Rhythm Technique Fightingspirits

藤枝MYFCを中心としたサッカー観戦記やサッカーに関する個人的な意見の書き込みが中心です。

大島僚太のすごさ

2016年07月15日 21時27分32秒 | A代表
A代表選出、リオ五輪代表選出、Jリーグでのスーパーミドルシュートなど、最近目覚ましい活躍をみせる川崎フロンターレの大島僚太選手について、個人的に感じるその凄さについて語ってみたいと思う。

大島の良いところは静学仕込みの技術の高さ、そしてそれに加えてプロ入りしてから身に付けた献身的な守備と思い切りの良いミドルシュートも挙げられると思う。
でも、大島の本当のすごさはそこでは無いと個人的には感じている。

以下、2010年に大島が川崎Fに入団が決まった時にこのブログで書いた大島の評価に関する記事を紹介


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

静学MF大島の川崎F入団が内定した。

自分が大島をはじめて見たのは一昨年12月の埼玉遠征、大島が新2年生としての新チームが発足したばかりの時、この時は持ち前のドリブルを活かす為SBでの起用も試されていた。ドリブルがうまく静学らしいテクニックのある選手だと感じたが、正直この時点では大島が高卒プロ入りすることになるとは思っていなかった。

大島のプレーを見ていてどうしても気になることがあった、それはゴールへの積極性について物足りないという事。
シュートコースが開いているのにシュートを打たずパスを出してしまったり、強引にこじ開けようという意識があまり感じないプレーが多々見られた。
「ゴールへの意識が変ったらすごい選手になるかもしれない」そう思いながら2年間大島のプレーを見てきた。

結果的に自分の予想は良い意味で予想外の方向に裏切られた。

この2年間で大島が一定の時期に飛躍的に成長したと感じたことは無い、しかし全く伸び悩むことなくスクスクと成長した印象がある。気になっていたゴールへの意識も大分高くなったと思う。少なくとも最近は、大島のプレーを見ていて積極性に欠けると感じたことは無い。
しかし、それ以上に大島が最も成長したと感心させられたのが、試合中の落ち着きであったり試合の流れを見る力。
勝手な憶測だが、大島が試合中に余裕を持ってボールキープ出来ることで生まれた時間を使って、相手選手の表情を見るようになったのではないかと思う。
相手選手の表情を見る余裕が出てくると、流れを読んだ効率的なプレーが出来るようになるもの。
特に最近はボランチで起用されるようになり、その能力が開花したのではないかと感じている。高円宮杯の準決勝広島Y戦で宗近を退場に追いやったプレーがそれを象徴していたと思う。
試合全体の流れを見ながらプレーできる選手はというのはあまり多くない。日本代表でそれが出来る代表的な選手はG大阪の遠藤。

歴代の静学で10番を背負ってきた選手達と比べて、スペシャルな能力を持っている選手だとは思わないが、この2年間で大島の成長曲線が止まったところは見たことが無い。そういう意味ではスペシャルな選手。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今も昔も、大島のすごさは試合の流れを読み取り、その空気を読んで最も効率的なプレーが出来る点だと思っている。
高校時代の大島のすごさが最もよく見ることが出来た試合を1つ紹介したいと思う。
その試合は、今無き秋の全国大会「高円宮杯」の準決勝戦の国立競技場で行われたサンフレッチェ広島ユースとの試合。
川崎Fの向島スカウトが、この試合での大島の活躍を見て獲得を決めたという事で知られており、一部マニアの間では今でも語り継がれる名勝負だった試合。

試合概要は以下のとおり。
静学 2-4 広島Y 試合詳細(当ブログ記事)

ザックリとした試合内容は以下のとおり
・静学が前半2点先制
・後半2分静学主将DFの金が一発退場
・後半15分広島Y主将DFの宗近が2枚目イエローで退場
・後半20分から12分間で広島Yが立て続けに3得点奪い逆転
・終了間際に広島Yがダメ押しの4得点目を奪い試合終了

前半で静学が2得点して試合を優位に進めるも、後半2分に退場者を出して厳しい展開になる。それでも広島の猛攻に耐えていた静学だったが、広島Yも退場者を出したところで大きく流れが変わった。相手チームにも退場者が出て気が緩んだ静学に対して、もう後が無くなって行くしかなくなった広島Yが正面からぶつかる格好となり、わずか12分間で広島Yが3得点。広島Yが森山監督直伝の気持ちの強さを見せて逆転勝ちした試合だった。

この試合で大島の何が特に凄かったのか?

それは後半15分の広島Yの宗近を退場に追いやったシーン。
※以下は会場で試合観戦をしていたブログ主の個人的な憶測です。大島本人には確認していません。
静学が不可解な判定で1人少なくなってしまい厳しい試合展開となった状態で大島が思いついたことが、「それなら相手チームにも退場者を出して10人対10人にすれば良い」ということだった。
その狙いをつけた相手選手が広島Y主将の宗近。宗近が1枚イエローカードを受けていて、イライラしていたのを分かったうえで、ボールをキープした時に宗近をタッチライン際へ誘い出し、ファールを誘い、2枚目イエローで相手チームの主将を退場に追いやった。
正直言って、このシーンについては会場で見ていて、「凄い」という感想ではなく「鳥肌が立った」のを良く覚えている。
高校サッカーの本質から言えば褒められるプレーではないので、このブログでもあまり触れはしなかったが、「これはもう高校生のプレーではない」というのが正直な感想で、「いったいどこまで見えていたんだ?」と心底、大島の状況判断能力に恐れおののいた。
試合は大島のもくろみ通り10人対10人となったが、それにより10人で必死に耐えていた他の静学選手達が「これでもう大丈夫だ」と気が緩んでしまったのが大島にとって計算外だった事。10人になって尻に火が付いた広島Yの攻撃を食い止めることは出来ず、結果的に大島の相手選手を退場に追い込んだプレーは、策士策に溺れるという格好となり静学が逆転負けを喫した。

この試合の大島のプレーで良く紹介される、ドリブルの切り替えしで広島YDF2人を尻もちつかせたシーンは、相手が1人減り味方の集中が切れて静学が劣勢となり、想定外の出来事に大島が焦り「ヤバイヤバイ」と1人気を吐いたときに見せたプレーだった。
大島の本当のすごさは、試合全体の流れを見られる状況判断力。試合の流れを見ることが出来、それを試合の中で勝利に結びつけることを考えてプレーできる冷静さだというのが彼が高校の頃からの個人的な大島に対する評価と感じている。

※またこの高円宮杯のグループリーグの青森山田戦(柴崎岳との直接対決)でも、大島の「どんだけ視野広くて、瞬時に状況判断できているんだ!?」というプレーがあったが、それは内容的にとてもここでは書くことが出来ないので、また別の所で書くことにする。

なお、森山監督率いる広島Yはこの試合での勝利をきっかけに(?)「気持ちには引力がある」というキャッチフレーズと共に、この年の高円宮杯を優勝。さらの翌年翌々年も優勝し3連覇を達成している。


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (エスカルゴ)
2016-07-16 10:27:10
こんにちは。私は見ていないのですが、大島選手のイエローを誘発する駆け引き、読みはすごいですね。先日、井田勝通氏著の「静学スタイル」を読んだのですが、p58以降に、「サッカーの本当の駆け引き」について書かれており、まさに井田氏の教えと静学に伝えられているであろう考え方を最高のレベルで体現したものだ、と感じました。リオ五輪での大島選手のプレーにも、是非注目したいです。素晴らしい記事をありがとうございました。
返信する

コメントを投稿