東京へ1泊2日で出かけた。今回の主要な目的は、某社の会議に出席するため。
そのため、行き帰りの新幹線チケットは、相手先が手配してくれることになっていた。おそらく経費管理のために、勝手にチケットを購入してはダメなのだろう。
そこで私は、2日目の午後に取材を入れて、それが終わってから帰れるような時間の便を調べて、6時37分発ののぞみに予約を入れてくれるよう頼んだ。
ほどなく、チケットが届く。
さて2日目。会議も取材も無事終えた。その足で品川駅に到着する。
とにかく暑い日であった。駅構内に入っても、全然冷房は聞いていない。考えれば、7月1日から東電管内は電力非常事態宣言をして、節電を義務づけられている。会議先、取材先でも、極めて冷房の効きは弱く、室内でも汗がじっとり滲んでいた。
かくなる上は、期待するのは車内だけである。幸い、行きの新幹線内はよく冷房が効いていた。これはJR東海は中部電力管内だからだろうか。
ジリジリとホームで待つ。チケットの席は12号車だったから、かなり端の方まで歩かされた。
ちゃんと駅弁とビールというサラリーマン出張的アイテムも購入する。駅構内で食べようと思ったのだが、適当な店がなかったのだ。
あと数分で6時37分だ。
ふと、妙なことに気づいた。私のチケットには、「のぞみ5号」となっているのに、ホームの掲示板は「のぞみ117号」になっている。しかし、時間は同じだ。どちらが間違っているのか。まあ、乗れて座れればいいや。
が、再び、チケットを見る。6時37分発。
掲示板は、18時37分発。
あっ、と気づいた。このチケット、朝の6時37分だぞ。間違って予約されたのだ。いくら私が6時と指定しても、午後の取材があるから、と伝えているだろうに。インターネット予約だったのだろうか。このチケットでは、乗れても自由席だけだ。指定席には別の誰かが予約しているだろう。
ホームは、人があふれている。なんたって出張サラリーマンがもっとも多い時間帯。東京発ではないし、指定席は埋まっていると見るべきだろう。これでは、確実に座れない。
駅弁とビール持って、のぞみの車内で立ち尽くすのか。
どうする? 予約し直しなぞできない。時間もない。
そこで、自由席に走った。1~3号車だ。端から端までに近い。満員のホームをかき分けかき分け、反対側までたどり着かねばならぬ。しかし、自由席だって、満員の可能性は強い。東京駅から乗る人で、大半が埋まっているだろうし、品川でも行列しているはず……。
絶望的になりつつ3号車まで来る。やはり列が長い。2号車へ。汗が滲む。
おお、奇跡的に2人しか並んでいなかった。これなら……。
そして気がついた。普通なら、もう列車が到着している時間だ。しかし、まだ来ない。アナウンスがあった。小田原付近で豪雨があり、そのため列車が軒並み10分ほど遅れているのだそうだ。東京駅折り返しの車両もそうなるらしい。
それだ! だから自由席の行列の大半は、一本前の遅れてきた列車に乗り込んだのだ。
結局、12分遅れで「のぞみ117号」は品川着。乗り込むと、わずかに空席がある。そこに滑り込む。3人目だから可能だったことである。幸い空調は十分に効いていた。今日1日で一番涼しいかもしれない。
よし。汗を拭って。弁当を広げて、ビールを開けて、靴は脱いで……これぞオヤジの出張サラリーマンそのものを悦楽を楽しめたのである。