蒼穹のぺうげおっと

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超個人的お勧めマンガ 第1位 『PLUTO(プルートゥ)』

2004-12-16 18:59:35 | コミックス 感想
さて、これまで第2位まで紹介してきた「超個人的お勧めマンガ」も残すところ第1位のみとなりました。
例によって選定のコンセプトはこちら
■超個人的推薦マンガ 選定コンセプト■
●男女問わず勧めできる作品
●既刊4巻以内であること

そしてこのコンセプトに基づき、私燕。が推薦する第1位は、

著:浦沢直樹 原作:手塚治虫『PLUTO(プルートゥ)』第1巻 以降続巻

本作品については既に感想を書いているのですが、それでもあえて推薦したい、こんな時代だからこそ読んで欲しい、心からお勧めできる良作だからこそ感動し、そして涙して欲しい。

■これは本当に良作です。
原作は手塚治虫『鉄腕アトム 地上最大のロボット』、そして描き手は『MONSTER』『20世紀少年』の浦沢直樹、それだけでも読み手としてはドキドキしてしまうのに、読後の感想は期待以上、否、想像を遥かに越えた良作でした。
「鉄腕アトム」を知らなくてもご心配なく、浦沢直樹による大胆なアレンジ、キャラデザインにより、一級のミステリ、エンターテイメント、そして感動作に仕上がっています。
以前の感想では「豪華版」を購入した方が良いとコメントしましが、今となっては「通常版」を購入し、この先に展開するであろう「人間ドラマ(あえて人間と書きます)」を堪能して欲しい。
そして全てが終わった時に、再び手塚版を読む、それもまた素晴らしいのではないか、そう思っています。

■ロボットを通じて描かれる人間の「心」
本作に登場するロボットは人間そっくりの容姿もあれば、近未来的デザインのロボットも登場します。
その「ロボット」たちに共通して描かれるのが、「人間の心を理解しよう」とする気持ちなんですね。
ロボットが健気に「人」に近づこうとして、そして「人」を理解しようとしていくプロセスに「人間」が忘れかけている「想い」を僕たちはこの『PLUTO』を通じてふと思い出してしまうのかもしれません。

■惜しみない人間讃歌
涙無くして読めないエピソードの一つに「ノース2号」の物語というのがあります。
ノース2号という元戦闘用ロボットが戦争による喪失感を抱きつつも、ロボット嫌いで人間嫌いの老音楽家と心を通わせていくプロセスは本当に泣けた・・・。
もうこのエピソードだけで十分満足できます。
ロボットと人間という「異種族」が理解しあえるのか、という大きなテーマを「理解を拒絶する」象徴である老音楽家の「変化」を通じて昇華していく、こんな時代だからこそこういうストーリーが沁みる。
理解を拒絶する対象を「人間」とすることで逆説的に「人にとって大切なこと」にフォーカスをあてる手法は見事の一言に尽きます。
人間って愚かだよな、でも人間って素晴らしいよな、そういうメッセージが作品全体に満ちています。

■こんな時代だからこそ
このひたむきな「理解しよう」とする姿勢に心打たれるのかもしれません。
この『PLUTO(プルートゥ)』ほんとうにお勧めです。

今年はほんとうに悲惨な事件が多い年でした。
そんな年だったからこそ、今年の締めくくりとしてこの作品を読んで頂きたい。
きっと何かを思い出させてくれる、そんな気がしています。

これにて今年の「超個人的お勧めマンガ」は終了ですが、来週は「超個人的お勧め小説」を紹介いたします。
お楽しみに~。

『PLUTO(プルートゥ)』第1巻
浦沢直樹・手塚治虫
価格550円(税込)
Amazonで購入


巌窟王 第11幕 感想

2004-12-16 13:01:23 | 巌窟王
「待て、しかして希望せよ」


次回予告でも登場する決め台詞、伯爵がアルベールにこの言葉を捧げた真意は?アルベールはこの言葉の真意に気付くことができるのか?
全ての謎を内包したまま、物語は中盤戦に突入、今週もしびれる出来でした。

■婚約、破談
今回のタイトルでしたが、アルベールとユージェニーだけでなく、いたるところで破談が決定的になってきました。

■まずはヴィルフォール家から。
最初から財産目当ての結婚だとは思っていましたが、それが今回決定的な言葉とともにエロイーズの目論見が明らかになりました。
そしてエロイーズの退場=破談。
伯爵から渡された指輪は身に付けるもの自身にも毒がまわるということなのかもしれません、それを伯爵は伝えなかっただけで。
これでヴィルフォール家は妻が殺人犯であるというスキャンダルを内包することになり、またヴァランティーヌという現時点ではどうころぶか想像できないスキャンダラスなカードを持ってしまった。
主席判事への布石は恐ろしいほど巧妙に打たれたということになりましたね。

■次にモルセール家。
伯爵とメルセデス、その他渦中のメンバーを巡る過去がついに本人の口からその一端が話されましたね。
メルセデスの「エドモンが死んだと聞いたから・・・」の台詞は大人ならば言ってはいけない言葉のような気がしますが、それでも言わずにいられなかったということはメルセデスは当時(20年前?)それほどまでにエドモンを愛していたと、そういうことですか。
しかもそれを忘れらないほどに、そういうことですか。
これで二人の仲も完全に破談。
そして、それを聞いてしまったアルベールと親子の関係さえも破談になるのか?

■そして驚愕のダングラール家。
既に伯爵への無制限融資という爆弾を仕込まれているにも関わらず、カバルカンティ公爵の財産に目が眩み、ダングラール氏が婚約解消へ動いたということは簡単に頷けます。
もともとヴィルフォール家、ダングラール家、モルセール家は秘密の共有と財産の目減りを防ぐために婚姻関係を結んだはずですから(そういう意味では秘密の共有自体は有効なはずなので、少し軽率のような気もしますが)。
ここまではいいんです。ここまでは。

■ユ・ー・ジェ・ニ・ー!!
最後にアルベールに見せた愁いを帯びた笑顔は、既に全てを決めていた顔なのか?
そしてカバルカンティ公爵の花が届いた時に見せたあの表情は・・・。
お・の・れ、カバルカンティ、ユージェニーは僕のもの(違)。
ユージェニーがカバルカンティ公爵に惹かれるのはやはり、兄だからという設定が現実味を帯びそうな気配。
でなければ僕のユージェニーがそんなにコロっといくわけが無い(だから一部違うって)。
ユージェニー(泣)。

■全てを剥ぎ取られていくアルベール
伯爵との距離が縮まれば縮まるほど、全てを無くしていくアルベール。
両親、幼馴染であり婚約者、そして親友。
フランツは今回辛かっただろうな・・・。
アルベールは伯爵との「約束」をしてしまっているから、それに縛られて全体を見ることができなくなっているんですよね。
そのアルベールにフランツの声は届かない・・・。

■運命に偶然は存在しない、運命は自分で切り開く
伯爵が言うこの台詞、これは終盤あたりで再度スポットがあたり、アルベールがこの言葉を伯爵に対して投げかける展開になると激燃えです。
伯爵の運命を切り開く力と(全てを失った後に復活すると思いたい)アルベールの運命を切り開く力の対決、こういうのが終盤にあると最高に燃え尽きそうです(僕が)。
そして、「待て、しかして希望せよ」
この言葉の真意がいつ語られるのか、いつ実感されるのか、楽しみでなりませんな。

■それにしても
美しい・・・、映像が美しすぎます、この巌窟王。
特に伯爵の屋敷の地下でアルベールが助けられた回想シーンへ移るあたり、目を奪われますね、ほんとに。
しかし、ほんとに僕が目を奪われているのはペッポです(えっ)。
「あんまり心配かけないで」
ペッポ、最高!!

これにて巌窟王、年内の放送は終了ですな。
全くと言って良いほど緊張感が落ちず高いレベルを保つこの巌窟王、年明けまで続きが気になってしかたない。
それでも僕らにできることはこれだけ。

「待て、しかして希望せよ!」

来年が楽しみです。
#たぶんユージェニーのピアノ協奏曲はラフマニノフだろうね>カメリアさん