アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

日本と北朝鮮の立場が完全に逆転してしまった

2018年05月03日 05時32分31秒 | 北朝鮮・中国人権問題

 

 4月27日に、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が、朝鮮半島を南北に分かつ軍事境界線上にある板門店(パンムンジョム)で歴史的な会見を行い、これまで対立し、にらみ合っていた両国間の関係を、平和共存の関係に変えて行き、互いに核兵器も撤去する事を宣言しました(参考資料)。この後には、金正恩と米国トランプ大統領による史上初の米朝首脳会談も予定されています。

 米国のトランプ大統領は、昨年まで北朝鮮の金正恩を「チビのロケットマン」と罵倒し、「テーブルの上には(北朝鮮への核攻撃も含めた)あらゆる選択肢がある」と言っていました。それに対し、北朝鮮の金正恩委員長も、トランプの事を「老いぼれ」と罵倒し、「米国全土を射程におさめた核のボタンが私の机の上にある」と言い返していました。それからまだ半年も経っていないのに、ここまで変わるとは思ってもみませんでした。

 先日、近くの整骨院に行った時に、施術中にブログの話題が出て、私が自分のブログの事を言った時に、在日コリアンの整体師の方が、高校の修学旅行で北朝鮮に2週間ほど滞在した事を話してくれました。その話の中で、「北朝鮮も普通の国」だと、しきりに仰っていたのが印象に残っています。私は脱北者の話も聞いていたので、その発言を額面通りに受け止める事はできませんでしたが、その一方で、私の北朝鮮に対する見方も、今日の事態を想像できなかったという意味では、余りにもステレオタイプで凝り固まったものだったと言わざるを得ません。

 そんな中で、世界地図で北朝鮮を見て、「北朝鮮って、本当に大阪のあいりん地区とよく似ているな」と思うようになりました。

 まず、北朝鮮も「あいりん地区」も、その周りの国や住民から「やっかい者」扱いされてきた点が似ています。北朝鮮は、日本人やその他の国の人々を拉致し、飢えた国民を放置して核開発にまい進する独裁国家として。あいりん地区も、食い詰めたホームレスが路上をうろつき、犯罪や暴動がしょっちゅう起こる土地柄として。

 しかし、北朝鮮が、そのような貧しい独裁国家になってしまったのは、韓国や米国と軍事的に対立する中で、ソ連や中国に心ならずも頼りながら、国民を締め付けるしか国家を存続する事が出来なかったからです。「あいりん地区」がスラム街になってしまったのも、明治時代に、大阪市が、内国勧業博覧会(今の万博に相当)開催の地ならしの為に、貧民を市内から追い出し、当時市外だった釜ヶ崎(今のあいりん地区)に押し込んだからです。

 

 ところが、実際の「あいりん地区」(右上の地図の赤線で囲った地域)は、「やっかい者」どころか「宝の山」でした。難波にも天王寺にも天下茶屋にも近い「都心の一等地」で、その気になればいくらでも再開発が可能なのに、なまじっか「スラム街」のイメージがあるばかりに、今まで誰も買い手が付かなかったのです。ところが、やがて外国人観光客ブームが押し寄せる中で、そんな「偏見」なぞ持たない外国人が、その価値を見出すようになり、今や「あいりん地区」は観光客向けのホテル建設ラッシュに湧いています。それまで汚いドヤ(簡易宿泊所)だった所も、安価でこぎれいなホテルやアパートに続々と改装されています。私や同僚バイトの小杉君(仮名)が月ぎめ契約で住んでいるのも、そんなホテルです。

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国、左上の地図参照)も、朝鮮半島の付け根にあり、日本や韓国から中国やロシアに抜ける物流・貿易ルートの分岐点に当たります。上の左右の地図をよく見ると、「あいりん地区」を北朝鮮としたら、隣の「動物園前」=韓国、「天王寺」=日本、「天下茶屋」=台湾、「難波」=中国、「日本橋」=ロシア極東になぞらえる事ができるのではないでしょうか?(だいぶ位置関係がデフォルメされていますがw)

 今まで「やっかい者」だった北朝鮮が、実際は「宝の山」で、「香港」や「シンガポール」のように発展する可能性もあるかも知れないのです。韓国の文在寅政権や、米国のトランプ政権も、それを知っているからこそ、表向きの強硬姿勢とは裏腹に、「落とし所」もちゃんと用意して、北朝鮮をその「落とし所」に誘導しようとしているのではないでしょうか。

 「韓国・文在寅政権の平和戦略」(時事オピニオン)という記事で、その事が詳しく取り上げられています。それによると、

 北朝鮮に融和的とされる今の韓国・文在寅政権ですが、そこには韓国なりの深謀遠慮がありました。核開発にまい進する北朝鮮に対して、国連安保理が課した厳しい経済制裁を率先して履行すると同時に、ただ北朝鮮を闇雲に叩くだけでなく、「核問題を平和的に解決する」「何があっても戦争だけは絶対に阻止する」というメッセージを、ことあるごとに北朝鮮や国際社会に対して発信し続けてきたのです。金正恩が国民に対して行った新年のあいさつの中で、「韓国の平昌(ピョンチャン)オリンピックに北朝鮮も参加する」と異例の提案を行い、後の緊張緩和の流れを決定づけたのも、この文在寅の姿勢があったからでしょう。

 勿論、光もあれば陰もあります。今の「あいりん地区」には、外国人観光客や私たちの様な普通の宿泊客だけでなく、ホームレスや生活保護受給者も依然として大勢います。今も西成区の人口の約4分の1が生活保護受給者だと言われています。彼らの一部が酒やギャンブルに溺れているのも残念ながら事実です。私は、そうなるのも仕方ないと思います。「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」と言うのは建前だけで、実際は「健康」でも「文化的」でもない、ただの「飼い殺し」状態に置かれ、世間から好奇と差別の目にさらされる中で、どうやって人間としての尊厳が保てると言うのでしょうか?どうやって生きがいが持てると言うのでしょうか?酒やギャンブルで憂さを晴らすしかないじゃないですか!

 「あいりん地区」のホームレスや生活保護受給者が、酒やギャンブルに溺れた生活から抜け出すには、酒やギャンブルを規制するだけではダメです。彼らが生きがいを持てるような人権施策を講じないとダメです。まともに食べていける賃金、生きがいを持てるような仕事、奨学金制度や公営住宅の拡充、病気や怪我をしても安い治療費ですぐにかかれる病院、趣味やスポーツを通した繋がり・・・。そういう物を全然用意せずに、どこかの某大阪市長みたいに「現金を現物支給に変えろ」「ギャンブルするなら生活保護を取り上げろ」と言うだけでは、彼らを更に追い詰めるだけです。

 また、単に経済的に発展すれば、それで良いという訳ではありません。いくら経済的に発展しても、言論・表現の自由が保障されず、新たな経済格差が生まれるだけでは何にもなりません。そういう意味では、先に北朝鮮が目標にすべき好例として挙げた「香港」や「シンガポール」も、決して手放しで評価はできません。香港の議会のうちで、住民が直接選べるのは半分の議員だけです。残りの半分は職場代表や中国政府が任命した議員です。シンガポールの議会も、比較第一党が選挙区定数全ての議席を獲得できるようになっています。最初から与党が勝つ仕組みになっているのです。しかも、香港もシンガポールも、狭い地域に大勢の住民が住む「都市国家」です。政府は公営住宅の斡旋などを通して、国民を締め付けています。だから、これらの国々は別名「明るい北朝鮮」と呼ばれています。

 それでも「暗い北朝鮮」よりは「明るい北朝鮮」の方がはるかにマシです。民主化も労働運動も「腹が減っては戦にならない」のですから。韓国の国民が軍事政権を倒して民主化を勝ち取る事が出来たのも、香港の住民が「雨傘革命」で民主化運動に決起するようになったのも、それまでの経済成長である程度豊かになり、反政府運動に立ち上がるだけの「経済力」や「情報」を手にする事ができるようになったからです。

 ひるがえって今の日本はどうか?

 「差別デマを拡散する内閣府のプロパガンダ装置」(ロジ・レポート)という記事の以下の内容を読むと、今さらながら暗澹(あんたん)とした気分になります。

 「人種差別撤廃条約」に加盟し、「ヘイトスピーチ規制法」で人種・民族差別を規制すべき立場の政府(内閣府)が、よりによって「韓国は反日」「韓国人は嘘つき」「安保法制反対デモは民主党などの売国勢力が主導」「在日朝鮮・中国人による日本破壊工作」などと煽る偏った意見を、「国民の声」として内閣府のHPで積極的に取り上げてきた事が発覚しました。安倍政権が、森友学園に国有地を格安で叩き売り、軍歌を幼稚園児に歌わせるような右翼教育を小学校にも広げようとしていたのと同じ構図です。そうして、政府の施策を裏からゆがめながら、問題が発覚しても民間のモニター(意見投稿者)に責任を押し付ける事で、言い逃れを図ろうとしていたのです。(現在、このHPは閉鎖され、どんな意見が投稿されていたのか確認できないようになっています)

 今の安倍政権が、「韓国人は嘘つき」だの「安保法制反対デモは売国奴」だの「在日朝鮮人は破壊工作を行うスパイ」だのと言ったヘイトスピーチ(特定の人種や集団を攻撃する差別・憎悪発言)を、「これも国民の声だ」として、内閣府のHPで堂々と取り上げているのですよ。単に右翼がかった個人が居酒屋や床屋で管を巻いているのとは次元が違います。ヘイトスピーチを規制すべき政府が、逆にヘイトスピーチを煽ってどうするんですか?先日も、公益社団法人の日本青年会議所(JC)が、上記の右翼キャラクターを使い、ツイッターで似たような事をやらかして問題になりましたが、政府のやっている事もこれと似たり寄ったりです。

 これらの一連の動きを見て、「福田前次官のセクハラ事件は、実は女性記者の色仕掛けにはめられたのではないかという意見もある」と言い放った麻生太郎の発言を思い起こしました。セクハラを防止すべき立場の副総理の麻生が、逆にセクハラの加害者を庇い立て、被害者を更にセカンドレイプで追い詰める。そして、その発言が公になっても、「そういう意見もあると紹介しただけだ」という形で、言い逃れしようとしている。

 挙句に、当の北朝鮮からも、朝鮮中央通信で「森友・加計学園の問題で、今や安倍政権はピンチに陥っている」と報じられる始末です。何も北朝鮮から、そんな事言われる筋合いないと思いますが、実際その通りだから仕方ありません。今まで「チビのロケットマン」呼ばわりされていた金正恩が、今や「世界史を書き換えた英雄」として、トランプ大統領からも称賛されるようになったのとは対照的に、安倍晋三は、「公文書も平気で改ざんする大嘘つき」として、今も世界に恥をさらし続けています。

 今回の南北首脳会談でも、北朝鮮の金正恩が口火を切り、韓国の文在寅がそれに応え、米国も中露も水面下で積極的に動く中で、日本の安倍晋三だけが「蚊帳(かや)の外」に置かれ、元・拉致被害者家族会事務局長の蓮池透さんからも、「安倍さんは何もしなかった、拉致問題を自分の出世に利用しただけだった」と、ボロクソに言われています。今や日本こそが、昔の「あいりん地区」や今の「暗い北朝鮮」「明るい北朝鮮」みたいになりつつあるのではないでしょうか?

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