アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

人を人とも思わない点では、規制改革会議もペッパーランチ店長と同じ

2007年05月22日 23時41分08秒 | 一人も自殺者の出ない世の中を
・監禁強姦:女性客を連れ去り暴行、監禁 容疑のペッパーランチ店長ら逮捕―大阪(毎日新聞)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/archive/news/2007/05/17/20070517ddm041040153000c.html

 上記のニュースを目にした時は、流石に驚き呆れました。何と、上場企業のステーキ・チェーン「ペッパーランチ」の店長と店員が、深夜営業中の店内で女性客に乱暴・拉致・監禁ですからね。この会社の社員教育は一体どうなっているのでしょうか。それで今日出勤して何人かの社員・バイトに聞いてみたら、もうみんなこのニュースの事を知っていました。地元・大阪で起こった事件だからというのもあるのでしょうが、この手のニュースは広まるのが早い。

 このニュースは早速ネットで話題になっていますので、興味の在る方はご自由に検索してみて下さい。既に動画やまとめサイトが多数アップされていますから。そして、例によって例の如くというか、またぞろネットの一部からは、「おちおち外で飯も食えない、街も歩けない」とか「若者の、家庭の、学校の教育がなっとらん!」とかいう意見が出てきています。

 確かに、このニュースと言い、この前の福島の男子高校生の母親首切り殺人事件と言い、トンデモなニュースだとは私も思います。思いますが、では下記のニュースは「トンデモ」ではないのでしょうか。私は、下記のニュースも、上記のそれに勝るとも劣らないほど、トンデモなニュースだと思うのですが。少なくとも、他のトンデモな三面記事の陰に隠されたまま、無視されても良いニュースなんかではない筈です。しかし、残念ながら前述のウチの会社のメンバーも、こちらのニュースの事は誰も知りませんでした。

・最低賃金上げに慎重論 規制改革会議が意見書(朝日新聞)
 http://www.asahi.com/job/news/TKY200705210298.html
・脱格差と活力をもたらす労働市場へ~労働法制の抜本的見直しを~(規制改革会議)
 http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/publication/2007/0521/item070521_01.pdf

 政府の規制改革会議が、労働法制の規制緩和を要望する意見書を出しました。その意見書の内容が上記リンクに示されているのですが、そこで出された意見・発言の数々も、私から見たら、先の強姦ステーキ店長と同じぐらい「鬼畜の所業」のオンパレードだと思うのですが。

 そこにはこんな事が書かれています。

・労働者の権利を強めれば労働者が保護される、という考えは誤りだ。
・不用意に最低賃金を上げたりすると、それに見合う働きの出来ない労働者は解雇される。
・女性の労働者の権利を強めると、誰も女性を雇わなくなる。
・低賃金・無権利の非正規雇用を規制すると、企業は誰も人を雇わなくなる。
・正社員の解雇を規制すると、誰も正社員を雇わなくなる。
・長時間労働を規制すると、「命より金儲け」を望む労働者の権利を侵害する事になる。
・真の労働者保護とは、権利の強化ではなく、労働市場の完全自由化によってこそ実現される。「命より金儲け」を望む労働者の自由も保障されるべき。そうして資本家が自分に都合の良い契約を銘々好き勝手に結べるようになってこそ、完全雇用も機会の平等も再チャレンジの権利も保障されるのだ。
・労働者保護の法律や判例などクソ食らえだ。国や自治体は資本家のする事にいちいち口出しするな。

 まあこんな感じの文章が延々と続く、企業・財界サイドが嵩にかかって言いたい放題言っている、そういう意見書です。

 アホかと思いますね。メーデーの歴史も知らないのか。当時の労働者が、一体どういう想いで8時間労働制を要求してゼネストに決起したと思っているのか。そして国サイドから見ても、こんな資本家の好き勝手に任せていたら、餓死者続出で国も滅びて元も子も無くなってしまうから、労働力再生産のためにも一定労働者の事も考えなければいけなくなったのでしょう。だから20世紀になってようやく労働基準法とかが作られるようになったのでしょうが。それをまた19世紀以前の状態に戻してどうするの。
 最低賃金にしても、出来高賃金や成果主義賃金、年俸制なんかではなく、「どんな人であろうと」雇って働かせる以上は、これ以下の賃金で雇ってはならないという、人間として健康で文化的な最低限度の生活を「全ての賃労働者に」保障したものです。だから、そこには「それに見合う働き=出来高賃金」的発想が介在する余地など、最初から無い筈です。「もう一回小中学校から憲法学習をやり直せ」と言いたいです。
 「命より金儲け」を望む労働者?本心からそんな事を望んでいる人間など、誰もいません。そうでもしないと食っていけないから、嫌々それを選択しているだけです。中には「好きで選んだのだ」と本人自らが公言している場合もありますが、これも「自ら望んだのだ」と無理やり自分に言い聞かせているだけなのです。そうでも思わない事にはやっていけませんから。

 この規制改革会議の意見書の内容を一言で言うと、「労働者保護を強めると、"役立たず"が逆に職を失う」という事で、これは逆に言えば「"役立たず"は死ね」と言っているのと同じ事です。そういう論理を当然の前提として、その上に立って色々ゴチャゴチャ書いているのが、この意見書の内容なのですから。
 そして、何を以って「出来高」や「役立たず」の基準とするのか、という事も資本家の胸先三寸で決まるのです。こんな「出来高」「役立たず」論を一旦受け入れてしまうと、次にはその「出来高」「役立たず」のノルマ・足切りラインが恣意的にどんどん引き上げられて行って、大多数の人間が無限労働の世界に引きずり込まれてしまいます。チャップリンのモダンタイムスの様に。トヨタのカンバン方式を見ても分るでしょう。
  
 片や「獲物は強姦」(前号記事の闇金ウシジマくんと同じ論理)、もう片や「"役立たず"は死ね」。この両者の論理の間に、何の本質的な差異があるのでしょうか。
 そして、数々のセクハラ・パワハラ・不当労働行為や、偽装請負とか、出入り業者にただ働きで売り場の商品棚卸しをさせたりとか、自分たちお偉方の所業は頬かむりして、下々のモラルや教育がどうこうとか、これだけ言いたい放題言われているのに、何故それに対してみんな怒らないのでしょうか。


※関連記事:ヨドバシカメラ違法派遣暴行事件
 http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20040621.html

 こちらも過去に上場一流企業が起こしたトンデモな暴行傷害事件の一例です。被害者は男性か女性か、客か従業員かの違いだけで。こんな例は他にもワンサカとあります。マスコミが表立って報道しないからあまり知られていないだけです。

※おことわり:ペッパーランチ事件関連コメント・TBの扱いについて

 「ペッパーランチ事件の経緯をあちこちのネット媒体に貼り付けて普及しよう」という運動がネットの一部で行われているようなので、その件で一言。記事冒頭のペッパーランチの事件は、あくまでも後段の規制改革会議意見書の件との対比で、その範囲内で出しただけです。ペッパーランチ事件そのものを主題に取り上げる意図で記事をアップした訳では決してありません。従って、当方の方で「興味本位に偏した」「本稿の主題とは無関係」と判断したコメント・TBについては、全て削除対象とさせていただきます。悪しからずご了承下さい。
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