5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

シンガポールに学べ

2010-05-24 23:26:15 |  経済・政治・国際
「アメリカ 一番から脱落」というタイムの《ワールド》コラムのニュースが注目される。

スイス、ローザンヌのIMD(国際経営開発研究所)が毎年発表している《国際競争力イヤーブック》の2010年版が発表され、16年間1位を続けてきたアメリカを3位に蹴り落としたシンガポールと香港が、それぞれ1位と2位に就いたというのである。

このイヤーブック、対象各国が「その政府機関、民間企業国民、インフラをいかに巧みにマネージ出来ているか」の総合的・最新的なランキング資料として高い評価がされているのだそうで、320にもなる事項(経済活動、政府や民間の効率性、社会基盤、輸出、汚職の度合いなど)をもとに、対象58国のパフォーマンスを計測する。

昨年一年間、欧米はもとよりアジアにおいても経済危機に影響を受けた国の多かった中で、シンガポールと香港のリセッションから抜け出るスピードは抜群に早かった。「競争力」とは、パフォーマンス改善というだけでなく、ダメージコントロールの力であり、回復力の強さでもあって、その点でこの二国はリセッションに対する反発力の強さを見せてくれたというのがIMDの評価だ。

ホンコンとシンガポールは、周辺のアジア地域への力強い拡張政策が成功して利益を上げ、2010年の第一四半期、シンガポール経済は13.1%、中国は11.9%の驚異的な復調を見せている。欧州が目論んだ1%成長をも達成できずにいるのとは好対照である。

3位に落ちたとはいえアメリカ経済は基本的には傷ついておらず、その市場経済規模の大きさ、技術とビジネスの競争力保持へのリーダーシップから、ダメージは限定的だと判断されている。一方でユーロの弱体傾向から不安視される欧州市場だが、これはギリシャやポルトガル、アイルランド、スペインといったいわゆる「ウイークリンク」の存在に対する不安だけでなく、欧州全体の「負債処理、財政対応策、経済成長」に対する疑問が原因だという。強いファンダメンタルズと輸出推進政策で4位につけたスイスが欧州唯一の例外である。

ブラジル、ロシア、イタリア、中国、一部のアジア地域、ラテン・アメリカなどの新興国たちが工業的基礎力をつけ始めたのがトレンドとして読める。彼らの中には素材・資金・技術・ブランドを使うマーケットが出来、中流層が発生し、自足経済が機能し始めた。たとえば、昨年の中国の輸出の56%が開発国向けに切り替わっている。新しい経済ブロックのスタートである。

ランキングを見ると、5位オーストラリア、6位スウェーデン、8位台湾、9位ノルウェー、10位マレーシア、13位デンマーク、となって、3位のアメリカ以外は全部、小振りの国柄である。オーストラリアは国土こそ広いが、人口は2000万人強だけしかない。

一方、16位ドイツ、22位英国、24位フランス、27位日本、36位スペイン、37位ポルトガル、46位ギリシャと、巨額負債に押しつぶされそうな日本や欧州強国は軒並み低位ばかりである。BRICsでは、18位中国、31 位インド、38位ブラジル、51位ロシアとでこぼこだが、日本は中国に負け、インドに追われるといった形だ。別資料によると、総合ランクのほかでも、日本は経済状況で39位(前年24位)、社会基盤が13位(同5位)、民間部門の効率性が23位(同18位)だというが、いまさら困ったという必要などなかろう。

イヤーブックの分析をまつまでもなく、日本の学ぶべき21世紀型モデルは巨大過ぎるアメリカでも中国でもなく、ランキング上位に入った小国たちだろう。彼らはそれぞれが、歴史的、地勢的に、政治巧者で経済巧者、交易重視、福祉優先なのだから。

先週末には、シンガポールのリー・クアンユー顧問相が来日し、鳩山首相とも会談を行ったというニュースもあった。87歳と高齢だが依然矍鑠としてシンガポールの強力な政治アドバイザーであり続けている。シンガポールの国際競争力を高めている理由のひとつが、彼自身の影響力・指導力にありとすれば、鳩山首相はいまこそ、リー・クアンユーのご託宣を正直に聴く必要がありそうだ。



















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