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アクリフーズこそが最大のテロリスト

2014年01月29日 22時30分38秒 | 職場人権レポートVol.3


 アクリフーズ群馬工場での農薬混入事件の容疑者として逮捕された元契約社員が連日マスコミに叩かれまくっています。まあ、やった事がやった事なので叩かれても仕方ないし、私もこの容疑者の顔写真をニュース等で見て「変な奴だなあ」と思っていました。しかし、その一方で、容疑者が勤務先での待遇の悪さを口にしているのに、会社の記者会見やニュースではその具体的な内容が全然報道されないので、「どうも胡散臭い。実際は会社もとんでもないブラック企業だったのでは?」という疑いをずっと抱いていました。
 
 そうしたら、やっぱり出てきました。週刊新潮や日刊ゲンダイ、NEWSポストセブン等が、アクリフーズの労働実態について取材していました。その中から、1/30日付週刊新潮の記事で取り上げられていた内容を抜き書きしました。下記にリンクも張っているので、元の記事も是非読んでみて下さい。

●アクリフーズの旧社名は雪印冷凍食品。元々は雪印本社の冷食部門だったのが、グループ会社の食中毒事件を機に子会社化を経てマルハニチロの系列に。
●4年前にマルハ本社から出向してきた製造課長が大幅なコストダウンを断行。それまで牧歌的だった社風が急に殺伐としたものに。
●ラインの回転が速くなり、あわただしくなった。各ラインの実績が張り出され、破損個数を何個出したか反省文も提出させられる様に。
●残業も月80時間超に(←厚労省が過労死ラインとして労災認定の目安としているレベルでもある)。ノイローゼになり辞めていった人も。
●1日2000円の早番手当、同1000円の遅番手当、皆勤手当、有休買上げ制度、準社員の退職金も廃止に。時給は820円から900円に上昇も、全体としては大幅な賃下げに。(また別の情報では、昔あった年間10~20万円の賞与も廃止に)
●この製造課長が曲者で、機械のトラブルがあったりすると、工場内に響き渡る様な大声で「何やってんだ!」と。工場長も実際はこの課長の言いなり。去年4月に課長が異動になって以降も体質はさして変わらず。

 また、アクリフーズの実際の労働条件についても、ジョブセンスリンクに掲載されていたハローワーク館林(群馬県)掲出の募集内容を下記に抜き書きしておきます。こちらも同じくリンク先をたどって元のサイトにも是非アクセスしてみて下さい。

●職種:冷凍食品(ピザ・グラタン等)の製造・包装。立ち仕事で体力・集中力を要す。ある程度の訓練期間が必要。
●賃金:
 時給900円、基本給(月平均)142,425円。他に通勤手当が実費支給で上限なし。
 (昔は時給こそ820円と安かったものの、これに各種手当が付き、月約20時間位の残業で17~25万円位にはなっていたらしい)
●勤務時間:
 交替制で5:00~23:00の間の7時間以上。別の募集要項では5:00~13:30、7:00~15:30、13:30~22:00の三交替となっていた。
 毎日1時間の休憩を除くと1日実働7.5時間となり、先の月平均基本給の金額とも概ね一致する。
●休日等:
 日曜とそれ以外の1日による変則週休2日制。週休は会社カレンダー(勤務ローテーション)により交替で取得。年間休日113日。他に育児休暇あり。
●その他:
 4ヶ月ないし6ヶ月の契約更新の繰り返しによる有期雇用の契約社員で、社会保険には加入。2週間の試用期間も賃金は同額。
 農薬混入事件で通常業務がストップするまでは毎年大量募集を繰り返していたらしい。

 これを見ると、昔は時給こそ820円と安いものの、各種手当がついて昔は月17~25万円、年300万円もの収入があったようです。私からすると、もはやワーキングプアというより中流下層とも言うべき待遇で、羨ましい限りです。でも、それは独身者の私だから言える事であって、所帯持ちの中年男性にとっては、これでも相当生活は苦しかっただろうと思います。
 しかも、悪賢い事に、時給(基本給)部分は相当低いのに、手当やボーナスで思いっきり水増しして、それで何とか生活していけるようにしている。手当やボーナスが幾ら多くても、そんな物は只の賞与(ご褒美)にしか過ぎず、会社の業績悪化を口実にどの様にも引き下げられるし、退職後にもらう年金も、算定の基礎になるのはあくまで基本給だけなので、もらえる年金額もホンの僅かになってしまう。でも、当座の手取りはそんなに悪くないので、みんなそこで満足してしまうのです。まるで、猿にやるエサを朝三つから四つに増やしたら総量は変わらないのに感謝されたという、「朝三暮四」の故事さながらに。如何にも「雪印」の考えそうな事です。

 しかし、その「牧歌的な社風」も、雪印の食中毒事件を機に、M&A(企業買収)でマルハニチロの子会社になった途端に、コストダウンの嵐に翻弄されるようになります。鬼の製造課長によって時差出勤手当等が全てカットされて、年収は300万から200万へと大幅ダウン。もっとも、基本給だけでは年収200万円すらいかないので、多分これは残業代や通勤手当も含めての額なのでしょう。それでも今の私と同じ給与水準で、しかも通勤手当は満額実費支給と、私よりはまだ恵まれている。私は時給こそ変わらないものの、通勤手当は月1万円が上限ですから。
 でも、それも独身で実家住まいの私だから言える事であって、妻子もいて公共料金の支払いもあるのに、年収200万では到底無理でしょう。幾ら時給が900円に引き上げられた所で、これでは「焼け石に水」にもなりません。さしもの「朝三暮四」も、もはや通用しませんでした。

 マルハニチロと言えば、一説によると、北洋漁業の船の中で奴隷の様にこき使われていた労働者がついに立ち上がる様を描いた、あの戦前のプロレタリア小説「蟹工船」のモデルにもなった会社だそうですが、21世紀になった今も会社の体質はさして変わらないようです。
 しかも、工場の所在地が群馬県大泉町。三洋電機の元企業城下町で、職を求めてやってきた日系ブラジル人が町民全体の1割を超える「日本のブラジル」。コンビニやスーパーの店内表示も、日本語・ポルトガル語の二ヶ国語で記される土地柄。研修生・実習生と偽り、外国人を時給400円程度の違法な低賃金で働かせる会社もある中で、群馬県の最低賃金を上回る時給900円もくれるなら、逆に「恵まれている」と評価されかねないのでしょう。
 日本の最低賃金なんて今や先進国の中では最低水準で、未だに時給千円以下なのは日本ぐらいなのに。しかも、その上に長時間労働やサービス残業で過労死するまで働かされても、ストライキも全然せずに、逆に「日本人は何て偉いんだ」と慰め合っている姿の、何ていびつな事か。

 そう考えると、あの容疑者も何か可哀想に思えてきました。最初は「いい歳した妻子持ちの大人が、子供みたいにアニメのコスプレにはまって、改造バイクに100万円もつぎ込んでバカみたい」と思っていましたが、それを維持する為に新聞配達の仕事も掛け持ちしていたのでしょう。私みたいにインターネットやブログをする訳じゃなし、他に何の楽しみもないのに、コスプレぐらいしたって別に悪くないじゃん。「表現の自由」は憲法でちゃんと保障されているんだし。改造バイクで排気ガスや騒音をまき散らかすのはさすがに戴けませんが、それをダメだと言うのなら、周囲の迷惑も顧みず大音量で都心を走り回る右翼の街宣カーは一体どうなる。あれを警察がロクに取り締まらないのに、改造バイクにばかり目くじらを立てるのは不公平ではないか。

 それでも、やはり、あの容疑者にも問題は大有りなのは確かです。前に働いていた自動車整備会社でも、待遇への不満のはけ口として、不良品を製品に混入させていたそうですし、アクリフーズでも「直ぐにキレるトラブルメーカー」として有名だったそうです。農薬混入については、どんな事があろうと言い訳は出来ません。まかり間違えれば死者も出る恐れがあったのですから。
 でも、それも「ブラック企業」だから仕方ないじゃん。この際、敢えて言いますが。ロクに労働者を人間扱いしない様な会社に、誰がまともに来るか。そんな会社でも他にまともな仕事がないから、みんな渋々来るのじゃないか。その中に、たとえロクに仕事をしない人間が少なからず混じっていたとしても、誰がそれを責められる?かつて中国の冷凍餃子事件が起こった時に、あれは中国の特殊事情で日本では起こり得ないと、白ばっくれていた御用評論家は、今頃どんな気持ちでいるのだろうか?

 実は、うちの会社にも、そんなトラブルメーカーがいます。私の前方不注意による職場内での事故に託けて、慰謝料まで要求してきたヤクザまがいのトラブルメーカーに対して、会社は諌めるどころか、「第三者行為」を口実に労災隠しに走りました。たまたま私が一人でも入れるバイト労組に加入していて、組合が労基署にかけあってくれたから良かったものの、もし入っていなかったら一体どうなっていたか。
 アクリフーズの記者会見で、「待遇への不満なぞ何も聞いていない」「容疑者にも何も心当たりはなかった」という工場長の発言を聞いて、私は無性に腹が立ちました。私に対して労災逃れに出てきた、うちの会社の当時の所長と全く一緒じゃないか!

 ブラック企業には、社員や経営者もロクな人間はいない。いても少数です。だから、行き当たりばったりの仕事しか出来ないし、業務改善や待遇改善を図ってそこから抜け出そうとする意欲もない。上の目ばかり気にして下の意見を全然聞かず。「どう改善するか」ではなく「どうやり過ごすか」ばかり考える。バイトには偉そうにガーガー言うくせに、自分たちは朝礼も平気ですっぽかし、問い詰められても言い訳ばかり。そのくせ、先のマルハニチロの破損個数の反省文の様に、何でも下の個人だけに責任をなすりつける技術だけは一人前。
 それでも、一応は大企業の物流センターなので、構内に安全標語や安全ポスターの類は一杯張ってあります。でも、あれも全てアリバイ工作。それを使いこなす能力も意欲も、実際にそこの業務を請負う下請けブラック企業にはありません。業務発注者の大企業もそれを見て見ぬふり。恐らく、安全ポスターや財務状況、株価等の「見てくれ」さえ良ければという考え方なのでしょう。アクリフーズやマルハニチロや雪印も、多分同じ様なものでしょう。
 そんな企業が、自分の事を棚に上げて、労働者個人だけを悪者にして、「テロ防止」や「監視強化」を言うに至っては、もはや論外です。ブラック企業こそが最大のテロリストです。そんな企業に、労働者をテロリスト呼ばわりする資格なぞ微塵もありません。

 
(参考記事)
・「冷凍食品」農薬混入犯の動機は過酷労働!?「アクリフーズ」工員を締め付けた鬼の「製造課長」(週刊新潮)
 http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/newest/
・ジョブセンスリンクに掲載されていたアクリフーズの求人情報(現在は掲載中止)
 http://job.j-sen.jp/hellowork/job_6386855/
・02年に社名変更 アクリフーズの隠蔽体質は雪印の“亡霊”(日刊ゲンダイ)
 http://gendai.net/articles/view/newsx/147094
・アクリフーズとカネボウ化粧品に共通する「負の遺産M&A」の落とし穴(BLOGOS)
 http://blogos.com/article/77584/
・アクリフーズ - Wikipedia
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%95%E3%83%BC%E3%82%BA
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9 コメント

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ブラック把握の必要性 (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2014-01-29 23:01:56
ブラック企業根絶は重要かつ緊急な政治課題です。

しかし、そのためには、具体的事実の具体的分析が必要でしょう。企業経営の実態にそくした対応が必要なのです。

内部留保を270兆円も貯め込み、その上にまだタック
スヘイヴン地域を悪用して150兆円内外の利益隠しを続けている大企業が行うブラック経営は、早急に糾弾・是正しなければなりません。

しかし一方、下請け構造などによって上記のような大企業との不平等な取り引き関係を強要されている中小零細企業や、不況下での激烈な企業間競争にさらされている弱体企業のブラック化については、総合的で根幹的な解決方向が模索されなければならないでしょう。そういう弱小企業は、7割もの企業が法人税さえ払えないほど経営を圧迫され困窮しているのですから。

やはり、小手先の改良策や特効薬では無力なのです。

そもそも、経営が弱体化してブラック化しているような企業の一定部分には、果たして企業として本当に必要性や正当性が存在しているのかという点さえ疑問になるケースがあるのです。
資本主義経済におけるスクラップ&ビルドは、企業間競争の強制のみならず、業種・業界自体の存立を丸ごと脅かすような場合もあるからです。

例えば構造不況業界。「業種崩壊分野」と言い換えても良いでしょうか。
フィルム業界などが良く知られています。
デジタル技術化の進展による市場消滅傾向で、コダックやフジは業務転態や廃業を余儀なくされました。こういう場合も、それらの企業で働く労働者にはしわ寄せが押し付けられます。しかし、そういう企業や企業で働く労働者を政治的に救済することはそう簡単ではありません。そこには旧ソ連や中国での国営企業の解体とも通ずる側面があるからです。オレの知る音響映像機器製造分野などでもそういう例はあります。個別企業どころか業界全体が丸ごと淘汰されてしまったようなケースです。
こういう業界でも企業寿命の末期にはブラック状態が蔓延します。労働組合などが経営を肩代わりして頑張っても、ペトリも山水も企業再建は出来ませんでした。

そう、この世には、「資本主義の枠内での改革」政策が無力な場合もあるのです。
ブラック経営を社会から一掃するためには、やはり資本主義を超え出る社会システムを創り出すしか方法が無い場合もある、ということでしょう。

まこさんの所で提案した生協、岩波研究、一緒に始めませんか?
オレは、資本の有機的構成の上昇欲求が希薄な、生産性向上運動に乏しい、流通やサービス部門には、共産党的処方箋の射程内に無いブラック経営の必然性が潜んでいるはずだと想像しているのです。
返信する
Re:生協、岩波研究 (プレカリアート)
2014-01-30 06:20:34
>まこさんの所で提案した生協、岩波研究、一緒に始めませんか?

岩波もブラック企業だったんですか?!まあ、出版社もTVドラマ「働きマン」の舞台になった位ですから、さもありなんとは思いますが。で、具体的に私は何をすれば良いのですか?
返信する
ブラック企業や賃労働制度を (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2014-01-30 08:48:57
死滅、廃絶させるためには、そのための一定の経済的土台水準と、それに着眼してそれを制御する意思をもつ政治・政策が必要だと思います。

しかし、マルクスの19世紀的理論到達点を超え出ようとしない、教条主義的・非弁証法的な現在の左翼・労働運動は、資本制経済が強制する資本間競争や蓄積のための蓄積衝動には眼を向けますが、製造業雇用が少数化した現代資本主義経済に固有・特有の「資本の自己批判」を看過していますから、それでは事態の打開や大幅改善は無理でしょう。

この問題では、今日的な解明課題が突きつけられているのです。そう、現代の「根」の問題です。

生協や岩波書店でブラック化が起こることにも、従来言われているブラック原因とは異なる、更なる背景=他の要因があるように思います。
だから、プレさんにもそのことをえぐり出す報告や協同研究への参加を求めているのです。

まず知りたいのは生協や岩波など、非製造業で起こっているブラック化の事実・実態とその直接的な原因です。
生協や岩波のブラック化では、資本間競争や強欲な蓄積欲求は副次的な要因だとしか想像出来ないからです。

周知のように、資本の技術的・価値的構成が低い流通業やサービス・非物的生産分野では、いわゆる「生産性向上」が困難です。非製造業分野では、利潤獲得の主要方法は絶対的剰余価値生産の追求にならざるを得ない。
またそれだけでなく、非製造業分野では、価値実現上の困難ではなく、使用価値拡大生産上の固有の障害もあります。使用価値の生産過程とその消費過程が時間的にも空間的にも分離している非製造業分野の経済活動では、有用効果生産(=製造業で言うところに使用価値生産)への特有の障害があるのです。
流通・サービス分野では、製造業分野とは異なり、中間在庫や消費者の過剰在庫(=買い貯め)のような事態も生まれません。非製造業分野の資本は、生産と消費との間にあるその分野に特別の関係にも規定されて日々の事業活動を行っているのです。タクシー業界然り、文化・レジャー産業然り、民営の医療教育福祉法曹業界などもまた然りです。

そういう問題が長時間労働や低賃金、非正規待遇の押しつけを行う原因にもなっているハズだ、というのがオレの「想像」(=今のところ完全に論証出来ていないから「想像」=仮説)なのです。

どうでしょう、オレの意図・目的意識を朧げにでも理解していただけたでしょうか?

なお、岩波のブラック状況については↓

http://shutoken2007.blog88.fc2.com/
返信する
誤記訂正 (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2014-01-30 15:03:49
>使用価値の生産過程とその消費過程が時間的にも空間的にも分離している非製造業分野の経済活動では、有用効果生産(=製造業で言うところに使用価値生産)への特有の障害があるのです。

前の書き込みの上記部分は、正しくは下記の

使用価値の生産過程とその消費過程が時間的にも空間的にも分離している製造業分野と違って、生産と消費が不可分なサービス業分野や、そもそも消費による使用価値の消失が存在しない非物質的生産分野など、非製造業分野の経済活動では、有用効果生産(=製造業で言うところに使用価値生産)への特有の障害があるのです。

という文章の書き間違え(一部脱落)です。

つまり、衣食住のための消費財であれ、その他の耐久消費財であれ、労働の成果が「物(もの)」として存在出来る製造業(物的生産)分野と、サービスや流通、非物質的生産分野などの非製造業分野では、生産過程も流通過程も消費過程も根本的に違うということです。

この違いは、例えば労働成果の保存性、蓄積性の有無の違いなどとしても、①流通過程の非存在(例えば、理美容やエステなどのような対人サービスにおける流通過程の非存在)や、②消費過程(=使用価値の消滅)の非存在(例えば、文化・芸術産業の労働成果の「享受」が物的な「消費」とは違うこと)として、製造業労働の成果の生産、流通、消費との根本的違として現れています。

その他にも、経団連がホワイトカラーエグゼンプション導入の口実に騒ぎ立てている「労働成果が労働時間に比例しない」などという、非製造業労働分野における一面の(しかし重大な)真理なども俎上に登ってきているのが現代の労働と経済の世界でしょう。

こういう問題が現在のブラック経営をもたらす大きな原因になっていると考えられるのです。
つまり、製造業労働などの物質的生産分野のような定時定点就労が不可能化する労働分野や、製造業分野のような特別剰余価値生産による利潤獲得(=搾取)が困難な業種、再生産や複数生産が不要で「社会的必要労働」の概念がそもそも成立し得ないような労働種類までもが、資本ー賃労働関係に包摂されたことから来る特別の困難(=『資本論』でも解明されていない現代的な新しい問題)が登場してきているのが現代の賃労働の世界なのです。

現実知らずのバカで怠慢な多くの経済学者(マル経派も含む)は等閑視していますが、こういう問題は、資本主義の寿命がその極限まで延長されてきたので不可避的に発生した「資本の自己批判=矛盾」の一種でしょう。
そう、資本主義が「自殺させてくれ、自殺させてくれ」と催促しつつ延命しているのに、まだ、マルクス派を含む多くの人がそのことに気がついていないという事態が生まれているのが現代なのです。

具体的諸現実の具体的分析が急務なのです。
返信する
なお、 (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2014-01-30 15:17:23
一般公開ブログへの書き込みでのやりとりでは、どうしても難しい言葉や抽象的な概念を用いた論文調カキコの発表会になってしまいがちなので、「それ、どういう意味?」「どういう事実を言ってるの?」などと気軽にやりとり出来る非公開の多人数参加型掲示板が交流や集団研究のためには良いと思うのです。

だからまこと板を提案したんですが、あそこは時間が経つと古い書き込みから順次消滅してしまうんですよね。その点はマズイなぁw
返信する
経済学理論の今日的発展と共に (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2014-01-31 11:58:13
マルクス派や左派・リベラル陣営に痛切に求められているもう一つのことは、やはり国際的視野でしょうね。そう、資本の運動がグローバル化している現在、ブラック企業問題などの経済・労働問題を考え打開して行くためにも、世界経済の動向を俯瞰した政治対応や運動が求められているのです。

以前、アジアの低賃金構造が日本の勤労者にとっての「死重」になっていることをkojitakenブログなどに書きましたが(下掲.1参照)、現代日本の低賃金・劣悪労働条件問題でも、くらしの問題でも一国主義的視野狭窄では絶対にダメなんです。

例えば国民の消費購買能力の改善のような政治課題。
リベラル21ブログで盛田常夫教授も指摘していますが(下掲.2参照)、「消費増税反対」のような国内政策課題しか視野にない共産党など日本左翼の一国改良主義では限界があるのです。盛田氏が主張するように、庶民のくらしには、消費増税負担のような国内問題だけでなく(それ以上に)内外の通貨安誘導による負担などの国際問題ものしかかっているのですから、そういう部面にも眼を向けなければなりません。
もっとも、原発問題でさえ中韓政府に苦言をぶつけられない今の日本左翼では、こういう観点をもてないのも当然なのでしょうがね。
 
参照1
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1320.html

参照2
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-2663.html#comment2183

しっかり目を開いて、もっともっと考えなければならないのが現代でしょう。
ブラック企業問題でもそうなのです。
資本間競争が世界的規模で行われているのが現代の特徴なのですからね。
返信する
岩波のブラック問題 (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2014-01-31 19:04:14
以下は、事実把握もその原因論証も対策の点でもまだなので、暫定的な貧しい想像にすぎませんが、現在の出版界で広がっているブラック経営は新しい要因にもよるものでしょう。
非製造業の一分野である出版業界は、もともと低生産性(=労務集約型)や過当競争(=お手軽開業可能だから)などで前近代的なブラック体質をもっていたハズなのですが、今日ではそれらの要因に加えてデジタル技術の発展や書籍流通分野での「構造改革」などの影響もあるように思われます。

印刷物のような「紙もの業界」は、新聞業界や広告デザイン業界などでもそうですが、電子出版やウェブ広告の台頭(=デジタル革命)によって、以前より一層経営が厳しくなっています。
「ニューヨークタイムズ」が紙媒体制作からインターネット版に移行する準備を始めたような今日的動向が労働条件悪化の一因になっているように思われるのです。社会全体のIT化、デジタル化の進展は、それまでまがりなりとも「物」の生産の側面をもっていたこういう業界での労働にも変化を強要しているハズです。

たとえば、ウェブが主流化した広告業界などでは、「紙もの」の縮小・撤退の流れの中で「情報」の生産と「物」の生産が切り離され印刷物制作による乗せ利潤部分が消失したり、以前にも増す制作スピードが求められたりで、労働環境や企業の収益構造が激変しているようです。また、通信回線を活用した国外発注による問題などもある。
つまり、業界全体としての収益性の悪化とそのツケの労働者への転嫁の問題が今日的な新しいかたちでも出てきている。
いわば、ニューテクノロジーとグローバル化との闘いのような新しい問題が企業経営にも労働現場でも生起しているらしいのです。

岩波のような出版界も例外では無いと思います。
もともと、出版のような精神的・非物質的生産の分野では、時間さえかければ良い結果が保証されるものではなかったのですが、その上に今日的な外部強制が加わっている。労働強化が質的にも時間的にも極限まで求められるような現代的背景が生まれているのだと思います。

だから、もっと詳しく実態を掌握して分析してみなければなりませんが、今日のブラック問題(低賃金・長時間・非正規など)は、非製造業分野の内部でさえ「昔の名前で出ています」ということではないのだと思います。


なお、上掲の盛田論文の論点ですが、アベノミクスの金融緩和による日本の通貨安であれ、輸出促進政策としての中国の人民元安であれ、それらは国内での消費税増税以上に国民生活を脅かしているように思います。低賃金下の物価上昇、雇用破壊の一方での投機活動の激化、総じて格差社会の激化としてです。
また、盛田氏が指摘するように、円安によって日本の金融資産の価値総額が低下することは、プライマリバランスの悪化などを介して国家財政による所得再分配機能の低下も招くような気がします。「国債危機」が顕著化すれば、社会保障制度崩壊も起こるからです。

円安や人民元安は、私たちの日常生活に消費税増税以上の影響を与え、与えているのかもしれません。
数字的にはまだ、未把握ですが。

返信する
上記訂正 (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2014-02-02 07:21:39
上記で「プライマリバランスの悪化」と書いたのはうっかりミスです。より正しくは「財政収支の悪化」。
たしかに、プライマリーバランス自体も悪くなりますが、問題の核心は国債費です。
国債の利払い負担増や販売困難による財政収支の悪化。
返信する
日本社会の右傾化の最深部の原因 (バッジ@ネオ・トロツキスト)
2014-02-08 08:16:49
「日本社会の右傾化」を憂うる人は多い。

しかし、その「右傾化」の実相も原因も正確に指摘出来ている人は少ない。
なぜならまず、その「右傾化」についての認識が抽象的であるからだ。
そしてその「右傾化」の原因についての捉え方が観念的であるからだ。

まず、「右傾化」の実相である。

日本社会の右傾化とは、全般的右傾化ではない。
そのことは、近年においても地方で共産党員首長が時々誕生していることなどで判る。
そう、「日本社会の右傾化」とは、かつての高度経済成長期に次々と革新首長を誕生させていた都市部に近年あらわれている顕著な右傾化のことであろう。

次に、「右傾化」の原因である。
共産党幹部や「しんぶん赤旗」などは、先進国における都市部のイデオロギー的支配機能を指摘するが、今日の情報化社会では、都市・地方の間のイデオロギー上の条件格差は大きく減少して来ているとも考えられるから、この説もマユツバである。
原因は、都市部の構造的特性、それも労働や生産、経済のあり方における特殊性や固有性に負うところが大きいはずである。そう、賃労働や産業構造の地方との違いが、都市部の右傾化のより大きな規定的原因になっていると考えられるのだ。マイケル・ムーアが言う「富裕層のディズニー・ランド」のような実態をも造り出している都市部特有の経済条件とそれに照応した市民生活の有り様の問題である。

今後、この「右傾化の具体的実相と深部の原因」は、さらに究明していかなければならない。
少し前の「赤木智弘的言説」の登場なども、この究明努力の中で説明出来るのではないか?

「右傾化」の把握も打開も、橋下のような性格類型の続出も、道徳論や観念論の立場では不可能なのである。
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