世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●グローバルと呪文唱えて罠に嵌る日本人 企業も政治も

2017年04月29日 | 日記

 

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●グローバルと呪文唱えて罠に嵌る日本人 企業も政治も

 以下のコラムの主である山田厚史氏は、老害、親米企業家・西室泰三氏をやり玉に、その企業家としての重大なる責任を厳しく追求している。その点に関して、何ら異論はない。ただし、東芝も日本郵政も、この超親米な西室と云う一人の無能な企業家の大罪であると同時に、日本の企業人全体に言える、アングロサクソン・コンプレックスのようなDNA的な問題が隠れて存在していることも忘れてはならないのだろう。

 アングロサクソン・コンプレックスは伝染病のように広がり、富士フイルム、 第一三共、キリン、リクシルと一流企業が海外投資案件で痛い目に遭っている。おそらく、例示した企業以外にも、軽く痛い目に遭っている企業もあるのだろう。思いおこせば、バブル全盛時には、三菱地所がロックフェラー・センタービルを買収したり、日本のバブル資金で、全米の主だったビルすべてを買えるとまで言われた。しかし、その買収で、企業価値を高めた事例はゼロだった。西室氏も、この程度の歴史は知っていたはずだが、米国信仰が目を曇らせてしまったのだろう。

 バブル期は、金が湧き出てくる感じなのだから、社員への“おすそ分け”もかなりなものだった。給与賞与もさることながら、交際費、タクシーチケット等々、経費予算もふんだんにあった。つまり、津々浦々にトリクルダウンしたのである。しかし、その後、このバブル期の反省から、トリクルダウン的な振舞いをやめてしまった企業は、その金を、内部留保と云う形でしまい込んだ。法人税も引き下げられ、意味なく内部留保金は増えていった。

 バブル崩壊後、日本の企業に、節約志向文化が定着した。その間、世界を取り巻く経済事情は、自社の業務拡大や事業強化と云う世界的潮流のM&Aに、日本企業も巻き込まれることになる。この時、アングロサクソン的な自己評価は、安倍晋三並みの自画自賛なことを、日本の企業人は忘れてしまうようだ。その内部留保していた金は、自社社員の汗と涙で積み立てられたという自覚もなく、M&A仲介業者の売り込みを鵜呑みにし、M&A後の、自社の雄姿などを思い描く。そして、半数以上は、利益どころか、負債で汲汲になると云うことだ。

 特に、アングロサクソン系の企業買収は、殆ど成功していないかもしれない。つまり、日本企業人のM&Aは、その企業の総資産表そのものを買うことで、その企業は自分のものだと思ってしまう。しかし、現実は、困難がつきまとう。先ずは、M&Aした企業の業務に精通した専門職が不足しており、本業の技術的知見、現地人材の人事マネージングなど、現地において、実際に飛び込まなければならないのだが、日本のサラリーマン社長の多くは、金で買うイコール自分のものだと錯覚する。M&A成立は、被買収企業の買収効果を得る土俵に昇ったに過ぎず、そこから相撲を取ることを忘れているのが実態。

 ゆえに、”えっ!聞いていなかった!そんな負債があったのかい?えっ!そんな子会社があったのかい?” そこに、買収企業の負債の山が隠されていたとか、もう散々な目に遭うと云うことだ。しかし、日本電産やソフトバンクなどの買収を見ていると、日本人サラリーマン社長の買収劇は、幼稚園児が金を握って買い物をしている甘さが露呈する。政治の世界でも、グローバルな政治家の世界展開は、安倍晋三は極端で話にならないが、金を配りに行くことと心得ているようだ。過去の哲学者の名前など云われても馬耳東風、白人貴族社会の血統に晒される彼らとは、真の会話など何ひとつ出来ないのが真実だろう。

 筆者の感じる範囲では、日本人がM&Aに向かない人々と云うこと。創業社長によるM&Aが概ね成功裡に推移していることを考えると、サラリーマン社長のM&Aは危険が一杯と云うことになる。個人的な感想になるが、島国で、日本人中心の企業文化で生きてきて成功した人物は、M&Aに向かない人々、そんな印象を受けてしまう。或る意味、このような性向は、グローバル世界において、適材適所ではない人々と云うことになるようだ。


≪日本郵政4000億損失、元凶はまたも元東芝・西室泰三氏

 


 日本郵政は豪州の物流会社トール・ホールディングの資産を洗い直し、4003億円の損失(減損処理)を明らかにした。鳴り物入りの「戦略的買収」は、わずか2年で財務を揺るがす「お荷物」と化し、日本郵政の2017年3月期決算は赤字に転落する。
  「疑惑の買収」を主導したのは当時社長だった西室泰三氏。東芝を泥沼に引き込んだ米国の原発メーカー・ウエスティングハウス(WH)の買収を画策した人物だ。
 法外な値で海外企業を買い、やがて損失が露呈し、カネを外国に吸い取られる。そんな経営者が財界の顔役となり、老いてなお巨大企業を渡り歩く。日本の産業界は一体どうなっているのか。

 ■構図、巨額さ、役者までもが
既視感のある日本郵政の減損
 25日記者会見した日本郵政の長門貢社長は、「買収した時の価格がちょっと高過ぎた。リスクの把握が楽観的だった」と語った。  買収価格は6600億円。当時から「高い買い物」と言われた。現時点の資産価値は2600億円ほどで買収価格との差、約4000億円が「のれん代」として計上されている。
 のれん代とは、トールを買収すれば将来これだけの利益をもたらすだろう、と「取らぬタヌキの皮算用」を金額にしたものだ。
 アジアに展開するトールのネットワークと日本郵政の潤沢な資金が融合すれば、4000億円ぐらい取り戻せる、と日本郵政は説明していたが、「絵に描いたモチ」だったことが明らかになった。
 トールは金の卵を産むアヒルではなく、従業員2000人の削減を迫られるメタボ体質の企業でしかなかった。
 2015年に決めた買収は、「ほとんど西室社長が一人で決めた買収だった」と日本郵政の関係者はいう。この年の秋に郵政3社(日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命)の上場が予定されていた。
  「政府の保有株を段階的に放出するため、株価を上げるためのお化粧が必要だった」
 日本郵政のOBは指摘する。政府の収入を増やしたい財務省の意向を踏まえ、郵政グループを実態より大きく見せる「化粧道具」にトール買収が使われたというのだ。
 郵政グループは利益の80%以上を郵便貯金が稼ぐ。郵貯は昔のような優遇措置がなくなった。規模は年々減っている。上場に弾みをつけるため、国際物流進出という大風呂敷を広げ、買収で売り上げと利益を膨らませたのである。
 目先の「打ち上げ花火」に6000億円が使われたということだ。描いてみせたシナリオは、 「国内の郵便事業は頭打ち。成長を求めれば海外しかない。郵便で得た知見を国境を超える物流に生かせば国際企業になれる」
 どこかで聞いたセリフではないか。 「国内の原発には限界がある。世界市場に打って出るしかない」  東芝が米国でウエスティングハウスを買った時のうたい文句とそっくりだ。

■カネさえあればの安易な買収
実効支配できず損失だけが残った
 東芝はWHを6400億円で買った。ライバルの三菱重工が「企業価値の3倍の値段だ」と驚くほど気前のいい買収だった。決断したのは当時の西田厚總社長だが、西田を社長に据え、背後で操っていたのが西室だった。相談役でありながら実権を握り、経産省や米国政界と通じ、裏で買収を画策した。
 考えれば分かることだが、東芝にはウエスティングハウス(WH)を支配する力はない。日本の原子力産業は米国の技術で育った。原子力は軍事技術であり、WHは原子力空母や潜水艦などを抱える機密情報の塊だ。米国が日本の自由にさせるわけはない。
 資本関係は親会社であっても、実際には「弟会社」。東芝は「口出しできない株主」でしかなく、アメリカ人経営者のやりたい放題を許し、巨額の損失だけを押し付けられた。
 カネさえあれば買収は可能だ。しかし経営の実効支配はたやすいことではない。
 西室は日本郵政で過ちを繰り返した。トールの買収を決めた2015年2月は、東芝の不正会計はまだ表面化していなかったが、社内では社長・会長が号令を掛け、決算の粉飾が常態化していた。経営陣を追い込んだのは無理して買ったWHだった。「絵に描いたモチ」は食えず、ひた隠しする損失が財務の重荷になっていた。西室はその事実を知る立場にあった。
 東芝の原子力部門は、「原子力ムラ」でもたれ合い、リスク感覚は希薄で、海外ビジネスの怖さが分からない。気が付くと、甚大な損害が発生していた。
 トールも同じ。国内の郵便事業で育った日本郵政は国際物流など分からない。「現地のことは現地で」という西室流の甘い経営がトールを弛緩させ、損失を膨らませた。 「半径10キロ内の配送業でしかない郵便事業と、船やジェット機で国境を超える国際物流は別物。言語も文化もの違う大企業を、国内しか知らない素人が支配するなどできるわけはない」と関係者は言う。

 ■海外M&Aの裏に内部留保あり
その原資は従業員の汗と涙
 富士フイルムは、このほど3月期決算の延期を発表した。海外子会社で会計の不正処理が発覚し、その調査が終わらず決算ができないという。東芝がWHの足を取られているのと同じことが富士フイルムでも起きている。
 ゴキブリ1匹、裏に100匹というが、海外M&Aが活発化する裏で、不正会計やガバナンスの欠如が日常化しているのではないか。
 第一三共はインドで製薬会社を買ったが4500億円の損害を出した。キリンはブラジルで1100億円、LIXIL(リクシル)はドイツで660億円を失った。日本企業は外資金融のカモにされている、と金融界で言われている。 「手っ取り早く国際市場に打って出るには合併・買収しかありません」とけしかけられ、その気になる。同業他社が皆やっているので、やらないと不安になるらしい。
 内部留保を抱えこみ、使い道に悩むキャッシュリッチの企業がM&Aでカネを毟られているのだ。
 そんな経営者が必ず言う言葉がある。「時間を買った」。生き残るために技術革新が必要だ。人を育て開発体制が強化する時間はもうない。手っ取り早く技術やノウハウを得るには会社ごと買うしかない――。
 なまじカネがあるから、その気になる。年間利益の10倍を超える買収さえ珍しくなくなった。結果は、死屍累々である。
 金持ち企業の失敗、と他人事のように、笑っている場合ではない。M&Aブームは企業のリストラや社員の非正規化など、企業の現場で起きている様々な問題と裏表の関係にあるのだ。
 バブル崩壊でペシャンコになった企業は、1990年代からリストラに励んだ。手を付けたのが人減らし、給与カット、従業員の非正規化である。
 実質賃金は90年代半ばから下がり始めた。従業員の取り分を示す労働分配率はこのころから急速に下降した。会社の取り分である内部留保はどんどん膨らむ。バブル崩壊や銀行の貸し渋りに懲りた経営者は、企業の貯金を殖やすことで安心感を買った。
 おかげで日本企業の内部留保は370兆円(2016年)と空前の規模に膨らんだ。ところが副作用が目立つようになった。競争力の低下である。人員削減でベテランが居なくなり、現場は荒れ、従業員の士気は低下した。新技術や新製品を産み出す力が衰えた。肥料も水もやらず収穫ばかり急いだ結果、現場は干からびてしまった。

■近視眼の経営者と 「親米財界人」の罪深さ
 そこを金融外資が狙う。「カネはあるがチエがない」という弱みが企業にあった。
 本来なら国内の労働環境を改善し、研究開発体制を再建するのが経営者の役割だろう。そんな悠長なことをする時間がない、次の決算で頭がいっぱい、という短期業績主義が産業界の主流になった。
 内部留保370兆円のかなりの部分は従業員の犠牲の産物だ。汗と涙が企業の貯金を殖やした。そのカネが外国企業の買収に充てられる。汗と涙の結晶は海外に流出する。その投資で利益を稼ぐ、というならまだ許せる。6000億円投資して4000円損した。背徳行為ではないのか。
 日本郵政は国内で商売している。津々浦々の郵便局が、職員を減らし非正規に代え、預金を集め、郵便を届け、ツメに火を灯すようにして稼いだカネである。国内の儲けは国内に還元するのが好循環経済の原則ではないのか。
 国内のカネを海外で使えば、国内消費を減らし、外国の消費を増やすことになる。M&Aブームは労働現場の疲弊によって生まれ、その失敗は国富を流出させる。
 東芝を見れば分かるだろう。米国原子力業界の不始末を東芝が引き受け、宝物である半導体部門を外資に売る。その失敗が日本郵政で繰り返された。
 西室泰三は「親米財界人」として評判が高い。経済摩擦や通商交渉の裏で動いた人物として知られている。 「日米同盟」と呼ばれる今日の日本とアメリカの関係は「同盟」と呼ぶような「対等な関係」でないことは読者諸兄もご存じだろう。その関係は、経済にも投影する。親米財界人は、米国に都合のいい人物であることが多い。
 長かった米国勤務をバネに東芝で社長・会長として君臨した西室は、日米財界人会議の日本側の座長を務めた。やがて東京証券取引所の会長になり、民営化される日本郵政の社長に収まった。 「老害経営者」ともささやかれるほどの人物を、そこまで押し上げた力は何か。西室は、誰のために、何をしたのか。その航跡は改めて書く。 (デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員 山田厚史、文中一部敬称略)  ≫(ダイアモンドONLINE)

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日本はなぜ原発を拒めないのか──国家の闇へ
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●何かが違う、米英・EU・露中・中東アフリカvs日・豪・ASEAN ・南米

2017年04月26日 | 日記



アメリカで感じる静かな「パープル革命」の進行とトランプ大統領誕生の理由
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●何かが違う、米英・EU・露中・中東アフリカvs日・豪・ASEAN ・南米

 見出しは、ザックリとした括りだが、どこか前者と後者には、言うに言われぬ温度差を感じる。それが何なのか、筆者は充分には理解していない。大局的な感想だが、前者は苛立つように国や社会が熱く動いている。後者は、前者同様なファクターでは動いてはいるのだが、どこか情熱的ではない。良く言えば、牧歌的な感じだ。牧歌的とは穏当な表現で、気づいていない国家や人々と云う感じだ。結局は、メディアが正当な批判能力に欠けている国々と云う側面も、ありそうだ。

 無論、局地的には、冗談じゃないと云う激しい闘争が繰り広げられているのだろうが、メディアなどを通じて知る限り、情熱や情念や怨嗟や理念のようなものに突き動かされ、ダイナミックに、且つ暴力的に動いている地域と、そうではない地域と云う印象を持つ。

 この差は何なのだろうと考えるのだが、明確な答えは得られていない。民主主義、自由主義の後進性に由来する面もありそうだが、一律ではない。敢えて探すとなると、対米関係の距離感などにポイントがありそうだ。日豪は完璧に、アメリカの属国と認定しても良いので類似性がある。南米は、対米において、親米反米感情が拮抗した地域であり、且つ距離の近さから、米国諜報機関の訓練場のようにもなっている。また、カストロやゲバラの影響を受け、日豪やNATOのように、イエスマン国家になり得ない国家的環境があるのだろう。常に、南米では、どこかで国家的抗争が起きているが、常にCIAの関与が噂されている。

 日豪と形態こそ異なるものの、米・英・EU・露・中・中東・アフリカ等々の国々の、米英覇権型世界に影響を与える勢力圏からは遠ざけられている。その意味で、ASEANにも、同様の臭いがある。残念ながら、日豪、ASEAN、南米や韓国などは、米国の支配が強すぎて、抵抗する手立てをほとんど持っていないと考えても良いのだろう。無論、抵抗することが不可能ではないのだが、アメリカナイズされた、行政機関や社会習慣、国民が、雲のように覆っているアメリカ支配を痛みとして感じない以上、抵抗は自ずと限られる。つまりは、哲学と縁遠い、怪しげな民主主義を鵜呑みにした国家や地域の共同体意識は、ひどく脆弱だ。

 米・英・EU・露・中・中東。アフリカなどで起きている、政治変革や内戦やテロなどには、時代の流れを感じる。グローバルな世界構築が、限界点に達したうめき声が、この地域にはある。日本の安倍などは、未だに、グローバルな世界構築は永遠なりと、突き進んでいるわけだが、今や世界の潮流は、その落とし処、次なるフェーズ探しに悶々としているのだ。この、世界的流れを、肌で感じない、日本の国民、政治家、行政機関等々は、結局意志なき共同体、謂わばロボット装置のような人間の塊りと云う認識で終わるのかもしれない。いま現在の安倍政権などは、実際問題、世界の流れに逆らって生きている、そんな感じの政権だが、過半数の支持を得て安泰なのだから、治安が好くても、米・英・EU・露・中・中東、アフリカなどから、何歩も遅れた国地域なのだな、そんな感慨を持つ今日この頃だ。

*以下は、世界が時代への温度差で、奇妙に二分化されている事情に関して役立ちそうなコラムを参考掲載しておく。


≪ 私たちはどんな時代を生きているか〜世界を覆う新しい「戦争の構造」
蔓延する武力紛争、危機的な国際秩序





 ■アレッポ陥落が象徴するもの
2016年はアレッポ陥落の知らせによって終わることになった。
:この12月、欧米系のメディアやSNS、あるいは国連機関やNGOは、アレッポに関するニュースやアピールなどであふれかえった。われわれが生きる時代の象徴のひとつが、シリアのアレッポだろう。
:アレッポで見られたのは国連やら国際社会の人道主義やらの限界だけではない。
:そこには、アメリカの力の低下のみならず政策の迷走が大きくかかわっていた。あるいはロシアやトルコやイランの地域的な影響力が明白になっていた。そして中東内部の宗派対立の図式に沿った分断が色濃く反映されていた。
:さらに言えば、中東の諸国に代表される20世紀国民国家の存在の脆弱性が劇的なまでに露呈されていた。
:冷戦終焉直後の1990年代初頭に歴史的な最大値を記録した世界の武力紛争数は、その後の約20年間でゆっくりと減りつづけた。しかしその傾向は、過去5年間ほどの間の急激な武力紛争数および紛争犠牲者数の増加によって、終止符を打たれた。
:今日の世界では、冷戦直後の記録を抜く数の武力紛争が発生している。われわれは歴史的な数の武力紛争が蔓延している時代に生きている。その傾向を牽引しているのが、中東であり、シリアである。
:2001年の9.11以降、アメリカのブッシュ大統領は「体制変換」を狙う軍事行動で中東に「民主化のドミノ現象」を起こそうとした。その後、「アラブの春」と呼ばれた大衆運動が巻き起こった。
:しかし2010年代の6年間において、中東の独裁政権の崩壊は、「混乱のドミノ現象」しか生み出さないことが明らかとなった。
:拙著『国際紛争を読み解く五つの視座―現代世界の「戦争の構造」』(講談社選書メチエ、2015年)においては、冷戦終焉とともに世界標準のイデオロギー体系となった自由主義を標榜する米国およびその同盟国群が維持している国際秩序にたいして、いくつもの深刻な挑戦がなされていることを論じた。
:2016年の世界情勢は、その国際秩序が、さらにいっそう深刻な危機にさらされた年であったと言えよう。

■自由主義的な国際秩序にたいする挑戦
:『国際紛争を読み解く五つの視座』では、自由主義陣営が中心となって維持している国際秩序にたいする挑戦を、地域ごとの特徴を持つものとして描き出した。
:東アジアには勢力均衡論、ヨーロッパには地政学の理論、中東には文明の衝突論、アフリカには世界システム論、アメリカには成長の限界論という視座を適用し、各地の紛争の構造的な背景も明らかにすることを試みた。この視座は、2016年の世界をふりかえる際にも有効だろう。
:東アジアでは新たな超大国・中国の台頭が、伝統的な地域の勢力均衡を揺るがせている。
:7月、国連海洋法条約(UNCLOS)にもとづく南シナ海仲裁裁判所が、中国の領有権の主張を退ける判決を下した。ところが提訴国であるフィリピンに生まれたドゥテルテ大統領は、むしろ中国に配慮を示して多額の援助を受け入れながら、反米的発言をくりかえした。
:2015年末からおこなわれている米海軍による南シナ海における「航行の自由」作戦も、その効果は不明瞭である。
:ヨーロッパでは、ウクライナ情勢が硬直化している間に、シリア問題への対応をめぐるロシアとトルコの間の駆け引き、難民大量流入をめぐるヨーロッパ諸国とトルコの間の駆け引きが顕在化した。そのなかでマッキンダー流の地政学でユーラシア大陸の政治情勢を見る視点が、いっそう重要になった。
:「ハートランド」としてのロシアの南下姿勢と、それを食い止めようとするヨーロッパ諸国のロシアへの根深い警戒心、そして両者の中間に立つ位置を占めるトルコの存在感は、2016年も顕著であった。
:なお6月にイギリスでEUからの脱退の是非を問う国民投票が実施されたが、ブレグジット派の勝利によって、史上初めてEUが拡大を停止し、縮小しはじめることになった。これは地政学的意味における「海洋国家」群と「大陸国家」群の再編を予兆させる大きな歴史的分岐点になりうるだろう。
:ユーラシア大陸の東と西で、勢力均衡や地政学の視点から理解すべき権力政治の動向が激しくなっている。
:いずれの場合でも、欧米諸国を中心とする諸国が既存の国際秩序の維持を目指す一方で、有力な非欧米国がその秩序に挑戦しているという流れが出てきている。

■イスラム世界内の「文明の衝突」
:よりいっそう激しい政治動向を見せたのが、マッキンダーの言う「世界島」の中央に位置する中東であった。
:2016年はサイクス・ピコ協定締結100年目にあたったが、あらためて中東の政治秩序の脆弱性に注目が集まった年でもあった。
:イラクからシリアにかけて広がる戦乱は依然として甚大であった。イスラム国の組織的勢力は削ぎ落とされているが、壊滅したわけではなく、むしろ組織化されていないテロが拡散する傾向がある。シーア派とスンニ派の対立構造は、イエメンなどを舞台にして、中東の至るところで激しいものでありつづけた。
:統計上はイランとサウジアラビアでは紛争が起こっていない扱いになるが、両国の間では地域的覇権争いが激しい。
:イランの東側であるアフガニスタンとパキスタンから、北アフリカのリビアなどにかけてのイスラム圏は、現代世界の紛争地帯の中核だ。
:文明の衝突論は、あまりにも通俗化されてしまった。文明の存在を実体的に考えすぎるならば、それは非現実的なフィクションでしかない。戦うのは常に人間であり、文明ではない。
:しかし本来の文明の衝突論で問題なのは、文明といった概念で表現しうる人間集団のアイデンティティが、現代世界の紛争に大きく関わっているという認識だ。
:もともとサミュエル・ハンチントンが1990年代前半に文明の衝突の着想を得たのは、当時のボスニア・ヘルツェゴビナの紛争などからであった。それはアイデンティティの境界線をめぐる闘争が武力紛争を引き起こす、という見かたであった。
:ところがハンチントンは、世界的規模の文明の衝突をめぐる議論では、西洋文明vsイスラム文明という対立図式に焦点を定めた。少数の過激主義者がいるだけでイスラム文明は西洋文明と対立していないというエリート層の公式見解を、ハンチントンは否定した。
:2016年の大統領選挙で勝利したドナルド・トランプは、ハンチントンに親和性のある見かたを持っているだけだとも言える。
:今日の中東では、紛争が地域に内在するかたちで頻発している。おそらくは対テロ戦争の勃発にともなうアメリカの中東への直接介入が、流れを変えた。 中東内部に西洋文明の暴力が入りこんでしまえば、中東内部において文明の衝突の現象が誘発されるようになる。そしてヨーロッパ人が定めた国境線を超えたイスラム主義の運動が必要だという議論が勢いを持つようになる。さらに、そのことがかえってイスラム文明の内部の紛争も誘発するようになる。
:拙著『国際紛争を読み解く五つの視座』で論じたが、イスラム文明圏の統一が目指されるがゆえに、イスラム世界の代表の地位を得るための中東内部の紛争も劇化するのである。スンニ派対シーア派という対立図式が非常に重要なものとなるのも、文明の代表をめぐる争いが切実なものとなっているからだ。 文明の衝突論は、対テロ戦争の時代における西洋対イスラムという対立図式だけでなく、真正なイスラムの代表をめぐる地域内の「内戦」の構図にもかかわる視点なのだ。
*イスラム国という具体的な政治運動は長続きしないかもしれないが、同じような現象はくりかえされるだろう。なぜなら終わりの見えない対テロ戦争の国際政治構造が、文明の代表をめぐる地域内の戦いもまた誘発するからである。

 ■中東の紛争構造に影響されるアフリカ
ところでアフリカに目を向けてみるならば、過去数十年の間、一貫してそうであったように、依然として紛争多発地域だ。しかし20年前と比べてアフリカが変わったのは、南部アフリカが平穏化したことである。
:代わって北・東・西アフリカで新たな紛争が起こりつづけている。サハラ砂漠の南側のサヘル地域が、紛争多発地帯として立ち現れてきた。マリ、ナイジェリア、チャド、スーダン、南スーダンなどが、具体例である。
:厳密にはサヘルには属さないが、政治的には同じようなサハラ砂漠を越えてくる中東の影響を受けやすい帯に属する紛争地域として、さらに中央アフリカ共和国、ソマリアなどの紛争地が存在している。
:基本的な構図として、北アフリカでは「アラブの春」以降の中東の混乱が、継続して発生している。サヘル地帯の諸国では、イスラム過激派勢力が台頭し、紛争状態が蔓延している。ボコ・ハラム、AQIM、アル・シャバブなど、アルカイダやイスラム国の影響を受けているテロリスト勢力が紛争に大きくかかわっている。今日のアフリカの戦争は、中東を震源とする紛争構造に大きく影響されながら進展しているのだ。
:1990年代以降、世界の地域紛争分析の主な対象は、アフリカだった。甚大な「格差」が広がる「世界システム」の中で、冷戦終焉の余波を最も激しく被ったのがアフリカだった。
:中東を震源とする「対テロ戦争」が継続中の現代世界においては、別のかたちをとりながら、アフリカは新しい時代の構造的な影響を激しく受けているのだとも言える。

 ■対テロ戦争とトランプ大統領
:過去25年ほどにわたって、多くの識者が同時代を「冷戦終焉後」の世界と描写してきた。近年は、新しい冷戦が始まった云々といった言説で、「冷戦終焉後の後」の国際社会が語られる場合が見られるようになった。
:だが世界の紛争状況を見るかぎり、「冷戦終焉後」の時代はすでに相当前に終わっていたと言うべきだろう。すでに新しい世界戦争の構造が発生している。
:われわれは、「対テロ戦争」という終わりが見えない新しい構造的な世界戦争の時代に生きている。「対テロ戦争」とは、中東で、アフリカで、アジアで、ヨーロッパで、アメリカで、甚大な影響をまき散らしている世界的規模の構造的な戦争のことである。
:アメリカではトランプ政権が誕生する。「アメリカ・ファースト」を掲げる大統領の就任によって、アメリカは数々の国際協調の場面から撤退することになるだろう。自由主義的価値規範の世界的な広がりを推進していた冷戦終焉以降のアメリカの外交政策に、トランプは大きな変化をもたらすだろう。
:しかしそれは、日本のマスコミが言う「孤立主義」の政策だけをトランプが採用することを必ずしも意味しない。中東で大規模な軍事介入を試みるということはないだろう。しかしそれでも安全保障面でアメリカが「対テロ戦争」の構造から逃げ出すことは想定しにくい。
:むしろ「対テロ戦争」の構図の中で、勝ち抜くことを目指していくだろう。そのとき、戦争の構造は、いっそう強くわれわれを縛りつけることになるだろう。
:日本の高校の教科書で「孤立主義」と描写されている「モンロー主義」が導入された19世紀前半のアメリカでは、たとえばアンドリュー・ジャクソン(第7代大統領。ちなみにジェームズ・モンローは第5代大統領)が白人男子普通選挙を導入して「ジャクソニアン・デモクラシー」を進めた時代だった。
:そのジャクソンは、インディアン(ネイティブ・アメリカン)にたいする大量虐殺や強制移住を主導する苛烈な人種差別主義者であった。
:トランプもまた、国際協調主義からは逸脱するとしても、なお経済面において、そして軍事面において、アメリカの利益を確保するかたちで無限の「成長」を追い求める大統領になるのではないか。
:トランプの言説を見ても、安全保障政策にあたるトランプ政権の閣僚の顔ぶれを見ても、「対テロ戦争」の構造は、トランプ政権下のアメリカによって弱められることはないと予測するのが妥当だ。
:2017年を通じて、アメリカの同盟国である日本は、その現実を思い知らされることになるかもしれない。

*篠田英朗――1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。同大大学院政治学研究科修士課程修了。ロンドン大学(LSE)で国際関係学Ph.D.取得。広島大学平和科学研究センター准教授などを経て、現在、東京外国語大学総合国際学研究院教授。専攻は国際関係論、平和構築。著書に『国際紛争を読み解く五つの視座』(講談社選書メチエ)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社)、『国際社会の秩序』(東京大学出版会)、『平和構築と法の支配―国際平和活動の理論的・機能的分析』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『平和構築入門』(ちくま新書)などがある。
 ≫(現代ビジネス:東京外国語大学教授・篠田英朗)



 

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●イカレテる安倍官邸 何ごとも「問題ない」の糞官房長官

2017年04月16日 | 日記



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●イカレテる安倍官邸 何ごとも「問題ない」の糞官房長官

 稲田朋美と云うドアホ防衛大臣が、こともあろうか4月26日からGW利用で、アジア外遊?まさかと思うが、本当のようだ。ドアホの上に、状況判断に気配りさえ出来ない無神経女のようである。サングラスで腐れかけた目は隠せるだろうが、腐れかけた頬っぺたも心根も隠せない、いっそブルカを被るべきと思ったが、ブルカでも不十分だろう。

 かと思えば、お得意の第二立法府である“安倍閣議決定”で、こともあろうか、あのナチス、ヒトラーの獄中著書「我が闘争」を、条件付き(「教育基本法等の趣旨に従っていること等の留意事項を踏まえた有益適切なものである限り、校長や学校設置者の責任と判断で使用できる」)だが、部分的引用であれば教材としての活用を否定しない。そう言えば、「教育勅語」においても、教材使用を否定しないと閣議決定した。レベルの高い水準における判断であれば、それなりに高尚な判断だが、安倍内閣が、このような閣議決定をした場合、“カッコイイじゃないか”という、戦争モノ嗜好を助長する“百田尚樹レベル”であり、高尚な教育思想から来るものとは思えない。単なる“好戦嗜好”に過ぎない。

 まあ、嘘をついても 証拠を隠滅しても 忖度行政(裁量行政)させようと 文書を真っ黒にして情報開示だ!と言おうとも 戦渦寸前に防衛大臣が日本脱出しようとも 米露と二股外交しようとも 友達に国有財産ディスカウントしようとも “モンダイナイ、問題ない“と官房長官のひと言。糞菅の問題ないのイントネーション、秋田弁なのか、韓国弁なのか、酷く耳障り。これが、安倍晋三の「美しい国」であるなら、広辞苑の“美しい”或いは“国”の項目は、早急に書き変えなければならない。

 ところで、数少ないリベラル論壇のエース古賀茂明氏が、週刊プレイボーイの連載コラムを読んでみた。現時点の判断と云う意味では、極めて常識的模範コラムなのだが、どこか心許ない。古賀氏の主張においては、相手が、キチガイであったり、根っからの悪であったり、やむにやまれぬ苦渋の選択等々の事情が考慮されていない点が気がかりだ。国家の安全保障や外交を、相手側の性善説に立脚していることは、本来正しいのだろうが、世界を見渡す限り、国家性善説には、諸手を上げて賛成する気にはなれない。

 それでは、追加の米国・トランプ政権の、あらゆる事態を想定して、選択肢をテーブルに並べる国家安全保障の考え方も参考に、筆者の、根本的考えを述べておきたい。おそらく、社会学者の宮台真司氏の、「重武装中立」に近いものになるようだ。核保有に至るかどうかを議論する必要はない。持っても持たなくてもいいのだが、いずれにしても使えない武装が核保有だ。ただ、核保有国と対立が激化する国際情勢になれば、その保有も是とする。

 日本が重武装する以上、それ相当の国家財政上の負担は余儀なくされる。しかし、世界にも稀な自然豊かで農業や林業、漁業に恵まれた国土で、工業国であるとか貿易立国を自負している明治維新以降の西洋文明にひれ伏すような国家観は大いなる間違いだ。大都会、東京、大阪までを特区とするくらいの水準に、チェンジするのが日本の本来の国家観だ。大きくなり過ぎたコミュニティには、血の通う社会は生まれない。共同体の縮小は、喫緊の課題と云える。

【 --話は変わり、外交戦略として重武装中立化を提唱しています。
宮台:従来はアメリカの核の傘の下で、防衛費を削って利権配分にいそしむことができた。簡単に言えば敗戦国として旧敵国の言うがままに近代化をし、アメリカに従うのが習い性になった。しかし、対米追従が日本に豊かさをもたらすという時代は、20年前、1988年の第2次竹下内閣時の日米構造協議で終わった。
 もはや重武装中立化が外交カードとして有効だ。アメリカは小泉内閣のときに憲法改正を要求してきた。その代償は重武装化による対米中立とたきつけたら、アメリカは突如、憲法改正要求をやめた。これは、現実に重武装中立化するかどうかではなくて、それを外交カードとして使えることを意味する。

--日本のあり方では、柳田國男に盛んに言及していますね。
宮台:『定本柳田國男集』が出版されているので、「風景の話」を読んで検証してほしい。生涯後期にイネの文化の本質は何であったかに議論の中心が移っていく。これは、自分たちの社会が成り立つ本質はどこにあるのかということ。公共性というのが今日的な意味では枠組みになるが、どういう道具があればみんながコミットメントするか、と考える。
 それは簡単に言えば日本の場合は国土ないし国土保全。いっしょに同じ空間にずっと長くいられることから人間関係に強い関心が生じる。国土、つまり自分たちの生きている風景や風土にコミットメントする。これが日本人の生きる動機のガソリンといえる。
 国土が荒廃したり、便利で、生涯賃金が高ければいつでもどこにでも移動すると思うようになれば、日本におけるパブリックコミットメントはなくなる。

  --「原点」に回帰を促す。
宮台:基本は農業振興。OECD加盟国の多くは耕地面積が6割ある。それが日本は1割をきる。日本は他の先進国より階級や宗教、血縁へのコミットメントが薄く、相対的に国土へのコミットメントが深い。日本こそ耕地面積比率が高くあるべきなのだ。これは食糧安全保障の観点からだけではない。農業は景観や人間関係を保全することにも役立つ。
 農業利用の土地生産性はどこの国でも例外なく低い。それがわかっているから多くの国は、税金で農家の所得の大半を賄う。農民は国家公務員に近い。フランス8割、イギリス7割、アメリカは6割の現金収入が税金だ。農産物の価格支持はやらない。逆に所得が保証されているので農産物価格は高くしなくていい。その状況の下で貿易をするので農産物が国際競争力を持つ。
 日本も四の五の言わずにそうすればいい。予算も人員も利権も張り付き総組み替えしないとやれないが、いずれはそうなる。そうならないと日本は生き残れない。
 ≫(聞き手:塚田紀史 撮影:代 友尋 =週刊東洋経済抜粋)】

*上述のようなことも踏まえて、古賀氏の意見を読んでみる。

 古賀氏の【支持率も史上最低というトランプ大統領。北朝鮮クライシスを演出することで、米国民の関心を内政から外政へと転換したいと考えても不思議ではない。「今こそ団結を!」と訴え、求心力を取り戻す作戦だ。】に付け加えると、議会運営上、共和党右派を取り込む必要が喫緊の課題になっているホワイトハウスとしては、彼らの言い分に沿った行動が求められているのだろう。フェイクで構わんから、世界の警察の地位は確保せよと。

 古賀氏の【北朝鮮は、いつか米国に攻撃され、イラクやリビアの二の舞いになるのではないかと恐れている。このアメリカの脅威に対抗するために、米本土を狙う核ミサイルの開発を行なっているのだ。】に付け加えると、最近の米国は、根拠の乏しい戦争を繰り返している。警察官と云うよりは、火付け盗賊的ならず者国家そのものになっている。遠くベトナム戦争があるが、911以降アフガン、イラク、リビア、ウクライナ、シリア、南米社会主義国との諜報戦‥等だが、どれをとっても、本来の正義や義憤によって、戦いが行われている歴然たる証拠がない。証拠の殆どは、マッチポンプ的であり、米軍が出動するために用意された証拠に基づいている。つまり、米国が動かなければ、自由主義と民主主義によって、最低限の平和が保証されていた国々で、アメリカの言うアメリカンデモクラシを強要するための戦争であり、軍産複合企業の業績に寄与する戦いに終始している。到底、日本に人が理解している正義の警察官ではないようだ。

 古賀氏は【北朝鮮は、いつか米国に攻撃され、イラクやリビアの二の舞いになるのではないかと恐れている。このアメリカの脅威に対抗するために、米本土を狙う核ミサイルの開発を行なっているのだ。】イラク、リビア、北朝鮮などに関しては、CIAによる現地のNPOやNGOを利用する選択が不可能なので、即奇襲攻撃になるわけだが、一応民主主義を標榜する国家では、CIA等々米国の影響下にある様々な機関が、その国家を支配コントロールする。日本や韓国豪州も、この手の国家であるが、当該国家の人々の多くは、まさか、自国が、あらゆる手法でコントロール下にあるとは思っていない。ウクライナはじめ、党欧諸国、南米諸国などは、この米CIA等のコントロールが有効打になっている。安倍官邸も、完璧なコントロール下にある。

 古賀氏は【トランプ政権が北朝鮮を攻撃すれば金正恩委員長はすぐ対米報復に動く。しかし、米本土を攻撃する能力はないので、ターゲットの最有力候補は在日米軍基地ということになるわけだ。】たしかに、常識的に考えると、北朝鮮のミサイルは米軍基地(三沢基地)を目標とするだろうが、貧者の一灯ではないが、彼らも知恵を絞るに違いない。米軍基地攻撃では、一気に総攻撃を喰らい、早々にフセインのイラク状態になるだろう。しかし、米軍基地周辺であれば、攻撃したのは日本本土であり、米軍攻撃ではない。弘前や大舘辺りに落とせば、反応しなければならないのは自衛隊、つまり、安倍官邸なのである。逆に、安倍はトランプさんに、参戦してくださいとこいねがう立場になる。案外、北朝鮮が本当に撃つとしたら、エクスキューズの余地が残る、日本のどこかの確率の方が高そうだ。

 今回のカールビンソン空母打撃群のプレゼンスは、単に脅しを掛け、北朝鮮の核開発やICBM構想を諦めさせる積りだった。しかし、金正恩の過剰反応で、ミサイルが日本本土に落ちたとして、米国は、どのような行動に出るか、不確かだ。米国にとっての国益を考えれば、日米同盟発動とは一線を画す可能性は大いにある。筆者は、米国は、日米安保の適用外と判断すると考えている。つまりは、こう云う場合に、日本はどのような対抗軸を持ちうるか、そういう問題である。

 中国、北朝鮮、ロシア、アメリカなど安保問題周辺国は、おいそれと、核による戦争に突っ走るとは思えない。常識的な範囲の武器、高性能の爆弾投下はあるだろうが、あくまで通常兵器の枠内、悪くても化学兵器、生物兵器の範囲だろう。つまり、核抜きの、高性能兵器と汚い兵器が想定される。敵国領土に上陸するというよりは、海空中心の空中戦と情報戦(ネット関連)になるだろう。このような範囲だけでも、日本の自衛隊は単独で装備されていない。日米は一心同体状況にあるわけだが、当然猛烈な主従関係にある。関係する他国に対してのコケオドシとしては、一定範囲通用するが、コケオドシの範囲以上ではない。

 古賀氏は【今、日本がすべきことは、敵基地攻撃能力を保有して、この戦争に加担することではない。まずトランプ政権に無謀な北朝鮮攻撃はやめろと忠告することだ。そして同時に金正恩委員長に対して、日本がトランプ政権に攻撃を思いとどまるよう説得するから、北朝鮮も自重してほしいと外交サインを送るほかない。】と平和主義な解説をしているが、筆者は、米国も北朝鮮も“ならず者国家”だと分析しているので、古賀氏の考えは穏当であるが、妥当性はないのだと思う。同氏にしてみれば、ポジショントークの一種だと思うべきである。

 赤旗の記事なので、丸々信じるわけにはいかないが、核兵器保有と云うのは、真面目に維持管理すると、酷く金を喰ううシロモノだと言える。米国を例に取ると、【【赤旗ニューヨーク=山崎伸治】今後10年の米国の核兵器関連経費が、最大6610億ドル(約52兆円)となるとの試算を米国の非営利組織(NPO)がこのほど明らかにしました。】一年間に5兆円と云うことです。それで、この核兵器、保有すると強気になれる兵器だが、殆どの場合、“無用の長物”となる可能性が大きいものである。あるぞあるぞと思わせることで、意味のある兵器かもしれない。

 まあ、核兵器保有は無意味としても、ミサイルを撃ち込まれたら、それを迎撃するミサイル防衛システムは、重武装すべきだろう。専守防衛の立場は明らかにしながらも、攻撃されたら、倍返しする能力を単独で保持していると云う態勢は必須と考える。この考えにおいては、アメリカと云う国は、近い将来、トランプが初心で語ったように、内向的国家にならざるを得ないと考えているからだ。

 グローバリズム経済と自由主義経済の限界が見えている以上、覇権国の地位は、次第に低下するもので、ステート概念が強まり、各国が障壁作りに躍起になる筈である。世界の右傾化は、家に閉じこもることと同義だと解釈すべきである。ある日、米国は日米安保を維持することに疲弊する可能性が大いにある。古賀氏は【敵基地攻撃能力は百害あって一利なし】と言うが、日本は「伝家の宝刀は持っているが、出来れば抜きたくはない。」こんな国家の安全保障体制が構築されることが望ましい。無論、核は保有しない。

 核爆弾の撃ちあいは、最終的に人類の破滅、ハルマゲドンなわけで、核を保有してようといまいと、結果は同じだ。早目に滅びるか、10年後に滅びるか程度の差である。悠久の歴史を考えれば、同時と変わらない(笑)。日本に広島長崎の100倍の威力の原爆を100発撃ち込まれ、放射能だらけの火の海となり、日本人は死滅する。しかし、偏西風は地球上を巡り、永遠に周回するわけだから、結局、全員死に至る。堀江貴文君は火星に向かうだろうが、火星で飢餓に苦しみ、同じく死滅するのじゃなかろうか?


≪ 日本は敵基地攻撃能力を保有すべき? 原発や東京が攻撃に晒され、戦場になる!
 今年に入り、ミサイル実験を繰り返す北朝鮮と、その挑発に激しく反応するトランプ米大統領。
 それを背景に安倍政権内では「敵基地攻撃能力」論が高まっているが、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は「日本を戦場にしてはいけない」と危機感をあらわにする。
* * *
 自民党の安全保障調査会が、安倍政権に「日本も敵基地を攻撃する能力を持つべき」との提言を行なった。この背景には北朝鮮・金正恩党委員長とトランプ米大統領の間で過熱する挑発合戦がある。
 今年に入り、北朝鮮はミサイル実験を繰り返している。しかも、アメリカ本土を射程に入れた大陸間弾道ミサイルの完成も近い。さらに、かなり大規模な6度目の核実験も行ないそうだ。
 これにトランプ大統領が激しく反応している。米中首脳会談を目前にした4月3日には、「中国が解決しなければ、われわれがやる」と、北朝鮮のミサイル基地への「先制攻撃」を示唆するかのような発言をした。
 政権発足以来、選挙中の公約が次々と議会に拒否されるなど、さえない状況が続き、支持率も史上最低というトランプ大統領。北朝鮮クライシスを演出することで、米国民の関心を内政から外政へと転換したいと考えても不思議ではない。「今こそ団結を!」と訴え、求心力を取り戻す作戦だ。
 実は、米朝はいまだ戦争中である。米朝が戦った朝鮮戦争は53年に停戦になっただけで“終結”はしていない。北朝鮮は、いつか米国に攻撃され、イラクやリビアの二の舞いになるのではないかと恐れている。このアメリカの脅威に対抗するために、米本土を狙う核ミサイルの開発を行なっているのだ。
 在日米軍を攻撃対象にすると宣言しているのも、まさに北朝鮮の敵は米軍だということを明示するためだといってもよい。
 トランプ政権が北朝鮮を攻撃すれば金正恩委員長はすぐ対米報復に動く。しかし、米本土を攻撃する能力はないので、ターゲットの最有力候補は在日米軍基地ということになるわけだ。
 このとき、トランプ大統領は、盟友・安倍首相に「一緒に戦おう」と声をかけるだろう。安倍首相は、日本は攻撃を受けていないという理由で参戦を断れるだろうか。首脳会談で異常なまでのトランプ氏へのすり寄りを見せておいて、いまさら「別行動」などとは口が裂けても言えないはずだ。「存立危機事態」を宣言して参戦するだろう。
 そうなれば日本は、まさに米国と並んで北朝鮮の敵となり、米軍基地だけでなく、日本全土の原発や東京などの大都会が攻撃されることになる。
 先制攻撃でミサイル基地を全滅させればよいという主張もあるが、北朝鮮のミサイル技術は進歩している。一度に4発ものミサイルを移動式発射台から同時に撃つ能力も誇示したばかりだ。VXガス搭載ミサイルが何十発も飛んでくるかもしれない。そのうちの数発でも撃ち損じれば、国内の犠牲者数は数千人単位になるかもしれない。
 日米韓の協力で、北朝鮮に勝つことは可能だろう。しかし、数千人の犠牲者を出して、「勝った」と喜べるのか。
 今、日本がすべきことは、敵基地攻撃能力を保有して、この戦争に加担することではない。
 まずトランプ政権に無謀な北朝鮮攻撃はやめろと忠告することだ。そして同時に金正恩委員長に対して、日本がトランプ政権に攻撃を思いとどまるよう説得するから、北朝鮮も自重してほしいと外交サインを送るほかない。
 日本を戦場にしてはいけない。敵基地攻撃能力は百害あって一利なし。逆に日本の安全を脅かしかねないシロモノなのだ。

●古賀茂明(こが・しげあき) 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年に退官。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)。インターネットサイト『Synapse』にて「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中 ≫(週プレNEWS 4/15(土))


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●愚民が生みだした“愚恥安倍政権”  日本破壊が目的か

2017年04月13日 | 日記

 

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●愚民が生みだした“愚恥安倍政権” 日本破壊が目的か

 根性無しの野党第一党・民進党のお蔭で、日本の政治シーンから「野党」は消えている。早く言えば、安倍一党独裁体制だ。日本人が独裁国家だと思い込んでいるロシアや中国よりも、遥かに独裁国家なのが、実は我が国日本だ。何故こんなことになったのか?少なくとも2012年までの、歴代政権には絶対的独裁色に満ち満ちた戦後の政権はなかった。まあ、小泉政権に、一部その傾向は見られたが、現在に比ではなかった。少なくとも、彼に反旗を翻し、ズタボロになった勇気ある政治家が、相当数、自民党内からも出たくらいだ。

 しかし、現在の安倍政権は違う。内心忸怩たる思いがあったと、安倍晋三独裁が消滅した時、口々に大合唱する自民党公明党の政治家が続出するに違いないのだ。解説風に言うならば、小選挙区制で官邸に全権限が集中しているので、逆らうと党公認候補になれず、選挙に勝つことは不可能になる。つまり、政治家と云う身分を保身する為に致し方ないのだと、自民党政治家は、平気で、その理由を説明する。そして、支持者の多くも、なるほど、それじゃあ仕方あるまいとなる。

 “イオンは12日、2018年2月期の連結純利益が前期比33%増の150億円になりそうだと発表した。好採算のプライベートブランド(PB)商品が好調に推移する。同日都内で記者会見した岡田元也社長は「脱デフレは大いなるイリュージョン。今後はディスカウント店舗などに注力し消費者を支える」と述べた。会見には森美樹副社長、若生信弥副社長、岡崎双一執行役も出席した。”(日経新聞)と述べているように、脱デフレ、2%のインフレターゲット等と云うものは、現実社会ではイリュージョン(幻覚、幻影、幻、思い違い、錯覚、幻想、誤解)に過ぎないと、暗に現政権の経済政策を皮肉ったように、幻影を追いかけるものだと、巷に生きる企業らしい率直な意見を述べている。

 つまり、第二次安倍政権が華々しくぶち上げた“アベノミクス”なる経済政策は、国家の根本にある経済財政に時限爆弾を数多く仕掛けながら、今現在進行形で進められているのだが、国家の根本的経済に上げた有効ポイントはゼロである。たしかに、東証企業の株価を引き上げたのは事実だが、日銀とGPIF年金基金が買い上げ押し上げたわけで、今では東証1部1945社のうち、日銀とGPIFが大株主になっている企業は980社に達して、半数がすでに国有企業とも言える統制市場になっている。こう云う事実をNHK愛好者は殆どが知らない。

 己の国家の首相が、国会でペラペラ饒舌に話している言葉も、記者会見で、仕込んだQ&Aで、威風堂々、自信に満ちた顔で滑らかに“嘘八百”を語っているとは、お釈迦様でも勘違いするだろう。彼は、生まれつきの嘘つきです。天才的に……。なにせ、彼の嘘を証拠付きで暴いているマスメディアは僅かであり、それもアリバイ作りの範囲に限るの現状、政治のプロでもない限り、見逃すのが常である。

 森友学園事件や加計学園事件などは、共に大スキャンダルで、二つや三つの政権が吹っ飛んでも不思議ではないのに、屁の河童なのだから奇怪である。日本国民全員に麻酔を掛けて政治を、安倍官邸と役人どもで実行していると言ってもイイだろう。安倍官邸は、国会に、第二の立法府(閣議決定)と云う隠れ蓑を発見、立法府の長さながらの日々を送っている。このような脱法政権は、日本政治史上でもまれに見る存在で、腐れ野党の連中では、手も足も出ないのが事実なのだろう。

 共謀罪、教育勅語、トランプの国際法違反に恭順の意、朝鮮半島動乱を待ち受ける風情、介護保険の弱者切り捨て、日本企業の国有化、福島被災者問題で棄民の意志露呈、東日本大震災復興支援の実害‥等の諸問題を抱えてい乍ら、米露の指導者と仲が良い?それがどうした?金をせがまれる関係なのだから、相手も嫌々握手やゴルフくらいするよ。その上、より国家のための戦争が出来るように憲法改正がライフワークだと言い募る。こんなおバカで、嘘つきで、外遊大好きで、国民の金をバラ撒いてあるく日本の首相。どこをほじくれば、支持率50%が生まれるのか、理屈に合わぬ。

 支持する政党なし:80%。内閣支持率20%、首相になって欲しい政治家なし。このような数字が出たら、筆者は、各マスメディアの世論調査も本物になってきたと信じることにしている。まあ、こんなことを書いている内に、取りあえず、プーチンは、今回のシリア攻撃だけは見逃すが、今後撃つようなら、もう許さんと云うことで手打ちになりそうだ。そして、ティラーソン米国務長官は、プーチン大統領と旧知の仲なので会うと云うことのようだ。問題は、朝鮮半島有事だ。中国が強く北朝鮮に警告とあったが、あの刈上げ君が尻尾を巻くとも思えない。

 今の、安倍政権では、朝鮮半島有事に、半分期待を持っているフシもあり、ひどく気になる。60歳上の人間ならマシだが、若い連中が巻き込まれるのは、かなり辛い。安倍晋三や高村議員や菅議員の出自を気にするのは憚られるが、日本国家崩壊の道が目的であるなら、彼らの目的は、道半ばまで来ているのだろう。

首相官邸の前で
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野党協力の深層 (詩想社新書)
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●手放しで“米軍トマホーク”を賛美する 隷属ー安倍政権

2017年04月10日 | 日記
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韓国左派の陰謀と北朝鮮の擾乱
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●手放しで“米軍トマホーク”を賛美する 隷属ー安倍政権


 今回の米軍による地中海展開の駆逐艦から巡航ミサイルトマホークを、シリアアサド政権が化学兵器を使用したとして、シリアの空軍基地に対して空爆を加えた。世界の警察として、一見尤もらしい“正義”が遂行されたと云うシナリオだが、問題の化学兵器使用が、戦闘中にある場合、シリア政府軍、或いは反政府軍のどちらによる化学兵器使用かは判定が非常に難しいものである。

 しかし、米国は、単純明快にアサドがやった、そう叫ぶことで空爆の正当性を主張している。アサド側使用と云う米国の情報は、九分九厘、イラク攻撃時に主張したフェーク情報であることを否定できないのが現状だ。

 日英独仏及び西側メディアがこぞって米国の“正義の鉄槌”の諸手を上げて“称賛”の嵐を送っている。あまりにも馬鹿げた行動だが、真顔で神に降れ伏すような醜態をさらしている。おそらく、降れ伏す各国の代表も、米国のフェーク情報が偽物であることを知っているが、正面から異を唱えるだけのシリア情勢に関する情報を持たない以上、取りあえず、米国の行動に追随しておくしか、手立てがなかったと考えておくべきだ。

 各国がこぞって米国の行動に理解を示す態度には、トランプ政権の実態が見えていない。民主的判断をするだけの態勢が整っていないと云う危険な政権である状況においては、事柄を分析判断する以前に、逆らうことのリスクに焦点が絞られているのだろう。シリアに地上部隊派遣と云う話になれば、各国の手のひらが返ることも充分にあり得る。まあ、安倍政権は、手の平を返さない、英国も追随するが、独仏は躊躇するに違いない。ロシア中国も反旗を高く掲げるだろう。

  直近、日本の悩みは、北朝鮮を恫喝して悦に入る米軍が朝鮮半島で、何らかの軍事行動を実行するか、しないかと云う問題だ。逆の立場でいえば、北朝鮮・金正恩が米軍の脅し(既に朝鮮半島に向かって空母カール・ビンソンがプレゼンス強化に出向いている)に強く反応した場合、不確実なミサイルかもしれないが、どこかに向けて発射する可能性は大いにある。どこに向かうかと問われれば、最も確率が高いのは我が国日本である。日本の米軍基地を攻撃目標にする可能性が最も高い。

 韓国は、同一民族であり、地続きの地政にあり、安易な攻撃は、朝鮮半島全体が火の海になるリスクがある。朝鮮民族が殺し合う事態は避けたい点では、 北朝鮮・金正恩といえども同じだろう。しかし、日本の米軍基地狙いと云う軍事行動は、微妙なニアンスを含む攻撃になる。攻撃目標は、明らかに米軍基地であった場合、日本本土が攻撃されたと日本政府が判断する点には異論が多いだろう。無論、基地攻撃であっても、周辺地域が被害を蒙った場合は、日本の国土にミサイルが撃ち込まれたと判断することもあり得るが・・・。

 それにしても、トランプ大統領は、米国防当局の幹部メンバーが歯抜け状態で、どこまで腹の座った軍事行動に出たのか不明である。また、シリアにおいて、ISを利するような行動に出たことで、アサドによって、一旦シリアを安定させる国際的シナリオは大きく狂い、シリアをどうする積りなのか、まったく見えない状況にした点では、プラス面よりマイナス面が目立つ攻撃だった。どうも、シリア攻撃は米軍のパフォーマンスの可能性が疑われる。59発のミサイル攻撃にしては、シリアの軍事施設の被害が軽微なことである。

 となると、攻撃が米中首脳会談の最中に行われた点が重要なのかもしれない。シリア空軍の基地を攻撃すると云うことは、日米同盟ではないが、ロシア・シリア同盟があるわけで、直ちにロシアの反撃があることも想定される。つまり、アサドを攻めることで、ロシア軍が反撃に出てきても、充分対抗する用意を米軍は保持していると習近平に知らせたかったとも解釈できる。中国の南シナ海における軍事プレゼンスを牽制すると同時に、北朝鮮の核開発阻止に、中国が本気で取り組むことを促がしたとも受けとめられる。

 現時点で、この米軍のシリア攻撃が、どこまで考えぬ抜かれた作戦なのか、定かではない。米国防当局の幹部数人の思惑と感情から行われた作戦の可能性も高いので、独りよがり作戦と称される可能性もある。そうなると、ここから先は、相手の出方次第と云うところだ。ロシアとシリア、中国、北朝鮮と国連加盟4カ国に喧嘩を売ってみたと云うのが現状だろう。国連レベルで考えても、常任理事国二ヶ国を相手に、米軍は応戦できるのだろうか、はなはだ疑問な作戦でもある。それにしても、前述のように、日本政府、安倍政権は複雑な戦争に、諸手を上げて賛意を示したのだが、どこまで考えて声明を出したものか、心許ない。以下、関連記事及びコラム。


 ≪シリア攻撃、処方箋なき劇薬  コメンテーター 秋田浩之
2017/4/7 18:41 日本経済新聞 電子版
 乱気流がやってきたように、世界の情勢が急に緊迫してきた。シリアを空爆したトランプ大統領には、弱腰といわれたオバマ前政権との違いを印象づける思惑がある。
 だが、空爆という劇薬も、きちんとした処方箋があってこそ、初めて効果が出る。それがないまま武力を振るえば、危機を抑えるどころか、かえって広がりかねない。
 バージニア州、ポトマック川のほとりにたたずむ国防総省。先月下旬に訪れると、どこかしら閑散として、活気がないように感じた。
 事情を聞いて、理由がわかった。政治任用の主要な幹部約50人のうち、マティス国防長官以外のほとんどが空席なのだ。任命が遅れ、格下の職員が代行し、何とか政策を切り盛りしている。
 外交を仕切る国務省はもっと大変だ。大半の政治任用ポストが空席なうえ、トランプ氏が予算の約3割減を決め、士気が下がっているという。
 「日々の政策をつなぐので精いっぱい。大戦略を描き、動かせる状況にはない」。内情に通じた複数の共和党関係者はこう打ち明ける。
 こんな体制で強行された今回の空爆は、長期の中東戦略を描き、満を持した末の行動のようにはみえない。
 オバマ氏とちがい、自分は攻撃をためらわない――。世界にそう思わせ、軍拡に走る中国をけん制し、北朝鮮にも核武装をあきらめさせる。強気な交渉術で財をなした、トランプ氏ならではの発想がうかがえる。
 この効果がゼロだとは思わない。オバマ前政権の足元をみて、強硬に振る舞ってきた中ロなどは「トランプ氏を怒らせるのは得策ではないと思い、一時的に静かになるかもしれない」(日本の安保当局者)。  それでも、今回の行動は性急すぎると言わざるを得ない。正当な攻撃であることを証明するための事前の努力が、あまりにも足りないからだ。
 シリアが化学兵器を使ったのなら、国際法違反であり、人道的にも許されない。ならば、国連安全保障理事会に証拠を示し、少なくとも議論を交わすべきだった。
 米国は国連の十分なお墨付きを得ず、2003年にイラクを攻撃し、同盟国に分断を生んだ。この教訓を生かすべきだ。  この攻撃はさまざまな副作用も生みそうだ。まず考えられるのが、中ロによる一層の接近だ。両国には根深い不信感が横たわるが、米国に対抗するため、静かに枢軸を強めるだろう。
 すでに両国の武器売却や共同演習は加速している。「国連安全保障理事会での発言や投票でも、中国がロシアと同調するケースがふえている」(国連関係者)
 北朝鮮の出方はさらに読みづらい。シリアのアサド政権やフセイン・旧イラク政権は核を持たないから攻撃された……。北朝鮮がこう結論づけ、むしろ核ミサイルの完成を急ぐかもしれない。
 こうした問題を精査し、トランプ氏に進言できる側近は少ない。ティラーソン国務長官や、最側近の娘婿であるクシュナー上級顧問はビジネス界出身だ。2人を知る元米高官は「実務や交渉力は優れているが、外交経験はない。危機への対応力は未知数」と語る。
 オバマ前政権は対話ばかりで行動せず、南シナ海や朝鮮半島の危機を深めてしまった。安倍晋三首相が米国の決意を支持したのは、そんな経緯も踏まえてのことだろう。
 だが、これからは本当に刃物を振り回しかねない米国に、どう向き合い、連携していくのかが課題になる。その難しさとリスクは、オバマ前政権当時の比ではない。
 ≫(日経新聞:コメンテーター 秋田浩之)


 ≪またシリアで化学兵器が使われ、化学兵器を廃棄済みのシリア政府を西側は批判する合唱を始めた
  シリアのイドリブで政府軍が化学兵器を使ったと西側の政府や有力メディアが再び叫んでいる。2013年にアメリカ/NATOは同じことを主張し、自らが軍事侵攻しようと目論んでいるが、このときは西側の嘘が明らかにされたこともあり、失敗に終わった。ここにきてドナルド・トランプ政権はネオコン色が強まっているが、それにともない、昔のシナリオを持ち出してきた可能性がある。
 シリア政府は化学兵器の使用を否定、ロシア国防省は反政府軍の武器庫を通常の兵器で攻撃、その武器庫に保管されていた化学兵器が破壊されて環境中へ毒ガスが流れ出たと説明しているようだ。前回の化学兵器騒動の際、西側が侵略する口実をなくすため、ロシア政府が主導してシリア軍が保有していた化学兵器は全て処分した。現在、持っているのは反政府軍(アル・カイダ系武装集団やダーイッシュ)。ムアンマル・アル・カダフィ体制が倒された後、アメリカ/NATOなどがリビアからシリアへ化学兵器を持ち込んだほか、トルコが提供したとも言われている。
 2013年の化学兵器使用は3月と8月の2回。3月はアレッポで使われ、シリア政府はすぐに調査を要請、西側の政府やメディアは政府軍が使ったと宣伝した。そのとき、アメリカのジョン・ケリー国務長官がイラン側との秘密交渉を始めている。そうした動きをネオコンたち好戦派は嫌っていた。
 この攻撃について、イスラエルのハーレツ紙は状況から反政府軍が使ったと分析、国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言している。
 3月の攻撃に関する国連の調査が始まる中、8月21日にはダマスカスの郊外が化学兵器で攻撃された。例によって西側の政府やメディアはシリア政府軍が使ったと宣伝、NATOを軍事介入させようとするが、現地からそうした宣伝を否定する情報が流れていた。
 今年2月20日に心臓発作で急死したロシアのビタリー・チュルキン国連大使は当時、アメリカ側の主張を否定する情報を国連で示して報告書も提出している。その中で反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾していることを示す文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。
 そのほか、化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事も書かれ、10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。
 12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。
 また、こうした化学兵器の使用について、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)が調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。
 今回も西側の政府やメディアはシリア政府が化学兵器を使用したと批判しているが、そうした宣伝記事を書いているひとり、ニューヨーク・タイムズ紙のマイケル・ゴードンはアメリカがイランを先制攻撃する前、ジュディス・ミラーと一緒に原爆話を流していた人物。ミラーは現在、CFR(外交問題評議会)のメンバーであり、ゴードンは軍事担当記者として「活躍」している。ふたりともアメリカ支配層の覚えがめでたいようだ。ゴードンはウクライナの問題でもロシア軍が軍事侵攻したという偽情報を流している。
 日本にはこうしたアメリカの有力メディアを有り難がっている人が今でもいるようだ。おそらく確信犯であるだろうマスコミはともかく、ほかの人びとはいい加減、目を覚ましてもらいたいものである。
 ≫(櫻井ジャーナル)
参考url:
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201704050000/


≪コラム:トランプ大統領、北朝鮮に「禁断のカード」切るか
Peter Apps
 [24日 ロイター] - ティラーソン米国務長官は今月、北朝鮮に対する「戦略的忍耐」はすでに終わり、同国の核開発の野望に歯止めをかけるために「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と警告した。その言葉通り、米韓両軍の部隊は幅広い軍事シナリオに向けて準備を進めている。
 4月末まで行われる米韓の合同軍事演習には、実に30万人が参加する。1953年に朝鮮戦争が停戦して以来、朝鮮半島ではこうした演習が日常的な光景となっている。近年では、その規模は拡大し、より現実的なものとなった。 少なくともビル・クリントン氏以降の歴代米大統領は皆、北朝鮮の核兵器開発問題に取り組み、その対応として想定される幅広い軍事行動についての提言を受けてきた。
 これまでのところ、攻撃実行を決意した大統領は1人もいない。 これは主として、北朝鮮の報復によって朝鮮半島と、恐らくはさらに広い近隣地域を血の海に巻き込む可能性を考えれば、どの選択肢も好ましからぬものだったからだ。さらに悪いことに、かつての朝鮮戦争がそうであったように、半島における武力衝突によって米国が中国との戦争に引きずり込まれる可能性さえある。
 だが、金正恩朝鮮労働党委員長が率いる北朝鮮が核弾頭やミサイル実験を進めるなかで、多くの専門家は、米国政府が最終的に軍事行動に踏み切る可能性は徐々に高まっていると考えている。
 トランプ大統領は、北朝鮮政府が米国を核攻撃できる能力の開発を許さないと発言している。だが、仮にトランプ氏が北朝鮮の施設への限定的な攻撃を命じたとしても、同国の核開発プログラムは一時的に減速するだけだろう。そして、このような作戦は北朝鮮による残虐な報復を招く可能性がある。北朝鮮の体制打倒という、より大きな目標を定めるとすれば、多大な労力が必要となるだろう。
 だとすれば、米国がこれまで、経済制裁やミサイル実験妨害のためのサイバー攻撃といった代替的手段の継続を選択してきたのも無理はない。最近になって地上配備型ミサイル迎撃システムである「高高度ミサイル防衛システム(THAAD)」を韓国と日本に配備したことは、ある程度の備えにはなるはずだが、北朝鮮のミサイルに対してどれだけ有効かは未知数だ。
 米国政府がさらに強く出るとすれば、最も可能性が高い行動は、北朝鮮のミサイル・核兵器関連とみられる施設に対する、奇襲による空爆だろう。それも圧倒的な規模で行なわれることが望ましい。
 こうした行動によって核開発プログラムを完全に破壊する可能性は小さいが、開発を遅らせることになる。うまく行けば、弾道ミサイルをディーゼル電気推進型の潜水艦に搭載するといった、北朝鮮政府のより野心的な兵器開発プログラムの一部が完了するのを防ぐことができる。
 米空軍が保有するなかで最大と考えられている通常爆弾、3万ポンドの大型貫通爆弾「GBU-57」は、まさにこの種の標的を念頭に設計されたものだ。
 当初はイランの核施設を破壊することを主目的としてジョージ・W・ブッシュ政権下で開発されたこの爆弾は、各地域の基地や米国本土から発進するB2ステルス爆撃機から投下することが可能だ。
 通常のジェット爆撃機と違って、B2はほぼ探知されることなく北朝鮮の空域に侵入できるはずだ。恐らく、より現代的なF22戦闘機ラプター、あるいは、さらに新型で現在東アジア地域に配備されているF35統合打撃戦闘機が何機か帯同することになる。
 では、なぜこのような攻撃がこれまで行なわれなかったのか。それは、イランの核施設に対する攻撃が行なわれなかったのと同じ理由だ。多くの専門家は、こうした攻撃によっても多くの施設が無傷で残ってしまい、想定される報復が悲惨な結果をもたらすと考えている。
 イランに関して米国政府が懸念していたのは、イラン政府がペルシャ湾岸の石油・天然ガス関連施設や輸送路に報復を加え、ただでさえ不安定なグローバル経済に破滅的とも呼べる影響をもたらすことだった。北朝鮮に関しては、日本やグアムなどにある域内の米軍基地にミサイル攻撃を仕掛け、韓国に対して圧倒的な砲撃を浴びせる可能性を懸念している。
 北朝鮮による砲撃の効果について、アナリストらの見解は分かれている。北朝鮮の砲兵部隊は最初の1時間で最大50万発の砲弾を韓国の首都ソウルに撃ち込めるとの声もあれば、より懐疑的な意見もある。
 また、北朝鮮が自国のミサイルと弾頭が狙われていると考えた場合、先手を打って発射してくる恐れがある。標的として最も可能性が高いのは日本だろう。
 いずれの行動も、米韓両政府による北朝鮮制圧に向け準備されたシナリオの発動を促し、恐らく北朝鮮の現体制は終焉を迎えることになるだろう。
 ここ数年、米韓両国軍は、北朝鮮の攻撃を阻止するための演習から、非武装地帯(DMZ)を越える全面的な侵攻作戦の立案へと関心を移している。
 これは本格的な作戦行動であり、近年の歴史において米国やそれ以外の国が戦ってきたどんな戦争よりも大規模なものになろう。攻撃部隊は山岳地帯、組織的な抵抗に加え、化学兵器や核兵器、放射線兵器といった潜在的な脅威に立ち向かわなければならない。
 いくつかの兆候からすると、米国は単に北朝鮮体制上層部を抹殺することで、戦闘激化を防ごうとするかもしれない。
 韓国の聯合ニュースによれば、今月の演習には米海軍特殊部隊シールズの「チーム6」も参加している。2011年にアルカイダの指導者だったオサマ・ビンラディン容疑者の暗殺を実行した部隊だ。引用された韓国軍幹部の発言によれば、チーム6は韓国側特殊部隊とともに、北朝鮮首脳陣に対する攻撃シミュレーションに取り組んでいるという。
 こうした選択肢の実行は非常に難しいだろう。北朝鮮の防空網によりヘリで部隊を送り込むのは困難で、金正恩氏は厳重に警護されていると見られている。
 今のところ正恩氏は、誰からも妨害されることなく核開発計画を強化していけると考えているようだ。だが米政府としても、それをただ指をくわえて見ているつもりはないかもしれない。
 トランプ氏は米国の歴代大統領のなかでも最も予測困難な人物の1人だ。北朝鮮に対する軍事的選択肢を行使するというリスクを冒すような米国の指導者がいるとすれば、それがトランプ大統領だったとしても不思議はない。
 厄介な選択だ。行動することが惨事の引き金になる可能性もある。だが、何もやらないままでは、さらに悲惨なものとなるかもしれない将来の紛争を招いたと、非難されることになるかもしれない。

*筆者Peter Appsはロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。
*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン) ≫(ロイター:コラム)


≪ 米空母、朝鮮半島へ 北朝鮮をけん制
【ワシントン=共同】米海軍当局者は8日、原子力空母カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群が、シンガポールから朝鮮半島に向け、同日、出航したと明らかにした。「朝鮮半島近くでのプレゼンス(存在感)を示すためだ」としている。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮をけん制する狙いがある。 米海軍第3艦隊によると、カール・ビンソンはオーストラリアへの寄港計画を変更した。米太平洋軍のハリス司令官が命令を出した。
 北朝鮮は最近、ミサイル発射やエンジン燃焼実験を繰り返している。5日にも弾道ミサイルを発射したが、失敗に終わったとみられる。
 第1空母打撃群は1月上旬、西部カリフォルニア州サンディエゴを出港。南シナ海などで活動し、米韓両軍の合同野外機動訓練などに参加。カール・ビンソンは3月15日にも韓国南部釜山に入港している。 ≫( 日経新聞 )

フォース・ターニング 第四の節目
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活中論 巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス
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欧州危機と反グローバリズム 破綻と分断の現場を歩く (講談社+α新書)
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●失敗経済政策 “アベノミクス景気” を分析する日経新聞の滑稽さ

2017年04月06日 | 日記
黒い巨塔 最高裁判所
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近代天皇論 ──「神聖」か、「象徴」か (集英社新書)
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世界一の会議 ダボス会議の秘密 (講談社+α新書)
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●失敗経済政策 “アベノミクス景気” を分析する日経新聞の滑稽さ

 アベノミクスが、経済指標等で判断する限り「アベノミクス景気」なのは間違いがない。しかし、好景気の実感がないのは何故か?と以下のように日経は頭を捻るが、日経自体が胸に手を当てて、自ら書いた記事の一つ一つを検証すれば、小さな嘘を沢山ついてきた積み重ねの結果、「アベノミクス景気」が創作されたわけで、日本経済の景気は幾ばくも好況ではなかったことが理解出来るはずである。今さら、実感が乏しいと不思議がるのは、奇妙で滑稽だ。

 仮に良い経済指標が出た場合、世界景気のお蔭で引き上げられた一時的現象であり、その好況の潮が引けば、自然消滅するので、何も日本独自の経済政策で云々はないことになる。また、アベノミクスが行った経済政策は、一時の好況を装う政策に終始しているわけで、その多くは、日銀の異次元緩和を代表とする如く、撤収策が何ら考えられていないものばかりであり、副作用の恐怖を、誰もが抱えている。

 また、内閣府の調査結果が代表的だが、安倍官邸の監視国家のような管理体制の下では、いまや、世界的語彙となった「忖度」が津々浦々まで浸透し、本当の姿を見せない「空気感」を官邸自ら醸成しているので、世論調査同様、「忖度含み」と云う数値が、公式のデータとして使用されるため、その答えは、常に実感とは程遠い数値をはじき出す。これが、好況を実感できない最大の原因なのは自明だ。日経は、実は判っているが、またまた「忖度分析」を垂れ流し、読者をミスリードしている。


 ≪アベノミクス景気、戦後3位の52カ月 実感乏しい回復
 2012年12月に始まった「アベノミクス景気」が、1990年前後のバブル経済期を抜いて戦後3番目の長さになった。世界経済の金融危機からの回復に歩調を合わせ、円安による企業の収益増や公共事業が景気を支えている。ただ、過去の回復局面と比べると内外需の伸びは弱い。雇用環境は良くても賃金の伸びは限られ、「低温」の回復は実感が乏しい。


  







 景気回復の期間を見る代表的な指標が景気動向指数だ。内閣府が7日に公表する2月の指数は景気が回復局面にあるとする「改善」になる見通し。専門家は「3月の経済情勢をみても、回復している」(第一生命経済研究所の新家義貴氏)との見方で一致する。
 第2次安倍政権が発足した12年12月に始まった景気回復は17年3月までで52カ月となった。86年12月~91年2月の51カ月間だったバブル経済期を抜き戦後3番目になる。今年9月まで回復すると、65年11月~70年7月の57カ月間に及んだ「いざなぎ景気」も抜く。
 14年4月の消費増税後は景気が一時的に落ち込んだ。しかし、景気回復の期間を判定する内閣府の研究会メンバーである三菱UFJモルガン・スタンレー証券の嶋中雄二氏は「落ち込みの深さや長さなど総合的に考えて景気後退までは至らなかった」と見る。
 米国が09年7月からの長期の回復局面にあり、海外景気も比較的安定していたことが、日本の景気回復を支えた。
 足元の景気は米国や中国をけん引役に、企業の生産や輸出が持ち直している。企業業績も底堅く「世界的な金融ショックなどがなければ、18年中は回復が続く」(新家氏)との声は多い。
 これまでの回復は緩やかで「低温」だ。戦後最長の回復期だった00年代の輸出は8割伸びたが、今回は2割増。設備投資も1割増と00年代の伸びの半分だ。賃金の伸びは乏しく、個人消費は横ばい圏を脱しきれない。
 「アベノミクス景気」を象徴するのが公共投資だ。東日本大震災からの復興予算や相次ぐ経済対策で、回復の期間中に1割ほど増えた。小泉政権の予算削減で3割減った00年代とは対照的だ。
 「低温」の背景には、中期的な経済成長の実力である潜在成長率の低下も背景にある。内閣府の推計で16年は0.8%。人口減少で労働力が増えず、企業が国内の設備投資に慎重なためで、景気回復の足腰が弱い。
 ≫(日経新聞)


増補 21世紀の国富論
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欲望の資本主義
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「国富」喪失 (詩想社新書)
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●忖度・そんたく・Sontaku 美徳と悪意なき犯罪社会の構成

2017年04月02日 | 日記
日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)
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岩波書店
超一極集中社会アメリカの暴走
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新潮社
希望の国の少数異見
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言視舎



●忖度・そんたく・Sontaku 美徳と悪意なき犯罪社会の構成

 “李下に冠”等と云う格言とは縁遠い、「ネトウヨ」の代表格のような男が、国会で、自分の女房の軽率な行いや、権力者の佇まいについて、世間は眉を顰めていると云うのが現状だろう。否、ネトウヨは資質の人間は、屁理屈を理屈だと思い込んでいるフシがある。その代表格である安倍晋三という男に、この辺の事情を説教することは、馬の耳に念仏以上に厄介だ。悪意の一休問答というか、子供の口喧嘩をディベイトだと思い込み、国会で朗々と語るのだから、もう、どうにもならない(笑)。

 「忖度のつけいる隙などあり得ない」と、忖度シャワーを浴びるに良いだけ浴びているご本人が、国会でぬけぬけと語って不思議とも思わないのだから、“何をか況や”だ。「忖度」とは、日本社会では、つけいる隙だらけで、おそらく、日本社会で起きている出来事すべてに、「忖度」が紛れている。籾井と云うNHKの会長がいたが、「政権が右だと言うのに左とは言えない」と云う発言は、馬鹿正直すぎたが、それが忖度日本病の本質を指摘しているのである。

 山本七平の「空気を読む」もしかり、儒教の精神も居残っている、理屈を言えば角が立つ、総論的には流れに身を任せるのが、今の日本社会を覆っていると云うのが事実だ。しかし、この社会的な病に、断固闘いを挑んでも、実際勝つことは皆無に近い。負け犬根性と云うより、冷静沈着に状況を判断すれば、ネトウヨ政権が自壊するまで、身を低く構えるのが賢明と、国民の総意があるのだろう。実は、これも空気の一種なのだ。

 安倍昭恵夫人の行動は、良人晋三の心を「忖度」して動くから、良人にプラスになるであろう行為に勤しむ。それを聞いた、役人等々は、表向き難しいと言いながら、裏で「忖度」を働かせ、事を為す。この流れにおいて、どこにも「忖度」等と云う印は押されていない。「忖度」と云う空気が覆いかぶさっているだけだ。司法である検察や裁判所も、当然、「忖度のニオイ」を感じるので、「忖度案件」として、流れ作業な司法判断をする。原発訴訟、沖縄の一連の訴訟など、この「忖度案件」そのもの、忖度は、法を凌駕するのだ。

 国会における状況も、忖度国会であり、与党連中も、安倍双六が終わるまで、ヌクヌクと居眠りする腹なのだろう。国会とは無関係な第二立法府、閣議において、エイプリルフールのような決定がバンバン決まっていくのだから、口あんぐり、ついつい笑ってはいけない事情なのだが、笑ってしまうような出来事が連続している。パン屋が和菓子屋になるのも気づかいの一種に違いない。いまに、見たことも聞いたこともない明治の遺物が、小学校の教科書を埋め尽くすに違いない。

 現代と隔絶した教科書を子供たちに学ばせ、グローバルだ、欧米的普遍的価値だ、TPPだ!どれ程安倍晋三に忖度しても、馴染まない。21世紀の笑い話だが、今後5年間くらい、この笑い話のような時代は続くのかもしれない。まさに「ブラックユーモア政権」である。まあ、その後から、次の政権が、またぞろ「閣議決定」で、一つ一つ潰す作業に大わらわになるに違いない。中学の武道に柔剣道の採用など悪夢でしかない。

 あまりにも糞のような決定ばかりで、ウンザリだが、まあネトウヨに政権を任せれば、こんなものだろう。日本の政治と云う観点から見れば、野党のふがいなさだが、野党の前に自民党自他の人材不足が致命的だ。安倍晋三の後継が稲田某女史では、幾らなんでも冗談が過ぎる。小池百合子に瞬時に追い抜かれることは、既に決定済みのように思われる。或る意味で、このような政治のダイナミズムも「空気」の一種と云える。おそらく、小池も相当に右巻きなのだが(笑)。

 ただし、右巻きと雖も“教育勅語を学校教育で使うことについて「勅語を我が国の教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切である」としたうえで「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」との答弁書を閣議決定しました。”なんて、厚顔無恥な決定はしないだろう。また、ネトウヨ安倍に取って代わる小池としては、反安倍政策に傾注するだろうから、中庸な政策を打つ可能性が高い。前置きが長くなったが、上述の考えを含めて、以下、フィナンシャルタイムのコラムも読んで貰おう。

 FTのコラムを読みながら、どこかピントがずれている感じがした。ネトウヨ晋三は、そもそも、「忖度」の世界に生まれた、「忖度塗れ」な子供なのである。つまり、彼の人生には「忖度」が常につきまとい、「忖度」なき世界を歩いたことがないのだから、「忖度」は彼にとって「空気」そのものかもしれない。ゆえに、「忖度」と云う言葉以上に、それを超越した「よどんだ空気」を吸うことに手慣れたネトウヨ政治家、そう云うことだろう。ただ、安倍も含めて、最近のネトウヨは、余りにも饒舌なのが命取りにも思える(笑)。


≪ [FT]Sontakuがつなぐ日本のスキャンダル
 一見したところ、スキャンダルまみれの幼稚園と、不正に水増しされた東芝の会計不祥事、クビになったニュースキャスター3人とを結びつけるものはほとんどない。だがめったに使われない日本語、「忖度(そんたく)、Sontaku」がすべてを解明し始めている。日常語彙とかけ離れたところから引っ張り出され、突如、表舞台に上がることを押しつけられた言葉だ。
 忖度は、与えられていない命令を先取りし、穏便に従うことを指す。この言葉は日本人に広く使われていないかもしれないが、政府、民間部門でいろいろな形で普及していることは、すべての人が本能的に知っている。忖度の概念は日本特有ではないものの、安倍晋三首相時代の日本を説明するうえで、これほど強力に響く言葉はそう多くない。
 忖度が日常会話に入り込んだタイミングは、政治スキャンダルと重なった。これは安倍氏と首相夫人を個人的に巻き込み、安倍氏のリーダーシップにとって、4年前の首相就任以来最大の長丁場になる脅威となっている。問題の根幹にあるのは、安倍昭恵首相夫人が名誉校長を務めていた学校の国家主義的な民間幼稚園が、評価額の数分の1という安値で国有地を払い下げられた取引だ。スキャンダルを受けて支持率が低下している安倍首相は、自分か夫人を取引と結びつける証拠があれば辞任すると約束し、反撃した。  この発言は、首相が以下を完全に理解していることを示唆する。忖度が働く仕組みと、そして安倍氏自身の明確な権力掌握が――7人の首相が次々誕生した後だけに、なおのこと目を引く――政府、官僚機構の間で忖度をよみがえらせていった点だ。
 忖度論者らは、土地を安く払い下げる命令の証拠が一つでも見つかる可能性は低いと話している。というのも、命令は、首相夫妻が優遇するかもしれない事案について一連の迎合的な臆測としてしか存在しないからだ。
 忖度が突如、新聞の見出しを独占し、推量による統治を通して腐敗した制度を暗示する中、安倍氏自身がこの言葉を使った。幼稚園のスキャンダルがなかなかおさまらない中で、同氏は27日、「忖度の働く余地は全くなかった」と断言している。
 忖度という言葉が一気に広まった今、人々はほかのところでも忖度が働いていることに気づき始めた。  昨年、3つのテレビ局で安倍氏に批判的だったニュースキャスター3人がほぼ同時に突如降板させられた件を分析しているメディアアナリストらは、忖度が原因だとみている。問題の局のジャーナリストらは、テレビ局の経営者は推し量るのがこれほどうまいのだから、何をしろと命令される必要もないと話している。安倍氏が政権を握って以来、厳しくなる制約を強いられたと感じ、腹を立てている多くの日本人ジャーナリストは内々に、「自己検閲」の同義語として忖度という言葉を使っている。

 ■権力の基盤を固めた直接的な結果
 一方、日本の産業界は強い最高経営責任者(CEO)を何百人も生み出しており、その多くもまた忖度を誘うオーラを備えていた。自動車部品大手の曙ブレーキ工業が2015年の利益水増しスキャンダルに関する報告書を発表したとき、そこで財務部門の人間による過剰な斟酌(しんしゃく)を公然と批判していた。
 深刻化する東芝の経営危機の分析も、忖度による説明から遠くないはずだ。13億ドルにのぼる全社的な不適切会計スキャンダルに関する東芝の社内分析は、名指しでこの現象に触れるところまでいかないが、遠回しに「上司の意向」と、その意をくむために実施された策略に言及し、忖度が働いたという紛れもないヒントを残している。
 多くの意味で、忖度は典型的な責任逃れだ――日本人が自己批判する際のリスト項目で、「集団思考」や「反射的服従」と並び、不正行為の言い訳だ。文化に根ざす説明がわき出る泉で個人の責任を薄めている。
 だが、決定的な違いは、忖度には権力の中枢を特定する紛れもない才覚を伴う。幼稚園の問題で実際に忖度が働いたのだとすれば、安倍氏が現在感じている戸惑いは、長年権力からの影響を完全に免れてきたように見える政治環境において、同氏がとてつもなく大きな個人的権力の基盤を固めた直接的な結果として解釈できるのだ。 By Leo Lewis
≫(2017年3月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/
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