マサイマラに来て最初のモーニング・サファリであっけなく見れてしまったヌーの川渡りでしたが、
もう一度じっくり見てみたい!!とフィリップさんにお願いして、朝食の後に川に行ってみることに。
ヌーたちが川に向かって大行進しています。
もしかしたら、渡るかもしれないよ。
川べりは、すでに向こう側に渡りたいシマウマとヌーでごったがえしています。
大抵は、まずシマウマが先に渡り、その後にヌーが続くらしいのですが、シマウマは崖を降りてみたり、また上ってきたり、緊張するのか暴れてみたり、とにかく川を前に大変なことになっています。
「誰か早く渡んなさいよ」
「ちょっと~、押さないでよ」
「早くしてよ、うしろつかえてんのよ」
「だったら、アンタが行けばいいでしょ」
「アンタこそ先に行きなさいよ」
と、なぜかオネエ言葉のシマウマの水際でのおしあいへしあいが続きます。
一頭が勇気を出して一歩水に入ろうとするも、「やっぱりやーめた」と後戻りすると、群れも一緒に後戻りして、また一から出直し。
そうこうしているうちに、
「全く、シマウマはやる気ないのね。じゃあ、アタシが行くわよ。」
と、ヌーが飛び出そうとするも
「やっぱ、ムリ~~~」
と引き返します。
そんな水際での攻防がずっと続きます。
私は車の屋根から身を乗り出して、手に汗にぎりドキドキしながらその様子を眺めていました。
気がつくとまわりには10台以上の車が川を囲むように等間隔で扇状に待機しています。
もっと近くに寄って欲しいなあと思ったけど、どうやら、それ以上は寄ってはいけないというルールがあるようで、みんな川から同じ距離を置いて駐車しています。
ドキドキしながらも、ヌーとシマウマの煮え切らない押し合いへし合いは一時間半以上続き、子供たちはもちろん待ちくだびれて、2人でポケモンのことなど話しながらゴロゴロしています。
部屋から持ってきた毛布は大活躍で、子供が座っている辺りの屋根の上に掛けておき、ちょうど良い日よけになりました。あの炎天下ずっと太陽にあたっているのはなかなかつらいものがあります。
さすがに私の緊張の糸もふっと途切れて、目薬をしたり、子供にムヒでも塗ろうかと思ったその瞬間です!!!!!
ものすごい勇気の持ち主のヌーが突然川に飛び込みました!!!
すると、車が一斉にエンジンをかけ、よーいどんで川の前に押し寄せます。
どうやらヌーが川に入ったら、車は川の近くに移動しても良いというルールのようです。
すっかり油断していた私は、急発進に驚きよたよたしている間に…
先頭は向こう岸に無事にたどり着きました。
すると堰を切ったように次々とどんどんとヌーが川に飛び込みます。



無事、向こう岸へ渡ったヌーたちは、後ろを振り返ることもなく、晴れ晴れとした様子で、青く茂った草を求めてそのまま行進していきました。
今回の川渡りでは、一頭はワニに捕まり、一頭は流されてしまったようです。
まさに川を渡ることは、命をかけて新しい草を求めて命をつないで行くことなのです。
2日前にも川をわたっている様子は見ましたが、今回は川を渡る前の躊躇している様子もずっと見て、いかに勇気を持って川に飛び込むのか、まさに命がけの川渡りの一部始終をこの目で目撃してしまったのです。もう、感動で体が震えました。
そして、気づいたら目には涙がたまっていて…
その涙がツツーっと流れそうになった瞬間、後ろからむせび泣く声が…
なんとマリリンが泣いているのです。
何にも言わず、ただただ泣いているのです。
川渡りが終了して、キャンプに帰る車の中で、ずっとずっとマリリンは泣いていました。
後から聞いてみたら、命をかけて川を渡る姿、何頭かは命を落としてしまった残酷な現実、川を渡り終えて爽やかに駆け抜けていった後姿、全てに衝撃を覚えたようです。それに加えて、長かったアフリカ旅行も、もう終わりなんだと思ったら、涙が止まらなかったみたい。
そんなふうに感じてくれたマリリンに感動してしまった父と母でした。
ヌーの川渡りを見ることができて良かった…
アフリカに来て、本当に良かった…