私が学生の時に住んでいた寮は、今思えばとてもエコな省エネ生活を実現していた場所だった。
こっちの部屋でドライヤー。
隣の部屋で湯沸かしポット。
これを同時につかおうものなら…
すぐにこのありさま。
廊下に出て、ブレーカーを上げに走る。
これが一日に一回はあった。
だから、隣の部屋とは協力し合って一度に電力大量消費しないようにものすごく気をつけていた。
一体何アンペアの契約だったの?
省エネ生活といえば、もちろん「エアコン」はない。
いくら約25年前(早くも四半世紀…)とはいえ、エアコンのない生活はかなり厳しかった。
でも、そのころは今ほど温暖化が進んでいなかったせいか、夏暑くて死にそうになるってことはなかったのよね。
あまりの暑さで眠れないってこともなかった。
問題は冬。
なにしろその当時ですでに築30年超えていた古い鉄筋コンクリートの建物。
しんしんと冷えるんだな。
秋も深まってくると、寮生は「冬支度」を始める。
まず「窓」
隙間風が吹き込む窓には、みんなで協力して「目張り」をします。
ガムテープを張るんだけど、これがまた貧乏くさくてね。
ただでさえ汚い部屋がさらに汚く見えるんだな。
で、数週間するとはがれてきて、ますますみすぼらしくなるんだな。
でも、寒いんだから仕方ない。
とにかく、窓にはガムテープ。
そして次は「床」
床はピータイルという50cm×50cmほどのプラスチック製のタイルが敷かれているはずなんだけど、そのほとんどがすでに割れてなくなっており、コンクリートの床がむき出し。
そこに2重に段ボールを敷きつめるわけ。
で、その上にカーペットを敷くの。
もちろん、段ボールもカーペットも一年中敷かれているんだけど、一年たつと段ボールもペチャンコになっちゃうから、冬前に敷きなおすと、なんだかホカホカなるのよ~。
そして、こたつの敷布団を敷いて、こたつ布団をかけて、部屋で唯一の暖房器具がセットされるの。
あっ、もうひとつ部屋に暖房器具があったわ。
午後6時~9時まで限定で、ボイラー室で沸かされたお湯が配管を通って流れて各部屋をほんの少し暖めてくれるの。
部屋の片隅にあったバカでっかい今で言うオイルヒーターみたいな形の暖房器具は手をくっつけると温かいけど、一日3時間じゃあ隙間風吹きすさむ部屋全体を温めるパワーはなかった…。
それよりも、今さっき、私が言った、「午後6時~9時までボイラー室で沸かすお湯」
ここが大事です。
それは、何を隠そう「午後6時~9時までしかお湯は沸かされない」 ということなんです。
それってどういうことかわかりますよね?
つまりは、お風呂のお湯も「午後6時~9時までしか出ない」ってことなのよ。
夜9時までしかお湯は沸かされず、そのあとはタンクにたまっているお湯を使い、それがなくなったら水ってことよ。
わかる?
夏なら、タンクのお湯もなかなか冷めないし、多少冷めてもなんとかなるんだけど、冬はそういうわけにはいかない。
バイトとかで遅く帰った日。
大慌てでお風呂に走るっ!
←寮生の冬のユニフォーム「綿入れちゃんちゃんこ」
でも、そのとき、お風呂から帰ってくる人がすれちがいざまに言うの…。
とても残念そうに、
とても悲しそうに、
「もう水よ…」
「もう水よ…」
と。
ああ、今日もお風呂に入れなかった…。
ああ、今日は間に合ったわ!
お風呂に入るために今日はバイトも早く終わって帰ってきた甲斐があるってもんね。
どうもあやしい…。
これはもしかして…?
まずいかも…?
水、キター!!
どーすんのよっ、まだシャンプーの泡残ってるし、今からリンスもするのに!!!
あとは気合いで押し通せっ!!
ああ、温かいお湯ってなんて尊くて幸せなものなんでしょう…。
被災地の方がゆっくりと温かいお風呂に身も心もゆだねられるようになれることを心よりお祈りしております…。