世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

アベノミクスは必ず頓挫する しかし、交替要因の居ない永田町が安倍自民を助ける

2013年01月06日 | 日記
官僚の反逆 (幻冬舎新書)
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アベノミクスは必ず頓挫する しかし、交替要因の居ない永田町が安倍自民を助ける

 自民党政権になった途端に“経済”が活性化してきた、と声高に語る人々がいる。正確に表現するなら経済ではなく“相場”が活性化してきたと言うべきだろう。まぁ相場の活性化が経済全体に一定の影響を及ぼすのは事実だから、日本経済にとって、少なくとも悪いことではない。たまたまと言うべきだが、公共事業中心の財政出動と青天井の金融緩緩和で日本経済の再浮揚を宣言するアベノミクスと米国の“財政の崖”の一時の休戦が重なり、年末、年明けと、相場が活況をていしている。

 この偶然の重なりが、株式相場、為替相場の活性化に繋がっているのだが、筆者は主に米国の“財政の崖”の一時休戦が世界的に株式相場を押し上げていると読んでいる。為替相場は、そろそろチャート的にも円安方向が出て良い時期に差し掛かっていた時期であり、アベノミクスが引き金になったのだろうとみている。しかし、証券会社や為替を扱うエコノミスト達は当面、円は対ドルで90円を目指し、更に100円に向かうかもしれない。日経平均の方は13000円を目指す強い動きが見られる等々と元気溌剌である。

 水を差すわけではないが、国会が始まれば、アベノミクスの最大のアキレス腱、“財政健全化”の問題が大きく浮上する筈だ。何処からみても、アベノミクスは財政拡張路線だ。どんなに強弁しても、当面は財政均衡など望みえない財政赤字の拡大は確実だ。当然、安倍自民は経済の活性化により、GDPの引き上げ、その結果として税収増がある、と云うロジックを展開するのだろうが、税収がインフレターゲットとGDPの伸びに素直に連動する保証はなにもない。僅かなGDPアップと2%のインフレが現れたとしても、税収が伸びず、財政赤字だけが積み上がるだけであれば、今より国家の経済を好転させた事にはならない。

 投資マインドは一時的に盛り上がるだろうが、財政規律をどうするのか、殆ど安倍自身言及していないし、記者連中も質問しない。新規国債枠44兆円と一般会計歳出71兆円以下とした、今までの阿吽の約束は反故になるのだろうか。そうなれば、国債の信用度に問題が生じる。国債価格の値下がりと、長期金利(0.7%)が一気に上昇するリスクはかなり高い。現実は、アベノミクスが危険な賭けに挑んでいるということだろ。為替や株式相場は、思惑買いが主たる主戦場なので、経済活動としては、最も早く反応する。現在のマスメディアの報道姿勢も、単にその時の相場の数値を後追いし、煽っているに過ぎない。つまり、財政不均衡という不安の部分は後日ゆっくりと俎上に上ることになるだろう。

 兎に角、安倍自民党にすれば、夏の参議院選までは、安全運転、ボロは出さないだけの内閣の布陣を敷いた。たしかに民主党の菅や野田内閣の布陣に比べれば安定感は感じる。そして、経済の停滞が好転した実感と云う結果を持って、有利に選挙戦を戦い、参議院のネジレ解消に繋ごうと試みている。短期の戦術として、まことに的を得ているのだが、経済指標と生活実感の間に齟齬や乖離が出たり、理屈を上回る物価上昇が生活者を直撃するかもしれない。特に、急激な円安は、日常的消費を直撃する可能性は高い。米国経済の好転傾向は、原油、穀物相場上昇のリスクを抱えており、更なる日常品の物価上昇に油を注ぐ可能性がある。

 つまり、株高、円安を演出して、幸先の良いスタートを切った安倍自民だが、国会が始まる辺りから、財政規律中心の議論で立ち往生する場面が多く見られそうだ。その危機を逃れるために、安倍自民は霞が関との対決を放棄、改革のすべてを放り投げる恭順の意を官僚達に対して行い、知恵を出せと催促するだろう。勿論、米国、経済界にも同様の恭順の意を示そうとしている。この、官僚と米国と経団連の顔色を見て政治を行う安倍晋三が、一部右翼的言説で喝采を送っている勢力のエールに応える政策は論理矛盾がある。官僚も米国も経団連も、憲法改正も、強行な対中外交、対韓外交など望んでいないのだから、自明だ。

 ブログ等々で元気の良い人々の殆どが、中国と韓国を極端に嫌っている。それに立ち向かう素振りをしている安倍晋三を、強烈に支持しているのだが、そのような行動を全く見せない安倍自民に、いつ苛立つのだろうか?多くの識者も、参議院選で安倍自民が勝利するシミュレーションを行ったり、公明を捨て維新・みんなと組めば、憲法改正の道筋も等と言っているが、安倍自民はバックボーンから考えても、そんなに右派な政策に手を伸ばせるわけがない。経済浮揚策の実現で手一杯になるだろう。経済浮揚の実績が見えるのも、今年の夏なのか、冬なのかで、参議院選の結果も出るだろう。もしかすると、安倍内閣の経済浮揚策そのものが実現せず、かえって酷い経済情勢を引き起こすかもしれない。

 だからといって、その安倍自民に替わるべき政党がバラバラである以上、意外に生き永らえる可能性もある。本来であれば、政権放り投げになりそうな場面であっても、替わり得る政治勢力が存在しなければ、交替させようがない。現野党の顔ぶれをみると、民主は政党壊滅保全に必死の状態だし、維新は甚だしい同床異夢だし、みんなも今ひとつ動きに精彩がない。生活の党は、小沢のカリスマ性の点で、まとめ役になれる雰囲気でもない。安倍自民を追い込む勢力が存在しない。今後の政局がどのような動きを見せるのか、現時点では政界再編シミュレーションは無理矢理だし、意味がない。


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