蒼穹のぺうげおっと

-PEUGEOT in the AZURE- マンガ・小説・アニメの感想を書き流すファフナーとエウレカ好きのサイトです

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第12話 「蒼穹ニ響ケ」 感想

2010-03-24 00:49:05 | ソ・ラ・ノ・ヲ・ト
蒼穹に響く、空の音。


終わりに向かっていく世界の中で、人々の心に響いて、戦争を止めたのは、空から降ってくる音だった。

蒼穹に響き渡るアメージング・グレイス。

有無を言わせぬ説得力に感動。

時として音楽は理屈を超えて共感を生み、カナタというキャラクターが持つ特性である、人々の本心であり素直な心を呼び覚ます効果を持って、戦争を止め、命を守った。

論理力や説得力というのは、共感を与える手法として最も効率的で理解しやすいから利用されるのですが、論理や説得を超えてダイレクトに共感を得る、それが音楽であり芸術であり、熱意なんですよね。

世界が終わりに向かおうとする中、音楽も芸術も喪われていく中、それでも人々の心に音楽は届いて、皆が思っていたこと、兵士ですら思っていたこと、それは戦いの無い世界だった、ということ。

これまでカナタの素直な心が引き出してきた皆の本心。

それが両国の大軍を前にして、空から降る音=ソラノヲト、として全ての兵士に対する共感を生む。

いやいや、素晴らしいラストでした。

実はストーリーに関する感想についてはほぼ前回の感想で語ってしまっていて、個人的にもはや言うことなし、の満足感なんですよね。

特にラストで桜の散るシーンなんていうのは、数回前からずっとこの物語は季節とともに物語が進行しているので、厳しい冬を越えて春を予感させるラストが見れれば大満足、と言ってきただけに感無量なところがあるのです。

フィリシアが賭けたのはリオの存在だったし、そのリオが(輿入れを決意して)戦を収めた。
その大前提となったのが、カナタのソラノヲトだったし、そこに至るにあたり、5人の想いが結実したハーモニーがこの結果を生んだ、ということにも丁度そうなったら良いなと感想を書いてきたところであったので、僕としてはもう言うことなし。

その中で、一番気になっていたのは炎の乙女の伝説。

これは双方の話が合わさって、初めて真実を伝えることだったのかもしれないですね。

ヘルベチアにとっては悪魔、ローマにとっては天使。

きっとこの砦でも、アイーシャと同じように捕虜になった人がいたのでしょう。
その傷を治すために5人の乙女は血まみれになりながらも介抱したのでしょう。
※それが水掛祭りで赤い液体を振りまく直接の要因になったのでしょう。

ヘルベチアから見れば敵国の兵士、ローマから見れば自軍の兵士、それがそれぞれ悪魔と天使となぞらえられた。

その天使(悪魔)を巡って、恐らく今回と同じシチュエーションが起こった。

残念ながらローマの捕虜は斬首され(ひょっとしたら5人の乙女も身を散らしたかもしれない)、残念な結果となった。
#クモは雲ではなく蜘蛛=タケミカヅチのことだったのね。

けれども、それを引き金に起ころうとした戦争は、トランペットから奏でられたソラノヲトによって鎮められた。

というのが伝説だったんですね。
#あの川の下にあった化石のようなものは実際の兵器かもしれないし、意図的なミスリードだったのかもしれないですね。
#アイーシャが天使としてなぞらえられた、という時点でやられた!という感じ、ありましたけどね。


最後のシーンでリオが復隊してくるのは、ローマ王のご褒美というか、視聴者へのご褒美のようなものだったのかもしれないですね。

本当に春のシーンで終わりを告げて良かったと思います。
それを一番、望んでいたので。


アニメノチカラというTV東京系のこの枠は、オリジナル作品で挑む、という気合が第1弾からしっかりと伝わってきました。
原作付きのアニメ化も僕は大好きですが、やはりこの次どうなっていくんだろう、と毎回・毎回、リアルタイムで次の1週間を楽しみにする楽しみ方、というのはやはりオリジナルアニメだけの特権だと思います。

それをこうしたしっかりした世界観の中で、女の子の日常を真面目に丁寧に描く、という気合、これが僕はとても好きでした。

静かで丁寧な作品というのは、商業的にどうなのか?というのがありますが(いや、商売なので成功させなきゃいけないのは大前提なんだけど)、こういう作品はずっと残っていって欲しいな、というのが、実は僕の最初から最後まで一貫した感想だったのかもしれないです。

あ、あと忘れるところでした。
タケミカヅチの起動から走破まで、これはかっこよかった!!
いやー、しびれる。
それでまたその動きが丁寧なんだよね。豪快で。
この辺もこの作品のある意味真髄ですよ。

で、最後に広がる蒼穹。
これで心もさわやかに。


ということで、5人の乙女の季節と共に語られた素敵なお話、堪能いたしました。
制作スタッフの皆様、ありがとうございました。
次回作も期待しています。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 1【完全生産限定版】 [Blu-ray]



ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第11話 「来訪者・燃ユル雪原」 感想

2010-03-17 22:38:04 | ソ・ラ・ノ・ヲ・ト
やはり最も冬が深くなったタイミングに合わせて、物語の冬の部分が訪れました。
そしてその冬はこれまでの物語の流れを急激に加速させる緊迫のクライマックスへ。


最後にとってあったのはノエルの過去で、これにて小隊全員の過去が明らかになりました。
ちょうどこの感想でも第四話の感想(ガラスの話)のときに、ノエルの過去は多分過去に人を殺すことに何らかの形で関わってしまったのかも、なんてことを書いていたので、そこがここにきてビンゴ。

そういう意味でノエルがタケミカヅチを修復していたのは、自分が復活させた過去のテクノロジーで多くの人を殺してしまったことに対する贖罪で、今度はそのテクノロジーで人を守りたい、とかそういう意味なのかもしれないなぁ。

アイシャに対する態度はまさに贖罪。

次回、最終回において、(脚本吉野さんの)予告どおりのタケミカヅチ完全起動。

これが悪魔となるのか、天使となるのか。

最後のポイントはやっぱりリオかな。
フィリシア隊長が賭けたのは、自分の運とかじゃなくて、リオの存在なんだよね、きっと。

辺境での大軍同士の対峙。
ここに決着をつけることが出来るとすればリオなんじゃないかと思いますし、やはりそこで揃うカナタをはじめとした砦の5人の乙女が伝説の再現となるのか?というところかな、クライマックスは。

非常に気になるのが、アイシャの言葉。

ヘルベチアからすれば悪魔。

ローマからすれば天使。
#ドイツ語をしゃべるローマ・・・(笑)。

この相反する伝説。

そして説明の途中となってしまった炎の乙女の伝説。

これもきっと違う語りになっているのかもしれないですね。

果たして真実とは?


こういったシリアスな展開をしている中で、それでもやはり一番大きな奇跡を呼び込む可能性があるのはカナタ。

カナタがこれまで小隊のみんなの本心を引き出してきたのは、カナタの素直に心、素直な音に共鳴したから。

敵対する国同士でも、音楽は同じ。

伝説は悪魔と天使で違っていたとしても、音楽を通じて伝わる感動はきっと国境を越える。

カナタがきっと奏でるであろう「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」は、そして五人のハーモニーは、何かしらの奇跡を呼び込んで、冬の終わりを告げて欲しいところ。

春を予感させるエンディングが来たならば、もう言うことはありません。

ちょうど前述の第四話の感想を書いたときに描かれた素晴らしい青空=蒼穹。

あの蒼穹の描き方に、少なからず感動を覚えました。


その蒼穹に響く「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」。

次回、最終回。

楽しみに待ちたいと思います。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 1【完全生産限定版】 [Blu-ray]



ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第10話 「旅立チ・初雪ノ頃」 感想

2010-03-09 22:01:02 | ソ・ラ・ノ・ヲ・ト
旅立ちとはそういうことだったんだね・・・。


改めて思うのですが、このソ・ラ・ノ・ヲ・トみたいな作品はこの先も大切に残って欲しいなと思います。
こういう出会いと別れを丁寧に描きながら、季節の移ろいとともに物語を静かに進めていく。
こういう丁寧な作品ってやっぱり好きです。


この物語の中心はカナタなんだけれども、物語自体の中心はリオなんですよ、やっぱり。
というかこの二人なんですけれども。

ストーリーの中心はリオ。
それを溶かして動かしていくのがカナタ。

だからリオの物語は冬に入って、ようやく自分の過去、家、しがらみと向き合うときが来た。
カナタの成長の物語でありながら、リオが過去から前(未来)を向く物語でもある。

ここまでゆっくりと、丁寧に描いてきたからこそぐっと来る部分。

そこに響くアメージング・グレイス。
しかもカナタと二人のハーモニー。

やっぱりこの二人の物語なんだな、と改めて思うシーン。


いやー、本当にしみじみと良いです。
丁寧に描かれる背景、しみじみと響くハーモニー。

良作だと思います。


フクロウのシュコが第1話でリオから鈴を奪って逃げようとしたのは、ひょっとしたらイリヤ皇女殿下のことを覚えていて、それであの鈴を懐かしんでいたのかもしれないな、なんて思いました。
しかもそれを身に着けているのは、イリヤ皇女殿下の面影を残すリオだから。

そしてその鈴をきっかけにカナタとリオの距離が近づいていく。

シュコ、侮れない。


リオが過去や自分の家に向き合うにあたり、そのきっかけを与えるのがカナタ。

迷ってもいいじゃないか、と恥ずかしげもなく言えるカナタ。
マダムと出合ったことで、自分の母へのわだかまりも自分なりに思えることがあったのかもしれない。
#自分の母親は自分が思うほど不幸ではなかったのではないか・・・、とか。

ひょっとしたら川でおぼれていたのはリオだったのかもしれない。

多分、王家に呼ばれるということは、停戦交渉の道具として位置づけられるか、もしくは交戦のシンボルとして祭り上げられるか。
いずれにしても、イリヤ皇女殿下の役割を担わないといけない、場合によっては輿入れする役割を担うかもしれない。

それらを全て受け入れて、それでも自分で決断して、前(未来)へ進もうとするリオ。

それを促したのはカナタの素直さ。

やっぱりカナタを軸にして、ハーモニーが一つずつ増えていく。

これが5人のハーモニーになるときが、この物語のクライマックスなんだろうね。

1回だけ訪れるという、タケミカヅチの完全起動はひょっとしたらリオを助けに行くシーンとかだったりすると熱いよね。


前に進むための旅立ちって良いね。
そしてアメージング・グレイス。

これはやっぱり良いね。
こういう作品はこの先も本当に残って欲しいな、と思います。

残りあと数話だと思いますが、エンディングは春を迎えて欲しいなと、切に願うところです。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 1【完全生産限定版】 [Blu-ray]


ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第9話 「台風一過・虚像ト実像」 感想

2010-03-03 22:37:07 | ソ・ラ・ノ・ヲ・ト
物語も秋に入り、先週の物語を見たときに感じた、季節の移ろいと共に物語も進行するんだろうなぁ、という予感はビンゴでした。

そして物語のクライマックスは間違いなく冬。
物語の展開の厳しさを暗示させる冬なのか、それともその冬の後に来る春に希望を見出すのか。
個人的にはそういう展開を希望ですね。

今回のポイントはサブタイトルの通り、台風に合わせた虚像と実像のお話。

虚像と実像、憧れであり続けるというのも実は辛い、というのがクラウスを通じて描かれるわけですが、でもこの意味合いは二重、三重の意味合いがあった、というのが上手いなと思わせるところでした。

クラウスとクレハの関係性が直接的に描かれるんだけれども、実はその虚像と実像は、部下から見られたときのリオがそうあろうとしているように、そしてリオから見た
ときのイリヤ皇女殿下も実はそういうところがあったんじゃなかろうか、と思わせるところがポイント。

しかしながら、クレハはクレハでまた少し大人になって、クラウスが憧れのクラウスではない別の人だと気がついたとしても、自分を命がけで助けてくれた人には変わらないということを自分の中で大事にしたことと、クラウス自身も自分が憧れじゃないと分かったときに相手が傷つくことを慮って、命がけでそれを演じきった優しさ、それが両方とも表現されていて、とても優しいハーモニーを奏でる、というのがこの物語の特徴だな、と改めて思ったのでした。

虚像と実像。

確かに虚像であり続けるのは辛いけど、でも虚像でも実像でも、クラウスがクレハを命がけで助けた事実は同じ。

リオにとってのイリヤ皇女殿下というのは虚像なのかもしれないし、実像なのかもしれない。
ここがやっぱり物語のキーポイントなんだよね、きっと。
#リオが子供は嫌いだ、と言ったのは、イリヤ皇女殿下の前では自分が子供であって、ひょっとしたら子供時代の何かのアクシデントがきっかけでリオはイリヤ皇女殿下と何かあって、自己嫌悪に陥ってたりするんだろうか・・・。

この関係性に敏感に気がついているのがカナタ。

カナタの素直さが、リオの虚像も実像も解きほぐすといいねぇ。

そしてこの台風が去った後のような青空、これを見たいものです。


そして物語は冬へ。

今回のタケミカヅチの登場は、1度だけ訪れるという完全復活への序章。
#砲門は使えるという事実も分かり、後は駆動系(多脚系?)の修理のみ。

残り話数を考えてもやはり冬はクライマックスでしょう。

今回はさりげなくクレハの両親の話も入ったし、フィリシアは1回で過去編の深いところまでやったので、残るはノエル。
そしてその後、クライマックスでリオという形かな。

カナタは未来へ向かう位置づけだから、味噌っかすという表現からスタートで、1121小隊を通じて和音を奏でるのがカナタのお仕事。
あの素直さに期待です。

それにしても今回も映像が美しかったです。
麦の穂とかの映像は素晴らしいね。

世界観とか美術とか、本当に丁寧に作ってるよね。嬉しくなるね。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 1【完全生産限定版】 [Blu-ray]


ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第8話 「電話番・緊急事態ヲ宣言ス」 感想

2010-02-28 22:33:35 | ソ・ラ・ノ・ヲ・ト
今までで一番ほのぼのしたような、それでいて一番緊迫したような、そんな回でした。
#電話番のカナタが緊急事態宣言をしたのは、自分のことだった(笑)。

しかしながら、ラストの本来この回の主題となるべき電話が鳴った、その内容自体は本当に緊迫する事態を予感させる内容という、何気に小技の利いた演出だったのでした。
#それもリオが電話を受ける、というのがポイント。


ひまわりの花も枯れてきて、そろそろ夏も終わりだなー、と思っていたら、カナタからもそんな言葉が聞こえてきました。
たぶん、カナタが春に配属されて、夏を経験して、秋へ。
そして、冬を、物語的にも本当に冬のような厳しさを迎えて、また春へと向かう、そんな展開になるんじゃないかと予想。

ほのぼのシーンであっても、アップルサイダーを掲げて、日に当てれば非常に美しい映像になるように、この物語は脚本の吉野さん曰く、女の子の日常を真面目に丁寧に描く、というテーマを持っているだけあって、本当に丁寧で美しい。

また、何気ない会話とかしぐさの中にちょっとした情報を意図的に埋め込んであるのも上手いなと感じるところ。
#リオの料理の下手さや、ユミナの服のセンスが痛いとかは明確だけど(笑)。

多分、各キャラの過去編が一通り終わったので、今回が転換点かなー、と思っていたら、夏の終わりを告げるような、そんな電話がきっと物語の転換点なんだろうな、と思いました。

季節も演出的に意味があるならば、これまでの春と夏の季節の移り変わりから、秋から冬へと向かっていく、これもまた意味があるんだろうな。

長引く休戦協定、既にこの世を去ったイリヤ皇女。

まだ起動しないタケミカヅチ。

そして亡き皇女殿下の妹=リオ。

秋の終わりには何かしらの波乱の予感。

やはりクライマックスは冬に訪れるんじゃないかなー、と密かに予想。
フィリシアを除いては、まだ各キャラの過去はもう一度掘り下げがあると思うし、ちょうどそういう過去のしがらみと(特にリオ)、その乗り越えイベントが隣国との諍いとリンクするような形で動くと面白いよね。

個人的希望としては、厳しい冬を乗り越えて、春を感じられるエンディングが観たいところです。

この丁寧さがね、またぐっときますよ。

今回は失敗してしまいましたが(笑)、我らがカナタ二等兵には、是非ともこの明るさで、五人の和音を空に響かせて欲しいものです。

危うく周回遅れになるところでした(笑)。
ここ数週間、超・忙しくて他の録画、デュラララ!!以外観れてないなぁ。
でもソ・ラ・ノ・ヲ・トを一番最初に観ることにしてます。やっぱり丁寧な作品には感慨深くなりますな。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 1【完全生産限定版】 [Blu-ray]



ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第7話 「蝉時雨・精霊流シ」 感想

2010-02-22 23:28:34 | ソ・ラ・ノ・ヲ・ト
ここ最近ずっと忙しくて、録画したものを丸々1週間溜め込んでいたのですが、その中でも一番最初に観たのがこの「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト」。
今回のお話は非常に重要なお話になると脚本の吉野さんも言っていたので、ちゃんと時間を取って観ようと思っていたのでした。

そしてやはり予想通り、とても重要なお話でした。
フィリシアの笑顔に隠された過去。
いつも笑顔でいる裏にはこんな哀しいお話がありました。

ここまで色々と感じていたことや、予想してきたことが、徐々に輪郭を持って描かれてきた、そんな感じの重要なターニングポイント、という、そんなお話。

相変わらず丁寧で、そしてみんなが素直に心を開くのはやはりカナタで、素直なカナタの雰囲気がみんなを優しくしていく、そういうのがしみじみ出てました。

そして何よりも、カナタ、リオ、フィリシアをつなぐ人物が全て同一人物であり、なんとそれは皇女殿下であり、リオのお姉さんにあたる人物だった、というのも驚きですよね。
※リオが先輩のように振舞っていたのは、姉を目指す気持ちとか、男っぽく振舞っているのは家に対する反抗だったりするんだろうね。
※そしてその目指すべき姉はもう居ない・・・(今回の精霊流しに願う、とはそういう意味だから)。

みんなが音を通じてつながりあっていくこの物語ですが、その第一の音を作ったのは実は同一人物であり、今はまだ皆そのつながりをしらないけれども、いつか来るべき日にそのつながりが、単音から和音に変わっていく、そういう予感がありますね。

常につきまとう物悲しさ。
それもこの作品の風景の一つなんですが、フィリシアが背負う過去はまさにそんな哀しさの代名詞のような過去でした。

ノエルはそのときも居た、ということですが、それは砲手としてか、それともそこが故郷だったのか、いずれにせよ、ノエル自身も重い過去を背負っているんだろうなぁと予想できますね。

クレハにしても、精霊流しに祈るのは、やはり両親のことで、既に鬼籍に入っていたということなんですよね。
※手紙のエピソードで、クレハが一人淋しい思いをしているところはやはりここに由来していました。


そういう中で、凄絶な過去を背負うフィリシアに、


終わろうとしていく世界に意味はあるのかい?


そう問いかける亡霊に、応えるフィリシア。

意味なんて無くていい。
自分で意味を作ればよいのだから。


と応えるところが、今回の一つ目のホッとするシーン。

そして、もう一つが感想冒頭に書いたカナタという存在が、人を優しくする緩衝材として、フィリシア、クレハ、ノエルも含めて、優しい音を作り出す、そういう存在になっていっている、というのが丁寧に描かれているわけで、こういうのが本当にこの作品は素晴らしいなと思います。
※美術的にも凄く美しくて「フィーエスタ・デュ・ルミエール」=光の祭りが静かに、そして美しく、この作品を象徴する映像でした。


物語は後半に入りましたが、司祭様がリオの姿を見て気がついたように、多分小隊のメンバーそれぞれの過去にもう一度スポットが当たっていくシーンが来るんだと思います。

旧時代の人々が何と戦っていたのか?
それは炎の乙女の神話に関連するであろうことは間違いないと思いますが、第1話でカナタが見たものは何だったのか?
今、まだ続く戦争はどうなっているのか?
それらが絡んでいくというのが僕の予想ですが、脚本の吉野さん曰く、タケミカヅチは完全状態で一度のみ起動するということなので、そのクライマックスと、1121小隊のメンバーが過去から未来へ向き合うクライマックスとがシンクロしてくるとかなり熱いなと思います。

いやー、ほんと良い作品だと思いますよ。僕は。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 1【完全生産限定版】 [Blu-ray]




ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第6話 「彼方ノ休日・髪結イ」 感想

2010-02-11 01:08:07 | ソ・ラ・ノ・ヲ・ト
めちゃめちゃ良い話だった。・゜・(ノД`)・゜・。


いやいや、正直ラストはウルッときてしまいました。

誰かが起こした偶然が巡り巡って誰かの大きな影響を与える、そういう素敵な偶然と、小さな幸せを守るためにみんなが少しずつ頑張っている、という真摯さにぐっと来てしまいました。

この話も、この前の話も、そういう意味では第1話からずっと、この作品って静かで、そして丁寧に作られていて、少しの哀しさと、静かな熱意と、登場人物たちの少しずつの優しさで出来上がっている、そういう作品なんだよね、ということを改めて実感した回でした。

サブタイトルの「髪結イ」がここにかかってくるとはねぇ・・・。・゜・(ノД`)・゜・。

改めて良いお話でした。

脚本の吉野さんがインタビューで仰ってましたが、この作品のやりたかったことの一つに、女の子たちの日常を丁寧に描いてみたかった、というのがあり、これは第1話を観たときからずっと「丁寧な作り」を意識して観てきた僕にとっては嬉しいお話でした。
大人の本気をなめてはいけません。

AパートとBパートの時間軸をわざとずらして、オーバーラップしながら、2つの物語を視聴者だけが俯瞰して見れるという、なかなかに贅沢な作りだったのですが、Aパート、Bパートともに共通して、登場人物たちが自分たちの優しさを少しずつ持ち寄るようなつくりになっていて、それがA・B全く違う話なのに、エピローグ的なカナタとリオの会話に収斂する、というのがとても素敵でしたね。

カナタが起こした偶然は、巡り巡って素敵な偶然を引き寄せた今回。

しかしながら、実はカナタが起こした偶然はそれが最初ではなく、一番最初に起こした偶然は、他でもない、リオが見につけている鈴をカナタが再び探し当てるという偶然を引き起こしていて、きっとその鈴はこの先の物語で語られていくファクターになると思うけれども、巡り巡った偶然が他人の人生に影響を与える、きっとそれを奇跡と言うのかもしれないですね。

今回カナタの起こした偶然は、心を閉ざしていたミシオの本心を引き出して、ユミナが一番大事なんだという大切な思いを受け入れる(受け入れられなかったのはそれまで幸せだった頃の家族の思い出があり、受け入れることでその思い出が風化してしまうのを恐れていたからなんだと思う)、というとても素敵なハプニングに至るわけで、それがAパートのギャングアクションとうまーくリンクしてるんだから、ニヤリとさせられるところです。

ちなみに、作中に登場する「漢字」ですが、今回赤ちゃんの命名時に使われた「美穂」という字も、一般の人は既に読めなくなっている文字で、こうやって意味を教えてもらって、魔よけのように使われているそうです。

次回はどうも待ちに待った小隊長さんのお話みたいです。
色々と苦労してそうな小隊長さんですが、結構重要なお話になるのではないかと期待してます。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 1【完全生産限定版】 [Blu-ray]




ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第5話 「山踏ミ・世界ノ果テ」 感想

2010-02-04 22:20:26 | ソ・ラ・ノ・ヲ・ト
これまでで一番ニヤニヤしながら観てしまった第5話。


予想としてはそろそろ小隊長のお話かな、と思ってましたが、小隊長のお話はもう少し先な感じかもしれないですね。
今回はカナタ、ノエル、クレハの3人を鍛えつつも、先輩たちがこれまで見てきた景色を追体験する、というものでした。
それを見守る先輩たち、というのもきっとこれまでと同じ光景だったんでしょうね。
#クラウスはこれまでもその光景を見てきたんでしょうね。
#イノシシの登場は同じだったかどうか分かりませんが(笑)。


相変わらず美しい背景描写で、どの絵を見ても綺麗。

そしてラストシーン。

夕日に映る、世界の果て。

いつもこの作品は、美しくて丁寧で、そしてどこか哀しい。

それを象徴するシーンでした。


ノーマンズランド=不毛の大地

Noman's Land=誰のものでもない土地なのか、誰も居ない土地なのか、世界はもうこうなってしまっている。
きっと海も無いのかもしれない。

こうした哀しさの予感がカナタたちの隣には常にある。

けれども、カナタたちは今を一生懸命に生きる。

そういうコントラストがもの哀しくて、儚く見えるんだろうね。



色んなものを今積み重ねて静かに伏線が出来上がっている感じですが、こういう日常がずっと続いたとしても僕個人としてはこの作品好きなんで良いなぁ。

今回も細かいところでは、クレハには手紙が来ない=ひょっとすると家族がいない、ということかもしれないし、ノエルも教授?からの手紙であり、家族からではない。
#教授が何者か?というのは追々語られると思いますが。
リオはリオでやはりあの手紙は父親からだと思うのですが、おそらく母親を巡る確執があるんだろうと想像。

そういう意味で小隊長だけが謎。
#名前も漢字が当てはまらないしね。

やはりクレハの言うように黒いのか(笑)。


今は静かに伏線が積み上がっている状態なので、これまで通り、静かに楽しみにしたいと思います。
#今回はニヤニヤ楽しんでしまいましたが。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 1【完全生産限定版】 [Blu-ray]


ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第4話 「梅雨ノ空・玻璃ノ虹」 感想

2010-01-30 13:16:29 | ソ・ラ・ノ・ヲ・ト
今回も非常に美しく、丁寧で、そして静かに感動的でした。
『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』は静かに楽しみたい作品なのでした。

戦災孤児→戦車(軍人)→ガラス→ラッパ→青空、という流れが美しくて、カナタのラッパが青空に響いていくシーンはこの作品を象徴するような綺麗で丁寧なシーンで、これはまた良いものを見たなぁ、としみじみ。

フルスペックハイビジョンで是非観ていただきたい美しさ。
丁寧な仕事されてるなぁ、と毎回思いますよ。

今回フォーカスが当たるのは順番としてもノエルで、今まで一番何を考えているかが難しいキャラであったノエルの考え方、思いにスポットが当たったわけですが、どういうキャラだか分からなかったからこそ、そこでの心情吐露が印象に残るのでした。

この作品の大きなポイントとして予想するのは、カナタというキャラを通じて、これまでの1121小隊のメンバーが持っていた心のトラウマ的なもの、拘ってきてそれでも誰にも言えなかったこと、というのが、カナタが持つ雰囲気を通じてお互いに共有し合いながら、5つの音として共鳴していく、そういうところが一番の見所(特に前半はその仕掛けで、後半はその仕掛けが共鳴という効果を持ってクライマックス)になるんじゃないかなぁ。

多分、みんな家族に対して何らかの思うところがあり、1121小隊は女子だけの部隊だけど、今回も台詞としてあったように、お母さんのようだな、とか、家族的な雰囲気がとても溢れているんですよね。
きっと、過去にどこかで無くしたものや、気に病んでいたことがそれぞれにあって、この小隊を通じて過去と向き合って、心が融解・溶解していく感じがしますね。

カナタは味噌っかす、リオはおそらく父親との確執、クレハが最年少で部隊に参加している理由(おそらく家族の関係?家族がいないのかもしれない)、そして今回のノエル。

ノエルの戦災孤児からの反応と、彼女の博識ぶりからすると、ノエルの実家は軍人家系とかだったりするかもしれないですね(違うかもしれないけど(笑))。
もしくは戦争・軍人そういうワードで、過去に何かしら人を殺すのに関わってしまった、というようなそういう影が見えますよね。

ソ・ラ・ノ・ヲ・トは美しいながらもどこか哀しい。
それはそういう影がキャラにも、そして終末を迎えそうな世界にも見え隠れするからなんでしょうね。


そういう哀しさが見隠れする中で、カナタがノエルに、戦車や軍人という存在自体が悪いのではなく、自分がそれをどう捉えているかが問題なんだ、軍人だからとか、(ノエルが一生懸命修理している)戦車だからとか、そこを気にしなくても大丈夫、という、ついつい人の心情を吐露させてしまう雰囲気でノエル自身を落ち着かせてあげる、というシーンはソ・ラ・ノ・ヲ・ト序盤の象徴的なシーンだと感じます。

また、そこからは古き良き時代のジブリ作品のにおいがして、ガラス工房の職人さんたちはそういう温かい雰囲気がにじんでいるのが良いですね。

その中で、ラッパ手としてどんなに練習しても上手くラッパが吹けない悩めるカナタに、カールおじさんが、


俺がこういう形にしようとしてるんじゃねぇ

ガラスがな

こういう形になりたがってるんだ



と言って、ガラスを見せ、それにインスパイアされる形で、外に駆け出し、


素晴らしく蒼い空の下、


カナタが初めて「音楽」としてのラッパを吹く。


最高に美しいシーン。
ここは是非地デジで、フルハイビジョンで観て頂きたい。


このガラスのような透明感。

素晴らしく蒼い空。

そして鳴り響く音楽。


これがこの作品の持つ「色」であり「雰囲気」なんだな、と感じることができるシーンでした。

やっぱりカナタは良いですね。

周囲の緩衝材として、人の気持ちをやわらげる効果を持っています。


今回のタイトルのように、梅雨の空から、玻璃=ガラスの虹へと変わっていく、そういう美しさ。


各キャラにはまだ影の部分が残っていて、それが後半にもう一度それぞれにスポットがあたると思いますが、そこはきっとこの作品の谷となるのかクライマックスとなるのか、楽しみなところであります。

きっと5人の奏でる五重奏、美しいと思います。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 1【完全生産限定版】 [Blu-ray]


ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 第3話 「隊ノ一日・梨旺走ル」 感想

2010-01-20 00:03:59 | ソ・ラ・ノ・ヲ・ト
やっぱりこの作品好きだなぁ、と改めて思った第3話。

ド派手なアクションや、奇想天外なストーリー展開を見せるわけではなく、静かに、美しく、そしてどことなく哀しい感じのある、それでいてどこか温かくて、とても丁寧な、そういう作品なんだよね。
世の中的なセールスとか、そういうのを抜きにして、個人的にはとても好きな良作だと思うんですよね。

第2話ではクレハの心の内側と、カナタが小隊に改めて迎え入れられるエピソードでしたが、今回は天真爛漫で楽観的のようなカナタだけれども、やっぱり新しい環境に馴染むためにどこか無理をしていたり、自分は「味噌っかす」だから、余計に頑張らないといけない、という社会人になって最初の新人さんが経験してしまう、少しだけ繊細で、それによって縮まる距離がある、そんなお話。

また、カナタという存在は多分、周りの人を巻き込んで、人の気持ちを素直にさせてしまう効果を持った存在なのかもしれないですね。
第2話のクレハ、第3話のリオ、どちらも図らずも自分が隠してきた胸の奥にある感情をアクシデントを通じながらも、いつの間にか吐露してしまう。

吐露することによって、何かを乗り越えて、少し気持ちが楽になる。

カナタという存在は、そういう緩衝材なのかもしれないですね。

リオの場合、おそらくお母さんを病気で亡くしていて、そのときの怪しげな宗教?に頼ったことで救えなかったという苦いトラウマのような経験があって、それがカナタの病状とかぶってフラッシュバックしちゃう。

それが教会のフォーチュンクッキーを嫌がるバックグラウンドだったわけだけど、目の前で苦しむカナタを救うには、そういうトラウマを乗り越えて、教会に助けを求める、というリオ自身の救いにもなっていた、そんなちょっと素敵なお話。

多分、みんなどこか哀しい過去を心に秘めているんだろうけど、それをカナタが加わった日常を通して、わだかまりが溶けていくのかもしれないですね。

また、リオの師匠とカナタがあこがれた人は同一人物だということが判明したわけですが、これもまた運命的。

リオが一番幸せだったときの記憶とそれに連なる音楽が「アメージング・グレイス」だったんでしょうね。

たぶんその師匠とのお話がまたキーポイントとして今後出てくるんでしょうけれども、それは楽しみに取っておきたいと思います。

あと、リオのお父さんのお話はまた後で出てくるんだろうなぁ。


「味噌っかす」というお話と、戦車小隊の各隊員の話、そして音楽。

これが「アメージング・グレイス」というリオ・カナタにとって想い出の曲として収斂するところが非常に美しい。
※また旧世代のテクノロジーを満載した動かない戦車が、今は高価なミュージック・プレイヤーとして存在しているところもポイント。


多分12~13話構成になると思うので、小隊の日常をノエルと小隊長まで含めて描いて、後半に転換点が来ると思いますが、その後半を考えるに、この日常描写はとても大事なんだろうなぁ、という予感。

河に眠る(おそらく)旧世代の遺物、超・破壊兵器?の復活を目論んで、隣国が国境に攻め込んでくる、という展開も考えられるので、そのとき、伝説のように火の乙女として5人が犠牲になるのか?それともその伝説を乗り越えていくのか?というような妄想も膨らむところです。

静かに、そして丁寧に描かれる物語。

ちょっと楽しみです。


ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 1【完全生産限定版】 [Blu-ray]