森林ジャーナリストの裏ブログ

表ブログに書けない、書く必要もないドーデモ話をつらつらと。

新月伐採の危うさ

2006-08-26 13:02:06 | 林業・林産業

新月伐採」が流行っているようだ。
冬の下弦の月から新月までの間に伐採した木は、虫がつかず腐りにくい、木が反ったりしない、火事にも強い……といいことばかり並ぶ話である。

 

神奈川県でも秦野市森林組合が始めたという記事が、神奈川新聞の一面に載っている。ヒノキを冬の新月期に伐採して、葉がらしした製品を売り出したそうだ。
静岡の天竜で始めたのは知っていたが、そんなに広がっているのかと試みにググってみたら、出るわ出るわ、ものすごい数。かなりの地域で「新月伐採」に取り組むグループが誕生しているらしい。

 

ところが、開けど開けど、みんな好意的なものばかりで、懐疑的に記していたのは『だれが日本の「森」を殺すのか&田舎で暮らす!』プログ、つまりここだけだった(^o^)。(2005年6月28日)
こりゃいかん、もう少し「懐疑的」なことを記さねばならん、と思った次第。

 

なお、別に私は「新月伐採」を敵視しているわけでもなければ、完全否定しているわけでもない。この手のブランド化が国産材を売るのに有効なら、それはそれでよしと思う。しかし、その根拠は、あやふやな「経験」に頼っていることも知っておくべきだ。

木の生長リズムに月の引力が関係あるという考え方なら、満月でも同じはず。それに冬は、木の生命活動がほとんどストップしている……。一世を風靡した人間のバイオリズムも、最近では否定されていたのではなかったかな。
なお私は、新月伐採は含水率を低下させるといったデータ自体が、あやふやすぎて信頼してもよいのか疑問を持っている。腐りにくい、虫がつかないというのも、どれほど客観的なデータだろうか。

 

なお「新月伐採」とは、単に新月の時期に木を伐ることではないらしい。伐った木は谷側に倒すとか、葉枯らし乾燥するなど、ほかにも条件があるとか。

谷側に木を倒すのは理解に苦しむが、葉枯らし乾燥は有効である。あきらかに含水率は下がる。梢も切り落としていたら、木口から水分は抜けやすくなるかもしれない。これを一緒にするなら、何も新月の時期に伐採しなくてもいいのではないか。

 

それに虫がつかない、反らない、などの特徴は、心材(丸太の中心部に近い部分。細胞が死んで木質化が進んでいる)のものではないか、と思わせる。辺材(丸太の外側で生きて成長する部分)まで、そんな効果があるのかどうか。
新月伐採した木の製材は、板にしたのか柱にしたのかによっても違ってくる。その後の乾燥過程や使用状況によっても変化するだろう。

 

なお、「法隆寺にも応用された」と記した記事があるが、その証拠を示してほしい。だいたい法隆寺の木材は、どこから調達したかもわからないのに、どうして伐採方法までわかるのか教えてほしい。
こうしたオカルト染みた情報をばらまくから、信用できないのだ。