森林ジャーナリストの裏ブログ

表ブログに書けない、書く必要もないドーデモ話をつらつらと。

朝ドラ「あさが来た」はホームコメディだった

2015-12-01 22:11:40 | 書籍・映画・番組など

NHKの朝ドラ「あさが来た」が始まって約2か月。

視聴率は好調のようである。初の幕末スタートで舞台のほとんどは明治という歴史系の設定なのだが、評判もよい。

が、私にとってのこの番組は、土倉庄三郎(に相当する人物)が登場するかしないかが最大のポイントである。というのも、主人公の「あさ」のモデルは、明治の女実業家・広岡浅子であり、彼女の眼目は(つまり朝ドラにとっても最大の見せ場は)、日本女子大学の創設への協力である。

実は、成瀬仁蔵が日本女子大学を創設するのにもっとも力になったのは、土倉庄三郎なのだ。成瀬が頼ったもの庄三郎なら、庄三郎も自らの娘を全員高等学校に進学させて、次女はあり目利留学までさせるほど、女子教育に熱心だった。
そして成瀬に広岡浅子夫人を訪ねるよう指南したのも庄三郎。その後、浅子と庄三郎は債務保証までして、二人三脚で大学創設のために成瀬に力を貸す。

 

だから「あさが来た」にも庄三郎に相当する人物が登場するかもしれない、と期待している。だから番組も見ている。

……しかし、今のところ期待は薄れていくばかりだ(-_-)。。。

だって、番組は歴史的な事実関係をぶっ飛ばして、朝のホームドラマ……それもコメディになっているからだ。このままでは庄三郎は登場しないか、してもチラリ! で終わりそうである。

かなり事実と違う部分もある。たとえば、浅子が炭鉱開発に取り組んだのは、明治の後半、彼女にとっても人生後半(40歳近くになってから)のはず。それを明治初年に設定しているし、回りの人物関係の年齢もかなり違う。また明治維新の混乱時に加野屋に相当する加島屋を支えたのは、大旦那や大番頭連中であるのに、番組の中ではみんなフヌケ状態に描かれているし、五代友厚なんぞは、ほとんどロリコン? でルー大柴的な道化扱いだ。

私の感想としては、「織田信長や豊臣秀吉、徳川家康らが登場するドラマというから、歴史大河かと思いきや、主題はおねが秀吉の浮気に怒ってドタバタ繰り広げるホームコメディであって、気がつけば本能寺の変もスルーされていた」番組……気分(^^;)。

ま、まだドラマは半分も達していないから、今後に期待しましょう(⌒ー⌒)。

 

なお、別の観点から気になるところがある。姉の「はつ」の描き方だ。史実としては、早死にするのを生きていることにしたのはいい。ただ天王寺屋が破産して、夜逃げ……した先が百姓?

これって、落ちぶれたら農業をやるという発想ではないか。明示初年でも、金もないのにどうして農地を手に入れたか。技術もないのに農作物つくれるのか。そして野菜つくるだけで家族が食って行けるのか。農業をなめてるんじゃないか。

あげくに和歌山でミカン栽培ですか。。。甘く見ているなあ。

 


またミスリード! 「風立ちぬ」

2013-09-01 15:05:52 | 書籍・映画・番組など

ジブリのアニメ映画「風立ちぬ」を見た。

またもや、見事なミスリード。宣伝文句や世間に出回っているレビューと、内容は大きく違っているではないか。オーガストウォーズと一緒?だ。

たいていの紹介文には「零式艦上戦闘機(零戦)を設計した実在の人物、堀越二郎」が主人公となっている。それは事実だ。ただストーリーは架空だし、基本は妻となる菜穂子とのラブストーリーと行ってよい。それも大人の。が、ミスリードなのはその点ではない。

いかにも零戦を設計するまでの苦悩を描いているかのように語られ、なかには「物語は零戦を造るまでで、その後の活躍や敗北は描かれていない」とまで解説しているレビューもあった。

違うのだ。このドラマには零戦は登場しないのだ。

そもそも上記のポスターにある飛行機は、零戦ではない。

翼が逆ガル式(Wを描いている)のは、零戦ではない。堀越次郎がつくった飛行機の中では、9試単式戦闘機だけだ。それも試作1号機だけで、2号機は真っ直ぐな水平翼になっている。この2号機が正式採用されて96式艦上戦闘機になる。

この成功の次に任された12試艦上戦闘機こそが、零式艦上戦闘機、つまり零戦になる。

だが、映画は9試1号機を完成させたところで終わっている。わずかに最後、焼け野原を歩く堀越の心象風景(夢?)の中で、零戦らしき残骸がたくさんあったが……。

宮崎駿は、零戦をつくる堀越次郎を描きたかったのではなく、飛行機が好きな堀越が初めて成功させた9試で終わらせたんだな。(その前の7試は見事失敗。墜落したのではなかったっけ。)でも、宣伝上は、ネームバリューから零戦を大きく取り上げざるを得なかったのだろう。

また空を飛ぶシーンは、たいてい夢の中である。そこで浮遊感を出しているが、全体として地味。沈頭鋲の話を延々とやったり、登場人物みんなが「おー!」と感心するイッピンは、単なる金属板だったり(超ジュラルミン製なんだけどね)、マニアックすぎる。

さらに背景となる大正から昭和初期の歴史も知らないと話している内容が理解できなかったりする。ストーリーも、簡単に数年飛ぶし……。

ちなみに、先にも書いた通り、これはラブストーリーである。戦前が舞台もかかわらず、キスシーンの多いこと(^o^)。初夜まで描いている。子供連れで行った親は困ったかもね。

いや、子供は映画館内を走り回ったり、退屈でしゃべりだしたりしていたよ。まったくもって連れてくるな! と叫びたかった。

……でも、また見たくなる映画だな。。。

 

 

 

 

 


オーガストウォーズ

2013-08-23 15:27:28 | 書籍・映画・番組など

久しぶりの映画。

話題の『風立ちぬ』を見たいと思っていたが、なぜか『オーガストウォーズ』へ(笑)。

夏休みで満員の中映画を見るのが億劫なのと、たまたまツイッターで『オーガストウォーズ』を見て「ロボットSFと思って見に行ったのに、騙された」うんぬんの書き込みを見たから。「でも傑作」なんだそうだ。

 それで映画のサイトに行ってみると、上記のような写真があり、宣伝文句に現実の戦争(2008年の南オセチア紛争(もしくはグルジア戦争・8月事変)を題材に、ロボットがクロスしていると煽っている。

まあ、ツイート自体がネタバレであり、だいたいの仕掛けはわかってしまったのだが、ちょっと興味をそそられ、しかも上映館が少なく(大阪で2館)、明後日で打ち切りとわかれば、行きたくなるものだ。

これまでも評判はイマイチの穴場的映画をチョイチョイこのブログでも紹介してきたが、またその癖が出たのである。

で、見ました。

いやあ、よかったよ。ロシア映画の別の一面を見た。たしかにロボットSFではなく、宣伝のミスリードは酷いのだが、作品はよくできている。とくに地上戦の凄さは、ハリウッドより凄い。しかもリアル。ロシア軍の訓練や戦術はこのようにしているのか、とさえ思わせる。ほとんどロケじゃないかな。役者も知った顔がない分、本物ぽく、一瞬ドキュメンタリー映像か、と思わせるほど。

ヒロインもいいねえ。男にメロメロな女から、息子の救出に向かううちに顔つきが変わる。最後は軍の車をかっぱらい敵の前線基地を突破するのだから。ロボットも、実は心理描写の繊細なアイテムになっていたりする。

しかし、ロボットSFを期待した向きには飽きられるだろうなあ。

 


「猿の惑星 創世記」より「銀色のクリメーヌ」へ

2011-10-21 00:40:29 | 書籍・映画・番組など

映画「猿の惑星 創世記」を見た。

猿が人を支配している世界を描いて、驚愕のラストとともに名作の誉れ高い「猿の惑星」の前日談だ。なぜ、サル(正確には類人猿)が、人間より賢くなり世界を支配したのか。それは、アルツハイマー病の薬を開発する過程で、知能を発達させたチンパンジー・シーザーが誕生し、やがて人間から独立していったのだ……。

で、ここで感想・評を書くことを期待しないでほしい(笑)。いや、すこぶるよい映画だった。私の見た今年の映画で一番の収穫(今の時点)と言ってもよい。

が、ここでは「感想」ではなく「連想」したことを書く。

まず一点。この映画は、「猿の惑星」シリーズの一つに見せかけているが、それはシチュエーションを借りただけではないか。むしろ私はアルジャーノンに花束をを思い起こした。知恵遅れの人物を、医学の力で天才にしてしまうという設定に似ている。そして、それがもたらす悲劇も……。ただ、終わり方が正反対である。

そのうえで、類人猿を実験動物にすることの悲劇から連想したのが、「銀色のクリメーヌ」である。これは、清原なつのの漫画だ。

清原なつのを知っているかなあ。一応、少女漫画家である。一応、というのは、活動の舞台が少女誌以外にも広がっているから。かつては「りぼん」や「ぶ~け」などだったのだが。最近では「千利休」の伝記を書き下ろした(といっても数年前だけど)。そして、ファンは男がやたら多いらしいのも少女漫画家でない(笑)。

内容も、ラブコメや歴史もの、SFといった少女漫画風の設定にも関わらず、じんわり深い。ちょっと純文学的でもある。初期の名作「花岡ちゃんの夏休み」は大学が舞台だし、中高生向きと言えない、少女漫画のお約束をぶち破る物語の展開が行われた。

私は、大学時代に下宿先に捨てられていた「りぼん」で読み、夢中になった。その後、彼女の漫画を買い集めたりもしている。今は、復刻版も出ているから楽。

で、「銀色のクリメーヌ」。実験動物としてのチンパンジーを人間として扱いつつ飼う科学者の話だ。作品では、このチンパンジー(クリメーヌ)を少女として描く。だから最初は混乱させられるのだが、この表現手法が実に効果的だ。

実際、チンパンジーは知能の研究に多く使われた。人間の子供と一緒に育てて成長の差をみることも行われた。比較心理学の分野だ。それは学会の流行でもあった。音声言語は難しくても、手話による意思疎通が取られた。
しかし、やがて研究の流行の波は去り、「人間として育てられた」チンパンジーは、扱いに困ってしまう。また大人になったチンパンジーは凶暴になり、一般家庭では飼育するのが困難になる。結果として、動物園に引き渡されたり、実験動物(こちらは知能ではなく、肉体を医薬品開発などに利用される)として送り込まれるのだ。

「銀色のクリメーヌ」は、その状況を残酷なまでに描いている。(最後は泣けるよ……。)

今回の「猿の惑星」は、そのオマージュではないかとさえ感じてしまった。実験動物の反乱から独立、そして征服へとつながるのだから。人間の少女として描かれたクリメーヌの悲しみと、チンパンジーの外見で人の表情をしたシーザーの悲しみは、表裏一体だ。

さて、ここで私が連想したのは、「銀色のクリメーヌ」だけではない。いや、正確にいうと、「銀色のクリメーヌ」からさらに連想が続いた。それは自らの若き頃だった。

実は私もサル学に足を半歩踏み入れたことがあるのだ。

私が初めて訪れた海外は、ボルネオ島。目的は、野生のオランウータン調査だった。その際に接触したのが、当時静岡大学で比較心理学を教えていた岡野恒也教授だった。
彼は、かつてオランウータンを探してボルネオを訪れていた。が、実はその前に自らの家庭で、自分の長男とチンパンジーを一緒に育てる実験を行っているのである。その記録は、本人の本もあるが、同時に奥さんがつづった「もう一人のわからんちん」にリアルに描かれた。

私は、それが縁で教授ともつきあいが続き、サル学の魅力にハマったのである。

が、同時に結末も知る。育てたチンパンジー(サチコという名だったと思う)は、やがて飼育が難しくなり、多摩動物園に預けられる。人間として育てられたのに、チンパンジーの群れに放り込まれた彼女の気持ちはいかばかりだったろう。

岡野教授は、後に「悲劇のチンパンジー」という訳本を出した。それこそ、研究用チンパンジー・無数の「クリメーヌ」の末路を描いた作品だった。

それゆえ、「猿の惑星 創世記」から「クリメーヌ」を、そして「サチコ」の、飼われたチンパンジーの悲劇を連想したのである。それは、サル学に夢中になった時代の自分を連想させることにもつながった。

 


駄作『サンクタム』を観た理由

2011-10-07 14:06:11 | 書籍・映画・番組など

映画の『サンクタム(聖域)』を観た。

製作総指揮がジェームズ・キャメロンで3D映画である。『アバター』ほどではないが、前宣伝を結構やっていた。が、人気のほどは『アバター』にはるか及ばず、公開から2週間ほどで尻すぼみになっている。上映館も随分減ったようだ。

内容は、パプア・ニューギニアの巨大洞窟探検隊の話。洞窟をドラマの舞台にすると決まっているのだが、なんらかの事故で入り口が塞がり、未知の出口を探して洞内をさまよう……というものだ。途中でグループ内にいざこざが起きたり、裏切り者が出たり、まったくステロタイプなストーリーである。

この映画を観に行った。事前の評判からも駄作らしいことはうかがえた。それなのに、高い3D割り増し料金を払ってまでなぜ観たのか。

それは、ひとえに洞窟もぐり(ケイビング)を描いているから(笑)。

パプア・ニューギニアのジャングルに、巨大な竪穴があり、そこから無数の横穴が広がる世界は、実際にある。実は、私の友人も、そこへ探検に出かけている。(20年くらい前の話だけど。)

また私の大学の後輩たちも、タイの奥地メーホーソンで同じような大洞窟の探検に挑んだ。

いずれも洞口が直径1キロくらいあり、深さ数百m降下して底に着くと、横穴になっている。

そういえば、日本でもっとも深い竪穴と目される新潟県のマイコミ平の洞窟群を、関西大学探検部が40年くらい前に調査している。そして青海千里洞では500mくらい縦に下りてベースキャンプを築いたところ、大雨となり、濁流が流れ込んだらしい。

その経験者に話を聞いたことがあったが、洞窟内にも嵐が起きるのだそうだ。猛烈な強風と横なぶりの水しぶきが渦を巻く。

この事件は、マスコミに近くの白蓮洞と間違われて、洞窟遭難事件として世間を騒がしたが、結局、全員無事に脱出している。当の本人たちは、安全な洞内の高台に避難して、ゆっくりと水が引いてから脱出したのだった。(この資料は、いま手元にないから正確に説明できない。)

私も、そんな大きな穴ではないが、未知の洞窟を求めて南洋を放浪したことがある。
そのことについては、「不思議の国のメラネシア」を読んでいただきたいが、ソロモン諸島のシンポ島の火山の火口洞窟にもぐった。この件に関しては、拙HPにも掲載している。(ナンバワン、ソロモン!)

また、ちょうど知り合いが、つい最近、小笠原諸島の母島を訪れたことをブログに記していたが、私はかつて母島のジャングルの中にあった岩の隙間から降下して、地底に巨大ホールを持つ洞窟を発見したことがある。あの鍾乳石はすごかった。そして無数に落ちていた骨、骨、骨。

それだけに未知の洞窟の探検話には惹かれるのだ(^o^)。

さて、『サンクタム』は。。。映画としては、やはり駄作であった。まあ、退屈しない程度に物語は展開するが、怪我した同僚をあっさり安楽死?尊厳死? させたりするか? だいたい未知の出口を探すより、嵐が終わり水が引くのを待って、脱出するのが王道だろう。未知の出口なんぞ、期待するのは間違っている。どちらかというと、ケイビングではなく、ケイブダイビング映画だ。

それに、3Dの効果がイマイチだった。少なくても『アバター』では見ほれる映像が展開されたのだが、洞窟内は暗く、しかも水中シーンとなると立体映像の価値が減じる。もともと遠近感のない世界だからだ。

しかし、私にとっては、追体験なのである(^^;)。なんか、過去の体験がフラッシュバックする。
ケイビング技術的な面で見ると、かなり正確に描いていたように思う。(ケイブダイビングに関しては、ありえねえ、の連発だったが。)

真っ暗闇のロッククライミング。高さ数十メートルの岩にしがみついたときの悲壮感。シングルロープテクニックで垂直降下する感覚。圧迫感のある岩の隙間を進む恐怖。濡れた身体を引きずりながら動く寒さ・たいぎさ。暗黒の川の冷たさ。地底湖で泳ぐ密かな楽しみ。狭い岩の間を匍匐前進する身体の痛み。ヘルメットがつかえて身体が動かせなくなった時のパニック感。その奥にある未知の空間に出たときの爽快感。その美しさ。

しかし、今の私には無理だな。そう実感した。もう、私に洞窟探検はできない。あれは若気の至りだよ。

ケイビングには、身体のわけのわからない筋肉を使い、猛烈な疲労感と戦うのだが、それを跳ね返しても未知の奥に進みたい気持ちを持続させねばならない。無理。今の私には無理。とても恐怖に耐えられない……と、映画館でうなっていた(^^;)。

まあ、そんな青春時代の感覚を取り戻すために映画を観に行ったのだよ。

 


『割り箸はもったいない?』ネットで続々。

2007-05-22 01:20:29 | 書籍・映画・番組など

『割り箸はもったいない?』でネット検索すると、早くも2万件以上がヒットするようになった。

もちろん多くが、ネット書店の販売だったりするが、それ以外にもブログなどで書評を書いてくれるところが登場している。よい書評、けなす書評、どちらも売れ行きに貢献するので歓迎(^o^)。
ただ、内容によっては、ちゃんと本文読んでいないのではないか、一部斜め読みしただけで書いたのではないか、と思えるものも散見する。とうもタイトルに過剰反応するのである。もう少し正確に言えば、タイトルから感じる「反環境の臭い」に過剰反応すると言えるかもしれない。

そういえば、『「森を守れ」が森を殺す!』もそうだった。読まずに批判する人が相次いだ。そして、よく売れた(笑)。そう考えれば、幸先よいかも。


森林と木材を活かす大事典

2007-02-17 01:08:22 | 書籍・映画・番組など

産業調査会から「森林と木材を活かす大事典」が届いた。

実は、この事典に執筆している。昨年の3月のことである。仰天するほど安い稿料であった。しかも写真と図表もこちらで用意しなければならない。それでも引き受けて3項目ほど書いたのだが、出版がどんどんずれて、夏のはずが秋になり、年を越してしまった。しかも無のつぶてなので、いささか怒っていたところである。

届いたのを見ると、なかなかの迫力である。A4版オールカラー2巻セット。全720ページ。執筆陣は190名。ざっと見たところ、知り合いも結構いるが、みんな研究者や林業家などでフルタイムのライターは私だけだろう。

項目は、地球環境から森林の諸機能、木材利用、人と森の共生、林業活性化による地域振興、建築建設、ライフスタイル……。

私が気に入ったのは、充補版の世界木材図鑑だ。150種の木材の写真と用途などが紹介されているが、美しいのだ。

で、ここからが肝心なのだが、この送ってきた大事典、実は執筆者への贈呈ではない。見たら送り返してくれ、と伝票付き。
なにしろ定価は、2万4000円である。190人に贈呈したら大損害になるからだろう。事情はわかるが、ちょっとせこいぞ。

自分が執筆したところだけコピーして送り返すかと思ったが、手に取ってしまうと、それなりに手元に残したくもなる。送り状には買取も勧めているが、稿料から引くそうだ。これが狙いか? 著者割引はあっても、ほとんど消えてしまうな……。1年前に書いた原稿だけに、その当たりの意識が微妙である。

どうしようかなあ……。


速水勉の炯眼「美しい森をつくる」

2007-01-29 11:56:16 | 書籍・映画・番組など

速水勉著の「美しい森をつくる」(日本林業調査会)を読んでいる。

速水勉氏は、有名な速水林業の8代目、現当主の速水亨氏の父上だ。ある意味、速水林業の基礎を作った人とも言える。この人が50年に渡って専門誌などに記した原稿を集めたのが、この本。

最初は、あまりに古い記事(もっとも古いものは昭和34年)なので、現代に合わないだろうし、まあ回顧録みたいなものかと思っていた。
ところが、目からウロコがぼろぼろ落ちる。電車の中で読み始めたのに、思わず線を引いてしまった。

たとえば1981年に書かれたものには、政府の見通しから国産材時代が来るのは、2005年からと記している。これは実態とは全然違うが、この年に木材自給率が反転を始めたという点では、多少かすったかもしれない。が,本当に驚いたのは、その後の分析である。
国産材が外材に破れたのは並材の分野であり、「将来、日本の経済社会が順調に展開して、木材需要が次第に大きくなれば、国産木材価格は高くなるとは考えられない」とある。

写し間違いではない。木材需要が大きくなれば、価格は高くならない、というのだ。国産材が十分に供給できない点から外材の価格に引っ張られることを示している。

そのほか、労働集約的な林業から資本集約的な林業への転換の必要性とか、大正昭和の始めにあった木材不況と現在の木材不況の類似性とか、除草剤の有用性とか、下刈りや間伐の省力化とか、結構うなる話が多い。
もちろん、最近の筆によるものもある。緑陰の父子対話なんて素敵だ。

常に新しいことをやり続けるという姿勢も、すごい。林業は時間がかかるというが、そうでもない、毎年新たなことを行い、その成果が順繰りに毎年やってくるように感じてしまった。


立ち読み書評「林業再生 最後の挑戦」

2007-01-24 00:52:12 | 書籍・映画・番組など

久しぶりに大阪に出た。そして久しぶりの大規模書店へ。

そこで見つけたのが、『“林業再生”最後の挑戦』(天野 礼子著  農山漁村文化協会)である。副題は、 「新生産システム」で未来を拓く だ……。

この本そのものは知っていたが、あまり興味がわかず、また実物を目にすることもなかったのでこれまで読んでいなかった。
そこで立ち読み(^^;)を始めたのだが……基本的にはインタビュー本で、聞き書きだ。そんなに本人が林業や森林を論じている内容ではない。
とはいえ、驚きだ。サブに入っているとおり、中心の記事は、林野庁が始めた「新生産システム」の紹介なのだが、それは紹介の域を越えて、べたぼめなのである。これまでダム反対などでさんざん政府批判を行ってきた人の本とは思えないほど。

すでに幾度も書いてきたが、私は、「新生産システム」に一応賛成している。何も動かなかった以前の林政と比べたら一等マシで、とりあえずは成功を期待している。が、同時に「新生産システム」の危険性も十分に感じている。結果的に潤うのは大企業だけであり、下手すると山を破壊する施業を推進しかねない。とくに再造林が進んでいないことは、非常に心配している。

だから、ここまで新生産システムを持ち上げられると、逆に違和感が湧いてきた。いつから林野庁の回し者になったの?といいたくなった。

あくまで立ち読みだから、隅から隅まで読んだわけでもない。もしかしたら読み落とした部分があるかもしれない。それなのに評するのは失礼かもしれないが、とても買う気になれなかったよ。印象としては、話を聞いたままの付け刃的林業紹介本というところかな。
なお、記事は、ほかにも多くの林業・木材産業に関わる人々が登場する。

 


そのまんま東・宮崎県知事誕生

2007-01-22 00:31:33 | 書籍・映画・番組など

宮崎県知事に、そのまんま東氏が当選した。まだ最終投票数は出ていないが、圧勝のようである。

宮崎県だけでなく、マスコミ界にとっても激震だ。ほんの最近まで、賑やかしの泡沫候補扱いだったのだから。
だが、実は私は、そのまんま東氏の当選の可能性をかなり前から感じていた。と今頃言っても、後出しジャンケンなのだが(^o^)。ただ川村前長官と競り合うと思っていたのに圧勝とは。

宮崎県の知事選は、宮崎県が林業県であることに加えて前林野庁長官の出馬もあって興味は持っていた。ただ、私は宮崎政界に詳しいわけでも、霊能力があるわけでも、そのまんま東のファンというわけでもない。それなのに、そんな「予言」をしたのは、実は一冊の本のためである。

「負けるが勝ち」の生き残り戦略 (秦中啓一著・ベスト新書)

これはシステム工学から生物界の進化を調べている学者の本である。コンピュータで行う生物学という不思議だが、近頃流行りの分野でもある。
もっとも内容は、極めてやさしく書いてある。その第1章は、「スキャンダル候補が選挙で生き残る」なのである。生態系で起こるサバイバル関係の不思議なパラドックスが描かれている。

この本のサブタイトルは、『なぜ自分のことばかり考えるやつは滅ぶのか』であり、帯にあるのは、『最後に笑うのは、「利他主義」だ! 』とある。つまり、生物界は弱肉強食ではないのである。

詳しいことは省くが、これを宮崎知事選に当てはめた。
そのまんま東は、古いスキャンダルを抱えている。ところが新しいスキャンダルなら票を落とすが、古くて時間をかけた場合は、逆にプラスに働くことがあると読んだのだ。

実際、知名度は抜群だし、前職は汚職・談合で逮捕されたのだから、清新な候補者を求めるだろう。そのまんま東氏は、ぴったりはまった。


読んでいると、田舎社会の構造や、そこに異分子としての移住者が入った場合などもコンピュータでシュミレーションできてしまう。

人間社会も、種のレベルで考えると、意外な面が読み取れる。ところで、そのまんま東氏の林業政策は、どのようなものだろう。


書評『破壊される世界の森林』

2006-10-01 12:36:57 | 書籍・映画・番組など

今、『破壊される世界の森林~奇妙なほど戦争に似ている』(デリック・ジェンセン/ジョージ・ドラファン著 明石書店刊)を読んでいる。

かなりかったるい本だ。

森林活動家である二人が世界の森林破壊の現状を描いている。アメリカの国有林伐採の一割が違法伐採であることや、政府の腐敗、巨大木材企業の貪欲な破壊的伐採、そして世界中に広がる森林危機を告発している。森林認証制度も地球サミットもみんな「無駄」と言下に切り捨て、絶望だけを振りまいていく。
森を守るためには、みんな先住民のように消費を押さえて貧しく生きなさい、とだけ記しているのである。いわば現代文明の全否定。

 

紹介される統計の数字などには、かなり怪しいものもあるのだが、事実関係はともかく、時代遅れの本だなあ、と思わざるを得ない。単に告発するだけで終わられても困るのよ。「週刊○○日」とかと同じ。他者を批判して、自分は安全圏におられてもねえ。
もちろん、世間には違法なことや誤った政策もあるだろう、一部の利潤追求が環境を破壊していることも否定しない。それらをなくすべき努力は必要だ。
しかし、人が食べ、服を着て、家に住んで電気などを使って、たまには薬で病気を治しつつ、少しでもよい暮らしを願って生きることを、馬鹿にしてはいけない。


さしずめ日本の森林政策に対して、製紙会社が悪い、ハウスメーカーが悪い、割り箸が悪い、製材所が悪い、山元が悪い、そして政治家と林野庁が悪い……と言っているだけのようなものだ。

 


『田舎暮らしの本』

2006-07-03 17:26:39 | 書籍・映画・番組など
『田舎暮らしの本』に、『田舎で暮らす!』の書評が載った。
本家本元の雑誌なのに、載るのが遅いよ、って、文句いっちゃあいけません。感謝、感謝。

もともと『田舎で暮らす!』の元ネタとなっている田舎移住者の情報は、『田舎暮らしの本』で取材したものが多い。なんと言っても老舗というか、田舎暮らしの火付け役みたいな雑誌だから。

もっとも、最近は様変わりしている。読んで楽しむ人が増えたのか、実際の移住にまで突き進む人が減ったそうだ。するとハウツウや理論面を記すページが減った。
その結果かどうか、私の担当する欄が無くなってしまった

仕事減るなあ…。

『自然産業の世紀』

2006-07-02 17:17:13 | 書籍・映画・番組など

以前、森林認証制度FSCが認証した本が出版される、と記したことを覚えているだろうか。たしかに記した。ただ、何月何日かわからない……(^^;)。

 

と、ともあれ、その本が出た。『自然産業の世紀』(アミタ持続可能経済研究所・編 創森社刊)である。

この創森社は、FSCのCoC(生産物の流通)認証を取得した日本で唯一の出版社。この本を出版するために、CoC認証をわざわざ取ったという。そして使用している紙も、FSC認証付き。こうしてFSCが認証した本が誕生したのだ。

 

内容は、まだ読んでいないので、あまり紹介できないが、アミタ持続研の事業の紹介と、その理論を解説したものである。そもそもアミタという会社は、環境関係のビジネスを行い、日本におけるFSC認証の窓口でもある。ここの所長は、FSCの審査にも関わっている。だからこそ、という本だ。
具体的には、FSCのほか、水産物認証のMSC、そして持続可能な農業、外来種問題、野生生物問題……などが書かれている。

 

それにしても、この本が「FSC認証本」であることは、帯に小さく書かれてあるほか、最後の奥付けの手前に、MEMOとして触れられてある程度。そもそも世間では、FSC自体が知られていないのだから、あまりFSC認証! と表紙に書き込んでも仕方ないのだろう。

 

 


書評・「森づくりの明暗」

2006-06-28 11:08:35 | 書籍・映画・番組など

長崎行の際にも読んでいた本を、昨晩読了。

 

『森づくりの明暗』 内田健一著 川辺書林

 

著者は、岐阜の森林文化アカデミーの講師だった人で、2004年の夏に生徒らとスウェーデン・オーストリアの林業を視察旅行した際の記録。単なる紀行記ではなく日本の現状と比較しているので、ヨーロッパの林業を知ることができるだけでなく、森づくりの現場から日本の林業の現状も浮き上がる。帯にもあるが、「日本の森づくりに足りないもの」が見えて来るのだ。ついでに森林文化アカデミーの内実もかいま見得る。

 

登場する生徒の一人は、私が取材したことのある人だった。もしかしたら著者ともその際に逢っているかもしれない。理想的な森林学校に見えても、なかなか難しいようである。

 

ただ、内容には多少突っ込み所もあり、森林認証制度FSCに関しては理解が足りないようなところもあるし、水文関係、日本の森林史などの記述には?もつく。それに、はっきりとは書いていないが、速水林業には反感を持っているようだ(^^;)。日本の伝統技術やにこだわりがあるらしく、新しい試みに批判的な面もある。
木材流通の問題には、何も触れていないのも残念。欧米の林業の進んでいる最大の点は、こちらだと思うんだけどね。

ともあれ、海外からの視点を入れて、見えてくる日本林業がある。


しんぶん赤旗

2006-06-24 10:26:39 | 書籍・映画・番組など

忘れていたころに書評。最近チェックを怠っているな。

 

しんぶん赤旗6月18日号に『田舎で暮らす!』の書評が載りました。感謝。

「田舎暮らしの前に知っておくべきことをまとめたのが、この本」

爆発的な出足ではなかったけれど、じわりと売れているようです。

 

昨日、一昨日と取材(コーディネイト)した先では、1冊買っていただきました。昨日訪れたところは、実は『田舎で暮らす!』に登場してもらっている家族なので贈呈してきました。名前も出さず、ほんの数行だけですけど。
12年前に取材したのですが、こうして縁あって訪ねると、その後の変遷を知ることができて興味深いです。当時中学1年生だった男の子が、結婚して子どもがいて、二人目がお腹の中。しかも、一度は街に出たのに、舞い戻って田舎暮らしをしています。都会暮らしの奥さんも楽しんでいるようでした。