清戦争と日中戦争がすぐ思い浮かびますが、白村江の戦い、元寇、秀吉による朝鮮出兵と、それに伴って明と戦争をしたことを含めると、確かに過去2000年の歴史において5回も戦火を交えていた――。この事実は、新鮮でした。特に白村江の戦い、元寇、朝鮮出兵は日本史の中の出来事であって、日本外交の結果というイメージはあまりありませんでした。そもそも、なぜこのような本をまとめようと考えられたのでしょう。

小倉:いくつか動機があって、1 つは日本は外交と言うと大体、明治維新から始まるが、それがそもそも間違っているという問題意識です。そこに何ら論理的必然性はないのに、本も論文もほぼどれもが明治維新から論じている。日本の外交を見る学者もそうだし、政治家もジャーナリストもそう。

遣唐使、遣隋使派遣も外交ではないか

 しかし、聖徳太子が遣隋使を派遣したのも、その後630年から遣唐使を派遣したのも、蒙古襲来に伴って蒙古といろいろ交渉したのも、徳川家康や豊臣秀吉が南蛮人の到来に伴ってキリスト教が入ってきた時に欧州と交渉していたのも、あれらは全部、外交ではなかったのかということです。

 日本ではそれらを外交とは呼ばず、東洋史や日本史の世界に押し込めてきた。まず、そこに日本の外交の重大なる盲点がある。日本の外交は、欧州や米国と付き合うことから始まったと思い込んでいる。それではアジア外交は成り立たない――。それをかねて指摘したかった。

 もちろん、ウエストファリア条約や西洋的秩序、今の国際法に基づく秩序があるのは分かります。しかし、ヨーロッパ的な国際法秩序というものに日本がどう対応したかというのは外交の一面でしかない。なのに、青い目が見たアジアというところに、我々の発想もはまり込んでしまっている。これは、まったくもっておかしい。

 もう1つは、外交における「国とは何か」という問題を提起したかった。もちろん外交上、物理的な領土を守ることは大事です。しかし、国家とは物理的な存在がすべてではありません。文化、あるいは日本語をしゃべるという抽象的空間でもあるし、特定の理念やイデオロギーを体現すべき精神的空間でもある。

 米国は民主主義と自由という価値観を重視してきたし、欧州は人権や平等という概念を大切にしてきた。つまり、そうした抽象的、精神的空間を守ることも国益なわけで、日本は国家というものの捉え方、考え方自体をもう少し考える必要があります。

―――日本は戦前、神道によって日本を「神の国である」という精神的空間と位置づけて大きく道を誤っただけに、戦後の外交はほぼ米国追随で、外交上の理念なるものを持たずに来てしまった感があります。

小倉:要は、日本は何をしたいのかということです。これだけ豊かになったのだから、「日本という国のアイデンティティー」「日本とは何か」というのをもう一度よく考える時期が来ているのではないか、ということです。

 よく日韓関係が悪いとか、日中関係がよくないと言いますが、ならば日米関係はよいと言えるでしょうか。沖縄に行って、見て下さい。オスプレイの配備を含め、日米関係だって大きな摩擦を抱えています。それでも多くの人は、日米は友好関係にあると思っているでしょう。つまり、今の日中関係や日韓関係に関する議論の大半は、視点が間違っています。尖閣諸島や竹島の領土問題や慰安婦、靖国神社を巡る問題など、隣国である以上、あれくらいの問題が存在するのは当たり前、と捉えるべきなんです。

 そうではなくて、もっと長い歴史を踏まえたうえで、日中、日韓の関係を考えていく必要があります。日本はアジア外交の新しいビジョンというものを考えるべきところに来ている。日本に今、問われているのは、日本という国家をアジア、ひいては世界からどのように認識してもらい、外交を展開していくのかということでしょう。

―5回の戦争から得られる3つの教訓―

―――本では、日中の5つの戦争から3つの教訓が得られると指摘されています。まず、1つがいずれの戦争も、その始まりは朝鮮半島における争いだった、と。

小倉:日本が663年、唐と戦火を交えるに至ったのは、新羅に滅ぼされた百済から救援依頼があり、百済が復活すれば百済に日本が影響力を及ぼせると判断したことが要因の1つでしたし、1592年に秀吉が朝鮮に侵攻した際は、朝鮮側からの要請もあり明が介入、明軍と日本軍との軍事衝突に発展したわけです。日中戦争も、満州の権益が導火線のように見えますが、背景には日本による朝鮮半島支配の安定化という歴史的な流れがあった。こうした事実は、日中の間においては、今後も朝鮮問題がいかに重要かを物語っています。

―――第2の教訓として内政に引きずられて外交をやってはならない、と。

小倉:そうです。元の日本侵攻 は、元が滅ぼした宋の大量の残党(軍隊)をどう処理するかという元の内政事情と強く結びついていたし、秀吉の朝鮮出兵は、日本国内の大名の統制と日本統一 を強化するという目的と連動していました。日清戦争も、清朝が内政上、あくまでも王朝の権威を守ろうとする守旧主義に流れていたことが大きい。日中戦争はご存じの通りです。

 しかし、政治指導者たるもの、その時、その時の事情に左右されたり、民衆に迎合したりするのではなく、50年、100年先を考えて、国民に対して有り得べき国の姿を訴えていくことが大切です。

―――3つ目が冒頭にも指摘された、日本の外交はいつも欧米の従属変数としての外交だった、という点ですね。そこから脱却しなければならない、と。

小倉:そうです。これは必ずしも近代だけの話ではありません。秀吉の朝鮮における明との戦いも一見、朝鮮における日中の覇権争いのように見えますが、実は西洋植民地主義の東洋進出に対する日本の対応だったという側面もありました。

 何より問題なのは、こうした事実をほとんどの中国人が知らないことです。5回の戦争をはっきりと認識し、それぞれの戦争が「いつ起きたんですか」「どこで起きたんですか」「なぜ起きたのですか」ということをきちんと勉強している人は恐らくほとんどいない。だから、頭が第2次大戦とか日中戦争のことばかりになる。

 日本も中国も長い1000年、2000年の歴史の中で考えないと、道を誤ることになります。

 ただ、中国は民主主義国家ではないし、1952年にようやく共産党による一党独裁の下、国を統一した。最近でこそ巨大な経済大国になりましたが、長い混乱と苦しみの中から生まれきたわけで、まだ発展途上にあるわけです。だから日本は中国に対して寛容である必要があります。韓国についても同様です。

 ―降伏文書署名にみる日本のドイツの違いー

―――日本がまず歴史の教訓をきちんと踏まえて、朝鮮半島を巡る問題はとかく争いごとに発展しやすいとか、内政に流されないようなきちんとした日本の外交の視点を持つべきだ、ということですね。

小倉:そうです。本来は双方の国がそのように正しく歴史を認識して、同じ過ちを繰り返さないように努力することこそが必要なんです。  しかし我々、日本人も歴史についてもっときちんと認識する必要があります。特にドイツとの違いについて、重大なことを多くの人が忘れています。

―――第2次大戦後、ドイツはきちんと謝罪して、日本は謝罪していない、という印象があります。

小倉:ドイツは戦争で、ナチズムの第3帝国が崩壊してドイツという国がなくなったため、降伏文書には軍隊だけがサインをしている。つまり、ドイツという国がなくなったため、はっきりとした断絶がある。よってドイツは大戦後、ナチを一切、政治に関与させていません。

 これに対し、日本は降伏文書に日本の軍(陸軍大将の梅津美智治郎)と当時外務大臣だった重光葵がサインした。つまり、日本政府は存続し続けたということです。これは、連合軍が無条件降伏してポツダム宣言を受諾せよと求めてきた時、日本は天皇制の維持という条件を1つ付けた。それに対し連合軍は、「それは日本国民が決めることだ」と回答して、暗黙のうちに「日本国民がそれがいいというなら、それでもいいよ」としたからです。

―――米ソ対立が鮮明になる中、共産主義の台頭を阻みたいという米国の思いが影響した。

小倉:そういう面もあります。そのために日本は戦前と戦後に断絶がなく、戦争責任があるとして烙印を押された人が戦後、総理になったりした。こうした事実、過去とまず向き合うことが必要でしょう。自国についてろくに反省もせずに、ただ謝るからおかしなことになるんです。

TPP交渉もいわば鹿鳴館外交

―――しかし、日中関係、日韓関係は安倍晋三政権の下、一向に改善の兆しが見えません。5回の戦争の教訓を生かすと言っても、具体的にはどうすればいいのでしょうか。今の状況を見ていると難しく感じます。

小倉:例えばTPP(環太平洋経 済連携協定)――。みんな大賛成と言っていますね。賛成するのは、参加すれば得するからでしょう。でも日本が得するというのは、誰か損をしている国があるはずです。入らなければ、損をする。現時点では中国は入らないでしょう。つまり、中国は損するはずなんです。

 日本の最大の貿易パートナーの中国が損をするような協定を日本はなぜ結ぶのか。投資の点から見たら、米国への投資には累積ではまだ追いついていないと思いますが、それでも少し変ではないでしょうか。

 この質問にまともに答える人を聞いたことがない。日中EPA(経済連携協定)も進めていると言うが、何か政府の下のレベルでやっているみたいで総理や大 臣級が思い切って進める、という状況ではありません。つまり、相も変わらず、日本は明治以来の僕の言うところの鹿鳴館外交をやっている。

―――今も米国追随を続けている、、、と。

小倉:そうです。我々はどんな国をつくるべきなのか、私たち自身がそれにどう関与すべきかと考える際、やはり自分の周りの国のことをまず考えるのが普通ではないでしょうか。

 そう考えると、僕はちょっとおこがましい言い方ですが、考え方としては中国を安定した民主国家に育てていく。韓国も、民主主義国家とは言っているが、任期を満了した大統領が自殺したり、辞めると弾劾されたり、やはり制度にひずみがある。民主主義が本当に定着したかまだ疑問です。韓国が立派な民主主義国家に育っていくことを、見守り、必要なら助けていくことが大事でしょう。

 中国もすぐに、というのは難しいにせよ、いずれ徐々に安定した民主国家が育っていくようにしていくことが、日本の本当にあるべき姿ではないでしょうか。 だから、チベットやウイグルの問題などが浮上した際には、日本は中国政府に対して「それはおかしい」と指摘していくべきだと考えます。

「オリンピック開催から9年が節目」というジンクスー

―――中国が世界の工場と言われ、経済成長を遂げ、市場としても世界一になっていくに従い、「中国も徐々に民主的な国家になっていくに違いない」と日本を含めた多くの欧米諸国は期待してたと思いますが、最近の中国は中華思想に基づく大国を志向していると見る向きが増えていると思います。

小倉:中国が、そういう道を選んでいるという面はあります。それは、その方が自分たちは得をすると考えているからでしょう。それより、欧米諸国だって中国が変な風に混乱するより、今のままの方がいいと思っている人は多いですよ。

―――意外と?

小倉:意外とじゃなくて。日本の企業だって中国が民主化してほしいなんて考えている企業なんかないと思います。中国が共産党だろうが、何だろうが儲かればいいと思っているんじゃないですか。中国の民主化運動のためにカネを出している企業なんてありますか。私は聞いたことがありません。  日本企業は儲かればいいんだから、日本政府には中国に対してあまり苦言など呈して欲しいとは思っていないでしょう。

―――中国共産党にどの程度、持続性があるとご覧になりますか。経済成長率がどこかで7%を切ることも考えざるを得ない。その場合、国民の不満を中国がどうガス抜きするのか。また、日本がターゲットになるリスクもあります。

小倉:笑い話として最後に聞いて 欲しいんですが、「オリンピック9年説」というのがある。オリンピックを開催して9年経つと、権威主義的な独裁主義的政権は崩壊する、というものです。 1936年にベルリンオリンピックを開催した9年後の1945年にドイツ帝国は崩壊した。1980年のモスクワオリンピック開催から9年後の1989年に ベルリンの壁が崩壊し、ソ連崩壊へとつながった。1988年にソウルオリンピックが開かれた9年後の1997年、韓国では初めて民主的な大統領が登場し て、金大中政権が発足し、それまでの保守政権が崩壊しました。

 そこで、北京オリンピックが2008年だから、2017年に何か大きなことが起きるかもしれない、というわけです。しかし、大事なのは日本がどういう国を目指すか、ということです。≫(日経ビジネスオンライン:アジア・国際:キーパーソンに聞く・小倉和夫。聞き手・石黒千賀子)

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)
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安倍“アサド退陣”を望む 今回行われる攻撃は公には“懲罰”の位置づけなのに…

2013年08月29日 | 日記
タブーすぎるトンデモ本の世界
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●安倍“アサド退陣”を望む 今回行われる攻撃は公には“懲罰”の位置づけなのに…

 安倍と云う男はどこまでアホなのだろう。中東カタールのドーハでタミム首長と会談、シリア情勢について「シリア情勢の悪化の責任は、暴力に訴え、無辜の人命を奪い、人道状況の悪化を顧みないアサド政権にある。アサド政権は道を譲るべきだ」と発言。しかし、化学兵器の使用疑惑について、「きちんとした調査で事実関係が早期に明らかにされることを強く望む。国際社会は急いで暴力の停止を実現していかなければならない」とも発言した。たしかに以前、オバマやヨルダン国王が“アサド退陣しろ”と言っていたが、今は、その件を持ち出す時期ではない。時と所を間違わずに発言する知恵者が側にいないのか?兎に角、米英支持を表明すれば、国際的に点数が上がるとでも思ったのだろう。

 今回の科学兵器使用問題は、どちらが仕掛けたのかも判らないし、仮にシリア政府の倉庫にあった物だとして、盗まれることもあり得るわけだし、同一の化学式の科学兵器が、反シリア政府の勢力によって製造され、使用されたのかもしれない。アメリカは、他国の政権を転覆させる戦争を行く度となく繰り返し、その尻拭いに財政を逼迫させてきた。その無謀な覇権主義につきあわされる西側諸国も、不要な国費を投入してきたのだ。米国の世論も、アメリカのシリア攻撃参加に懐疑的だ。

 故に、仮に今回シリア攻撃をするにしても、“政権交代が目的ではない”とホワイトハウス報道官カーニーが発言している。あくまで、科学兵器の使用を禁じた国際基準に基づく制裁に過ぎないと逃げを打っている。にも拘らず、我が国家のアホ首相は“アサド政権転覆”と受けとめられかねない発言を不注意にしている。しかし、国際社会は、今回の英米仏中心の、限定的だと云う攻撃が正当化されているか疑問符もあるし、一旦攻撃となれば、アサドも引くに引けなくなるだろうし、ロシアとアメリカの反目は決定的になる。お陰で、市場は、為替にせよ株価にせよ、理解し難い動きを見せている。WSJの以下の二つの記事は非常に参考になるので添付する。特に二つ目の方が、現在の微妙なポジションにいるオバマ政権を観察している。

 ≪ シリア対応策はアサド政権交代が目的でない=ホワイトハウス
 米ホワイトハウスは27日、シリアで化学兵器が使用されたことへのオバマ大統領による対応策の目的はアサド政権の崩壊ではないと言明した。  ホワイトハウスのカーニー報道官は「明確にしておきたいことは、われわれが検討している選択肢は政権交代ではないということだ」とした上で、「化学兵器の使用を禁じた国際基準への明らかな違反に対応するものだ」と述べた。
 カーニー報道官は、先週のシリアの毒ガス攻撃に対する措置として、オバマ大統領は軍事・非軍事両面で選択肢を検討中だと述べた。活動家や反体制派の話によると、この攻撃により1000人以上が死亡した。米仏英やアラブ連盟加盟国を含む多くの国はこれらの攻撃を非難し、アサド政権側の勢力がこれに関与しているとの見解を示している。諸外国の非難は米国がシリア政府を攻撃する際の支援となる。
 ヘーゲル米国防長官は、国防総省がオバマ大統領に軍事的対応の選択肢を提示したと述べた。同長官はその内容には言及しなかったが、複数の防衛当局関係者は地中海に配備されている米軍艦からの巡航ミサイルによる攻撃を検討していることを明らかにした。
 カーニー報道官は、米国のシリア政府に対するいかなる行動もその目的はアサド氏の追放ではないものの、「アサド大統領があらゆる正当性を失って久しいとわれわれは確信しており、シリアの未来にアサド大統領はいない」とし、化学兵器の使用に関して「未解決のままにしない」ことが米国の国家安全保障の利益にかなうと述べた。
 アサド政権は化学兵器による攻撃に関与したとの疑惑を否定しており、シリアのムアレム外相は27日、可能な限りの手段で国を防衛すると述べた。  ムアレム外相は「(諸外国は)シリアを攻撃したいのだ。化学兵器の使用を攻撃の口実に利用することは、使い古された手管で間違っている」と述べた。 
 カーニー報道官は、誰であってもアサド政権が攻撃に関与していないと主張するのは「非常識」だと断じた。報道官はアサド政権がシリアに化学兵器を保有しており、化学兵器を搭載するためのロケットも持っていると指摘した。≫(WSJ日本版28日)


≪ なぜオバマ米大統領はシリア内戦に引きずり込まれつつあるのか
 長期的な泥沼に陥りかねないシリアの内戦への介入を2年にわたって避けようとしてきたオバマ大統領は今、軍事介入の崖っぷちに立っている。米国民の支持がほとんどなく、国防省の幹部たちも本質的には負け戦の提案だと言っているにもかかわらずである。
 こうした状況に至った理由はさまざまあるが、最も複雑な理由はイランの一語に要約できる。
 シリアの政権を後方から支援し、戦闘の激化に大きな役割を果たしてきたイランは、アサド大統領が反体制派を制圧した場合、その影響力が最も強まる国でもある。
 より喫緊の懸念としては、先週に大量破壊兵器である化学兵器を使ったとされるシリアに何らかの対処がなされなければ、危険な核開発計画を持つイランも誤った結論に至る公算が大きい。
 要するにイランは誰も話したがらない重要な問題であり、これさえなければ距離を置く正当な理由がたくさん見つかったであろう大統領にとって強烈なジレンマとなっている。
 シリアの内戦、そして、市民の殺害や強制移住は現在、人道上の大きな懸念となっているが、1990年代のルワンダでの内戦も同様だった。シリアの内戦は重要な地域の勢力バランスをどの国が握ることになるのかという大きな不安も生んでいるが、1990年代のコソボ紛争でもそれは同じだった。ルワンダ にまつわる懸念が米国を軍事関与に駆り立てることはなかったが、コソボでは北大西洋条約機構(NATO)軍の77日間にわたる空爆という形でそれに至った。
 しかし、主にイランが果たしている役割から、シリアの内戦には米国の世界的な利益が関わっており、ルワンダ、コソボとは別のカテゴリーに分類される。シリアの内戦は本質的に、イランが率いる枢軸──イラン、アサド大統領、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの協力者たち──と中東のその他の人々との争いの代理戦争となっている。  そして今、この内戦の中心に大量化学兵器を据えることで問題は拡大している。自国民に対するシリア政府の化学兵器の使用は「否定しようがない」というケリー国務長官の8月26日の宣言で、イランの核開発計画を封じ込めるためのより深刻な戦いとも関連性があるという見方は否定しづらくなった。
 オバマ大統領は、シリアによる化学兵器の使用は受け入れられないと言ったが、以前にもイランによる核兵器開発は受け入れられないと述べている。大統領は今、前者の発言への信頼性が後者の発言への信頼性に影響を与えるかどうかをじっくりと考えなければならない。オバマ政権は、核兵器保有の意図を否定し続けるイランのロウハニ大統領の新政権と核問題に関する話し合いに入ることを検討しているので、その疑問には早急に答えを出さなければならない。
 それと同時に、米軍の支援で最終的にアサド大統領を追放すれば、イランは単に孤立感を高め、安全パイとして核兵器を保有したいという願望を強めてしまうかもしれない。
 米国はこうしたすべてのことを考慮した上で、シリアの標的に対して巡航ミサイル攻撃を仕かけるかどうかの決断を下さなければならない。そうした攻撃は、シリア政府軍の形勢を一気に不利にしようとするものではなく、限定的で、化学兵器の使用には代償が伴うということを知らしめるものになるだろう。とはいえ、そうした限定的な攻撃にさえ、相当な短期的、長期的リスクが伴うのである。
 シリアでの軍事オプションの分析を求めていたエリオット・エンゲル下院議員(民主党・ニューヨーク州選出)は数日前、マーチン・デンプシー統合参謀本部議長が軍事行動の影響を率直に分析した手紙を受け取った。そこには、米国にはシリアの空軍力を限定的な攻撃で壊滅させる能力があるが、それでシリアの混乱状態が鎮静化されることはないと書かれていた。
 デンプシー議長は「アサド大統領による支配が終わっても、複数の宗派間の根深く、長期的な紛争や権力をめぐる暴力的な闘争は続くだろう」と指摘し、「われわれはこうした状況を踏まえて、限定的な軍事作戦の効果を見極めるべきである」と記した。
 いかなる行動にも差し迫ったリスクが伴う。シリアが大いに頼りにしているもう1つの後援国、ロシアとの緊張が即座に高まるだろう。シリアの同盟組織による米国の標的を狙ったテロが起きる可能性も高まるだろう。あらゆる軍事行動の激化には、戦争がその地域全体に拡大する危険も潜んでいる。
 同様に、オバマ大統領をできれば傍観者でいたいと思わせた長期的なリスクも以前と変わりなく存在している。大統領の最大の懸念には2つの側面がある。1つ目は、米国がそうした紛争に介入したとき、米国には勝利するだけの軍事力を投入することが期待される。いかなる紛争であれ、超大国が中途半端に介入するのは難しい。ここでもやはり、信頼性の問題が浮上するのだ。
 2つ目は、米国が一度介入したら、アサド政権崩壊という勝利の後に続く混乱を米国が引き受けざるを得なくなる可能性は他のどの国よりも高い。新政権を取ろうとする勢力には、米国との利害がほとんど一致しない多くの扱いにくいイスラム原理主義者たちが含まれる。  がれきをかき分けることには何年も要するだろう。≫(WSJ日本版27日)


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遠い世界の地域紛争を侮ることなかれ 無責任欧米のシリア爆撃で円安・株暴落・原油高

2013年08月28日 | 日記
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●遠い世界の地域紛争を侮ることなかれ 無責任欧米のシリア爆撃で円安・株暴落・原油高

 安倍晋三の中東訪問など興味もなかったが、よくあんなキナ臭い所に行くものだと感心していたのが、中東の地図を眺めてみたら、シリア、エジプトとはかなり離れており、今や米英軍等によるシリア空爆がカウントダウンとは関わりない地域にいるようなので、安心と云うか、「なんだ」と云う気分になってしまった(笑)。ところで、安倍はバーレーン、クウェート、カタールなど中東におけるポジションの低い小国に、何をしに行ったのだろう?トップセールスだそうだが、プラント建設の受注?原発の売り込みかい。概ね理由づけは判っているが、敢えて茶化しておくだけなので、そんな事も知らないのか、と突っ込みは入れないで貰いたい。

 ところで、西側諸国の報道を読む限り、絶対にシリア政府が、いたいけな国民を相手に、化学兵器使用を使用したと断定しているようだ。イラク攻撃と似たような論法で、シリア政府を非難し、神経ガスの使用は断じて許さない姿勢を示さなければならない、と云う大義名分を打ち出しているが、マジに本当のことだろうか、疑わざるを得ない。当然、あそこまで確たる証拠がある、と云うのだから、サリン入りの毒ガスが、科学的にシリア政府が保持しているものと同様の化学式が成り立つものを提示するのだろう。

 そこまでしておけば、イラクのようなドジは踏まないと云うことのようだが、果たして、それで中東のイスラム民族やアルカイダは納得するだろうか。米英軍等が連携し、当面はシリアアサド政権に警告(脅し)を与える空爆をするらしいが、果たして、それでアサド大統領がバンザイするだろうか。筆者には、ヤケクソを起こすのが関の山としか思えない。早ければ29日にも空爆を開始すると云う報道もあるが、このシナリオは、どこか変である。産経新聞が珍しく、穿った記事を書いている。

≪ シリア「化学兵器」に4つの謎 調査団が活動中なのに…政権側優位なのに…
  【カイロ=田中靖人】内戦が続くシリアの首都ダマスカス近郊で「アサド政権が21日、毒ガスを使用し、1300人以上が死亡した」という反体制派側の主張が衝撃を広げている。ネット上の“証拠”映像には子供の犠牲者も含まれ、国連の潘(パン)基(ギ)文(ムン)事務総長は23日、「人道に対する罪だ」と非難した。ただ、軍事的に優位に立つ政権側が、国連調査団の活動中にあえて化学兵器を使用する必要性には疑問点も残る。
 ■なぜこの時期に?
  内戦の全般的な戦況では最近、政権側の優位が伝えられている。18日からは、化学兵器使用の有無を調べる国連の調査団が国内で活動している。調査場所は北部アレッポ近郊など3カ所で、「誰が使用したのか」は対象外だ。この時期に新たに化学兵器使用が発覚すれば、調査拡大を求める声が強まるのは必至。拒否すれば政権の印象悪化は避けられない。
 一方、反体制派は、内戦初期から米欧の軍事介入を呼び込む戦略をとってきた。事件を受け英米仏などは政権側への態度をさらに硬化させており、反体制派の“情報戦”の狙いに合致する。
 ■なぜ首都近郊で?
 英国に拠点を置く反体制派のシリア人権監視団は21日、首都近郊で136人の死亡を確認したと発表した。政府軍の「砲撃」があったのは確かなようだ。
 だが、化学兵器の使用について、シリアのゾウビ情報相は「周辺の政府軍が影響を受けるため、あり得ない」と否定する。一方、英BBCは、現場は反体制派の支配地域で、反体制派自身が使用することも考えにくいとしている。
 ■「証拠」映像は本物?
 BBCのサイトは21日、複数の化学兵器専門家の分析を掲載した。外傷のない多数の死傷者が短時間に出たことから、専門家は何らかの「化学剤」が使用されたとの見解で一致する。呼吸困難などの症状から「神経ガス」が使用されたとする意見もある。
 ただ“証拠”映像では、救助者が防毒マスクや防護服を着用していないのに二次被害が確認されていないことや、除染が簡素なこと、患者が極度の苦痛を訴える様子がないことを疑問視する声もある。
 ゾウビ情報相は「映像は捏(ねつ)造(ぞう)だ」と主張。一方、英国人研究者は「大勢の子供に長時間、死んだふりをさせるのは難しい」と指摘している。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は21日、「閉鎖空間での催涙ガス使用」の可能性を挙げた。
 ■化学兵器、誰が保有?
  シリアは神経ガスのサリンや、皮膚にやけどを起こすマスタードガスなどを大量に保有しているとされる。化学兵器禁止条約に加盟せず報告義務がないため正確な量は不明だが、「約1000トンを約50カ所に貯蔵している」との見方もある。これらの化学剤を爆弾や砲弾、弾道ミサイルに詰め使用する能力がある。
  内戦が激化した昨年以来、英米仏を中心に政権側による使用疑惑が浮上。政権側、反体制派側の双方が、互いに相手が使用したと非難してきた。3月19日には、激戦のアレッポ近郊で化学兵器が使用され27人が死亡。これらを受け米国は、政権側による化学兵器使用の「証拠がある」と主張し、化学兵器による死者は100~150人と見積もった。
 一方、ロシアのラブロフ外相は、「小規模な使用は軍事的に意味がない」と政権側による使用を否定。使用されたミサイルと化学兵器は「(反体制派武装組織の)自由シリア軍の関連組織が、支配地域で2月に製造したものだ」として、反体制派も化学兵器を保有すると主張している。≫(産経新聞)

 この産経の記事は中々なもので、到底産経新聞の記事とは思えないが(産経さんゴメンね)、当を得た指摘である。政治的にノーテンキな記者が書いてくれたのかもしれない。しかし、世界の情報を網羅的に把握している米英の諜報機関は、トンデモナイ謀略であっても、欧米の益に適うとなれば、容赦しないと云う事実を、我々はあらためて認識しておく必要がある。国際情報となると、国内の仕組みもチンプンカンプンなのだから、NHK報道を信ずるのみかもしれないが、グローバル経済で生きようとする人々は、金融資本主義勢力が、いま何を望んでいるか、想像を逞しくして貰いたいものだ。

 米英仏軍などは、空爆はかなり限定的なものを想定しているようだが、アサド大統領が自棄を起こせば、地上軍の派遣まで戦況が拡大する事もあり得る。その時は、我が国自衛隊にも、それなりの貢献が求められるに違いない。安倍政権なら、その要請に応じる可能性すらあるだろう。警告の空爆の積りが、相手の出方ひとつでは、戦禍が拡大する可能性を秘めている。また、エジプト情勢は、取り敢えず落ち着いているが、シリア空爆に触発され、市民が動き出す可能性もある。そうなると、間に位置するイスラエルの危機感は益々高まり、ことは複雑化するだろう。

 このような予測が考えられる情勢に、株式市場中心に先取りの動きが加速してきた。そもそも、米国の金融緩和縮小が現実味を帯び、既に警戒感が出た相場だったが、此処に来てシリア情勢が拍車を掛けている。昨夜のNY市場は170ドル安だった。明けて28日の東京市場も大きく下げている。13:40現在289円の下げだ。大引けの下げ幅がどうなっているか?かなり投げ売りの傾向も出ている。こうなると、円高、株安の流れは確実となり、「経済のアベ」は逆風に晒されるだろう。原油価格は、シリア、エジプト情勢如何で、スエズ運河の運航問題に発展するだろうから、早晩世界の原油価格に影響を及ぼすことになる。我が国は、円安、株安、原油高、自衛隊派兵と、安倍政権のお陰で、世界の荒波の直撃を受けるリスクを抱え込んだ。

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驚きの世論調査、日経の内閣支持率68%! 朝日の55%でも多過ぎると思っていが

2013年08月27日 | 日記
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●驚きの世論調査、日経の内閣支持率68%! 朝日の55%でも多過ぎると思っていが

 日経新聞のこのような内閣支持率は、どこの誰に聞くと得られる支持率なのだろう?判っていることとはいえ、あまりにも酷過ぎるのではなかろうか。個別のコラムなのでは、中立的風合いもあるのだが、安倍政権に対する忠実度が際立ちすぎている。詳細に検証すれば、経済団体の意図がどの辺にあるか、判ると云う点では恰好の白状捏造世論調査と云う利便性も兼ね備えている(笑)。すべての検証は面倒過ぎるので、朝日新聞との違いが鮮明な部分にスポットを当てて、意地悪に見てやろう。

 ところで、この話題の安倍政権だが、予算の作り方が酷くぞんざいだ。そもそも、来年度の一般会計予算の概算要求基準(シーリング)において、一般歳出の上限を示さない等と云う狼藉を働いたわけだが、この政権に金の使い道を決めさせたら、不要不急とは一切関係のない予算をジャガスカ計上しそうである。共同通信によると、原発事故の除染費用に前年並みの5000億円を環境省が要求するらしいが、本年度の除染費用がまだ残っているのが現実だ。除染後の中間貯蔵施設の建設費用については、金額表示なしで項目を要求するそうである。お題目で予算を確保しておくとは、霞が関らしい手法だ。永遠に除染することになるやもしれず、ため息の出るような税金の使われ方だ。

 さて見出しの日経新聞の世論調査を、同時期に調査した朝日新聞の世論調査と比較してみよう。おそらく安倍内閣の経済界寄りの政策に丸をつけ、庶民への増税と経済界優遇の政策をねだるような世論調査になっていないか、そこのところを注意深く覗いてみる。無論、朝日新聞の調査においてもかなりのバイアスが掛かっているだろうが、それでも多少中立的ポジションをかろうじてキープしている部分が垣間見える。

 先ず、日経が世論調査の見出しとした「内閣支持率」と「消費増税容認」についてみてみよう。日経が、どう考えても安倍内閣の支持率が上がる出来事がないのに7月調査より5ポイントも増加し、68%になったとは、これ如何に?である。円安の勢いも落ち、株価も15000円はおろか13000円台死守の状況なのにだ。金をバラマキに行く開発途上国外交が評価されるとも思えない。原発事故の汚染水問題に関しては、積極的自らの姿勢さえ見えない。TPPでアメリカの振り付け通り踊っているのを国民が評価するとも思えない。まさか、洪水で国中大騒ぎなのに夏期休暇を悠々と取り、ゴルフを満喫した余裕綽々の傲慢不遜な振舞いが評価されたのだろうか(笑)。日経の無理のし過ぎだろう。

 その点、朝日新聞の内閣支持率の方がリアリティーがある。55%とは何とも微妙な数字を導きだしている。朝日は、経営者及び幹部が安倍政権に恭順の意を表したわけだが、現場の記者の中には、かなり快く思っていない人材もいるので、こういう数字に落ち着いたのだろう。まぁこんな世論調査を真面目に解析するのもアホ臭いのだが、もう少し頑張ってみよう(笑)。

 次は日経が後押しに必死の消費増税についてである。日経は消費増税に国民の理解が深まったと云うことで、72%が方法論は別にして賛成(容認)になったと数字を弄くったようだ。朝日の方は、賛成43%、反対49%と拮抗している。おそらく事実は賛成40%、反対60%くらいが本来の数字だろう。おそらく、消費税を段階的に上げる方法論が優勢と云うことは言えそうだが、社会保障の改革が置き去りであり、セットで判断するべきものなのだから、個別に質問すること自体が八百長だ。

 安倍政権による経済政策で日本の経済成長が期待できるかと云う点について、検証してみよう。日経は「評価する」が前回と同じ56%、「評価しない」は26%と3ポイント下がったそうである。国民は、菅や野田の民主党の経済政策に比べたら評価出来ると考えたかもしれない。それなら、比較論なら出てきても不思議ではない数字になる。しかし、現実は思い通りには行かないだろうと、世捨て人のような心境の民意が反映している。朝日もこの件に関しては、期待できる46、期待できない34で、傾向としては評価している人が多いようだが、コチラも比較論に過ぎないだろう。あの民主党と比較したら、共産党だって、もっとマシな経済政策打っただろう(笑)。

 安倍政権の経済政策で自分達が恩恵をこうむるかどうかについては、質問設定が幾分違うが、日経ではまだ景気上昇の恩恵を受けていないと75%が答えている。朝日の質問では安倍政権の経済政策で雇用や賃金に好影響はあるかと聞いているが、結びつくとは思わない人が47%で、結びつくと前向きな人が35%となっている。この辺の質問も、景気が浮揚し、2,3年後に需給のバランスが整い、賃金に反映してくるとマスメディアが嘘をついているのが影響しているのだろう。素朴な国民性と云うか、お馬鹿な人々と言うべきか、今夜は控える事にする。

 TPPに関して、日経は支持率が伸びているとだけ表現したが、数字的には 48%であり、反対も30%、分からないが20%なので、中途半端な数字である。なにせ、中身が不明確であり且つ決定もしていないのだから、聞かれた方も迷惑だろう。流石に朝日は、TPPに関する質問は時期尚早と考えたのだろう、質問項目にもない。かなりの部分で秘密もあり、話し合いが整ったとしても、国民に判断するだけの材料が提供されるかどうかも定かではない。「ビックリ箱貿易協定」に、賛成とか反対とか以前の問題で、オバマの意向と云うだけで推論を試みるしかないのだ。その答えは、米国贔屓か嫌米かで決まるのだろう。

 その他には、日経は煮詰まってもいない社会保障制度改革が決まったような感じでの質問を行っているが、このこと自体が刷り込み作業の一環なのだろう。とぼけて、世論調査の中の質問に紛れ込ませるとは、悪質である。朝日は社是でもある、集団的自衛権(憲法解釈の変更)に関して、嫌に深い質問を行っている。ただ両社の調査を見る限り、アジアの国々、特に中韓にとやかく言われることを毛嫌いする国民性は同じように現れている。この辺が、奇妙なナショナリズムが湧きでてくる要因があるのだろう。おそらくだが、米国や英国から言われたら、チョッとばかり聞く耳を持つ国民性とは何だろう、と思う。明治維新以降、アングロサクソンには、日本人は異様な姿でひれ伏すようだ。なんとも物悲しい気分になってしまう。以下に、日経・朝日の世論調査記事を添付する。


≪ 内閣支持68%、消費増税容認7割 本社世論調査
 日本経済新聞社とテレビ東京による23~25日の世論調査で、安倍内閣の支持率は68%と7月の前回調査より5ポイント上昇した。不支持率 は23%と6ポイント下がった。消費増税に関しては税率引き上げを容認する声が7割を超えた。環太平洋経済連携協定(TPP)加盟への賛成も増えており、政策への理解の広がりが支持率を押し上げているとみられる。
 消費税率を今の5%から2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げることについて三択で聞いたところ「予定通り引き上げるべきだ」は17%と前回より6ポイント上昇。「引き上げるべきだが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」は3ポイント低下の55%、「引き上げるべきでない」は3ポイント下がり24%だった。
 消費増税自体への理解が進む一方、半数は実施時期や引き上げ幅を慎重に考えるべきだとしており、首相の判断に影響を与える可能性がある。
 TPPへの加盟に賛成は48%と前回より6ポイント上昇した。反対は3ポイント低下の30%だった。
 社会保障費の増加に対応するため高齢者の負担を増やすことは「やむを得ない」が46%、「避けるべきだ」は48%と拮抗した。世代別では 20~50歳代は「やむを得ない」が半数以上。60歳代は「避けるべきだ」と「やむを得ない」が並び、70歳代以上は「避けるべきだ」が57%だった。
 安倍内閣の経済政策は「評価する」が前回と同じ56%。「評価しない」は26%と3ポイント下がった。景気回復は「実感していない」が75%、「実感している」は17%で、ともに同様の質問をした6月とほぼ横ばいだった。
 日経リサーチが福島県の一部地域を除く全国の成人男女を対象に乱数番号(RDD)方式で電話調査した。有権者のいる1476世帯から895件の回答を得た。回答率は60.6%だった。≫(日経新聞)


 ≪ 世論調査―質問と回答(8月24、25日実施)
(数字は%。小数点以下は四捨五入。質問文と回答は一部省略。◆は全員への質問。◇は枝分かれ質問で該当する回答者の中での比率。〈 〉内の数字は全体に対する比率。丸カッコ内の数字は7月22、23日の調査結果)
消費増税、賛否が接近
◆安倍内閣を支持しますか。支持しませんか。
 支持する55(54)
 支持しない27(26)
◇それはどうしてですか。(選択肢から一つ選ぶ=択一。左は「支持する」55%、右は「支持しない」27%の理由)   
 首相が安倍さん13〈7〉 8〈2〉
 自民党中心の内閣24〈13〉 31〈9〉
 政策の面44〈25〉 48〈13〉
 なんとなく16〈9〉 11〈3〉
◆いま、どの政党を支持していますか。
自民38(39)▽民主6(7)▽維新2(3)▽公明3(4)▽みんな2(4)▽共産2(4)▽生活0(0)▽社民1(0)▽みどりの風0(0)▽新党大地0(0)▽新党改革0(0)▽その他の政党1(0)▽支持政党なし40(31)▽答えない・分からない5(8)
◆安倍首相の経済政策で、日本経済が成長することを期待できると思いますか。期待できないと思いますか。
 期待できる46
 期待できない34
◆安倍首相の経済政策が、賃金や雇用が増えることに結びつくと思いますか。そうは思いませんか。
 結びつく35(35)
 そうは思わない47(41)
◆消費税を来年4月に8%に、再来年10月に10%に引き上げることに賛成ですか。反対ですか。
 賛成 43(30) 
 反対 49(58)
◆消費税を来年8%、再来年10%に引き上げるのではなく、毎年1%ずつ引き上げて10%にする、という考えがあります。こうした引き上げ方はよいと思いますか。よくないと思いますか。
 よい 34よくない 51
◆消費税を引き上げることで、景気に悪い影響が出る不安をどの程度感じますか。(択一)
 大いに感じる18
 ある程度感じる59
 あまり感じない19
 まったく感じない2
◆消費税を引き上げないことで、社会保障に悪い影響が出る不安をどの程度感じますか。(択一)
 大いに感じる24
 ある程度感じる49
 あまり感じない19
 まったく感じない3
◆集団的自衛権についてうかがいます。集団的自衛権とは、アメリカのような同盟国が攻撃された時に、日本が攻撃されていなくても、日本への攻撃とみなして、一緒に戦う権利のことです。これまで政府は憲法上、集団的自衛権を使うことはできないと解釈してきました。憲法の解釈を変えて、集団的自衛権を使えるようにすることに賛成ですか。反対ですか。
 賛成 27  反対 59
◆安倍首相は終戦の日の8月15日、靖国神社に参拝しませんでした。安倍首相が靖国神社に参拝しなかったことは適切だったと思いますか。適切ではなかったと思いますか。
 適切だった63
 適切ではなかった20
◆安倍首相は8月15日に靖国神社に参拝しませんでしたが、3人の大臣はこの日に参拝しました。大臣が靖国神社に参拝したことは適切だったと思いますか。適切ではなかったと思いますか。
 適切だった41
 適切ではなかった37
◆安倍首相は、戦争で亡くなった人を追悼する8月15日の式典で、この20年間の首相と違って、アジア諸国に被害を与えたことに触れませんでした。安倍首相のこうした対応は適切だったと思いますか。適切ではなかったと思いますか。
 適切だった40
 適切ではなかった40
◆アジアに被害を与えたことに安倍首相が触れなかったことや、3人の大臣が靖国神社に参拝したことに対し、中国や韓国が批判しています。安倍内閣は中国や韓国からの批判を重く受け止めるべきだと思いますか。そうは思いませんか。
 重く受け止めるべきだ34
 そうは思わない52
◆東京都は2020年夏のオリンピック開催地に立候補しています。東京都でオリンピックを開くことに賛成ですか。反対ですか。
 賛成 74  反対 17     
 ◇  
〈調査方法〉 24、25の両日、コンピューターで無作為に作成した番号に調査員が電話をかける「朝日RDD」方式で、全国の有権者を対象に調査した(福島県の一部を除く)。世帯用と判明した番号は3269件、有効回答は1658人。回答率は51%。 ≫(朝日新聞)

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和歌山カレー事件林眞須美の再審請求 本当に警察・検察はズルをしていないのか

2013年08月26日 | 日記
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●和歌山カレー事件林眞須美の再審請求 本当に警察・検察はズルをしていないのか

 今夜は、個別の事件について調べてみた。もう記憶のかなたに行ってしまった“和歌山カレー事件”のことである。現代ビジネスの魚住昭氏のコラムを読んでいる内に、毒婦の印象が強い林眞須美死刑囚が本当に犯人なのかどうか、ふと考えてしまった。筆者などは、すっかりメディアスクラムに乗せられて、あの図太い人を喰ったような態度の性悪女の犯行に違いないと思い込んでいた。日頃から悪いことを繰り返していた素行不良の夫婦の悪事が満天に晒されたと溜飲を下げる単純さであった。

 しかし、その溜飲がトンデモナイ低能児な印象になってしまいそうな事実が、今年になって判明している。少なくとも、再審の扉を開いても良いだろうと云うレベルの事実が、科学的次元において現れた。日本の司法制度の酷さは、警察、検察、そして判事達によって構成される司法仲間(リーガル・コネクション?)な歪んだ関係性は、世界に類を見ない凄さである。小沢一郎にまつわる事件においても同様だが、これにマスメディアが便乗商法を目論み、新聞の販売実績やテレビの視聴率を稼ぐ。なんと云う仕組みがあるのだろうか、ほとほとウンザリしてしまう。

 今日は、和歌山カレー事件における疑問点が語られている二つの情報を参考に添付する。ひとつは上述、魚住昭氏のコラムであり、もう一つはビデオニュースドットコムのマル激トーク・オン・ディマンドのまとめ記事(第420回と628回)である。林死刑囚の無罪の証明までに至るかどうか判らないが、少なくとも再審の道を開くのは法治国家の務めだろう。このまま不都合に蓋をして、仮に毒婦であろうと、もしかしたら無罪かもしれない疑問符がついた死刑囚を見殺しにするのは拙い、と筆者は思うに至った。最低でも、再検証の価値はある。魔女的女性であると云う印象だけで、彼女を裁くのは酷と云うものだ。

 ≪ 第四十六回 昔取らなかった杵柄
  数日前から科学論文を読んでいる。京大大学院の河合潤教授(分析化学)が「X線分析の進歩」という専門誌に寄稿したものだ。わずか20ページの論文だが、難解な用語ばかり出てきて、私にはとんと意味がわからない。
「読書百遍、意自ずから通ず」
 そう念じて何度か読み返してみたものの、やはりちんぷんかんぷんである。中学・高校で物理・化学の勉強をサボったツケが今ごろ回ってきたのか。しかし、だからといって諦めるわけにいかない。これは人ひとりの命を左右するかもしれない論文なのだ。
 どうしようと悩むうち、ふと担当編集者のN君(30歳)のことを思い出した。彼はたしか東大の理系出身だ。だったら、たちどころにこの論文を読み解いて、説明してくれるにちがいない。
 電話でN君を呼び出し、JR西荻窪駅前の喫茶店で教えを請うた。30歳も年下の男に頭を下げるのはしゃくだったが、結果は期待通りだった。彼は小学生レベルの理科の知識しかない私に噛んでふくめるように論文のポイントを解説してくれた。
 最後にどうしても対数(log)の意味(たしか高校で習った)が理解できなかったので、恥を忍んで訊ねると、N君は「エッ、これもわからないの」と言わんばかりの顔をした。私の自尊心はちょっぴり傷ついたが、彼が呆れるのも無理はない。勉強をサボることしか頭になかった私が悪いのだ。
 N君の辛抱強いレクチャーで河合論文の概略をつかめた。予想した通り、これは重大な論文だった。今からちょうど15年前の7月25日、和歌山市で起きた毒入りカレー事件の真相にたどりつくカギのありかを指し示していた。
 あの日の夕、自治会の夏祭りで出されたカレーを食べた子供ら67人がヒ素中毒を起こし、うち4人が死んだ。いったい誰が、何のためにこんなことをしたのか。日本中が騒然とするなか、和歌山県警は林眞須美(52歳)という元保険外交員の仕業と断定した。
 彼女は法廷で無実を訴えたが、私も含めてそれを真に受ける者はほとんどいなかった。事故や病気を装って多額の保険金を詐取する手口の悪質さといい、テレビカメラに映った逮捕前のふてぶてしい態度といい、〝毒婦〟の呼称がぴったりの女性だったからだ。
 しかし、それから10年に及ぶ裁判を経ても事件の謎は解明されなかった。肝心の動機が不明のままだ。自白もなく、犯行の目撃者もおらず、指紋などの決定的証拠もなかった。私は'09年、彼女に死刑を宣告した最高裁の判決文を読んで、こんなあやふやな証拠で人を絞首刑にしていいのかと思うようになっ た。
 彼女の有罪の決め手とされたのは東京理科大の中井泉教授の鑑定だった。中井教授は当時最新鋭の大型放射光施設スプリングエイトを使い、現場付近に残っていた青色紙コップと、彼女の家の台所で見つかったプラスチック容器などに付いていたヒ素を分析した。
 その結果、どのヒ素にも不純物としてモリブデン、スズ、ビスマスなど4種の重元素(質量の重い元素)が含まれ、それらの含有比率のパターンが共通することがわかった。このため中井教授はこれらのヒ素は「(中国の)同じ工場が、同じ原料で、同じ時期につくったもの」で同一だと結論づけた。
 この中井鑑定に異を唱えたのが今回の河合論文である。河合教授は鑑定の生データを再分析した。中井鑑定で無視された軽元素(鉄、亜鉛、カルシウムなど)の不純物の含有比率を比較したところ、青色紙コップと台所の容器に付いたヒ素は異なることがわかった。
 紙コップはヒ素の純度がかなり高く、不純物が少なかった。一方の台所容器は、紙コップにほとんど見られないバリウムが多く含まれていた。鉄や亜鉛の含有率のパターンも明らかに違い、同じヒ素とは考えられないという。
 同じデータから真逆の結論が出たのはなぜか。理由を簡単に説明しよう。中井教授の考え方は「鉱物は生成時の温度、圧力などの違いから、その産地特有の元素組成を持っている。だからその鉱物に含まれるユニークな成分で、しかも鉄より重い元素を調べれば、産地がわかる」というものだ。
 ヒ素の場合、識別の指標となるのが、先に述べた4つの重元素である。いずれもヒ素の原料となる鉱石に含まれていて、その産地特有の含有比率を示すという。
 これはこれで理にかなった方法だが、ヒ素の起源(=産地)が同じかどうかを識別することしかできないという限界がある。和歌山市のある商店では事件以前に中国産も含めてひと月1tのヒ素を仕入れ、農家などに小分けして売っていたというから、同種のヒ素は相当量出回っていたはずだ。
 これに対し河合教授は、重元素だけでなく軽元素の含有比率も比較しなければ、同じヒ素かどうかわからないという立場である。
 ヒ素はメリケン粉やセメントに混ぜてシロアリ駆除剤として使われる。その混ぜ方に各人の流儀があるから、セメントやメリケン粉に含まれるカルシウムや鉄、亜鉛などの軽元素を調べれば、ヒ素の持ち主も特定できる可能性があるという。
 両教授の言い分のどちらに理があるか。その判断は読者にお任せしよう。私がここで指摘しておきたいのは、最重要証拠の青色紙コップと台所のプラスチック容器の捜査をめぐる不審点である。
 和歌山県警は'98年10月4日から捜査員84人を動員して林家を連日家宅捜索したが、プラスチック容器(白アリと大書されていた)は最初の3日間は見つからなかった。それが、4日目になって最も目に付きやすい台所シンク下の収納庫から発見されたというのはあまりに不自然と言うしかない。
 青色紙コップも、現在証拠物として和歌山地検に保管されているものはクリーム色に変わっている。押収時の写真と比べると、明らかに形や汚れのつき方が違っていて別物としか思えないという。
 昨年8月、カレー事件の捜査にかかわった和歌山県警科学捜査研究所の主任研究員が別の事件で証拠を捏造していたことが明らかになった。今年5月の初公判で彼は6事件の鑑定で、書類に過去の別事件の写真やデータを流用していたことを認めている。
 県警はカレー事件での証拠捏造はなかったとしているが、ホントだろうか。林死刑囚の再審開始を求める弁護団12人は和歌山地裁に対し、ヒ素の再鑑定とともに検察側証拠の全面開示を要求し、捜査全体の見直しを迫る構えだ。
 これまで闇に閉ざされてきた和歌山カレー事件の真相に新たな光があてられる兆しがようやく見えてきたらしい。再審の重い扉が開くかどうか。今後の動きに目が離せなくなった。『週刊現代』2013年8月17・24日号より ≫(現代ビジネス:メディアと教養:魚住昭「わき道をゆく~魚住昭の誌上デモ」)


≪マル激トーク・オン・ディマンド 第628回(2013年04月27日)
やはり和歌山カレー事件は冤罪だったのか ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林眞須美死刑囚主任弁護人)
 和歌山カレー事件で新たな事実が明らかになった。もしかすると、これは決定的な新証拠になるかもしれない。
 夏祭りの炊き出しで出されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、4人の死者と63人の負傷者を出した「和歌山カレー事件」は、林眞須美被告が否認・黙秘を続ける中、2009年4月に最高裁で死刑が確定している。今回、その死刑判決の重要な判断材料の一つだった「亜ヒ酸の鑑定」において、新たな事実が明らかになったのだ。
 今回問題となっている証拠は、犯行に使われたとみられる紙コップに付着していたヒ素(亜ヒ酸)と、林氏宅で見つかったヒ素とが同じ組成のものだったとする鑑定結果。林真須美氏の夫の健治さんがシロアリ駆除の仕事をしていたことから、林氏の自宅には普段からヒ素が保管されていたという。この鑑定結果は林真須美氏を有罪とする上で最も重要な証拠の一つだった。
 亜ヒ酸の鑑定については、当時最先端の大規模研究施設「SPring-8(スプリング・エイト)」を使った鑑定によって、科学な裏付けがなされたと考えられてきたが、今回、それを否定する新たな検証論文が京都大学の河合潤教授によって発表された。河合教授が『X線分析の進歩44号』に発表した論文によると、カレーにヒ素を混入するために使われたとされる紙コップに付着していたヒ素と林さん宅にあったヒ素をより詳細に検証した結果、両者の間には明らかに異 なる不純物が見つかったという。河合教授は両者を「別のものであったと結論できる」としている。
 この事件はもともと物証に乏しく、犯行に至った動機も解明されていない。林氏の弁護人を務める安田好弘弁護士によると、主な間接証拠も詳細に検討していくと必ずしも信頼性の高いものばかりではないという。安田氏はこの事件は最初から警察による事件の見立てに間違いがあったのではないかと言う。そして、メディアによるセンセーショナルな報道などもあって、捜査当局もそれを修正できないまま殺人事件として突っ走ってしまったとの見方を示す。
 安田弁護士は最高裁判決の直後から林氏の裁判の再審を求めているが、今回明らかになったヒ素鑑定の結果を追加した再審補充書を早速提出したという。確かに、今回明らかになった新事実を前にすると、最高裁が判決で述べているような「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に(林さんが犯人であることは)証明されている」と言えるのかどうかは明らかに疑わしくなっているように見える。しかし、日本では再審の壁はとても厚い。日本の司法界の構造として、裁判官が検察の訴えを退けてまで無罪判決を下すのには相当な重圧がかかるからだ。
 今回の新事実を、司法はどう判断するのか。事件の新事実をもとに、再審の問題、司法の裏側などについて、ゲストの安田好弘弁護士とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。≫(ビデオニュースドットコム:マル激トーク・オン・ディマンド 第628回)


 ≪マル激トーク・オン・ディマンド 第420回(2009年04月25日)
和歌山カレー事件はまだ終わっていない ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林真須美被告主任弁護人)
 被告人が犯人であることは、「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」。
 最高裁判所は4月21日、和歌山カレー事件で一審、二審と死刑判決を受けている林真須美被告に対し、このような表現を使って05年6月の大阪高裁の死刑判決を支持する判断を下し、事実上真須美被告の死刑が確定した。
 1998年7月25日、和歌山県和歌山市郊外の新興住宅地の夏祭りで出されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、子どもを含む4人が死亡、63人がヒ素中毒の 被害を受けた、いわゆる和歌山カレー事件では、事件発生直後からおびただしい数の報道陣が事件現場周辺に殺到し、集団過熱報道が繰り返された。そしてその 過程で浮上した一つの家族にメディア報道は集中し、それを後追いする形で、警察の捜査がその家族に向けられた。それが林真須美被告の一家だった。
 確かに、事件と林家を結びつける状況証拠は多い。真須美被告の夫・健治さんが、元々シロアリ駆除業を営んでいたために、カレーに混入されたとされるヒ素 を、林家は少なくともある時点では所持していた。また、夫の健治さんや林家に出入りしていた使用人たちが、繰り返しヒ素中毒と思しき症状で入退院を繰り返 し、そのたびに多額の保険金を得ていたことも、カレーに毒を盛った犯人として林家が怪しまれる理由としては十分だった。
 しかし、この裁判では疑わしいと思える状況材料はあれこれ出てきたが、これが真須美被告自身の犯行であると断定すべき確たる証拠は何一つ出てこなかっ た。また、何よりも、真須美被告には、カレー鍋に大量のヒ素を入れて、大勢の近隣住人を殺害しなければならない理由が見あたらなかった。公判でも、「近所 との折り合いが悪かった不仲説」、「かっとなった勢いで入れてしまった激昂説」、「夫らに対して繰り返し殺人未遂を繰り返すうちに感覚が麻痺した感覚麻痺 説」などがあげられたが、結局どれも動機の証明にはいたらず、最終的に殺害の動機は不明とされたままの死刑判決だった。そして何よりも真須美被告自身が、 逮捕されてから11年間、一貫して犯行を全面否認していた。
 「物的証拠無し」「動機不明」「本人全面否認」の中で争われた裁判だったが、その一方でメディア報道などを通じ「平成の毒婦」とまで呼ばれた真須美被告 が犯人であると確信する人は、一般市民の間でも、被害者や被害者遺族の間にも圧倒的に多く、そうした空気の中で裁判所は厳しい判断を迫られていた。
 そして今週最高裁は、物的証拠はなくても「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」し、動機は不明でも問題ないとの判断を示した。ま た、真須美被告が全面否認している点については、それが反省していない証拠であり、厳罰を科す理由となるとするなど、上記の3点に対する疑問をことごとく 退けた上で、上告を棄却して、二審の死刑判決を支持した。
 しかし、真須美被告の弁護人を務める安田好弘弁護士は、どう考えても「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」とは言えないと、この判断を真っ向から否定し、再審請求などを通じて、今後も法廷闘争を継続していく強い意志を表明している。
 確かに、最高裁が「合理的な疑いを差し挟む余地はない」としている状況証拠を詳しく見ていくと、不審な点がいくらでも浮上してくる。真須美被告が殺人未 遂の過去があるとされる根拠となった夫健治さんらに対するヒ素投与事件も、健治さん自身が保険金詐取のために自ら呑んだもので、日本生命の外交員だった真 須美さんはその共犯であると主張している。公判ではこの証言は、身内を庇うためのもので信用できないとして一蹴されているが、その論理でいくと、健治さん は自分を殺そうとした妻を庇うために嘘をついていることになる。また、現に健治さんは保険金詐取で有罪判決を受け、4年あまり収監されているのだ。
 その他にも、カレーに使われたヒ素と林家にあったヒ素が一致したとされる鑑定結果や(純粋なヒ素(亜ヒ酸)が一致するのは当たり前なので、これは実際は ヒ素に混入していた不純物の内容が一致したことを意味している)、真須美被告がカレー鍋の番をしている時の挙動が不審だったとする証言には疑問点も多く、 真須美被告の犯行が推測されるとしている状況証拠さえもが、多くの矛盾をはらんでいると安田氏は主張する。
 もとより、真犯人でも出てこない限り、真須美被告の無実を証明する手立てなどあろうはずもないが、もともと裁判では有罪を主張する検察のシナリオに「合 理的な疑い」を挟むことができれば無罪とするのが、「推定無罪」、「疑わしきは被告の利益へ」を糧とする近代法の要諦である。果たしてこれで真須美被告を 殺人罪に問うことが本当に正しいことと言えるのか。
 来月21日にはいよいよ裁判員制度が始まる。私たち一般市民が、このような事件の評決(有罪か無罪か)を判断し、しかも死刑かどうかの量刑まで決定しな ければならなくなるのだ。安田弁護士は、裁判員制度の下でこの裁判が行われれば、メディア報道によって作られた先入観に強く影響された市民裁判員と、公判 前手続きによって厳しく絞り込まれた証拠のみの、ごくごく短期間の審議となるため、弁護側としては為す術がなくなることを懸念すると言う。
 今週は、最高裁によって死刑が確定した和歌山カレー事件で争われた論点をあらためて洗い出した上で、裁判員制度で求められることになる、一般市民の感覚 で検察の提出した証拠を見た時に、果たして本当に「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」かどうかを検証した。そして、その上で、この 判決の持つ意味を、安田弁護士を交えて議論した。≫(ビデオニュースドットコム:マル激トーク・オン・ディマンド 第420回)

内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力
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不都合の真実に蓋をするような行為に天の裁きか 「はだしのゲン」ベストセラーに

2013年08月25日 | 日記
日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)
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●不都合の真実に蓋をするような行為に天の裁きか 「はだしのゲン」ベストセラーに

 松江市の教育委員会は委員会も開かず、教育長及び数人の幹部で合議のうえ、自らの思想信条を盾に、自分の意志を通そうと云う特定の人物の再三の陳情(要求)に屈し、「大変過激な文章や絵がこの漫画を占めている」という意見が出たとの理由で、図書館、各校長に学校での閉架を要請した、と云うのが表向きの話。この問題は同市議会においても採決され、不採用が決定していた。なぜこのような顛末が起きるのか、非常に不思議だ。迷彩服風の出で立ちの人物の陳情が功を奏したのか、いずれにせよ、松江市の各校長は全員が要請に過ぎない教育委員会の要請に従順に服従したらしい。

 ところが、上記の顛末には続きがあった。この要請が世間のブーイングが激しさを増し、松江市や松江教育委員会に苦情が殺到、マスメディアの一部も、教育委員会の独断専行を厳しく指弾した。その結果、教育委員会の敢えなく独断専行要請を撤回、従前通り閲覧できるようになったそうである。時事通信は以下のように伝えているが、「閉架」措置を決定、校長らに要請した教育長は既に交代しており、別の人物が現在教育長になっている。

≪「はだしのゲン」閲覧制限を再検討=撤回を視野―松江市教委
2012年12月に死去した漫画家中沢啓治さんが自身の被爆体験を基にした漫画「はだしのゲン」について、松江市教育委員会が同月、市内の小中学校に閲覧制限を要請していたが、要請の撤回を視野に再検討する方針を決めたことが、20日までに分かった。
 市教委などによると12年8月、「はだしのゲンは間違った歴史認識を植え付ける」として学校図書館からの撤去を求める市民からの陳情が市議会にあったが、市議会は同年12月に全会一致で陳情を不採択としていた。
 しかし市教委は、作中にある女性への暴行場面や人の首を切る描写を問題視。同月中に市内の全小中学校に対し、作品を図書館の倉庫などにしまい、子どもから要望がない限りは自由に閲覧できない「閉架」措置とするよう要請した。要請は市の教育委員会会議で議論されずに、市教委の独断で2度にわたり行わ れていた。
 清水伸夫松江市教育長は20日までの取材に、「手続き的にどうだったか調査する必要がある」と要請に至った過程の問題点を指摘。また、議会が陳情 を不採択としたことや、市内外から反発の声が多数寄せられていることを受け、「今後は撤回も視野に、委員会会議の意見を聴いて再度検討したい」と話した。
 22日には同会議が開かれ、閲覧制限が議題として取り上げられる予定。清水教育長は、「遅くとも月内に一定の結論を示したい」としている。≫(時事通信)

 ことの発端と当時の教育長の暴走に、どのような因果関係があるか判然としないが、当時の教育長ら関わった5人の話がふるっている。この辺のことを、朝日の記者武田氏が詳しくツイートしているので読んでみよう。

≪ 朝日・武田肇ツイッター
 1、松江市教委が、中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を市内の小中学校に求めていた問題で、現地に3日間出張した。たまたま、山陰中央新報が特報 した日、社会部内勤だったのが縁だ。結果的には松江総局の皆さんの頑張りで、私は足を引っ張っただけになったが、現地ならではの発見もあった。
2、現地で取材する前は、今回の問題は、市教委が外部の政治的圧力に屈してゲンの利用制限を決めたのかと、ぼんやり想像していた。しかし、限られた期間の取材でわかったのは、そうではなく、閲覧制限は、外部の圧力には踏みとどまった市教委が、独自の検討、独自の判断で導いた結果だったということだ。
3、少しややこしいが、市教委がはだしのゲンの利用制限を学校に求めた「発端」は、ゲンについて「誤った歴史認識を植えつける漫画であり、撤去すべき」と主張した男性の陳情だった。これがなければ始まらなかったのは、間違いない。しかし、経過を詳細に検証すると、単純な流れではなかった。
4、以下はわずか二、三日の出張中の取材結果であり、「真実」はその通りではないかもしれない。現時点までに関係者を直接取材し、入手した情報を踏まえた仮説に過ぎない。さらに取材が進めば別のストーリーになるかもしれない。そうした限界を踏まえたうえで、一つの記録として記しておきたい。
5、今回、はだしのゲンの利用制限の呼びかけを決めた市教委事務局のメンバーは、当時の教育長ら幹部五人だ。この五人は昨年のある時点までは、はだしのゲンを平和教材として無条件に高く評価し、ゲンを撤去せよという外部の要求については断固拒否ということで意見一致していた。ある時点までは…。
6、ある時点とは昨年10月、この五人が、陳情を審査した市議会対策として、はだしのゲンの全巻を読んだときだ。この五人には、ゲンを平和教材として授業で 使ったことのある元教諭も含まれるが、五巻までしか読んでなかった。そのほかの幹部も、ゲンを読んだことはあったが、途中の巻までだった。
7、全巻、具体的には10巻目を読んだとき、五人の心がガラリと変わったという。特に衝撃だったのは、旧日本軍兵士の性暴力の描写だったという。「これが、同じゲンかと思った」。取材に応じた幹部はこう明かした。別の幹部は記者に「あの描写をお子さんに見せられますか?」と問いかけてきた。
8、市教委事務局の五人は、10巻を読んだ段階で「子どもに見せるべきでない描写があり、何らか対策をとらないといけない」ということで一致したという。その五人の思いは、昨年12月初め、市議会が陳情を全会一致で不採択とした後も変わらなかったという。ここから、五人の「独断」が始まっていく。
9、五人は事実上の「密室」で二つの方針を決めた。まず、対応は、10巻だけでなく、全巻とすることだ。10巻だけを対象とすると、市教委事務局が検閲や墨塗りをしているという印象を与えかねないという意見が出たからだという。ある幹部は「ゼロか百の選択肢しかないと思った」と話した。
10、もう一つは、市教委が閉架を強制することになれば学校の自主性や図書館の自由を冒すことになるため、校長への「お願い」とすることだった。当時の幹部の一人は「これは図書の運用を変えるに過ぎず、自由の制限でないと考えていた」と話した。こうした軽い認識のもと、教育委員にも相談しなかった。
11、市教委は軽い認識だったが、昨年12月半ば、「お願い」を伝達された校長たちの受け止めは違った。1月、「現場の混乱を避けるため」という理由で、市教委 が二度目の「要請」を伝達すると、ゲンは一校を除いて子どもたちの目から「消えた」。多くの校長は市教委の要請を強制と受け止めたのた。
12、以上のように、今回の問題は市教委が外部圧力に屈して行ったという単純な構図ではないと思う(現時点での取材では、だが…)。外部の陳情があり、議会が審査し、その対策として市教委事務局が「勉強」する中で、独自に問題点を「発見」し、独自に対応し、結局、陳情者らの望む方向に進んでいた。
13、しかも、そこに重大なことをしているという自覚も乏しかった。私は、単純に政治的圧力に屈したという構図でなかったこの過程にこそ、より深刻さを感じる。 また、曖昧な基準と、一見柔らかな「お願い」で一つの作品を丸ごと子どもの目の前から遠ざけ、その権力性に無自覚なことに恐ろしさを感じる。
14、こうした経過から、いくつもの教訓が浮かび上がる。それは、今後記事を書く中でじっくり考えていきたい。できれば、いろんな方の意見も知りたい……そんな思いを胸に、泊まり勤務に就くため、大阪に戻ってきた。14終わり ≫(朝日新聞:朝日・武田肇ツイッター)

 まぁこの5人が≪全巻、具体的には10巻目を読んだとき、五人の心がガラリと変わったという。特に衝撃だったのは、旧日本軍兵士の性暴力の描写だったという。「これが、同じゲンかと思った」。取材に応じた幹部はこう明かした。別の幹部は記者に「あの描写をお子さんに見せられますか?」と問いかけてきた。≫、つまり自分達の情緒のなすがままに、独断暴走したと云うことで、特定市民の極めて執拗な陳情に屈したわけではない、と主張している。如何にも自分達の自発的行動だとしているが、仮にそうであれば、尚更問題なのである。言論表現の自由を、自分達の情緒に委ね、権力を行使したと云う認識が欠落した5人組が居たと云うことが問題なのだ。

 安倍内閣では、本質的に最も右寄り政治家と言われている下村文部科学相は松江市教育委員会の校長らへの要請を「教育上好ましくないと考える人が出るのはあり得る」。子供の理解力に委ねるべきという意見に対しては、「その通りだと思うが、相当露骨なもの、子どもの発達段階においていかがなものか、という作品を(学校図書館に)入れてはいけない。教育上の配慮は要る」と、教育委員会の決定(教育委員会は公式決定かどうか、経緯の調査中)を支持した。菅義偉官房長官も、「教委の判断で学校に指示することは通常の権限の範囲内だ」と支持している。しかし、稲田朋美行政改革相は、「民主主義の基盤は自由な言論、表現の自由が確保されていることだ。そういう意味では、最大限に憲法的な自由は確保されるべきだ」と、松江市教委を批判している。流石に弁護士と云うことか?

 ところが、この話が面白い方向に動きだしている。様々な立場で、様々な思惑で、「はだしのゲン」封殺を望んだ人々が“ほぞを噛んでいる”だろう事象が起きている。まぁ不都合な真実を脅しや、尤もらしい情緒を持ちこんで、短絡的に蓋をしようと企てた人々に、天の配剤が下されようとしているようだ。朝日が以下のように報じている。陳情した人物が「読みたければ、買えば良い」と言ったらしいが、今、まったく「はだしのゲン」など知らなかった人々が、「はだしのゲン」を買い求めていると云う。なんとも皮肉で愉快な話だ。

≪「はだしのゲン」、アマゾンでベスト10入り 増刷も
 【宮野拓也】漫画「はだしのゲン」が、松江市教育委員会による閲覧制限問題を機に読み直されている。ネット通販大手「アマゾン」では、10巻セットがコミック部門で10位以内に入り、発行元が増刷を決めた。市内の図書館での貸し出しも好調だ。
 単行本を初めて発売した汐文(ちょうぶん)社(東京)。刊行するコミック版や愛蔵版全10巻セットの出荷数は、いつもの7、8月なら2千セットほどなのに、今年は7千セットになった。今も2千セットの増刷をかける。
 例年、終戦の日の15日を過ぎると売れ行きは落ちるが、今年は、昨年末に作者の中沢啓治さんが亡くなったことに加え、閲覧制限が注目され、今も全国から注文が相次いでいる。
 「私も小学校で読んだ。娘にも読ませたい」「本の内容を後世に伝えられるように頑張って」などの激励も100件ほど寄せられているという。
 社長の政門(まさかど)一芳さん(57)は「閲覧制限がきっかけとは皮肉だが、中沢先生は一人でも多くの読者に読まれることを望んでいると思う」。
 文庫版全7巻を発行する中央公論新社(東京)でも、例年の倍の増刷をしているという。
 島根県立図書館(松江市)では23日現在、所蔵する27冊すべてが貸し出し中。巻によっては最長6週間待ちだ。同館は「いつもなら子どもが手にしているが、(閲覧制限問題の)報道後は大人が読む姿を見かける」と話している。≫(朝日新聞)

 筆者は中学時代に読んだのだが、性的描写が云々とか、暴力シーンがどうのこうの等とは全く感じなかった。ネット上でも10巻の問題の部分は読む見ることが可能だが、作者の中沢啓治が刺激的でない描き方をしている。文章をじっくり読めば、“こんなことまでしてしまう人が出てしまうのだな”と云う印象は持った。しかし、それこそが戦争だと云う事実認識が必要だと云う点で、子供であっても理解は可能である。戦争や原爆被害をモチーフにすれば、悲惨さや残虐さが出てくるのは当然で、避けて通ることは出来ない。嫌だとか、悲惨過ぎるとか、史実と異なるとか、現場を生中継することは出来ないのだから、嘘だと云う人もいれば、真実だと言う人もいる。嘘だと言い張る人は、戦争や原爆被害を“美しく”美談で美化し、それを訴える漫画を世に出せばいいのだろう。誰もとめたりしない。


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地検特捜は東電に捜査のメスを入れる時が来た 自然災害だと言い逃れは出来ない

2013年08月24日 | 日記
「原発事故報告書」の真実とウソ (文春新書)
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●地検特捜は東電に捜査のメスを入れる時が来た 自然災害だと言い逃れは出来ない

 東京都知事の猪瀬がオリンピック招致と放射能汚染水漏れに関し、海外メディアから「福島原発の汚染水問題が招致に影響するのではないか」と聞かれたのに対し「五輪開催には直接関係ないと思っている」と答えた。猪瀬としては、このように答えるしか術はないだろうが、正直、今回の汚染水管理のべらぼうな杜撰さは、東電の責任だけではなく、監督官庁や委員会の責に帰すべき問題だろう。おそらく、この汚染水の漏出に端を発し、手に負えない海洋汚染という事態を招きそうである。福島第一原発の立地地点は、川が流れていた所だが、その川を堰き止めた上で埋め立てた場所だそうである。こりゃ考えただけでも、地下水は豊富だと云う事実を推測させるに充分だ。

 日本のマスメディアは、この原発汚染水漏れ問題を、3,4番手のニュースとして伝えているが、もうそれ自体が臭いものに蓋をしている隠蔽報道なのだろう。過去の現実的出来事でも、“見たくない、聞きたくない、話したくない、関わりたくない”出来たら全部忘れてしまいたい、そんな国民的空気の醸成に余念がないのだから、あまりにも情けない。戦争責任にせよ、原発事故にせよ、幾ら日本人が目をそむけたくても、国際世論は、その行動を認めないし、無視すること自体が糾弾の対象となるだろう。筆者のような“準鎖国論者”ならいざ知らず、国際社会の一員として、グローバルに生き、経済成長を今後も続けたいのであれば、国際世論の無視はないだろう。

 そんな心配を他所に、安倍首相はG20の会議を途中で放り投げ、ブエノスアイレス開かれる国際オリンピック委員会総会に出席する予定になっているそうだ。都庁で開かれた招致委員会の出陣式にも出席「「私たちみんなが使命と責任を果たして9月7日、『2020年東京』のアナウンスを響かせよう」と檄を飛ばしたそうである。まさにノーテンキな奴である(笑)。福島原発事故の収束もままならず、放射能汚染水を垂れ流すしか手の打ちようがない現実から目を叛けているようだ。出来得れば、オリンピック効果で経済浮揚を企てたい思惑のようだが冗談じゃない。封建時代の徳川幕府の武家官僚であっても、ここは潔く“辞退宣言”を出すのが日本人の精神だったに違いない。

 実は筆者も個人的には東京オリンピックを愉しみにしていた。2020年くらいなら元気に会場を動けるし、観たい競技も盛りだくさんだった。しかし、この福島原発に纏わりついた放射能汚染水問題に終止符がつかない限り、他国の人々に、一緒に愉しみ競いましょう、と声を掛ける気持にはなれない。万が一東京開催が決まったとしても、汚染水処理が収束どころか、益々酷くなる確率の方が高いと云う事実は無視できない。決定した後で辞退という恥をかく可能性はかなりある。仮に強行したとして、参加国が激減したり、訪日を辞退する選手が続出するかもしれない。それこそが、国家の恥である。動き出したら止められない国家体制が、どれ程の悲劇を齎したか、忘れたわけではあるまいに。まったくもって、矜持と云うものが欠落した昨今である。WSJ日本版は、今回のメルトダウン以来最大の危機を以下のように伝えている。

≪ 福島第1原発の汚染水封じ込め、メルトダウン以来最大の試練
【東京】メルトダウンから2年半近く経った今、東京電力福島第1原子力発電所では、これまでにない規模の汚染水を封じ込めるため必死の努力が続いている。だが、専門家の間では、東電の対応が近視眼的だったのではないかとの疑念が強まっている。
 高濃度の放射線で汚染された300トンの水が貯蔵タンクから漏れたことを受け、日本の原子力規制委員会は21日、国際原子力事象評価尺度(INES)に基づき、この状況を、「レベル3(重大な異常事象)」に引き上げる案を公表した。また同様の漏れが起きる恐れのある急造タンクが約300基 あると警告した。最高の「レベル7」に達した2011年の事故以来、初めてINESの評価対象となる事象だ。
 規制委の田中俊一委員長は記者会見で「恐れていたことが起きた」とした上で、「1分も無駄にすることはできない」と述べた。
 今回の汚染水漏れの陰にはさらに深刻な問題がある。それは、東電が2―3カ月前から原発敷地を流れる地下水をコントロールできなくなった(原子力専門家)ことだ。しかも、事態は悪化の一途をたどっている。
 東電は毎日400トンに上る放射線に汚染された水を原発建屋からくみ上げており、その保管場所の確保が急務となっている。同社は21日、保管場所をほぼ使い果たしたことを明らかにした。事故後に急ごしらえした貯蔵タンクは水が漏れ始めているが、より頑丈なタンクに移す作業は遅れている。敷地の海側では地下水の汚染レベルが急上昇し、地下の遮水壁を越えて海に流れ出している。
 オレゴン州立大学の原子力工学・放射線医学部で放射線汚染を専門とするキャスリン・ヒグリー氏は、汚染水のコントロールが出来ないことは大きな負担になると指摘。「水を管理する方法を探さなければいけない。こうした事故では、何をいつ出すかを管理できなければならない」と述べた。同氏は今年、福島に1週間滞在した。
 今のところ、外部に漏れ出た放射線レベルは比較的低い。しかし、設備の老朽化や、損傷の激しい原子炉の廃炉作業や溶け出した燃料棒の除去が大変な作業になることを考えれば、いつまでもこの状態が続く保証はないと懸念する専門家もいる。直近の水漏れで流れ出た水は放射線濃度が高過ぎ、タンクの残りの水を抜くまで原因究明すらままならなかった。
 東電は、漏れ出した水が海に流出はしていないと思うが絶対とは言えないとしている。他の原子炉にも水が溜まっており、汚染が激しく近寄れないという。その上、融けた燃料棒がどこにどのような状態で存在しているかもはっきりとは分かっていない。
 5月に設置された放射線汚染水の処理について検討する政府の専門家パネルのメンバーで、産業技術総合研究所で地下水研究グループ長を務める丸井敦尚氏は、「将来はもっと濃い、もっと汚い水が海へ出る可能性がある」とした上で、「最悪のケースを考えて行動することが大事だ」と述べた。
 この問題は、東電と同社を監視する政府の担当部局が、早期に検討しておくべき問題を放置してきたためだと指摘する専門家は多い。福島第1原発は、40年前に川の流れを変えて建設された。このため敷地の下を大量の地下水が流れていることは明らかだったはずで、海側にどのような遮水壁を建設しても、す ぐにあふれ出すだろう、と丸井氏は言う。
 長期的な廃炉に関する研究を行う新設の国際廃炉研究開発機構の理事長に任命された京都大学の山名元教授は「対応は後手後手になっている。先を見ていない」と批判、「専門家としてイライラして見ている」と述べた。
 一方、東電関係者は、同社が変わりつつあると強調する。政府と原子力規制当局は福島第1原発の汚染水問題を解決するため、3つの委員会を立ち上げた。提案の中には、原発の周囲の地下に氷の壁を作り、水が入らないようにする案も上がっている。安倍晋三首相は今月、必要な資金と支援を提供すると述べた。
 しかし、政府の関与が強まったとしても、東電や政府の対応は後手に回っており、支離滅裂で近視眼的、なおかつ遅いという批判は強い。
 21日の東電の記者会見では厳しい質問が相次いだ。原発関係の広報を担当する相沢善吾副社長は謝罪した上で、対策をしてこなかったわけではないが、何かがあってから対応するという姿勢だったことは認めざるをえないと述べた。  経済産業省の原子力発電所事故収束対応室の新川達也室長は、ここ数カ月の間に福島第1原発の状況がいかに早く変化していたのかを、東電の監督責任がある経済産業省がもっと迅速に認識すべきだったと述べた。
 東電は巨大地震と津波により稼働中の原子炉3基がメルトダウン(炉心溶融)を起こした2011年3月の事故以来、汚染水の封じ込めに苦労してきたが、今年4月に再びこの問題が注目されることになった。汚染水を保管していた3つの巨大な地下貯水槽からの水漏れが発覚し、この数万トンの汚染水を地上タンクへ移すことを余儀なくされた。
 新川室長によると、経産省はその際、東電による汚染水の管理方法についてより厳しく監督することを決めた。その結果、東電の計画がすでに後手に回っていることが明らかになった。
 東電は約1000トンの地下水が毎日、原発の下を流れており、そのうち400トン前後が原子炉建屋を通っていると試算する。さらに毎日、メルトダウンした原子炉を冷却するため400トンの水が注入されており、これが地下水と混ざっている。東電や政府関係者によると、東電は連日この水をくみ出した上で、その半分を再利用し、残り半分を貯蔵タンクに入れている。その一方で、地下水が汚染されずに済む方法について検討を急いでいる。
 しかし、1つのプロジェクト――施設の陸側に設けた一連の井戸から地下水をくみ出し、汚染された建屋の下を通る前に地下水を海へ迂回(うかい)させる「バイパス」法――は地元の漁協から反対に遭った。漁協は福島第1原発から出た水を海に流す方法に一切反対している。新川室長によると、漁業関係者の心情を考慮すれば、事故を起こした施設により近い場所から水をくみ出す方法も成功する可能性は低いと経産省は判断した。
 経産省は5月に、20人の専門家で構成される汚染水処理対策委員会を設置した。丸井氏もこのメンバーに入っている。
 丸井氏によると、自身を含む委員会メンバーは、東電が採用した1つの方法――海岸線に沿って巨大な遮水壁を地下に設置したこと――は見当違いだったと考えている。丸井氏は、すでに汚染水が施設の近くの地下水に漏洩していた可能性があるため、もっと外側に建設されるべきだったと指摘。重要なことは、最初の遮水壁を陸側に建設し、最も汚染されたエリアへの地下水の流入を防ぐことだったとしている。
 5月末までに、同委員会は原子炉建屋の周りの土を凍らせ、施設を囲むように全長1.4キロメートルの壁で地下水の流入を防ぐ「凍土遮水壁」を作る提言をまとめた。この提言は2番目の専門家のグループに諮られた。
 ただ、これらの専門家グループは、現場の状況が再び悪化していたことを認識していなかった。東電は5月に海岸にかなり近い井戸水の放射線レベルが高くなっていることを検知した。これは、先に考えられていたよりも地下水の汚染が進んでいることを示している。東電は7月初めにようやくこれを発表した際に、対策の遅れを認めた。
 このニュースを受け、原子力規制委員会と田中委員長は東電を非難し、素早い行動と情報の開示を求めた。同委員会は高濃度の汚染水がすでに海に流出している疑いがあるとの見解を公表。7月末までに汚染水問題の解決策を提案するために独自の作業グループを発足させる必要があると決断した。主に専門家や 規制当局者、東電関係者の12人で構成されるこの「汚染水対策検討ワーキンググループ」は、今月2日に初めての会合を開いた。
 原子力規制庁の東京電力福島第一原子力発電所事故対策室の金城慎司室長は「本来やるべきことじゃなかった」と述べ、規制当局者は「審判」であって「選手」ではないと説明。そのうえで「何もしないではいられなかった」と述べた。  一方、汚染水処理対策委員会はようやく8日に会合を開き、先の提案を再検討し、9月末までに新たな報告書をまとめることを決めた。原子力規制委員会のワーキンググループは東電の3つの緊急汚染水対策のうち、2つを監督する。例えば、汚染濃度の高い水を海側のトレンチ(坑道)から取り除くことなどだ。残りの1つは汚染水処理対策委員会が長期的な対策と併せて引き受けることになった。
 丸井氏は、この委員会の規模が大きいことは決めるのに時間がかかることを意味し、凍土遮水壁の計画に対しても依然として激しい異論があると指摘した。この方法は高価な技術であり、これほど大きな規模で実施されたことがないからだ。地盤凍結工法を駆使している日本で最も良く知られた企業の1社はフィージビリティスタディー(実行可能性検討)の入札に参加しないことを決めた。この企業に近い関係者によると、トンネル向けに少量の土を凍らせるこの企業の専門技術は、こうした作業には適さないと判断したという。
 丸井氏は、本当に必要なのは、いまだに古い川底へ流れ込もうとする水の流れを変える方法だと指摘、「プランニングをシステマチックにちゃんとやってほしい。瞬間的な対策ではなくて長い目で見たストーリーで考えてほしい」と訴えた。≫(WSJ:日本版)

 最後になったが、今回の東電の放射能汚染水管理体制は、自然災害によって生じた事象ではなく、事故後の人智の及ぶ範囲で起きた事象である点が重要だ。如何にも東電の管理の杜撰さだけがクローズアップされているが、ことの本質はそこではないだろう。勿論、東電の管理責任は最低でも重大な善管注意義務違反は明白である。また、この信頼に値しない企業であることを承知の上で、監督管理責任をサボタージュした経産省の責任も免れないと考える。規制委員会に相当の注意義務違反はあるだろう。

 また、結果責任の観点から行けば、国際社会における、国家の信頼の低下を自ら招き入れ、自国における原発事故放射能汚染の処理を充分に行う費用負担等に関し、事故処理費の抑制を自明的に行う東電と云う私企業に全面的に委ね、未必の故意と疑われても国際的に言いわけの出来ない事態を見逃したとなれば、最終責任は時の政府が負うと云う次元の犯罪となる。既得権益勢力に損害を与えそうな人物や企業を、捏造を駆使してでも不法逮捕、不法捜査、不法監禁、不法処罰する国なのだから、真に犯罪の事実があったにも関わらず、見逃すようでは、日本司法が完全に機能していないと世界中に喧伝するようなものである。自分達は一件落着くらいの積りでいるかもしれないが、警察・検察・裁判所の国民からの信頼は、君らが感じる以上に失墜している。世界の見識ある人々絡めれば、未開発国、独裁国家における司法行政管理国家と見られている現実を認識すべきだ。今回の人為的不注意と怠慢で起きている、二重の原発海洋汚染事件は、君らの信頼を幾分でも取り返す試金石である。

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アメポチ丸出しの安倍右翼政権 TPP以前に、郵政を骨抜き、軽自動車も差出しか

2013年08月23日 | 日記
新自由主義の帰結――なぜ世界経済は停滞するのか (岩波新書)
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●アメポチ丸出しの安倍右翼政権 TPP以前に、郵政を骨抜き、軽自動車も差出しか

 真面目に考えても、安倍晋三の政権運営の意図が判らない。真剣に考えれば考えるほど、安倍晋三のナショナリズムの正体が判らない。真剣に安倍晋三の言動や政権運営をリンクさせて考える事自体が、そもそも間違いのような気にもなるが、一応我が国の内閣総理大臣である。行政官僚の振り付けで、政権自体は運営するが、安倍の支持母体である宗教勢力や短絡右翼の熱烈支持を維持する為には、アメリカポチと反グローバリズムイデオロギーの共存を、どこかの誰か“X氏”が米国相手に調整しているかのようである。

 しかし、上述のような想定は明らかに考え過ぎなのだろう。仮に“X氏”のような人間がいるなら、それなりに高度な政治的操縦法だが、そんなことが安倍晋三の知能と注意力で出来るとは到底思えない、筆者の推測が空回りしているだけだろう。昨日のコラムで、放射能汚染水漏れの件で、世界の嫌われ者になるリスクの話をしたが、日本のメディアに比べ海外メディアの方が敏感に反応し、メルトダウン以降最大の危機だと報じている。英国BBC、米CNN、ロイター、WSJ、フィナンシャル・タイムズ、ニューヨーク・タイムズ等々が似たように報じている。当然、隣国中国、韓国も、それ見たことか的報道をしているようだ。

 実はこのような世界の反応は、もっと酷い東電の汚染水管理の杜撰が明るみに出る以前の話だ。昨日になってからは、別の幾つかのタンクからも漏れてるみたい、等と云う発言が飛び出している。どうも、あのタンクは本格的に作ったものではなく、急場凌ぎのシロモノだったのだが、その後本格的汚染水貯蔵のタンクを作る気配はさらさらなかったようだ。つまり、結果オーライを期待していた感じだ。自然災害と強弁も可能な、地震及び津波による原発事故と云う時点では、一定の国際的理解を得られただろうが、今回の汚染水漏れは、事故の性質がまったく違う。あきらかに東電、そしてそれを最終的に管理しなければならない国家の怠慢である。この問題は、今後の日本の国際的立場を大きく挫く可能性があるのだろう。

 さて本題を書く時間が少なくなってきた。あいかわらず、余所見しながらの筆者の悪い癖が出た(笑)。ブルネイで行われるTPP交渉で、端から出席を許された日本だが、カモネギの甘利が閣僚会合の初日の討議を行い、年内の交渉妥結を目指す云々と始まったわけだが、どうも日米二国間協議で大方話がまとまっているようだ。このTPPに先立つ日米二国間協議で、既に日本郵政・アフラックスの好き勝手が決められ、東芝西室が米国の走狗となり、郵政解体を西川に替わってやる按配になっている。そんな折、またまた凄い国家売りが決められるようである。総務省が尤もらしい屁理屈を述べているが、軽自動車業界潰しに本格的に動き出したようである。日経は以下のように報じている。

≪総務省、車増税「軽」に照準 取得税廃止穴埋め
 総務省は軽自動車の持ち主が毎年納める軽自動車税(地方税)を大幅に増やす検討に入った。2015年にも廃止される自動車取得税(同)の代わりの財源とし、地方財政への影響を回避する。欧州連合(EU)などとの通商交渉で、日本の軽の税率が低すぎると指摘されていることも見直しの追い風とみている。ただ軽自動車業界の反発は必至で、年末の税制改正論議の焦点になりそうだ。
 所得税など国税の制度を財務省が所管するのに対し、自動車税や自動車取得税といった地方税は総務省が所管している。
 普通車や軽自動車の取得時に地方自治体に納める取得税は、消費税が10%に上がる際に廃止される。取得税がないと年1900億円(13年度 見通し)の税収が失われるため、総務省は保有税の増税で補填する方針。普通車の保有税である自動車税と軽自動車にかかる軽自動車税のうち、軽を重点的に増税する方向だ。10月までに省内の有識者検討会で具体的な増税の方法を固め、与党の税制調査会に提案する。
 軽は排気量が660cc以下の自動車。自家用の場合、軽自動車税は1台あたり年間7200円で済む。660ccを超える普通車では、軽とさほど変わらない排気量1千cc以下の車でも年間2万9500円の自動車税がかかり格差が大きい。上げ幅は今後議論するが、軽自動車税の税収は年1852億円で取得税とほぼ同じ規模。単純に穴埋めするなら、倍近くになる可能性もある。
 地方税収を潤沢にする観点から、過去にもたびたび軽自動車税の増税論が政府内で浮上してきたが、スズキなど軽自動車メーカーの反対で実現しなかった。今回は取得税が廃止されるため、総務省は何らかの代替財源が必要と判断した。
 軽自動車の税制優遇を巡っては、EUとの経済連携協定(EPA)や環太平洋経済連携協定(TPP)に並行する米国との自動車協議でも「公平な競争を阻む」などとして批判されている。通商交渉の円滑化という効果も見込めるため、総務省はこれまでより増税を実現しやすいとみている。
 ただ今回もスズキなど業界側の反発は必至。軽自動車は価格が安いため、国内新車販売台数に占める比率も4割弱に達するなど人気が高い。地方を中心に生活の足として定着しているだけに、軽ユーザーの反発も強まる見通し。結論は与党税調の判断に委ねられる。
 一方、消費税率が8%になるときの自動車取得税の扱いについて、業界を所管する経済産業省は減税を求める方針だ。総務省に対する14年度の税制改正要望に、税率の5%から2%への引き下げを盛り込む。消費税率が10%になると同時に取得税は廃止されるが、8%に上がる時点の措置は決まっていなかった。≫(日経新聞)

 どんな理屈をつけようと、日米二国間協議で押し切られた形である。これは外圧の如き風味づけをしているが、税収増を狙う財務省にとっては渡りに船、便乗商法を企てているのだろう。軽自動車が一人前に我が物顔で走られるが嫌いな筆者には朗報だが、これは個人の情緒の問題で、この問題を故にOKと言うわけにはいかない。特に公共交通機関が不十分な地域における軽自動車の活躍は、日本の風土を堅持する地域基盤となっているわけであり、時には死活問題に直結するのだ。こうして考えれば考えるほど、問題の根っこに、経済成長だと云う幻想に捉われた哲学なき人類の悲惨さが垣間見える。 本当にアメリカと別れることを考えるのが、日本の政治家の役目のような気分になる。まぁそのように思うのは僅かな人々かもしれないが……。

今、「国を守る」ということ 日米安保条約のマインドコントロールから脱却せよ
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外交でアジアの孤児になる心配より、放射能汚染で世界の嫌われ者になる不安

2013年08月22日 | 日記
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●外交でアジアの孤児になる心配より、放射能汚染で世界の嫌われ者になる不安

 今朝は時間がないので、以下の東京新聞の記事を引用しておく。しかし、幾ら太平洋が広いから希釈するんだと言われても、納得するのは日本政府だけなのではないだろうか。例の勝俣前東京電力会長は家族を米国に移住させ、自分は非常勤の役職で時折日本に帰国しているとか?本当だろうか、確たる情報がない。まぁ現実の放射能汚染の怖さを知っている男なのだから、家族ともども米国に逃げてた理由も理解できる。訴追もされずに済んだのだから、後、心配なのはF1の放射能漏れだけだと知っているのだろう。

 到底、東京電力の手に負える問題ではないのだろうし、原子力規制委員会田中委員長も、何もかも規制委員会に押しつけられても、出来る事と出来ない事がある、と幾分迷惑顔でもあった。正直、放射の汚染を食い止められるかどうか判らないが、アベノミクスで「経済の安倍」とか嘯く前に、地球と人類、否、すべての生き物の為に、国家的に取り組む問題なのではないだろうか。原発事故の収束作業を東電に丸投げし、県民の健康問題は福島県に丸投げなのだ。その挙句に、原発輸出にトップセールスだとか言い出すのだから、正直、まともな神経ではないだろう。

 違う見方をすると、放射能の外部被ばく以外は、その被害の検証が、たまたま有為が認められていない事を好都合にして、シラバクレテいるとかしか思えない。安倍政権は、外交防衛でドジを踏み、アジアの孤児になりそうだが、それより早く、放射能で世界の孤児になる気配さえある。問題は、事故に対する国家の姿勢が問われるだろう。最終的に、被害が地球全体に及ぶとしても、その汚染を防ぐために、どれほど国家が努力しているか、努力したかが、外交上強く認識される筈である。このような事態が、まだまだ続くのであれば、安倍は、経済に冷や水を掛けてでも、国家や世界規模で、汚染の拡大を防ぐべく努力するのが、国家の責任ではないのか。

 原子力推進のための機関と言われる国際原子力機関(IAEA)も流石に看過できないと、重い腰を上げようとしている。しかし、IAEAはあくまで受身であり、「状況を注視している。要請があれば支援する用意がある」と言うにとどまっている。直接手を出すことが、責任の一端を担うことになるだけに、世界の原子力村が、どのような対応に出るかも注視したい。しかし、誰にも汚染のダダ漏れが止められないとして、日本と云う国が精一杯努力する姿を見せるのが、国際社会で生きるためには必要だろう。TPPに加盟しても、算入するハイエナ企業群はないかもしれないし、オリンピック招致など、もう笑い話かもしれない。

≪ タンク汚染水漏れ レベル3に引き上げへ 規制委、評価見直し
東京電力福島第一原発のタンクから三百トン(東電の推計)の高濃度汚染水が漏れた問題で、原子力規制委員会は21日の定例会で、国際的な事故評価尺度で下から二番目のレベル1としていた暫定評価を、レベル3に二段階引き上げる可能性があるとの見解を示した。
規制委は、汚染水にベータ線を出す放射性ストロンチウム90(法定基準は一リットル当たり30ベクレル)などが一リットル当たり8000万ベクレルと、 放出が認められる濃度限度の数百万倍に達する極めて高い濃度であり、三百トンの漏出量から数千テラベクレル規模(テラは一兆)の漏出があると推定。
規制委事務局は放射線の管理上、レベル3の重大な汚染に相当するとしている。 汚染水漏れが発覚した十九日の段階では、漏れた汚染水の量がはっきりしなかったため、規制委は暫定的にレベル1と評価していた。
その後、東電が漏れた量を三百トンと推定したことから、評価を見直すことにした。 ただし、国際基準は通常の原発での事故を評価対象にしている。
すでに福島第一原発事故自体は最悪のレベル7と認定されており、それに関連して起た今回のタンク事故を個別に評価することが適切なのか、基準を所管する国際原子力機関(IAEA)に確認するとしている。
国内でのレベル3事故は、1997年に起きた動力炉・核燃料開発事業団(当時)東海アスファルト固化処理施設爆発事故がある。
国際評価尺度(INES) 
原発など原子力施設で発生したトラブルの規模や深刻度を示す世界共通の物差し。国際原子力機関(IAEA)などが設定した。
レベル1~3は「異常な事象」、レベル4~7は「事故」に区分。 評価基準は施設内の汚染度合いや安全設備の状態などで、レベル2は相当量の汚染、安全設備の重大な欠陥などが該当し、レベル3は数千テラベクレルの放射能の放出、安全設備が残されていない事故寸前の状態などが該当する。 最終的な判断は、IAEAに意見を聞く場合もあるが、各国の規制機関が評価する。≫(東京新聞)

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墜落しかけている虚飾アベノミクス 財布を直撃されB層、C層も気づきはじめた

2013年08月21日 | 日記
経済成長神話の終わり 減成長と日本の希望 (講談社現代新書 2148)
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●墜落しかけている虚飾アベノミクス 財布を直撃されB層、C層も気づきはじめた

 国会は開かれていないが、安倍自民党の愚策は着々と進んでいるようだ。いや増す勢いで、国民生活疲弊作戦が急加速している。しかし、偽りの煽り景気の正体がバレはじめ、経済界、マスメディアがビビり出している(笑)。彼らの論は、消費増税の実施により、景気の腰が折れる点が心配という点で一致する。そもそも、実体として景気など一切好くなっていないのに、マスメディアのアベノミクス賛歌で、日本国中が躁状態になっただけに過ぎない。そんなことは、初めから決まっているのだから、予定通り消費増税に邁進し、国民を奈落の底に落とすことが肝心だ。

 安倍政権にはあらん限りの力を発揮し、棄民政策に突っ走り、米中韓からも阻害され、アジアの孤児と云う名誉ある地位を得て欲しいものである。鳩山由紀夫の“東アジア共同体構想”が日本のベストの選択だと気づく契機にもなる。無論、筆者は準鎖国論者なので、どの国とも相応の距離を取り、他国の内政に関与せず、自国の内政に関与させない国家像を描いているので、鳩山の論に不満もあるが、アジア人の枠組みで共同体は作る程度は容認したい。何としても、日本が一歩でも独立国になるためには、日米同盟からの脱却は避けて通れない問題なのだ。

 それはさておき、安倍政権はアベノミクスと称し、単に世界の金の流れの中で偶然起きた円安と株高を、我が功績のように喧伝し、マスメディアにも同調することを求めた。14年の消費増税3%アップ時の新聞等への軽減税率適用を強く望んでいたマスメディアは、安倍内閣の要求に協力、その“アベクロ政策”の提灯記事に終始した。しかし、参議院選の前後に、新聞等への軽減税率適用が不公正と云う声が強くなり、優遇適用が得られない可能性が強まった。そうなると、今度は掌を返し、消費増税疑問説を強く打ち出し始めている。公正な報道などチャンチャラおかしいご都合主義を発揮している。

 まぁマスメディアや論者の多くは勝ち組だと思っている連中なのだから、ポジショントークに終始するのは判っていたことで、風向きが変われば、何を言い出すか判ったものではない。しかしここに来て、円安の流れは完全に頭打ちで、円高に振れる可能性の方が高い按配になってきている。また、株高の勢いも完全に失せ、18,000円相場とか20,000円相場を囃したてたエコノミストは笑い者になっている。昨日などは361円も日経平均は下げ、13,000円台をウロチョロしている。アジアの金融不安と株式の低迷が鮮明になり、経済成長に翳りが出た煽りを受けたなどと講釈をつけているが、初めからアベクロ政策で景気が好くなったら奇妙な話で、そもそも論からして間違っているに過ぎない。

 黒田日銀総裁は、異次元金融政策は絶好調と嘯いていたが、「景気が失速するようなら、躊躇せずに追加の金融緩和をする」と語っている。つまり、小出しの金融政策はしない!と偉そうに強調した舌の根も乾かぬうちに、まだまだ奥の手は幾らでもあるような大言壮語の体である。「円高是正や株価回復、消費・投資改善、物価上昇期待という三つの好転が起きている。基本的に 良い方向」と昨日になっても世迷言を言っているが、民間の金は、そういう出鱈目にびくともしていない。

 ドイツ連銀は月報の中で「アベノミクスは藁に火をつけたようなもので、早晩燃えかすだけが残る、と大特集で報じた。内容の詳細は省くが、無理に無理を重ねている状況であり、14年4月以降はアベノミクスの後遺症が一気に表面化するだろうと、不気味に予測している。ロイターにブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジストの村田雅志氏のコラムが掲載されているが、このコラムが的を得ているだろう。参考まで添付しておく。TPPによって、グローバル企業の嵐が吹き荒れる不安の声も強く聞かれるが、日本の市場が、彼らにとって本当に魅力的かどうかは、始まってみないと予測が杞憂になることもありそうだ。

≪ コラム:数字が物語るアベノミクス期待の剥落=村田雅志氏
村田雅志 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト(2013年8月20日)
 ドル円は、有識者と呼ばれる方々の当初の予想と異なり上値の重い動きを続けている。8月に入り反発する場面もあったが、100円を再び突破する勢いはなくなりつつある。
 もともとアベノミクスと呼ばれる政策群で、ドル円が100円を超える水準まで持続的に上昇すると考えるのは無理があった。大胆な金融緩和の推進を主張する安倍晋三首相の意を汲んだ黒田東彦氏が日本銀行の総裁に就任し、アベノミクスの「第1の矢」とされる大胆な金融政策を打ち出したことを市場は材料視。ドル円は93円台前半から大きく上昇したが、その方向性に大きな影響を及ぼす日米金利差は8月半ばを過ぎても2年前の水準とほぼ変わっていない。  米国債利回りの上昇が限定的だったとの弁明も示されているが、そもそも超低金利状態にある円債利回りを日銀が半ば強引にさらに押し下げたところで、円を下押しする効果は限定的だったと考えるべきだろう。
  「第2の矢」とされる機動的な財政政策も従来型の財政支出増と何ら変わることはなく、「第3の矢」とされる成長戦略にいたっては、市場が織り込めるほどの短期間で大きな成果が期待されるものは何もない。アベノミクスという新しいラベルを付け、市場の期待を刺激したのは良いが、中身については従来の自民党政権で実施されたものと大きく変わりはないことが明らかとなり、市場の円安期待も後退。ドル円の上値が重くなってきた、というのが素直な解釈と思われる。
 アベノミクス信奉者は、企業の設備投資が増えると主張してきた。4―6月期の国内総生産(GDP) は年率換算で2.6%増とまずまずの伸びだ。しかし、民間設備投資は前期比0.1%減と6四半期連続のマイナスを記録した。機械受注をみても、設備投資の 先行指標とされる民需(除く船舶・電力)の7―9月期見通しは前期比5.3%減と大きく落ち込んでおり、設備投資が今後、増加に転じる期待は持ちにくい。
  アベノミクス信奉者は、円安進展により輸出が増えるとも主張していた。しかし、輸出数量は現実には6月まで13カ月連続で前年割れとなっている。7月に入り前年比 1.8%増となったが、米国景気の強さを考慮すれば、あまりに弱い。一方、輸出価格は昨年12月以降伸びが高まり、7月は前年比10.2%上昇と3カ月連続の2ケタ上昇を記録している。
 日本の輸出企業は円安が進展しても外貨建ての輸出価格を引き下げて輸出数量の拡大を狙うのではなく、円建ての輸出価格を引き上げることで採算性を向上させる姿勢を続けている。輸出数量を増やさない以上、設備投資を拡大させる必要もない。
 輸出企業に限らず、日本の製造業は設備投資を増やす状況にない。6月の製造工業稼働率指数は前月比2.3%低下の95.8とリーマンショック前の2008年前半の水準から2割以上も落ち込んだままである。日銀短観の生産設備判断DIをみても、製造業はプラス12とリーマンショック後も設備過剰感がほとんど解消されていない。円安になっても輸出企業は生産を大きく拡大させる意向がなく、設備の稼働水準は低く、設備過剰感は続いたままの状況のなか、円安進展で設備投資の増加を期待するのは合理的な考えとは思えない。

<円安で吸い取られた家計の購買力>
 円安の進展で日本の株価が上昇したことを評価する見方もある。ただ、上述したように円安が永続的に続くとは期待できず、円安主導の株価上昇は難しくなっている。日経平均株価が5月23日の場中に記録したピーク(1万5942円)どころか、1万5000円すら上抜けできないことをみれば、 円安による株価上昇に限界があることは容易に理解できる。
 円安と株高によってもたらされた消費者マインドの改善も完全に頭打ちである。内閣府が発表する消費者態度指数は7月に43.6と2カ月連続の低下。景気ウォッチャー調査では現状判断DIが52.3と4カ月連続の低下となった。個人消費は1―3月期、4―6月期とともに前期比0.8%増と雇用者所得を上回る伸びとなったが、マインドの改善が頭打ちである以上、今後は消費の伸びが所得並みになると見込むのが自然だろう。現に家計調査における実質消費支出は1月から4月まで大きく増加したものの、5月、6月は2カ月続けて前年割れとなっている。
 6月の完全失業率は3.9%と、08年10月以来4年8カ月ぶりに3%台に低下した。アベノミクスの効果だと喧伝する方もいるが、雇用が継続的に増加しているのは医療・福祉のみで、円安の恩恵を受けているはずの製造業は雇用を抑制したままである。金融緩和で医療・福祉の雇用が増えるとは考えにくく、足元の雇用環境の改善は少子高齢化の進展という大きな流れの中で労働市場の流動性が増したおかげと考えた方が自然だろう。1人当たり賃金(現金給与総額)は、数多くの方が指摘するように伸びが限定的。結果として4―6月期の雇用者報酬は前期比0.3%増にとど まっている。
 円安の進展はコストプッシュ型の物価上昇を促している。6月の消費者物価は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年比0.4%上昇と1年2カ月ぶりのプラス。上昇幅は08年11月の1.0%以来の大きさとなった。
 内訳をみると、消費者物価を大きく押し上げたのは電気代、ガソリン代、ガス代といった輸入物資。現に4―6月期の日本の交易損失は20兆円と統計開始以来、2番目に大きな規模に拡大している。アベノミクス信奉者は、日本がデフレからインフレの流れになりつつあると喜んでいるのかもしれないが、輸入物価の上昇を中心とした物価上昇は消費者の購買力を悪化させている。円安の進展は結局、輸入物価の上昇で吸い取られた家計の購買力が、日本の輸出企業や産油国といった海外に移転するだけとなっている。
 金融緩和の強化や公共投資を中心とした財政支出の拡大は、市場のボラティリティを拡大させ、社会のムード・期待を一時的に変えたかもしれないが、日本の企業部門はムードに踊らされることなく冷静な対応を続けた。一方、家計部門は高揚感の中で半年程度、消費を増やしたかもしれないが、ようやくアベノミクスの本質に気づき始めた。
 3党合意で計画通りに実行されるはずだった消費税率引き上げの是非が安倍政権周辺で今さら議論され始めたのは、アベノミクスの限界に彼らも気づき始め、消費税をネタに社会のムード・期待を新たに変えようとしているためなのかもしれない。
*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニア通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。≫(ロイター:コラム)

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TPPは官僚利権も打ち砕くか? 毒薬を飲まされるのであれば、薬効も期待したい

2013年08月20日 | 日記
里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
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●TPPは官僚利権も打ち砕くか? 毒薬を飲まされるのであれば、薬効も期待したい

 遠い国だがエジプトでは、三日天下のように国民を巻き込んだ政権闘争が繰り広げられている。今現在は軍部がクーデターで、実権を握っている状況だが、1カ月後に軍部クーデター政権が存続しているかどうかも判らない。国際関連の記事を読む限り、米国の支持を取り付けているであろうエジプト軍が優勢なようだが、此処に来て前々政権のムバラク元大統領(容疑者として拘禁裁判中)の保釈と云う話が持ち上がっている。ムバラク時代の方がマシだったと云う世論も多いことから、軍の火事場ドロウボウ的、ムバラク復権のシナリオまであるようだが、ムバラクの保釈が、さらなる火種になる可能性もある。

 エジプトは石油の産出国でもないから、エジプトの混乱は、西側諸国への影響は軽微だ等と言っている向きもあるようだが、スエズ運河と云う輸送の喉仏を握っているだけに、原油価格への影響は計り知れないだろう。また、エジプトのイスラム化を極端に回避したいイスラエル及び米国は、何が何でも現軍事政権を支持していきたいところだが、反ムルシ政権打倒に立ちあがった青年グループが、どちらに転ぶのか、或いは第三の勢力になるのか、混沌として来ている。

 そんな世界の動向に関わらず、安倍政権は着々と“TPP協定10月妥結”と云うオバマ・シナリオに則って動いているようだ。正直、TPPによる日本の伝統文化の破壊は許し難いわけだが、この100%関税撤廃、参入障壁の排除という図式が本当であれば、功罪相半ばする問題でもある。農業や保険分野など、相当の犠牲を強いられるわけだが、公共事業への参入障壁の打破などは、官僚利権を破壊する可能性もあるだけに、その辺りが、どのような推移を迎えるのか、非常に興味深い。行政官僚が官僚利権を改革するわけはないし、政治主導で改革が出来る可能性は、現時点で殆どゼロである。

 安倍晋三が、TPPを奇禍として、行政改革をなし崩しに行う意志があれば、極めて驚くべき善行なのだが、その辺まで考えが及んでいるとは思えない。まぁ結果的に、官僚利権に劇的にメスが入るのであれば、国民にとっては痛み分けな側面もあるのだろうが。米や小麦を見捨てても、官僚利権だけは死守する覚悟で、100人の官僚が智恵を絞っているのだろう。おそらく、安倍政権の閣僚らも、政治責任が追及されない範囲で、官僚の差配に従わざるを得ないのだから、官僚利権だけは守られる見せかけの参入障壁の排除になるのだろう。米国が当面日本の官僚の抵抗を和らげる意図で、官僚利権部分はアンタッチャブルにしているかもしれない。

 官僚利権への挑戦者は悉く既得権益の番人・法務検察の餌食になるわけで、全貌は見えないが、故中川昭一の酩酊事件でも垣間見えるし、直近では小沢一郎陸山会事件で、完璧に馬脚を現した。検察にしてみると、この自己組織の崩壊まで覚悟した国策捜査であったろうから、その見返りは充分に自民党に要求する権利があると思っているだろう。TPPの趣旨から行けば、非近代的日本の司法制度にも牙を向く筈だが、農業分野の抵抗は程々に、司法制度や霞が関制度の維持には汲々となっているに相違ない。おそらく、安倍とか甘利・茂木の知能では、官僚がその辺とのバーターで不平等協定に結論を出す可能性は大いにある。朝日は官僚利権に触れていないが(当然)、日本が米国の圧力に完全に屈しているニオイを報じている。

≪日本、TPP交渉で高い自由化率提示 各国水準に合わせ
 【藤田知也、鈴木友里子】22日からブルネイで開かれる環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉会合で、日本政府が貿易自由化率を最大85%程度とする関税撤廃案を示すのは、各国の交渉にペースを合わせるためだ。今後は、国益をかけた厳しい交渉がいきなり始まる。日本は本音では交渉に時間をかけたい考えだが、米国は「年内妥結」に強くこだわっている。
TPP 特集ページ
 政府のTPP対策本部は、交渉会合に初参加した7月下旬以降、主に2国間で進められている関税の引き下げ交渉がどのくらい進んでいるか、情報収集してきた。分かってきたのは、米国の砂糖やカナダの乳製品など、各国が関税を守る「聖域」にしたいと考えている品目の扱いを巡る交渉は、進んでいないことだった。一方で、それ以外の品目では話がつきつつあるようで、各国の貿易自由化率は、想定より高かった。
 このため日本は、当初は75%程度にとどめる予定だった自由化率を、最大で85%近くまで引き上げた。日本は交渉に最後に加わっている。各国から「日本は参加した途端に、交渉を遅らせようとしている」との疑念を持たれないようにする必要があった。
 だが、日本にとって、自由化率の水準を高くして交渉に入れば、その分だけ「のりしろ」が減り、国益をかけたぎりぎりのせめぎ合いをすぐに迎えることになる。
 与党が関税を守るよう求めるコメや麦などの「重要5項目」は、今回の交渉では「留保」扱いとされ、自由化率の枠外に置かれることになった。ただ、米国などは96%程度の高い自由化率を目指している。
 日本は重要5項目すべての関税が守れない事態も予想される。どの品目の関税撤廃に応じるか、絞り込みの作業を早急に進める必要に迫られる。
 日本にとって大事なのは、重要項目を交渉する期間がどの程度あるのかだ。日本は、交渉が遅れれば遅れるほど、重要項目で自国の主張をする機会が増えるとひそかに期待している。
 しかし、そこに立ちはだかるのが米国だ。米オバマ政権は来年秋の中間選挙までにTPPの成果を示す必要があり、「交渉の年内妥結」に強くこだわる。
 米通商代表部(USTR)のフロマン代表は、22日の交渉会合を前に、就任後初めて日本を訪問。18日には、茂木敏充経済産業相と都内で会談し、TPP交渉を目標通り年内に 妥結させる意向を改めて伝えた。これに対し、茂木氏は「年内妥結に向け、建設的・積極的に協力していく」と応じた。
 仮に米国の思惑通りに交渉が進めば、年内妥結までに残された時間は3カ月半しかない。甘利明・TPP担当相は「日本としては、ブルネイとその次に開かれる会合の二つが大きな山だ」と語る。     
        ◇
〈貿易自由化率〉 すべての貿易品目(日本は9018品目)のうち、関税をなくすことを約束する品目数が占める割合。日本がこれまで結んできた13の通商協定の自由化率は86%台が中心で、最も高いフィリピンとの協定でも88・4%だった。これに対し、米国が、韓国などの各国と結ぶ通商協定の自由化率は96~99%程度と高い。TPP交渉を主導する米国は、TPPの自由化率も高水準にしたい意向だ。 ≫(朝日新聞)

 官僚利権の大地に油を注ぐような消費増税も、9月末には決定するだろう。「増税する前にやるべきことがある。」は野田と云う憲政史上初の棄民政治家のお陰で胡散霧消し、この考えを強く主張した小沢一郎や亀井静香は勢力を大幅に失っている。物価インフレと賃金デフレに消費増税が追い打ちをかけるだから、想像しただけで、一般国民の生活は困窮する。おそらく、現在の1割以上困窮度が増すのだろうが、どこで本気で国民が怒り出すのか、それでも怒り出さず「生かさず殺さず」の中で、智恵を絞って生きていくのか、筆者はその状況をつぶさに観察したい欲望にかられている。無責任の誹りは免れないかもしれないが、生きる価値観を変えるチャンスが出来る、と前向きにとらえたい。自民党独裁政治の土俵を提供した以上、他力本願も致し方ないだろう。

誰も戦争を教えてくれなかった
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“インフレ物価、デフレ賃金” 泣きっ面に蜂、70%国民は満足と云う国?

2013年08月19日 | 日記
日本人は何を考えてきたのか 大正編―「一等国」日本の岐路
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●“インフレ物価、デフレ賃金” 泣きっ面に蜂、70%国民は満足と云う国?

 以前から、日本人にはマゾヒズム体質が潜んでいるのではないかと云う疑問を持っていたが、それを証明する時代に突入したようである。ユダヤ人の選ばれた民のような確たる確信のもとで起きたわけではない、このような症状は体質的マゾヒズムとでも解釈する以外、納得しようがない。今日のコラムでテーマにする、生活者としての窮乏を望むマゾだけに限らず、憲法の主人公を国民から国家に入れ替えてしまうとか、自衛隊を米軍の傭兵化するとか、たいして得るべき目的もなく、国民が犠牲を払う政治が好まれている。これって、一般的にマゾヒズムと呼ばれるものなのだが?

 グローバル経済の下で、経済成長を成し遂げる為には、世界に伍して競争し得る価格を達成出来るか否かに掛かっている。知的財産等における競争力強化も産業によってはあり得るが、基本は世界の消費者が購買意欲持つ明確な訴求力は価格である。ところが、このグローバル経済と云うものは、世界を股にかけたサプライチェーンの連鎖で成り立つので、技術の移転も速攻性があり、以前のMS社やインテルのように、長期に亘り市場を独占することが非常に困難になっている。

 そうなると、勢い製造業の価格訴求の結果は、労賃に帰結する。つまり、グローバル経済下での経済成長を望む場合、世界的賃金の平準化が嫌が上にも起きるわけで、極めて論理的だ。安倍自民党はTPPに加盟することを前提に、規制改革や成長戦略に従って、民間企業の自由競争を促進しようとしているが、この方向性は、間違いなく労賃の平準化が激化することであり、日本人の給与生活者の労賃を下げるのは、理の当然になる。この労賃の平準化は、その国の物価水準に合わせて起きる現象ではなく、世界の物価水準相当の労賃におさまるべく機能する。つまり、米国や日本の生活水準の高さは、必ず直撃を喰らう。

 安倍は、雇用状況も改善したと強弁していたが、雇用の質を、正規社員から非正規社員にシフトさせ、統計上はワークシェアリングのような労働状況をつくり上げただけである。謂わば、労働の質を悪化させたのである。竹中平蔵が、「オヤジの給料は下がったが、そのお陰でガキも就職できたので、家族全体としては収入が増えた」と子供騙しのようなレトリックを駆使していたが、現実、そのようになるのである。竹中は嘘は言っていない。ただ、家庭全体の収入で、国民の所得は例示すること自体、経済学者のやる事ではない。似非宗教の教祖の喩えである。しかし、こう云う話に納得する人々も多いのが日本と云う国だ(笑)。

 竹中に敢えて聞いてみたい。“おい、ガキが結婚しなければ、子供も生まれんぞ。オヤジがガキの家計を助けるのかい?”いまでも、少子高齢化問題が、日米同盟の次の難題だと言うのに、安倍自民は少子化と云う火種に油を注ごうとしているのだ。おそらく、安倍の知能では、経済政策により少子化に拍車が掛かるなど、想像もしていない。子育て対策に保育園を増やすの、育休強化など、箱や制度を作っても、保育士が異常に少なく箱を運営する人材不足だ出し、育休など率先垂範導入するのは公務員組織と一部の大企業に限られるだけで、人種差別のような制度になってしまう。

 需要なきインフレほど怖ろしいものはない。政府は「デフレでなくなりつつある」と月例経済報告を発表し、異次元金融緩和が目指してきた「脱デフレ」に近づいたと偉そうに語っている。しかし、「日本のデフレが“失われた20年”犯人説だと、役人や経済学者は言い募ったが、デフレを魔女のように扱い、狩りをしたわけでが、デフレと云う魔女の正体は、先進諸国が頭を抱える経済成長の鈍化の一形態であり、そこに日本独自の急激な少子高齢社会が重なった所為であり、“失われた20年”と云う呪文に、国家全体が騙されていると云う見方の方が正しいような気がする。

 此の儘、アベノミクスがさも成功過程を継続中のような判断で進捗し行くと、円安が個人生活者を直撃するばかりではなく、企業においてもコストプッシュ型のインフレを生みだすことになり、最終的に業績を圧迫するだろう。来年の夏には、ボーナス景気も消えうせる可能性が非常に高い。日本社会に需要がないのは自然の摂理のようなもので、経済政策云々の問題ではないのだ。65歳以上の国民は、買いたいものがない。無闇と山などに登って遭難ばかりして、散在するのが関の山、GDPに強く貢献する兆しはゼロだ。その人工層が益々厚みを増してゆく。あぁそれなのに、後に続く国民の数は少ない。これで国家経済が豊かになったら変だろう?こんな事は、経済学以前の問題だと思う。

 需要なきインフレと消費増税。それに覆いかぶさるようにTPPによる米国企業の参入だ。もう目も当てられない世界がヒタヒタと接近中である。筆者は個人的には、まったく困らない。資産の分散投資がこれ程重要な時代はないだろう。今と云う時間を愉しむ金と、老後の資産を先ず分ける。老後分は高配当の株式をキープし、残りは腐れユダ金の社債と金地金に分散する。出来る限り、今使いたいものに金をかける。80歳、90歳になって使える金などたかが知れている。持ち家であれば、月に8万もあれば食っていける。筆者のような人間が多ければ多いほど、GDPなど増える筈もない(笑)。

 しかし、このように安倍自民党政権が、国家を早目に冥途に送る下ごしらえをしているのは、個人的には歴史上必要な過程だと推察している。日米同盟の見直しの必要性に気づく国民も増えるだろうし、市場原理であろうが、グローバリズムであろうが、先進諸国の経済は伸びようがない事にも気づくだろう。如何に、今あるもので、どのような智恵を出して生き抜くか、民族が本気で考えざるを得ない時代が来ることは、非常に良いことである。哲学も宗教もない国家だが、物質的困窮と云う経験で、生きる事の意味を考えられるのも悪い事ではない。しかし、数年は国民は、驚くほど悲惨な時代を迎えるのは、幾分気の毒でもあるが、自業自得という見方もある。

日本人は何を考えてきたのか 昭和編―戦争の時代を生きる
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米軍の傭兵化、集団的自衛権容認 米軍の下僕強化、オバマが喜ぶと思い込んでいる

2013年08月18日 | 日記
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下
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●米軍の傭兵化、集団的自衛権容認 米軍の下僕強化、オバマが喜ぶと思い込んでいる

 おそらく、日本と云う国を考える時、人々は様々な側面から国家を考える事が出来るが、常に引っ掛かると云うか、思考の大前提に敗戦国としての国家と云う立場と、その敗戦の結果齎された、日米関係の主従的関係性を無視して語ることが出来ない。筆者は、このような国中全体が思考停止な状況は、敗戦後の日本の最大の特長だと捉えている。そして、21世紀に入っても、この日米の主従関係的発想に基づく、知識人の論調はなんら変わっていない。チョムスキー曰く“エリート大学は最も従順な生徒を選択し、体制順応者を生産する”の言う通り、既存勢力の思うがままと云う人材を輩出し、その人材が70年近く日本を支配してきている。

 彼らの思考には、対米自立等と云う言葉は存在せず、常に体制従順者の性癖から抜け出す者はいない。それが日本の支配層を形成している以上、彼らの考えから、日米関係からの脱却等と云う荒唐無稽な発想は浮かんでこないのは自明である。少なくとも、安倍晋三の心情は日本の真の独立の筈なのだが、日米同盟と云う、今にも壊れそうな掌の上で、右往左往している。指の間から零れ落ちる不安を抱え、滑りの生まれた指の間で手足をばたつかせている。蜘蛛の糸ではないが、仏が天井から眺めていれば、なんとも滑稽で哀れな姿に見えるに違いない。

 日本の政局で今問題になっている、財政問題、TPP自由貿易協定、原発エネルギー問題、集団的自衛権の解釈問題、沖縄普天間移設問題等々、そのすべてが、米国との関係性の中で語られている。つまりは、アメリカ様がどのように思うか、それを忖度するのが民主主義、資本主義だと云う矮小化された枠内だけの議論になるから、常に堂々巡りが繰り返される。ゆえに、日本の政治は常に退屈だ。あきらかに、日米同盟の枠内だけの自由な発想なのだから、太い鎖のついた首輪を、自ら、自らの首に掛け、絶対に鎖の長さ以上の自由は行いません、望みませんと、誓いを立てているようだ。

 筆者とて、米国、中国、ロシアのどの国が好きかと聞かれた、即座に米国がいいと言うだろう(笑)。国外退去を命じられ、選択に3カ国が示されたら、米国を選択するだろう。しかし、好きや嫌いで、国際情勢の変化についていけるなら、この世などチョロイものである。しかし、どう考えても、米国の鎖の範囲で生きていける世界ではなくなっている事実関係を考えると、自明的日米同盟の範囲で生きる事への恐怖の方が強い。自明性にのめり込めば、案外思考停止の範囲で論を語れば良いので、気楽である。論理の破綻も生まれにくいので、体制順応系エリートは、概ねこの世界から抜け出そうとはしない。小沢一郎にしても、日米同盟基軸を語る。おそらく、口先だけだと思うが、建前上日米同盟が基軸の上で云々という発言になる。多分、筆者が政治家でも、鳩山由紀夫並にヤケクソな発言はしないだろう(笑)。

 しかし、日本の政治家の3、4割程度は、右派左派云々は別にしても、糞アメリカから、本当は独立したい、と望んでいる部分はあるのだろう。ただ、中々公言する勇気がない(蛮勇とも言うが)、どうやってアメリカの干渉から逃れようか、そう云うテクニックに溺れ、結局虻蜂取らずになっているようだ。今回の安倍首相の靖国参拝見送りにせよ、集団的自衛権における経緯にしても、すべて日米同盟忖度政治の選択であり、過去の自明性から一歩も抜け出していない。法制局何するものぞ!とは元気だが、アメリカ様のことは忘れておりませんの姿勢である限り、到底「政治主導」等と云う言葉が使えるわけもない。

 特に今回の安倍政権が姑息に走る「集団的自衛権」の解釈変更も、米軍の傭兵として、奮闘努力するのであれば、それは善しとする、と云うオバマ政権のメッセージがあるのだろう。間違っても、その範疇を逸脱することを認める米国であるわけがない。自主独立を目指す集団的自衛権の行使であれば、中国やロシアとも、同様に軍事同盟を築く何らかのメッセージがない限り、ただひたすらに下僕度を高め、米軍の傭兵として3Kな軍事行動を押しつけられるに相違ない。誰が考えても、原爆落としたアメリカ人(アングロサクソン)が、日本人を尊重する筈もない。オバマは肌は黒いが、変質的アングロサクソンだと思っておくべきだ。

 現在のエジプトの騒乱を見ても判る事だが、アメリカは世界中に、自分達の価値感を押しつけ、他国に干渉し、内乱を誘発させ、時に直接的に過激に行動し、世界中を戦禍に巻き込んでいる。曲がりなりにも、選挙で選ばれた政権がイスラム寄りだからといって、軍事クーデターを容認して、軍事費の援助までしているわけだ。にも拘らず、現軍事政権の暴挙は許しがたい等と、どの面下げて公言出来るのか?この厚かましさが、アメリカの言うところのデモクラシーなのであれば、そんな糞な制度は少なくとも国連が求めている民主主義ではないだろう。世界史に類を見ない「二枚舌デモクラシー」である。戦勝国の歴史改竄は東京地検特捜より、罪は十二分に重い。

 世界の怨みを一身に受けても、さもありなんな国家である。国内テロを呼び込んでいるのは、アメリカ自身ではないか。その癖、イザとなるとヒステリックに大使館を閉鎖して見せたり、意味が判らん。こんな国の尻馬に乗り、地獄の果てまで、尖兵として自国の兵隊を戦場に送る政治家がいるのが、日本と云う国だ。これは、21世紀の国家的殺人触発判断であり、米国自体が、本当に歓ぶかどうか、それさえも定かではないのだ。この安倍政権の政治判断は、時と場合によると、逆にオバマの逆鱗に触れる危険すらあるのだから、笑って済ます話ではない。まぁ筆者は笑っていられるが、米中露戦勝三ヶ国から不快に思われるリスクを抱える事になりそうだ。

米国の表裏の歴史がつぶさに判る推薦本シリーズ1,2,3

オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史: 3 帝国の緩やかな黄昏
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日本を知らずに市場を跋扈する海外ファンド 日本の大企業の法人税支払い実績を見よ!

2013年08月16日 | 日記
20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う!
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●日本を知らずに市場を跋扈する海外ファンド 日本の大企業の法人税支払い実績を見よ!

 筆者を含め、多くの人間が法人税を殆ど払わぬ大企業群の実態を知っているが、マスメディアはスポンサー様の顔色を窺い、代表的輸出大企業や銀行金融企業が法人税をどれだけマトモに払っているかの検証は疎かになっている。日本の法人税は、法人税率としては高い方だが、企業の活動全体に占める公的負担率は、実は世界でも有数の低税率国なのだ。しかし、単純に比較としては、法人税率だけの比較になることが多い。であるならば、輸出企業や大企業の優遇税制の枠を取り払い、優遇を排除し、比較検証されやすい法人税に一本化するのが本筋である。

 しかし、優遇税制の適用には、行政の介在がつきもので、役人が大好きな裁量行政の温床だけに、霞が関が本筋で税制を改正などする筈もない。しかし、此処に来て、株式市場の停滞に焦りを見せ始めた安倍政権は、海外ファンドに好感を持たれようと、腹も座らないうちから、法人税減税や経済特区構想など、アドバルーンを上げている。特に法人減税にスポットが当たれば、流石のマスメディアも記事を書く根拠が生まれるので、安倍政権の発言をエクスキューズとして、ある程度、企業の法人税支払い実態を検証する記事は書ける筈である。

 企業に対する異様なサービス精神は、安倍政権の命脈が日経平均株価に連動した、驚くほど危うい政権であることを如実に示している。株価PKOに繋がる事なら、何でもやります!の神経には、呆れてものも言えない(笑)。しかし、上述の法人税減税への言及は、逆に大企業がどれ程の法人税を国家に納めているかと云う記事が書きやすい環境を整えた。おそらく、「噂の真相」のような雑誌があれば、真っ先に大企業や銀行保険など有名企業の12年の法人税一覧表を出しているに違いない。「週刊金曜日」に取り敢えず期待しておこう。以下は、その辺に触れた、ロイターの記事である。ロイターの記事の魅力は、分析力よりも、日本のメスメディアに比べ、スポンサーへの配慮が少ないことである。メディアを選ぶ時には、こう云う点を考慮する事も重要な知見だ。かなり書いているが、有名大企業の法人税支払い実績一覧などセンセーショナルなのだが…(笑)。

 ここにきて、NY、東京市場ともに株価に変調が見られる。安倍政権はデフレは脱却しつつあると意気軒高だが、株式市場は、緩やかなインフレが始まったとしても、可処分所得が下がり続ける限り、消費税の駆け込み需要さえ危ういのではないか、と懐疑的見方が優勢になっている。円安ー株価上昇ーデフレ脱却ー企業業績回復ー賃金の上昇ーGDP拡大等々のシナリオが、根本的に間違ったシナリオだったのではないか、そんな不安に包まれている。このようなシナリオが間違っていることは、経済学や金融学などに関係なく、生活者の冷静な判断力が備わっていれば、容易に気づくことで、当然の結論だ。賃金の上がらないインフレを歓ぶ馬鹿が居たら、お目にかかりたいものである。 

≪ 焦点:法人税の特殊事情が表面化、「効果小さい」の指摘も 
  [東京 15日 ロイター] - 消費増税と一体で法人税率を引き下げる政策が一部で報道され、市場の関心も高まっている。 だが、法人税率引き下げにはコストが高い割に効果が小さいとの指摘があるほか、繰越欠損金などの制度を利用し、法人税の支払いが免除されている企業も多く、企業の法人税の負担割合が本当に高いかどうか疑問の声も出ている。法人税減税の議論は、今まで表面化してこなかった法人税をめぐる特殊な事情をあぶり出そうとしている。

<税収大幅減なら財政再建と矛盾> 

 13日付の日本経済新聞朝刊は、安倍晋三首相が法人税の実効税率の引き下げを検討するように関係部局に指示したと報じた。同日付の共同通信も法人税のみならず所得税減税の可能性について触れている。
 複数の政府関係者によると、首相による具体的な指示は出ていないものの、一部閣僚や官邸周辺で法人税率の引き下げが有効だとの声が出ているという。
  ただ、15日になって政府はやや否定的なニュアンスを出している。菅義偉官房長官は15日閣議後の会見で「総理がそのような指示をした事実はない」と否定した。その上で「これから50人前後のいわゆる有識者や現場で商売をしている方などの意見を聞く中で、総理が判断をすること。まずは意見を聞くことから始まる」と述べ、今後の展開に含みを残した。
 財務省や与党関係者には、予定通り来春以降に消費増税を実施しなければ、長期金利急上昇や円高など市場の急変を招きかねないとの声が多 い。
 一方、安倍首相の経済ブレーンである浜田宏一氏と本田悦朗氏の両内閣官房参与は、物価が本格的に上昇し始める時期に予定通り3%の増税を実施すれば、デフレ脱却に失敗する可能性があると警鐘を鳴らしている。増税によるマイナスの影響を最小限に食い止めるため、首相周辺では様々な案が想定されるもようだ。
 ただ、市場関係者の間では、消費増税対策として法人税減税は評価できないとの声が少なくない。
 ゴールドマン・サックス証券、金融商品開発部部長の西川昌宏氏は「法人税率減税を行うとなると、消費税率引き上げの意味が益々薄らいでいく」と指摘。消費増税の目的である財政再建が揺らぐことを懸念する。
 特に「法人税は税収弾性値が消費税より大きく、法人税を下げ消費税を上げれば、景気が良くなっても税収が増えにくくなる」と構造的な税収減要因になるのを懸念する。

<実現に政治的な課題、一部企業には減益要因>

消費増税の景気下押しを緩和する対策としても「法人税減税による設備投資など波及効果は、せいぜい2─3兆円。2013年度と比べ16年度で13兆円程度と試算される増税の下押しの影響と比べるとバランスが悪い」(クレディ・スイス証券、経済調査部長の白川浩道氏)と分析する見方が多 い。 そもそも「家計の負担を拡大して企業の負担を減らす政策が、政治的に難しい」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也 氏)という側面もある。 政府部内にも野党に絶好の攻撃材料を与えると懸念する声がある。家計のみに負担増大を強いるのは難しいため、最終的に所得税の減税議論も浮上し、財政再建の所期目的と矛盾しかねないと、この先の議論の迷走を懸念する見方も一部のエコノミストから出ている。 麻生太郎副総理兼財務・金融担当相は15日の会見で、今の段階で法人税を引き下げることに効果は少ないとの認識を示した。

<7割が欠損法人、利益計上企業も繰越欠損金で相殺>

  一方、繰延税金資産の取り崩しで利益を得ている企業は、法人税引き下げが減益要因になるケースもあるという。J.P.モルガン証券の イェスパー・コール調査部長は「ゼロ金利下では大きな問題でない」としつつ「家電業界などは影響を受ける可能性がある」とみる。
  法人税を支払っている企業が少ないことも、減税の効果が限定される一因だ。財務省の法人企業統計(対象2万8148社)によると、全企業の経常利益は2011年度45.3兆円。これに対して11年度の法人税収入は9.3兆円にとどまっている。
 国税庁の会社標本調査によると、257万社中利益を計上している法人は71万社。72.3%が欠損法人となっている。7割の企業がそもそも法人税を払っていないため、減税による所得への波及効果は限定的と考えられる。
 利益を計上している企業も、必ずしも法人税を払っていない。企業がある年度に税務上の赤字を計上すると、繰越欠損金として翌年度以降の黒字と相殺し、法人税の減免を受けることができるためだ。
  繰越欠損金の翌期繰越額は2001年以降毎年70兆円台だったが、リーマンショック後に80兆円前後の水準に膨らんでいる。この制度を利用して大手銀行は10年以上にわたり法人税の納付をせずに推移。メガバンク3行がいずれも法人税を支払ったのは昨年のことだ。
日本の法人税は国際的に高いとして、経済同友会は法人税率を25%に引き下げると主張している。
  だが、財務省によると、2011年1月時点での比較で対国内総生産(GDP)比での法人所得課税負担率は1.9%と、英国の3.6%、韓国3.9%などG7やアジア諸国の中では低い方に属する。≫(ロイターニュース 竹本 能文、山口 貴也、Nathan Layne 編集;田巻 一彦)


ニュートンと贋金づくり―天才科学者が追った世紀の大犯罪
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