ここ数日の間にも色んなニュースが流れて来ましたが、ブログ更新がそれに追いついていません。書かなければという気持ちはあるのですが、最初の書き出しの第一歩がなかなか踏み出せず、ついついネットサーフィンで気を紛らわしてしまう。これは、文章を書くという事に対して、私の中に、ついつい構えてしまう様な所があるからなのかも知れません。
今回の薬害肝炎訴訟のニュースもそうです。このニュースについても最初の第一歩がなかなか踏み出せませんでしたが、少し気掛かりな事があって、今までずっとこのニュースには注目していました。
・クローズアップ2007:薬害肝炎、議員立法で「一律救済」 首相、求心力回復狙う(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071224ddm003040070000c.html
・クローズアップ2007:薬害肝炎・和解交渉決裂 首相縛った官の論理(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071221ddm003040086000c.html?inb=yt
・薬害C型肝炎訴訟「命の線引きが残った」(JANJAN)
http://www.news.janjan.jp/government/0712/0712207618/1.php
・薬害肝炎(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%AC%E5%AE%B3%E8%82%9D%E7%82%8E
・薬害肝炎訴訟全国弁護団HP
http://www.hcv.jp/(トップ)
http://www.hcv.jp/chronology.html(関連年表)
・検証C型肝炎シリーズ&スペシャル(フジテレビ・ニュースジャパン)
http://www.fujitv.co.jp/newsjapan/hcv/
・薬害C型肝炎は厚労省とミドリ十字の犯罪(現役雑誌記者によるブログ日記!by オフイス・マツナガ)
http://officematsunaga.livedoor.biz/archives/50476561.html
・ミドリ十字(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%89%E3%83%AA%E5%8D%81%E5%AD%97
少しあった気掛かりな事というのは、薬害肝炎被害者バッシングに対する懸念です。今でこそ薬害訴訟原告団が国や製薬企業を追い詰めていますが、いずれ国・企業が巻き返しに出てきて、そのうちに大規模なバッシングを仕掛けてくるのではないかと。イラク日本人人質事件や拉致被害者家族会バッシングの時の様に。
今回の薬害C型肝炎訴訟で国・製薬企業に問われているのは、当事者として薬禍防止の対策を講じなかったという、不作為の過失です。これは薬害エイズの場合と全く同じ構図です。60~70年の製造開始以来、肝炎ウィルスが混入した血液製剤(フィブリノゲン及び第9因子製剤)をずっと製造し続け、その後に米国で問題が発覚して製造中止に追い込まれてからも、自らの天下り先・政治献金元でもある製薬企業を慮って、何ら有効な手立てを講じなかった末に、86年に日本でも問題が発覚するに至って、ようやく加熱製剤への切替などの対策が講じられる様になりました。
それに対して、その薬を使用してC型肝炎を発症した患者が、国と製薬企業(三菱ウェルファーマ・日本製薬)を相手取って、東京・大阪・福岡・名古屋・仙台の各地裁に損害賠償訴訟を提訴し、その第一審判決が出揃いました。しかしその内容はというと、仙台判決では国は免責され企業責任だけしか認められず、その他の4地裁判決では国・企業双方の加害責任が認められ原告勝訴となったものの、その責任範囲や賠償額はまちまちで、製造段階から不作為の過失を認めたものから責任範囲を80年代の発症患者のみに限定したものまである有様でした。当然の事ながら原告団は、「同じ薬害被害者を線引きするもの」と糾弾の声を挙げていきました。
この時点では国は、最悪の場合、仙台判決を引合いに出して控訴する事も在り得た訳です。国が今回そうせずに(したくても出来ずに)政治決着での和解に歩みだしたのは、一つには原告団とそれを後押しした世論の力によるものです。そこには当然、参院選での与党大敗北、その後の安倍退陣や、次の福田・現内閣もそれに有効に対処出来ずに支持率急落を前に逡巡しているという、現在の政治情勢が作用しています。後期高齢者医療制度導入・生活保護切り下げの一部凍結や、震災被害者生活再建支援法の成立などと相まって、これまで二十年来以上にわたってネオコン・ネオリベに好い様にあしらわれていた庶民が、ようやくここに来て反撃に転じつつあるというのが、今の政治情勢なのです。
しかし、薬害肝炎訴訟原告が闘っている相手方製薬企業というのが、一癖も二癖もある企業なのが、少し気掛かりなのです。何故なら、相手方企業の三菱ウェルファーマの前身というのが、薬害エイズ訴訟の時もさんざん悪名を轟かせた、あのミドリ十字なのですから。
このミドリ十字こそが、何を隠そう、戦時中に満州で中国人捕虜を細菌兵器の生体実験で虐殺した、あの旧日本軍731部隊の幹部が中心になって作った企業なのです。生体実験のデータを戦後米軍に売り渡したのと引き換えに戦犯追及を逃れ、同じく戦犯追及を逃れた旧政治家・厚生官僚の庇護の下で作られたのが、この会社です。そして、歴代厚生官僚がこの会社に天下りを繰り返して、政・官・財癒着構造の一角を形作ってきたのです。
薬事行政の闇をとことん追及していくと、必然的にこの構造の解明にぶち当たざるを得なくなります。これは引いては、戦犯政治家が、反共冷戦政策の下で戦犯追及を免れ、戦後もしぶとく政権中枢に居座り続け、この十数年来の右傾化風潮の中で次第に復活を遂げてきたという、今の日本の政治体制の闇をも同時に炙り出す事にもなりかねません。国としては、それだけは何としても避けなければならない。
だから、世論の手前もあって政治決着のポーズだけは取り繕いながらも、その実のらりくらりと問題をやり過ごして、何とか「カネの問題」だけで決着を図ろうとしているのではないか。そして、問題をC型肝炎被害の範囲だけに止め、B型肝炎・血友病患者の問題や、輸血や予防接種に伴う感染問題は、完全に視野の外に閉め出してしまおうとしているのではないか。
この事は、「被害者を線引きするな」という原告の怒りに対して町村官房長官が垣間見せた「司法の立場をどう考えているのか」という、まるで「お上のやる事には口出しするな」と謂わんばかりの恫喝的コメントにも、その片鱗が窺えます。
今俄かに浮上してきた議員立法による救済策にしても、首相の一存で全員救済すればそれで済むのに、何でそんなまだるっこしい手を使うのか。先手を打って、患者原告団・支援者や野党・国民をあわよくば財源問題に引きずり込んで、アメとムチで問題をウヤムヤにしてしまう魂胆ではないのか。そうこうしているうちに、頃合を見計らって逆に原告団バッシングを仕掛けてくるのではないか。そういう気がしてなりません。
これ以上社会保障を削られたくなければ消費税を上げさせろ。自治体が交付金を貰いたければ米軍基地の再編・拡充に協力せよ。正社員に留まりたければホワイトカラー・エグゼンプションで仕事の成果を上げよ。警察に逮捕されたくなければ政府批判のビラなど撒くな・・・等々。そういう世に中になりつつある中で、薬害肝炎問題だけは政府がそう簡単に引き下がるとは、到底思えないのです。
掴み金が欲しければ政府主導の和解案や議員立法に従え。言う様にしなければ遠慮なくバッシングを仕掛けるぞ、と。これが杞憂に終われば良いのですが。
今回の薬害肝炎訴訟のニュースもそうです。このニュースについても最初の第一歩がなかなか踏み出せませんでしたが、少し気掛かりな事があって、今までずっとこのニュースには注目していました。
・クローズアップ2007:薬害肝炎、議員立法で「一律救済」 首相、求心力回復狙う(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071224ddm003040070000c.html
・クローズアップ2007:薬害肝炎・和解交渉決裂 首相縛った官の論理(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071221ddm003040086000c.html?inb=yt
・薬害C型肝炎訴訟「命の線引きが残った」(JANJAN)
http://www.news.janjan.jp/government/0712/0712207618/1.php
・薬害肝炎(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%AC%E5%AE%B3%E8%82%9D%E7%82%8E
・薬害肝炎訴訟全国弁護団HP
http://www.hcv.jp/(トップ)
http://www.hcv.jp/chronology.html(関連年表)
・検証C型肝炎シリーズ&スペシャル(フジテレビ・ニュースジャパン)
http://www.fujitv.co.jp/newsjapan/hcv/
・薬害C型肝炎は厚労省とミドリ十字の犯罪(現役雑誌記者によるブログ日記!by オフイス・マツナガ)
http://officematsunaga.livedoor.biz/archives/50476561.html
・ミドリ十字(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%89%E3%83%AA%E5%8D%81%E5%AD%97
少しあった気掛かりな事というのは、薬害肝炎被害者バッシングに対する懸念です。今でこそ薬害訴訟原告団が国や製薬企業を追い詰めていますが、いずれ国・企業が巻き返しに出てきて、そのうちに大規模なバッシングを仕掛けてくるのではないかと。イラク日本人人質事件や拉致被害者家族会バッシングの時の様に。
今回の薬害C型肝炎訴訟で国・製薬企業に問われているのは、当事者として薬禍防止の対策を講じなかったという、不作為の過失です。これは薬害エイズの場合と全く同じ構図です。60~70年の製造開始以来、肝炎ウィルスが混入した血液製剤(フィブリノゲン及び第9因子製剤)をずっと製造し続け、その後に米国で問題が発覚して製造中止に追い込まれてからも、自らの天下り先・政治献金元でもある製薬企業を慮って、何ら有効な手立てを講じなかった末に、86年に日本でも問題が発覚するに至って、ようやく加熱製剤への切替などの対策が講じられる様になりました。
それに対して、その薬を使用してC型肝炎を発症した患者が、国と製薬企業(三菱ウェルファーマ・日本製薬)を相手取って、東京・大阪・福岡・名古屋・仙台の各地裁に損害賠償訴訟を提訴し、その第一審判決が出揃いました。しかしその内容はというと、仙台判決では国は免責され企業責任だけしか認められず、その他の4地裁判決では国・企業双方の加害責任が認められ原告勝訴となったものの、その責任範囲や賠償額はまちまちで、製造段階から不作為の過失を認めたものから責任範囲を80年代の発症患者のみに限定したものまである有様でした。当然の事ながら原告団は、「同じ薬害被害者を線引きするもの」と糾弾の声を挙げていきました。
この時点では国は、最悪の場合、仙台判決を引合いに出して控訴する事も在り得た訳です。国が今回そうせずに(したくても出来ずに)政治決着での和解に歩みだしたのは、一つには原告団とそれを後押しした世論の力によるものです。そこには当然、参院選での与党大敗北、その後の安倍退陣や、次の福田・現内閣もそれに有効に対処出来ずに支持率急落を前に逡巡しているという、現在の政治情勢が作用しています。後期高齢者医療制度導入・生活保護切り下げの一部凍結や、震災被害者生活再建支援法の成立などと相まって、これまで二十年来以上にわたってネオコン・ネオリベに好い様にあしらわれていた庶民が、ようやくここに来て反撃に転じつつあるというのが、今の政治情勢なのです。
しかし、薬害肝炎訴訟原告が闘っている相手方製薬企業というのが、一癖も二癖もある企業なのが、少し気掛かりなのです。何故なら、相手方企業の三菱ウェルファーマの前身というのが、薬害エイズ訴訟の時もさんざん悪名を轟かせた、あのミドリ十字なのですから。
このミドリ十字こそが、何を隠そう、戦時中に満州で中国人捕虜を細菌兵器の生体実験で虐殺した、あの旧日本軍731部隊の幹部が中心になって作った企業なのです。生体実験のデータを戦後米軍に売り渡したのと引き換えに戦犯追及を逃れ、同じく戦犯追及を逃れた旧政治家・厚生官僚の庇護の下で作られたのが、この会社です。そして、歴代厚生官僚がこの会社に天下りを繰り返して、政・官・財癒着構造の一角を形作ってきたのです。
薬事行政の闇をとことん追及していくと、必然的にこの構造の解明にぶち当たざるを得なくなります。これは引いては、戦犯政治家が、反共冷戦政策の下で戦犯追及を免れ、戦後もしぶとく政権中枢に居座り続け、この十数年来の右傾化風潮の中で次第に復活を遂げてきたという、今の日本の政治体制の闇をも同時に炙り出す事にもなりかねません。国としては、それだけは何としても避けなければならない。
だから、世論の手前もあって政治決着のポーズだけは取り繕いながらも、その実のらりくらりと問題をやり過ごして、何とか「カネの問題」だけで決着を図ろうとしているのではないか。そして、問題をC型肝炎被害の範囲だけに止め、B型肝炎・血友病患者の問題や、輸血や予防接種に伴う感染問題は、完全に視野の外に閉め出してしまおうとしているのではないか。
この事は、「被害者を線引きするな」という原告の怒りに対して町村官房長官が垣間見せた「司法の立場をどう考えているのか」という、まるで「お上のやる事には口出しするな」と謂わんばかりの恫喝的コメントにも、その片鱗が窺えます。
今俄かに浮上してきた議員立法による救済策にしても、首相の一存で全員救済すればそれで済むのに、何でそんなまだるっこしい手を使うのか。先手を打って、患者原告団・支援者や野党・国民をあわよくば財源問題に引きずり込んで、アメとムチで問題をウヤムヤにしてしまう魂胆ではないのか。そうこうしているうちに、頃合を見計らって逆に原告団バッシングを仕掛けてくるのではないか。そういう気がしてなりません。
これ以上社会保障を削られたくなければ消費税を上げさせろ。自治体が交付金を貰いたければ米軍基地の再編・拡充に協力せよ。正社員に留まりたければホワイトカラー・エグゼンプションで仕事の成果を上げよ。警察に逮捕されたくなければ政府批判のビラなど撒くな・・・等々。そういう世に中になりつつある中で、薬害肝炎問題だけは政府がそう簡単に引き下がるとは、到底思えないのです。
掴み金が欲しければ政府主導の和解案や議員立法に従え。言う様にしなければ遠慮なくバッシングを仕掛けるぞ、と。これが杞憂に終われば良いのですが。
>わずか3日後に“政治決断”ができるのであれば、なぜ20日の段階で“政治決断”できなかったのだろうか。何のことはない。福田首相は、世論のあまりの反発に驚いたのである。ただそれだけのことだ。<(白川勝彦「永田町徒然草」)
http://www.liberal-shirakawa.net/tsurezuregusa/index.php?itemid=446
上記の評価にほぼ尽きるのではないか、と。それで一時は騙せたとしても、ウソはいつかばれます。その時には、偽善のツケは、倍返し以上になって、当人たちに跳ね返って来るでしょう。
>裁判でも争われている事項に「政治決断」と称して首相が介入し、勝手に結論を下していたならば、「首相が判断したことならば司法のそれとかけ離れていてもOK」という前例になり、今後、内閣は「政治決断」を盾に司法・立法の決定を無視することも可能になる。
一見すれば尤もらしく聞こえる理屈だが、少し考えると矛盾点が一杯出て来る。
まず第一に、「首相が介入」と言うが、国も当事者被告の一方として、原告から国賠訴訟を起こされている。その当事者たる国が控訴する・しないを決めるのは、あくまで自身の裁量権に属する問題。控訴するのもしないのも、謂わば国の勝手。「控訴しないから法治主義に反する」とかいう問題ではない。
そして第二に、「政治決断」とは普通、今回の薬害訴訟の様に、国が絡んだ補償問題において、原告・被告双方の対立が膠着状態に陥った時に、被害者救援を最優先に考えて、国の方から譲歩する場合を指す。今までの法律論の経緯を超えて(超法規的に)。だから「英断」だと言われるのだ。
あくまでも「当事者救済を最優先に考えて、被告側の国が譲歩する」という事に意味があるのであって、「その手続きが適法か否か」というのは、それに付随する問題でしか無い。
つまり「政治決断」とは、例えば法的には30万円の補償義務しか無い所を、被災者の事を考えて50万円の補償をした場合に使われる言葉であって、それを20万円に値切ったり丸々踏み倒したりした場合には、それは完全な違法行為、「政府の暴走」行為でしか無く、「政治決断」とは言わない。「法治主義」云々とは全く次元の違う問題。
第三に、「首相が判断したことならば司法のそれとかけ離れていてもOK」という事について。一番重要なのは「かけ離れている事の中身」。その問題抜きに、単に「かけ離れているからダメ」と言うのであれば、裏返せば「かけ離れてさえいなければ良いのか」という事になってしまう。つまり、ヤラセ・タウンミーティングでも強行採決でも、「兎に角法律さえ通してしまえばそれでOK」という事に。そんなものは「悪しき法治主義」でしかない。
>政府の暴走を許す契機にもなり得る手法ではなく、法的安定性にも意を注いだ救済策を提案した福田首相の今回の手法は法治国家であることを十分に意識した冷静な判断によるものと高く評価したい。
では、その「法的安定性にも意を注いだ救済策」を、何故最初から目指さず、今まで長い間、薬害訴訟原告団と争ってきたのか?ひたすら国の責任回避する事しか眼中に無かったからではないのか。それが次第に通用しなくなり、追い詰められた挙句に、しぶしぶ責任を認めざるを得なくなっただけじゃないか。そんなものは「冷静な判断」でも何でもない。