徳島帰りに、大阪駅ガード下の新梅田食道街に寄った。
この界隈、昔は常連だったのである。
そして、もっとも懐かしいお店「味楽」に行く。ちょうど、ここのおかあちゃんと店前で出会った。覚えていてくれた。何年ぶりだろうか。生駒に引っ越してからは滅多に行かなくなったから、10年ぐらいはたっているかもしれない。
この店にたむろしていたのは、20年以上前になるだろうか。何の取り柄もない店なのだが、おかあちゃんに会いに通ったようなものだ。くだらん議論をしたり、管まいたり。昭和天皇が亡くなった時なんぞ、ぼろくそ言い合って、ほかの客から睨まれた思い出もある。
なんたって、戦後闇市の時代からこの店はある。当時は朝、昼、晩とやっていたという。戦前は朝鮮で料亭をしていたという噂も聞いた。
「吹かば吹け、玄海五島東の風……」の額は、何十年も変わらぬ佇まいでかかっていた。当時料理を作っていたオヤジは、酒の飲み過ぎで倒れた。見舞いに行ったこともある。亡くなってからはおかあちゃん一人で切り盛りして大変だったが、今は息子があとを継いでいる。彼も会社を退職して継ぐには葛藤があったかもしれないが、今は悠々と店を仕切る。メニューも随分増えた上にオシャレな料理になった。酒も地酒を中心に種類が増えた。価格も上がった。でも、店の雑然とした雰囲気は当時のままだ。
20年前、我々の仲間のたまり場だったが、今はみんなバラバラになってしまった。それぞれの道を見つけたのだろう。
「あのころは、みんな何しようかわからんであっちウロウロ、こっちウロウロして迷っていたわね」と言われてしまった。
たしかに、将来自分がどうなるのかわからぬ不安と期待を抱えつつ、集まっていたんだなあ。今、振り返ると微笑ましい。
たまには、こんなセンチメンタルジャーニーもよい。