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5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

テンジャンと八丁味噌

2010-05-25 23:57:16 |  文化・芸術
先月、名古屋を訪問した異業種交流会の韓国人メンバーJさん。彼自身のブログにその時のことを「徳川家康の生地を訪ねて」として書いている。今年の花見は岡崎城だったようだ。つきものの酒のハナシが出てこないと笑ったら、今週の最新コラムは「八丁味噌のふるさと」。やはり「金剛山も食後の見物(花より団子)」である。城見学だけで済むわけがなかった。

「テンジャン(朝鮮味噌)とチョングクチャン(清麹醤)は韓国固有の食品だが、日本にも名前が違うだけでよく似た発酵食品が広く普及している。日本のテンジャンは味噌と云い、チョングクチャンは納豆という。」と、まず両者の類似性にふれてから、八丁味噌の由来と特徴を説明して、テンジャンとの相違点を明らかにする。

家康の岡崎城から八丁(約870米)の距離にあった「八丁村」が「八丁味噌」ブランドの発祥であること。単なる基礎調味料のひとつが、1645年から360年間、19代を受け継ぐ長い歴史を持つという事実も韓国には無いもののようだ。

豆味噌の「八丁味噌」は米と麦は一切使わず、熟成にも2年以上の期間を必要とすること。熟成の温度管理は自然にまかせてあること。木樽の重石の積み方にも匠の手並みを感じ、さらに、創業時の「昔味噌」をそのまま復元しようとするプロジェクトが進行中だということも紹介して、自国のテンジャンとの違いを説明している。

テンジャンは大豆をゆでて粗めのペースト状にすりつぶしメジュという玉にまとめて、枯草菌が発酵を助けるように軒端につるして冬を越す。日本にもあった味噌玉と同じである。

厳冬が過ぎる頃には瓶に塩水とともに入れてさらに発酵させて完成を待つ。出来上がりの液体がカンジャン、塊がテンジャンである。日本でいえば、豆味噌とたまりの関係である。商品としてのテンジャンには麹を混ぜて発酵促進と自然の甘みを強化する方法が取られるというのも、日本の仕込方と同じだろう。

Jさんのブログを読んで不思議に思ったことがある。

日本の味噌は今から約1300年前に中国から韓半島を経て伝えられたというが、他地域が米や麦の麹を多用する白味噌ばかりで、「八丁味噌」のような豆の赤味噌は唯一、愛三岐(三河・尾張・美濃・桑名)の狭い地域でだけ生産消費されるのはどうしてなのだろうと思ったのだ。米の赤味噌は東北日本にも存在するのだが。

WEBをブラウズしてみると、こんなURLを見つけた。「仙台味噌の歴史」というページにはこう書かれている。「秀吉の朝鮮出兵に際し、伊達政宗が浅野長政等と共に蔚山で戦った時、夏期になると他藩の味噌は腐敗するのに仙台藩の味噌は少しも変質せず味も優れていたので、請われて他藩に分ち与え、『仙台味噌』の名を上げたと伝えられています。」

塩味をきつくして防腐効果を高め、自然発酵の進んだ硬めの仙台味噌は兵士たちの栄養と塩分補給食糧として優れていたというのは間違いなさそうだが、戦闘継続状況での兵糧確保も大変なことだったはず。米やテンジャンは地元の農民から買い入れたり、簒奪したりすることも当然あっただろう。足掛け7年に及んだ文禄・慶長の役、朝鮮味噌の味が仙台味噌に引き継がれることはなかったのだろうか。

WEBからは豆味噌の飛び地についてこんな情報も見つかった。徳島県西部に伝わる豆味噌の歴史として「ねさし味噌」という豆味噌が紹介されている。

曰く「秀吉から阿波国を拝領した蜂須賀父子が尾張出身であり、新藩主に随行した家来たちが故郷の豆味噌製法を伝えた。藍や大豆の栽培が盛んで原料確保には事欠かなかったということも、ねさし味噌誕生のミソだろう」というのである。蜂須賀も西国大名のひとりとして朝鮮に出兵しているのだから、仙台藩同様に朝鮮味噌のやっかいになった口だろう。

テンジャンと豆味噌には、秀吉や家康と朝鮮との関わり合いと縁がありそうに思えてくるのだがどうだろう。テンジャンと八丁味噌を食べ比べながら、さらに考えてみたい。







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1 コメント

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新興里のテンジャン (ゆうぜん)
2010-05-29 01:02:05
テンジャンの仕込みに取材した食コラムを芸術新潮の最新号(2010年5月号)に見つけた。

公州から錦江沿いを少し下ったところにある忠清南道青陽郡木面新興里はわずか30人の集落。レンガを大きくしたサイズのミソ玉づくりを始める11月から、年を越して3月の陰暦午の日には、3ヵ月間で発酵が進んだミソ玉を天然の塩水に漬け込む。新興里の手作りテンジャンの完成はさらに40日の後。国産大豆100パーセント使用しているからコクがあって美味しい一級品に仕上がるのだという。
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