蒼穹のぺうげおっと

-PEUGEOT in the AZURE- マンガ・小説・アニメの感想を書き流すファフナーとエウレカ好きのサイトです

超個人的お勧め小説 緊急企画 『夢守教会 少女のケニング』

2004-12-24 18:46:22 | 小説 感想
本来は本日、超個人的お勧め小説第1位の発表をしようと思っていました。
しかし、どうしても「今日」紹介しなければならない素晴らしい作品に出会ってしまったため、急遽予定を変更してこの作品を紹介したいと思います。

■相羽裕司 【夢守教会(ゆめもりきょうかい)】シリーズ 第1話「少女のケニング」

相羽裕司=あいばゆうじと言えば、うちのブログに来て頂いている方には馴染み深く、ガンダムSEED、ガンダムSEED DESTINYのみならず数多くの作品について非凡な鋭さと冷静さをもって考察と言う名の文章を構築していける、恐らくこの先執筆という世界でひとかどの人物になるであろうと個人的に思っている、そういう23歳の青年です。

その昔、「侍魂」の影響によって多くのテキスト系サイトが生まれたように、その規模は違えど彼の影響を受けてサイトを立ち上げたそれなりにあるのではないかと思っています。
かくいう私も、彼の前前サイトである「20世紀tought-boy」から彼の文章のとりことなり、「mot × mot」そして現在の「ランゲージダイアリー」になっても変わらず日参するほど彼の文章のファンであり、彼の存在無くしてこのブログを立ち上げることは無かったと断言できます。
つまり、このブログの起源であると言っても過言ではありません。

その尊敬してやまないあいばさんが、「考察する人」から「物語を構築する人」になった。
これは私にとっては大事件だった。
昼休みに入るや否や彼のサイトへ直行し、昼食も忘れて読み耽った。
午後一に客先へのアポイントがあったが、ギリギリまで彼の文章を追い、そして読みきった。
その後、客先への移動中、私の心は大変だった。
感動のあまり、仕事への切り替えを行う心のスイッチをなかなか押すことができなかったから。
こういう感覚を感無量と言うのだろう、一ファンとしてずっと彼の文章を追ってきた一人として素直にそう思った。
この感覚は、これは近い将来、彼の名前が世に出る、そう予感させるには十分だった。

■緻密な計算と構成、そしてそれを支える彼のモチベーション(バックグラウンド)
これまで素晴らしい作品を提供してきた多くの作家さんたちに共通して言えることは、「自分が書きたい」と思うことを軸に緻密な計算に基づいた対比構造を構築したり、複雑な事象を第三者を介在させることで、「自分が書きたい」ことを最終的に浮き上がらせることができる人が多いと想います。
#菖蒲さんなんかは『空の境界』の蒼崎橙子的使い方でしたね。
彼はこれが第1作であるにも関わらず、既にその領域に意識的に踏み込んでいる、否、意識的に自分のものにしているんですね。

そして対比の構図と共に注目したいのがその世界観の構築にあります。
読者を引き込む世界観を構築するには、自分の中にある世界を整理し、かつ周到な調査・準備が必要になるわけですが、彼はそのどちらも手を抜くそぶりが無い。
これがほんとに第1作かと問いたいところです。

何より心を打ったのは彼がこの作品に賭けた想いです。
彼の過去、そして現在の状況、そしてこの先への想いが存分に凝縮されていて、彼が一貫して主張してきたことが文章として再構築されていました。
彼が本作を「遺書」代わりだと言いますが、是非、その遺書の続きが読みたいものです。
#しかもこの完成度なら対価を払う価値があると思えるよ。

■既に続きへの布石は打たれている
冒頭の理子のシーンから今へのつなぎ、ブレイン教会のピアスの男、菖蒲さんとの出会いなど意図的に描いてない個所もいくつかあり、あいば氏は狙っています。狙っていますよ皆さん。
続きを読みたい方はメルフォから感想を送ってみてくださいね。

■気になるあいばゆうじさんの作品はこちら
Language×Language
【夢守教会(ゆめもりきょうかい)】シリーズ 第1話「少女のケニング」

■その前に以下の布石を読んでから「少女のケニング」を読んでみよう!
布石1
布石2
布石3
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最後に当ブログは、企画によりいろんな作品の応援サイトに期限付きでなりますが(例えば今は蒼穹のファフナー)、あいばゆうじさんについては期限無しでこれからもずっと応援サイトです。

#超個人的お勧め小説第1位は来週発表いたします。

『Shangri-la』に見る蒼穹のファフナー

2004-12-24 12:00:00 | 蒼穹のファフナー
愚かでいいのだろう 見渡す夢の痕
さよなら蒼き日々よ

蒼穹のファフナーを語るうえで外すことができないのが、angelaが歌うOP曲『Shangri-la』とED曲『Separation』。
普通に聞いても十分カッコいい&感動的な曲なんですが、これがまた蒼穹のファフナーのテーマと合致していて、その深さを知ると、もうイントロを聞いただけで涙が出てくる、「激しくも悲しい旋律で奏でる命の歌」というコピーに嘘は無い、そう思えるのです。
つか、angelaはマジでイイです。

今回は26日に迫った最終回へ向けた総集編的位置付けとして『Shangri-la』をテーマにこの作品に込められた意味を振り返ってみたいと思います。

■悲しい宿命を背負った子供たちの成長の先には

流れに身を任せ いつか大人になってゆく
少しずつ汚れてゆくことなの?


この曲を聴いたことがある人なら既にこの部分で切ない気持ちになってしまうと思われるところなんですが、竜宮島の子供たちも平和な世の中に生まれていれば、これは誰しもが通る自問自答だったのかもしれません。
しかし、彼らは生まれた時から世界は戦争の中にあったんですね。
しかも、人類の存亡を賭けた。

熟した果実だけ選ばれて
ナイフで裂かれて呑み込まれる前に


「熟した果実」、これはファフナーのパイロットの適性に掛けられていて、フェストゥムの因子を持って生まれた子供たちの比喩なんですね。
そして「ナイフで裂かれて呑み込まれる」とは、ファフナーに搭乗するたびに増殖していくフェストゥムの因子によって同化してしまう前に、という非常に過酷な状況の中で一騎たちパイロットが必至に生きていることを切なくも表しています。
ゆえにその前の「少しずつ汚れて」というフレーズが、フェストゥムの因子に侵されていくことであったり、戦闘によって心を摩り減らしていってしまうことにかかっているわけです。
既にこの時点であまりに過酷なパイロットの成育条件・環境にこれまでのストーリーを投影するだけで泣きそうです。

■そんな時代だからこそ

僕らは目指したShangri-la
欲望は抑えきれずに
空想にまみれた 「自由」を求め続けた


『Shangri-la』、それは理想郷。
生まれた時から戦争の真っ只中にあり、人類とフェストゥムとの過酷な殲滅戦を繰り返す中で、戦わなくて済む道を目指した理想郷。
それが竜宮島。
遺伝子操作を用い、従来の人とは違う道を模索した竜宮島の人々は大人たちも、そして子供たちもそれぞれの形で、それぞれの視点で「自由」を求め続けたわけです。
大人たちはそれが人の道から外れていると言われようとも、子供たちは今自分たちの持つ「平和」の意味を考えずに「自由」の意味さえ分からないまま、それぞれが「自由」を求めたんですね。

今なら言えるだろう 此処がそう楽園さ
さよなら蒼き日々よ


このフレーズを聴いただけでも泣ける。
この真意は第18話でのパイロット達の決意に現れていて、それこそ子供から大人になっていく成長過程のようにこの決意は涙なしには聞けないものでした。

愚かでも構わない、夢の痕と言われても構わない、竜宮島の「平和」が島の外からみればまやかしだ、偽りだと言われようとも、それでもここには守るべき価値があり、数え切れない犠牲を出しながらも手にすることができるかもしれない「平和」を実現することができるかもしれない、最後の「楽園」なのだから。
今まで外の世界を見るまで色んなことを知ることがなかった、しかし、外の世界を見た「今なら言えるだろう」、ここがその平和を実現することができる最後の「楽園」だと。

例え、自分達が遺伝子工学の化物と言われようとも、ファフナーの電池と言われようとも、それで何が悪い、自分達はそれでも人として生き続けてやる、この島や家族を守る気持ちに偽りはない。
自分たちに遺伝子操作を行ったのは親だが、その親からはかけがえの無い愛情を貰っている、そしてこれまで自分たちが「普通」に生活できるように守ってくれた日々「蒼き日々」に別れを告げ、今自分たちは守られていた存在から本当に守るべき存在になる、さよなら蒼き日々よ・・・。

もう、泣いてイイですか?

■やはり重要だった前半のクール
ここからは2番の歌詞になるんですが、これは一騎が竜宮島を飛び出すまでの前半クールの真意に迫る内容でした。
この歌詞を知っていたら前半クールの見方も違っていたかもしれない・・・、後の祭りですが。
自分も含めて評価が厳しい前半クールですが、そうは言っても後半のあの素晴らしい盛り上がりを考えるとこの前半なしにはやはり語ることはできない、というか前半クールがあるから感動も倍増みたいな(僕は既に録画も無いためDVDで見るしかないんですけどね)。

大切な何かを踏み台にしてまでも
一番高い林檎掴みたかった

無くしてから気付く尊いモノ
幼い僕らは的外れだらけさ

距離を置いてこそ
自分の大きさを知る
未熟な心は
それぞれ分からないまま


これは第11話の一騎が竜宮島を飛び出したところから第15話の総士との「会話」を経て、一騎が何が一番大切なのかを知る前半の最大クライマックスを描くためにあった歌詞ではないのか、と思うほどに切ないですね(もちろん第11話までの話も重要で、一騎だけでなく各キャラも自分の未熟さ、的外れさをまだ自覚していなかったわけですから)。
僕がファフナーの感想を書き始めたのは第13話以降なので、それ以前の記事についてはあぷろんさんの「竜宮島発北極着~諸々雑記帖~」を参考にしてくださいね。
こちらも最終回へ向けて熱い記事を執筆中です。

■そしてラストへ

輝く空は無邪気さを装い 全てを知っていた

この歌詞・・・、切な過ぎる。
蒼穹のファフナー、angelaの歌詞と相まってほんとに切ない物語です。
この蒼穹のファフナーの最終回については、現時点で全く予想がつきません。
それでもこの空は、「蒼穹=広くて青い空」だけは全てを知っているのかもしれません。

さて、最終回まであと数十時間。
たぶんこのオープニング曲『Shangri-la』がかかった時点から泣いているかもしれません(割と本気で)。
もう僕はドキドキでしかたないんですが、最後にどういうエンディングがくるか、しっかり見守りたいと思います。

エンディング曲『Separation』については最終回が終わった時に、改めて考察してみたりしてみなかったりすることにします(えー)。
つか、『Separation』はね、何も考えずに泣いていいんではないかと思うのですよ。
最終回は『Separation』のフルコーラスエンディング希望です。

『Shangri-la』
作詞:atsuko 作曲:atsuko、KATSU 編曲:KATSU
『Separation』
作詞:atsuko 作曲:atsuko、KATSU 編曲:KATSU

■蒼穹のファフナー 公式HP■最終チェックはこちらから


蒼穹のファフナーのOP曲とED曲を収録したシングル
激しくも悲しい旋律で奏でる命の歌

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Shangri-La、Separationを収録したangelaのセカンドアルバム
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